(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力要素と、出力要素と、前記入力要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する外側弾性体と、前記外側弾性体よりも内側に配置されて前記入力要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する内側弾性体とを含むダンパ装置において、
前記ダンパ装置を構成する何れかの回転要素に連結される第3弾性体および該第3弾性体に連結される質量体を有し、前記回転要素に対して逆位相の振動を付与して振動を減衰するダイナミックダンパを備え、
前記第3弾性体は、前記外側弾性体と周方向に並ぶように配置されることを特徴とするダンパ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のダンパ装置のように、ダイナミックダンパを構成する第3弾性体を、入力要素と出力要素との間でトルクを伝達する第1および第2弾性体とは異なる径方向位置に配置すると、ダンパ装置の外径が増加してしまい、装置全体をコンパクト化することが困難になる。
【0005】
そこで、本発明は、ダイナミックダンパを備えたダンパ装置の外径の増加を抑制して装置全体をコンパクト化することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるダンパ装置は、入力要素と、出力要素と、前記入力要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する外側弾性体と、前記外側弾性体よりも内側に配置されて前記入力要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する内側弾性体とを含むダンパ装置において、前記ダンパ装置を構成する何れかの回転要素に連結される第3弾性体および該第3弾性体に連結される質量体を有し、前記回転要素に対して逆位相の振動を付与して振動を減衰するダイナミックダンパを備え、前記第3弾性体は、前記外側弾性体と周方向に並ぶように配置されることを特徴とする。
【0007】
このダンパ装置は、何れかの回転要素に連結される第3弾性体および当該第3弾性体に連結される質量体を有して当該回転要素に対して逆位相の振動を付与して振動を減衰するダイナミックダンパを備えるものである。そして、ダイナミックダンパを構成する第3弾性体は、外側弾性体と周方向に並ぶように配置され、外側弾性体とダンパ装置の軸方向および径方向の双方においてオーバーラップする。これにより、ダイナミックダンパを構成する第3弾性体を外側弾性体や内側弾性体の径方向における外側または内側、あるいは径方向における外側弾性体と内側弾性体との間に配置する場合に比べて、ダンパ装置の外径の増加を抑制して装置全体をコンパクト化することが可能となる。更に、ダイナミックダンパを構成する第3弾性体を外側弾性体と周方向に並ぶようにダンパ装置の外周に近接して配置することで、外側弾性体および第3弾性体の剛性が高くなり過ぎるのを抑制すると共に内側弾性体の剛性を低下させ、ダイナミックダンパを備えたダンパ装置の減衰性能をより向上させることができる。
【0008】
また、前記ダンパ装置の軸心と前記外側弾性体の軸心との距離と、前記ダンパ装置の軸心と前記第3弾性体の軸心との距離とは、等しくてもよい。これにより、ダンパ装置の外径の増加をより良好に抑制することが可能となる。
【0009】
更に、前記外側弾性体の軸心と前記第3弾性体の軸心とは、前記ダンパ装置の軸心と直交する同一平面内に含まれてもよい。これにより、ダンパ装置の軸長の増加をも抑制することができるので装置全体をよりコンパクト化することが可能となる。
【0010】
また、前記ダンパ装置は、前記外側弾性体からの動力を前記内側弾性体に伝達する中間要素を更に含んでもよく、前記入力要素は、前記外側弾性体と当接する入力側当接部を有してもよく、前記第3弾性体は、前記中間要素に連結されてもよい。
【0011】
更に、前記内側弾性体は、互いに隣り合うように配置される第1内側弾性体および第2内側弾性体を含んでもよく、前記ダンパ装置は、前記外側弾性体からの動力を前記第1内側弾性体に伝達する第1中間要素と、前記第1内側弾性体からの動力を前記第2内側弾性体に伝達する第2中間要素とを更に含んでもよく、前記第3弾性体は、前記第1中間要素に連結されてもよい。
【0012】
また、前記ダンパ装置は、前記外側弾性体からの動力を前記内側弾性体に伝達する中間要素を更に含んでもよく、前記中間要素は、前記外側弾性体および前記第3弾性体と当接可能な複数の中間側当接部を有してもよい。前記外側弾性体は、前記ダンパ装置の取付状態において、2つの前記中間側当接部により両側から支持されてもよく、前記第3弾性体の両端部は、前記ダンパ装置の取付状態において、それぞれ前記中間側当接部と当接してもよい。
【0013】
更に、前記入力要素は、前記外側弾性体と当接する複数の入力側当接部を有してもよく、前記外側弾性体は、前記ダンパ装置の取付状態において、2つの前記入力側当接部により両側から支持されてもよい。
【0014】
また、前記ダンパ装置は、前記外側弾性体からの動力を前記内側弾性体に伝達する中間要素を更に含んでもよく、前記入力要素は、前記外側弾性体と当接する入力側当接部を有してもよく、前記中間要素は、前記外側弾性体および前記第3弾性体と当接可能な中間側当接部を有してもよく、前記ダイナミックダンパの前記質量体には、前記第3弾性体の両端と当接するように設けられた複数の弾性体当接部を有する連結部材が固定されてもよく、前記ダンパ装置の軸心と前記入力側当接部との距離、前記ダンパ装置の軸心と前記中間側当接部との距離、および前記ダンパ装置の軸心と前記弾性体当接部との距離の少なくとも何れか1つが残余の2つと異なってもよい。このように、ダンパ装置の軸心からの距離を変えながら、入力側当接部と中間側当接部と連結部材の弾性体当接部とを配置することにより、外側弾性体および第3弾性体のストロークを良好に確保することが可能となる。
【0015】
