(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選択手段は、前記複数の制約パターンの各々に対して算出された前記車速パターン及び前記車両要求出力パターンから、前記車速パターン及び前記車両要求出力パターンの確率と、前記決定された、前記車両要求出力パターンに対応する各時刻の前記複数の原動機の動作点から求められる車両総合効率とに基づいて、車両総合効率の期待値が最大となる前記車速パターン及び前記車両要求出力パターンを選択する請求項1又は2記載の車両制御装置。
前記選択手段は、前記複数の制約パターンの各々に対して算出された前記車速パターンの各々に対し、前記車速パターンに類似した車速パターンの集合を定義し、前記車速パターンの集合に含まれる前記車速パターンの前記車両総合効率の期待値の和を算出し、前記車両総合効率の期待値の和が最大となる前記車速パターンの集合に対する前記車速パターンを選択することにより、前記車速パターン及び前記車両要求出力パターンを選択する請求項3記載の車両制御装置。
前記選択手段は、前記車両総合効率の期待値の和が最大となる前記車速パターンの集合が複数存在する場合には、前記車両総合効率の期待値の和が最大となる、複数の前記車速パターンの集合に対する車速パターンのうち、前記車両総合効率の期待値が最大となる車速パターンを選択することにより、前記車速パターン及び前記車両要求出力パターンを選択する請求項4記載の車両制御装置。
前記選択手段は、前記車両総合効率の期待値の和が最大となる、複数の前記車速パターンの集合に対する車速パターンのうち、前記車両総合効率の期待値が最大となる車速パターンを選択する際に、前記車両総合効率の期待値が最大となる前記車速パターンが複数存在する場合には、前記車速パターンの確率または前記車両総合効率が最大となる車速パターンを選択する請求項5記載の車両制御装置。
前記動作点決定手段は、前記車速パターンの車両要求出力パターンから求められる車両総合効率と、前記エネルギー蓄積装置に蓄積されるエネルギーの時系列データとに基づいて、前記内燃機関のエネルギー消費量を最小化するように、前記内燃機関を使用しないタイミングを決定する請求項1記載の車両制御装置。
前記動作点決定手段は、前記車速パターンの車両要求出力パターンから求められる車両総合効率と、前記エネルギー蓄積装置に蓄積されるエネルギーの時系列データとに基づいて、前記内燃機関のエネルギー消費量を最小化するように、前記内燃機関の負荷を上げて、他の原動機による発電により得られたエネルギーを前記エネルギー蓄積装置に蓄積する発電制御、又は前記エネルギー蓄積装置に蓄積されたエネルギーを原動力とする原動機の負荷を下げて、他の電動機を使用するアシスト制御を行うタイミングを決定する請求項7記載の車両制御装置。
前記動作点決定手段は、前記車速パターンの車両要求出力パターンから求められる車両総合効率と、前記エネルギー蓄積装置に蓄積されるエネルギーの時系列データとに基づいて、前記燃料電池によるエネルギー消費量を最小化するように、前記燃料電池から出力されたエネルギーを原動力とする原動機を使用しないタイミングを決定する請求項2記載の車両制御装置。
前記動作点決定手段は、前記車速パターンの車両要求出力パターンから求められる車両総合効率と、前記エネルギー蓄積装置に蓄積されるエネルギーの時系列データとに基づいて、前記燃料電池によるエネルギー消費量を最小化するように、前記燃料電池から出力されたエネルギーを原動力とする原動機の負荷を上げて、他の原動機による発電により得られたエネルギーを前記エネルギー蓄積装置に蓄積する発電制御、又は前記エネルギー蓄積装置に蓄積されたエネルギーを原動力とする原動機の負荷を下げて、他の電動機を使用するアシスト制御を行うタイミングを決定する請求項9記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の実施の形態では、本発明に係る車両制御装置を、複数の電動機と2次電池とを搭載した車両に適用した形態を例示して説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両制御装置10を搭載した車両100のブロック図である。本実施の形態に係る車両100は、車両制御装置10、エンジン12、クラッチ14、発電機または電動機として動作するモータジェネレータ16、インバータ18、2次電池20、変速機22、及びデファレンシャルユニット24を含んで構成されている。なお、2次電池20が、エネルギー蓄積装置の一例である。
【0015】
本実施の形態では、変速機22として、自動変速機(Automatic Transmission:AT)を想定している。自動変速機とは、自動車の速度やエンジンの回転数等に応じて、変速比が自動的に切り替えられる変速機である。
【0016】
車両制御装置10は、エンジン12、クラッチ14、モータジェネレータ16、インバータ18、及び変速機22を制御する。
図2に示すように、車両制御装置10は、受信部30、センサ32、制御装置34、エンジン制御部36、モータ制御部38、クラッチ制御部40、及び変速制御部42を備えている。
【0017】
受信部30は、各種交通環境情報を受信し、制御装置34へ受け渡す。
図2、
図4では、車両制御装置10に入力される交通環境情報の一例として、信号機情報、周辺車両情報、渋滞情報、及び地図情報を例示しており、本実施の形態に係る車両制御装置10では、これらの交通環境情報のうちの少なくとも1つを入手する。各種情報の入手形態としては、交通情報センター等の交通環境の管理センターから無線送信された情報を受信部30で受信して入手する形態、他車両との無線通信を通して入手する形態、自車両に備えられたカメラ等の情報収集手段から入手する形態等が含まれる。したがって、本実施の形態に係る受信部30には、無線受信部の他、情報収集手段との入出力インタフェースも含まれる。また、本実施の形態においては、無線通信の形態として、インターネット等によるネットワーク通信も含まれる。
【0018】
信号機情報は、信号機の表示色(青、黄、赤)の遷移時刻等に関する情報であり、入手形態としては、無線送信器を備えた信号機から直接送信された情報を受信部30で受信して入手する形態や、交通環境の管理センター(以下、「管理センター」)から無線送信された信号機に関する情報を受信部30で受信して入手する形態等が含まれる。
【0019】
周辺車両情報は、自車両に対する周辺車両の走行状態に関する情報であり、たとえば、自車両に備えられた自車両の周囲を撮像するカメラ、あるいは自車両に備えられたレーザレーダによって捕捉された周辺車両の走行状態に関する情報の形態で入手する。また、管理センターから無線送信された周辺車両に関する情報を受信部30で受信して入手してもよいし、周辺に位置する他車両からの直接の無線通信を受信部30で受信して入手してもよい。
【0020】
渋滞情報は、自車両の近傍、あるいは目的地付近の道路の混雑状態に関する情報であり、たとえば、管理センターから無線送信された渋滞に関する情報を受信部30で受信して入手する。また、渋滞箇所に位置する他車両からの直接の無線通信を受信部30で受信して入手してもよい。
【0021】
地図情報は、自車両が走行中の道路周辺の地理的情報、あるいは目的地までの道路周辺の地理的情報等、自車両の走行に際して関連する地理的情報であり、たとえば、管理センターから無線送信された地図情報を受信部30で受信して入手する。あるいは、自車両に予め備えられたカーナビ等から地図情報を入手してもよい。
