特許第6332586号(P6332586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332586
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】水処理装置および水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20060101AFI20180521BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20180521BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20180521BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20180521BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C02F1/28 F
   C02F1/28 D
   B01J20/20 D
   B01J20/20 B
   B01J20/18 B
   B01J20/34 B
   B01J20/34 F
   C02F1/20 Z
   C02F1/28 E
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-174824(P2013-174824)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42396(P2015-42396A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2016年8月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 勉
(72)【発明者】
【氏名】板山 繁
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−251232(JP,A)
【文献】 特開2006−130216(JP,A)
【文献】 特開2010−036155(JP,A)
【文献】 特開2010−089054(JP,A)
【文献】 国際公開第99/061137(WO,A1)
【文献】 実開昭58−058233(JP,U)
【文献】 特開2013−111553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20、28
B01J 20/00−34
B01D 53/34−96
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物質を含有する水を接触させることで有機物質を吸着し、加熱ガスを接触させることで吸着した有機物質を脱着する吸着素子を含み、該吸着素子に有機物質を含有する水を接触させることで有機物質を吸着させて有機物質の除去された処理水を排出する吸着工程と、該吸着素子に加熱ガスを接触させることで吸着した有機物質を脱着した脱着ガスを排出する脱着工程を繰返し実施して、有機物質を含有する水を清浄化する水処理装置であって、
該吸着素子は2つ以上に分割されており、吸着工程時は2つ以上に分割された吸着素子に直列に有機物質を含有する水が供給され、脱着工程時は2つ以上に分割された吸着素子に並列に加熱ガスが供給され、各吸着素子へ供給される加熱ガスの温度が異なり、
前記吸着素子に付着した水を前記加熱ガスにて除去してこれを除去水として排出してから前記脱着工程を開始し、
前記除去水が当該水処理装置に再度供給されるように構成され、
前記加熱ガスが水蒸気である、
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記吸着素子が、活性炭、活性炭素繊維およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の部材を含んでいる請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理装置と、
ガスと水を接触させて水中の有機物質を揮発除去された曝気処理水を排出して、有機物質を含有する曝気ガスを排出する曝気装置と、を備え、
前記水処理装置から排出された脱着ガスが前記曝気装置へ供給されるように構成された水処理システム。
【請求項4】
