(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332274
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】樹脂積層板
(51)【国際特許分類】
B32B 3/26 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
B32B3/26 A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-534216(P2015-534216)
(86)(22)【出願日】2014年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2014072236
(87)【国際公開番号】WO2015029971
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-181279(P2013-181279)
(32)【優先日】2013年9月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】石井 健二
(72)【発明者】
【氏名】丹治 忠敏
【審査官】
伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−010273(JP,A)
【文献】
特開平08−252863(JP,A)
【文献】
特開2000−085039(JP,A)
【文献】
特開2011−136664(JP,A)
【文献】
特開2011−136523(JP,A)
【文献】
特開2013−010274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 53/00−53/84
B60R 13/01−13/02
B62D 17/00−25/08,
25/14−25/22
B65D 1/00− 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を隔てて重ねた表面側シートと裏面側シートとを備え、
前記裏面側シートを前記中空部内に凹ませて多数の凹状リブを設け、これら多数の凹状リブの底を前記表面側シートに溶着することで、前記表面側シートと前記裏面側シートを多数の凹状リブで連結してなる樹脂積層板であって、
前記表面側シートは、平坦面で構成される表面側平坦領域と、前記中空部とは反対側に突出する表面側凸領域とを備え、
前記裏面側シートは、平坦面で構成される裏面側平坦領域と、前記中空部内に凹む裏面側凹領域とを備え、
前記表面側凸領域と前記裏面側凹領域は、互いに対向した位置に設けられ、
前記表面側凸領域と、前記表面側平坦領域には、少なくとも1つずつ前記凹状リブが設けられ、
前記裏面側凹領域と前記裏面側平坦領域の間の境界は、前記凹状リブと前記凹状リブの間を縫うように設けられ、
前記表面側凸領域と前記表面側平坦領域の間の境界と前記裏面側凹領域と前記裏面側平坦領域の境界の形状が異なっている、樹脂積層板。
【請求項2】
前記表面側凸領域の高さは、前記裏面側凹領域の深さと実質的に等しい、請求項1に記載の樹脂積層板。
【請求項3】
前記表面側凸領域は、前記裏面側凹領域に収まる形状を有する、請求項1又は請求項2の何れか1つに記載の樹脂積層板。
【請求項4】
前記多数の凹状リブは、隣接する3つの前記凹状リブの中心を結ぶ線が実質的に正三角形となるように配置される、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の樹脂積層板。
【請求項5】
前記裏面側凹領域に設けられた前記凹状リブと前記裏面側平坦領域に設けられた前記凹状リブを含む隣接する3つの凹状リブの中心を結ぶ線が、実質的に正三角形となるように配置される、請求項4に記載の樹脂積層板。
【請求項6】
前記裏面側凹領域と前記裏面側平坦領域の間の境界線は、前記裏面側凹領域に設けられた前記凹状リブと、前記裏面側平坦領域に設けられた前記凹状リブの間に設けられる、請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の樹脂積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の内装材や建材、物流・包装材として、いわゆる樹脂積層板が採用されている。樹脂積層板は、樹脂製の表面材と樹脂製の裏面材とを有し、裏面材には先端部が表面材の内面に突き合わされる凹状リブが設けられる。この樹脂積層板の製造方法には、従来から種々の方法が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、以下の方法が開示されている。
