(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
河川を流れる水を用いて水車を回転させる水力発電機の運転を制御する制御装置であって、前記水車に供給される水の量及び水の供給時間を制御する制御部を備える制御装置と、
前記河川からの単位時間あたりの取水量を算出する第1算出部と、前記水車に供給する前記単位時間あたりの水量を発電効率が最高となる所定水量とした場合に前記水力発電機を運転可能な運転継続時間を算出する第2算出部とを含む演算装置と、
河川を流れる水の一部を貯留する貯留部と、
前記貯留部の水位を検知する検知装置と、を備え、
前記所定水量は、前記水車に供給可能な前記単位時間あたりの上限水量未満の水量であり、
前記貯留部は、取水ゲートが設けられた取水口を介して河川から取得されて流路を所定時間かけて流れた水を貯留し、貯留した水を水車に供給し、
前記制御部は、前記水車に前記所定水量を供給する時間を前記運転継続時間とし、
前記運転継続時間が前記所定時間を上回る場合、前記制御部は、前記水車に供給する前記単位時間あたりの水量を前記所定水量よりも多くし、
前記水車に供給する前記単位時間あたりの水量を前記水車に供給可能な単位時間あたりの上限水量とした条件下で前記貯留部の水位が所定の制御ルールで定められた水位に達した場合、前記取水ゲートを閉じる又は前記取水ゲートの開き具合を小さくする
水力発電の制御システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水に対して水車の位置を変動させる構成は、水車が大きくなるほど困難になる。また、既に水路に対して固定されている水車に対してこのような構成を適用することはできない。
【0005】
従来、一般的には、水車に供給される水の流量が河川を流れる水の流量に応じて変動するため、発電効率の観点で必ずしも高い効率で水車を回転させることができなかった。このような事情を鑑み、より高い効率で水力発電を行うことができる仕組みが求められていた。
【0006】
本発明では、より高い効率で水力発電を行うことができる水力発電の制御システム及び水力発電の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の水力発電の制御システムは、河川を流れる水を用いて水車を回転させる水力発電機の運転を制御する制御装置であって、前記水車に供給される水の量及び水の供給時間を制御する制御部を備える制御装置と、前記河川からの単位時間あたりの取水量を算出する第1算出部と、前記水車に供給する前記単位時間あたりの水量を発電効率が最大となる所定水量とした場合に前記水力発電機を運転可能な運転継続時間を算出する第2算出部とを含む演算装置と、を備え、前記所定水量は、前記水車に供給可能な前記単位時間あたりの上限水量未満の水量であり、前記制御部は、前記水車に前記所定水量を供給する時間を前記運転継続時間とする。
【0008】
本発明の望ましい態様として、河川を流れる水の一部を貯留する貯留部を備え、前記貯留部は、取水口を介して河川から取得されて流路を所定時間かけて流れた水を貯留し、貯留した水を水車に供給し、前記運転継続時間が前記所定時間以下である場合、前記制御部は、前記水車に前記所定水量を供給する時間を前記運転継続時間とする。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記運転継続時間が前記所定時間を上回る場合、前記制御部は、前記水車に供給する前記単位時間あたりの水量を前記所定水量よりも多くする。
【0010】
本発明の望ましい態様として、河川を流れる水の一部を貯留する貯留部と、前記貯留部の水位を検知する検知装置と、を備え、河川から取水された水は、前記貯留部に貯留されてから前記水車に供給され、前記運転継続時間経過後に前記貯留部の水位が所定水位以下になった場合、前記制御部は、前記水車に供給する水量を低減させる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記演算装置は、前記運転継続時間の情報を送信する送信部を有し、前記制御装置は、前記運転継続時間の情報を受信する受信部を有し、前記送信部と前記受信部との間の通信回線は、無線通信回線を含む。