【実施例】
【0027】
以下の表1及び表2に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合して、フラックスとポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応性、フラックスの洗浄性、はんだ付け性について検証した。なお。表1及び表2における組成率は質量%である。
【0028】
<フラックスとポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応性の評価>
(1)検証方法
はんだめっきを行ったウェハに実施例または比較例のフラックスを塗布し、その後、窒素雰囲気下にてリフローを行った。リフロー条件は、室温から250℃まで1℃/sの昇温速度で昇温した後、250℃にて30秒保持した。リフロー後のウェハを、40℃に保温した洗浄液にて浸漬洗浄し、乾燥させた。そして、ウェハの外観検査で、ポリイミド(PI)及びポリベンゾオキサゾール(PBO)の部分に変色、膨潤、あるいは、シリコンウェハからの剥離が確認された場合は、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応性があると判断した。
【0029】
検証の結果、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応が見られなかったものを○、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応が見られたものを×と評価した。
【0030】
<フラックスの洗浄性の評価>
(1)検証方法
はんだめっきを行ったウェハに実施例または比較例のフラックスを塗布し、その後、窒素雰囲気下にてリフローを行った。リフロー条件は、室温から250℃まで1℃/sの昇温速度で昇温した後、250℃にて30秒保持した。リフロー後のウェハを、40℃に保温した洗浄液にて浸漬洗浄し、乾燥させた。水洗浄の場合は、60℃に保温した純水にて浸漬洗浄し、乾燥させた。そして、光学顕微鏡で観察して、はんだバンプ周辺に残渣が確認されなかった場合は良好な洗浄性と判断した。
【0031】
検証の結果、フラックスの残渣が見られなかったものを○、一部残渣が見られたものを△、残渣が見られたものを×と評価した。
【0032】
<はんだ付け性の評価>
(1)検証方法
シリコンウェハのCu電極上にSn−2Agによるめっきを厚さ15μmで施す。このシリコンウェハにフラックスを均一に塗布し、N
2雰囲気下でピーク温度250℃、昇温速度2℃/secにて加熱した。加熱、洗浄後、バンプ形状を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、バンプ形状が滑らかな形状となれば〇、濡れ性(活性)の不足により荒れた凹凸が多い表面形状を×と評価した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物、ジグリセリンPO付加物、または、グリセリンEO/PO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含む実施例1〜実施例4では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0036】
ジグリセリンEO付加物について、実施例1と実施例4で含有量を増減させた結果、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応性、洗浄性、はんだ付け性とも良好な効果が得られた。グリセリンEO/PO付加物、ジグリセリンPO付加物も同様である。
【0037】
これにより、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応性を考慮すると、ジグリセリンEO付加物、ジグリセリンPO付加物、または、グリセリンEO/PO付加物を溶剤として使用することが好ましいことが判る。
【0038】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としての有機酸として所定量のグルタル酸を含む実施例5では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0039】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含み、アミンとして所定量のトリエチルアミンを含み、トリエチルアミンの含有量を増減させた実施例6、実施例7では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0040】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含み、アミンハロゲン化水素酸塩として所定量のエチルアミン・臭化水素を含む実施例8では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0041】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含み、アミンとして所定量のトリエチルアミンを含み、有機ハロゲン化合物として所定量の2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオールを含む実施例9では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0042】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としての有機酸として所定量のグルタル酸を含み、有機ハロゲン化合物として所定量の2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオールを含む実施例10では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0043】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含み、更に、界面活性剤として所定量のアセチレングリコールを含む実施例11では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0044】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含み、更に、チキソ剤として所定量のポリエチレングリコールを含む実施例12では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0045】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含み、有機酸として所定量のグルタル酸を含み、更に、有機ハロゲン化合物として所定量の2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオールを含み、チキソ剤として所定量のポリエチレングリコールを含む実施例13では