【0022】
入手した上記各交通環境情報は、制御装置34のRAM等の記憶手段に一時的に記憶させてもよい。また、記憶手段に記憶された各交通環境情報は、新しい情報を追加記憶させ、不要となった情報は削除し、リアルタイムで更新処理してもよい。
【0023】
センサ32は、自車両情報を検出する。自車両情報とは、車両制御を行う上で必要となる自車両のその時点での情報であり、地図情報上の自車両の位置、自車両の速度等が含まれる。
【0024】
制御装置34は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を含んで構成されている。CPUは、車両制御装置10の全体を統括、制御し、ROMは、後述する車両制御処理プログラム、あるいは各種パラメータ等を予め記憶する記憶手段であり、RAMは、各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられる記憶手段である。
【0025】
エンジン制御部36は、制御装置34からの指令に基づいて、アクセルペダル(図示省略)を操作することにより、エンジン12の駆動を制御する。
【0026】
モータ制御部38は、制御装置34からの指令に基づいて、モータジェネレータ16及びインバータ18を制御し、モータジェネレータ16を電動機又は発電機として動作させるように制御する。
【0027】
クラッチ制御部40は、制御装置34からの指令に基づいて、クラッチ14の係合状態を制御する。クラッチ14が係合あるいは半クラッチ状態の場合は、エンジン12の駆動力とモータジェネレータ16の駆動力の和として車両100の総駆動力が決まる。また、クラッチ14が開放している場合は、モータジェネレータ16の駆動力が車両100の総駆動力となる。
【0028】
変速制御部42は、制御装置34からの指令に基づいて、変速機22の段数を制御する。
【0029】
制御装置34は、機能的には次に示すように構成されている。
図3に示すように、制御装置34は、情報取得部50、環境情報取得部52、走行パターン決定部54、エネルギー管理部56、及び運転制御部58を備えている。なお、情報取得部50及び環境情報取得部52は取得手段の一例であり、走行パターン決定部54は、走行時系列データ算出手段の一例であり、エネルギー管理部56は、動作点決定手段の一例であり、運転制御部58は、駆動制御手段の一例である。
【0030】
情報取得部50は、センサ32によって検出された自車両情報と、ドライバにより設定された到着地点とを取得する。
【0031】
環境情報取得部52は、受信部30によって受信した交通環境情報を取得する。
【0032】
走行パターン決定部54は、環境情報取得部52によって取得した交通環境情報に基づいて、出発地点から到着地点までの各時刻の車速を表す車速パターンを算出し、車速パターンに応じた各時刻の車両要求出力を表す車両要求出力パターンを算出する。
【0033】
例えば、以下のSTEP1〜STEP3により、車速パターン及び車両要求出力パターンを算出する。
【0034】
まず、STEP1では、現在位置を出発地点とし、出発地点から到着地点までの各時刻の車速パターンを、各地点について予め定められた法令速度と、搭乗者の好みに合わせて予め設定される加減速度とを制約として求める。
【0035】
STEP2では、STEP1で求めた車速パターンに対して、交通環境情報による制約を付加することで修正を加える。これを要求車速パターンとする(
図5参照)。
【0036】
例えば、信号機情報に基づいて、自車両が向かう先に存在する直近の信号機の表示色が現在青であり、赤に切り替わるまでの時間を取得し、当該信号機が青から赤に切り替わるタイミングで当該信号機を通過する場合には、当該信号機の手前で停まるように車速パターンに修正を加える。
【0037】
更に、周辺車両情報に基づいて、自車両と信号機との間にある他車両の挙動による影響で自車両が速度制限を受ける場合には、当該信号機の手前に到達するまでに更に減速するように車速パターンに修正を加える。
【0038】
また、渋滞情報に基づいて、渋滞箇所に遭遇する場合には、渋滞箇所に到達するまでに減速するように車速パターンに修正を加える。更に、周辺車両情報に基づいて、自車両と渋滞箇所との間にある他車両の挙動による影響で自車両が速度制限を受ける場合には、当該渋滞箇所に到達するまでに更に減速するように車速パターンに修正を加える。
【0039】
また、地図情報に基づいて、自車両が向かう先に存在するカーブに進入する際に適切な車速まで減速するように車速パターンに修正を加える。
【0040】
STEP3では、要求車速パターンと、予め定められた車両重量、空力抵抗係数、転がり抵抗係数、機械損失、及び電気損失とに基づいて、要求車速パターンを実現するための車両要求出力パターンを算出する(
図5参照)。
【0041】
エネルギー管理部56は、走行パターン決定部54によって算出された車両要求出力パターンと、車両要求出力パターンに基づいて求められる、2次電池20に蓄積されるエネルギーの時系列データとに基づいて、エネルギー消費量を最小化するように、車両要求出力パターンに対応する各時刻のエンジン12及びモータジェネレータ16の動作点と、エネルギーフローの時系列データとを決定する。
【0042】
以下に、車両要求出力パターンに対応する各時刻のエンジン12及びモータジェネレータ16の動作点を決定する原理について説明する。
【0043】
まず、本実施の形態では、エンジン12とモータジェネレータ16と2次電池20を有する車両100において、出発地点から到着地点までの経路、および交通環境情報から算出された車両要求出力パターンに合わせて、車両全体の総合効率を最大化する、エンジン12とモータジェネレータ16の動作点、エネルギーフローの時系列データを求める。
【0044】
本実施の形態では、エンジン12とモータジェネレータ16の動作点として、例えば、エンジントルク、エンジン回転数、エンジンパワー、モータトルク、モータ回転数、モータパワー、変速段数が求められる。また、エネルギーフローの時系列データとして、エンジンパワーの時系列データ、モータパワーの時系列データ、2次電池パワーの時系列データが求められる。
【0045】
ここで、単一の原動機を有する車両の場合は、各時刻における車両要求出力に合わせて出力する必要があるため、各車両要求出力における車両全体の最大総合効率となるように原動機の動作点を決定することでエネルギー消費を最小化できる。例えば、
図6に示すように、各車両要求出力について、当該車両要求出力における車速の頻度分布と当該車両要求出力とに基づいて、その時点で車両全体の最大総合効率となるように、当該車両要求出力における動作点を決定することができる。
【0046】
一方、本実施の形態のように、複数の原動機を有する車両の場合は、各時刻における車両要求出力を各原動機の出力の和として実現すればよい。さらに、2次電池を有する場合は、ある時刻に蓄えたエネルギーを別の時刻に使用することもできるため、出発時刻から到着時刻までを総合してエネルギー消費を最小化する必要がある。特に、複数のエネルギー源(例えば、エンジンと2次電池など)を有する場合は、必ずしも各時刻における車両全体の総合効率を最大化することが、到着時刻までを総合してエネルギー消費を最小化することにはならず、別の時刻における車両全体の総合効率も加味する必要がある。そこで、本実施の形態では、以下の手順にしたがって各時刻のエンジン12及びモータジェネレータ16の動作点を決定する。