更に、入力要素の前記入力側当接部は、前記中間要素の前記中間側当接部と前記ダンパ装置の径方向に並んでもよく、前記中間要素の前記中間側当接部は、前記連結部材の前記弾性体当接部と前記ダンパ装置の径方向に並んでもよい。
【0016】
また、前記ダンパ装置の軸心と前記弾性体当接部との距離は、前記ダンパ装置の軸心と前記中間側当接部との距離よりも長くてもよい。
【0017】
更に、前記ダンパ装置の軸心と前記入力側当接部との距離と、前記ダンパ装置の軸心と前記中間側当接部との距離と、前記ダンパ装置の軸心と前記弾性体当接部とは、互いに異なっていてもよい。
【0018】
更に、前記中間要素は、前記外側弾性体をガイドする環状ガイド部を有する第1プレート部材と、前記中間側当接部を有すると共に前記第1プレート部材に連結される第2プレート部材とを含んでもよく、前記入力要素の前記入力側当接部は、前記第1プレート部材に形成された開口部を介して前記環状ガイド部の内側に突出すると共に前記第2プレート部材の前記中間側当接部よりも径方向内側で前記外側弾性体と当接してもよく、前記連結部材の前記弾性体当接部は、前記中間側当接部よりも径方向外側で前記第3弾性体の端部と当接してもよい。これにより、入力要素の入力側当接部、中間要素の中間側当接部および連結部材の弾性体当接部が、この順番で内側から外側に向けて配置されるので、入力要素、中間要素および連結部材が回転する際に、これら3つの部分が互いに干渉しないようにして、外側弾性体および第3弾性体のストロークをより一層良好に確保することが可能となる。
【0019】
また、前記入力要素は、前記外側弾性体を囲んでガイドする弾性体包囲部を有する第1入力部材と、前記入力側当接部を有すると共に前記第1入力部材に連結される第2入力部材とを含んでもよく、前記連結部材の前記弾性体当接部は、前記第1入力部材に形成された開口部を介して前記弾性体包囲部内に突出すると共に前記第2入力部材の前記入力側当接部よりも径方向内側で前記第3弾性体の端部と当接してもよく、前記中間要素は、前記中間側当接部が前記連結部材の前記弾性体当接部よりも径方向内側で前記外側弾性体および前記第3弾性体と当接可能となるように前記第1入力部材と前記第2入力部材との間に配置されてもよい。これにより、中間要素の中間側当接部、連結部材の弾性体当接部および入力要素の入力側当接部が、この順番で内側から外側に向けて配置されるので、入力要素、中間要素および連結部材が回転する際に、これら3つの部分が互いに干渉しないようにして、外側弾性体および第3弾性体のストロークをより一層良好に確保することが可能となる。
【0020】
更に、前記外側弾性体は、アークコイルスプリングであってもよく、前記内側弾性体は、直線型コイルスプリングであってもよい。
【0021】
また、前記第3弾性体は、直線型コイルスプリングであってもよい。
【0022】
更に、前記ダンパ装置の共振周波数を“f”とし、前記ダイナミックダンパの共振周波数を“fdd”としたときに、前記ダンパ装置および前記ダイナミックダンパは、0.90×f≦fdd≦1.10×fを満たすように構成されてもよい。
【0023】
また、前記ダンパ装置は、当該ダンパ装置に含まれる回転要素の何れかに連結された遠心振子式吸振装置を更に備えてもよい。
【0024】
更に、前記ダンパ装置の取付状態における前記外側弾性体の周方向長さを“Los”とし、前記ダンパ装置の取付状態における前記第3弾性体の周方向長さを“Lds”としたときに、前記ダンパ装置および前記ダイナミックダンパは、1.0≦Los/Lds≦10.0を満たすように構成されてもよい。
【0025】
本発明による発進装置は、上記何れかのダンパ装置と、ポンプインペラと、該ポンプインペラと共に流体伝動装置を構成するタービンランナとを備えた発進装置において、前記ダイナミックダンパは、前記第3弾性体の両端と当接するように設けられた複数の弾性体当接部を有すると共に前記タービンランナに固定される連結部材を含み、前記ダイナミックダンパの前記質量体は、少なくとも前記タービンランナおよび前記連結部材により構成されることを特徴とする。このように、タービンランナをダイナミックダンパの質量体として兼用することで、ダンパ装置を備えた発進装置をよりコンパクト化することが可能となる。
【0026】
本発明による他の発進装置は、上記何れかのダンパ装置と、ポンプインペラと、該ポンプインペラと共に流体伝動装置を構成するタービンランナとを備えた発進装置において、前記ダイナミックダンパが、前記タービンランナとは異なる専用の質量体を有することを特徴とする。このように、ダイナミックダンパは、専用の質量体を有するものであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係るダンパ装置10を含む発進装置1を示す部分断面図である。同図に示す発進装置1は、原動機としてのエンジン(内燃機関)を備えた車両に搭載されるものであり、ダンパ装置10に加えて、エンジンのクランクシャフトに連結される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ装置10に連結されると共に自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機の入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、単板油圧式クラッチであるロックアップクラッチ8、ダンパ装置10に連結されるダイナミックダンパ20等を含む。
【0030】
ポンプインペラ4は、フロントカバー3に密に固定されるポンプシェル40と、ポンプシェル40の内面に配設された複数のポンプブレード41とを有する。タービンランナ5は、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してタービンハブ52に固定される。タービンハブ52は、ダンパハブ7により回転自在に支持され、当該タービンハブ52の発進装置1の軸方向における移動は、ダンパハブ7と、当該ダンパハブ7に装着されるスナップリングにより規制される。
【0031】
ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレード60を有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