すなわち、一方の分割型のキャビティに対して、他方の分割型に向けて突起する複数の突起部を設けた分割形式の金型を用い、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シート素材を一対の分割型の間に位置決めする。そして、一方のシート素材と一方の分割型のキャビティとの間に密閉空間を形成した後、一方の分割型の側から密閉空間を吸引する。この吸引作用により、複数の突起部で複数の凹状リブをシート素材に成形し、一対の分割型を型締めすることで、凹状リブの底を他方のシート素材に溶着し、複数のリブで補強された中空構造の樹脂積層板を得る。
【0004】
このような製造技術を用いれば、2枚のシート素材それぞれの厚みを最大限に薄くすることができ、これにより製造効率及び製品品質を確保しつつ、軽量化、薄肉化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−10273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、表面側シートの表面が平坦である樹脂積層板が想定されており、裏面側シートに段差を設けて、樹脂積層板に厚板部と薄板部が形成されるようにしている。そして、裏面側シートを表面側シートに向かって凹ませた凹状リブは、厚板部での深さが薄板部での深さよりも深くなっている。
【0007】
ところで、
図6に示すように、樹脂積層板1の表面側シート3に凸領域3aと平坦領域3bとを設ける場合がある。このような場合、特許文献1と同様の方法で裏面側シート5を表面側シート3に向かって凹ませた凹状リブ7aは、凸領域3aでの深さが平坦領域3bでの深さよりも深くなってしまい、このために、凸領域3aに形成される凹状リブ7aの肉厚が、平坦領域3bに形成される凹状リブ7bの肉厚よりも薄くなってしまう。このように、凹状リブ7aと凹状リブ7bの肉厚が異なると、最薄部でのピンホールの発生を防ぐために全体の厚さを厚くせざるを得ず、樹脂積層板の重量増大に繋がる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂積層板の表面側シートに凸領域と平坦領域が存在する場合でも、裏面側シートに設けられる凹状リブの深さを均一化することができる樹脂積層板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、中空部を隔てて重ねた表面側シートと裏面側シートとを備え、前記裏面側シートを前記中空部内に凹ませて多数の凹状リブを設け、これら多数の凹状リブの底を前記表面側シートに溶着することで、前記表面側シートと前記裏面側シートを多数の凹状リブで連結してなる樹脂積層板であって、前記表面側シートは、平坦面で構成される表面側平坦領域と、前記中空部とは反対側に突出する表面側凸領域とを備え、前記裏面側シートは、平坦面で構成される裏面側平坦領域と、前記中空部内に凹む裏面側凹領域とを備え、前記表面側凸領域と前記裏面側凹領域は、互いに対向した位置に設けられ、前記表面側凸領域と、前記表面側平坦領域には、少なくとも1つずつ前記凹状リブが設けられる、樹脂積層板が提供される。
【0010】
本発明者は、前述の目的を達成するために、種々検討を重ねてきた。その結果、表面側シートの凸領域に対向するように、裏面側シートに凹領域を設けることを思いついた。そして、この位置に凹領域を設けることによって、表面側シートの凸領域での凹状リブの深さと、表面側シートの平坦領域での凹状リブの深さの差を低減することができ、本発明の完成に到った。また、凹状リブの深さを均一化することにより、凹状リブの肉厚が均一化される。そして、凹状リブの肉厚が均一化されると、裏面側シートを薄くしてもピンホールが発生しにくくなるので、裏面側シートの薄肉化、すなわち軽量化が可能になる。
【0011】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記表面側凸領域の高さ方向の長さは、前記裏面側凹領域の深さ方向の長さと実質的に等しい。
好ましくは、前記表面側凸領域は、前記裏面側凹領域に収まる形状を有する。
好ましくは、前記多数の凹状リブは、隣接する3つの前記凹状リブの中心を結ぶ線が実質的に正三角形となるように配置される。
