(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透過部材において、前記キャップに接合される領域である接合領域の面積は、前記第1の面または第2の面のうち前記接合領域を有する側の面の面積の60%以上である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光モジュール。
前記透過部材において、前記キャップに接合される領域である接合領域の面積は、前記第1の面または第2の面のうち前記接合領域を有する側の面の面積の80%以下である、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の光モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。本願の光モジュールは、光半導体素子を含む本体部と、本体部を取り囲む保護部材と、を備える。保護部材は、ベース部と、キャップと、透過部材とを含む。ベース部は本体部を支持する。キャップは貫通穴を有し、本体部を覆い、ベース部に接合される。透過部材は貫通穴を覆うようにキャップに固定され、光半導体素子に対応する波長の光を透過する材料からなる。
【0010】
透過部材は、光が入射または出射する第1の面および第2の面を有する。光モジュールの光軸と垂直に交わる平面に投影した透過部材の投影像の重心で互いに直交する第1の軸および第2の軸を設定し、第1の軸に対応する第1の面上の測地線を第1の測地線とし、第2の軸に対応する第1の面上の測地線を第2の測地線とし、重心に対応する第1の面上の点を中心点とした場合において、透過部材がキャップから取り外された状態における第1の面内の一の点の高さを0とし、光モジュールの外部に向かう側を正としたときの、透過部材がキャップに固定された状態における上記一の点の光軸方向の高さである変位量の、中心点における値と、重心から所定の距離離れた上記投影像上の点である参照点に対応する第1の面上の点である基準点における値との差である反り量が、第1の測地線上の値と第2の測地線上の値とで異なる。透過部材は、第1の面または第2の面においてキャップと接合される。
【0011】
上記のような光モジュールにおいては、本体部が保護部材内に格納されるように、保護部材を構成するベース部とキャップとが接合される。このとき、キャップは元の形状から幾分変形した状態でベース部材上に接合される。キャップの変形による歪みにより、キャップに固定された透過部材にも歪みが生じる。
【0012】
本発明者らの検討によれば、透過部材内の歪みが不均一な場合に透過部材は割れやすいことが判明した。しかしながら透過部材の歪みを均一にするにはキャップの形状に制限が生じる。また透過部材が固定されるキャップの貫通穴を形成する位置も限定される。その結果、光モジュールの設計の自由度が損なわれる。光モジュールの設計の自由度を維持するためには、透過部材に生じる歪みが不均一であっても透過部材が割れないことが好ましい。その課題を解決すべく本発明者らが検討した結果、透過部材の歪みが不均一であっても適切な位置でキャップに対して接合することにより、透過部材の割れが抑制されることがわかった。
【0013】
本願の光モジュールにおいて、透過部材は光が入射または出射する第1の面および第2の面を有する。光モジュールの光軸と垂直に交わる平面に投影した透過部材の投影像の重心で互いに直交する第1の軸および第2の軸を設定し、第1の軸に対応する第1の面上の測地線を第1の測地線とし、第2の軸に対応する第1の面上の測地線を第2の測地線とし、重心に対応する第1の面上の点を中心点とした場合において、第1の測地線上の反り量と第2の測地線上の反り量とが異なる。すなわち、透過部材は非同心円状の不均一な状態に歪んでいる。
【0014】
本願の光モジュールにおいて、透過部材は第1の面または第2の面においてキャップと接合されている。これにより、透過部材は不均一な歪みを有しているにも関わらず、透過部材の割れが抑制される。
【0015】
透過部材を構成する材料はガラスであってもよい。透過部材がガラスからなることにより、高い耐久性と気密性(シール性)を有する透過部材を得ることができる。
【0016】
キャップは、ベース部材に接合される領域を含む側面と、側面のベース部に接合される領域とは反対側に接続される頂面とを有していてもよい。また貫通穴は、その側面に形成されていてもよい。このような形状のキャップの側面に貫通穴が形成されている場合、透過部材の歪みが不均一になりやすい。このような構造のキャップを有する場合に本願の光モジュールは好適である。
【0017】
キャップは一の面において開口する中空直方体状の形状を有していてもよい。このような形状のキャップは、光モジュールを小型化するのに好適である。
【0018】
上記重心から半径300μm以内の投影像上の領域に対応する第1の面の領域内における反り量の最大値は0.03μm以上0.15μm以下であってもよい。反り量の最大値がこの範囲内であれば、透過部材の割れをより確実に抑制することができる。
