特許第6332601号(P6332601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332601
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】半導体集積回路装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20180521BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-18027(P2014-18027)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-146361(P2015-146361A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 潤一
(72)【発明者】
【氏名】澤田石 智之
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−058756(JP,A)
【文献】 特開2008−193282(JP,A)
【文献】 特開平07−297699(JP,A)
【文献】 特開平08−167838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を出力するための出力端子と、
前記出力端子と第1電源ラインとの間の電流経路に設けられ、入力信号に応じてオン又はオフする第1スイッチング回路と、
前記出力端子と前記第1スイッチング回路との間の電流経路に設けられ、ソースが前記出力端子に接続され、ドレインが前記第1スイッチング回路に接続されたN型DMOSトランジスタと、
前記N型DMOSトランジスタのソースがドレインより高電位の場合は、当該ソースと当該ドレインとの電圧差が小さくなるように前記N型DMOSトランジスタのゲートの電圧を制御し、当該ソースが当該ドレインより低電位の場合は、前記N型DMOSトランジスタがオフ状態となるように当該ゲートの電圧を制御する制御回路とを有し、
前記制御回路は、
前記N型DMOSトランジスタのゲートとソースの間に接続された抵抗と、
前記N型DMOSトランジスタのソースがドレインより高電位の場合、当該ソースと当該ドレインとの電圧差を増幅して前記N型DMOSトランジスタのゲートに出力し、当該ソースが当該ドレインより低電位の場合は、当該ゲートに接続された出力ノードにおける出力インピーダンスを高インピーダンス状態にする増幅回路とを含む
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記N型DMOSトランジスタと並列に接続され、前記第1電源ラインの電位を基準とする前記出力端子の電圧が、前記制御回路によって制御可能な前記N型DMOSトランジスタのゲート電圧の最高値より低い正の第1電圧に比べて高くなるとオンする第2スイッチング回路を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
信号を出力するための出力端子と、
前記出力端子と第1電源ラインとの間の電流経路に設けられ、入力信号に応じてオン又はオフする第1スイッチング回路と、
前記出力端子と前記第1スイッチング回路との間の電流経路に設けられ、ソースが前記出力端子に接続され、ドレインが前記第1スイッチング回路に接続されたN型DMOSトランジスタと、
前記N型DMOSトランジスタのソースがドレインより高電位の場合は、当該ソースと当該ドレインとの電圧差が小さくなるように前記N型DMOSトランジスタのゲートの電圧を制御し、当該ソースが当該ドレインより低電位の場合は、前記N型DMOSトランジスタがオフ状態となるように当該ゲートの電圧を制御する制御回路と、
前記N型DMOSトランジスタと並列に接続され、前記第1電源ラインの電位を基準とする前記出力端子の電圧が、前記制御回路によって制御可能な前記N型DMOSトランジスタのゲート電圧の最高値より低い正の第1電圧に比べて高くなるとオンする第2スイッチング回路を有する
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
前記N型DMOSトランジスタは、ゲートの電位がソースの電位に比べてしきい電圧より高くなるとオンし、
前記制御回路は、前記ゲート電圧の最高値として、前記第1電圧に比べて前記しきい電圧より高い電圧を前記N型DMOSトランジスタのゲートに出力可能である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記第2スイッチング回路は、ソースが前記出力端子に接続され、ドレインが前記第1スイッチング回路に接続され、ゲートが前記第1電源ラインに接続された第1のP型MOSトランジスタを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の出力端子を備えた半導体集積回路装置に係り、特に、グランドより低い電圧が出力端子に印加された場合でも内部回路を保護できる半導体集積回路装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センシング機能を有するICは、一般に外部から電源を供給するための電源端子(+端子,−端子)と、センシング信号を出力するための出力端子を備える。コントーラから離れた場所にセンサモジュールが設置される場合、通常それらの端子はケーブルを介してコントローラに接続される。そのため、ケーブル配線のミスなどによってICの信号の出力端子に電源線が誤って接続される可能性があり、その場合ICの内部に過大な電流が流れることがある。