好ましくは、前記裏面側凹領域と前記裏面側平坦領域の間の境界では、前記隣接する3つの前記凹状リブは、前記裏面側凹領域に設けられた前記凹状リブと、前記裏面側平坦領域に設けられた前記凹状リブを含む。
好ましくは、前記裏面側凹領域と前記裏面側平坦領域の間の境界線は、前記裏面側凹領域に設けられた前記凹状リブと、前記裏面側平坦領域に設けられた前記凹状リブの間に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態の樹脂積層板1の構成を示し、(a)は、表面側シート3側から見た平面図、(c)は、裏面側シート5側から見た底面図、(b)は、(c)中のA−A断面図である。
【
図2】(a)〜(b)は、
図1(b)に対応する断面図であり、(a)は、
図1の樹脂積層板1を上下に2つ並べて配置した状態を示し、(b)は、2つの樹脂積層板1を積み重ねた状態を示す。
【
図3】
図1の樹脂積層板1の製造工程において、溶融樹脂シート13,14を金型11,12に密着させる工程を示す。
【
図4】
図3に続く樹脂積層板1の製造工程を示す図であり、金型の型締め後の状態を示す。
【
図5】(a)は、本発明の第2実施形態の樹脂積層板1の、
図1(b)に対応する断面図である。(b)は、(a)の樹脂積層板1を上下に2つ積み重ねた状態を示す。
【
図6】本発明の課題を説明するための参考図であり、
図1(b)に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。
1.第1実施形態
図1に示すように、本発明の第1実施形態の樹脂積層板1は、中空部2を隔てて重ねた表面側シート3と裏面側シート5とを備える。裏面側シート5には、裏面側シート5を中空部2内に凹ませることによって、多数の凹状リブ7a,7bが形成されている。各凹状リブ7a,7bの底は、表面側シート3に溶着されており、これによって、表面側シート3と裏面側シート5が多数の凹状リブ7a,7bで連結されている。表面側シート3は、平坦面で構成される表面側平坦領域3bと、中空部2とは反対側に突出する表面側凸領域3aとを備える。裏面側シート5は、平坦面で構成される裏面側平坦領域5bと、中空部2内に凹む裏面側凹領域5aとを備える。表面側凸領域3aと裏面側凹領域5aは、互いに対向した位置に設けられている。表面側凸領域3aには、多数の凹状リブ7aが形成され、表面側平坦領域3bには、多数の凹状リブ7bが形成される。
【0014】
上述したように、
図6に示すように、裏面側シート5に裏面側凹領域5aが形成されていない形態では、表面側凸領域3aに設けられた凹状リブ7aの深さが、表面側平坦領域3bに設けられた凹状リブ7bの深さよりも深くなり、その分だけ肉厚が薄くなってしまうという問題があったが、本実施形態では、表面側凸領域3aに対向するように裏面側凹領域5aが設けられるので、表面側凸領域3aにおいて凹状リブが深くなってしまうのを抑制することができる。なお、
図1に示す実施形態では、表面側凸領域3aの高さ方向の長さが、裏面側凹領域5aの深さ方向の長さと実質的に等しいので、凹状リブ7aの深さと、凹状リブ7bの深さが実質的に同一になっているが、表面側凸領域3aの高さ方向の長さと裏面側凹領域5aの深さ方向の長さは必ずしも一致している必要はなく、長さに差があってもよい。この場合、凹状リブ7aの深さと凹状リブ7bの深さは完全には同じならないが、その深さの差は、
図6に示す形態よりも小さくなるので、凹状リブの深さの均一化という本発明の効果は得られる。
【0015】
また、
図1に示す実施形態では、表面側凸領域3aは、裏面側凹領域5aに収まる形状を有する。このような形状にすることによって、
図2(a)〜(b)に示すように、複数枚の樹脂積層板1を積み重ねたときに、表面側凸領域3aが裏面側凹領域5aに入り込むことによって減容化される。また、表面側凸領域3aが裏面側凹領域5aに入り込んだ状態では、積み重ねた複数枚の樹脂積層板1が互いに水平方向にずれて、樹脂積層板1の表面に傷が形成されることが抑制される。
【0016】
次に、
図1(c)を用いて、裏面側シート5側から見た凹状リブ7a,7bの分布について説明する。凹状リブ7a,7bは、隣接する3つの凹状リブの中心を結ぶ線が実質的に正三角形となるように配置されている。具体的には、
図1(c)に示すように、裏面側凹領域5aには、多数の凹状リブ7aが設けられており、これらの凹状リブ7aは、隣接する3つの凹状リブ7aの中心を結ぶ線が正三角形Taを形成するように配置されている。また、裏面側平坦領域5bには、多数の凹状リブ7bが設けられており、これらの凹状リブ7bは、隣接する3つの凹状リブ7bの中心を結ぶ線が正三角形Tbを形成するように配置されている。
