【実施例】
【0021】
以下、実施例の端子台について、図面を用いて説明する。
【0022】
(実施例1)
実施例1の端子台について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1〜
図3に示されるように、本例の端子台1は、樹脂成形部20を有するハウジング2と、バスバー3と、シール部4とを有している。バスバー3は、樹脂成形部20に埋設された埋設部30および樹脂成形部20から外方に突出した接続部31を一体に備えている。シール部4は、埋設部30と樹脂成形部20との間に存在する隙間5を封止している。以下、詳説する。
【0023】
本例において、樹脂成形部20は、熱可塑性樹脂より形成されている。熱可塑性樹脂は、ガラス繊維にて強化された芳香族系ナイロン樹脂である。樹脂成形部20は、具体的には、板状の基部200と、基部200における第1接続側の面から外方へ突出する複数の第1突出部201と、基部200における第2接続側の面の各第1突出部201に対応する位置から外方へ突出する複数の第2突出部202と、基部200と第1突出部201と第2突出部202とを貫通する複数のバスバー保持孔203とを有している。
【0024】
本例において、バスバー3は、板状形状を呈している。バスバー3は、具体的には、スズめっきされた銅板より形成されている。バスバー3は、インサート成形により樹脂成形部20に固定されている。具体的には、バスバー3は、樹脂成形部20におけるバスバー保持孔203内を貫通した状態で樹脂成形部20に固定されている。バスバー3のうち、バスバー保持孔203内に配置された部分が、埋設部30とされる。一方、バスバー3のうち、バスバー保持孔203から外部に露出する部分が、接続部31とされる。したがって、バスバー3は、埋設部30の両端にそれぞれ接続部31を有している。接続部31は、ワイヤーハーネス等を締結するための締結孔311および締結ナット312を有している。なお、本例では、バスバー3は、互いに離間した状態で6つ配置されている例が示されている。
【0025】
本例において、シール部4は、具体的には、埋設部30の表面と樹脂成形部20のバスバー保持孔203の内壁面との間に形成された隙間5の一部に配置されている。シール部4は、より具体的には、埋設部30における基部200に対応する位置に配置されている。また、シール部4は、埋設部30の一部にて外周を取り囲むように設けられている。
【0026】
ここで、シール部4は、エピクロロヒドリンの単独重合体ゴムと、ニトリルゴムおよび/またはアクリルゴムからなる第2ゴムとを含む接着剤組成物の架橋体より構成されている。接着剤組成物は、単独重合体ゴム100質量部に対して第2ゴムが1〜10質量部配合されている。
【0027】
次に、本例の端子台の作用効果について説明する。
【0028】
本例の端子台1は、上記接着剤組成物の架橋体より構成されるシール部4を有している。そのため、本例の端子台1は、低温環境下に曝された場合に、シール部4の伸びが良好であり、シール部4の柔軟性が低下し難い。これは、上記第2ゴムを用いることにより、シール部4の低温下での柔軟性が向上するためである。また、本例の端子台1は、高温環境下に曝された場合に、シール部4の接着強度が低下し難い。それ故、本例の端子台1は、ヒートサイクルを受ける環境下に曝された場合であっても、シール性能を確保することができる。
【0029】
<実験例>
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
【0030】
(接着剤組成物の作製)
接着剤組成物の材料として以下のものを準備した。
・エピクロロヒドリンの単独重合体ゴム(ダイソー社製、「エピクロマーH」)
・ニトリルゴム(日本ゼオン社製、Nipol DN401L)
・アクリルゴム(日本ゼオン社製、Nipol AR74X)
・ステアリン酸(花王社製、「ルナックS−70V」)
・酸化マグネシウム(神島化学工業社製、「CX150」)
・加硫剤(川口化学工業社製、「アクセル(Accel)22−S」)
・トルエン(三共化学工業社製)
【0031】
後述の表1に示される所定の配合割合となるように各材料を混合することにより、各接着剤組成物を得た。
【0032】
(接着剤の伸び)
