特許第6332377号(P6332377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332377
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/30 20060101AFI20180521BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20180521BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20180521BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20180521BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F28F1/30 E
   F28F1/02 B
   F28D1/053 A
   F28F1/32 D
   F25B39/02 J
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-185285(P2016-185285)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-48781(P2018-48781A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2017年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健
(72)【発明者】
【氏名】神藤 正憲
(72)【発明者】
【氏名】山田 甲樹
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−064403(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/105133(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/038652(WO,A1)
【文献】 特開2003−262485(JP,A)
【文献】 特開2006−010288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/02
F28F 1/30
F28F 1/32
F28D 1/053
F25B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下を向いた状態の扁平面(64)を有しており、上下方向に沿って配置されるとともに通風方向に交差するフィン積層方向に沿って延びる複数の扁平管(63)と、
前記通風方向の風下側から風上側に沿って延びており前記複数の扁平管が挿入される複数の切り欠き部(67)と、上下方向に隣り合う前記切り欠き部間に挟まれた複数のフィン主部(81)と、前記複数の切り欠き部よりも前記通風方向の風上側に前記複数のフィン主部と連続して延びるフィン風上部(82)と、前記各切り欠き部の周縁部から前記フィン積層方向の一方側に向かって延びるフィンカラー部(83)と、を有しており、前記フィン積層方向に沿って積層される複数の伝熱フィン(66)と、
を備えた、
熱交換器において、
前記各フィンカラー部のうち前記扁平管の上側の扁平面である扁平上面(64a)に沿う部分をフィンカラー上部(83a)とすると、前記フィンカラー上部と前記扁平上面との間に、前記通風方向に沿って延びる隙間(C)を形成するとともに、前記フィンカラー上部に、前記フィン積層方向に隣り合う前記フィン主部間に挟まれた前記フィンカラー上部の上側の空間と前記隙間とを連通させる窓部(90)を形成しており、
前記フィンカラー上部は、先端が上側に向かってR状に曲がったフレア部(91a)を有しており、
前記隙間は、前記フレア部と前記扁平上面との間に形成されており、
前記窓部は、前記フレア部に形成されている、
熱交換器(11)。
【請求項2】
前記フィンカラー上部は、先端に凹部を有しており、
前記凹部が、前記窓部を形成している、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記凹部は、前記フィンカラー上部の先端に、前記通風方向に沿って複数形成されている、