前記脱着ガスおよび/または前記曝気ガスが、ガスを燃焼して有機物質を酸化分解して清浄化された処理ガスを排出する燃焼装置へ供給されるように構成された請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記脱着ガスの内、吸着工程時に上流側であった吸着素子から排出された脱着ガスのみ、前記燃焼装置へ供給されるように構成された請求項4に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記曝気処理水が、前記水処理装置へ供給されるように構成された請求項4または5に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記燃焼装置から排出される処理ガスを熱交換し、前記水処理装置に供給される加熱ガスの温度を加温するように構成された請求項4から6のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記水処理装置から排出される脱着ガスを熱交換し、前記曝気装置に供給される水と接触させるガスの温度を加温するように構成された請求項4から7のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項9】
前記水処理装置から排出される脱着ガスを熱交換し、前記燃焼装置に供給されるガスの温度を加温するように構成された請求項4から8のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項10】
前記燃焼装置から排出される処理ガスを熱交換し、前記曝気装置に供給されるガスの温度を上げるように構成された請求項4から9のいずれか1項に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物質を含有する水から有機物質を除去することで当該水を清浄化する水処理装置および水処理システムに関し、特に、各種工場や研究施設から排出される産業排水等の有機物質を含む水から有機物質を効率的に除去することで当該水を清浄化する水処理装置および水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸着材を用いて吸着による有機物質の除去(吸着工程)と吸着材の再生(脱着工程)を交互に行う連続吸脱着式の水処理装置および水処理システムが検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。これらの水処理装置は、水の連続浄化を実現し、基本的には吸着材の交換が必要なく、有機物質を高効率で安定的に除去することができる。
【0003】
しかし、実際の産業排水等の水には様々な沸点を有する有機物質が混在しているケースが殆どである。上記水処理装置のように加熱ガスを用いて脱着を行う場合、脱着不足による吸着性能の低下や吸着素子の寿命低下を防ぐために、基本的には水中に含まれる有機物質の内、高沸点の有機物質が吸着素子より脱離できる加熱ガス温度にて装置設計を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−55712号公報
【特許文献2】特開2006−55713号公報
【特許文献3】特願2013−83906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景の元になされたもので、様々な沸点を保持する有機物質が混在する水の処理において、基本的に吸着材の交換がなく、高効率かつ連続的に水処理を行うと共に、脱着工程時のランニングコストを削減できる水処理装置および水処理システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ついに本発明を完成するに到った。即ち本発明は、以下の通りである。
1.有機物質を含有する水を接触させることで有機物質を吸着し、加熱ガスを接触させることで吸着した有機物質を脱着する吸着素子を含み、該吸着素子に有機物質を含有する水を接触させることで有機物質を吸着させて有機物質の除去された処理水を排出する吸着工程と、該吸着素子に加熱ガスを接触させることで吸着した有機物質を脱着した脱着ガスを排出する脱着工程を繰返し実施して、有機物質を含有する水を清浄化する水処理装置であって、該吸着素子は2つ以上に分割されており、吸着工程時は2つ以上に分割された吸着素子に直列に有機物質を含有する水が供給し、脱着工程時は2つ以上に分割された吸着素子に並列に加熱ガスが供給し、各吸着素子へ供給される加熱ガスの温度が異なることを特徴とする水処理装置。
2.前記吸着素子に付着した水を除去してこれを除去水として排出する上記1に記載の水処理装置。
