【実施例】
【0031】
以下の表1、表2に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合し、このフラックスを使用して実施例と比較例のソルダペーストを調合して、ソルダペースト中のフラックスとポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応性、フラックスの洗浄性、はんだ付け性について検証した。なお。表1における組成率は質量%である。
【0032】
また、金属粉は、Agが3.0質量%、Cuが0.5質量%、残部がSnであるSn−Ag−Cu系のはんだ合金であり、粒径はφ20〜38μmである。更に、ソルダペーストは、フラックスが11質量%、金属粉が89質量%である。
【0033】
<フラックスとポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応性の評価>
(1)検証方法
シリコンウェハに所定の開口が設けられたマスクを形成して、実施例または比較例のソルダペーストを塗布し、マスクを除去した後、窒素雰囲気下にてリフローを行った。リフロー条件は、室温から250℃まで1℃/sの昇温速度で昇温した後、250℃にて30秒保持した。リフロー後のシリコンウェハを、40℃に保温した洗浄液にて浸漬洗浄し、乾燥させた。そして、ウェハの外観検査で、ポリイミド(PI)及びポリベンゾオキサゾール(PBO)の部分に変色・膨潤、あるいは、シリコンウェハからの剥離が確認された場合は、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応性があると判断した。
【0034】
検証の結果、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応が見られなかったものを○、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応が見られたものを×と評価した。
【0035】
<フラックスの洗浄性の評価>
(1)検証方法
シリコンウェハに所定の開口が設けられたマスクを形成して、実施例または比較例のソルダペーストを塗布し、マスクを除去した後、窒素雰囲気下にてリフローを行った。リフロー条件は、室温から250℃まで1℃/sの昇温速度で昇温した後、250℃にて30秒保持した。リフロー後のウェハを、40℃に保温した洗浄液にて浸漬洗浄し、乾燥させた。
【0036】
検証の結果、フラックスの残渣が見られなかったものを○、一部残渣が見られたものを△、残渣が見られたものを×と評価した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
第1の溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物、ジグリセリンPO付加物またはグリセリンEO/PO付加物を含有させた実施例1〜実施例20では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄液による洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。
【0040】
ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応性について、第1の溶剤として所定量のグリセリンEO/PO付加物を含有させ、第2の溶剤として所定量のフェニルグリコールを含有させた実施例1、第1の溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含有させた実施例2、第1の溶剤として所定量のジグリセリンPO付加物を含有させた実施例3では、いずれも良好な効果が得られた。
【0041】
また、第1の溶剤として所定量のグリセリンEO/PO付加物とジグリセリンEO付加物を含有させた実施例4でも、良好な効果が得られた。更に、図示しないが、第1の溶剤としてジグリセリンEO付加物、ジグリセリンPO付加物、グリセリンEO/PO付加物の2種以上を組み合わせた他の実施例でも、同様の結果が得られた。
【0042】
なお、実施例1〜実施例4では、第2の溶剤として所定量のフェニルグリコールを含有させている。これに対し、第2の溶剤として2-エチルヘキシルジグリコールを含有させた実施例5、第2の溶剤としてターピネオールを含有させた実施例6、第2の溶剤としてへキシレングリコールを含有させた実施例7でも、良好な効果が得られた。
【0043】
また、第2の溶剤として他のグリコールエーテル系溶剤、例えばヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール等の何れかを含有させた他の実施例でも、同様の結果が得られた。
【0044】
更に、第2の溶剤として、ターピネオール、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、へキシレングリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール等の2種以上を組み合わせた他の実施例でも、同様の結果が得られた。
【0045】
これに対し、第1の溶剤としてグリセリンEO付加物を含有させた比較例1及び比較例2では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応が見られた。
【0046】
これにより、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応性を考慮すると、グリセリンEO/PO付加物、ジグリセリンEO付加物、または、ジグリセリンPO付加物を溶剤として使用することが好ましいことが判る。
【0047】
なお、フラックス残渣の洗浄性について、実施例1〜実施例7は、何れも良好な効果が得られた。
【0048】
以上のことから、フラックス中の溶剤として、ジグリセリンEO付加物、ジグリセリンPO付加物、または、グリセリンEO/PO付加物を本発明の範囲内で含むソルダペーストでは、フラックスと、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応が抑制されることが判った。また、リフロー後のフラックス残渣の洗浄を行えることが判った。
【0049】
また、有機酸の含有量、種類を変更した実施例8〜実施例11、アミンの含有量、種類を変更した実施例12〜実施例14、ハロゲンを含有させた実施例15〜実施例16でも、同様の結果が得られた。
【0050】
その他、第1の溶剤と第2の溶剤の合計の含有量を上限値とした実施例17、界面活性剤を含有させた実施例18〜実施例19、第1の溶剤と第2の溶剤の含有量を所定の範囲内で増減させた実施例20でも、同様の効果が得られた。
【0051】
このように、フラックス中に有機酸を本発明の範囲内で含むことでも、フラックスと、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応を抑制する効果が阻害されないことが判った。
【0052】
有機酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、プロピオン酸、2,2−ビスヒロドキシメチルプロピオン酸、2,2−ビスヒロドキシメチルブタン酸、グリコール酸、ジグリコール酸、リンゴ酸、酒石酸等の何れか、または2種以上を組み合わせた他の実施例でも、同様の結果が得られた。
【0053】
また、活性補助剤として、更に、アミン、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物のいずれか、または、2種以上の組み合わせを、本発明の範囲内で含むことでも、フラックスとポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応を抑制する効果が阻害されないことが判った。
【0054】
アミンとしては、脂肪族アミンとして、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等の何れか、または、2種以上を組み合わせた他の実施例、芳香族アミンとして、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等の何れか、または、2種以上を組み合わせた他の実施例でも、同様の効果が得られた。
【0055】
更に、アミノアルコール類として、N,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N',N'',N''-ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等の何れか、または、2種以上を組み合わせた他の実施例でも、同様の効果が得られた。
【0056】
また、イミダゾール類として、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1Hピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン等の何れか、または、2種以上を組み合わせた他の実施例でも、同様の効果が得られた。
【0057】
アミンハロゲン化水素酸塩としては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のアミンと、塩素、臭素、ヨウ素の水素化物が反応した他の実施例でも同様の効果が得られた。
【0058】
有機ハロゲン化合物としては、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール等の何れか、または、2種以上を組み合わせた他の実施例でも同様の効果が得られた。
【0059】
更に、界面活性剤を本発明の範囲内で含むことでも、フラックスとポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応を抑制する効果が阻害されないことが判った。
【0060】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルジアミン、アセチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンエーテル等の何れか、または、2種以上を組み合わせた他の実施例でも同様の効果が得られた。グリコールエーテルとしては、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等で効果が得られた。