特許第6332579号(P6332579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6332579
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0226 20160101AFI20180521BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20180521BHJP
   H01M 8/0221 20160101ALI20180521BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20180521BHJP
【FI】
   H01M8/0226
   H01M8/0213
   H01M8/0221
   H01M8/10 101
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-505482(P2018-505482)
(86)(22)【出願日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】JP2017034032
【審査請求日】2018年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-202598(P2016-202598)
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹野 文雄
(72)【発明者】
【氏名】中川 安人
【審査官】 菊地 リチャード平八郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第98/53514(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/043600(WO,A1)
【文献】 特開2013−20819(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/008951(WO,A1)
【文献】 特開2003−297382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含み、
前記黒鉛粉末のスプリングバックが20〜70%、かつ、平均粒径d50が30〜100μmであり、
前記硬化促進剤が、2位にアリール基を有するイミダゾール化合物であることを特徴とする燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物。
【請求項2】
前記スプリングバックが、20〜65%である請求項1記載の燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物。
【請求項3】
前記主剤が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびビフェニル型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤が、ノボラック型フェノール樹脂である請求項1〜3のいずれか1項記載の燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化促進剤が、2位にフェニル基を有するイミダゾール化合物である請求項1〜4のいずれか1項記載の燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物を成形してなる燃料電池用緻密質セパレータ。
【請求項7】
固有抵抗が15mΩ・cm以下、ガラス転移点135℃以上、かつ、曲げ強度50MPa以上である請求項6記載の燃料電池用緻密質セパレータ。
【請求項8】
TOCが、7ppm以下である請求項6または7記載の燃料電池用緻密質セパレータ。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項記載の燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物を、圧縮成形することを特徴とする燃料電池用緻密質セパレータの製造方法。
【請求項10】
前記圧縮成形の時間が、10秒未満である請求項9記載の燃料電池用緻密質セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池セパレータは、各単位セルに導電性を持たせる役割、並びに単位セルに供給される燃料および空気(酸素)の通路を確保するとともに、それらの分離境界壁としての役割を果たすものである。
このため、セパレータには、高電気導電性、高ガス不浸透性、化学的安定性、耐熱性および親水性などの諸特性が要求される。
【0003】
このような燃料電池セパレータのうち、黒鉛粉末と樹脂成分とを含むセパレータ用組成物から形成されるカーボンセパレータは、一般的に、当該組成物を金型内で所定時間加熱圧縮成形して形成される。
近年、燃料電池セパレータの低コスト化のために、その生産効率の向上が求められており、圧縮成形時間の短縮等、製造工程における時間の短縮化が望まれている。
【0004】
このような観点からの技術として、例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、固形分全量に対する割合が70〜80質量%の範囲である黒鉛粒子とを含有する成形材料を、金型内で10〜30秒間圧縮成形する工程を含む燃料電池セパレータの製造方法が開示されている。