3.前記除去水が、前記水処理装置に再度供給されるように構成された上記1または2に記載の水処理装置。
4.前記吸着素子が、活性炭、活性炭素繊維およびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の部材を含んでいる上記1から3のいずれかに記載の水処理装置。
5.前記加熱ガスが水蒸気である上記1から4のいずれかに記載の水処理装置。
6.前記水処理装置から排出された脱着ガスが、ガスと水を接触させて水中の有機物質を揮発除去された曝気処理水を排出して、有機物質を含有する曝気ガスを排出する曝気装置へ供給されるように構成された上記1から5のいずれかに記載の水処理システム。
7.前記脱着ガスおよび/または前記曝気ガスが、ガスを燃焼して有機物質を酸化分解して清浄化された処理ガスを排出する燃焼装置へ供給されるように構成された上記1から6いずれかに記載の水処理システム。
8.前記脱着ガスの内、吸着工程時に上流側であった吸着素子から排出された脱着ガスのみ、前記燃焼装置へ供給されるように構成された上記1から7記載の水処理システム。
9.前記曝気処理水が、前記水処理装置へ供給されるように構成された上記1から8のいずれかに記載の水処理システム。
10.前記燃焼装置から排出される処理ガスを熱交換し、前記水処理装置に供給される加熱ガスの温度を加温するように構成された上記1から9のいずれかに記載の水処理システム。
11.前記水処理装置から排出される脱着ガスを熱交換し、前記曝気装置に供給される水と接触させるガスの温度を加温するように構成された上記1から10のいずれかに記載の水処理システム。
12.前記水処理装置から排出される脱着ガスを熱交換し、前記燃焼装置に供給されるガスの温度を加温するように構成された上記1から11のいずれかに記載の水処理システム。
13.前記燃焼装置から排出される処理ガスを熱交換し、前記曝気装置に供給されるガスの温度を上げるように構成された上記1から12のいずれかに記載の水処理システム。
【発明の効果】
【0007】
前記水処理装置において、吸着素子への有機物質の吸着現象は、ファンデルワールス力等に依存した物理吸着によるものであり、有機物質の分子量が大きいほど吸着しやすいことが広く一般的に知られている。また、分子量が大きい有機物質ほど、沸点が高い傾向を示すことも知られている。
本発明による水処理システムは、基本的に吸着材の交換の必要が無く、水中の有機物質を高い効率で連続的に除去することができ、上述の吸着現象を有効利用して、脱着時に使用する加熱ガスのエネルギー量を削減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態における水処理装置の構成図の一例である。
図2】本発明の実施に使用できる水処理装置の構成図の一例である。
図3】本発明の実施に使用できる水処理システムの構成図の一例である。
図4】本発明の実施に使用できる水処理システムの構成図の一例である。
図5】本発明の実施に使用できる曝気装置の構成図の一例である。
図6】本発明の実施に使用できる曝気装置の構成図の一例である。
図7】本発明の実施に使用できる燃焼装置の構成図の一例である。
図8】本発明の実施に使用できる燃焼装置の構成図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1から8を参照して詳細に説明する。なお、有機物質を含有する被処理水を原水と定義して説明する。また、以下に示す図の実施の形態においては、同一または対応する部分については、適宜省略し、その説明についても繰り返さないことにする。
【0010】
水処理装置100は、原水から有機物質を除去し、清浄化された処理水を排出するための装置であり、吸着素子としての吸着材が収容された処理槽を2つ以上有している。処理槽が2つの場合で説明すると、一方の処理槽は吸着槽、もう一方の処理槽は脱着槽として機能する。吸着槽として機能する場合は、原水が吸着材に供給されることで原水に含有される有機物質を吸着して処理水として排出される。これにより、原水から有機物質が除去される。脱着槽として機能する場合は、加熱ガスが吸着材に供給されることで吸着した有機物質を脱着して、脱着ガスとして処理槽から排出される。これにより、吸着材が再生される。本発明の実施形態における水処理装置100の処理槽は吸着槽と脱着槽が経時的に交互に切替るように構成されている。
【0011】
