特許第6332595号(P6332595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332595
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】反力発生装置
(51)【国際特許分類】
   G10B 3/12 20060101AFI20180521BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G10B3/12 130
   G10H1/34
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-259475(P2013-259475)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-118118(P2015-118118A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 一郎
(72)【発明者】
【氏名】播本 寛
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−145608(JP,A)
【文献】 特開平11−095748(JP,A)
【文献】 特開平11−175067(JP,A)
【文献】 特開2007−025576(JP,A)
【文献】 特開2011−107296(JP,A)
【文献】 特開平11−305759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10B 3/12
G10H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体により一体形成されていて、
軸心方向の一端部から軸心方向の他端部に向かって径方向長さを徐々に増加させ、かつ軸心方向の他端部を開口させてドーム状に形成されていて、軸心方向の押圧により弾性変形して弾性変形量に応じた反力を発生するドーム部、
前記ドーム部の他端部に接続されて外側に延設され、前記ドーム部と反対側の面を平面に形成したべース部、及び
前記べース部の前記ドーム部と反対側の面から延設させた棒状の脚部を有する反力発生部材と、
前記べース部の前記ドーム部と反対側の面を設置させる設置面を有するとともに、前記設置面から他方の面に貫通する貫通孔を有し、前記設置面を平面に形成した支持部材とを備え、
前記脚部を前記貫通孔に侵入させ、かつ前記べース部の前記ドーム部と反対側の面を前記設置面に密着させて、前記反力発生部材を前記支持部材に固定するようにした反力発生装置であって、
前記脚部を前記貫通孔に侵入させた前記反力発生部材の前記支持部材への実装状態では、前記脚部における前記べース部の近傍部分を変形させて、前記脚部の延設方向が、前記反力発生部材の前記支持部材への実装前における前記脚部の延設方向とは異なる方向になるようにしたことを特徴とする反力発生装置。
【請求項2】
前記べース部における前記脚部の接続部分に、前記脚部の外周に沿って溝を設けた請求項1に記載の反力発生装置。
【請求項3】
前記支持部材の設置面側に、前記貫通孔の内周に沿って切欠きを設けた請求項1又は2に記載の反力発生装置。
【請求項4】
前記脚部の軸心方向の中間部分に、外側に張出して、前記支持部材の他方の面位置又は前記貫通孔の前記他方の面の近傍位置にて、前記支持部材に係合する係合部を設けた請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載の反力発生装置。
【請求項5】
前記係合部は、前記脚部の全周に渡り、一平面上で前記支持部材に接触して係合する請求項4に記載の反力発生装置。
【請求項6】
前記ドーム部は、鍵盤楽器における鍵の操作によって軸心方向に押圧されて、押圧開始から徐々に弾性変形して弾性変形量の増加に従って反力を徐々に増加させ、反力がピークに達した後に座屈変形して反力を急激に減少させる請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載の反力発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作子の操作に対して弾性変形による反力を発生するドーム部を有する反力発生部材を支持部材上に固定した反力発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子オルガン、電子ピアノ等の鍵盤楽器には、押鍵操作に対して反力を付与するための弾性体により構成されたドーム部(ラバードーム)を有する反力発生部材を設けることがある。例えば、下記特許文献1には、ドーム状に形成されていて軸心方向の押圧により弾性変形して弾性変形量に応じた反力を発生するドーム部、ドーム部の下端部に接続されて外側に板状に延設されたべース部、及びべース部の下面から棒状に突出した脚部を弾性体によって一体形成した反力発生部材を、鍵を上方にて揺動可能に支持する鍵フレーム(棚板)上に固定した鍵盤装置が示されている。この鍵盤装置においては、鍵フレーム上に固定した平板状の支持部材(基板)上に、その上面に対して直交する方向(板厚方向)に内側面を全周に渡って延設させた円形の横断面を有する貫通孔を設け、かつ脚部の軸心に直交する断面形状を円形に形成し、脚部の軸心方向と板厚方向とを一致させた状態で、貫通孔に脚部を圧入するとともにべース部の下面を支持部材の上面に密着させることにより、反力発生部材を支持部材に固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−25576号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、弾性体で一体成形する反力発生部材においては、型から反力発生部材を抜く際には、脚部は細くて無理抜きをし難い部分であるとともに、ドーム部も薄肉に形成されていて無理抜きをし難い部分であるので、ドーム部の軸心方向と脚部の軸心方向とを大きくずらすことができない。なお、ドーム部の軸心方向と脚部の軸心方向とを大きくずらしても、型成形により反力発生部材を成形することは可能であるが、金型として複雑なものを用いる必要がある。一方、鍵盤装置においては、ドーム部の軸心方向が常に支持部材の板厚方向であるとは限らない。例えば、鍵盤装置の構造上、鍵によるドーム部の押圧方向が支持部材の板厚方向と異なる場合がある。また、鍵の支持構造上、白鍵と黒鍵ではドーム部に対する押圧方向を異ならせる必要がある場合もある。