【0003】
図5は、一般的なオープンドレイン型の信号出力回路を示す図である。図5に示す信号出力回路は、N型のMOSトランジスタ51で構成される。MOSトランジスタ51のソースはグランド端子T1に接続され、ドレインは出力端子T2に接続され、ゲートには信号IN_Bが入力される。この出力端子は、外部の電源電圧53にプルアップ抵抗52を介して接続される。MOSトランジスタ51がオフの場合、出力端子T2の電圧VOUTはハイレベルとなり、MOSトランジスタ51がオンの場合、出力端子T2の電圧VOUTはローレベルとなる。通常、出力端子T2がプルアップ抵抗52を介して電源電圧53に接続されるため、出力端子T2の電圧VOUTがグランド電位VSSより低くなることはない。しかしながら、ケーブルの誤接続等があると、電圧VOUTがグランド電位VSSよりも低くなる場合がある。
【0004】
図6は、図5に示す信号出力回路において出力端子T2の電圧VOUTがグランド電位VSSより低くなる場合を示す図である。図6の例では、出力端子T2に接続されるべき信号線がグランド端子T2に接続され、グランド端子T2に接続されるべき低電圧側の電源線が出力端子T2に接続されている。この場合、一点鎖線で示すように、MOSトランジスタ51の寄生ダイオードを通じてグランド端子T1から出力端子T2に電流が流れてしまう。
【0005】
図7は、N型のMOSトランジスタの寄生ダイオードを説明するための図である。図7AはMOSトランジスタの構造を示し、図7Bは寄生ダイオードに流れる電流を示す。ソースSとバルクBの電位がドレインDの電位より高くなると、N型のMOSトランジスタのバルク(Pウェル)とドレインの間に存在する寄生ダイオードが導通するため、図中の一点鎖線で示すように電流が流れる。寄生ダイオードに電流が流れると、回路が不安定になるという問題や、寄生ダイオードにおいて電力損失が発生するという問題が生じる。
【0006】
MOSトランジスタの寄生ダイオードに電流が流れることを防止するため、例えば電流経路に寄生ダイオードと逆方向のダイオードを別途挿入する方法も考えられるが、そうすると、通常の動作状態においてダイオードに電圧降下や電力損失が生じるという別の問題が発生する。そこで下記の特許文献では、信号出力用のN型MOSトランジスタと直列に逆電流防止用のN型MOSトランジスタを設ける方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−58756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8は、上記特許文献1に記載される従来の保護回路を示す図である。この保護回路では、信号出力用のN型のDMOS(double-diffused metal-oxide-semiconductor)トランジスタMIと直列に、N型のDMOSトランジスタMPが設けられている。
【0009】
出力電圧VOUTがグランド電位VSSより高い場合、コンパレータ63の出力信号はハイレベルになる。ハイレベルの信号IN_BがDMOSトランジスタMIのゲートに入力されると、DMOSトランジスタMIはオンする。また、信号IN_Bがハイレベルになると、AND回路64の出力がハイレベルになり、電流源61から抵抗62に電流が流れて、DMOSトランジスタMPのゲートがハイレベルになり、DMOSトランジスタMPもオンする。これにより、DMOSトランジスタMI,MPが共にオン状態となり、出力電圧VOUTはローレベルになる。また、DMOSトランジスタMPのチャンネルが導通することにより、DMOSトランジスタMPの寄生ダイオードに電流が流れないため、寄生ダイオードの電力損失は生じない。
【0010】
他方、誤接続などによって出力電圧VOUTがグランド電位VSSより低くなると、コンパレータ63の出力がローレベルになり、AND回路64の出力は常にローレベルとなり、電流源61から抵抗62に電流が流れなくなる。そのため、DMOSトランジスタMPはオフ状態に保持される。グランド電位VSSから出力端子へ流れる電流に対して、DMOSトランジスタMIの寄生トランジスタは順方向であるが、DMOSトランジスタMPの寄生トランジスタは逆方向であるため、グランド端子から出力端子へ逆電流は流れない。
【0011】