本発明の水処理装置100においては、吸着槽および脱着槽として機能する処理槽は2つ以上に分割されている。吸着槽として機能する場合は2つ以上に分割されている処理槽に対して直列に原水が供給・排出される流路構成とし、脱着槽として機能する場合は、2つ以上に分割されている処理槽に対して並列に加熱ガスが供給・排出される流路構成とする。吸着時は直列に原水を供給することで、吸着材の充填厚みが厚くなるので、原水の吸着材からのリークやショートパスを低減させて吸着効率が高くなり、脱着時は並列に加熱ガスを供給することで、後述する脱着時に使用する加熱ガスのエネルギー量の削減が可能となるからである。
【0012】
水処理装置100おいては、脱着槽として機能する2つ以上に分割されている処理槽へ供給される加熱ガスの温度が異なる。加熱ガスの温度は、吸着槽として機能していた際に上流側に使用されていた処理槽(以下、「吸着上流側処理槽」という場合がある)へ供給する加熱ガスの温度が、下流側に使用されていた処理槽(以下、「吸着下流側処理槽」という場合がある)へ供給する加熱ガスの温度より高いことが好ましい。前述の通り、吸着材に対して、高分子量、高沸点な有機物質は吸着上流側処理槽の吸着素子に吸着され、次いで低分子量、低沸点な有機物質が吸着下流側処理槽の吸着素子に吸着される傾向にあり、その結果、吸着上流側処理槽と吸着下流側処理槽の吸着素子から有機物質を脱着するのに必要なエネルギー量に偏りが生じる。そのため、吸着上流側と吸着下流側に分割された処理槽に対して、それぞれの脱着に必要な加熱ガス温度に設定する方が、処理槽全体を高分子量、高沸点な有機物質が脱離する加熱ガス温度に合わせて装置設計する場合と比べて供給加熱ガス量や加温エネルギー量を削減することができる。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態における水処理装置100の構成図の一例である。本発明の実施形態における水処理装置100について、図1を用いてより具体的に説明する。水処理装置100は、吸着素子としての吸着材111、121、131、141がそれぞれ収容された第1処理槽110、第2処理槽120、第3処理槽130、第4処理槽140を有している。第1処理槽110および第3処理槽130には、原水の供給ライン、吸着材111および131を通水後の処理水を第2処理槽120および第4処理槽140へ導入するためのライン、加熱ガスの供給ライン、脱着ガスの排出ラインの配管が接続されており、第2処理槽120および第4処理槽140には、吸着材111および131を通水後の処理水の供給ライン、吸着材121および141を通水後の処理水の排出ライン、加熱ガスの供給ライン、脱着ガスの排出ラインの配管が接続されており、各ラインにはバルブ等を用いて各処理槽に対して接続/非接続状態に切替えられる流路切替手段が接続された構成となっている。
【0014】
第1処理槽110および第2処理槽120並びに第3処理槽130および第4処理槽140とは、上述したバルブの開閉を操作することによって、交互に吸着槽および脱着槽として機能する。第1処理槽110および第2処理槽120が吸着槽として機能している場合には、第3処理槽130および第4処理槽140は脱着槽として機能する。具体的には、原水が第1処理槽110、第2処理槽120の順に通水されるように供給されて、処理水が排出されるように流路が確保される場合は、加熱ガスが第3処理槽130および第4処理槽にそれぞれ供給され、脱着ガスが排出される流路構成となる。また、第3処理槽よりも第4処理槽へ供給される加熱ガスの方が高温となることが好ましい。
【0015】
水処理装置100は、吸着上流側処理槽と吸着下流側処理槽の容量や吸着材の充填量は、原水組成や吸着材への吸着量に応じてそれぞれ最適な大きさにしても良い。また、図1は処理槽を2つに分離して説明したが、必要に応じて2つ以上に分離しても良い。
【0016】
水処理装置100は、図2に示す装置構成とし、吸着槽から脱着槽に切替わった際に、吸着材111、121、131、141に付着する水分を除去(脱水)して除去水として排出してから、加熱ガス供給による脱着を開始する装置の方が好ましい。吸着材の付着水を事前に除去してから加熱ガス脱着を行う方が、脱着効率を高めることができるからである。付着水の除去手段は、自重抜き、空気・水蒸気・窒素・不活性ガスなどのガスでの高速パージ、真空ポンプなどを用いた吸引などの手段が使用できるが、加熱ガスと同一のガスによる高速パージが好ましい。脱水効率が高く、装置の流路構成がシンプルとなるからである。
【0017】
また、除去水は水処理装置100に再度供給されるように構成された方が好ましい。除去水を他の水処理装置で別途処理する必要がなくなるからである。