このような場合には、板圧方向とは異なる方向に軸心をずらした貫通孔を支持部材に形成する必要があるが、貫通孔の軸心方向と板厚方向とが大きく異なると、貫通孔を支持部材に形成する加工が難しくかつ複雑となるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、その目的は、ドーム部の軸心方向と支持部材の板厚方向とが異なる場合に、反力発生部材を型成形により簡単に製造できるとともに、支持部材に脚部を貫通させる貫通孔を簡単に形成できるようにした反力発生装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明の特徴は、弾性体により一体形成されていて、軸心(Yw,Yb)方向の一端部から軸心方向の他端部に向かって径方向長さを徐々に増加させ、かつ軸心方向の他端部を開口させてドーム状に形成されていて、軸心方向の押圧により弾性変形して弾性変形量に応じた反力を発生するドーム部(21w1,21b1)、ドーム部の他端部に接続されて外側に延設され、ドーム部と反対側の面を平面に形成したべース部(21w3,21b3)、及びべース部のドーム部と反対側の面から延設させた棒状の脚部(21w4,21b4)を有する反力発生部材(21w,21b)と、べース部のドーム部と反対側の面を設置させる設置面を有するとともに、設置面から他方の面に貫通する貫通孔(31d1)を有し、設置面を平面に形成した支持部材(31d)とを備え、脚部を貫通孔に侵入させ、かつべース部のドーム部と反対側の面を設置面に密着させて、反力発生部材を支持部材に固定するようにした反力発生装置であって、脚部を貫通孔に侵入させた反力発生部材の支持部材への実装状態では、脚部におけるべース部の近傍部分を変形させて、脚部の延設方向が、反力発生部材の支持部材への実装前における脚部の延設方向とは異なる方向になるようにしたことにある。
【0007】
この場合、ドーム部は、例えば、鍵盤楽器における鍵の操作によって軸心方向に押圧されて、押圧開始から徐々に弾性変形して弾性変形量の増加に従って反力を徐々に増加させ、反力がピークに達した後に座屈変形して反力を急激に減少させる。
【0008】
上記のように構成した本発明においては、脚部を貫通孔に侵入させた反力発生部材の支持部材への実装状態では、脚部におけるべース部の近傍部分を変形させて、脚部の延設方向が、反力発生部材の支持部材への実装前における脚部の延設方向とは異なる方向になるようにした。したがって、ドーム部の軸心方向と支持部材の板厚方向とが異なる場合に、反力発生部材の支持部材への装着前における脚部の軸心方向をドーム部の軸心方向と一致させ又はドーム部の軸心方向に対して大きくずらすことなく、かつ貫通孔の軸心を支持部材の板厚方向を一致させ又は板厚方向に対して大きくずらさなくても、べース部のドーム部と反対側の面を支持部の設置面に密着させて反力発生部材を支持部材に固定できる。その結果、本発明によれば、反力発生部材を簡単な型成形により製造できるとともに、支持部材に脚部を貫通させる貫通孔を簡単に形成できるようになる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、べース部における脚部の接続部分に、脚部の外周に沿って溝(21w5,21b5)を設けたことにある。これによれば、脚部におけるべース部の近傍部分を変形させた反力発生部材の支持部材への実装状態では、脚部の変形部分の外側への突出部分が溝内に収容されて貫通孔の内周面に干渉しないので、べース部を支持部材の設置面に精度よく密着させることができ、反力発生部材の支持部材への固定が安定する。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、支持部材の設置面側に、貫通孔の内周に沿って切欠き(31d2)を設けたことにある。これによっても、脚部におけるべース部の近傍部分を変形させた反力発生部材の支持部材への実装状態では、脚部の変形部分の外側への突出部分が切欠き内に収容されて貫通孔の内周面に干渉しないので、べース部を支持部材の設置面に精度よく密着させることができ、反力発生部材の支持部材への固定が安定する。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、脚部の軸心方向の中間部分に、外側に張出して、支持部材の他方の面位置又は貫通孔の他方の面の近傍位置にて、支持部材に係合する係合部(21w6,21b6)を設けたことにある。この場合、係合部は、例えば、脚部の全周に渡り、一平面(Kp)上で支持部材に接触して係合する。これによれば、反力発生部材を支持部材に組付けた後には、係合部により脚部の貫通孔からの抜け出しが防止されるので、反力発生部材は支持部材に安定して確実に固定されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る鍵盤装置の概略側面図である。
図2図1の鍵盤装置の概略平面図である。
図3】(A)は本発明の第1実施形態に係る反力発生部材の実装前の拡大縦断面図であり、(B)は(A)の反力発生部材のべース部近傍の脚部の拡大縦断面図であり、(C)は前記反力発生部材の実装後の拡大縦断面図であり、(D)は(C)の反力発生部材のべース部近傍の脚部の拡大縦断面図である。
図4】(A)は本発明の第2実施形態に係る反力発生部材の実装前の拡大縦断面図であり、(B)は前記反力発生部材の実装後の拡大縦断面図である。
図5】(A)は本発明の第3実施形態に係る反力発生部材の実装前の拡大縦断面図であり、(B)は(A)の反力発生部材の一方の脚部先端部分を示す拡大図であり、(C)は(A)の反力発生部材の他方の脚部先端部分を示す拡大図であり、(D)は前記反力発生部材の実装後の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
a.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態について図面を用いて説明する。図1は第1実施形態に係る鍵盤装置を右から見た概略側面図であり、図2は前記鍵盤装置の概略平面図である。なお、図1においては、鍵盤装置の前後方向を左右方向とし、鍵盤装置の上下方向を上下方向とする。
【0014】
この鍵盤装置は、演奏者によって押離鍵操作される複数の白鍵11w及び複数の黒鍵11bと、演奏者の押鍵操作に対して反力を付与する複数の反力発生部材21w,21bとを備えている。白鍵11wは、前後方向に長尺状に形成されるとともに下方を開放させた断面コ字状に形成されて、鍵フレーム31の平板状の上板部31a上に配置されている。鍵フレーム31は、上板部31aの前端及び後端から下方に延設された平板状の脚部31b,31cを有し、脚部31b,31cの下端部分にて楽器内に設けたフレームFR上に固定されている。鍵フレーム31の上板部31aの後端部の上面上には、白鍵11wの内側にて対向する一対の板状の鍵支持部32が立設固定されている。鍵支持部32の上部には、互いに対向する位置にてそれぞれ外側に突出した突出部が設けられ、突出部を白鍵11wの両側面後端部に設けた貫通孔に内側から回転可能に侵入させている。これにより、白鍵11wは、鍵支持部32により揺動可能に支持され、前端部を上下方向に変位させる。以下の説明では、この白鍵11wの揺動中心を揺動軸Cwとする。黒鍵11bは、前部上面が高くなっている形状こそ異なるが、他の構成は白鍵11wと同様である。そして、黒鍵11bも、鍵支持部32により揺動軸Cb回りに揺動可能に支持されて、揺動により前端部を上下方向に変位させる。
【0015】