このように、図8に示す保護回路によれば、誤接続等による逆電流を防止することができる。しかしながら、この保護回路では、出力電圧VOUTをハイレベルにするためにDMOSトランジスタMIのゲートの信号IN_Bをローレベルにすると、AND回路64の出力がローレベルになるため、電流源61から抵抗62に電流が流れなくなり、DMOSトランジスタMPもオフ状態になる。そのため、出力電圧VOUTをハイレベルからローレベルに変化させるには、DMOSトランジスタMIだけでなくDMOSトランジスタMPもオフ状態からオン状態に変化させる必要がある。従って、出力信号の遅延が大きいという問題がある。
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、信号線の誤接続等による逆流電流を防止できるとともに、通常の動作状態において信号の遅延を小さくできる半導体集積回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体集積回路装置は、信号を出力するための出力端子と、前記出力端子と第1電源ラインとの間の電流経路に設けられ、入力信号に応じてオン又はオフする第1スイッチング回路と、前記出力端子と前記第1スイッチング回路との間の電流経路に設けられ、ソースが前記出力端子に接続され、ドレインが前記第1スイッチング回路に接続されたN型DMOSトランジスタと、前記N型DMOSトランジスタのソースがドレインより高電位の場合は、当該ソースと当該ドレインとの電圧差が小さくなるように前記N型DMOSトランジスタのゲートの電圧を制御し、当該ソースが当該ドレインより低電位の場合は、前記N型DMOSトランジスタがオフ状態となるように当該ゲートの電圧を制御する制御回路とを有する。
【0014】
上記の構成によれば、誤接続等によって前記出力端子の電圧が前記第1電源ラインの電圧より低くなると、前記N型DMOSトランジスタのソースがドレインより低電位となるため、前記N型DMOSトランジスタがオフ状態となるように前記N型DMOSトランジスタのゲート電圧が前記制御回路によって制御される。前記N型DMOSトランジスタがオフするため、前記第1電源ラインから前記出力端子へ逆電流が流れない。
【0015】
また、上記の構成によれば、前記出力端子の電圧が前記第1電源ラインの電圧より高くなると、前記N型DMOSトランジスタのソースがドレインより高電位となるため、前記N型DMOSトランジスタの前記ソースと前記ドレインとの電圧差が小さくなるように前記N型DMOSトランジスタのゲート電圧が前記制御回路によって制御される。そのため、前記第1スイッチング回路がオン状態になって前記出力端子から前記第1電源ラインへ電流が流れるとき、前記N型DMOSトランジスタのバルクと前記ドレインとの間に存在する寄生ダイオードにはほとんど電流が流れない。
【0016】
好適に、前記制御回路は、前記N型DMOSトランジスタのゲートとソースの間に接続された抵抗と、前記N型DMOSトランジスタのソースがドレインより高電位の場合、当該ソースと当該ドレインとの電圧差を増幅して前記N型DMOSトランジスタのゲートに出力し、当該ソースが当該ドレインより低電位の場合は、当該ゲートに接続された出力ノードにおける出力インピーダンスを高インピーダンス状態にする増幅回路とを含んでよい。
【0017】
好適に、上記半導体集積回路装置は、前記N型DMOSトランジスタと並列に接続され、前記第1電源ラインの電位を基準とする前記出力端子の電圧が、前記制御回路によって制御可能な前記N型DMOSトランジスタのゲート電圧の最高値より低い正の第1電圧に比べて高くなるとオンする第2スイッチング回路を有してよい。
上記の構成によれば、前記出力端子の電圧が前記ゲート電圧の最高値に近い電圧となって、前記N型DMOSトランジスタがオフ状態となった場合でも、前記第2スイッチング回路がオンするため、前記N型DMOSトランジスタの前記寄生ダイオードには電流が流れない。
【0018】
好適に、前記N型DMOSトランジスタは、ゲートの電位がソースの電位に比べてしきい電圧より高くなるとオンしてよい。この場合、前記制御回路は、前記ゲート電圧の最高値として、前記第1電圧に比べて前記しきい電圧より高い電圧を前記N型DMOSトランジスタのゲートに出力可能であってよい。
上記の構成によれば、前記出力端子の電圧が前記第1電圧まで低下して、前記第2スイッチング回路がオフ状態になった場合でも、前記制御回路において、前記N型DMOSトランジスタの前記ゲートの電位を前記ソースの電位に比べて前記しきい値より高くすることが可能となる。これにより、前記N型DMOSトランジスタの前記ソースと前記ドレインとの電圧差が小さくなるように前記N型DMOSトランジスタのゲート電圧が制御されるため、前記N型DMOSトランジスタの前記寄生ダイオードには電流が流れない。
【0019】
好適に、前記第2スイッチング回路は、ソースが前記出力端子に接続され、ドレインが前記第1スイッチング回路に接続され、ゲートが前記第1電源ラインに接続された第1のP型MOSトランジスタを含んでよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、信号線の誤接続等による逆流電流を防止できるとともに、通常の動作状態において信号の遅延を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成の一例を示す図である。