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記フィンカラー上部は、前記フィン積層方向に隣り合う前記伝熱フィンに当接している、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、特に、複数の扁平管と扁平管が挿入される切り欠き部を有する複数の伝熱フィンとを有する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(特開2012−233680号公報)に示すように、複数の扁平管と扁平管が挿入される切り欠き部を有する複数の伝熱フィンとを有する熱交換器がある。この熱交換器では、扁平管が、通風方向に交差するフィン積層方向に沿って延びている。また、この熱交換器では、伝熱フィンが、フィン積層方向に沿って積層されており、通風方向の風下側から風上側に沿って延びており複数の扁平管が挿入される複数の切り欠き部と、隣り合う切り欠き部間に挟まれる複数のフィン主部と、複数の切り欠き部よりも通風方向の風上側に複数のフィン主部と連続して延びるフィン風上部と、各切り欠き部の周縁部からフィン積層方向の一方側に向かって延びるフィンカラー部と、を有している。すなわち、この熱交換器の伝熱フィンには、扁平管が挿入される切り欠き部が通風方向の風下側から風上側に沿って延びるように形成され、かつ、切り欠き部よりも通風方向の風上側に隣り合う切り欠き部間に挟まれる複数のフィン主部と連続して延びるフィン風上部が形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の熱交換器を、扁平管の扁平面を上下に向けた状態で上下方向に沿って配置して使用すると、伝熱フィンに付着した凝縮水は、フィン主部の通風方向の風下側の部分に集まり、切り欠き部の風下側の先端部から下方に落下することによって排水される。しかし、切り欠き部の風下側の先端部から凝縮水が落下するのは、凝縮水が自重で落下できる程度の大きさまで成長したときである。このため、このような凝縮水の排水構造では、フィン積層方向に隣り合うフィン主部間に挟まれたフィンカラー上部の上側の空間に凝縮水が溜まったままになりやすく、十分な排水性能を得ることが難しい。
【0004】
本発明の課題は、扁平面を上下に向けた状態で上下方向に沿って配置された複数の扁平管と、扁平管が挿入される切り欠き部が通風方向の風下側から風上側に沿って延びるように形成され、かつ、切り欠き部よりも通風方向の風上側に上下方向に隣り合う切り欠き部間に挟まれる複数のフィン主部と連続して延びるフィン風上部が形成された複数の伝熱フィンと、を有する熱交換器において、凝縮水の排水性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点にかかる熱交換器は、複数の扁平管と、複数の伝熱フィンと、を有している。扁平管は、上下を向いた状態の扁平面を有しており、上下方向に沿って配置されるとともに通風方向に交差するフィン積層方向に沿って延びている。伝熱フィンは、通風方向の風下側から風上側に沿って延びており複数の扁平管が挿入される複数の切り欠き部と、上下方向に隣り合う切り欠き部間に挟まれた複数のフィン主部と、複数の切り欠き部よりも通風方向の風上側に複数のフィン主部と連続して延びるフィン風上部と、各切り欠き部の周縁部からフィン積層方向の一方側に向かって延びるフィンカラー部と、を有しており、フィン積層方向に沿って積層されている。そして、ここでは、各フィンカラー部のうち扁平管の上側の扁平面である扁平上面に沿う部分をフィンカラー上部とすると、フィンカラー上部と扁平上面との間に、通風方向に沿って延びる隙間を形成するとともに、フィンカラー上部に、フィン積層方向に隣り合うフィン主部間に挟まれたフィンカラー上部の上側の空間と隙間とを連通させる窓部を形成している。
【0006】
ここでは、伝熱フィンに付着した凝縮水を、フィンカラー上部に形成された窓部を通じて、フィンカラー上部の上側の空間からフィンカラー上部と扁平上面との間に形成された隙間に導くことができる。そして、この隙間に導かれた凝縮水は、隙間内を、切り欠き部の風下側の先端部ではなく、切り欠き部の風上側の先端部に向かって流れる。なぜなら、切り欠き部の風下側の先端部では、自重で落下できる程度の大きさに成長するまで凝縮水が落下しないのに対して、切り欠き部の風上側の先端部では、複数のフィン主部と連続するフィン風上部に繋がっており、切り欠き部の風上側の先端部からフィン風上部にスムーズに送ることができるからである。そして、このようにしてフィン風上部に送られた凝縮水は、フィン風上部を通じて下方に排水される。
【0007】
このように、ここでは、フィンカラー上部に形成された窓部及びフィンカラー上部と扁平上面との間に形成された隙間を凝縮水の排水路として機能させて、フィン風上部を通じて凝縮水を排水するようにしているため、凝縮水の排水性能を向上させることができる。
【0008】
しかも、ここでは、フィンカラー上部が、先端が上側に向かってR状に曲がったフレア部を有しており、隙間が、フレア部と扁平上面との間に形成されており、窓部が、フレア部に形成されている。
【0009】