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の水力発電の制御方法は、河川を流れる水を用いて水車を回転させる水力発電機の運転を制御する水力発電の制御システムによる水力発電の制御方法であって、前記河川からの単位時間あたりの取水量を算出し、前記水車に供給する前記単位時間あたりの水量を発電効率が最高となる所定水量とした場合に前記水力発電機を運転可能な運転継続時間を算出し、前記水車に前記所定水量を供給する時間を前記運転継続時間とし、前記所定水量は、前記水車に供給可能な前記単位時間あたりの上限水量未満の水量である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より高い効率で水力発電を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水力発電の制御システム1の主要構成を示す図である。水力発電の制御システム1は、検知装置53と、制御装置10と、演算装置20とを備える。
【0016】
制御装置10は、河川81を流れる水の一部を貯留する貯留部(水槽80)を介して供給される水を用いて、発電機91と連結された水車92を回転させる水力発電機に設けられる。水槽80は、水槽80の上流側に設けられた取水口30を通過してから所定時間(to)かけて流路82を流れる水を貯留する。水槽80は、貯留した水を水車92に供給する。具体的には、取水口30を介して河川81から取得された水を水槽80に流し込むための流路82が河川81と水槽80との間に設けられている。取水口30には、取水ゲート31が設けられている。取水口30から流路82を流れて水槽80に流れ込む水量は、取水ゲート31の開閉の度合いに応じる。取水ゲート31は、取水ゲート31を動作させる各種の機構を有する取水ゲート駆動装置32により駆動される。本実施形態では、取水ゲート31の開度は、取水ゲート駆動装置32が管理している。なお、開度とは、開き具合を示し、例えば0[%]から100[%]の範囲内の数値[%]で表される。取水ゲート駆動装置32は、例えば第1移動通信部41を介して通信回線Nと接続されている。
【0017】
水力発電の制御システム1が行う各種の通信で利用される通信回線Nは、無線通信回線を含む。具体的には、通信回線Nは、例えばLTE(Long Term Evolution)等の移動通信システムによる通信回線を含む。第1移動通信部41並びに後述する第2移動通信部42及び第3移動通信部43は、当該移動通信システムを用いた無線通信を行うためのモジュールを有しており、当該モジュールを動作させることで無線通信を行う。
【0018】
河川81から水車92までの水の経路において取水ゲート31の上流側と下流側には、水位計(例えば、水位計51,52)が設けられている。水位計51,52は、例えば所定原理で水位を測定する投込圧力式水位計である。所定原理は、例えば、差動トランス式、半導体式、超音波式、電波式、気泡式、静電容量式、フロート式、浮子転倒式、電極式のいずれかであるが、これに限られるものでなく、水位を測定可能な方式であれば適宜利用可能である。水位計51,52は、第2移動通信部42を介して水槽80の水位を示すデータ(第1水位データ及び第2水位データ)を送信する。なお、
図1では、取水ゲート31の上流側の水位計51と取水ゲート31の下流側の水位計52が第2移動通信部42を共有しているが、第2移動通信部42と同様の構成が水位計51と水位計52の各々に設けられていてもよい。
【0019】
検知装置53は、水槽80の水位を測定する。具体的には、検知装置53は、水槽80に設けられて所定原理で水位を測定する投込圧力式水位計を有する。検知装置53は、第3移動通信部43を介して水槽80の水位を示すデータ(第3水位データ)を送信する。
【0020】
制御装置10は、制御部11と、第1通信部12とを備える。制御部11は、水車92に供給される水の量及び水の供給時間を制御する。具体的には、制御部11は、例えば水槽80から水車92に供給される水の供給路に設けられたガイドベーン60を動作させて、ガイドベーン60の開き具合を変化させることで水車92に供給される単位時間あたりの水量を制御する。単位時間は任意の時間であるが、本実施形態では、例えば1[秒]である。より具体的には、制御部11は、ガイドベーン60を動作させる駆動回路等を有する。制御部11は、例えば演算装置20の指令に応じてガイドベーン60の動作を制御する。
【0021】
図2、
図3は、ガイドベーン60の模式図である。
図3では、水車92に流れ込む水Wを模式的に図示している。
図2、