鍵フレーム31の上板部31aの上面には、白鍵11wの前端部の下方位置にて鍵ガイド33wが立設しており、黒鍵11bの前端部の下方位置にて鍵ガイド33bが立設している。鍵ガイド33w,33bは白鍵11w及び黒鍵11b内にそれぞれ摺動可能に侵入しており、白鍵11w及び黒鍵11bは、それらの上下方向の揺動時に左右方向に変位しないようになっている。
【0016】
反力発生部材21wは各白鍵11wに対してそれぞれ設けられるとともに、反力発生部材21bは各黒鍵11bに対してそれぞれ設けられている。反力発生部材21w,21bは、白鍵11w及び黒鍵11bの前後方向の中央部の下方にて、鍵フレーム31の上板部31aと一体的に形成した支持部31dの上面に固定されている。複数の反力発生部材21w,21bは、一体成形により形成されて、鍵盤の横方向に1列に配置されている。支持部31dは、平板状に形成され、前端を後端より下方に位置させている。なお、支持部31dが本発明の支持部材に対応する。したがって、反力発生部材21w,21bの後述する軸心Yw,Ybは、上部が前方に位置するように傾いている。また、揺動軸Cw,Cbから反力発生部材21w,21bまでの距離が異なっていても、後述するように反力ピーク時における押圧方向を軸心Yw,Ybの方向にそれぞれ一致させるため、黒鍵11b用の反力発生部材21bの前記前方への傾きは白鍵11w用の反力発生部材21wの前記前方への傾きに比べて若干大きい。
【0017】
なお、この第1実施形態では、白鍵11w用の複数の反力発生部材21w及び黒鍵11b用の複数の反力発生部材21bを図2に示すように横一列かつ同一高さに並べて一体形成するようにしたが、各鍵ごとに個別の反力発生部材21w,21bを設けてもよい。また、白鍵11w用の反力発生部材21wの前後方向位置及び/又は高さ位置と、黒鍵11b用の反力発生部材21bの前後方向位置及び/又は高さ位置とを異ならせてもよい。この点に関しては、後述する各実施形態及び変形例においても同様である。
【0018】
ここで、反力発生部材21w,21b及び支持部31dについて、図3を用いて詳しく説明しておく。図3(A)は、反力発生部材21w、21bの実装前の拡大縦断面図、すなわち単体である反力発生部材21w,21bの拡大縦断面図である。図3(B)は、図3(A)の反力発生部材21w,21bのべース部21w3,21b3近傍の脚部21w4,21b4の拡大縦断面図である。図3(C)は、反力発生部材21w,21bの実装後の拡大縦断面図である。図3(D)は、図3(C)の21w,21bのべース部21w3,21b3近傍の脚部21w4,21b4の拡大縦断面図である。
【0019】
反力発生部材21w,21bは、弾性を有するゴムにより一体形成されており、ドーム部21w1、21b1、トップ部21w2,21b2、べース部21w3,21b3及び脚部21w4,21b4を備えている。この場合、白鍵11w用の反力発生部材21wの形状と、黒鍵11b用の反力発生部材21bの形状とは前記前方への傾きの点で若干異なるが、この形状の相違は僅かであるとともに、本発明の特徴点に関しては同一であるので、以下の説明では、両反力発生部材21w,21bを同一形状であるものとして説明する。
【0020】
ドーム部21w1,21b1は、上部から下方に向かって軸心Yw,Yb回りの径(径方向長さ)を全周に渡って徐々に増加させて、上方からの押圧により変形し易い薄肉のドーム状に形成されており、下端部を円形に開口させている。ドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybに直交する断面形状は円形である。そして、ドーム部21w1,21b1は、上方からの押圧力の増加により弾性変形して反力を徐々に増加させるとともに、反力がピークに達した後に座屈変形によって反力を急激に減少させる。トップ部21w2,21b2は、上面が開放された円筒状に形成されていて、下面にてドーム部21w1,21b1の上面に接続されている。また、トップ部21w2,21b2は全周にわたって均一の高さに設定され、その上面は平面である。
【0021】
べース部21w3,21b3は、ドーム部21w1,21b1の下面に連続して接続されて、上下方向に厚肉に形成され、ドーム部21w1,21b1の下面の外周面から外側に板状に延設されている。べース部21w3,21b3の上面及び下面も平面であり、上面は、ドーム部21w1,21b1の上部内面及びトップ部21w2,21b2の上面と平行であり、すなわちドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybに直交する。べース部21w3,21b3の下面は、上面に対して傾斜しており、前側の厚さは後側の厚さに比べて大きい。べース部21w3,21b3の下面には、脚部21w4,21b4の外周面位置にて、全周に渡って溝21w5,21b5が形成されている(図3(C)参照)。この溝21w5,21b5の径方向の断面形状は、本実施形態では略半円形状であるが、半円形状ではなく、4角形状、3角形状などでもよい。
【0022】
なお、トップ部21w2,21b2及びべース部21w3,21b3は、上方から押圧されてもほとんど変形しない。このように構成した反力発生部材21w,21bの少なくともドーム部21w1,21b1及びトップ部21w2,21b2は、軸心Yw、Ybに対して全周に渡って点対称形状である。また、トップ部21w2,21b2及びべース部21w3,21b3の上面の法線は、軸心Yw,Ybの方向とそれぞれ平行である。
【0023】
また、べース部21w3,21b3の下面には、一対の脚部21w4,21b4が一体的に形成されている。一対の脚部21w4,21b4は、べース部21w3,21b3の下面から下方に棒状に突出しており、先端部の径を徐々に小さくしている。脚部21w4,21b4は、べース部21w3,21b3の上面から連続して軸心Yk,Yk方向に延びる円柱状の穴、すなわちヒケの発生を防止するための肉盗みを設けて円筒状に形成されている。なお、この軸心Ykの方向が、脚部21w4,21b4の延設方向である。また、一対の脚部21w4,21b4の軸心Yk,Ykの方向は同じであり、共にドーム部21w1,21b1及びトップ部21w2,21b2の軸心Yw,Ybと平行である。これにより、反力発生部材21w,21bを金型を用いて成形する際には、細い脚部21w4,21b4を無理抜きすることなく、反力発生部材21w,21bを簡単に成形できる。
【0024】