図2】N型DMOSトランジスタの構造の一例を示す図である。図2AはN型DMOSトランジスタの断面構造を示し、図2Bはその等価回路を示す。
図3】第2の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成の一例を示す図である。
図4】第3の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成の一例を示す図である。
図5】一般的なオープンドレイン型の信号出力回路を示す図である
図6図5に示す信号出力回路において、出力端子の電圧がグランド電位より低くなる場合を示す図である。
図7】N型のMOSトランジスタの寄生ダイオードを説明するための図である。図7AはMOSトランジスタ51の構造を示し、図7Bは寄生ダイオードに流れる電流を示す。
図8】従来の保護回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成の一例を示す図である。図1に示す半導体集積回路装置は、グランド端子T1と、出力端子T2と、第1スイッチング回路11と、N型DMOSトランジスタQd1と、制御回路20を有する。
【0023】
出力端子T2は、外部に信号を出力するための端子であり、不図示の信号ラインを介して信号出力先の装置に接続される。信号ラインは、信号出力先の装置において例えばプルアップ抵抗を介して電源ライン(VDD)に接続される。
グランド端子T1は、不図示の電源ラインを介して信号出力先の装置のグランド(VSS)に接続される。
【0024】
第1スイッチング回路11は、入力信号IN_Bに応じた出力電圧VOUTを発生させる回路であり、出力端子T2とグランドとの間の電流経路に設けられ、入力信号IN_Bに応じてオン又はオフする。なお、ここで「グランド」は、グランド端子T1につながる低電圧側の電源ラインを示す。
【0025】
第1スイッチング回路11は、例えば図1において示すように、N型MOSトランジスタQn1によって構成される。N型MOSトランジスタQn1は、ソースがグランドに接続され、ドレインがN型DMOSトランジスタQd1を介して出力端子T2に接続され、ゲートに入力信号IN_Bが入力される。N型MOSトランジスタQn1は、入力信号IN_Bがハイレベルのときオンし、入力信号IN_Bがローレベルのときオフする。
【0026】
N型DMOSトランジスタQd1は、第1スイッチング回路11と出力端子T2との間の電流経路に設けられており、ソースが出力端子T2に接続され、ドレインが第1スイッチング回路11に接続される。N型DMOSトランジスタQd1は、ゲートの電位がソースの電位に比べてしきい電圧Vthより高くなるとオンし、しきい電圧Vthより低くなるとオフする。
【0027】
図2は、N型DMOSトランジスタQd1の構造の一例を示す図である。図2AはN型DMOSトランジスタQd1の断面構造を示し、図2Bはその等価回路を示す。P型基板の表面にN型拡散領域(Nウェル)が形成され、その内側にP型拡散領域(Pウェル)が形成される。Pウェルの内側には、ソースとなるN型拡散領域(N+)が形成され、その更に内側には、ソースとPウェルを導通させるためのP型拡散領域(P+)が形成される。P型基板の表面におけるPウェルとNウェルとの境界部分には、絶縁膜を介してゲート電極が形成される。P型基板の表面におけるNウェルの領域には、ドレインとNウェルを導通させるためのN型拡散領域(N+)が形成される。
【0028】
PウェルとNウェルとの境界には、寄生ダイオードD1が形成される。寄生ダイオードD1のアノードはPウェルを介してソースにつながり、寄生ダイオードD1のカソードはNウェルを介してドレインにつながる。
【0029】
また、NウェルとP型基板との間には、寄生ダイオードD2が形成される。寄生ダイオードD2のアノードはP型基板につながり、寄生ダイオードD2のカソードはNウェルを介してドレインにつながる。図1の例において、P型基板はグランドに接続されるため、寄生ダイオードD2のアノードはグランドに接続される。
【0030】
図1に戻る。
制御回路20は、N型DMOSトランジスタQd1のソースとドレインとの電圧差に応じてN型DMOSトランジスタQd1のゲートの電圧を制御する。すなわち、制御回路20は、N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインに比べて高電位の場合、ソースとドレインとの電圧差が小さくなるようにN型DMOSトランジスタQd1のゲートの電圧を制御する。また、制御回路20は、N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインより低電位なると、N型DMOSトランジスタQd1がオフ状態となるようにN型DMOSトランジスタQd1のゲートの電圧を制御する。
【0031】