【0019】
本願の光モジュールにおいては、第1の測地線上の反り量および第2の測地線上の反り量はいずれも正の値であるか、またはいずれも負の値であってもよい。この状態は、透過部材が一様に凸状または凹状の状態であることを意味する。このような状態であれば、透過部材の割れをより確実に抑制することができる。
【0020】
本願の光モジュールにおいては、第1の測地線上の反り量および第2の測地線上の反り量のうちいずれか一方は正の値であり、他方は負の値であってもよい。この状態においては、透過部材が例えば鞍型に歪んでいる。このような状態にすることにより、光モジュールの気密性(シール性)を高めることができる。
【0021】
透過部材は、キャップに対して低融点ガラスを介して接合されていてもよい。低融点ガラスにより接合することで、透過部材をキャップに対して容易に固定することができ、併せて気密性(シール性)を確保することができる。
【0022】
透過部材において、キャップに接合される領域である接合領域の面積は、第1の面または第2の面のうち接合領域を有する側の面の面積の60%以上であってもよい。上記接合面の面積の比率が上記数値以上であれば、透過部材の割れをより確実に抑制することができる。
【0023】
透過部材において、キャップに接合される領域である接合領域の面積は、第1の面または第2の面のうち接合領域を有する側の面の面積の80%以下であってもよい。上記接合面の面積の比率が上記数値以下であれば、キャップ内の光が通過すべき領域を充分に確保することができる。
【0024】
上記光モジュールにおいて、上記光半導体素子はレーザダイオードであってもよい。このようにすることにより、波長のばらつきの少ない出射光を得ることができる。
【0025】
[本願発明の実施形態の詳細]
次に、本発明にかかる光モジュールの一実施の形態を、
図1〜
図3を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態における光モジュール1の構造を示す概略斜視図である。
図2は、
図1のキャップ40を取り外した状態に対応する図である。
図3は、
図2に対応する概略平面図である。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0026】
図1および
図2を参照して、本実施の形態における光モジュール1は、光半導体素子としてのレーザダイオード81,82,83を含む本体部20と、本体部20を取り囲む保護部材とを備える。保護部材は、ベース部としてのステム10と、キャップ40と、透過部材41から構成される。ベース部としてのステム10は平板状の形状を有し、本体部20を支持する。キャップ40は貫通穴55を有する。またキャップ40は本体部20を覆い、ステム10に接合される。キャップ40は、ステム10に接合される領域を含む側面40B,40Cと、側面40B,40Cのステム10に接合される領域とは反対側に接続される頂面40Aとを有する。貫通穴55はキャップ40の側面40Bに形成されている。キャップ40は、ステム10に接合される側の面において開口する中空直方体状の形状を有している。光モジュール1は、ステム10の他方の主面10B側から一方の主面10A側まで貫通し、一方の主面10A側および他方の主面10B側の両側に突出する複数のリードピン51をさらに備えている。ステム10とキャップ40とは、たとえば溶接されることにより気密状態とされている。すなわち、本体部20は、ステム10とキャップ40とによりハーメチックシールされている。ステム10とキャップ40とにより取り囲まれる空間には、たとえば乾燥空気などの水分が低減(除去)された気体が封入されている。
【0027】
キャップ40には、貫通穴55を覆うように透過部材41が固定されている。透過部材41は、光半導体素子に対応する波長の光(レーザダイオード81,82,83から出射される光)を透過する材料からなる。本実施の形態においては、光半導体素子に対応する波長の光を透過する材料はガラスである。透過部材41は主面が互いに平行な平板状の形状を有していてもよいし、本体部20からの光を集光または拡散させるレンズ形状を有していてもよい。
【0028】
図2および
図3を参照して、本体部20は、板状の形状を有する基板60を含む。基板60は、平面的に見て長方形形状を有する一方の主面60Aを有している。基板60は、ベース領域61と、チップ搭載領域62とを含んでいる。チップ搭載領域62は、一方の主面60Aの一の短辺と、当該短辺に接続された一の長辺を含む領域に形成されている。チップ搭載領域62の厚みは、ベース領域61に比べて大きくなっている。その結果、ベース領域61に比べて、チップ搭載領域62の高さが高くなっている。チップ搭載領域62において上記一の短辺の上記一の長辺に接続される側とは反対側の領域に、隣接する領域に比べて厚みの大きい(高さが高い)領域である第1チップ搭載領域63が形成されている。チップ搭載領域62において上記一の長辺の上記一の短辺に接続される側とは反対側の領域に、隣接する領域に比べて厚みの大きい(高さが高い)領域である第2チップ搭載領域64が形成されている。