図3に示すように、ガイドベーン60は、水車92を取り巻くよう配置された複数の羽根状部材61を有する。複数の羽根状部材61の各々は、回動可能に設けられる。ガイドベーン60は、複数の羽根状部材61の回動によって隣接する羽根状部材61同士の間の隙間の開閉及び開き具合を調節可能に設けられている。
図2に示すようにガイドベーン60が閉じている場合、羽根状部材61同士の間は閉じられて隙間がなく、水が流れない。
図3に示すようにガイドベーン60が開いている場合、羽根状部材61同士の間の隙間に、水車92に供給される水(
図3に示す水W)が流れる。
【0022】
第1通信部12は、通信回線Nを介して受信したデータを制御部11に出力する。具体的には、第1通信部12は、例えば所定規格での通信を行うネットワークインタフェースコントローラ(NIC:Network Interface Controller)を有している。所定規格として、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコル・スイートを含む所謂インターネット・プロトコル・スイートが挙げられるが、これはあくまで制御装置10と演算装置20との間の通信に際して採用される規格の一例であってこれに限られるものでない。所定規格の具体的内容は、適宜変更可能である。
【0023】
演算装置20は、制御装置10を介した発電機91の動作制御に関する演算を行う。演算装置20は、例えば、記憶部21と、演算部22と、第2通信部23と、表示部24と、入力部25とを備える。
【0024】
記憶部21は、参照データ21a及び制御プログラム21bを含む各種のデータを記憶する記憶装置を有する。この記憶装置は、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリー、その他、情報処理装置で用いられ得る記憶装置のいずれか又は複数を含む。
【0025】
図4は、参照データ21aの内容の一例を示す図である。参照データ21aは、水量算出用データ71、所定時間(to)を示すデータ(所要時間データ72)、所定水位等の基準となる水位を示すデータ(基準水位データ73)、効率データ74等、演算部22による各種の処理で参照される各種のデータを含む。水量算出用データ71は、水位計51,52により測定された水位と河川81から取得された水量との対応関係を示すデータである。言い換えれば、水量算出用データ71を参照して水位計51,52により測定された水位に対応する水量を特定することで、これらの水位が測定された時点における単位時間あたりでの河川81からの取水量を求めることができる。所定時間(to)とは、取水口30を介して河川81から取得された水が水槽80に流れ込むまでに流路82を流れる時間である、所定時間(to)は、予め測定されてデータ化され、所要時間データ72として記憶されている。所定水位とは、発電効率よりも水量の調節を優先するために水車92に供給する水量を低減させる際の基準となる水位を示すデータである。所定水位は、予め定められてデータ化され、基準水位データ73としてデータ化されている。基準水位データ73は、後述する下限水位を示すデータを含んでいてもよい。
【0026】
図5は、水車92に供給される水量と発電効率との関係の一例を示すグラフである。効率データ74は、水車92に供給される水量と発電効率との関係を示すデータである。例えば
図5に示すように、水車92に供給可能な単位時間あたりの水量には上限がある。この上限は、人為的取り決め(例えば、利水権)による上限である。この上限に対応する水量を供給した場合に水車92を経由して流れる水の流量は、定格流量(100[%])として定められている。一方、水車92に供給される水量と発電効率との関係において、定格流量に対応する水量が供給された場合、発電効率は最高とならない。具体的には、
図5に示すように、水車92に供給される水量と発電効率との関係を示すグラフは、発電機91による発電が可能な最小の流量(min)で最低の発電効率となり、最小の流量(min)から定格流量未満の水量qmaxにかけて流量の増加に応じて発電効率が高くなり、定格流量未満の水量qmaxで最高の発電効率となり、定格流量未満の水量qmaxから定格流量(100[%])にかけて流量の増加に応じて発電効率が低くなる線を描く。すなわち、
図5に示す例では、定格流量未満であって、定格流量未満の水量qmaxを単位時間供給した場合、発電機91の発電効率が最高(最高効率ηmax)となる。