【0032】
ロックアップクラッチ8は、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除するものである。ロックアップクラッチ8は、フロントカバー3の内部かつ当該フロントカバー3のエンジン側(図中右側)の内壁面近傍に配置されると共にダンパハブ7に対して軸方向に摺動自在かつ回転自在に嵌合されるロックアップピストン80を有する。
図1に示すように、ロックアップピストン80の外周側かつフロントカバー3側の面には、摩擦材80fが貼着されている。そして、ロックアップピストン80とフロントカバー3との間には、作動油供給孔や入力軸ISに形成された油路を介して図示しない油圧制御装置に接続されるロックアップ室89が画成される。
【0033】
ロックアップ室89内には、油圧制御装置からポンプインペラ4およびタービンランナ5(トーラス)へと供給される作動油が流入可能である。従って、フロントカバー3とポンプインペラ4のポンプシェル40とにより画成される流体伝動室9内とロックアップ室89内とが等圧に保たれれば、ロックアップピストン80は、フロントカバー3側に移動せず、ロックアップピストン80がフロントカバー3と摩擦係合することはない。これに対して、図示しない油圧制御装置によりロックアップ室89内を減圧すれば、ロックアップピストン80は、圧力差によりフロントカバー3に向けて移動してフロントカバー3と摩擦係合する。これにより、フロントカバー3は、ダンパ装置10を介してダンパハブ7に連結される。
【0034】
ダンパ装置10は、
図1および
図2に示すように、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11と、中間要素としての第1中間部材12および第2中間部材15と、ドリブン部材(出力要素)16とを含むと共に、動力伝達要素として、ダンパ装置10の外周に近接して配置される複数(本実施形態では、2個)の外側スプリング(外側弾性体)SP1と、外側スプリングSP1よりも内側に配置される複数(本実施形態では、3個)の第1内側スプリング(内側弾性体)SP21および複数(本実施形態では、3個)の第2内側スプリング(内側弾性体)SP22とを含む。
【0035】
本実施形態において、外側スプリングSP1は、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心を有するように巻かれた金属材からなるアークスプリング(アークコイルスプリング)である。これにより、外側スプリングSP1をより低剛性化し(バネ定数を小さくし)、ダンパ装置10をより低剛性化(ロングストローク化)することができる。また、本実施形態において、第1および第2内側スプリングSP21,SP22は、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなるコイルスプリング(直線型コイルスプリング)であり、それぞれ外側スプリングSP1よりも高い剛性(バネ定数)を有する。なお、第1および第2内側スプリングSP21,SP22の剛性(バネ定数)は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。更に、第1および第2内側スプリングSP21,SP22として、アークスプリングが採用されてもよい。
【0036】
ドライブ部材11は、複数のリベットを介してロックアップクラッチ8のロックアップピストン80に固定される環状の固定部11aと、固定部11aの外周部からポンプインペラ4やタービンランナ5に向けて軸方向に延出された複数のスプリング当接部(入力側当接部)11bとを有する。ドライブ部材11は、ロックアップピストン80に固定されて流体伝動室9内の外周側領域に配置される。また、第1中間部材12は、フロントカバー3(ロックアップピストン80)側に配置される環状の第1プレート部材13と、ポンプインペラ4およびタービンランナ5側に配置されると共にリベットを介して第1プレート部材13に連結(固定)される環状の第2プレート部材14とを含む。
【0037】
第1中間部材12を構成する第1プレート部材13は、
図1に示すように、複数の外側スプリングSP1をガイドする環状ガイド部(環状支持部)13aと、環状ガイド部13aの近傍に間隔をおいて形成された複数の開口部13bと、開口部13bよりも第1プレート部材13の内周側に形成された複数のスプリングガイド部(スプリング支持部)13cと、複数のスプリングガイド部13cよりも第1プレート部材13の内周側に形成された複数のスプリングガイド部(スプリング支持部)13dとを有する。更に、第1プレート部材13は、互いに隣り合う第1および第2内側スプリングSP21,SP22のうち、ドライブ部材11等の正転方向(エンジンの回転方向、
図2における太線矢印参照)における上流側に配置される第1内側スプリングSP21の端部(当該正転方向における上流側の端部)と当接するスプリング当接部13e(
図4参照)と、互いに隣り合う第1および第2内側スプリングSP21,SP22のうち、ドライブ部材11等の正転方向における下流側に配置される第2内側スプリングSP22の端部(当該正転方向における下流側の端部)と当接する図示しないスプリング当接部とを有する。
【0038】
第1プレート部材13の環状ガイド部13aは、フロントカバー3側から外側スプリングSP1の一方の側部(
図1における右側の側部)および外周を囲むように形成される。また、ドライブ部材11の各スプリング当接部11bは、対応する開口部13bから環状ガイド部13aの内側に突出して、対応する外側スプリングSP1の端部(ドライブ部材11等の正転方向における上流側端部、
図2参照)と当接する。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、各外側スプリングSP1は、
図2に示すように、2個のスプリング当接部11bによって両側から支持される。更に、スプリングガイド部13cとスプリングガイド部13dとは、第1プレート部材13の径方向に対向して第1および第2内側スプリングSP21,SP22の側部(