【0018】
吸着材111、121、131、141は、活性炭、活性炭素繊維またはゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1の部材を含むことが好ましい。吸着材としては、粒状、粒体状、ハニカム状等の活性炭やゼオライトが利用されるが、活性炭素繊維を利用することがより好ましい。活性炭素繊維は、表面にミクロ孔を有する繊維状構造を有しているため、水との接触効率が高く、特に水中の有機物質の吸着速度が速くなり、他の吸着材に比べて極めて高い吸着効率を実現できる部材である。
【0019】
吸着材111、121、131、141として利用可能な活性炭素繊維の物性は、特に限定されるものではないが、BET比表面積が700〜2000m/g、全細孔容積が0.4〜0.9cm/g、平均細孔径が17〜18Åのものが好ましい。これは、BET比表面積が700m/g未満、全細孔容積が0.4m/g未満、平均細孔径が17Å未満のものでは、有機物質の吸着量が低くなるためであり、またBET比表面積が2000m/gを超え、全細孔容積が0.9m/gを超え、平均細孔径が18Åを超えるのものでは、細孔径が大きくなることで分子量の小さな物質等の吸着能力が低下したり、強度が弱くなったり、素材のコストが高くなって経済的に不利になったりするためである。
【0020】
水処理装置100に使用する加熱ガス媒体は、空気、水蒸気、窒素、および不活性ガスなどがあるが、水蒸気が好ましい。熱容量が大きく、高圧であり、脱着効率が高いからである。水蒸気の蒸気圧、温度等は特に限定しないが、使用する吸着材の耐熱温度や物性などに応じて適宜設定すれば良い。
【0021】
次に、本発明の実施形態における水処理システムについて、図3から8を用いて、説明する。水処理装置100から排出される脱着ガスは、図3に示す通り、曝気装置200および燃焼装置300で処理されるか、図4に示す通り燃焼装置300のみで処理され、脱着ガス中に含有する有機物質が無害化されることで、水処理が完結する。
【0022】
曝気装置200は、図5に示す通り、曝気槽210と曝気槽220へ気泡ガスを供給するガス供給器220を有している装置構成となっている。水処理装置の加熱ガス媒体が水蒸気の場合は脱着ガスは、曝気槽210へ供給された際に曝気槽210内の水と接触して液化凝縮されて有機物質を含む水となり、ガス供給器220から発生する気泡と接触して、有機物質はガスへ移行することで揮発除去されて曝気処理水と、有機物質を含んだ曝気ガスを排出する。曝気処理水は要求性能を満たして要れば放流しても良いし、水処理装置100へ返送し、再度、吸着処理しても良い。
【0023】
曝気装置200は、図示しないが、原水組成に応じて、水処理装置100の前段に接続しても良い。この場合、原水は曝気装置200にて処理した後、水処理装置100で処理され、水処理装置100から排出される脱着ガスは曝気装置200に返送される流路構成となり、曝気装置200は水処理装置100の前処理装置および後処理装置として機能することになる。また、原水および脱着ガスの組成等に応じて曝気条件の最適値が異なる場合等において、それぞれ別々の曝気装置を接続しても良い。また、水処理装置100の吸着上流から下流までのそれぞれの処理槽から排出される脱着ガス組成等に応じて、最適な曝気条件がある場合等においても、同様にそれぞれ別々の曝気装置を接続しても良い。
【0024】
曝気装置200は、図6に示す通り、熱交換器230を接続させ、水処理装置100から排出される脱着ガスとガス供給器220へ供給するガスを熱交換させる構成としても良い。熱交換によって、ガス温度が上昇し、曝気装置200における使用エネルギーが低減できるからである。
【0025】
燃焼装置300は、図7に示す通り、水処理装置100から排出された脱着ガスや曝気装置200から排出された曝気ガスを原ガスとして処理するための装置であり、熱交換器310と加熱炉320とを備えている。原ガスは熱交換器310にて熱交換により予熱され、加熱炉320にて所定温度にて原ガス中の有機物質を酸化分解することで清浄化された処理ガスを排出する。処理ガスは熱交換器310を通過して原ガスと熱交換された後、装置外へ排出される。
【0026】