【0027】
水量qmaxは、例えば定格流量の8割以上9割以下の水量である。より具体例を挙げると、水量qmaxは、定格流量に対応する水量を100[%]の水量とした場合、80[%]から85[%]の間の水量である。水量qmaxを示すデータは、効率データ74に含まれる。
【0028】
制御プログラム21bは、演算部22により読み出されて実行処理されるソフトウェア・プログラムである。制御プログラム21bは、制御装置10を介した発電機91の動作制御に関する各種の機能(例えば、後述する第1算出部76、第2算出部77及び指令部78としての機能。
図6参照)を実現するためのプログラムである。以下、参照データ21a及び制御プログラム21bならびに図示しない各種のソフトウェア・プログラム(例えば、オペレーティングシステム等)を総括して「プログラム等」と記載することがある。
【0029】
図6は、演算装置20の主要機能構成を示す機能ブロック図である。演算部22は、例えば1つ以上のCPU(Central Processing Unit)を有し、記憶部21から処理内容に応じたプログラム等を読み出して実行し、演算装置20の動作に関する各種の処理を行う。具体的には、演算部22は、例えば、第1算出部76、第2算出部77、指令部78として機能する。第1算出部76は、単位時間の経過前後における水槽80の水位に基づいて河川81からの単位時間あたりの取水量を算出する。第2算出部77は、水車92に供給する単位時間あたりの水量を、水車92に供給可能な単位時間あたりの上限水量(定格流量)未満である所定水量(水量qmax)とした場合の運転継続時間(t)(後述する式(2)参照)を算出する。指令部78は、制御装置10に対する指令として機能するデータを出力する。これらの機能によりもたらされる具体的な動作内容については後述する。
【0030】
第2通信部23は、送信部から送信されたデータを受信する。具体的には、第2通信部23は、例えば第1通信部12と同様、所定規格での通信を行うNIC等を有している。第2通信部23は、例えば第1移動通信部41、第2移動通信部42、第3移動通信部43から送信されたデータ(第1水位データ、第2水位データ、第3水位データ)を受信する。また、第2通信部23は、後述する指令データを制御装置10に出力する。指令データは、通信回線Nを介して伝送されて制御装置10の第1通信部12によって受信される。第1通信部12及び第2通信部23は、例えば第1移動通信部41、第2移動通信部42及び第3移動通信部43と同様、無線通信を行う構成であってもよい。
【0031】
表示部24は、演算装置20の処理内容に応じた表示出力を行う。具体的には、表示部24は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置を有し、演算部22の処理内容に応じた表示出力を行う。
【0032】
入力部25は、演算装置20に対する入力操作を受け付ける。具体的には、入力部25は、例えばキーボード、マウス等の入力装置を有し、演算装置20の管理者が行う各種の入力操作に応じた信号を生成して演算装置20に入力する。演算部22は、入力部25を介して行われた入力操作内容に応じた処理を行う。
【0033】
以下、水量の制御についてより具体的に説明する。本実施形態の水位計51,52及び検知装置53は、所定の単位時間毎に水位の計測を繰り返す。第1移動通信部41、第2移動通信部42、第3移動通信部43は、所定の単位時間毎に第1水位データ、第2水位データ、第3水位データを送信する。第1算出部76は、第1水位データが示す水位と第2水位データが示す水位を水量算出用データ71と照合し、河川81からの単位時間あたりの取水量(q[m
3/s])を算出する。
【0034】
本実施形態において、取水量(q[m
3/s])をリアルタイムに時間積分した値(∫qdt)は、水力発電で利用可能な水の総量(Q[m
3])に相当する。第1算出部76は、水力発電で利用可能な水の総量(Q[m
3])として、取水量(q[m
3/s])をリアルタイムに時間積分した値(∫qdt)を算出する。一方、発電量P[kw]に使用する水量(Qp[m
3/s])は、落差H、効率ηとすると、例えば∫P/(9.8Hη)dtとして求められる。なお、この落差Hは所謂有効落差であり、取水位と放水位の標高差(例えば、取水口30又は水槽80と水車92との標高差)により得られるエネルギーから損失落差(導水路の勾配、水圧管の摩擦等によるエネルギーの損失)を差し引いたものである。水の総量(Q[m