【0047】
STEP1では、逆反応をさせないエネルギー源であるエンジン12だけで車両要求出力(駆動側)を実現するように、各時刻の車両全体の総合効率を考慮して、エンジン12の各時刻の動作点を決定する。このとき、モータジェネレータ16を停止させるようにモータジェネレータ16の各時刻の動作点を決定する(
図7参照)。
【0048】
STEP2では、車両要求出力(回生側)を実現するように、車両全体の総合効率を考慮して、エンジン12及びモータジェネレータ16の各時刻の動作点を決定して、2次電池20に蓄えられるエネルギーの時系列データを算出する。このとき、回生時には、エンジン12を停止させるようにエンジン12の動作点を決定する(
図8参照)。
【0049】
STEP3では、上記STEP1で求めた、エンジン12だけで車両要求出力(駆動側)を実現する動作点の中で車両全体の総合効率が低いものから順に、STEP2で算出された2次電池20に蓄えられたエネルギーを用いた、モータジェネレータ16の駆動で置き換えて、エンジン12を停止させるタイミングを決定する(
図9参照)。
【0050】
STEP4では、残った、エンジン12だけで車両要求出力(駆動側)を実現する動作点の中で、車両全体の総合効率が低いものから順に、以下のように発電制御あるいはアシスト制御させて得するかを判定し、得すると判定された場合には、当該動作点を、発電制御あるいはアシスト制御を行うように変更する(
図10参照)。なお、発電制御とは、エンジン12の負荷を上げてモータジェネレータ16で発電させる制御のことであり、アシスト制御とは、エンジン12の負荷を下げてモータジェネレータ16で駆動させる制御のことである。
【0051】
発電制御を行って得する条件は、以下の式で表わされる。
【0053】
ただし、P
k、η
kは、置き換え前の動作点のエンジン12の出力、車両全体の総合効率であり、ΔP、Δηは、発電制御あるいはアシスト制御で置き換えた後の動作点のエンジン12の出力の変化量、車両全体の総合効率の変化量であり、η
gは、発電時のモータ効率であり、η
mは、駆動時のモータ効率であり、η
dは、発電制御により得られたエネルギーを用いた、モータジェネレータ16の駆動で置き換える前の車両全体の総合効率である。
【0054】
図11(A)に示すように、発電制御では、エンジン12の負荷を上げて効率を上げるように制御している。
【0055】
また、アシスト制御を行って得する条件は、以下の式で表わされる。
【0057】
図11(B)に示すように、アシスト制御では、エンジン12の負荷を下げて効率を上げるように制御している。
【0058】
発電制御を行う場合、元々の回生エネルギーを利用して2次電池20でモータジェネレータ16を駆動して走行させるところに加えて、発電した電力で新たにモータジェネレータ16を駆動して走行させることとなる(
図12参照)。一方、アシスト制御を行う場合、元々モータジェネレータ16を駆動して走行させている一部について、逆反応をさせないエネルギー源であるエンジン12で駆動させることになる(
図13、
図14参照)。
【0059】
運転制御部58は、エネルギー管理部56によって決定された、各時刻のエンジン12及びモータジェネレータ16の動作点と、情報取得部50によって取得した自車両情報とに基づいて、各時刻のエンジントルク、エンジン回転数、エンジンパワーを示す指令を、エンジン制御部36へ出力し、各時刻のモータトルク、モータ回転数、モータパワーを示す指令を、モータ制御部38へ出力し、各時刻のクラッチ14の係合状態を示す指令を、クラッチ制御部40へ出力し、各時刻の変速段数を示す指令を、変速制御部42に出力する(
図15参照)。
【0060】
<車両制御装置の作用>
つぎに、
図16を参照して、本実施の形態に係る車両制御処理について説明する。
図16は、本実施の形態に係る車両制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
図16に示す処理は、ドライバにより、たとえば、操作部(図示省略)に対して実行開始の指示がなされると、制御装置34のCPUがROM等の記憶手段から本車両制御処理プログラムを読み込み、実行する。
【0061】
まず、ステップS100では、自車両情報を収集する。自車両情報とは、地図情報上の自車両の位置、自車両の速度等が含まれる。収集した自車両情報は、RAM等の記憶手段に一時的に記憶させてもよい。
【0062】
次のステップS102では、交通環境情報、すなわち、上述した信号機情報、周辺車両情報、渋滞情報、地図情報を入手する。上記
図4には、自車両60、自車両60の走行に影響する主として自車両が走行する道路R上の他車両62(
図4では、煩雑化を避けるため、3台の他車両のみに符号62を付している)とともに、信号機情報66、周辺車両情報64、渋滞情報68、及び地図情報70(
図4では、カーブの地理的位置を例示している)を示している。
【0063】
本実施の形態における各交通環境情報の具体例は以下のようなものが挙げられるが、本実施の形態では、これらの情報が、確定的に決定される情報(ほぼ確定的に決定される場合を含む)である場合を例に説明する。
【0064】
信号機情報としては、表示色が切り替わる時間等の情報が挙げられる。この情報は、管理センターから入手することを想定しているので確定的に決定される。
【0065】
周辺車両情報としては、周辺車両の進行方向、速度、加速度等の情報が挙げられる。走行車線が1つで前方を走行する車両が1台かつ分かれ道が存在しないような場合には、ほぼ確定的に決定される。
【0066】
渋滞情報としては、渋滞区域に含まれる他車両の数、渋滞区域全体としての移動速度等で表した渋滞の程度に関する情報が挙げられる。上記周辺車両情報と同様の理由から、ほぼ確定的に決定される場合がある。
【0067】
地図情報としては、自車両が向かう先に存在する走行に影響する要素(たとえば、信号機、カーブ等)に関する情報が挙げられる。この情報は固定された静的情報なので確定的である。収集した上記各交通環境情報は、RAM等の記憶手段に一時的に記憶させてもよい。
【0068】
次のステップS104では、ステップS102で収集した交通環境情報に基づいて、交通環境情報に合った要求車速パターンを算出し、要求車速パターンに対応する車両要求出力パターンを算出する。
【0069】
次のステップS106では、上記ステップS104で算出された車両要求出力パターンに基づいて、エネルギー消費量を最小化するように、車両要求出力パターンに対応する各時刻のエンジン12及びモータジェネレータ16の動作点、及びエネルギーフローの時系列データを決定する。
【0070】
そして、ステップS108では、上記ステップS106で決定された各時刻のエンジン12及びモータジェネレータ16の動作点と、ステップS100で収集した自車両情報とに基づいて、エンジン制御部36、モータ制御部38、クラッチ制御部40、及び変速制御部42に各種指令を出力する。
【0071】
次のステップS110では、本車両制御処理による制御を継続するか否かについて判定し、当該判定が肯定判定となった場合にはステップS100に戻って本車両制御処理による制御を継続し、否定判定となった場合には、本車両制御処理プログラムを終了する。
【0072】
なお、制御を継続するか否かの判定は、たとえば、ドライバにより、操作部を介して終了の指示が入力されたか否かによって判定する。