【0029】
第1チップ搭載領域63上には、平板状の第1サブマウント71が配置されている。そして、第1サブマウント71上に、第1光半導体素子としての赤色レーザダイオード81が配置されている。一方、第2チップ搭載領域64上には、平板状の第2サブマウント72および第3サブマウント73が配置されている。第2サブマウント72から見て、上記一の長辺と上記一の短辺との接続部とは反対側に、第3サブマウント73が配置される。そして、第2サブマウント72上には、第2光半導体素子としての緑色レーザダイオード82が配置されている。また、第3サブマウント73上には、第3光半導体素子としての青色レーザダイオード83が配置されている。赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の光軸の高さ(基板60の一方の主面60Aを基準面とした場合の基準面と光軸との距離;Z軸方向における基準面との距離)は、第1サブマウント71、第2サブマウント72および第3サブマウント73により調整されて一致している。
【0030】
光モジュール1は、ステム10と本体部20との間に、電子冷却モジュール30を含んでいる。電子冷却モジュール30は、吸熱板31と、放熱板32と、電極を挟んで吸熱板31と放熱板32との間に並べて配置される半導体柱33とを含む。吸熱板31および放熱板32は、たとえばアルミナからなっている。吸熱板31が基板60の他方の主面60Bに接触して配置される。放熱板32は、ステム10の一方の主面10Aに接触して配置される。本実施の形態において、電子冷却モジュール30はペルチェモジュール(ペルチェ素子)である。そして、電子冷却モジュール30に電流を流すことにより、吸熱板31に接触する基板60の熱がステム10へと移動し、基板60が冷却される。その結果、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の温度上昇が抑制される。これにより、たとえば自動車に搭載される場合など、温度が高くなる環境下においても光モジュール1を使用することが可能となる。また、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の温度を適正な範囲に維持することで、所望の色の光を精度よく形成することが可能となる。
【0031】
基板60のベース領域61上には、第1レンズ保持部77、第2レンズ保持部78および第3レンズ保持部79が形成されている。そして、第1レンズ保持部77、第2レンズ保持部78および第3レンズ保持部79上には、それぞれ第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93が配置されている。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、それぞれたとえば樹脂硬化型接着剤により接着されて第1レンズ保持部77、第2レンズ保持部78および第3レンズ保持部79に対して固定されている。
【0032】
第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、表面がレンズ面となっているレンズ部91A,92A,93Aを有している。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、レンズ部91A,92A,93Aとレンズ部91A,92A,93A以外の領域とが一体成型されている。第1レンズ保持部77、第2レンズ保持部78および第3レンズ保持部79により、第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93のレンズ部91A,92A,93Aの中心軸、すなわちレンズ部91A,92A,93Aの光軸は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の光軸に一致するように調整されている。第1レンズ91、第2レンズ92および第3レンズ93は、それぞれ赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射される光のスポットサイズを変換する。
【0033】