ここでは、隙間がフィンカラー上部の先端に設けられたフレア部と扁平上面との間に形成されており、かつ、窓部がフレア部に形成されているため、伝熱フィンをフィンカラーに形成する際に容易に設けることができ、これにより、熱交換器のコストアップを抑えることができる。
【0010】
第2の観点にかかる熱交換器は、第1の観点にかかる熱交換器において、フィンカラー上部が、先端に凹部を有しており、凹部が、窓部を形成している。
【0011】
ここでは、窓部がフィンカラー上部の先端に設けられた凹部であるため、伝熱フィンにフィンカラー部を形成する際に容易に設けることができ、これにより、熱交換器のコストアップを抑えることができる。
【0012】
第3の観点にかかる熱交換器は、第2の観点にかかる熱交換器において、凹部は、フィンカラー上部の先端に、通風方向に沿って複数形成されている。
【0013】
ここでは、窓部(凹部)が通風方向に沿って複数形成されているため、伝熱フィンに付着した凝縮水をフィンカラー上部の上側の空間から隙間に速やかに導くことができ、これにより、凝縮水の排水性能をさらに向上させることができる。
【0014】
の観点にかかる熱交換器は、第1〜第3の観点のいずれかにかかる熱交換器において、フィンカラー上部が、フィン積層方向に隣り合う伝熱フィンに当接している。
【0015】
ここでは、フィンカラー上部が凝縮水の排水路(窓部及び隙間)だけでなく、伝熱フィンのフィン積層方向間の間隔(フィンピッチ)を確保する機能も有している。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、フィンカラー上部に形成された窓部及びフィンカラー上部と扁平上面との間に形成された隙間を凝縮水の排水路として機能させて、フィン風上部を通じて凝縮水を排水するようにしているため、凝縮水の排水性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態にかかる熱交換器としての室外熱交換器が採用された空気調和装置の概略構成図である。
図2】室外ユニットの外観斜視図である。
図3】室外ユニットの正面図(室外熱交換器以外の冷媒回路構成部品を除いて図示)である。
図4】室外熱交換器の概略斜視図である。
図5図4の熱交換部の部分拡大図である。
図6図5の熱交換部を伝熱管の長手方向に沿う方向(フィン積層方向)から見た状態を示す部分拡大図である。
図7図6の部分拡大図である。
図8図7を通風方向の風上側から見た図である。
図9図7の拡大斜視図である。
図10】フィンカラー部の形成方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる熱交換器の実施形態及びその変形例について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる熱交換器の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0019】
(1)空気調和装置の構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる熱交換器としての室外熱交換器11が採用された空気調和装置1の概略構成図である。
【0020】
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことによって、建物等の室内の冷房及び暖房を行うことが可能な装置である。空気調和装置1は、主として、室外ユニット2と、室内ユニット3a、3bと、が接続されることによって構成されている。ここで、室外ユニット2と室内ユニット3a、3bとは、液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5を介して接続されている。すなわち、空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路6は、室外ユニット2と、室内ユニット3a、3bとが冷媒連絡管4、5を介して接続されることによって構成されている。
【0021】
室外ユニット2は、室外(建物の屋上や建物の壁面近傍等)に設置されており、冷媒回路6の一部を構成している。室外ユニット2は、主として、アキュムレータ7、圧縮機8と、四路切換弁10と、室外熱交換器11と、室外膨張弁12と、液側閉鎖弁13と、ガス側閉鎖弁14と、室外ファン15と、を有している。各機器及び弁間は、冷媒管16〜22によって接続されている。
【0022】
室内ユニット3a、3bは、室内(居室や天井裏空間等)に設置されており、冷媒回路6の一部を構成している。室内ユニット3aは、主として、室内膨張弁31aと、室内熱交換器32aと、室内ファン33aと、を有している。室内ユニット3bは、主として、室内膨張弁31bと、室内熱交換器32bと、室内ファン33bと、を有している。