図1における右側の側部)をガイドする。
【0039】
第1プレート部材13に連結(固定)される第2プレート部材14は、第1プレート部材13の環状ガイド部13aの内側で対応する外側スプリングSP1をガイドする複数のスプリングガイド部(スプリング支持部)14aと、スプリングガイド部14aよりも外側でフロントカバー3に向けて軸方向に延出された複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部(中間側当接部)14bと、第1プレート部材13のスプリングガイド部13cと対向するように形成された複数のスプリングガイド部(スプリング支持部)14cと、第1プレート部材13のスプリングガイド部13dと対向するように形成された複数のスプリングガイド部(スプリング支持部)14dとを有する。更に、第2プレート部材14は、
図2に示すように、互いに隣り合う第1および第2内側スプリングSP21,SP22のうち、ドライブ部材11等の正転方向における上流側に配置される第1内側スプリングSP21の端部(当該正転方向における上流側の端部)と当接するスプリング当接部14eと、互いに隣り合う第1および第2内側スプリングSP21,SP22のうち、ドライブ部材11等の正転方向における下流側に配置される第2内側スプリングSP22の端部(当該正転方向における下流側の端部)と当接するスプリング当接部14fとを有する。
【0040】
第1プレート部材13の環状ガイド部13aと第2プレート部材14のスプリングガイド部14aとによりガイドされる複数の外側スプリングSP1は、
図1に示すように、流体伝動室9内の外周側領域に配置される。また、ダンパ装置10の取付状態において、第2プレート部材14の各スプリング当接部14bは、
図1および
図2に示すように、ドライブ部材11のスプリング当接部11bよりも径方向外側で外側スプリングSP1の端部と当接する。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、各外側スプリングSP1は、
図2に示すように、2個のスプリング当接部14bによっても両側から支持される。これにより、複数の外側スプリングSP1を介してドライブ部材11と第1および第2プレート部材13,14すなわち第1中間部材12とを連結することが可能となる。更に、スプリングガイド部14cとスプリングガイド部14dとは、第2プレート部材14の径方向に対向して第1および第2内側スプリングSP21,SP22の側部(
図1における左側の側部)を支持する。これにより、第1プレート部材13のスプリングガイド部13cおよび13d並びに第2プレート部材14のスプリングガイド部14cおよび14dによりガイドされる第1および第2内側スプリングSP21,SP22は、入力軸ISに近接するように複数の外側スプリングSP1よりも内側に配置される。
【0041】
第2中間部材15は、
図1に示すように、第1プレート部材13と第2プレート部材14との間に配置されると共に、ダンパハブ7により回転自在に支持される。また、第2中間部材15は、
図2に示すように、周方向に間隔をおいて形成されて径方向外側に突出すると共に、それぞれ互いに隣り合う第1および第2内側スプリングSP21,SP22の間に配置される複数のスプリング当接部15aを有する。各スプリング当接部15aは、ドライブ部材11等の正転方向における上流側に配置される第1内側スプリングSP21の端部(当該正転方向における下流側の端部)と当接すると共に、ドライブ部材11等の正転方向における下流側に配置される第2内側スプリングSP22の端部(当該正転方向における上流側の端部)と当接する。
【0042】
ドリブン部材16は、第1中間部材12の第1プレート部材13と第2プレート部材14との間に配置されると共に溶接等によりダンパハブ7に固定される。また、ドリブン部材16は、
図2に示すように、それぞれ対応する第2内側スプリングSP22の端部(上記正転方向における下流側の端部)と当接する複数のスプリング当接部16aを有する。これにより、ドリブン部材16は、複数の第1内側スプリングSP21、第2中間部材15および複数の第2内側スプリングSP22を介して第1中間部材12に連結される。
【0043】
ダイナミックダンパ20は、コイルスプリング(直線型コイルスプリング)またはアークスプリング(アークコイルスプリング)である複数(本実施形態では、2個のコイルスプリング)の第3スプリング(第3弾性体)SP3と、第3スプリングSP3に連結されると共に上述のタービンランナ5やタービンハブ52と共に質量体を構成する連結部材21とを含むものである。なお、「ダイナミックダンパ」は、振動体の共振周波数に一致する周波数(エンジン回転数)で当該振動体に逆位相の振動を付与して振動(ダンパ装置10の共振周波数の振動)を減衰する機構であり、振動体に対してトルクの伝達経路に含まれないようにスプリングと質量体とを連結することにより構成される。そして、スプリングの剛性と質量体の重さを調整することで、ダイナミックダンパを所望の周波数で作用させることができる。
【0044】
ダイナミックダンパ20の連結部材21は、タービンランナ5を構成するタービンシェル50に固定される環状の固定部22と、当該固定部22から延出された複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部(弾性体当接部)23とを有する。連結部材21の固定部22は、タービンシェル50の背面(フロントカバー3側の面)の外周側領域に溶接等により固定される。また、複数のスプリング当接部23は、2個(一対)ずつ近接するようにダンパ装置10(発進装置1)の軸心に関して対称に形成され、互いに対をなす2個のスプリング当接部23は、例えば第3スプリングSP3の自然長に応じた間隔をおいて対向する。そして、互いに対をなす2個のスプリング当接部23の間には、第3スプリングSP3が1個ずつ配置される。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、複数のスプリング当接部23は、それぞれ対応する第3スプリングSP3の端部と当接し、各第3スプリングSP3の両端部は、一対のスプリング当接部23により支持される。