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0046】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含み、更に、アミンとして所定量のトリエチルアミンを含み、チキソ剤として所定量のポリエチレングリコールを含み、添加溶剤として所定量の水を含む実施例14では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0047】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含み、更に、アミンとして所定量のトリエチルアミンを含み、チキソ剤として所定量のポリエチレングリコールを含み、添加溶剤として所定量のイソプロピルアルコールを含む実施例15では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0048】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含み、更に、アミンとして所定量のトリエチルアミンを含み、チキソ剤として所定量のポリエチレングリコールを含み、他の添加溶剤として所定量のグリコールエーテル系溶剤を含む実施例16、他の添加溶剤として所定量の1,2−ブタンジオールを含む実施例17、他の添加溶剤として所定量のテルピネオールを含む実施例18では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0049】
溶剤として所定量のジグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含み、更に、アミンとして所定量のトリエチルアミンを含み、チキソ剤として所定量のポリエチレングリコールを含み、ロジンとして所定量の重合ロジンを含む実施例19では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。更に、良好なはんだ付け性が得られた。
【0050】
なお、ジグリセリンEO付加物を100質量%とした比較例1では、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応は見られなかった。また、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。但し、良好なはんだ付け性が得られなかった。
【0051】
溶剤として所定量のグリセリンEO付加物を含み、活性剤としてのアルジトールとして所定量のグリセリンを含む比較例2では、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。また、良好なはんだ付け性が得られた。但し、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応が見られた。
【0052】
アルキレンオキシド・レゾルシン共重合物を100質量%とした比較例3では、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。但し、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応が見られた。また、良好なはんだ付け性が得られなかった。
【0053】
溶剤としてグリコールエーテル系溶剤の含有量を増やし、ジグリセリンEO付加物の含有量を減らし、活性剤としてのアルジトールとして所定のグリセリンを含み、更に、アミンとして所定量のトリエチルアミンを含み、チキソ剤として所定量のポリエチレングリコールを含む比較例4では、洗浄後にフラックス残渣が見られなかった。また、良好なはんだ付け性が得られた。但し、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応が見られた。
【0054】
以上のことから、溶剤として、ジグリセリンEO付加物、ジグリセリンPO付加物、または、グリセリンEO/PO付加物を本発明の範囲内で含むことで、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応が抑制されることが判った。
【0055】
また、ジグリセリンEO付加物、ジグリセリンPO付加物、または、グリセリンEO/PO付加物を本発明の範囲内で含むことで、フラックス残渣の洗浄を行えることが判った。更に、ジグリセリンEO付加物、ジグリセリンPO付加物、または、グリセリンEO/PO付加物を本発明の範囲内で含むことで、良好なはんだ付け性が得られることが判った。
【0056】
また、活性剤として、アルジトール、有機酸のいずれか、または、2種の組み合わせを、本発明の範囲内で含むことでも、フラックスとポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応を抑制する効果が阻害されないことが判った。
【0057】
アルジトールとしては、ジグリセリン、ポリグリセリン等でも同様の効果が得られた。有機酸としては、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、プロピオン酸、ジグリコール酸等の何れか、または2種以上を組み合わせた他の実施例でも、同様の効果が得られた。
【0058】
活性補助剤として、更に、アミン、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物のいずれか、または、2種以上の組み合わせを、本発明の範囲内で含むことでも、フラックスとポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応を抑制する効果が阻害されないことが判った。
【0059】
アミンとしては、エチルアミン、エチレンジアミン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等でも同様の効果が得られた。アミンハロゲン化水素酸塩としては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のアミンと、塩素、臭素、要素の水素化物が反応した他の塩でも同様の効果が得られた。
【0060】
有機ハロゲン化合物としては、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール等の何れか、または2種以上を組み合わせた他の実施例でも、同様の効果が得られた。
【0061】
更に、界面活性剤、チキソ剤、他の添加溶剤、ロジンの何れか、または、2種以上の組み合わせを、本発明の範囲内で含むことでも、フラックスとポリイミド及びポリベンゾオキサゾールとの反応を抑制する効果が阻害されないことが判った。
【0062】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンエーテル等でも同様の効果が得られた。グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の何れか、または2種以上を組み合わせた他の実施例でも、同様の効果が得られた。