【0023】
冷媒連絡管4、5は、空気調和装置1を建物等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管である。液冷媒連絡管4の一端は、室内ユニット2の液側閉鎖弁13に接続され、液冷媒連絡管4の他端は、室内ユニット3a、3bの室内膨張弁31a、31bの液側端に接続されている。ガス冷媒連絡管5の一端は、室内ユニット2のガス側閉鎖弁14に接続され、ガス冷媒連絡管5の他端は、室内ユニット3a、3bの室内熱交換器32a、32bのガス側端に接続されている。
【0024】
(2)空気調和装置の動作
次に、図1を用いて、空気調和装置1の動作について説明する。空気調和装置1は、基本動作として、冷房運転及び暖房運転を行うことが可能である。
【0025】
冷房運転時には、四路切換弁10が冷房サイクル状態(図1の実線で示される状態)に切り換えられる。冷媒回路6において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機8に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。圧縮機8から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁10を通じて、室外熱交換器11に送られる。室外熱交換器11に送られた高圧のガス冷媒は、冷媒の放熱器として機能する室外熱交換器11において、室外ファン15によって冷却源として供給される室外空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。室外熱交換器11において放熱した高圧の液冷媒は、室外膨張弁12、液側閉鎖弁13及び液冷媒連絡管4を通じて、室内膨張弁31a、31bに送られる。室内膨張弁31a、31bに送られた冷媒は、室内膨張弁31a、31bによって冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。室内膨張弁31a、31bで減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、室内熱交換器32a、32bに送られる。室内熱交換器32a、32bに送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、室内熱交換器32a、32bにおいて、室内ファン33a、33bによって加熱源として供給される室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内空気は冷却され、その後に、室内に供給されることで室内の冷房が行われる。室内熱交換器32a、32bにおいて蒸発した低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管5、ガス側閉鎖弁14、四路切換弁10及びアキュムレータ7を通じて、再び、圧縮機8に吸入される。
【0026】
暖房運転時には、四路切換弁10が暖房サイクル状態(図1の破線で示される状態)に切り換えられる。冷媒回路6において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機8に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。圧縮機8から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁10、ガス側閉鎖弁14及びガス冷媒連絡管5を通じて、室内熱交換器32a、32bに送られる。室内熱交換器32a、32bに送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器32a、32bにおいて、室内ファン33a、33bによって冷却源として供給される室内空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。これにより、室内空気は加熱され、その後に、室内に供給されることで室内の暖房が行われる。室内熱交換器32a、32bで放熱した高圧の液冷媒は、室内膨張弁31a、31b、液冷媒連絡管4及び液側閉鎖弁13を通じて、室外膨張弁12に送られる。室外膨張弁12に送られた冷媒は、室外膨張弁12によって冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒になる。室外膨張弁12で減圧された低圧の気液二相状態の冷媒は、室外熱交換器11に送られる。室外熱交換器11に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器11において、室外ファン15によって加熱源として供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。室外熱交換器11で蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁10及びアキュムレータ7を通じて、再び、圧縮機8に吸入される。