【0045】
図2に示すように、各第3スプリングSP3は、一対のスプリング当接部23により支持されて、外側スプリングSP1と周方向に並ぶように互いに隣り合う2個の外側スプリングSP1の間に1個ずつ配置され、発進装置1やダンパ装置10の軸方向および径方向の双方において外側スプリングSP1とオーバーラップする。また、各第3スプリングSP3の外周は、上述の第1プレート部材13の環状ガイド部13aによりガイドされ、各第3スプリングSP3の両端部は、ダンパ装置10の取付状態において、第2プレート部材14のスプリング当接部14bと当接する。これにより、各第3スプリングSP3は、ダンパ装置10の中間要素である第1中間部材12に連結される。そして、本実施形態において、
図1および
図2に示すように、複数のスプリング当接部23は、第2プレート部材14のスプリング当接部14bよりも径方向外側で、それぞれに対応した第3スプリングSP3の端部と当接する。すなわち、ダンパ装置10の軸心とスプリング当接部(弾性体当接部)23との距離は、ダンパ装置10の軸心とスプリング当接部(中間側当接部)14bとの距離よりも長い。
【0046】
このように、ダイナミックダンパ20を構成する第3スプリングSP3を外側スプリングSP1と周方向に並ぶようにダンパ装置10の外周に近接して配置すれば、第3スプリングSP3を外側スプリングSP1や第1および第2内側スプリングSP21,SP22の径方向における外側または内側、あるいは径方向における外側スプリングSP1と第1および第2内側スプリングSP21,SP22との間に配置する場合に比べて、ダンパ装置10の外径の増加を抑制して装置全体をよりコンパクト化することができる。また、本実施形態において、複数の外側スプリングSP1と複数の第3スプリングSP3とは、
図2に示すように同心円上に配置され、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各外側スプリングSP1の軸心との距離r1と、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各第3スプリングSP3の軸心との距離r3とが等しくなっている。これにより、ダンパ装置10の外径の増加をより良好に抑制することが可能となる。更に、本実施形態において、各外側スプリングSP1と各第3スプリングSP3とは、それぞれの軸心が発進装置1やダンパ装置10の軸心と直交する同一の平面PL(
図1参照)内に含まれるように配置される。これにより、ダンパ装置10の軸長の増加をも抑制することができる。
【0047】
そして、ダンパ装置10およびダイナミックダンパ20は、ダンパ装置10(ダイナミックダンパ20を含む)の取付状態における外側スプリングSP1の周方向長さを“Los”とし、ダンパ装置10の取付状態における第3スプリングSP3の周方向長さを“Lds”としたときに、外側スプリングSP1の周方向長さと第3スプリングSP3の周方向長さとの比率A=Los/Ldsが1.0≦A≦10.0、より好ましくは、1.0≦A≦7.0を満たすように構成される。外側スプリングSP1および第3スプリングSP3の本数に拘わらず比率Aをこのような範囲内の数値とすることで、ダンパ装置10の外径の増加を抑制しつつ、外側スプリングS1および第3スプリングSP3の剛性を適正化してダイナミックダンパ20を含むダンパ装置10の減衰性能を実用上極めて良好に向上させることが可能となる。
【0048】
なお、ダンパ装置10の取付状態における外側スプリングSP1や第3スプリングSP3の周方向長さは、アークスプリングの場合、少なくとも一対のスプリング当接部間で円弧状に延びる軸心の長さであり、コイルスプリングの場合、少なくとも一対のスプリング当接部間で真っ直ぐ若しくは円弧状に延びる軸心の長さとなる。従って、ダンパ装置10の取付状態における外側スプリングSP1や第3スプリングSP3の周方向長さは、取付状態における外側スプリングSP1や第3スプリングSP3の軸心の一端とダンパ装置10の軸心とを結ぶ半径と、取付状態における外側スプリングSP1や第3スプリングSP3の軸心の他端とダンパ装置10の軸心とを結ぶ半径とのなす角度、すなわち中心角により表すことができる。本実施形態において、ダンパ装置10の取付状態における外側スプリングSP1の周方向長さを示す中心角θ
1(
図2参照)は、例えば90°であり、ダンパ装置10の取付状態における第3スプリングSP3の周方向長さを示す中心角θ
3(
図2参照)は、例えば30°であり、比率Aは、A=3.0となる。
【0049】
次に、
図3および
図4を参照しながら、上述のように構成された発進装置1の動作について説明する。
【0050】
発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが解除されている際には、
図3からわかるように、原動機としてのエンジンからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ポンプインペラ4、タービンランナ5、連結部材21、第3スプリングSP3、第1中間部材12、第1内側スプリングSP21、第2中間部材15、第2内側スプリングSP22、ドリブン部材16、ダンパハブ7という経路を介して変速機の入力軸ISへと伝達される。
【0051】
一方、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際には、
図3からわかるように、原動機としてのエンジンからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、外側スプリングSP1、第1中間部材12、第1内側スプリングSP21、第2中間部材15、第2内側スプリングSP22、ドリブン部材16、ダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。この際、フロントカバー3に入力されるトルクの変動は、主にダンパ装置10の外側スプリングSP1と第1および第2内側スプリングSP21,SP22とにより減衰(吸収)される。
【0052】