【0073】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る車両制御装置によれば、交通環境情報に応じた制約に基づいて、到着地点までの要求車速パターン、及び車両要求出力パターンを算出し、エネルギー消費量を最小化するように、車両要求出力パターンに対応する各時刻のエンジン及びモータジェネレータの動作点を決定することにより、様々な交通環境に応じてエネルギー消費の低減が可能となる。
【0074】
また、総合的な交通環境情報(信号機、周辺車両、渋滞、地図)を考慮するため、あらゆる交通状況においても最適なエネルギーマネジメントが可能になる。
【0075】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る車両制御装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
第2の実施の形態では、交通環境情報により交通環境条件が確率的に決定される点、要求車速パターン、車両要求出力パターンが確率的になる点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
【0077】
図17に示すように、第2の実施の形態に係る車両制御装置の制御装置234は、情報取得部50、環境情報取得部52、走行パターン決定部254、エネルギー管理部56、走行パターン選択部255、及び運転制御部58を備えている。
【0078】
走行パターン決定部254は、情報取得部50によって取得した自車両情報、及び環境情報取得部52によって取得した交通環境情報に基づいて、出発地点から到着地点までの、交通環境情報に応じた複数の制約パターンと、複数の制約パターンの各々の確率とを求め、複数の制約パターンの各々に対し、当該制約パターンに基づいて、各時刻の車速を表す要求車速パターン、及び各時刻の各時刻の車両要求出力を表す車両要求出力パターンを算出し、当該制約パターンの確率を、要求車速パターン及び車両要求出力パターンの確率とする。
【0079】
ここで、交通環境情報に応じた複数の制約パターンと、複数の制約パターンの各々の確率とを求める原理について説明する。
【0080】
まず、交通環境情報に応じた制約として、信号機を通過する際に青信号であるか赤信号であるかの確率を計算する例を示す。
【0081】
これから通過する信号機が現在青であるとし、赤に変わるまでの時間をt
sとする(信号機情報により確定的にわかるとする)。自車両が自動運転車の場合は、今後の自車の速度パターンがわかるため、信号機を通過するまでの理想的な時間t
iとt
sを比較してt
i<t
sならば青信号のまま通過できることがわかる。しかし、実際は、周辺車両情報の影響、及び渋滞情報の影響を受けるため、確率的に判定する必要がある。
【0082】
周辺車両情報の影響で遅延する時間をΔt
n、渋滞情報の影響で遅延する時間をΔt
jとすると、t
i+Δt
n+Δt
j<t
sならば青信号のまま通過できるということである。つまり、Δt
n、Δt
jそれぞれの確率分布が
図18のようにわかれば、青信号のまま通過可能な制約パターンの確率がわかる。例えば、上記の例では周辺車両が右折する影響で遅延する時間の確率分布と渋滞で減速する影響で遅延する時間の確率分布から上記
図18の確率分布を導出する。
【0083】
ここで、周辺車両が右折する影響で遅延する時間の確率分布を求める方法について説明する。最も簡易的な方法は、その信号機に関する統計データから、時間tiの間に、周辺車両が右折する確率と、右折に要する時間の分布を求めるというものである。この確率分布は、何台の車両が右折するかの確率と、対向車が途切れる時間的間隔に関する確率分布とから求められる。また、確率分布の精度を向上させるためには周辺車両情報のモニタリングを行えばよい。前方に何台の車両がいるか、右折しそうな車両は何台か、対向車が途切れる時間的間隔に関する確率分布はどうかを見ることとなる。
【0084】
つぎに、渋滞で減速する影響で遅延する時間の確率分布を求める方法について説明する。基本的には前述と同様に、その信号機周辺で、ある長さの渋滞が発生していた際の統計データから、信号通過に要する時間の確率分布を求める。具体的には、渋滞が発生していない時とある長さの渋滞が発生していた時で、信号通過に要する時間の差を統計的に取れば、ある長さの渋滞で余計に必要となった時間が求められ、ある長さの渋滞が発生する統計的確率と合わせて、渋滞で減速する影響で遅延する時間の確率分布が求められる。また、前述と同様に、確率分布の精度を向上させるためには渋滞情報と周辺車両情報のモニタリングを行えばよい。どれだけの長さの渋滞ができているか、前方に何台の車両がいるか、前方車両の車速はどれだけかを見ることとなる。
【0085】
上記のように交通環境情報が確率的な場合、走行パターン決定部254は、例えば、自車両が向かう先に存在する直近の信号機を通過する際に、信号機が青信号で通過できる制約パターンと、周辺車両または渋滞の影響により信号機が赤信号になって通過できない制約パターンとを算出すると共に、制約パターンの各々が起こる確率を算出する。走行パターン決定部254は、制約パターンの各々に対し、上記第1の実施の形態と同様に、制約パターンに対応する要求車速パターンを算出し、要求車速パターンに対応する車両要求出力パターンを算出する。
【0086】
ここで、それぞれの制約パターンが起こる確率をq
1、q
2とし、それぞれの制約パターンに対応する要求車速パターンをV
1(s)、V
2(s)とし、それぞれの車両要求出力パターンをP
1(s)、P
2(s)とする。
【0087】
図19に示すように、信号機が青信号のまま通過できる場合は、第1モータジェネレータ16を駆動して走行することを継続できるが、信号機が赤になってしまう場合は、第1モータジェネレータ16を駆動して走行することを継続することができずに、エンジン12で駆動してしまうとする。このようなときは、上記第1の実施の形態と同様に、発電制御で得する条件、アシスト制御で得する条件を判定して最適なエネルギーマネジメントを行う必要がある。例えば、
図20に示すように発電制御を行うことでエネルギー消費を改善できる可能性がある。
【0088】
さらに、赤信号に引っ掛かってしまうリスクを避けるために加速を抑えて、十分に青信号であるタイミングで信号機を通過するような要求車速パターンとすることもできる(
図21参照)。そうなる確率をq
3とし、そのときの車両要求出力パターンをP
3(s)とする。
【0089】
上述したように、出発地点から到着地点までの交通環境情報により制約パターンは様々になり、それぞれの制約パターンの確率も様々である。
【0090】
そこで、エネルギー管理部56は、走行パターン決定部254によって決定された複数の要求車速パターンの各々に対し、当該要求車速パターンに対応する車両要求出力パターンと、車両要求出力パターンに基づいて求められる、2次電池20に蓄積されるエネルギーの時系列データとに基づいて、エネルギー消費量を最小化するように、当該車両要求出力パターンに対応する各時刻のエンジン12及び第1モータジェネレータ16の動作点を決定する。
【0091】
また、走行パターン選択部255は、複数の要求車速パターンの各々に対して決定された各時刻のエンジン12及び第1モータジェネレータ16の動作点に基づいて、走行パターン決定部254によって決定された複数の要求車速パターンを走行した際の車両総合効率η