ベース板60のベース領域61上には、第1フィルタ97と第2フィルタ98とが配置される。第1フィルタ97および第2フィルタ98は、たとえば樹脂硬化型接着剤により接着されてベース領域61に対して固定されている。第1フィルタ97および第2フィルタ98は、それぞれ互いに平行な主面を有する平板状の形状を有している。第1フィルタ97および第2フィルタ98は、たとえば波長選択性フィルタである。第1フィルタ97および第2フィルタ98は、誘電体多層膜フィルタである。より具体的には、第1フィルタ97は、赤色の光を透過し、緑色の光を反射する。第2フィルタ98は、赤色の光および緑色の光を透過し、青色の光を反射する。このように、第1フィルタ97および第2フィルタ98は、特定の波長の光を選択的に透過および反射する。その結果、第1フィルタ97および第2フィルタ98は、赤色レーザダイオード81、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83から出射された光を合波する。第1フィルタ97および第2フィルタ98は、それぞれベース領域61上に形成された凸部である第1突出領域88および第2突出領域89上に配置される。
【0034】
図3を参照して、赤色レーザダイオード81、第1レンズ91のレンズ部91A、第1フィルタ97および第2フィルタ98は、赤色レーザダイオード81の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(X軸方向に並んで)配置されている。緑色レーザダイオード82、第2レンズ92のレンズ部92Aおよび第1フィルタ97は、緑色レーザダイオード82の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。青色レーザダイオード83、第3レンズ93のレンズ部93Aおよび第2フィルタ98は、青色レーザダイオード83の光の出射方向に沿う一直線上に並んで(Y軸方向に並んで)配置されている。すなわち、赤色レーザダイオード81の出射方向と、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の出射方向とは交差する。より具体的には、赤色レーザダイオード81の出射方向と、緑色レーザダイオード82および青色レーザダイオード83の出射方向とは直交する。緑色レーザダイオード82の出射方向は、青色レーザダイオード83の出射方向に沿った方向である。より具体的には、緑色レーザダイオード82の出射方向と青色レーザダイオード83の出射方向とは平行である。第1フィルタ97および第2フィルタ98の主面は、赤色レーザダイオード81の光の出射方向に対して傾斜している。より具体的には、第1フィルタ97および第2フィルタ98の主面は、赤色レーザダイオード81の光の出射方向(X軸方向)に対して45°傾斜している。
【0035】
次に、本実施の形態における光モジュール1の動作について説明する。
図3を参照して、赤色レーザダイオード81から出射された赤色の光は、光路L
1に沿って進行して第1レンズ91のレンズ部91Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば赤色レーザダイオード81から出射された赤色の光がコリメート光に変換される。第1レンズ91においてスポットサイズが変換された赤色の光は、光路L
1に沿って進行し、第1フィルタ97に入射する。第1フィルタ97は赤色の光を透過するため、赤色レーザダイオード81から出射された光は光路L
2に沿ってさらに進行し、第2フィルタ98に入射する。そして、第2フィルタ98は赤色の光を透過するため、赤色レーザダイオード81から出射された光は光路L
3に沿ってさらに進行し、キャップ40の透過部材41を通って光モジュール1の外部へと出射する。
【0036】
緑色レーザダイオード82から出射された緑色の光は、光路L
4に沿って進行して第2レンズ92のレンズ部92Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば緑色レーザダイオード82から出射された緑色の光がコリメート光に変換される。第2レンズ92においてスポットサイズが変換された緑色の光は、光路L
4に沿って進行し、第1フィルタ97に入射する。第1フィルタ97は緑色の光を反射するため、緑色レーザダイオード82から出射された光は光路L
2に合流する。その結果、緑色の光は赤色の光と合波され、光路L
2に沿って進行し、第2フィルタ98に入射する。そして、第2フィルタ98は緑色の光を透過するため、緑色レーザダイオード82から出射された光は光路L
3に沿ってさらに進行し、キャップ40の透過部材41を通って光モジュール1の外部へと出射する。
【0037】
青色レーザダイオード83から出射された青色の光は、光路L
5に沿って進行して第3レンズ93のレンズ部93Aに入射し、光のスポットサイズが変換される。具体的には、たとえば青色レーザダイオード83から出射された青色の光がコリメート光に変換される。第3レンズ93においてスポットサイズが変換された青色の光は、光路L
5に沿って進行し、第2フィルタ98に入射する。第2フィルタ98は青色の光を反射するため、青色レーザダイオード83から出射された光は光路L
3に合流する。その結果、青色の光は赤色の光および緑色の光と合波され、光路L
3に沿って進行し、キャップ40の透過部材41を通って光モジュール1の外部へと出射する。
【0038】
[キャップ40および透過部材41の構造]
次に
図4および