このように構成した反力発生部材21w,21bの一対の脚部21w4,21b4を鍵フレーム31の上板部31aの支持部31dに設けた一対の貫通孔31d1にそれぞれ圧入することにより、反力発生部材21w,21bは支持部31d上に固定されている。支持部31dは、厚さを一定にした平板である。支持部31dの上面に直交する方向をこの明細書では板厚方向という。なお、この第1実施形態では、支持部31dの上面と下面は平行であるので、板厚方向は支持部31dの下面にも直交する方向でもある。貫通孔31d1は、支持部31dを板厚方向に貫通する円柱状の孔であり、その軸心をYpとする。すなわち、軸心Ypは支持部31dの板厚方向と平行である。なお、この軸心Ypの方向が、貫通孔31d1の延設方向である。軸心Ypに直交する貫通孔31d1の断面形状は円形であり、その内径は脚部21w4,21b4の上端及び中間部の外径よりも僅かに小さい。また、貫通孔31d1の上面近傍位置には、全周に渡って切欠き31d2が設けられている(図3(D)参照)。この切欠き31d2の径方向の断面形状は、本実施形態では、面取りのような3角形状であってその上面を上方に突出させた凸状であるが、単に3角形状であってその上面を平面にしてもよいし、上面を下方に突出させた凹状であってもよい。
【0025】
このような貫通孔31d1の形成においては、支持部31d(上板部31a)を樹脂成型品で構成した場合には、簡単な構成の上金型及び下金型を用いて貫通孔31d1を有する支持部31dを成形すればよい。また、支持部31dを金属板で構成した場合、単純なパンチ加工、プレス加工などにより、支持部31dに前述のような貫通孔31d1を形成すればよい。また、バーリング加工、リーマ加工などを施すようにしてもよい。
【0026】
このように構成した貫通孔31d1を有する支持部31dに、反力発生部材21w,21bを固定する方法について説明しておく。この場合、作業者は、反力発生部材21w,21bの脚部21w4,21b4の先端を貫通孔31d1の軸心Yp位置に合わせた後、反力発生部材21w,21bを上方から脚部21w4,21b4の軸心Yk方向又は貫通孔31d1の軸心Yp方向とほぼ同じ方向に押して、脚部21w4,21b4を貫通孔31d1内に押し込む。この場合、貫通孔31d1の軸心Ypは支持部31dの板厚方向と平行であり、脚部21w4,21b4の軸心Ykはべース部21w3,21b3の下面に対して垂直でなく、かつ反力発生部材21w,21bの支持部31dへの装着時には、べース部21w3,21b3の下面は支持部31dの上面に密着するので、押し込み時における脚部21w4,21b4の軸心Yk方向は貫通孔31d1の軸心Yp方向とは異なり、脚部21w4,21b4の外周面と貫通孔31d1の内周面との間には多少の干渉が生じる。しかし、脚部21w4,21b4を貫通孔31d1に押し込んでいくと、脚部21w4,21b4は変形していき、べース部21w3,21b3の下面を支持部31dの上面に密着させた状態(すなわち反力発生部材21w,21bの支持部31dへの装着状態)では、脚部21w4,21b4の軸心Ykは貫通孔31d1の軸心Ypと一致する。言い換えれば、脚部21w4,21b4を貫通孔31d1に侵入させた反力発生部材21w,21bの支持部31dへの実装状態では、脚部21w4,21b4におけるべース部21w3,21b3の近傍部分を変形させて、脚部21w4,21b4の延設方向が、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの実装前における脚部21w4,21b4の延設方向とは異なる方向になる。
【0027】
なお、本実施形態では、一つの反力発生部材21w,21bに対して、その両側に一つずつ一対の脚部21w4,21b4を設けるとともに、一対の脚部21w4,21b4に対応させて一対の貫通孔31d1を支持部31dに設けるようにした。しかし、この脚部21w4,21b4はべース部21w3,21b3の下面にあり、反力発生部材21w,21bを支持部31dに固定できれば、それらの位置はどこでもよい。また、一つの反力発生部材21w,21bに対する脚部21w4,21b4の数も2つ以外の数、例えば一つでもよい。そして、この脚部21w4,21b4に合わせて、支持部31dに前述した貫通孔31d1を設けるようにすればよい。この点に関しても、後述する他の実施形態及び変形例にも適用され得る。
【0028】
ふたたび、図1の説明に戻ると、白鍵11w及び黒鍵11bの下面であって、反力発生部材21w,21bのトップ部21w2,21b2の上面に対向する位置には、反力発生部材21w,21bを上方から押圧する押圧部11w1,11b1がそれぞれ設けられている。押圧部11w1,11b1は平板状に構成され、その下面は本実施形態では水平である。そして、反力発生部材21w,21bの反力のピーク時において、押圧部11w1,11b1の下面の法線(下面に垂直な直線)が、反力発生部材21w、21bの軸心Yw,Ybにそれぞれ平行になる。なお、反力発生部材21w,21bの傾き角度によっては、前記押圧部11w1,11b1を水平に対して若干傾けるようにしてもよい。また、この押圧部11w1,11b1の下面は平面でなくても、球面などであってもよい。さらには、押圧部11w1,11b1を、白鍵11w及び黒鍵11bの内部上面から下方に突出させた十字型、H字型等のリブなどで構成してもよい。
【0029】
また、この鍵盤装置は、押圧部11w1,11b1と鍵支持部32の中間位置にて、白鍵11w及び黒鍵11bと、鍵フレーム31の上板部31aとの間にそれぞれ組み込まれた白鍵11w用のスプリング34w及び黒鍵11b用のスプリング34bを備えている。スプリング34w,34bは、白鍵11w及び黒鍵11bを上板部31aに対して上方に付勢している。なお、これらのスプリング34w、34bは、コイル状でなくても、白鍵11w及び黒鍵11bを上方に付勢することができれば、板ばねのようなスプリングでもよい。
【0030】
白鍵11wは、その前端部から下方に延設させた延設部11w2を備え、延設部11w2の下端には前方に突出させた係合部11w3が設けられ、係合部11w3は鍵フレーム31の上板部31aに設けた貫通孔を介して、上板部31aの下方に上方から侵入している。また、鍵フレーム31の上板部31aの前端部下面には上限ストッパ部材35wが設けられている。上限ストッパ部材35wは、フェルトのような緩衝部材により構成されており、白鍵11wの係合部11w3との当接により、白鍵11wの前端部の上方への変位を規制する。また、鍵フレーム31の上板部31aの前端部上面には下限ストッパ部材36wが設けられている。下限ストッパ部材36wも、フェルトのような緩衝部材により構成されており、白鍵11wの前端部下面との当接により、白鍵11wの前端部の下方への変位を規制する。
【0031】
黒鍵11bは、その前端部から下方に延設させた延設部11b2を備え、延設部11b2の下端には後方に突出させた係合部11b3が設けられ、係合部11b3は鍵フレーム31の上板部31aに設けた貫通孔を介して、上板部31aの下方に上方から侵入している。また、鍵フレーム31の上板部31aの中間部下面には上限ストッパ部材35bが設けられている。上限ストッパ部材35wも、フェルトのような緩衝部材により構成されており、黒鍵11bの係合部11b3との当接により、黒鍵11bの前端部の上方への変位を規制する。また、鍵フレーム31の上板部31aの中間部上面には下限ストッパ部材36bが設けられている。下限ストッパ部材36bも、フェルトのような緩衝部材により構成されており、黒鍵11bの前端部下面との当接により、黒鍵11bの前端部の下方への変位を規制する。
【0032】