3])と水量(Qp[m
3/s])との差(ΔQ)は、例えば式(1)のように表すことができる。ここで、差(ΔQ)は、発電量P[kw]に対応する発電を行った後に使用することができる水の総量を示す。第2算出部77は、Q[m
3],Qp[m
3/s],ΔQを算出する。
ΔQ=∫qdt−∫P/(9.8Hη)dt…(1)
【0035】
また、差(ΔQ)が示す水量の水を用いて、水量qmaxを水車92に継続して供給した場合の運転継続時間(t)は、以下の式(2)のようになる。第2算出部77は、例えば効率データ74を参照して水量qmaxを特定し、tを算出する。このように、第2算出部77は、水車92に供給する単位時間あたりの水量を所定水量(水量qmax)とした場合の運転継続時間(t)を算出する。
t=ΔQ/qmax…(2)
【0036】
運転継続時間(t)が所定時間(to)以下である場合、水車92に供給する単位時間あたりの水量を水量qmaxとして運転継続時間(t)だけ発電を行う間に水槽80の水が増加することはない。よって、運転継続時間(t)が所定時間(to)以下である場合、指令部78は、水車92に供給する単位時間あたりの水量を水量qmaxとすることを運転継続時間(t)だけ継続させる指令(第1指令)を出力する。
【0037】
一方、運転継続時間(t)が所定時間(to)を超える場合、差(ΔQ)が示す水量の水を使い切る前に河川81から水槽80に到達する水が新たに加わる時間が生じることから、水車92に供給する水量を増やさなければ水槽80の水が増水することになる。この場合、水槽80の水が増水しすぎて溢れることを抑制する目的で、指令部78は、水車92に供給する単位時間あたりの水量を水量qmaxよりも多くする指令(第2指令)を出力する。具体的には、指令部78は、例えば、水車92に供給する単位時間あたりの水量を以下の式(3)で求められる水量Rとする。ただし、Rが定格流量を上回る場合、指令部78は、Rを定格流量とする。また、Rが定格流量を上回り続けて水槽80の水位が上がり続ける場合、指令部78は、取水ゲート31の開き具合を小さくする(又は、閉じる)ための指令を別途出力するようにしてもよい。この指令のため、検知装置53により測定された水位に基づいた制御ルール(取水ゲート31の開き具合を小さくする水槽80の水位、取水ゲート31を綴じる水槽80の水位の設定等)を設けてもよい。
R=ΔQ/to…(3)
【0038】
また、運転継続時間経過後に水槽80の水位が所定水位以下になった場合、指令部78は、水車92に供給する水量を低減させるための指令を出力する。具体的には、指令部78は、例えば水車92に供給される単位時間あたりの水量を、発電機91の出力が所定の最低出力となる水量とする指令(第3指令)を出力する。それでも水槽80の水位が下がり続け、所定の下限水位になった場合、指令部78は、発電機91の運転を停止させる指令(第4指令)を出力する。すなわち、指令部78は、水車92への水の供給を停止させる。下限水位は、所定水位以下の水位である。下限水位と所定水位とが同一である場合、第3指令と第4指令は区別されず、第4指令に統合される。この場合、最低出力での運転が省略されて、発電機91の停止にダイレクトに移行する。
【0039】
制御部11は、指令部78からの出力に応じて、水車92に所定水量(水量qmax)を供給する時間を運転継続時間とする。具体的には、指令部78が出力する各種の指令(例えば、第1指令、第2指令、第3指令、第4指令のいずれか)を示すデータ(指令データ)は、第2通信部23を介して送信され、通信回線Nを介して伝送されて制御装置10の第1通信部12によって受信され、制御部11に指令部78からの指令として入力される。第1指令が入力された場合、制御部11は、水車92に所定水量(水量qmax)を供給する時間を運転継続時間(t)とする。一方、第2指令が入力された場合、制御部11は、水車92に供給する単位時間あたりの水量を所定水量(水量qmax)よりも多くする。また、第3指令が入力された場合、制御部11は、第1指令及び第2指令が入力された場合に比して、制御部11は、水車92に供給する水量を低減させる。また、第4指令が入力された場合、制御部11は、水車92への水の供給を停止させる。制御部11が行うこれらの水量制御は、ガイドベーン60の動作制御によって実現される。このように、演算装置20は、運転継続時間の情報を送信する送信部(第2通信部23)を有する。また、制御装置10は、運転継続時間の情報を受信する受信部(第1通信部12)を有する。また、送信部と受信部との間の通信回線Nは、無線通信回線を含む。