ここで、ダンパ装置10では、ダイナミックダンパ20を構成する第3スプリングSP3が外側スプリングSP1と周方向に並ぶようにダンパ装置10の外周に近接して配置されることから、外側スプリングSP1および第3スプリングSP3の剛性(バネ定数)が高くなり過ぎるのを抑制すると共に第1および第2内側スプリングSP21,SP22の剛性(バネ定数)を低下させ、ダイナミックダンパ20を備えたダンパ装置10の減衰性能をより向上させることができる。従って、発進装置1では、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際に、フロントカバー3に入力されるトルクの変動をダンパ装置10により良好に減衰(吸収)することが可能となる。
【0053】
また、ロックアップの実行時に、ポンプインペラ4やタービンランナ5(流体伝動装置)は、フロントカバー3と変速機の入力軸ISとの間でのトルクの伝達に関与せず、エンジンの回転に伴って当該エンジンからのトルクにより第1中間部材12が回転すると、
図4に示すように、第2プレート部材14のスプリング当接部14bの何れか(何れか2個)が対応する第3スプリングSP3の一端を押圧し、各第3スプリングSP3の他端が連結部材21の対応する一対のスプリング当接部23の一方を押圧する。この結果、タービンランナ5が動力(トルク)の伝達に関与してない際には、複数の第3スプリングSP3や質量体としてのタービンランナ5等を含むダイナミックダンパ20がダンパ装置10の第1中間部材12に連結されることになる。これにより、発進装置1では、ダイナミックダンパ20により、第1中間部材12に対して逆位相の振動を付与して振動を良好に減衰することが可能となる。なお、本実施形態では、ダイナミックダンパ20の共振周波数fddがダンパ装置10の共振周波数f(ダンパ装置10からドライブシャフトまでの間における共振の周波数)の例えば±10(Hz)の範囲内に含まれるように(0.90×f≦fdd≦1.10×fを満たすように)第3スプリングSP3等の諸元が定められる。これにより、エンジンの回転数が例えば1000rpm程度と極低く定められたロックアップ回転数に達した段階でロックアップを実行して動力伝達効率ひいてはエンジンの燃費を向上させると共に自励振動を抑制することが可能となる。
【0054】
以上説明したように、発進装置1のダンパ装置10は、回転要素としての第1中間部材12に連結される第3スプリングSP3および当該第3スプリングSP3に連結される質量体を有するダイナミックダンパ20を備えるものである。そして、ダイナミックダンパ20を構成する第3スプリングSP3は、外側スプリングSP1と周方向に並ぶようにダンパ装置10の外周に近接して配置される。これにより、ダイナミックダンパ20を構成する第3スプリングSP3を外側スプリングSP1や第1および第2内側スプリングSP21,SP22の径方向における外側または内側、あるいは径方向における外側スプリングSP1と第1および第2内側スプリングSP21,SP22との間に配置する場合に比べて、ダンパ装置10の外径の増加を抑制して装置全体をよりコンパクト化することが可能となる。更に、外側スプリングSP1および第3スプリングSP3の剛性(バネ定数)が高くなり過ぎるのを抑制すると共に第1および第2内側スプリングSP21,SP22の剛性(バネ定数)を低下させ、ダイナミックダンパ20を備えたダンパ装置の減衰性能をより向上させることができる。
【0055】
また、上記実施形態のように、ダンパ装置10の軸心と外側スプリングSP1の軸心との距離r1と、ダンパ装置10の軸心と第3スプリングSP3の軸心との距離r3とを等しくすれば、ダンパ装置10の外径の増加をより良好に抑制することが可能となる。更に、外側スプリングSP1の軸心と第3スプリングSP3の軸心とがダンパ装置10の軸心と直交する同一平面PL内に含まれるようにすれば、ダンパ装置10の軸長の増加をも抑制することができるので装置全体をよりコンパクト化することが可能となる。ただし、ダンパ装置10の軸心と外側スプリングSP1の軸心との距離r1と、ダンパ装置10の軸心と第3スプリングSP3の軸心との距離r3とは、完全に一致している必要はなく、設計公差等により若干相違してもよい。同様に、外側スプリングSP1の軸心と第3スプリングSP3の軸心とは、完全に同一の平面内に含まれていなくてもよく、設計公差等により軸方向に若干ズレてもよい。
【0056】
更に、ダンパ装置10において、ドライブ部材11のスプリング当接部(入力側当接部)11bは、第1中間部材12を構成する第1プレート部材13に形成された開口部13bを介して第1プレート部材の環状ガイド部13aの内側に突出すると共に第2プレート部材14のスプリング当接部(中間側当接部)14bよりも径方向内側で外側スプリングSP1と当接する。また、連結部材21に設けられた複数のスプリング当接部23は、第1中間部材12のスプリング当接部14bよりも径方向外側でそれぞれに対応した第3スプリングSP3の端部と当接する。すなわち、上記実施形態において、ダンパ装置10の軸心とスプリング当接部(入力側当接部)11bとの距離(例えば軸心からスプリング当接部の厚み方向における中心線までの距離)、ダンパ装置10の軸心とスプリング当接部(中間側当接部)14bとの距離、およびダンパ装置10の軸心とスプリング当接部(弾性体当接部)23との距離は、互いに異なる。
【0057】
これにより、ドライブ部材11のスプリング当接部11b、第1中間部材12のスプリング当接部14bおよび連結部材21のスプリング当接部23が、この順番で内側から外側に向けて配置されるので、ドライブ部材11、第1中間部材12および連結部材21が回転する際に、これら3つの部分が互いに干渉しないようにして、外側スプリングSP1および第3スプリングSP3のストロークを充分に長く確保することが可能となる。ただし、スプリング当接部11b、スプリング当接部14bおよびスプリング当接部23は、必ずしもこの順番で内側から外側に向けて径方向に離間して配置される必要はなく、外側スプリングSP1や第3スプリングSP3に要求されるストロークによっては、これら3つの部分のうちの2つを残余の1つの径方向外側または径方向内側に配置してもよい。すなわち、ダンパ装置10の軸心とスプリング当接部(入力側当接部)11bとの距離、ダンパ装置10の軸心とスプリング当接部(中間側当接部)14bとの距離、およびダンパ装置10の軸心とスプリング当接部(弾性体当接部)23との距離の何れか1つが残余の2つと異なるようにしてもよい。