また、鍵フレーム31の上板部31aの下面であって反力発生部材21w,21bの若干後方位置には、電気回路基板37が上板部31aと平行になるように固定されている。電気回路基板37の上面には、白鍵11w及び黒鍵11bのためのドーム状の鍵スイッチ38w,38bがそれぞれ固定されている。鍵スイッチ38w,38bは、白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵時に、白鍵11w及び黒鍵11bの下面から突出させた突出部で押圧されてオフ状態からオン状態に変化して、白鍵11w及び黒鍵11bの押離鍵操作を検出する。なお、この鍵スイッチ38w,38bによる押離鍵操作の検出は、楽音信号の発生制御に利用される。
【0033】
次に、前記のように構成した第1実施形態に係る鍵盤装置の動作について説明する。演奏者が白鍵11w及び黒鍵11bを押し始めると、白鍵11w及び黒鍵11bはスプリング34w,34bの反力に抗して、揺動軸Cw,Cb回りにそれぞれ揺動を開始し、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が下方に変位して係合部11w3,11b3が上限ストッパ部材35w,35bから離れ、その後、押圧部11w1,11b1が反力発生部材21w,21bのトップ部21w2,21b2の上面の後側端部に当接する。そして、白鍵11w及び黒鍵11bがさらに押されると、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部がさらに下方に変位して、押圧部11w1,11b1の押圧により反力発生部材21w,21bのドーム部21w1,21b1が全周に渡ってほぼ均等に変形し始める。これにより、演奏者は、スプリング34w,34bによる反力に加えて、反力発生部材21w,21bの徐々に増加する反力を感じ始める。この場合のドーム部21w1,21b1の変形は軸心Yw,Ybに対してほぼ対称である。
【0034】
ただし、実際には、反力発生部材21w,21bは揺動軸Cw,Cb回りに回動動作する白鍵11w及び黒鍵11bによってそれぞれ押圧され、反力発生部材21w,21bに対する白鍵11w及び黒鍵11bの押圧方向は白鍵11w及び黒鍵11bの回動動作に応じて変化するので、前記ドーム部21w1,21b1の変形は厳密には軸心Yw,Ybに対して対称ではない。しかし、前記押圧方向の変化は僅かであり、かつ反力のピーク時には、押圧部11w1,11b1の下面の法線が軸心Yw,Ybに対して平行である状態で、反力発生部材21w,21bが白鍵11w及び黒鍵11bによってそれぞれ押圧されるので、前記ドーム部21w1,21b1の変形は実質的に軸心Yw,Ybに対して対称であるとみなしてよい。
【0035】
白鍵11w及び黒鍵11bがさらに押されると、反力発生部材21w,21bの反力がピークに達して、その後に、ドーム部21w1,21b1が座屈変形し始める。この場合のドーム部21w1,21b1の座屈は、全周にわたってほぼ同時に起こる。これにより、演奏者の押鍵に対する反力発生部材21w,21bの反力は急激に減少し、演奏者は明確なクリック感を感じる。なお、鍵スイッチ38w,38bは、この座屈よりも若干遅れて、白鍵11w及び黒鍵11bの下面から突出させた突出部の押圧によりオフ状態からオン状態に変化する。この鍵スイッチ38w,38bのオン状態への変化に応答して、図示しない楽音信号発生回路は楽音信号を発生し始める。
【0036】
さらに、白鍵11w及び黒鍵11bが押されると、前記反力の急激な減少後、ドーム部21w1,21b1はさらに変形して反力を増加させる。その後、白鍵11w及び黒鍵11bの前端下面が下限ストッパ部材36w,36bに当接して、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動は終了する。この状態では、反力発生部材21w,21bの弾性変形も終了する。
【0037】
そして、白鍵11w及び黒鍵11bが離鍵されると、反力発生部材21w,21b及びスプリング34w,34bの反力により、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部は上方に変位する。この白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が上方へ変位して戻る過程においては、鍵スイッチ38w,38bはオン状態からオフ状態に変化して、図示しない楽音信号発生回路は楽音信号の発生停止を制御する。また、この白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が上方へ戻る過程においては、反力発生部材21w,21bは原形に復帰し始める。さらに、白鍵11w及び黒鍵11bの前端部が上方へ変位すると、係合部11w3,11b3は上限ストッパ部材35w,35bに当接して、白鍵11w及び黒鍵11bは離鍵状態に戻る。そして、白鍵11w及び黒鍵11bの押離鍵動作が終了する。
【0038】
このように構成されかつ動作する前記第1実施形態に係る反力発生装置においては、脚部21w4,21b4を貫通孔31d1に侵入させた反力発生部材21w,21bの支持部31dへの実装状態では、脚部21w4,21b4におけるべース部21w3,21b3の近傍部分を変形させて、脚部21w4,21b4の延設方向が、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの実装前における脚部21w4,21b4の延設方向とは異なる方向になるようにした。したがって、ドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Yb方向と支持部31dの板厚方向とが異なる場合に、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの装着前における脚部21w4,21b4の軸心Yk方向をドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Yb方向と一致させ、かつ貫通孔31d1の軸心Ypを支持部31dの板厚方向と一致させても、べース部21w3,21b3の下面を支持部31dの上面に密着させて反力発生部材21w,21bを支持部31dに固定できる。その結果、前記第1実施形態によれば、反力発生部材21w,21bを簡単な型成形により製造できるとともに、支持部31dに脚部21w4,21b4を貫通させる貫通孔31d1を簡単に形成できるようになる。
【0039】
また、前記第1実施形態に係る反力発生装置においては、べース部21w3,21b3における脚部21w4,21b4の接続部分に、脚部21w4,21b4の外周に沿って溝21w5,21b5を設けた。また、支持部31dの上面側に、貫通孔31d1の内周に沿って切欠き31d2を設けた。これにより、前記第1実施形態によれば、脚部21w4,21b4におけるべース部21w3,21b3の近傍部分を変形させた反力発生部材21w,21bの支持部31dへの実装状態では、脚部21w4,21b4の変形部分の外側への突出部分が溝21w5,21b5及び切欠き31d2内に収容されて貫通孔31d1の内周面に干渉しないので、べース部21w3,31b3を支持部31dの上面に精度よく密着させることができ、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの固定が安定する。