しかし、特許文献1の製造方法において、金型内で圧縮成形時間として採用されている10〜30秒では、生産性は向上するものの、金型内での保持時間が短いため樹脂組成物の硬化が終了しておらず、硬化を完了させるために、さらに押圧下での加熱処理が必要となるのみならず、そのための設備も必要となるなど、生産効率という点で改良の余地がある。
しかも、この製造方法で得られた燃料電池セパレータは、溶出性を示すTOC(全有機炭素)の値が15ppm以上であり(特許文献1実施例参照)、電池性能に悪影響を及ぼすという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−020819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、10秒未満という短時間で圧縮成形した場合でも、所定の性能を満たす燃料電池用緻密質セパレータを与え得る燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定のスプリングバックおよび平均粒径を有する黒鉛粉末と、所定の硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分とを含む組成物を用いることで、10秒未満という短時間の圧縮成形でも、良好な性能を有する燃料電池用緻密質セパレータが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含み、前記黒鉛粉末のスプリングバックが20〜70%、かつ、平均粒径d50が30〜100μmであり、前記硬化促進剤が、2位にアリール基を有するイミダゾール化合物であることを特徴とする燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物、
2. 前記スプリングバックが、20〜65%である1の燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物、
3. 前記主剤が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびビフェニル型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種である1または2の燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物、
4. 前記硬化剤が、ノボラック型フェノール樹脂である1〜3のいずれかの燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物、
5. 前記硬化促進剤が、2位にフェニル基を有するイミダゾール化合物である1〜4のいずれかの燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物、
6. 1〜5のいずれかの燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物を成形してなる燃料電池用緻密質セパレータ、
7. 固有抵抗が15mΩ・cm以下、ガラス転移点135℃以上、かつ、曲げ強度50MPa以上である6の燃料電池用緻密質セパレータ、
8. TOCが、7ppm以下である6または7の燃料電池用緻密質セパレータ、
9. 1〜5のいずれかの燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物を、圧縮成形することを特徴とする燃料電池用緻密質セパレータの製造方法、
10. 前記圧縮成形の時間が、10秒未満である9の燃料電池用緻密質セパレータの製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物を用いることで、短時間で圧縮成形が終了するため、セパレータの生産性が向上する。
また、本発明の樹脂組成物を用い、10秒未満の圧縮成形時間で得られた燃料電池用緻密質セパレータは、低固有抵抗、高ガラス転移点、低TOCという優れた特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】黒鉛粉末のスプリングバック測定に用いられる金型の概略側面図である。
図2】実施例21,22および比較例13,14で作製したセパレータにおける成形時間と固有抵抗の関係を示すグラフである。
図3】実施例21,22および比較例13,14で作製したセパレータにおける成形時間と曲げ強度の関係を示すグラフである。
図4】実施例21,22および比較例13,14で作製したセパレータにおける成形時間とTOCの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物は、黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含み、黒鉛粉末のスプリングバックが20〜70%、かつ、平均粒径d50が30〜100μmであり、硬化促進剤が、2位にアリール基を有するイミダゾール化合物であることを特徴とする。
【0012】
樹脂の成形では、一般に同じ組成であっても、成形温度が高いほど、また、成形圧力が高いほど、圧縮成形時間が短くなる。しかし、成形温度を上げすぎると金型内で樹脂の急激な硬化反応による粘度上昇が起きて流動性が悪くなるので薄肉で均一なセパレータを得ることが難しくなったり、成形不良が発生して固有抵抗が高くなったりする場合がある。また、成形圧力を上げるためには、相応の出力を持つプレス機が必要となる。
本発明者らは、スプリングバックの低い黒鉛粉末を用いることにより、成形温度、成形圧力を上げたのと同様の効果が得られ、圧縮成形時間を短くできること、およびスプリングバックが低すぎると得られるセパレータの強度が弱くなることを知見した。