【0040】
従来の水力発電機、特に、流れ込み式の水力発電機では、河川81を流れる水量の増減に応じて変動する河川81からの取水量の増減に発電機91の出力を従動させていた。このため、発電機91は、多くの時間において発電効率の観点では必ずしも効率的な出力を得ることができなかった。これに対し、本実施形態によれば、水車92に供給する単位時間あたりの水量を、発電機91の発電効率が最高(最高効率ηmax)となる所定水量(水量qmax)として発電機91を動作させる運転継続時間(t)を確保しやすくなるので、発電効率をより高めやすくなる。
【0041】
なお、取水ゲート駆動装置32を介した取水ゲート31の動作制御は、例えばガイドベーン60の動作制御に前後して制御部11が行うが、これに限られるものでなく、例えば演算部22がプログラム等により実現する機能の一つとして取水ゲート31の動作制御機能を設けてもよい。
【0042】
図7は、水力発電の制御システム1が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、取水ゲート31が開かれ(ステップS1)、水槽80に水が供給される。水槽80の水位が所定の起動水位以上となった(ステップS2)後、制御部11の制御下でガイドベーン60が所定の開始時開度まで開かれ、発電機91の運転が開始される(ステップS3)。起動水位は、所定水位を超える水位である。開始時開度は任意である。例えば、単位時間あたりの供給水量を水量qmaxとするための開度であってもよいし、最大開度であってもよい。その後、水槽80の水位に応じた運転が行われる(ステップS4)。ステップS4に際して、制御部11は、演算装置20が行う処理に応じてガイドベーン60を動作させて、水車92に供給される水量を制御する。
【0043】
図8は、
図7のステップS4に示す水槽80の水位に応じた運転に関して演算装置20が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。第1算出部76は、第1水位データが示す水位と第2水位データが示す水位を水量算出用データ71と照合し、河川81からの単位時間あたりの取水量(q[m
3/s])を算出する。第1算出部76は、水力発電で利用可能な水の総量(Q[m
3])として、取水量(q[m
3/s])をリアルタイムに時間積分した値(∫qdt)を算出する(ステップS11)。また、第2算出部77は、既に行われた発電による発電量(例えば、発電量P[kw])のために使用した水量(Qp[m
3/s])を算出する。具体的には、第2算出部77は、例えば∫P/(9.8Hη)dtを算出する(ステップS12)。第2算出部77は、ステップS11で算出された水の総量(Q[m
3])から、ステップS12で算出された水量(Qp[m
3/s])を差し引いて、水の総量(Q[m
3])と水量(Qp[m
3/s])との差(ΔQ)を求める(ステップS13、式(1)参照)。第2算出部77は、差(ΔQ)が示す水量の水を用いて、発電効率を最高(最高効率ηmax)とするため、所定水量(水量qmax)を水車92に継続して供給した場合の運転継続時間(t)を算出する(ステップS14、式(2)参照)。
【0044】
指令部78は、運転継続時間(t)が所定時間(to)以下であるか判定する(ステップS15)。運転継続時間(t)が所定時間(to)を超えると判定された場合(ステップS15;No)、指令部78は、水車92に供給する単位時間あたりの水量を式(3)で求められる水量Rとするため、第2指令を出力する。すなわち、指令部78は、第2指令によって、水位調節を優先した発電を行わせる(ステップS16)。ステップS16の後は、ステップS11に移行する。一方、運転継続時間(t)が所定時間(to)以下であると判定された場合(ステップS15;Yes)、指令部78は、水車92に供給する単位時間あたりの水量を水量qmaxとすることを運転継続時間(t)だけ継続させる指令(第1指令)を出力する。すなわち、指令部78は、第2指令によって、発電効率を優先した発電を行わせる(ステップS17)。
【0045】