【0040】
なお、前記第1実施形態においては、べース部21w3,21b3に溝21w5,21b5を設けるとともに、支持部31dに切欠き31d2を設けるようにした。しかし、前記溝21w5,21b5及び切欠き31d2のいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。これによっても、脚部21w4,21b4の変形部分の外側への突出部分が溝21w5,21b5及び切欠き31d2のいずれか一方内に収容されて貫通孔31d1の内周面に干渉しないので、べース部21w3,31b3を支持部31dの上面に精度よく密着させることができ、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの固定が安定する。
【0041】
b.第2実施形態
次に、図4を用いて、本発明の第2実施形態に係る反力発生装置について説明する。図4(A)は、反力発生部材21w、21bの実装前の拡大縦断面図、すなわち単体である反力発生部材21w,21bの拡大縦断面図である。図4(B)は、反力発生部材21w,21bの実装後の拡大縦断面図である。
【0042】
この第2実施形態に係る反力発生装置においては、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの装着前、すなわち反力発生部材21w,21bが単体である状態では、一対の脚部21w4,21b4の軸心Ykがドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybに対して同一方向にそれぞれ所定角度傾斜している。なお、脚部21w4,21b4は円柱状に形成されている。また、一対の貫通孔31d1の軸心Ypも支持部31dの板厚方向に対して同一方向に所定角度傾斜している。そして、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの装着前における脚部21w4,21b4の軸心Ykのドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybに対する方向と、反力発生部材21w,21bの装着後における軸心Ykのドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybに対する方向とは異なる。
【0043】
この第2実施形態においても、貫通孔31d1を有する支持部31dに反力発生部材21w,21bに固定する場合には、作業者は、反力発生部材21w,21bの脚部21w4,21b4の先端を貫通孔31d1の軸心Yp位置に合わせた後、反力発生部材21w,21bを上方から脚部21w4,21b4の軸心Yk方向又は貫通孔31d1の軸心Yp方向とほぼ同じ方向に押して、脚部21w4,21b4を貫通孔31d1内に押し込む。この場合も、上記第1実施形態の場合と同様に、脚部21w4,21b4の外周面と貫通孔31d1の内周面との間には多少の干渉が生じるが、脚部21w4,21b4を貫通孔31d1に押し込んでいくと、脚部21w4,21b4は変形していき、べース部21w3,21b3の下面を支持部31dの上面に密着させた状態(すなわち反力発生部材21w,21bの支持部31dへの装着状態)では、脚部21w4,21b4の軸心Ykは貫通孔31d1の軸心Ypと一致する。
【0044】
言い換えれば、この場合も、脚部21w4,21b4を貫通孔31d1に侵入させた反力発生部材21w,21bの支持部31dへの実装状態では、脚部21w4,21b4におけるべース部21w3,21b3の近傍部分を変形させて、脚部21w4,21b4の延設方向が、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの実装前における脚部21w4,21b4の延設方向とは異なる方向になる。したがって、この第2実施形態においても、ドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Yb方向と支持部31dの板厚方向とが異なる場合に、脚部21w4,21b4の軸心Yk方向をドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Yb方向と大きくずらすことなく、かつ貫通孔31d1の軸心Ypを支持部31dの板厚方向と大きくずらすことなく、べース部21w3,21b3の下面を支持部31dの上面に密着させて反力発生部材21w,21bを支持部31dに固定できる。その結果、この第2実施形態によっても、反力発生部材21w,21bを簡単な型成形により製造できるとともに、支持部31dに脚部21w4,21b4を貫通させる貫通孔31d1を簡単に形成できるようになる。
【0045】
他の構成及び動作に関しては、上記第1実施形態の場合と同様であるので、その説明を省略する。したがって、この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様な効果が期待される。
【0046】
なお、前記第2実施形態の説明では、脚部21w4,21b4の外周に沿って設けた溝21w5,21b5、及び貫通孔31d1の内周に沿って設けた切欠き31d2については説明を省略した。しかし、この第2実施形態においても、前記溝21w5,21b5及び切欠き31d2のいずれか一方又は両方に設けることにより、上記第1実施形態の場合と同様な効果が期待される。また、前記第2実施形態では脚部21w4,21b4を円柱状に形成したが、上記第1実施形態のように、ヒケの発生を防止するための肉盗みを設けて円筒状に形成してもよい。
【0047】
さらに、前記第2実施形態では、一対の脚部21w4,21b4の軸心Yk同士は平行であるとともに、一対の貫通孔31d1の軸心Yp同士も平行である。しかし、一対の脚部21w4,21b4の軸心Yk同士が平行でなくてもよいし、一対の貫通孔31d1の軸心Yp同士が平行でなくてもよい。
【0048】
c.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態に係る反力発生装置について、図5を用いて説明する。図5(A)は、反力発生部材21w、21bの実装前の拡大縦断面図、すなわち単体である反力発生部材21w,21bの拡大縦断面図である。図5(B)は、図5(A)の反力発生部材21w,21bの図示左側の脚部21w4,21b4の先端部の拡大図である。図5(C)は、図5(A)の反力発生部材21w,21bの図示右側の脚部21w4,21b4の先端部の拡大図である。図5(D)は、反力発生部材21w,21bの実装後の拡大縦断面図である。
【0049】