ポリテトラフルオロエチレン加工された成形型を用い、接着剤組成物をシート状に成形した後、150℃で30分加熱することにより、接着剤組成物中のゴム成分を架橋させた。次いで、得られたシート状の接着剤(縦150mm×横×150mm×厚み1mm)に対してヒートサイクル処理を施した。ヒートサイクル処理は、−40℃に1時間保持した後、150℃に1時間保持するというヒートサイクルを500サイクル繰り返すことにより実施した。次いで、JIS K 7161に準拠し、ヒートサイクル処理後の接着剤から3号ダンベル形の試験片を採取し、−40℃下、引張速度20mm/分の条件にて引張り試験を行うことにより、接着剤の伸びを測定した。
【0033】
(引張せん断接着強さ)
スズめっきされた銅板の端部表面に接着剤組成物を塗布した後、自然乾燥させた。次いで、バスバーに塗布された接着剤組成物を150℃で30分間加熱し、接着剤組成物を架橋させた。次いで、インサート成形により、接着剤形成部にその端部が重なるように樹脂板を形成した。なお、樹脂板を形成するための樹脂には、ガラス繊維強化された芳香族系ナイロン樹脂を用いた。また、上記インサート成形の条件は、金型温度150℃、シリンダー温度310℃とした。これにより、JIS K 6850に規定された形状を有する試験片(接着剤層の厚み:0.1mm)を作製した。次いで、得られた試験片に対して上述したヒートサイクル処理を施した。次いで、JIS K 6850に準拠し、ヒートサイクル処理後の試験片を用いて、150℃下、引張速度100mm/分の条件にて引張り試験を行うことにより、接着剤層の引張せん断接着強さを測定した。
【0034】
(リークテスト)
実施例1に準じて、表1に示される接着剤組成物の架橋体より構成されるシール部を有する端子台を作製し、シール部のシール性能を評価するためのリークテストを実施した。具体的には、作製した端子台に対して予め上記ヒートサイクル処理を施した。次いで、ヒートサイクル処理後の端子台について、第1接続側におけるバスバー保持孔の開口端から100kPaの圧縮空気を導入した。そして、第2接続側におけるバスバー保持孔の開口端からの圧縮空気の漏出の有無を確認した。
【0035】
表1に、接着剤組成物の詳細な組成と、各種評価結果をまとめて示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1によれば、以下のことがわかる。すなわち、試料1Cは、接着剤組成物が、ニトリルゴムおよび/またはアクリルゴムからなる第2ゴムを含んでいない。そのため、試料1Cは、−40℃の低温環境下における接着剤の伸びが悪い。それ故、試料1Cは、低温環境下に曝された場合に、シール部の柔軟性が低下し、シール性能を確保することができない。
【0038】
試料2C、試料4Cは、接着剤組成物における上記第2ゴムの配合割合が規定量を下回っている。そのため、試料2C、試料4Cは、−40℃の低温環境下における接着剤の伸びが悪い。それ故、試料2C、試料4Cは、低温環境下に曝された場合に、シール部の柔軟性が低下し、シール性能を確保することができない。
【0039】
試料3C、試料5Cは、接着剤組成物における上記第2ゴムの配合割合が規定量を上回っている。そのため、試料3C、試料5Cは、単独重合体ゴムの割合が相対的に少なくなり、十分な架橋が得られず、150℃の高温環境下におけるせん断接着強さが低い。また、第2ゴムの配合割合が規定量を上回ったことにより、単独重合体ゴムと第2ゴムとの相溶性が悪くなったこともせん断接着強さが低くなった原因として考えられる。それ故、試料3C、試料5Cは、高温環境下に曝された場合に、シール部の接着強度が低下し、シール性能を確保することができない。
【0040】
試料4C、試料7Cは、接着剤組成物が、エピクロロヒドリンの単独重合体ゴムを含んでいない。そのため、試料4C、試料7Cは、十分な架橋が得られず、150℃の高温環境下におけるせん断接着強さが低い。それ故、試料4C、試料7Cは、高温環境下に曝された場合に、シール部の接着強度が低下し、シール性能を確保することができない。
【0041】
これらに対し、試料1〜試料4は、本発明で規定される成分組成、配合割合を満たす接着剤組成物を用いている。そのため、試料1〜試料4は、−40℃の低温環境下における接着剤の伸びが良好である。それ故、試料1〜試料4は、低温環境下に曝された場合でも、シール部の柔軟性が低下し難く、シール性能を確保することができる。また、試料1〜試料4は、十分な架橋が得られるため、150℃の高温環境下におけるせん断接着強さを確保することできる。それ故、試料1〜試料4は、高温環境下に曝された場合でも、シール部の接着強度が低下し難く、シール性能を確保することができる。
【0042】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。