このような観点から、本発明では、その粉末全体のスプリングバックが20〜70%の黒鉛粉末を用いる。この範囲のスプリングバックの黒鉛を採用することで、圧縮成形時間を短くできるとともに、薄肉で均一なセパレータを得ることができる。
【0013】
なお、本発明におけるスプリングバックとは、粉末自体のスプリングバックを意味し、具体的には、後の実施例で詳述するように、粉体を所定の型内に投入して所定圧力で圧縮した場合の粉体の高さXと、圧力を解放した際の粉体の高さYとから、(Y−X)/X×100(%)で算出される値である。
【0014】
本発明の黒鉛粉末としては、全体として上記スプリングバックを満たす限り、その種類等は特に限定されるものではなく、天然黒鉛、人造黒鉛のいずれを用いてもよい。
人造黒鉛としては、従来、燃料電池用セパレータに用いられるものから適宜選択して用いればよい。その具体例としては、針状コークスを焼成した人造黒鉛、塊状コークスを焼成した人造黒鉛等が挙げられる。
一方、天然黒鉛としても、従来、燃料電池用セパレータに用いられるものから適宜選択して用いればよい。その具体例としては、塊状天然黒鉛、鱗片状天然黒鉛等が挙げられる。
いずれにおいても、後述の手法によってこれら黒鉛粉末のスプリングバックを測定し、本発明に規定される範囲のものを適宜選択すればよい。なお、これらの黒鉛粉末は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
また、本発明では、用いる黒鉛粉末全体のスプリングバックが20〜70%に調整できる限り、上記所定のスプリングバックを有する黒鉛粉末とともに、スプリングバックが20〜70%を満たさない黒鉛粉末を用いることもでき、また、スプリングバックが20%未満の黒鉛粉末と、70%を超える黒鉛粉末とを組み合わせて用いることもできる。
そのような黒鉛粉末としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
さらに、本発明では、用いる黒鉛(炭素材料)粉末全体のスプリングバックが20〜70%に調整できる限り、電極を粉砕したもの、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、コークス、活性炭、ガラス状カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のその他の炭素材料を添加してもよい。これらの炭素材料は、それぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明の黒鉛粉末において、スプリングバック20〜70%の黒鉛粉末と、それを満たさない黒鉛粉末や炭素材料とを用いる場合、それらの含有割合は、混合して得られた黒鉛粉末のスプリングバックが20〜70%となる限り特に制限はないが、スプリングバック調整の手間を省くことを考慮すると、全黒鉛粉末中、スプリングバック20〜70%の黒鉛粉末が20質量%超含まれることが好ましく、50質量%以上含まれることがより好ましく、90質量%以上含まれることがより一層好ましい。
【0017】
本発明で用いる黒鉛粉末の平均粒径(d=50)は、得られるセパレータの固有抵抗と強度とのバランスを考慮して30〜100μmとされているが、50〜100μmが好ましい。
【0018】
一方、エポキシ樹脂成分を構成する主剤としては、エポキシ基を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂単独、ビフェニル型エポキシ樹脂単独、これらの混合物が好ましい。
また、本発明で用いるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されるものではないが、180〜209g/eqが好ましい。
【0019】
エポキシ樹脂成分を構成する硬化剤としては、フェノール樹脂であれば特に限定されるものではなく、その具体例としては、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アラルキル変性フェノール樹脂、ビフェニルノボラック型フェノール樹脂、トリスフェノールメタン型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
本発明で用いるフェノール樹脂の水酸基当量は特に限定されないが、95〜240g/eqが好ましく、100〜115g/eqがより好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂成分を構成する硬化促進剤としては、2位にアリール基を有するイミダゾール化合物を用いる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられるが、フェニル基が好ましい。
2位にアリール基を有するイミダゾール化合物の具体例としては、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
なお、2−メチルイミダゾール等の短鎖アルキル基を有するイミダゾール化合物を硬化促進剤として用いると、硬化時間が速すぎて均一な成形ができず、一方、2−ウンデシルイミダゾール等の長鎖アルキル基を有するイミダゾール化合物を硬化促進剤として用いると、硬化時間が遅すぎて短時間では硬化が終了しない。
【0021】
硬化促進剤の使用量は特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度とすることができるが、0.5〜2質量部が好ましい。
【0022】
本発明の樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分(主剤、硬化剤および硬化促進剤)の配合量は、黒鉛粉末100質量部に対して10.0〜50.0質量部程度とすることができるが、20〜40質量部が好ましい。