【0027】
(3)室外ユニットの構成
図2は、室外ユニット2の外観斜視図である。図3は、室外ユニット2の正面図(室外熱交換器11以外の冷媒回路構成部品を除いて図示)である。
【0028】
室外ユニット2は、ケーシング40の側面から空気を吸い込んでケーシング40の天面から空気を吹き出す上吹き型構造と呼ばれるものである。室外ユニット2は、主として、略直方体箱状のケーシング40と、室外ファン15と、圧縮機や室外熱交換器等の機器7、8、11、四路切換弁や室外膨張弁等の弁10、12〜14及び冷媒管16〜22等を含み冷媒回路6の一部を構成する冷媒回路構成部品と、を有している。尚、以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「前面」、「背面」は、特にことわりのない限り、図2に示される室外ユニット2を前方(図面の左斜前側)から見た場合の方向を意味している。
【0029】
ケーシング40は、主として、左右方向に延びる一対の据付脚41上に架け渡される底フレーム42と、底フレーム42の角部から鉛直方向に延びる支柱43と、支柱43の上端に取り付けられるファンモジュール44と、前面パネル45と、を有している。
【0030】
底フレーム42は、ケーシング40の底面を形成しており、底フレーム42上には、室外熱交換器11が設けられている。ここで、室外熱交換器11は、ケーシング40の背面及び左右両側面に面する平面視略U字形状の熱交換器であり、ケーシング40の背面及び左右両側面を実質的に形成している。
【0031】
室外熱交換器11の上側には、ファンモジュール44が設けられており、ケーシング40の前面、背面及び左右両面の支柱43よりも上側の部分と、ケーシング40の天面と、を形成している。ここで、ファンモジュール44は、上面及び下面が開口した略直方体形状の箱体に室外ファン15が収容された集合体であり、上面の開口には吹出グリル46が設けられている。
【0032】
前面パネル45は、前面側の支柱43間に架け渡されており、ケーシング40の前面を形成している。
【0033】
ケーシング40内には、室外ファン15及び室外熱交換器11以外の冷媒回路構成部品(図2においては、アキュムレータ7、圧縮機8及び冷媒管16〜18を図示)も収容されている。ここで、圧縮機8及びアキュムレータ7は、底フレーム42上に設けられている。
【0034】
(4)室外熱交換器の基本構成
図4は、室外熱交換器11の概略斜視図である。図5は、図4の熱交換部60の部分拡大図である。
【0035】
室外熱交換器11は、主として、室外空気と冷媒との熱交換を行う熱交換部60と、熱交換部60の一端側(ここでは、図4の左前端側)に設けられた冷媒分流器70及び出入口ヘッダ71と、熱交換部60の他端側(ここでは、図4の右前端側)に設けられた中間ヘッダ72と、を有している。室外熱交換器11は、冷媒分流器70、出入口ヘッダ71、中間ヘッダ72及び熱交換部60のすべてが、アルミニウム製又はアルミニウム合金製のオールアルミ熱交換器であり、各部の接合は、炉中ロウ付け等のロウ付けによって行われている。
【0036】
熱交換部60は、室外熱交換器11の上部を構成するメイン熱交換部61と、室外熱交換器11の下部を構成するサブ熱交換部62と、を有している。
【0037】
熱交換部60は、扁平管からなる多数の伝熱管63と、差込フィンからなる多数の伝熱フィン66とにより構成された差込フィン式の熱交換部である。伝熱管63は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製であり、伝熱面となる扁平面64と、冷媒が流れる多数の小さな内部流路65を有する扁平多穴管である。多数の伝熱管63は、扁平面64が上下を向いた状態で上下方向に沿って複数段配置されており、長手方向の一端(ここでは、図4の左前端)が出入口ヘッダ71に接続され、長手方向の他端(ここでは、図4の右前端)が中間ヘッダ72に接続されている。すなわち、多数の伝熱管63は、出入口ヘッダ71と中間ヘッダ72との間に配置されている。伝熱管63は、その長手方向がケーシング40の側面(ここでは、左右両側面)及び背面に沿う水平方向、すなわち、通風方向に交差する方向(フィン積層方向)に平行に延びている。伝熱フィン66は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製であり、伝熱管63の長手方向に沿う方向(フィン積層方向)に間隔を空けて複数配置されている。