燃焼装置300は、特にその種類が限定されるものではないが、例えば原ガスを650〜850℃の高温で直接的に酸化分解させる直接燃焼装置や、白金触媒等を利用して原ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する触媒燃焼装置、蓄熱体を利用して熱回収を行ないつつ経済的に直接酸化分解を行なう蓄熱式直接燃焼装置、白金触媒等と蓄熱体とを組み合わせて効率的に原ガスを触媒酸化反応させて酸化分解する蓄熱式触媒燃焼装置等を使用することが可能である。また、原ガスは必要に応じて空気などを用いて希釈して処理しても良い。燃焼装置300を用いて原ガスを酸化分解させることにより、有機物質は完全に除去される。
【0027】
燃焼装置300は、図8に示す通り、熱交換器310の後段に熱交換器330を接続させ、水処理装置200へ供給する加熱ガスと処理ガスを熱交換させる構成としても良い。熱交換によって、加熱ガスの温度が上昇し、水処理装置100における脱着効率が向上する。図示しないが、加熱ガスの代わりに曝気装置へ供給するガスを熱交換器330にて熱交換しても良い。曝気効率が高まる効果が向上する。
【0028】
燃焼装置300は、図示しないが、水処理装置100から排出される脱着ガスを直接供給して処理しても良い。ただし、原水組成や原水量などに応じて、曝気装置200を接続しなくとも、低コストで処理可能な場合に限る。
【0029】
以上において図1から8で説明した本発明の実施の形態の特徴的な構成は、相互に組み合わせることが可能である。
【0030】
また、以上において説明した本発明の実施の形態においては、ポンプやファン等の流体搬送手段やストレージタンク等の流体貯留手段などの構成要素を特に示すことなく説明を行なったが、これら構成要素は必要に応じて適宜の位置に配置すればよい。
【0031】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【実施例】
【0032】
評価は下記の方法によりおこなった。
(BET比表面積)
BET比表面積は、液体窒素の沸点(−195.8℃)雰囲気下、相対圧力0.0〜0.15の範囲で上昇させたときの試料への窒素吸着量を数点測定し、BETプロットにより試料単位質量あたりの表面積(m/g)を求めた。
(有機物質除去効果)
原水(原水)は、1,4−ジオキサン(沸点101℃)200mg/L、ビスヒドロキシエチルテレフタレート(BHET,沸点446℃)10mg/L含む水とした。運転開始から500h後の各装置の入出の有機物質濃度を測定し、除去効率を確認した。
(有機物質濃度評価)
各水およびガスをガスクロマトグラフ法により分析し測定した。
【0033】
[実施例1]
水処理装置の吸着材としてBET比表面積1800m/gの活性炭素繊維を使用した吸着素子A10gおよび吸着素子B190gをそれぞれ2個作成し、水処理装置に設置して、吸着素子A、吸着素子Bの順に原水を20L/hで導入し、処理水を得た。
【0034】
次に、水蒸気を吸着素子A、吸着素子Bに同時に供給して、吸着材の付着水を除去(脱水)した後、除去水は原水へ返送した。次に450℃の水蒸気を吸着素子Aに、120℃の水蒸気を吸着素子Bに供給して脱着し、脱着ガスを得た。脱着使用した水蒸気は0.1MPaの飽和水蒸気であり、電気ヒーターを用いて所定水蒸気温度まで加温した。以上の一連の操作を繰り返し実施した。
【0035】
次に、曝気装置に曝気温度60℃の条件で、水処理装置の吸着素子Bから排出される脱着ガスを導入し、曝気処理水を得た。接触させる気泡は空気を使用し、水蒸気を使用して所定曝気温度まで加温した。曝気処理水は水処理装置へ返送した。
【0036】
本実施例の水処理装置により浄化された水は、表1に示す通り、運転開始から500h後でも99%以上の効率で1,4−ジオキサンおよびBHETの除去が可能であった。また、表2に示す通り、脱着に必要とした蒸気量は0.87kg/h以下、電力は0.12kw以下であった。
【0037】
次に、電気ヒーター式の直接燃焼装置を用いて、上述の曝気ガスおよび吸着素子Aから排出される脱着ガスの混合ガスを原ガスとして供給し、650℃に昇温した後、原ガス中の有機物質を酸化分解させて、処理ガスを得た。運転開始から500h後でも99%以上の効率で1,4−ジオキサンおよびBHETの酸化分解が可能であった。
【0038】
[実施例2]
水処理装置の吸着材としてBET比表面積1800m/gの活性炭素繊維を使用した吸着素子A10gおよび吸着素子B190gをそれぞれ2個作成し、水処理装置に設置して、吸着素子A、吸着素子Bの順に原水を20L/hで導入し、処理水を得た。
【0039】