この場合、エポキシ樹脂に対してフェノール樹脂を0.98〜1.08当量配合することが好ましく、0.99〜1.05当量配合することがより好ましい。
【0023】
さらに、本発明の樹脂組成物には、内部離型剤を配合してもよい。内部離型剤としては、従来、セパレータの成形に用いられている各種内部離型剤から適宜選択すればよく、その具体例としては、ステアリン酸系ワックス、アマイド系ワックス、モンタン酸系ワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
内部離型剤を用いる場合、その使用量としては、特に限定されるものではないが、黒鉛粉末100質量部に対して0.01〜1.5質量部が好ましく、0.05〜1.0質量部がより好ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、例えば、黒鉛粉末、エポキシ樹脂、フェノール樹脂および硬化促進剤のそれぞれを任意の順序で所定割合混合して調製すればよい。この際、混合機としては、例えば、プラネタリミキサ、リボンブレンダ、レディゲミキサ、ヘンシェルミキサ、ロッキングミキサ、ナウターミキサ等を用いることができる。
なお、内部離型剤を用いる場合、その配合順序も任意である。
【0025】
本発明の燃料電池用緻密質セパレータは、上記組成物を所定の型に入れ、圧縮成形して得ることができる。使用する型としては、成形体の表面の一方の面または両面にガス流路となる溝を形成できる、燃料電池用セパレータ作製用の金型等が挙げられる。
圧縮成形の条件は、特に限定されるものではないが、型温度が150〜190℃、成形圧力30〜60MPa、好ましくは30〜50MPaである。
上述したとおり、本発明の樹脂組成物を用いることで、10秒未満という短い圧縮成形時間で実用可能な特性を有するセパレータを得ることができ、セパレータの生産効率を上げることができる。
圧縮成形時間の下限は、所望の性能に応じて適宜設定すればよいが、実用的な固有抵抗および強度等を有するセパレータを得ることを考慮すると、3秒以上が好ましく、5秒以上がより好ましく、7秒以上がより一層好ましい。一方、上限については、特に限定されるものではなく、従来どおりの1時間程度の圧縮成形時間とすることもできるが、圧縮成形時間を長くしても性能はそれほど向上しないため、実用上の観点から、60秒程度が好ましく、30秒程度がより好ましい。
なお、圧縮成形後、熱硬化を促進させる目的で、さらに150〜200℃で1〜600分程加熱してもよいが、本発明の樹脂組成物ではこの工程を省略しても実用上十分な性能を有するセパレータを得ることができる。
【0026】
本発明において、上記圧縮成形して得られた燃料電池用緻密質セパレータには、スキン層の除去や表面粗さ調整を目的として、粗面化処理を施してもよい。
粗面化処理の手法としては、特に限定されるものでははく、従来公知のブラスト処理や研磨処理などの各種粗面化法から適宜選択すればよいが、エアブラスト処理、ウェットブラスト処理、バレル研磨処理、ブラシ研磨処理が好ましく、砥粒を用いたブラスト処理がより好ましく、ウェットブラスト処理がより一層好ましい。
【0027】
この際、ブラスト処理に用いられる砥粒の平均粒径(d=50)は、3〜30μmが好ましく、4〜25μmがより好ましく、5〜20μmがより一層好ましい。
ブラスト処理で使用する砥粒の材質としては、アルミナ、炭化珪素、ジルコニア、ガラス、ナイロン、ステンレス等を用いることができ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
ウェットブラスト処理時の吐出圧力は、砥粒の粒径等に応じて変動するものであるため一概に規定できないが、0.1〜1MPaが好ましく、0.15〜0.5MPaがより好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物を用いて得られた燃料電池用緻密質セパレータは、固有抵抗が15mΩ・cm以下、ガラス転移点135℃以上、かつ、曲げ強度50MPa以上という特性を有している。
また、溶出性を示すTOC(全有機炭素)の値が、7ppm以下という特性をも有している。
このような特性を有する本発明の燃料電池用緻密質セパレータを備えた燃料電池は、長期に亘って安定した発電効率を維持することができる。
一般的に固体高分子型燃料電池は、固体高分子膜を挟む一対の電極と、これらの電極を挟んでガス供給排出用流路を形成する一対のセパレータとから構成される単位セルが多数併設されてなるものであるが、これら複数個のセパレータの一部または全部として本発明の燃料電池用緻密質セパレータを用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各物性は以下の方法によって測定した。いずれの測定値も3回の平均値で示した。
[1]黒鉛粉末のスプリングバック
図1(A)に示される内径15mmの金型に測定試料である黒鉛粉末2gを入れ、試料の上面を平らにした後、上型に5秒で5.4tの荷重がかかるようプレス機で圧縮した(図1(B)参照)。圧縮状態を30秒間保持したのち、荷重を一気に解放した。ハイトゲージで各状態の上型上面の高さを測定し、次の計算式によりスプリングバックを求めた。
0:測定試料が入っていない状態の上型の高さ(mm)
1:荷重をかけた状態の上型の高さ(mm)
2:荷重を解放した状態の上型の高さ(mm)
スプリングバック(%)=(L2−L1)/(L1−L0)×100
[2]平均粒径
粒度分布測定装置(日機装(株)製)により測定した。
[3]固有抵抗
JIS H0602(シリコン単結晶およびシリコンウエーハの4探針による抵抗率測定方法)に基づいて測定した。