1、η
2、η
3と、各要求車速パターンとなる確率q
1、q
2、q
3を用いて、各要求車速パターンのうち、どの要求車速パターンを想定して運転制御を行うかを選択する。
【0092】
ここで、要求車速パターンの車両総合効率は、以下のように求めればよい。例えば、要求車速パターンに対応する車両要求出力パターンについて決定された各時刻のエンジン12及び第1モータジェネレータ16の動作点に基づいて、消費されるエネルギーの総量と、タイヤまでに伝わるパワーの総量とを求め、消費されるエネルギーの総量と、タイヤまでに伝わるパワーの総量との比に基づいて、車両総合効率を求めればよい。
【0093】
また、本実施の形態では、複数の要求車速パターンの各々に対して、当該要求車速パターンに類似した要求車速パターンからなる要求車速パターンの集合を定義し、要求車速パターンの集合の各々に対し、当該要求車速パターンの集合に含まれる要求車速パターンの車両総合効率の期待値の和を算出し、車両総合効率の期待値の和が最大となる要求車速パターンの集合を選択し、選択された要求車速パターンの集合に対する要求車速パターンを選択する。
【0094】
例えば、上記の例においては出発直後の要求車速パターンが、要求車速パターン1と要求車速パターン2とで近く、要求車速パターン3は離れている。ここで、要求車速パターンの近さを現在の地点sから地点s+Sまでのn乗和で表現する。具体的には以下のように要求車速パターンiと要求車速パターンjの近さを定義する。
【0096】
上記定義にしたがって、ある要求車速パターンiに近い要求車速パターンの集合N
iを以下のように定義する。
【0098】
ある要求車速パターンの集合N
iの車両総合効率の期待値の和を、評価指標として以下のように定義する。
【0100】
上記評価指標を最大化する要求車速パターンの集合に対する要求車速パターンを各地点で選択して運転制御を行う。上述の例では、要求車速パターン1と要求車速パターン2の期待値の和と、要求車速パターン3の期待値とを比較して大きい方を選択することとなる。
【0101】
なお、上述した例では、要求車速パターンの集合を定義すると、要求車速パターン1に対する要求車速パターンの集合N
1の車両総合効率の期待値の和と、要求車速パターン2に対する要求車速パターンの集合N
1の車両総合効率の期待値の和とが一致してしまうため、要求車速パターン1単体と要求車速パターン2単体の期待値を比較して大きい方を選択する。さらに、要求車速パターン1単体と要求車速パターン2単体の期待値も一致する場合は、車両総合効率または確率が大きい方を選択することとする。車両総合効率と確率のいずれを優先させるかはドライバの好みなどにより決めることとする。
【0102】
また、各要求車速パターンとなる確率も地点が進むにつれて交通環境情報が決定されていくため、その都度更新していくものとする。上述の例では、信号機に着いた時点で要求車速パターン1と2のいずれになったかは確定するため、それ以降は確定的なエネルギーマネジメントを行えばよい。
【0103】
さらに、Sを変えることで、要求車速パターンの集合の定義の精度および計算時間を調整することができる。Sを到着地点までとすれば精度よく要求車速パターンの集合を定義できるが、計算時間が多くなってしまう。一方、Sを近い場所に設定すればその場所以降の特徴を使った、要求車速パターンの集合の定義はできないが、計算時間は少なくて済む。したがって、Sを近い場所に設定して少し未来までの要求車速パターンで要求車速パターンの集合を定義しながら、地点が進むにつれて確定される情報で要求車速パターンを絞り込むことで、無駄な計算を省略することができ、最初からすべての場合を考慮する必要がなくなる。
【0104】
運転制御部58は、走行パターン選択部255によって選択された要求車速パターンについて、エネルギー管理部56によって決定された、各時刻のエンジン12及び第1モータジェネレータ16の動作点と、情報取得部50によって取得した自車両情報とに基づいて、各時刻のエンジントルク、エンジン回転数、エンジンパワーを示す指令を、エンジン制御部36へ出力し、各時刻のモータトルク、モータ回転数、モータパワーを示す指令を、モータ制御部38へ出力し、各時刻のクラッチ14の係合状態を示す指令を、クラッチ制御部40へ出力し、各時刻の変速段数を示す指令を、変速制御部42に出力する(
図15参照)。
【0105】
<車両制御装置の作用>
つぎに、
図22を参照して、第2の実施の形態に係る車両制御処理について説明する。
図22は、本実施の形態に係る車両制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して説明を省略する。
【0106】
まず、ステップS100では、自車両情報を収集する。次のステップS102では、交通環境情報、すなわち、上述した信号機情報、周辺車両情報、渋滞情報、地図情報を入手する。
【0107】
次のステップS204では、ステップS100で収集した自車両情報、及びステップS102で収集した交通環境情報に基づいて、交通環境情報に合った複数の制約パターンを算出し、制約パターンごとに、当該制約パターンに対応する要求車速パターンを算出し、要求車速パターンに対応する車両要求出力パターンを算出する。
【0108】
ステップS206では、ステップS102で収集した交通環境情報に基づいて、複数の制約パターンの各々に対し、当該制約パターンが起こる確率を、当該制約パターンに対応する要求車速パターン及び車両要求出力パターンの確率として算出する。
【0109】
次のステップS208では、複数の制約パターンの各々に対する要求車速パターンの各々について、当該要求車速パターンに対応する車両要求出力パターンに基づいて、エネルギー消費量を最小化するように、車両要求出力パターンに対応する各時刻のエンジン12及び第1モータジェネレータ16の動作点、及びエネルギーフローの時系列データを決定する。
【0110】
そして、ステップS210では、上記ステップS208で要求車速パターンの各々について決定された各時刻の動作点、及びエネルギーフローの時系列データに基づいて、複数の制約パターンに対する要求車速パターンから、要求車速パターンの集合の車両総合効率の期待値の和が最大となる要求車速パターンを選択する。
【0111】
そして、ステップS108では、上記ステップS210で選択された要求車速パターンについて、上記ステップS208で決定された各時刻のエンジン12及び第1モータジェネレータ16の動作点と、ステップS100で収集した自車両に関する情報とに基づいて、エンジン制御部36、モータ制御部38、クラッチ制御部40、及び変速制御部42に各種指令を出力する。
【0112】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る車両制御装置によれば、確率的な交通環境情報に応じた複数の制約パターンの各々に対して、到着地点までの要求車速パターン、及び車両要求出力パターンを算出し、エネルギー消費量を最小化するように、車両要求出力パターンに対応する各時刻のエンジン及びモータジェネレータの動作点を決定し、車両全体の総合効率を考慮して、要求車速パターンを選択することにより、様々な交通環境に応じてエネルギー消費の低減が可能となる。
【0113】
また、交通状況が不確定な場合であっても、適切な意思決定が可能になり、最適なエネルギーマネジメントが可能になる。