図5を参照して、キャップ40および透過部材41の構造について説明する。
図4は、側面40B側から平面視したキャップ40の構造を示す概略平面図である。
図5は、
図4の線分V−Vに沿う断面を矢印の向きに見た状態に対応する概略断面図である。
図4および
図5を参照して、キャップ40は側面40B内に貫通穴55を有する。透過部材41は、その貫通穴55を覆うようにキャップ40に対して低融点ガラス42を介して固定されている。透過部材41は、レーザダイオード81,82,83からの光が入射する第2の面41Bと、第2の面41Bに入射した光が光モジュール1の外部へ出射する第1の面41Aとを有する。透過部材41の第2の面41Bはキャップ40と接合される。ベース部としてのステム10と接合されることによりキャップ40は当初の形状に対して変形している。そのキャップ40の変形に伴い、透過部材41に歪みや反りが生じている。
【0039】
透過部材41において、キャップ40に接合される領域である接合領域の面積は、接合領域を有する第2の面41Bの面積の60%以上である。また上記接合領域の面積は、接合領域を有する第2の面41Bの面積の80%以下である。透過部材41の耐久性確保の観点から、上記接合領域の面積は、接合領域を有する第2の面41Bの面積の70%以上が好ましい。また出射光の通過領域確保の観点から、上記接合領域の面積は、接合領域を有する第2の面41Bの面積の75%以下が好ましい。
【0040】
次に
図6および
図7を参照して、光モジュール1の光軸と垂直に交わる平面に投影した透過部材41の投影像(正射影)100の重心Gと、第1の軸102と、第2の軸104と、中心点Cと、第1の測地線106と、第2の測地線108とについて説明する。
図6は透過部材41の投影像100を示す図である。
図7は透過部材41の第1の面41Aを示す模式図である。
図6には光モジュール1の光軸と垂直に交わる平面に投影した透過部材41の投影像100の重心Gが示されている。重心Gは
図7に示す中心点Cを光モジュール1の光軸と垂直に交わる平面に投影した投影像100上の点に相当する。すなわち、中心点Cは重心Gに対応する第1の面41A上の点である。
【0041】
第1の軸102と第2の軸104とは重心Gで互いに直交する。第1の軸102は、第1の面41A上の第1の測地線106を光モジュール1の光軸と垂直に交わる平面に投影した投影像100上の直線に相当する。すなわち、第1の測地線106は、第1の軸102に対応する。また第2の軸104は、第1の面41A上の第2の測地線108を光モジュール1の光軸と垂直に交わる平面に投影した投影像100上の直線に相当する。すなわち、第2の測地線108は、第2の軸104に対応する。
【0042】
ここで「測地線」とは、曲面上の任意の2点を結ぶ最短距離を与える曲線をいう。主面が互いに平行な平板状の形状を透過部材41が有している場合、その主面における測地線106および108は直線となる。このとき、第1の測地線106と第1の軸102とは一致する。また第2の測地線108と第2の軸104とは一致する。また
図7のように、表面に曲面形状の第1の面41Aを透過部材41が有する場合、第1の測地線106および第2の測地線108は曲線状になる。また第1の測地線106と第2の測地線108とは第1の面41A上の中心点Cにおいて交差する。
【0043】
次に
図6および
図7を参照して、参照点R1、R2および基準点S1、S2について説明する。
図6および
図7を参照して、参照点とは、光モジュール1の光軸と垂直に交わる平面に投影した透過部材41の投影像100上の、その投影像100の重心Gから所定の距離D離れた位置にある点である。
図6および
図7においては、第1の軸102上に存在する参照点を参照点R1として示している。また第2の軸104上に存在する参照点を参照点R2として示している。参照点R1は、第1の面41A上の基準点S1を光モジュール1の光軸と垂直に交わる平面に投影した投影像100上の点に相当する。すなわち、基準点S1は参照点R1に対応する。また参照点R2は、第1の面41A上の基準点S2を光モジュール1の光軸と垂直に交わる平面に投影した投影像100上の点に相当する。すなわち、基準点S2は参照点R2に対応する。
【0044】
[変位量および反り量について]
次に、
図8を参照して変位量および反り量について説明する。変位量とは、透過部材41がキャップ40から取り外された状態における第1の面41A内の一の点の高さを0とし、光モジュール1の外部に向かう側を正としたときの、透過部材41がキャップ40に固定された状態における上記一の点の光軸方向の高さである。
図8を参照して変位量を具体的に説明する。実線で表される状態Aは、透過部材41がキャップ40に固定された状態を示す。状態B(破線)で表される状態Bは、透過部材41がキャップ40から取り外された状態を示す。
【0045】
図8を参照して、基準点S1
Aは状態Aにおける透過部材41の第1の面41A上にある、参照点R1に対応する点である。基準点S1