[4]ガラス転移点
熱分析装置(TAインスツルメンツ社製、Q400TMA)を使用し、昇温速度1℃/min、荷重5gの条件で測定を行い、得られた熱膨張係数の変曲点をガラス転移点とした。
[5]強度試験(曲げ強度、曲げ弾性率、曲げひずみ)
セパレータから切り出した100×20×2mmの試験片を用い、JIS K 6911「熱硬化性プラスチックの一般試験方法」に準じて、支点間距離40mmで3点曲げ試験を行い、曲げ強度、曲げ弾性率、曲げひずみを測定した。
[6]TOC
上記試験片をイオン交換水500mL中に入れ、内温90℃で1000時間加熱した。加熱終了後に試験片を取り出し、イオン交換水中のTOCをTOC計((株)島津製作所製 TOC−L)により測定した。
【0030】
[実施例1]
黒鉛粉末1(人造黒鉛、針状、スプリングバック23%、平均粒径(d50)50μm)100質量部に対し、エポキシ樹脂1(o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製、EOCN−1020-65、エポキシ当量198g/eq)20.4質量部、フェノール樹脂(ノボラック型フェノール樹脂、アイカSDKフェノール(株)製ショウノールBRG−566、水酸基当量103g/eq)10.7質量部、および2−フェニルイミダゾール(以下、2PZ、四国化成工業(株)製)0.25質量部からなるエポキシ樹脂成分をヘンシェルミキサ内に投入し、800rpmで3分間混合して、燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物を調製した。
得られた組成物を燃料電池用セパレータ作製用の金型内に投入し、金型温度185℃、成形圧力36.6MPa、成形時間9秒の条件で圧縮成形し、ガス流路溝を有する240mm×240mm×2mmの緻密質成形体を得た。
次いで、得られた緻密質成形体の全表面に対し、アルミナ研創材(平均粒径:d50=6μm)を用いて吐出圧力0.25MPa、搬送速度1.5m/分の条件でウェットブラストによる粗面化処理を施し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0031】
[実施例2]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末2(人造黒鉛、針状、スプリングバック30%、平均粒径(d50)50μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0032】
[実施例3]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末3(人造黒鉛、針状、スプリングバック40%、平均粒径(d50)50μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0033】
[実施例4]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末4(人造黒鉛、塊状、スプリングバック45%、平均粒径(d50)30μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0034】
[実施例5]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末5(人造黒鉛、塊状、スプリングバック50%、平均粒径(d50)50μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0035】
[実施例6]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末6(人造黒鉛、塊状、スプリングバック55%、平均粒径(d50)70μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0036】
[実施例7]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末7(人造黒鉛、塊状、スプリングバック60%、平均粒径(d50)100μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0037】
[実施例8]
黒鉛粉末1 100質量部を、黒鉛粉末1 20質量部と、黒鉛粉末9(人造黒鉛、塊状、スプリングバック75%、平均粒径(d50)50μm)80質量部の組み合わせに変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0038】
[実施例9]
黒鉛粉末1 100質量部を、黒鉛粉末8(天然黒鉛、鱗片状、スプリングバック10%、平均粒径(d50)50μm)30質量部と、黒鉛粉末9 70質量部の組み合わせに変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0039】
[実施例10]
エポキシ樹脂1 20.4質量部を、エポキシ樹脂3(ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製、jER YX4000、エポキシ当量183g/eq)19.8質量部に、フェノール樹脂の添加量を11.3質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0040】
[実施例11]
エポキシ樹脂1 20.4質量部を、エポキシ樹脂3 19.8質量部に、フェノール樹脂の添加量を11.3質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0041】