この反力発生部材21w,21bにおいては、脚部21w4,21b4の先端近傍の中間部に、全周に渡って外側に張出した係合部21w6,21b6が設けられている。係合部21w6,21b6は、その縦断面形状を略半円形に形成し、その上端部すなわち先端とは反対側の張出し位置を全周に渡って一平面内に位置させている。この一平面を、図示2点鎖線Kpで示す。そして、係合部21w6,21b6は、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの装着時には、平面Kpにて貫通孔31d1の外側の支持部31dの下面に係合する。
【0050】
また、この第3実施形態においては、支持部31dへの装着前の反力発生部材21w,21bの一対の脚部21w4,21b4の軸心Ykはドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybと平行である。しかし、一対の貫通孔31d1の軸心Ypは支持部31dの板厚方向に対して異なる所定角度ずつそれぞれ傾斜している。そして、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの装着前には、平面Kpは、図示左右の脚部21w4,21b4で異なる方向を向いている(図5(A)参照)。図5(A)の図示左側の脚部21w4,21b4に関して、装着前における脚部21w4,21b4の軸心Ykと、係合部21w6,21b6に関する平面Kpの法線Lkと、べース部21w3,21b3の下面の法線Lbとの関係を図5(B)に示している。また、図5(A)の図示右側の脚部21w4,21b4に関して、前記軸心Yk、法線Lk及びLbとの関係を図5(C)に示している。この場合、左側の脚部21w4,21b4に関する前記法線Lkと、前記右側の脚部21w4,21b4に関する前記方向Lkの方向は異なる。しかし、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの装着後には、左右の一対の脚部21w4,21b4に関する平面Kpは同一となって、支持部31dの下面と一致する。
【0051】
そして、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの組付けにおいて、脚部21w4,21b4を貫通孔31d1に侵入させる際には、脚部21w4,21b4の係合部21w6,21b6が貫通孔31d1の内周面と僅かに干渉するので、上記第1及び第2実施形態に係る反力発生装置に比べれば、脚部21w4,21b4を貫通孔31d1に若干貫通させ難い。ただし、前記干渉は僅かであるので、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの組付けは問題なく行われる。
【0052】
また、この第3実施形態においても、脚部21w4,21b4を貫通孔31d1に侵入させた反力発生部材21w,21bの支持部31dへの実装状態では、脚部21w4,21b4におけるべース部21w3,21b3の近傍部分を変形させて、脚部21w4,21b4の延設方向が、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの実装前における脚部21w4,21b4の延設方向とは異なる方向になる。したがって、この第3実施形態においても、ドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Yb方向と支持部31dの板厚方向とが異なる場合に、脚部21w4,21b4の軸心Yk方向をドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Yb方向と一致させ、かつ貫通孔31d1の軸心Ypを支持部31dの板厚方向と大きくずらすことなく、べース部21w3,21b3の下面を支持部31dの上面に密着させて反力発生部材21w,21bを支持部31dに固定できる。その結果、この第2実施形態によっても、反力発生部材21w,21bを簡単な型成形により製造できるとともに、支持部31dに脚部21w4,21b4を貫通させる貫通孔31d1を簡単に形成できるようになる。
【0053】
また、この第3実施形態においては、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの装着時には、係合部21w6,21b6が貫通孔31d1の外側の支持部31dの下面に全周に渡って接触して係合する。したがって、この場合には、脚部21w4,21b4の貫通孔31d1からの抜けが防止されて、反力発生部材21w,21bは堅固に支持部31dに固定されるようになる。また、係合部21w6,21b6の上端は、平面Kp内で支持部31dの下面と全周に渡って接触して支持部31dに係合するので、反力発生部材21w,21bの支持部31dへの固定が安定する。
【0054】
他の構成及び動作に関しては、上記第1及び第2実施形態の場合と同様であるので、その説明を省略する。したがって、この第3実施形態においても、上記第1及び第2実施形態と同様な効果が期待される。
【0055】
なお、前記第3実施形態の説明でも、脚部21w4,21b4の外周に沿って設けた溝21w5,21b5、及び貫通孔31d1の内周に沿って設けた切欠き31d2については説明を省略した。しかし、この第3実施形態においても、前記溝21w5,21b5及び切欠き31d2のいずれか一方又は両方に設けることにより、上記第1実施形態の場合と同様な効果が期待される。また、前記第3実施形態でも、脚部21w4,21b4を円柱状に形成したが、上記第1実施形態のように、ヒケの発生を防止するための肉盗みを設けて円筒状に形成してもよい。
【0056】
また、前記第2実施形態では、一対の脚部21w4,21b4の軸心Ykは共にドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybと平行である。しかし、上記第2実施形態のように、一対の脚部21w4,21b4の軸心Yk同士は平行であるが、ドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybとは平行でなくてもよい。また、一対の脚部21w4,21b4の軸心Yk同士が平行でなくてもよい。
【0057】
また、前記第2実施形態では、一対の貫通孔31d1の軸心Ypは支持部31dの板厚方向に対して異なる所定角度ずつそれぞれ傾斜している。しかし、上記第1実施形態のように、一対の貫通孔31d1の軸心Ypが、平行で、支持部31dの板厚方向と一致していてもよい。また、上記第2実施形態のように、一対の貫通孔31d1の軸心Ypが、平行であるが、支持部31dの板厚方向と一致していなくてもよい。
【0058】
また、上記第3実施形態では、脚部21w4,21b4の係合部21w6,21b6を、貫通孔31d1の外側にて支持部31dの下面に係合させるようにした。しかし、これに代えて、支持部31dの下面近傍位置にて貫通孔31d1の内周面を切欠いて凹部を形成し、この凹部に係合部を係合させるようにしてもよい。
【0059】
d.他の変形例及び適用例