【0114】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態に係る車両制御装置について説明する。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の構成となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0115】
第3の実施の形態では、エンジンの他に2つのモータを備えている点が、第2の実施の形態と主に異なっている。
【0116】
図23は、本発明の第3の実施の形態に係る車両制御装置310を搭載した車両300のブロック図である。本実施の形態に係る車両300は、車両制御装置310、エンジン12、クラッチ14、発電機または電動機として動作する第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316、インバータ18、318、2次電池20、及びデファレンシャルユニット24を含んで構成されている。
【0117】
クラッチ14が係合あるいは半クラッチ状態の場合は、エンジン12の駆動力と第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の駆動力の和として、車両300の総駆動力が決まる(パラレルモード)。
【0118】
また、クラッチ14が開放している場合は、エンジン12の駆動力により第1モータジェネレータ16で発電し、発電した電力で第2モータジェネレータ316を駆動させる。ただし、発電した電力の余剰分は2次電池20に蓄えられ、電力の不足分は、2次電池20から放電される(シリーズモード)。
【0119】
図24に示すように、車両制御装置310は、受信部30、センサ32、制御装置234、エンジン制御部36、モータ制御部338、及びクラッチ制御部40を備えている。
【0120】
モータ制御部338は、制御装置34からの指令に基づいて、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316及びインバータ18、318を制御し、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の各々を電動機又は発電機として動作させるように制御する。
【0121】
クラッチ制御部40は、制御装置34からの指令に基づいて、クラッチ14の係合状態を制御し、パラレルモードとシリーズモードとを切り換えるように制御する。
【0122】
制御装置34のエネルギー管理部56は、走行パターン決定部254によって決定された複数の要求車速パターンの各々に対し、当該車両要求出力パターンと、当該車両要求出力パターンに基づいて求められる、2次電池20に蓄積されるエネルギーの時系列データとに基づいて、エネルギー消費量を最小化するように、車両要求出力パターンに対応する各時刻のエンジン12、及び第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点、及びエネルギーフローの時系列データを決定する。
【0123】
本実施の形態では、エンジン12と第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点として、例えば、エンジントルク、エンジン回転数、エンジンパワー、モータトルク、モータ回転数、モータパワーが求められる。また、エネルギーフローの時系列データとして、エンジンパワーの時系列データ、モータパワーの時系列データ、2次電池パワーの時系列データが求められる。
【0124】
以下に、車両要求出力パターンに対応する各時刻のエンジン12、及び第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点を決定する原理について説明する。
【0125】
まず、本実施の形態では、エンジン12と第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316と2次電池20を有する車両300において、出発地点から到着地点までの経路、および交通環境情報から算出された車両要求出力パターンに合わせて、車両全体の総合効率を最大化する、エンジン12と第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点、2次電池20のエネルギーフローの時系列データを求める。
【0126】
本実施の形態では、制御モードとして、シリーズモードとパラレルモードが存在するため、各時刻において、2次電池20を使用せずに、シリーズモードとパラレルモードとを比較して、各時刻における駆動側の車両要求出力を、車両全体の総合効率がより大きいモードで実現するように動作点を決定する。
【0127】
シリーズモードの場合には、以下のように動作点が決定される。
【0128】
エンジン12と直結した第1モータジェネレータ16により発電して、発電した電力だけで第2モータジェネレータ316を駆動させる。第2モータジェネレータ316は車速と要求出力により、一意に動作点が決まるが(
図25(C)参照)、エンジン12と第1モータジェネレータ16は発生させる電力が同一であれば、各動作点を変更する自由度があるため、この自由度を利用して動作点の最適化を行う(
図25(A)、(B)参照)。
【0129】
また、パラレルモードの場合には、エンジン12だけで駆動させるため、車速と要求出力により一意に動作点が決まる。
【0130】
具体的には、以下の手順にしたがって各時刻のエンジン12及び第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点を決定する。
【0131】
STEP1では、各時刻において、2次電池20を使用せずに、シリーズモードとパラレルモードとを比較して、当該時刻における駆動側の車両要求出力を、車両全体の総合効率がより大きいモードで実現するように、エンジン12、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の当該時刻の動作点を決定する(
図26参照)。
【0132】
STEP2では、車両要求出力(回生側)を実現するように、車両全体の総合効率を考慮して、エンジン12及び第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の各時刻の動作点を決定して、2次電池20に蓄えられるエネルギーの総量を算出する。このとき、回生時には、エンジン12及び第1モータジェネレータ16を停止させるように動作点を決定する(
図26参照)。
【0133】
STEP3では、上記STEP1で求めた、シリーズモード又はパラレルモードで車両要求出力(駆動側)を実現する動作点の中で車両全体の総合効率が低いものから順に、STEP2で算出された2次電池20に蓄えられたエネルギーを用いるように置き換え、第2モータジェネレータ316を駆動させるように動作点を決定する(
図27参照)。
【0134】
STEP4では、残った、シリーズモード又はパラレルモードで車両要求出力(駆動側)を実現する動作点の中で、車両全体の総合効率が低いものから順に、発電制御あるいはアシスト制御させて得するかを判定し、得すると判定された場合には、当該動作点を、発電制御あるいはアシスト制御を行うように変更する(
図28参照)。
【0135】