伝熱フィン66は、通風方向の風下側から風上側に沿って延びており複数の伝熱管63が挿入される多数の切り欠き部67が形成されている。ここでは、伝熱管63の扁平面64が向く方向が上下方向であり、かつ、伝熱管63の長手方向がケーシング40の側面(ここでは、左右両側面)及び背面に沿う水平方向であるため、切り欠き部67が延びる方向は、伝熱管63の長手方向に交差する水平方向を意味しており、ケーシング40内における通風方向とも略一致している。切り欠き部67は、伝熱管63が通風方向の風下側から風上側に向かって挿入されるように水平方向に細長く延びている。そして、ここでは、多数の伝熱管63は、メイン熱交換部61を構成する伝熱管群と、サブ熱交換部62を構成する伝熱管群と、に区分されている。
【0038】
冷媒分流器70は、液冷媒管20と出入口ヘッダ71の下部との間に接続されている。冷媒分流器70は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の鉛直方向に延びる部材である。冷媒分流器70は、液冷媒管35を通じて流入する冷媒を分流して出入口ヘッダ71の下部に導いたり、出入口ヘッダ71の下部を通じて流入する冷媒を合流して液冷媒管19に導くようになっている
出入口ヘッダ71は、熱交換部60の一端側(ここでは、図4の左前端側)に設けられている。そして、出入口ヘッダ71には、熱交換部61を構成する伝熱管63の一端(ここでは、左前端)が接続されている。出入口ヘッダ71は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の鉛直方向に延びる部材である。出入口ヘッダ71の内部空間は、バッフル(図示せず)によって上下に仕切られており、その上部空間がメイン熱交換部61を構成する伝熱管63の一端(ここでは、左前端)に連通し、その下部空間がサブ熱交換部62を構成する伝熱管63の一端(ここでは、左前端)に連通している。そして、出入口ヘッダ71の上部は、ガス冷媒管19に接続されており、熱交換部60とガス冷媒管19との間で冷媒をやりとりするようになっている。また、出入口ヘッダ71の下部は、冷媒分流器70に接続されており、冷媒分流器70との間で冷媒をやりとりするようになっている。
【0039】
中間ヘッダ72は、熱交換部60の他端側(ここでは、図4の右前端側)に設けられている。そして、中間ヘッダ72には、熱交換部60を構成する伝熱管63の他端(ここでは、右前端)が接続されている。中間ヘッダ72は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された鉛直方向に延びる部材である。中間ヘッダ72の内部空間は、バッフル(図示せず)によって上下に仕切られており、その上部空間がメイン熱交換部61を構成する伝熱管63の他端(ここでは、右前端)に連通し、その下部空間がサブ熱交換部62を構成する伝熱管63の他端(ここでは、右前端)に連通している。また、中間ヘッダ72の上部空間や下部空間は、熱交換部60のパス数に応じて、バッフル(図示せず)によって複数の空間に仕切られており、連通管73等を通じて上部空間と下部空間とが連通している。そして、中間ヘッダ72は、メイン熱交換部61とサブ熱交換部62との間で冷媒をやりとりするようになっている。
【0040】
(5)伝熱フィンの詳細構成
図6は、図5の熱交換部60を伝熱管63の長手方向に沿う方向(フィン積層方向)から見た状態を示す部分拡大図である。図7は、図6の部分拡大図である。図8は、図7を通風方向の風上側から見た図である。図9は、図7の拡大斜視図である。図10は、フィンカラー部83の形成方法を説明する図である。
【0041】
<基本形状>
伝熱フィン66は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の板材をプレス加工することによって形成された一方向に長い(ここでは、縦長の)板状フィンであり、フィン積層方向(伝熱管63の長手方向に沿う方向)に沿って積層されている。
【0042】
伝熱フィン66の多数の切り欠き部67は、伝熱フィン66の上下方向に所定の間隔を空けて形成されている。伝熱フィン66は、上下方向に隣り合う切り欠き部67間に挟まれた複数のフィン主部81と、複数の切り欠き部67よりも通風方向の風上側に複数のフィン主部81と連続して延びるフィン風上部82と、を有している。また、各切り欠き部67の周縁部には、フィン積層方向の一方側(図6、7においては紙面手前側、図8においては紙面右側)に向かって延びるフィンカラー部83が形成されている。ここで、各フィンカラー部83のうち伝熱管63の上側の扁平面である扁平上面64aに沿う部分をフィンカラー上部83aとし、各フィンカラー部83のうち伝熱管63の下側の扁平面である扁平下面64bに沿う部分をフィンカラー下部83bとする。