次に、上記実施形態の変形例及び本発明の他の適用例について説明する。上記各種実施形態及びそれらの変形例においては、脚部21w4,21b4及び貫通孔31d1の脚部21w4,21b4の軸心Ykに直交する断面形状を円形とした。しかし、これらの断面形状は、円形に限らず、楕円、長楕円形などでもよい。要するに、脚部21w4,21b4は棒状に形成されており、貫通孔31d1は脚部21w4,21b4の横断面形状に対応した横断面形状を有しておればよい。
【0060】
また、上記各種実施形態及びそれらの変形例においては、ドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybに直交する断面形状を円形にした。しかし、この断面形状は円形に限らず、楕円形、長楕円形などでもよい。なお、この場合も、ドーム部21w1,21b1は、周方向の全体に渡り、下方に向かって径方向長さを徐々に増加させた形状である。
【0061】
また、上記各種実施形態及びそれらの変形例においては、白鍵11w及び黒鍵11bを回転軸を中心に揺動させるようにした例について説明した。しかし、これに限らず、白鍵11w及び黒鍵11bの後端に板状の薄肉部を設け、薄肉部の後端を支持部材に支持させることにより、薄肉部の弾性変形により白鍵11w及び黒鍵11bを揺動させるようにしたヒンジ型の揺動支点を利用するものでもよい。
【0062】
また、上記各種実施形態及びそれらの変形例においては、鍵スイッチ38w,38bとは独立して反力発生部材21w,21bを設けるようにした。しかし、これに代えて、鍵スイッチ38w,38bを反力発生部材21w,21bと同様に構成して、鍵スイッチ38w,38bを反力発生部材として利用するようにしてもよい。この場合、ドーム部21w1,21b1を内側部分と外側部分との2段構成とし、内側部分と外側部分との間に円筒状の変形量の少ないスイッチ部分を設ける。そして、外側部分の変形により押鍵に対して増加する反力を発生するとともにスイッチ部分で基板に設けた接点を開閉するようにし、かつ内側部分の変形により座屈変形を伴う押鍵に対する反力を発生するようにするとよい。
【0063】
また、上記各種実施形態及びそれらの変形例においては、反力発生部材21w,21bを支持部31dに固定して、白鍵11w及び黒鍵11bの押圧部11w1,11b1により反力発生部材21w,21bを押圧するようにした。しかし、これに代えて、反力発生部材21w,21bを白鍵11w及び黒鍵11bに固定して、鍵フレーム31の上板部31aにおける反力発生部材21w,21bに対向する位置に押圧部を設け、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動により、前記押圧部により反力発生部材21w,21bが押圧されるようにしてもよい。ただし、この場合には、反力発生部材21w,21bのドーム部21w1,21b1、トップ部21w2,21b2、べース部21w3,21b3及び脚部21w4,21b4は、上記実施形態の場合とは上下が逆になる。なお、この場合には、反力発生部材21w,21bを別々に成形して、反力発生部材21w,21bを白鍵11w及び黒鍵11bに個別に固定する必要がある。
【0064】
また、上記各種実施形態及びそれらの変形例においては、白鍵11w及び黒鍵11bにより反力発生部材21w,21bを直接押圧するようにした。しかし、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動により連動して揺動する揺動体が間接的に反力発生部材21w,21bを押圧するようにした鍵盤装置にも、本発明に係る反力発生装置は適用され得る。すなわち、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動により連動して揺動する揺動体(例えば、ハンマー)を設け、揺動体に押圧部を設けるとともに、支持部材の押圧部に対向する位置に反力発生部材21w,21bを設ける。これによっても、白鍵11w及び黒鍵11bの押離鍵操作に対して、上記各種実施形態及びそれらの変形例と同様な効果を期待できる。また、反力発生部材21w,21bを揺動体側に設けて、反力発生部材21w,21bに対向する位置に押圧部を設けるようにしてもよい。
【0065】
また、上記各種実施形態及びそれらの変形例においては、ドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybが上下方向に延設されるように、反力発生部材21w,21bを固定する例について説明した。しかし、ドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybが上下方向でない方向に延設されるように、反力発生部材21w,21bが固定される場合もある。例えば、白鍵11w及び黒鍵11bの揺動軸Cw,Cbの近傍から白鍵11w及び黒鍵11bの延設方向(すなわち水平方向)と異なる方向(例えば、直角方向)に一体的に延設する延設部材を白鍵11w及び黒鍵11bに設けて、延設部材が白鍵11w及び黒鍵11bの押鍵により延設方向とほぼ直角方向(例えば、略水平方向)に揺動するようにする。この場合、反力発生部材21w,21bを前記延設部材に固定し、又は前記延設部材に対向する位置に固定すると、ドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybが上下方向以外の方向(例えば、水平方向)となるように、反力発生部材21w、21bは固定されることになる。また、ハンマーなどの揺動体を用いる場合にも、揺動体の揺動方向によっては、ドーム部21w1,21b1の軸心Yw,Ybは上下方向以外の方向になるように、反力発生部材21w、21bは固定されることになる。要するに、本発明においては、ドーム部21w1,21b1の開口側にて反力発生部材21w、21bを支持部材に固定すればよく、軸心Yw,Ybの方向に関しては、上下方向以外の種々の方向が考えられる。
【0066】
さらに、本発明に係る反力発生装置は、鍵盤装置の白鍵11w及び黒鍵11b以外の操作子にも適用され得る。すなわち、手、足などにより操作される操作子に対しても、上記実施形態及び変形例のような反力発生部材21w,21bを用いて、操作子の操作に対して反力を与えるようにしてもよい。なお、この場合の操作子は、揺動中心を中心にして揺動するものに限らず、ドーム部の軸心方向に沿って平行移動するような操作子であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
11w…白鍵、11b…黒鍵、11w1,11b1…押圧部、21w,21b…反力発生部材、21w1,21b1…ドーム部、21w2,21b2…トップ部、21w3,21b3…べース部、21w4,21b4…脚部、21w5,21b5…溝、21w6,21b6…係合部、31…鍵フレーム、31a…上板部、31d…支持部、31d1…貫通孔、31d2…切欠き、32…鍵支持部、34w,34b…スプリング、Yb,Yw…ドーム部の軸心、Kw…脚部の軸心
図1
図2
図3
図4
図5