走行パターン選択部255は、複数の要求車速パターンの各々に対して決定された各時刻のエンジン12及び第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点に基づいて、走行パターン決定部254によって決定された複数の要求車速パターンを走行した際の車両総合効率と、各要求車速パターンとなる確率を用いて、各要求車速パターンのうち、どの要求車速パターンを想定して運転制御を行うかを選択する。
【0136】
運転制御部58は、走行パターン選択部255によって選択された要求車速パターンについて、エネルギー管理部56によって決定された、各時刻のエンジン12、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点と、情報取得部50によって取得した自車両情報とに基づいて、各時刻のエンジントルク、エンジン回転数、エンジンパワーを示す指令を、エンジン制御部36へ出力し、各時刻の第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の各々のモータトルク、モータ回転数、モータパワーを示す指令を、モータ制御部38へ出力し、各時刻のクラッチ14の係合状態を示す指令を、クラッチ制御部40へ出力する(
図29参照)。
【0137】
なお、第3の実施の形態に係る車両制御装置310の他の構成及び作用については、第2の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0138】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る車両制御装置によれば、確率的な交通環境情報に応じた複数の制約パターンの各々に対して、到着地点までの要求車速パターン、及び車両要求出力パターンを算出し、エネルギー消費量を最小化するように、車両要求出力パターンに対応する各時刻のエンジン及びモータジェネレータの動作点を決定し、車両全体の総合効率を考慮して、要求車速パターンを選択することにより、様々な交通環境に応じてエネルギー消費の低減が可能となる。
【0139】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態に係る車両制御装置について説明する。なお、第1の実施の形態〜第3の実施の形態と同様の構成となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0140】
第4の実施の形態では、エンジンを備えておらず、逆反応をさせないエネルギー源として、燃料電池を備えている点が、第3の実施の形態と主に異なっている。
【0141】
図30は、本発明の第4の実施の形態に係る車両制御装置410を搭載した車両400のブロック図である。本実施の形態に係る車両400は、車両制御装置410、クラッチ14、発電機または電動機として動作する第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316、インバータ18、318、2次電池20、燃料電池420、及びデファレンシャルユニット24を含んで構成されている。
【0142】
燃料電池420で発電した電力を2次電池20に蓄えることができるように構成されている。
【0143】
クラッチ14が係合あるいは半クラッチ状態の場合は、第1モータジェネレータ16と第2モータジェネレータ316の駆動力の和として、車両400の総駆動力が決まる(2モータモード)。
【0144】
また、クラッチ14が開放している場合は、第2モータジェネレータ316の駆動力が車両400の総駆動力となる(1モータモード)。
【0145】
図31に示すように、車両制御装置410は、受信部30、センサ32、制御装置234、燃料電池制御部436、モータ制御部338、及びクラッチ制御部40を備えている。
【0146】
モータ制御部338は、制御装置34からの指令に基づいて、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316及びインバータ18、318を制御し、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の各々を電動機又は発電機として動作させるように制御する。
【0147】
クラッチ制御部40は、制御装置34からの指令に基づいて、クラッチ14の係合状態を制御し、2モータモードと1モータモードとを切り換えるように制御する。
【0148】
燃料電池制御部436は、制御装置34からの指令に基づいて、燃料電池420で発電するように制御する。
【0149】
制御装置34のエネルギー管理部56は、走行パターン決定部254によって決定された複数の要求車速パターンの各々に対し、当該車両要求出力パターンと、当該車両要求出力パターンに基づいて求められる、2次電池20に蓄積されるエネルギーの時系列データとに基づいて、エネルギー消費量を最小化するように、車両要求出力パターンに対応する各時刻の第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点、及びエネルギーフローの時系列データを決定する。
【0150】
本実施の形態では、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点として、例えば、モータトルク、モータ回転数、モータパワー、変速段数が求められる。また、エネルギーフローの時系列データとして、モータパワーの時系列データ、2次電池パワーの時系列データ、及び燃料電池パワーの時系列データが求められる。
【0151】
以下に、車両要求出力パターンに対応する各時刻の第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点を決定する原理について説明する。
【0152】
まず、本実施の形態では、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316と2次電池20と燃料電池420とを有する車両400において、出発地点から到着地点までの経路、および交通環境情報から算出された車両要求出力パターンに合わせて、車両全体の総合効率を最大化する、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点、2次電池20及び燃料電池420のエネルギーフローの時系列データを求める。
【0153】
本実施の形態では、2つの第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点は、
図32のようにそれぞれのモータ効率マップ上でトルク方向に変更する自由度があるため、2つのモータ効率を総合して最適な駆動力配分を行う。ただし、最適配分の結果、どちらか一方だけを使うべきということもある。
【0154】
具体的には、以下の手順にしたがって各時刻の第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点を決定する。
【0155】
STEP1では、各時刻において、2次電池20を使用せずに、燃料電池420からの電力だけで第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316を駆動させて車両要求出力を実現させるように、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の各時刻の動作点を決定する(
図33参照)。
【0156】