[実施例12]
エポキシ樹脂1 20.4質量部を、エポキシ樹脂3 19.8質量部に、フェノール樹脂の添加量を11.3質量部に変更した以外は、実施例6と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0042】
[実施例13]
エポキシ樹脂1 20.4質量部を、エポキシ樹脂3 19.8質量部に、フェノール樹脂の添加量を11.3質量部に変更した以外は、実施例7と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0043】
[実施例14]
エポキシ樹脂1 20.7質量部を、エポキシ樹脂1 10.1質量部およびエポキシ樹脂3 10.1質量部の組み合わせに、フェノール樹脂の添加量を11.0質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0044】
[実施例15]
エポキシ樹脂1 20.7質量部を、エポキシ樹脂1 14.4質量部およびエポキシ樹脂2(o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製、EOCN−103S、エポキシ当量214g/eq)6.2質量部の組み合わせに、フェノール樹脂の添加量を10.6質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0045】
[実施例16]
エポキシ樹脂1 20.7質量部を、エポキシ樹脂2 5.0質量部およびエポキシ樹脂3 15.1質量部の組み合わせに、フェノール樹脂の添加量を11.0質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0046】
[比較例1]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末8に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0047】
[比較例2]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末9に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0048】
[比較例3]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末10(人造黒鉛、塊状、スプリングバック40%、平均粒径(d50)20μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0049】
[比較例4]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末11(人造黒鉛、塊状、スプリングバック65%、平均粒径(d50)110μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0050】
[比較例5]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末9に、エポキシ樹脂1 20.4質量部を、エポキシ樹脂3 19.8質量部に、フェノール樹脂の添加量を11.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0051】
[比較例6]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末10に、エポキシ樹脂1 20.4質量部を、エポキシ樹脂3 19.8質量部に、フェノール樹脂の添加量を11.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0052】
[比較例7]
黒鉛粉末1を、黒鉛粉末11に、エポキシ樹脂1 20.4質量部を、エポキシ樹脂3 19.8質量部に、フェノール樹脂の添加量を11.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0053】
上記実施例1〜16および比較例1〜7で得られた燃料電池用緻密質セパレータについて、固有抵抗、ガラス転移点、曲げ強度、曲げ弾性率、曲げひずみおよびTOCを測定した。結果を表1,2に示す。なお、表中「部」は質量部を意味する。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1,2に示されるように、黒鉛のスプリングバックおよび平均粒径が本発明に規定される範囲内である組成物から得られた実施例1〜16のセパレータは、固有抵抗が15mΩ・cm以下、Tgが135℃以上、曲げ強度が50MPa以上、曲げ弾性率が9.5GPa以上、TOCが7ppm以下と、燃料電池用緻密質セパレータとして好適な値を示すことがわかる。
比較例1〜8のセパレータは、黒鉛のスプリングバックまたは平均粒径が本発明に規定される範囲外である組成物を用いているため、固有抵抗もしくは強度、またはその双方において不十分であることがわかる。
具体的には、比較例1では、黒鉛粉末のスプリングバックが低すぎるため、樹脂の硬化は終了していると考えられるが(ガラス転移点167℃)、曲げ強度が低くなっている。
比較例2および比較例5では、黒鉛粉末のスプリングバックが高すぎるため、成形時間9秒では樹脂の硬化が終了せず(ガラス転移点125℃)、固有抵抗、TOCが高くなっている。
比較例3および比較例6では、黒鉛粉末の粒径が小さすぎるため、樹脂の硬化は終了していると考えられるが、固有抵抗が高くなっている。
比較例4および比較例7では、黒鉛粉末の粒径が大きすぎるため、樹脂の硬化は終了していると考えられるが、曲げ強度が低くなっている。