次に、水蒸気を吸着素子A、吸着素子Bに同時に供給して、吸着材の付着水を除去(脱水)した後、除去水は原水へ返送した。次に450℃の水蒸気を吸着素子Aに、120℃の水蒸気を吸着素子Bに供給して脱着し、脱着ガスを得た。脱着使用した水蒸気は0.1MPaの飽和水蒸気であり、後述する直接燃焼装置の処理ガスとの熱交換後に電気ヒーターを用いて所定水蒸気温度まで加温した。以上の一連の操作を繰り返し実施した。
【0040】
次に、曝気装置に曝気温度60℃の条件で、水処理装置の吸着素子Bから排出される脱着ガスを導入し、曝気処理水を得た。接触させる気泡は空気を使用し、水蒸気を使用して所定曝気温度まで加温した。曝気処理水は水処理装置へ返送した。
【0041】
本実施例の水処理装置により浄化された水は、表1に示す通り、運転開始から500h後でも99%以上の効率で1,4−ジオキサンおよびBHETの除去が可能であった。また、表2に示す通り、脱着に必要とした蒸気量は0.87kg/h以下、電力は0.05kw以下であった。
【0042】
次に、電気ヒーター式の直接燃焼装置を用いて、上述の曝気ガスおよび吸着素子Aから排出される脱着ガスの混合ガスを原ガスとして供給し、650℃に昇温した後、原ガス中の有機物質を酸化分解させて、処理ガスを得た。処理ガスは運転開始から500h後でも99%以上の効率で1,4−ジオキサンおよびBHETの酸化分解が可能であった。
【0043】
[比較例1]
水処理装置の吸着材としてBET比表面積1800m/gの活性炭素繊維を使用した吸着素子200gを2個作成し、水処理装置に設置して、原水を20L/hで導入し、処理水を得た。
【0044】
次に、水蒸気を吸着素子に供給して、吸着材の付着水を除去(脱水)した後、除去水は原水へ返送した。次に450℃の水蒸気を吸着素子に供給して脱着し、脱着ガスを得た。脱着使用した水蒸気は0.1MPaの飽和水蒸気であり、電気ヒーターを用いて所定水蒸気温度まで加温した。以上の一連の操作を繰り返し実施した。
【0045】
本実施例の水処理装置により浄化された水は、運転開始から500h後でも99%以上の効率で1,4−ジオキサンおよびBHETの除去が可能であったが、表2に示す通り、脱着に必要とした蒸気量は6kg/h以上、電力は17kw以上と、実施例1と比べて蒸気量は6.8倍以上、電力は141倍以上必要であった。
【0046】
[比較例2]
水処理装置の吸着材としてBET比表面積1800m/gの活性炭素繊維を使用した吸着素子200gを2個作成し、水処理装置に設置して、原水を20L/hで導入し、処理水を得た。
【0047】
次に、水蒸気を吸着素子に供給して、吸着材の付着水を除去(脱水)した後、除去水は原水へ返送した。次に115℃の水蒸気を吸着素子に供給して脱着し、脱着ガスを得た。脱着使用した水蒸気は0.1MPaの飽和水蒸気であり、電気ヒーターを用いて所定水蒸気温度まで加温した。以上の一連の操作を繰り返し実施した。
【0048】
本実施例の水処理装置により浄化された水は、表1に示す通り、運転初期は99%以上の除去効率であったが、運転開始から500h後においては10%以下であった。
【0049】
[比較例3]
水処理装置の吸着材としてBET比表面積1800m/gの活性炭素繊維を使用した吸着素子200gを2個作成し、水処理装置に設置して、原水を20L/hで導入し、処理水を得た。
【0050】
次に、水蒸気を吸着素子に供給して、吸着材の付着水を除去(脱水)した後、除去水は原水へ返送した。次に450℃の水蒸気を吸着素子に供給して脱着し、脱着ガスを得た。脱着使用した水蒸気は0.1MPaの飽和水蒸気であり、電気ヒーターを用いて所定水蒸気温度まで加温した。以上の一連の操作を繰り返し実施した。
【0051】
次に、曝気装置に曝気温度60℃の条件で、水処理装置の吸着素子Bから排出される脱着ガスを導入し、曝気処理水を得た。接触させる気泡は空気を使用し、水蒸気を使用して所定曝気温度まで加温した。曝気処理水は水処理装置へ返送した。
【0052】
本実施例の水処理装置により浄化された水は、表1に示す通り、運転初期は99%以上の除去効率であったが、運転開始から500h後においては10%以下であった。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】

【符号の説明】
【0055】
100:水処理装置
110:第1処理槽
111:吸着材
120:第2処理槽
121:吸着材
130:第3処理槽
131:吸着材
140:第4処理槽
141:吸着材
200:曝気装置
210:曝気槽
220:ガス供給器
230:熱交換器
300:燃焼装置
310:熱交換器
320:加熱炉
330:熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8