【0017】
さらに、裏面側凹領域5aと裏面側平坦領域5bの境界BBでは、凹状リブ7aと凹状リブ7bを含む隣接する3つの凹状リブの中心を結ぶ線が正三角形Tabを形成するように配置されている。このように、多数の凹状リブが裏面側凹領域5aと裏面側平坦領域5bに渡って同一ピッチで一様に配置されている。また、裏面側凹領域5aと裏面側平坦領域5bの間の境界BBは、凹状リブ7aと凹状リブ7bの間を縫うようにジグザグに設けられている。境界BBをこのように設けることによって境界BBが凹状リブに重なることを避けることができ、金型設計が容易になる。一方、表面側には凹状リブが存在していないので、表面側凸領域3aと表面側平坦領域3bの間の境界FBは、自由に設計することが可能であり、例えば、
図1(a)に示すように直線状にすることができる。このように境界BBと境界FBの形状を異ならせることによって金型設計が複雑になることを回避したことが本発明のポイントの1つである。
【0018】
次に、本実施形態の樹脂積層板1の製造方法について説明する。本実施形態の樹脂積層板1を製造するには、
図3に示すように、樹脂積層板1の形状に応じた一対の金型11,12を用意し、溶融樹脂シート(パリソン)13,14を金型11,12側から吸引することにより、溶融樹脂シート13,14を金型11,12に密着させる。
【0019】
次に、
図4に示すように、金型11,12を型締めし、溶融樹脂シート13,14で挟み込む。金型11,12には、金型11,12の内部に形成されるキャビティ15を取り囲むようにピンチオフ部11b,12bが設けられており、溶融樹脂シート13,14がピンチオフ部11b,12bによって挟まれて潰される。溶融樹脂シート13,14のうちキャビティ15の外側にある部分がバリ16となり、ピンチオフ部11b,12bによって挟まれた部分がバリ16の切り取り線となる。型締め後には、キャビティ15内にエアーの吹き込みを行っても行わなくてもよい。
【0020】
次に、金型11,12を開いて成形品を取り出し、ピンチオフ部11b,12bによって成形品に形成された切り取り線でバリ16を切断して除去する。
以上の工程で、
図1に示す樹脂積層板1が形成される。
【0021】
2.第2実施形態
次に、
図5を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の樹脂積層板1は、第1実施形態に類似しており、表面側凸領域3aと裏面側凹領域5aの構成が主に異なっているので、以下、この点を中心に説明する。
【0022】
第1実施形態では、表面側凸領域3aは、裏面側凹領域5aと実質的に同一サイズであり、
図2(b)に示すように表面側凸領域3aを裏面側凹領域5aに嵌め込んだ状態では、積み重ねた複数枚の樹脂積層板1は、水平方向にほぼ移動不能になる。一方、本実施形態では、裏面側凹領域5aが表面側凸領域3aより大きいので、表面側凸領域3aを裏面側凹領域5aに嵌め込んだ状態でも、積み重ねた複数枚の樹脂積層板1は、
図5(b)の矢印Dで示す範囲内で水平方向に相対移動可能である。本実施形態の樹脂積層板1は、積み重ねたときに水平方向の相対移動が若干許容されるので、樹脂積層板1へのすり傷形成の抑制という点での効果は第1実施形態よりも劣る場合があるが、表面側凸領域3aを裏面側凹領域5aに嵌め込み易いので、複数枚の樹脂積層板1を重ね易いという利点がある。
【0023】
また、第1実施形態では、表面側凸領域3aと裏面側凹領域5aが実質的に同じ領域を占めていたので、表面側凸領域3aに設けられる凹状リブ7aと表面側平坦領域3bに設けられる凹状リブ7bが存在していたが、本実施形態では、裏面側凹領域5aが表面側凸領域3aよりも広いので、凹状リブ7a,7bに加えて、裏面側凹領域5aと表面側平坦領域3bが重なる領域に、凹状リブ7aよりも浅い凹状リブ7cが設けられる。
【0024】
また、第1実施形態では、境界FBと境界BBは、
図1(b)に示すように、実質的に同一の傾斜角度を有しているが、本実施形態では、境界FBの傾斜角度は、境界BBよりも小さくなっている。このように、境界FBと境界BBの傾斜角度は、異なっていてもいい。また、第1及び第2実施形態では、境界FB,BBは、傾斜面になっているが、これらの境界は、樹脂積層板1の表面又は裏面に対して実質的に垂直な面であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1:樹脂積層板、2:中空部、3:表面側シート、5:裏面側シート、11,12:金型、13,14:溶融樹脂シート