Bは状態Bにおける透過部材41の第1の面41A上にある、参照点R1に対応する点である。中心点C
Aは状態Aにおける透過部材41の第1の面41A上にある、重心Gに対応する点である。中心点C
Bは状態Bにおける透過部材41の第1の面41A上にある、重心Gに対応する点である。光軸Lは光モジュール1の光軸である。
図8においては、上記状態Aにおける第1の面41A
1と、上記状態Bにおける第1の面41A
2とが示されている。さらに上記状態Aにおける第2の面41B
1と、上記状態Bにおける第2の面41B
2とが示されている。
【0046】
本実施の形態において、変位量とは、透過部材41がキャップ40から取り外された状態における第1の面41A内の一の点の高さを0とし、光モジュール1の外部に向かう側を正としたときの、透過部材41がキャップ40に固定された状態における上記一の点の光軸Lの方向の高さである。
図8において、中心点Cにおける変位量の値は、透過部材41がキャップ40から取り外された状態Bにおける中心点C
Bの高さを0としたときの、透過部材41がキャップ40に固定された状態Aにおける中心点C
Aの高さΔd
cとして表される。また基準点S1における変位量の値は、上記状態Bにおける基準点S1
Bの高さを0としたときの、上記状態Aにおける基準点S1
Aの高さΔd
S1として表される。また反り量は、中心点Cにおける変位量の値Δd
cと、基準点S1における変位量の値Δd
S1との差Wとして表される。
【0047】
実際には、変位量および反り量は次のような手順にしたがって測定することができる。まず
図5に示すような透過部材41がキャップ40に固定された状態Aで透過部材41の表面形状を観察し、第1の面41A
1の所定の領域内の各点の高さを測定する。透過部材41の表面形状の観察および高さの測定には3次元光学プロファイラを用いることができる。測定後、光モジュール1の光軸方向から平面視した平面形状の重心Gに対応する第1の面41A
1上の点Cが識別できるように、一時的な印を付しておいてもよい。
【0048】
次に、上述した物理的な方法または熱的な方法などの離脱手段により、透過部材41をキャップ40から離脱させる。透過部材41は、キャップ40から離脱させることが可能である。
図9は、
図5の構造において透過部材41を離脱させた状態を示す概略断面図である。透過部材41は低融点ガラスの一部を破壊して離脱させるなどの物理的な方法で離脱させてもよい。あるいは低融点ガラスが融解するが透過部材41は変形しない程度の温度まで加熱して透過部材41を離脱させるなどの熱的な方法で離脱させてもよい。
【0049】
図8に示すように、透過部材41をキャップ40から離脱させた状態Bにおいて上記同様に第1の面41A
2の所定の領域内の各点の高さを求める。その後、上記状態Bにおける第1の面41A内の一の点の高さを0としたときの、上記状態Aにおける上記一の点の光軸Lの方向の高さである変位量を算出する。
【0050】
ここで透過部材が平板の場合、透過部材41をキャップ40から離脱させた状態Bにおける高さの測定は省略することもできる。透過部材41をキャップ40から離脱させた状態Bでの高さは第1の面41Aの全面においてゼロとみなすことができる。したがって状態Bでの高さ計測を省略し、キャップ40に接合された状態Aでの表面形状の観察および高さの測定の結果から、直接反り量を算出することもできる。
【0051】
なお上記所定の領域は、たとえば光モジュール1の光軸Lと垂直に交わる平面に投影した透過部材41の投影像100の重心Gから半径300μm以内の、投影像100上の領域に対応する第1の面41Aの領域内と設定することができる。
【0052】
上記重心Gから半径300μm以内の、投影像100上の領域に対応する第1の面41Aの領域内における反り量の最大値は、たとえば0.03μm以上0.15μm以下である。この反り量の最大値を有する測地線を第1の測地線106と設定してもよい。反り量は、第1の測地線106と第2の測地線108とで異なる。これは、透過部材41の歪みが不均一(非同心円状)であることを意味する。上記反り量の最大値は、気密性(シール性)向上の観点から、0.05μm以上が好ましい。また上記反り量の最大値は、透過部材41の割れ抑制の観点から、0.13μm以下が好ましい。
【0053】
図10は、3次元光学プロファイラによる透過部材41の表面形状の測定結果の一例を示した図である。
図10においては、透過部材41を光モジュール1の光軸Lと垂直に交わる平面に投影した透過部材41の投影像100上に等高線121および123が示されている。点Gは投影像100上の重心である。さらに
図10には第1の測地線106に対応する第1の軸102と、第2の測地線108に対応する第2の軸104が示されている。
図10においては、等高線121を境界として半径方向外側に、高さが負である領域120が示されている。領域120から半径方向内側に重心Gに向かって領域122、領域124の順に上記高さが高くなっている。