【0043】
フィン主部81には、伝熱フィン66を膨出させることによって、台座部84が形成されている。台座部84は、フィン積層方向の他方側(図6、7においては紙面奥側、図8においては紙面左側)に向かって略長方形状の平坦面をなすように膨出している。台座部84の平坦面には、伝熱フィン66を切り起こすことによって、複数のルーバー85が形成されている。これにより、フィン主部81の強度を向上させつつ、伝熱性能の向上が図られている。
【0044】
フィン風上部82には、伝熱フィン66を膨出させることによって、第1リブ86が形成されている。第1リブ86は、フィン積層方向の他方側(図6、7においては紙面奥側、図8においては紙面左側)に向かって通風方向に沿って膨出している。ここでは、第1リブ86が2つあり、台座部84の風上側の端部と一体化している。これにより、フィン風上部82の強度を向上させている。また、フィン風上部82には、伝熱フィン66を膨出させることによって、第2リブ87が形成されている。第2リブ87は、フィン積層方向の他方側(図6、7においては紙面奥側、図8においては紙面左側)に向かってフィンカラー部83の風上側の端部の風上側の位置に形成されている。
【0045】
そして、このような基本形状をなす伝熱フィン66が採用された室外熱交換器11において、伝熱フィン66に付着した凝縮水をフィン主部81の通風方向の風下側の部分から排水させるためには、切り欠き部67の風下側の先端部において、凝縮水が自重で落下できる程度の大きさまで成長する必要がある。このため、切り欠き部67の風下側の先端部から凝縮水をスムーズに排出することができず、フィン積層方向に隣り合うフィン主部81間に挟まれたフィンカラー上部83aの上側の空間S(図7図9参照)に凝縮水が溜まったままになりやすく、その結果、十分な排水性能を得ることが難しい。
【0046】
そこで、ここでは、伝熱フィン66に付着した凝縮水の排水性能を向上させるために、フィンカラー部83及びその近傍部分に対して、以下のような工夫を施している。
【0047】
<凝縮水の排水性能を向上させるための構造>
まず、室外熱交換器11では、フィンカラー上部83aと扁平上面64aとの間に、通風方向に沿って延びる隙間Cを形成するとともに、フィンカラー上部83aに、フィン積層方向に隣り合うフィン主部81間に挟まれたフィンカラー上部83aの上側の空間Sと隙間Cとを連通させる窓部90を形成している。
【0048】
具体的には、ここでは、フィンカラー上部83aの先端に、上側に向かってR状に曲がったフレア部91aが形成されており、フレア部91aと扁平上面64aとの間に、隙間Cが形成されている。
【0049】
また、ここでは、フィンカラー上部83aの先端(ここでは、フレア部91a)が、三角形の波形状に凹凸しており、三角形の波形状の凹凸の凹部が窓部90を形成している。窓部90(凹部)は、フィンカラー上部83aの先端(ここでは、フレア部91a)に、通風方向に沿って複数形成されている。
【0050】
フレア部91a(窓部90を含む)が先端に形成されたフィンカラー上部83aを含むフィンカラー部83は、図10に示すように、伝熱フィン66を構成する板状素材に対して、三角形の波形状の凹凸を含む切断線66a(図10の実線)を形成しておき、バーリング加工等によって切断線66aを切り開きつつ、切断線66aの周囲を囲む折目線66b(図10の破線)から立ち上がるように起こすことによって形成されている。これにより、折目線66bが切り欠き部67の周縁部を形成し、折目線66bから立ち上がる部分がフィンカラー上部83a及びフィンカラー下部83bを含むフィンカラー部83を形成することになる。このとき、フィンカラー上部83aの先端だけでなく、フィンカラー下部83bの先端にも、三角形の波形状の凹凸を有するフレア部91bが形成される。但し、フィンカラー下部83bのフレア部91bは、フィンカラー上部83aのフレア部91aとは逆に、下側に向かってR状に曲がっている。
【0051】
尚、フィンカラー上部83aの先端及びフィンカラー下部83bの先端は、図10に示すように、フィンカラー83を切り起こす前は、三角形の波形状の凹凸を含む切断線66aの位置で嵌め合わさったような状態になっている。このため、フィンカラー下部83bのフレア部91bの三角形の波形状の凹部は、フィンカラー上部83aのフレア部91aの三角形の波形状の凹凸の凸部に対向し、フィンカラー下部83bのフレア部91bの三角形の波形状の凸部は、フィンカラー上部83aのフレア部91aの三角形の波形状の凹凸の凹部に対向するように形成されている。そして、フィンカラー部83のフィンカラー上部83a及びフィンカラー下部83bは、図8に示すように、フィン積層方向に隣り合う伝熱フィン66に当接している。