STEP2では、車両要求出力(回生側)を実現するように、車両全体の総合効率を考慮して、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の各時刻の動作点を決定して、2次電池20に蓄えられるエネルギーの総量を算出する。このとき、回生時には、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316を発電させて2次電池20に電力を蓄えるように動作点を決定する(
図33参照)。
【0157】
STEP3では、上記STEP1で求めた、2次電池20を使用しない動作点の中で車両全体の総合効率が低いものから順に、STEP2で算出された2次電池20に蓄えられたエネルギーを用いるように置き換え、第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316を駆動させるように動作点を決定する(
図34参照)。
【0158】
STEP4では、残った、2次電池20を使用しないで第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316で車両要求出力(駆動側)を実現する動作点の中で、車両全体の総合効率が低いものから順に、発電制御あるいはアシスト制御させて得するかを判定し、得すると判定された場合には、当該動作点を、発電制御あるいはアシスト制御を行うように変更する(
図35参照)。なお、本実施の形態では、発電制御では、モータ動作点を変更せずに、燃料電池420から2次電池20を直接充電させればよい。
【0159】
走行パターン選択部255は、複数の要求車速パターンの各々に対して決定された各時刻の第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点に基づいて、走行パターン決定部254によって決定された複数の要求車速パターンを走行した際の車両総合効率と、各要求車速パターンとなる確率を用いて、各要求車速パターンのうち、どの要求車速パターンを想定して運転制御を行うかを選択する。
【0160】
運転制御部58は、走行パターン選択部255によって選択された要求車速パターンについて、エネルギー管理部56によって決定された、各時刻の第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の動作点と、情報取得部50によって取得した自車両情報とに基づいて、各時刻の燃料電池420で発電するパワーを示す指令を、燃料電池制御部436へ出力し、各時刻の第1モータジェネレータ16、第2モータジェネレータ316の各々のモータトルク、モータ回転数、モータパワーを示す指令を、モータ制御部38へ出力し、各時刻のクラッチ14の係合状態を示す指令を、クラッチ制御部40へ出力する(
図36参照)。
【0161】
なお、第4の実施の形態に係る車両制御装置410の他の構成及び作用については、第3の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0162】
以上説明したように、第4の実施の形態に係る車両制御装置によれば、確率的な交通環境情報に応じた複数の制約パターンの各々に対して、到着地点までの要求車速パターン、及び車両要求出力パターンを算出し、エネルギー消費量を最小化するように、車両要求出力パターンに対応する各時刻の2つのモータジェネレータの動作点を決定し、車両全体の総合効率を考慮して、要求車速パターンを選択することにより、様々な交通環境に応じてエネルギー消費の低減が可能となる。
【0163】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態に係る車両制御装置について説明する。なお、第1の実施の形態〜第4の実施の形態と同様の構成となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0164】
第5の実施の形態では、自動運転ではなく、アクセル操作及びブレーキ操作が行われる点が、第2の実施の形態と主に異なっている。
【0165】
本実施の形態では、アクセル操作及びブレーキ操作が行われる場合(非自動運転車の場合)においても、第2の実施の形態と同様に交通環境情報やエネルギー消費を考慮して出発地点から到着地点までの車速パターンと、それに対する最適なエネルギーマネジメント方法を求める。しかし、アクセル操作量及びブレーキ操作量はドライバに依存するため、各ドライバに合わせた車速パターンおよび最適なエネルギーマネジメント方法に変更する必要がある。
【0166】
そこで、本実施の形態では、走行パターン決定部54は、車速パターン及び車両要求出力パターンを算出する際のSTEP1において、加減速に関する制約をドライバに合わせるように定める。例えば、実際のアクセル操作量及びブレーキ操作量で生成された車速パターンと、想定した車速パターンとの差分をもとに、ある走行シーンにおける加減速の制約を変更する。例えば発進のシーンで、ある回数、ある大きさ以上の車速パターンの差分があれば、発進のシーンにおける実際の車速パターンの平均を新たな加速制約とする。差分の大きさは、上記(1)式のように評価すればよい.
【0167】
また、ある走行シーンにおける実際の車速パターンのデータ(実際のアクセル操作量及びブレーキ操作量と紐付けられている)が蓄積されることで、ある走行シーンにおける車速パターンの確率分布が求められるため、この情報を用いて、想定する加減速度の異なる複数の制約パターンに対応する車速パターンを想定し、エネルギーマネジメントを行う。実際の車速パターンが確定していくため、その都度、想定する車速パターンを選択する。
【0168】
このとき、交通環境情報に加えて、アクセル操作量及びブレーキ操作量も確率的な情報として扱えばよい。アクセル操作及びブレーキ操作に依存した不確かな時間Δt
abの確率分布を
図37のように導出すれば、上記第2の実施の形態で説明した、信号機が青信号のまま通過できる確率は、t
i+Δt
n+Δt
j+Δt
ab<t
sを満たす確率で置き換えられる。
【0169】
本実施の形態では、変速機22として、自動変速機(Automatic Transmission:AT)を想定しているが、手動変速機(Manual Transmission:MT)を想定してもよい。手動変速機とは、運転者が、自己の判断でクラッチペダル(図示省略)及びシフトレバー(図示省略)を操作することにより、変速比を切り替える変速機である。
【0170】
なお、第5の実施の形態に係る車両制御装置の他の構成及び作用については、第2の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0171】
このように、アクセル操作及びブレーキ操作が行われる場合であっても、様々な交通環境に応じてエネルギー消費の低減が可能となる。
【0172】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0173】
例えば、上記の実施の形態においては、エネルギー蓄積装置として、2次電池を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。エネルギー蓄積装置として、キャパシタ、アキュムレータ、フライホイールなどを用いてもよい。
【0174】
また、上記第4の実施の形態において、燃料電池を設けずに電気自動車として構成するようにしてもよい。