【0058】
また、第3スプリングSP3の両端部は、ダンパ装置10の取付状態において、連結部材21の一対(2つ)のスプリング当接部23により支持されると共に、それぞれ第2プレート部材14の対応するスプリング当接部14bと当接するが、これに限られるものではない。すなわち、ダイナミックダンパ20を構成する第3スプリングSP3の数を適宜増やすと共に、連結部材21に互いに隣り合う2つの第3スプリングSP3の間で両者の端部と当接するスプリング当接部を設け、当該スプリング当接部を介して隣り合う2つの第3スプリングSP3を両側から中間部材等のスプリング当接部により支持してもよい。これにより、1本の第3スプリングSP3を少なくとも一対のスプリング当接部により両側から支持する場合に生じがちな製造交差に起因したガタ、すなわち第3スプリングSP3の端部とスプリング当接部との隙間を無くすことができるので、ダイナミックダンパ20をよりスムースに作動させることが可能となる。
【0059】
図5は、変形態様に係る発進装置1Bを示す部分断面図である。同図に示す発進装置1Bは、上述の発進装置1において単板油圧式のロックアップクラッチ8を多板油圧式のロックアップクラッチ8Bに置き換えたものに相当する。ロックアップクラッチ8Bは、フロントカバー3に固定されたセンターピース30により軸方向に移動自在に支持されるロックアップピストン80Bと、ロックアップピストン80Bと対向するようにフロントカバー3の内面に固定される環状のクラッチハブ81と、クラッチドラム82と、クラッチハブ81の外周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第1摩擦係合プレート83(セパレータプレート)と、クラッチドラム82の内周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第2摩擦係合プレート(両面に摩擦材を有する摩擦板)84とを含む。更に、ロックアップクラッチ8Bは、ロックアップピストン80Bを基準としてフロントカバー3とは反対側に位置するように、すなわちロックアップピストン80Bよりもダンパハブ7およびダンパ装置10側に位置するようにフロントカバー3のセンターピース30に取り付けられる環状のフランジ部材(油室画成部材)85と、フロントカバー3とロックアップピストン80Bとの間に配置される複数のリターンスプリング86とを含む。
【0060】
このような多板油圧式のロックアップクラッチ8Bを含む発進装置1Bでは、クラッチドラム82にダンパ装置10のドライブ部材11の固定部11aが連結または一体化される。また、発進装置1Bでは、ロックアップピストン80Bとフランジ部材85とにより画成されるロックアップ室(係合油室)89に図示しない油圧制御装置から作動油(ロックアップ圧)を供給することで、第1および第2摩擦係合プレート83,84をフロントカバー3に向けて押圧するようにロックアップピストン80Bを軸方向に移動させ、それによりロックアップクラッチ8Bを係合(完全係合あるいはスリップ係合)させることができる。そして、発進装置1Bにおいても、ダンパ装置10により奏される作用効果を得ることが可能である。
【0061】
図6は、変形態様に係るダンパ装置10Cを含む発進装置1Cを示す部分断面図である。同図に示すダンパ装置10Cのドライブ部材11Cは、複数の外側スプリングSP1をタービンランナ5側から囲んでガイドするスプリング包囲部(弾性体包囲部)111aを有する環状の第1入力部材111と、複数のリベットを介して第1入力部材111に連結される環状の第2入力部材112とを含む。第1入力部材111には、それぞれスプリング包囲部111aのタービンランナ5側の側壁部を貫通するように複数の開口部111bが等間隔に形成されている。また、第1入力部材111は、ロックアップクラッチ8のロックアップピストン80Cの外周部に形成された凹凸係合部に嵌め込まれる凹凸係合部111cを有する。第1入力部材111の凹凸係合部111cをロックアップピストン80Cの凹凸係合部に嵌め込むことで、ドライブ部材11Cとロックアップピストン80Cとが一体回転可能に連結(嵌め合い連結)される。
【0062】
また、第2入力部材112は、第1入力部材111のスプリング包囲部111aの内側で対応する外側スプリングSP1をガイドする複数のスプリングガイド部(スプリング支持部)112aと、ポンプインペラ4やタービンランナ5に向けて軸方向に延びる複数のスプリング当接部(入力側当接部)112bとを有する。
図6のダンパ装置10Cにおいて、第2入力部材112は、ドリブン部材16の外周面により調心されると共に、回転自在に支持される。
【0063】
更に、ダンパ装置10Cでは、複数の内側スプリングSP20としてアークスプリングが採用されており、それに伴って、ダンパ装置10における第2中間部材15が省略されている。これにより、内側スプリングSP20をより低剛性化し(バネ定数を小さくし)、ダンパ装置10Cをより低剛性化(ロングストローク化)することができる。また、ダンパ装置10Cの中間部材(中間要素)12Cを構成する第1プレート部材13Cおよび第2プレート部材14Cは、それぞれ対応する内側スプリングSP20の端部と当接するスプリング当接部(図示省略)を有し、ドリブン部材16は、それぞれ対応する内側スプリングSP20の端部と当接するスプリング当接部(図示省略)を有する。
【0064】