【0052】
上記のような隙間C及び窓部90によって、図7図9に示すように、伝熱フィン66に付着した凝縮水を、フィンカラー上部83aに形成された窓部90を通じて、フィンカラー上部83aの上側の空間Sからフィンカラー上部83aと扁平上面64aとの間に形成された隙間Cに導くことができる。そして、この隙間Cに導かれた凝縮水は、隙間C内を、切り欠き部67の風下側の先端部(図7及び図9の紙面右側の端部)ではなく、切り欠き部67の風上側の先端部(図7及び図9の紙面左側の端部)に向かって流れる。なぜなら、切り欠き部67の風下側の先端部では、自重で落下できる程度の大きさに成長するまで凝縮水が落下しないのに対して、切り欠き部67の風上側の先端部では、複数のフィン主部81と連続するフィン風上部82に繋がっており、切り欠き部67の風上側の先端部からフィン風上部82にスムーズに送ることができるからである。そして、このようにしてフィン風上部82に送られた凝縮水は、図7及び図9に示すように、フィン風上部82を通じて下方に排水される。
【0053】
このように、ここでは、フィンカラー上部83aに形成された窓部90及びフィンカラー上部83aと扁平上面64aとの間に形成された隙間Cを凝縮水の排水路として機能させて、フィン風上部82を通じて凝縮水を排水するようにしているため、凝縮水の排水性能を向上させることができる。
【0054】
また、ここでは、上記のように、窓部90がフィンカラー上部83aの先端に設けられた凹部であるため、伝熱フィン66にフィンカラー部83を形成する際に容易に設けることができ、これにより、室外熱交換器11のコストアップを抑えることができる。
【0055】
また、ここでは、上記のように、窓部90(凹部)が通風方向に沿って複数形成されているため、伝熱フィン66に付着した凝縮水をフィンカラー上部83aの上側の空間Sから隙間Cに速やかに導くことができ、これにより、凝縮水の排水性能をさらに向上させることができる(図7及び図9参照)。
【0056】
また、ここでは、上記のように、隙間Cがフィンカラー上部83aの先端に設けられたフレア部91aと扁平上面64aとの間に形成されており、かつ、窓部90がフレア部91aに形成されているため、伝熱フィン66をフィンカラー部83に形成する際に容易に設けることができ、これにより、室外熱交換器11のコストアップを抑えることができる。
【0057】
さらに、ここでは、上記のように、フィンカラー上部83aが凝縮水の排水路(窓部90及び隙間C)だけでなく、伝熱フィン66のフィン積層方向間の間隔(フィンピッチ)を確保する機能も有している。このため、従来の伝熱フィンに形成されるフィンタブと呼ばれる部分を省略することができる。
【0058】
(6)変形例
<A>
上記実施形態では、窓部90が三角形の波形状の凹凸の凹部によって形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、窓部90が四角形や正弦曲線の波形状等の凹凸の凹部によって形成されるものであってもよい。また、窓部90は穴であってもよいが、上記のように、フィンカラー部83をバーリング加工等の切り起こしによって形成する際の容易性を考慮すれば、凹部のほうが好ましい。
【0059】
<B>
上記実施形態では、伝熱フィン66に台座部84、ルーバー85及びリブ86、87が形成されているが、これらの部分が形成されている位置が異なっている伝熱フィンや、これらの部分が形成されていない伝熱フィンであってもよい。
【0060】
<C>
上記実施形態では、上吹き型の室外ユニット2に設けられる室外熱交換器11を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、他の形式の室外ユニットに設けられる室外熱交換器であってもよいし、室外ユニット以外の機器に設けられる熱交換器であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、複数の扁平管と扁平管が挿入される切り欠き部を有する複数の伝熱フィンとを有する熱交換器に対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
11 室外熱交換器(熱交換器)
63 伝熱管(扁平管)
64 扁平面
64a 扁平上面
66 伝熱フィン
67 切り欠き部
81 フィン主部
82 フィン風上部
83 フィンカラー部
83a フィンカラー上部
90 窓部
91a フレア部
C 隙間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2012−233680号公報
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図10