【0054】
図11は、透過部材41の第1の測地線上の高さの測定結果を示すチャートである。第1の測地線106に沿って透過部材41の第1の面41Aの高さを連続的に計測すると、
図11に示すような連続した曲線が得られる。この曲線は、透過部材41を第1の測地線106に沿って切断した断面図における第1の面41Aの表面形状に相当する。また
図12は透過部材41の第2の測地線108上の高さの測定結果を示すチャートである。第2の測地線108に沿って透過部材41の第1の面41Aの高さを連続的に計測すると、
図12に示すような連続した曲線が得られる。この曲線は、透過部材41を第2の測地線108に沿って切断した断面図における第1の面41Aの表面形状に相当する。なお
図11および
図12の縦軸は、光軸方向Lに沿って光モジュール1の外部に向かう側が正である。
図11および
図12において反り量は、光モジュール1の光軸Lと垂直に交わる平面に投影した透過部材41の投影像の重心Gに対応する第1の面41A上の中心点Cと、重心Gから例えば半径300μm離れた投影像上の地点(例えば参照点R1)に対応する第1の面41A上の点(例えば基準点S1)の、高さの差から求めることができる。また反り量は、
図11および
図12のプロファイルが上に凸の場合を正、下に凸の場合を負とする。
【0055】
図13は、上述の手順にしたがって測定された、3次元光学プロファイラによる透過部材41の表面形状の測定結果の一例を示した図である。領域130は高さが負の領域である。領域130から重心Gまで半径方向内側に向かうに連れて領域132、領域134の順に高くなる。
図14は第1の測地線106の形状を示す概略図である。
図15は第2の測地線108の形状を示す概略図である。
図14および
図15において、反り量は、プロファイルが上に凸の場合が正、下に凸の場合が負である。
図14および
図15を参照して、
図13に示す透過部材41は、測地線106上の反り量と、測地線108上の反り量とがいずれも正の例である。
【0056】
図16は、上述の手順にしたがって測定された、3次元光学プロファイラによる透過部材41の表面形状の測定結果の別の一例を示した図である。領域140は高さが負の領域である。重心Gを含む領域144は領域140よりも高いが、領域142よりは低い領域である。領域142は
図16に示された領域の中で最も高い領域である。
図17は第1の測地線106の形状を示す概略図である。
図18は第2の測地線108の形状を示す概略図である。
図17および
図18においても、反り量は、プロファイルが上に凸の場合が正、下に凸の場合が負である。
図17および
図18を参照して、
図16に示す透過部材41においては、測地線106上の反り量が正である。これに対し、測地線108上の反り量は負である。すなわち
図16に示す透過部材41は鞍型の形状に歪んでいる。
【0057】
以上が本実施の形態の説明である。なお、上記サブマウント71,72,73は、サブマウント71,72,73上に搭載される素子等に熱膨張係数が近い材料からなるものとされ、たとえばAlN、SiC、Si、ダイヤモンドなどからなるものとすることができる。また、ステム10およびキャップ40を構成する材料としては、たとえば熱伝導率の高い材料や熱膨張率の低い材料が好ましい。鉄、銅、ニッケル、あるいはこれらを含む合金などを採用してもよいし、AlN、CuW、CuMoなどを採用してもよい。
【0058】
上記実施の形態においては、透過部材41が第2の面41Bにおいて接合されている例について説明したが、透過部材41は第1の面41Aにおいて接合されていてもよい。また接合部材として低融点ガラス42を適用した例を説明したが、他の接合材や接着剤を適用することもできる。
【0059】
上記実施の形態においては、光半導体素子として、3個の出射波長の異なるレーザダイオード81,82,83が備え付けられた光モジュール1について説明したが、光半導体素子の種類および数は特に限定されない。また光モジュール1は、光半導体素子として、発光素子であるレーザダイオードの代わりに受光素子を備えていてもよい。また発光素子として、レーザダイオード81,82,83の代わりに、たとえば発光ダイオードが採用されてもよい。また、上記実施の形態においては、第1フィルタ97および第2フィルタ98として波長選択性フィルタが採用される場合を例示したが、これらのフィルタは、たとえば偏波合成フィルタであってもよい。また必要に応じてこれらのフィルタは省略することもできる。
【0060】
上記で説明した通り、本実施の形態の光モジュールにおいて、上記反り量が第1の測地線と第2の測地線とで異なる。すなわち、透過部材は非同心円状の不均一な状態に歪んでいる。
【0061】
本実施の形態の光モジュールにおいて、透過部材は第1の面または第2の面においてキャップと接合されている。これにより、光モジュールにおいて透過部材が不均一な歪みを有しているにも関わらず、透過部材の割れが抑制される。