そして、ダンパ装置10Cにおいて、中間部材(中間要素)12Cを構成する第2プレート部材14Cは、スプリング当接部(中間側当接部)14bが第1入力部材111のスプリング包囲部111a内で外側スプリングSP1の端部と第3スプリングSP3の端部と当接可能となるように第1入力部材111と第2入力部材112との間に配置される。また、ダイナミックダンパ20を構成する連結部材21のスプリング当接部23は、第1入力部材111に形成された開口部111bを介してスプリング包囲部111a内に突出すると共に第2プレート部材14Cのスプリング当接部14bよりも径方向外側で対応する第3スプリングSP3の端部と当接する。更に、第2入力部材112(ドライブ部材11C)の各スプリング当接部112bは、連結部材21のスプリング当接部23よりも径方向外側で外側スプリングSP1の端部と当接する。すなわち、ダンパ装置10Cの軸心とスプリング当接部(中間側当接部)14bとの距離、ダンパ装置10Cの軸心とスプリング当接部(弾性体当接部)23との距離、およびダンパ装置10Cの軸心とスプリング当接部(入力側当接部)112bとの距離は、互いに異なる。
【0065】
これにより、中間部材12Cのスプリング当接部14b、連結部材21のスプリング当接部23、およびドライブ部材11Cのスプリング当接部112bが、この順番で内側から外側に向けて配置されるので、ドライブ部材11、第1中間部材12および連結部材21が回転する際に、これら3つの部分が互いに干渉しないようにして、外側スプリングSP1および第3スプリングSP3のストロークを充分に長く確保することが可能となる。ただし、スプリング当接部14b、スプリング当接部23、およびスプリング当接部112bは、必ずしもこの順番で内側から外側に向けて径方向に離間して配置される必要はなく、外側スプリングSP1や第3スプリングSP3に要求されるストロークによっては、これら3つの部分のうちの2つを残余の1つの径方向外側または径方向内側に配置してもよい。すなわち、ダンパ装置10Cの軸心とスプリング当接部(中間側当接部)14bとの距離、ダンパ装置10Cの軸心とスプリング当接部(弾性体当接部)23との距離、およびダンパ装置10Cの軸心とスプリング当接部(入力側当接部)112bとの距離の何れか1つが残余の2つと異なるようにしてもよい。
【0066】
また、
図6の発進装置1Cにおいて、ダンパ装置10Cの中間部材12Cを構成する第1プレート部材13Cは、第2プレート部材14Cとの連結部から外側スプリングSP1と軸方向に並ぶようにフロントカバー3側かつ径方向外側に延出された質量体支持部13sを有する。そして、第1プレート部材13Cの質量体支持部13sは、複数の振子質量体24を周方向に隣り合うように揺動自在に支持する。これにより、支持部材としての第1プレート部材13Cと、複数の振子質量体24とにより、遠心振子式吸振装置25が構成される。
図6に示すように、遠心振子式吸振装置25は、ロックアップピストン80Cとダンパ装置10Cとの間に位置するように流体伝動室9内に配置され、ロックアップピストン80Cとドライブ部材11Cの第1入力部材111とによりフロントカバー3側(エンジン側)および径方向外側から包囲される。また、各振子質量体24は、ダンパ装置10の各外側スプリングSP1と軸方向に並ぶ。
【0067】
遠心振子式吸振装置25において、各振子質量体24は、質量体支持部13sに所定の間隔をおいて複数形成された例えば略円弧状の長穴であるガイド穴に転動自在に挿通される支軸(ころ)と、当該支軸の両端に固定される2枚の金属板(錘)とから構成される。ただし、遠心振子式吸振装置25の構成は、このようなものに限られない。また、遠心振子式吸振装置25は、ダンパ装置10Cのドライブ部材11C(入力要素)や、ドリブン部材(出力要素)16と一体に回転するように構成されてもよい。
【0068】
上述のように構成される発進装置1Cのダンパ装置10Cにおいても、上述のダンパ装置10と同様の作用効果を得ることが可能である。また、ダンパ装置10Cに連結された遠心振子式吸振装置25は、各振子質量体24を支持する支持部材としての第1プレート部材13C(中間部材12C)の回転に伴って複数の振子質量体24が当該第1プレート部材13Cに対して同方向に揺動することで、ダンパ装置10の中間部材12Cに対して当該中間部材12Cの振動とは逆方向の位相を有する振動を付与する。これにより、発進装置1Cでは、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際に、遠心振子式吸振装置25により、外側スプリングSP1と内側スプリングSP20との間で振動しがちな中間部材(中間要素)12Cの振動を吸収(減衰)すると共に、ダンパ装置10の振動レベルを全体的に低下させることが可能となる。
【0069】
図7は、他の変形態様に係る発進装置1Dを示す概略構成図である。同図に示す発進装置1Dは、上述の発進装置1Cにおいて単板油圧式のロックアップクラッチ8を
図5のロックアップクラッチ8Bと同様に構成された多板油圧式のロックアップクラッチ8Dに置き換えたものに相当する。そして、発進装置1Dでは、ダンパ装置10Cの第1入力部材111に形成された凹凸係合部111cをロックアップクラッチ8Dのクラッチドラム82Dの外周部に形成された凹凸係合部に嵌め込むことで、ドライブ部材11Cとクラッチドラム82Dとが一体回転可能に連結(嵌め合い連結)される。このように構成される発進装置1Dにおいても、上述のダンパ装置10Cにより奏される作用効果を得ることが可能である。
【0070】
なお、上述のダンパ装置10,10Cでは、第1および第2中間部材12,15または中間部材12Cを介して外側スプリングSPおよび第1および第2内側スプリングSP21,SP22または内側スプリングSP20が直列に作用するが、ダンパ装置10,10Cは、外側スプリングSPおよび第1および第2内側スプリングSP21,SP22または内側スプリングSP20が並列に作用するように構成されてもよい。すなわち、ダンパ装置10,10Cは、回転要素としてドライブ部材、中間部材、およびドリブン部材を有する直列式ダンパ装置として構成されてもよく、回転要素としてドライブ部材、中間部材、およびドリブン部材を有する並列式ダンパ装置として構成されてもよい。また、発進装置1,1B,1Cおよび1Dでは、ダイナミックダンパ20の質量体がタービンランナ5や連結部材21により構成されるが、ダイナミックダンパ20は、タービンランナ5とは異なる専用の質量体を有するものとして構成されてもよい。
【0071】
そして、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。