運転継続時間経過後、指令部78は、水槽80の水位が所定水位以下になったか判定する(ステップS18)。水槽80の水位が所定水位以下になっていない場合(ステップS18;No)、水量調節又は発電効率を優先した運転を継続するための処理が再度行われる。具体的には、例えばステップS11の処理に移行する。一方、水槽80の水位が所定水位以下になったと判定された場合(ステップS18;Yes)、指令部78は、水車92に供給する水量を低減させるための指令を出力する。具体的には、指令部78は、例えば水車92に供給される単位時間あたりの水量を、発電機91の出力が所定の最低出力となる水量とする指令(第3指令)を出力する。すなわち、指令部78は、最低出力で発電機91の運転を継続させる(ステップS19)。ステップS19の処理後、水槽80の水位が下限水位以下になったか判定する(ステップS20)。水槽80の水位が下限水位以下になっていない場合(ステップS20;No)、ステップS18に移行する。すなわち、水槽80の水位が回復した可能性があるため、水槽80の水位が所定水位以下であるかの判定から再度行われることになる、一方、水槽80の水位が下限水位以下になった場合(ステップS20;Yes)。指令部78は、発電機91を停止させる指令(第4指令)を出力する。すなわち、指令部78は、水車92への水の供給を停止させる(ステップS21)。ステップS21の処理に連動して、取水ゲート31も閉じられる。
【0046】
ステップS4の処理は、取水ゲート31が閉じるまで行われる(ステップS5;No)。取水ゲート31が閉じられた場合(ステップS5;Yes)、水槽80の水位が所定の停止水位になり(ステップS6)、発電機91の運転が停止される(ステップS7)。
【0047】
以上、本実施形態によれば、水車92に供給する単位時間あたりの水量を所定水量(水量qmax)とした場合の運転継続時間(t)を算出し、水車92に所定水量を供給する時間を運転継続時間とする。これによって、所定水量を、上限水量の発電効率よりも高い発電効率が得られる水量となるようにすることで、より高い効率で水力発電を行うことができる。また、所定水量(水量qmax)を単位時間供給した場合、発電機91の発電効率が最高となる。これによって、より高い効率で水力発電を行うことができる。
【0048】
また、水槽80に貯留される水が河川81側に設けられた取水口30を通過してから所定時間(to)かけて流路82を流れる水であり、運転継続時間が所定時間(to)以下である場合、水車92に所定水量(水量qmax)を供給する時間を運転継続時間とする。これによって、水槽80の増水を抑制しながらより高い効率で水力発電を行うことができる。
【0049】
また、運転継続時間が所定時間(to)を上回る場合、水車92に供給する単位時間あたりの水量を所定水量(水量qmax)よりも多くする。これによって、水槽80の増水を抑制することができる。
【0050】
運転継続時間経過後に水槽80の水位が所定水位以下になった場合、制御部11は、水車92に供給する水量を低減させる。これによって、水槽80の水が枯渇することによる意図しない発電の停止を抑制することができる。
【0051】
また、通信回線Nが無線通信回線を含むことで、敷設される有線の構成を削減することができることに加えて、有線による送信を行う場合に比して、当該有線を設けるための設計制限事項がなくなることから、制御装置10及び演算装置20の設計要求事項を減らしやすくなる。
【0052】
なお、上記の実施形態はあくまで一例であり、本発明の技術的特徴を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。例えば、制御部11は、何らかの理由により演算装置20からの指令データを受信することができない状態になった場合に第1移動通信部41、第2移動通信部42、第3移動通信部43を介して第1水位データ、第2水位データ、第3水位データを取得してこれらの水位に応じたガイドベーン60の開度の制御を行うスタンドアロン機能を有していてもよい。
水力発電の制御システムは、河川を流れる水を用いて水車を回転させる水力発電機の運転を制御する制御装置であって、水車に供給される水の量及び水の供給時間を制御する制御部を備える制御装置と、河川からの単位時間あたりの取水量を算出する第1算出部と、水車に供給する単位時間あたりの水量を発電効率が最高となる所定水量とした場合に水力発電機を運転可能な運転継続時間を算出する第2算出部とを含む演算装置と、を備え、所定水量は、水車に供給可能な単位時間あたりの上限水量未満の水量であり、制御部は、水車に所定水量を供給する時間を運転継続時間とする。