【実施例】
【0062】
光を入射する面で透過部材をキャップと接合した底面支持型の光モジュールを準備し、透過部材の反りと割れの有無とを確認した。比較として透過部材の側面(外周面)で透過部材をキャップと接合した側面支持型の比較用光モジュールを準備し、同様に透過部材の反りと割れの有無とを確認した。さらに光モジュールのリーク(leak:漏れ)の有無を確認した。
【0063】
評価は以下のようにして行った。
(透過部材の反り量)
3次元光学プロファイラ(キヤノン株式会社製)を使用して、光モジュール1の光軸Lと垂直に交わる平面に投影した透過部材41の投影像の重心Gから半径300μm以内の、投影像100上の領域に対応する第1の面41Aの領域内における透過部材41の反り量を測定した。本実施例においては、中心点Cを通過する測地線上の反り量のうち最大の反り量を有する測地線が第1の測地線となるように第1の測地線と第2の測地線を設定した。
【0064】
(透過部材の割れの観察)
透過窓の耐久性試験の後に実体顕微鏡で透過部材上の割れの有無を観察した。耐久性試験は以下のように行った。まず−40℃/85℃のヒートサイクル試験を50サイクル(1サイクル=1時間)繰り返した。その後85℃/85%の高温高湿放置試験を50時間実施した
【0065】
(リークの有無)
リーク(漏れ)の有無はHeリーク検査で判定した(合格基準:リークレート<1×10
−10Pa・m
3/秒)。
【0066】
各項目の評価結果を表1に示す。表1において、No.1は比較例である。またNo.2は第1の実施例、No.3は第2の実施例である。比較例、第1の実施例、第2の実施例の各13サンプルに対して評価を行った。
【0067】
透過部材の反り量と割れの発生頻度の関係を示すグラフを
図19に示す。
図19のグラフにおいて、横軸は第1の測地線上の反り量(単位:μm)を表す。縦軸は第2の測地線上の反り量(単位:μm)を表す。またプロットされたデータのうち、群201は比較例のデータ群である。また群202は第1の実施例にかかるデータ群、群203は第2の実施例にかかるデータ群である。破線204は第1軸方向の反り量と第2軸方向の反り量が同一な場合を示す仮想線である。破線204上にプロットされた状態は、透過部材の歪みが同士円状に均一に分布していることを示す。この破線204からプロットされる位置が遠くなればなるほど歪みが大きく、かつ不均一であることを示す。
【0068】
【表1】
図19を参照して、比較例のデータ群201に示すように、透過部材の側面で透過部材をキャップと接合した光モジュールにおいては、13サンプル中3つのサンプルで割れ(
図19における×印)が確認された。このように透過部材の側面で透過部材をキャップと接合した場合、透過部材の反りが不均一になると割れが発生する場合がある。また13サンプルのうち3つのサンプルでリークの発生が確認された。
【0069】
これに対し、
図19の第1の実施例のデータ群202に示すように、光を入射する面で透過部材をキャップと接合した第1の実施例1にかかる光モジュールにおいては透過部材の割れはいずれのサンプルにおいても確認できなかった。
【0070】
第2の実施例の光モジュールは、第1の実施例と比較してベース部とキャップの溶接条件を変更したものである。具体的には、溶接電圧を増加させて、接合を強化したものである。第2の実施例にかかるデータ群203はグラフの右下側に点在した。
図19に示すように、データ群203は破線204から右下方に離れた位置にある。すなわち、第2の実施例にかかる透過部材は大きく歪んだ形状を有していた。また第2の実施例にかかる透過部材は、第1の測地線上の反り量が正の値であるのに対し、第2の測地線上の反り量は負の値であった(表1、
図19参照)。これは第2の実施例の光モジュールの透過部材が鞍型の大きく歪んだ形状を有していることを示している。そのように歪みが大きいにも関わらず、第2の実施例の透過部材において割れは確認できなかった。さらに第2実施例にかかる光モジュールのように、接合を強化すると透過部材の歪みは大きくなるが、気密性が高められ、全ての試験サンプルにおいてリークが抑制できた。
【0071】
なお上記第1および第2の実施例にかかる透過部材において、キャップに接合される領域である接合領域の面積は、透過部材の接合領域を有する側の面の面積の74%であった。接合領域の面積がこのような値の場合、十分に接着面積が広いため、割れがより確実に抑制された。またこのように接合することで、透過部材のキャップからの脱離のような、機械的信頼性に関する不具合も生じなかった。
【0072】
以上の結果から、本願の光モジュールにおいては透過部材の反りが不均一であっても割れが抑制できることが確認された。また接合条件を変更して透過部材の歪みがより大きくなった場合でも、本願の光モジュールにおいては透過部材の割れが抑制できることが確認された。
【0073】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。