【0057】
[実施例17]
硬化促進剤2PZを、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(以下、2P4MZ、四国化成工業(株)製)に変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0058】
[実施例18]
硬化促進剤2PZ0.25質量部を、2PZ0.125質量部および2P4MZ0.125質量部の組み合わせに変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0059】
[実施例19]
硬化促進剤2PZ0.25質量部を、2PZ0.075質量部および2P4MZ0.175質量部の組み合わせに変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0060】
[実施例20]
硬化促進剤2PZ0.25質量部を、2PZ0.175質量部および2P4MZ0.075質量部の組み合わせに変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0061】
[比較例8]
硬化促進剤2PZを、2−エチル−4−メチルイミダゾール(以下、2E4MZ、四国化成工業(株)製)に変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0062】
[比較例9]
硬化促進剤2PZを、2−メチルイミダゾール(以下、2MZ、四国化成工業(株)製)に変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0063】
[比較例10]
硬化促進剤2PZを、2−ウンデシルイミダゾール(以下、C11Z、四国化成工業(株)製)に変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0064】
[比較例11]
硬化促進剤2PZを、2−ヘプタデシルイミダゾール(以下、C17Z、四国化成工業(株)製)に変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0065】
[比較例12]
硬化促進剤2PZを、トリフェニルホスフィン(以下、TPP)に変更した以外は、実施例5と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池用緻密質セパレータを得た。
【0066】
上記実施例17〜20および比較例8〜12で得られた燃料電池用緻密質セパレータについて、固有抵抗、ガラス転移点、曲げ強度、曲げ弾性率、曲げひずみおよびTOCを測定した。結果を表3に示す。なお、表中「部」は質量部を意味する。
【0067】
【表3】
【0068】
表3に示されるように、2位にフェニル基を有するイミダゾール化合物を硬化促進剤として含む組成物から得られた実施例17〜20のセパレータは、固有抵抗が13mΩ・cm以下、Tgが160℃以上、曲げ強度が60MPa以上、曲げ弾性率が11GPa以上、TOCが7ppm以下と、燃料電池用緻密質セパレータとして好適な値を示すことがわかる。
比較例8〜12のセパレータは、硬化促進剤として2位にフェニル基を有しないイミダゾール化合物またはトリフェニルホスフィンを用いているため、固有抵抗が高く、また、強度も低いことがわかる。
具体的には、比較例8および比較例9では、硬化促進剤の活性が高すぎるため、金型内で急激な硬化反応による粘度上昇が起きて成形不良が発生し、固有抵抗が高くなっている。
比較例10〜12では、硬化促進剤の活性が低すぎるため、9秒では成形が終了せず、ガラス転移点が低くなり、固有抵抗、TOCが高く、曲げ強度が低くなっている。
【0069】
[実施例21,22および比較例13,14]
上記実施例1、実施例5、比較例1および比較例2で調製した樹脂組成物を用い、圧縮時間を3秒、5秒、7秒、12秒、15秒、20秒、30秒と変化させた以外は実施例1と同様にして燃料電池用緻密質セパレータを作製した。
得られた各セパレータについて、固有抵抗、曲げ強度およびTOCを測定した。
結果を表4〜6に示す。なお、各表には、実施例1,5および比較例1,2の結果(成形時間9秒)も併記する。また、これらの結果を図2〜4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
表4〜6および図2〜4に示されるように、スプリングバックが10%の黒鉛粉末8を含む樹脂組成物を用いた場合、成形時間が10秒未満であると、曲げ強度が不十分となることがわかる。
一方、スプリングバックが75%の黒鉛粉末9を含む樹脂組成物を用いた場合、成形時間が10秒未満であると、固有抵抗およびTOCが高くなることがわかる。
これらに対し、スプリングバックが23%および50%の黒鉛粉末1,5を含む樹脂組成物を用いた場合、成形時間が10秒未満でも、固有抵抗、曲げ強度およびTOCのいずれの特性も良好なセパレータが得られていることがわかる。
以上のことから、短時間の成形で特性の良好な燃料電池緻密質セパレータを得るためには、スプリングバック20〜70%の黒鉛粉末を用いることが好適であることがわかる。
【要約】
黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含み、黒鉛粉末のスプリングバックが20〜70%、かつ、平均粒径d50が30〜100μmであり、硬化促進剤が、2位にアリール基を有するイミダゾール化合物である燃料電池緻密質セパレータ用樹脂組成物は、10秒未満という短時間で圧縮成形した場合でも、所定の性能を満たす燃料電池用緻密質セパレータを与え得る。
図1
図2
図3
図4