特許第6332310号(P6332310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6332310-FFP解凍装置 図000002
  • 特許6332310-FFP解凍装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332310
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】FFP解凍装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20180521BHJP
   A61M 5/44 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61J3/00 300B
   A61M5/44 520
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-51557(P2016-51557)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-164221(P2017-164221A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年11月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年電気学会全国大会講演論文集第2分冊(平成28年3月5日)一般社団法人電気学会発行第149ページに発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515150069
【氏名又は名称】株式会社スカイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】飴井 賢治
(72)【発明者】
【氏名】堺 哲也
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第203829380(CN,U)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0097083(KR,A)
【文献】 特表平02−501195(JP,A)
【文献】 特開2000−058244(JP,A)
【文献】 特許第4729369(JP,B2)
【文献】 特開2009−050316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61M 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体に収容された新鮮凍結血漿(FFP:Fresh Frozen Plasma)の解凍装置であって、
前記FFPを解凍するための解凍水を収容する容器本体と、電源部とを備え、
前記容器本体は金属製の加熱部と、内部を視認できる透光部とを有し、
前記金属製の加熱部は電源部に接続された誘導加熱用コイルが巻設されており、
前記容器本体に、FFPを収容した袋体を収容でき、前記透光部から収容した前記袋体の解凍状況を視認できるようにしたことを特徴とするFFP解凍装置。
【請求項2】
前記容器本体は、下部側が金属製の加熱部であり、前記金属製の加熱部より上部側がガラス製又は樹脂製の透光部であることを特徴とする請求項1記載のFFP解凍装置。
【請求項3】
前記電源部は商用電源を用いて高周波電流を発生させるための電力変換回路を有することを特徴とする請求項1又は2記載のFFP解凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術の際に用いられる新鮮凍結血漿(FFP:Fresh Frozen Plasma)の解凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新鮮凍結血漿(以下FFPと称する)は、血液の成分である血漿を採血後に凍結し、−20℃以下で保存されたものである。
このFFPは手術の際に用いられるものであり、使用時には緊急性を有するものの成分劣化を防ぐために30〜37℃の温度で、できるだけ素早く解凍しなければならない。
これは、FFPを37℃を超える温度で解凍すると凝固因子活性が低下し、さらに50℃以上では蛋白の変性により固まりを生じてしまうからである。
その一方で解凍温度が30℃よりも近い温度になるとクリオプレシピテートが析出することがあり、凝固因子の補充効果が期待できない恐れがあるだけでなく、輸血セットの目詰まりの原因となる。
【0003】
現在市販されているものに電熱線ヒーターにて水を温め、解凍用水槽内をポンプで循環させるものがある。
このようなヒーターで温めた水をFFPを封入したFFPバックに向けて噴出させる方法では、FFPバック周辺まで到達する間に水の温度が低下し、結果として解凍するのに長い時間を要したり、ヒーターで温める温水の温度調整が難しい問題がある。
手術の際に使用されている容量480mlFFPバックを解凍するのに、本出願人がこの市販品を用いて実使用した結果、約35分間要した。
特許文献1には、恒温水槽内で振盪させる技術を開示するが加熱ヒーターを用いる点で同様の問題を有している。
【0004】
特許文献2には、FFPバックを板状の加熱ヒーターにて挟み込み揺動させる技術を開示するが、構造が複雑で解凍状況が外部から目視で判断するのが難しい問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−50316号公報
【特許文献2】特許第4729369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、FFPバックの解凍時間が短く、目視確認が容易なFFP解凍装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、袋体に収容された新鮮凍結血漿(FFP:Fresh Frozen Plasma)の解凍装置であって、前記FFPを解凍するための解凍水を収容する容器本体と、電源部とを備え、前記容器本体は金属製の加熱部と、内部を視認できる透光部とを有し、前記金属製の加熱部は電源部に接続された誘導加熱用コイルが巻設されており、前記容器本体に、FFPを収容した袋体を収容でき、前記透光部から収容した前記袋体の解凍状況を視認できるようにしたことを特徴とする。
【0008】
このように解凍水を収容する容器本体を透光部と金属製の加熱部とから形成したことにより、金属製の加熱部に誘導加熱用コイルを巻設することで、この加熱部にうず電流を発生させ、直接的に解凍水を加熱できるとともに透光部を介して目視でFFPバックの解凍状況を外部から確認できる。
【0009】
このような容器本体の態様の1つとして、前記容器本体は、下部側が金属製の加熱部であり、前記金属製の加熱部より上部側がガラス製又は樹脂製の透光部であってよい。
【0010】
誘導加熱用の電源部としては、交流電流が用いられるが、この場合に加熱部に用いる金属材料によるが10kHz〜200kHz程度の高周波が好ましい。
そこで、前記電源部は商用電源を用いて高周波電流を発生させるための電力変換回路を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るFFP解凍装置は、容器本体に金属製の加熱部と透光部とを設け、この加熱部に誘導加熱用コイルを巻設したので、構造が簡単でありながら電磁誘導によるので、効率的に解凍水を温めることができる。
これにより、従来の装置に比較して短時間でFFPを解凍できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るFFP解凍装置の構造例を示す。
図2】解凍実験データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るFFP解凍装置の構成例を以下図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0014】
図1にFFP解凍装置(以下、単に装置という。)の構成例を示す。
装置は、解凍水を収容した容器本体11と電源部14からなる。
容器本体11は、上部からFFPを封入したFFPバックを投入できるようになっており、容器本体11の下部側、高さにして約2割の範囲を金属製の加熱部12とし、この加熱部には誘導加熱用コイルが巻設されている。
加熱部12から上部側の容器は、FFPバックの解凍状況が外部から目視できる程度に透明な透光部13となっている。
材質として、透明樹脂,ガラス等が例として挙げられる。
本実施例では、加熱部をSUS材で製作し、コイルを3層巻きにした。
電源部14は、100Vの商用電源を使用する例となっている。
商用電源の50Hz又は60Hzをダイオード整流回路と平滑コンデンサにて直流電圧に変換した後に、インバータ回路(INV)にて高周波の交流電圧に変換する例となっている。
【0015】
次に、480ml容量のバックを用いて解凍実験した結果について説明する。
290.9μHのイングクタンスのコイルに励磁周波数20kHzを印加した。
なお、解凍水は撹拌した。
その時間経過と各測定温度の変化を図2のグラフに示す。
このグラフに示したバックの内部の温度変化〇で囲んだ1〜4に着目すると、約17分で解凍が完了している。
このことから、従来の約半分の時間で解凍できたことになる。
よって、本発明に係るFFP解凍装置は、実用的である。
【0016】
本発明において、容器本体に金属製の加熱部と透光部とを形成する手段に制限がない。
例えば、金属製の容器本体の一部を切り抜き、透明部材で塞ぐ方法がある。
また、透明なフランジ付き容器部と金属製のフランジ付き加熱部とをそれぞれ別々に製作し、それぞれに設けたフランジ部同士をパッキン等を介してクランプ連結し、容器本体とする構造例も考えられる。
このようにすると、クランプを外すだけで分離でき、洗浄が容易になる。
あるいは、金属製の加熱部に透明な容器部を螺着連結する方法も考えられる。
【符号の説明】
【0017】
11 容器本体
12 加熱部
13 透光部
14 電源部
20 解凍水
図1
図2