ここで、上述した構成を有する半導体集積回路装置の動作を説明する。
まず、出力電圧VOUTがグランド電位VSSより高い正常状態の動作について述べる。出力端子T2は、図示しないプルアップ抵抗によって所定の電源電圧にプルアップされているものとする。ローレベルの入力信号IN_BがN型MOSトランジスタQn1のゲートに入力されると、N型MOSトランジスタQn1がオフするため、出力端子T2からグランドへの電流経路が遮断され、出力端子T2の出力電圧VOUTはほぼ電源電圧となる。ここで、仮にN型DMOSトランジスタQd1がオフ状態にあるとすると、N型DMOSトランジスタQd1のドレインの電圧は、N型DMOSトランジスタQd1のオフ状態の高抵抗とN型MOSトランジスタQn1のオフ状態の高抵抗とで出力端子T2の電圧(電源電圧)を分圧した電圧になる。従って、N型DMOSトランジスタQd1のドレインの電圧は、出力端子T2の電圧より低くなる。すなわち、N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインに比べて高電位になる。制御回路20は、N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインに比べて高電位になると、ソースとドレインとの電圧差が小さくなるようにN型DMOSトランジスタQd1のゲート電圧を制御する。
以上により、N型MOSトランジスタQn1がオフ状態の場合、N型DMOSトランジスタQd1はソースとドレインとの電圧差が小さくなるように制御される。
【0032】
入力信号IN_Bがローベルからハイレベルに変化すると、N型MOSトランジスタQn1がオンする。このとき、N型DMOSトランジスタQd1は既にオン状態になっているため、出力端子T2からN型DMOSトランジスタQd1及びN型MOSトランジスタQn1を介してグランドに電流が流れる。出力端子T2からグランドへ電流が流れると、不図示のプルアップ抵抗において電圧降下が生じ、出力端子T2の出力電圧VOUTはグランド電位VSS付近まで低下する。このとき、N型DMOSトランジスタQd1のソースとドレインとの電圧差が小さくなるようにN型DMOSトランジスタQd1のゲート電圧が制御回路20によって制御されるため、N型DMOSトランジスタQd1の寄生ダイオードD1にはほとんど電流が流れない。
以上により、N型MOSトランジスタQn1がオンする場合も、N型DMOSトランジスタQd1はソースとドレインとの電圧差が小さくなるように制御され、寄生ダイオードD1にはほとんど電流が流れない。
【0033】
次に、出力電圧VOUTがグランド電位VSSより低い異常状態の動作について述べる。N型DMOSトランジスタQd1のドレインとグランドとの間には、ドレインがグランドより低電位になると導通する寄生ダイオード(N型DMOSトランジスタQd1の寄生ダイオードD2や、N型MOSトランジスタQn1のバルクとドレインの間の寄生ダイオード)が存在する。そのため、N型DMOSトランジスタQd1のドレインの電圧は、グランド電位VSSに比べてダイオードの順方向電圧より低くならない。出力電圧VOUTが、グランド電位VSSに比べてダイオードの順方向電圧より低いものとすると、N型DMOSトランジスタQd1のソースはドレインに比べて低電位になる。
【0034】
制御回路20は、N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインに比べて低電位の場合、N型DMOSトランジスタQd1がオフ状態となるようにN型DMOSトランジスタQd1のゲート電圧を制御する。またこの場合、N型DMOSトランジスタQd1の寄生ダイオードD1には逆方向に電圧が加わるため、オフ状態となる。従って、グランドから出力端子T2への電流経路はN型MOSトランジスタQn1において遮断され、逆電流は流れない。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体集積回路装置によれば、誤接続等によって出力電圧VOUTがグランド電位VSSより低い異常な状態となった場合、N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインより低電位になり、N型DMOSトランジスタQd1が制御回路20によってオフ状態となるように制御される。これにより、N型DMOSトランジスタQd1のチャンネルに電流が流れなくなるとともに、寄生ダイオードD1には逆方向に電圧が加わって電流が流れなくなるため、グランドから出力端子T2への電流経路を通じて逆流電流が流れることを確実に防止できる。
【0036】
また、本実施形態に係る半導体集積回路装置によれば、出力電圧VOUTがグランド電位VSSより高い通常の状態では、N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインより高電位になり、N型DMOSトランジスタQd1のソースとドレインとの電圧差が小さくなるようにN型DMOSトランジスタQd1のゲート電圧が制御回路20によって制御される。そのため、N型MOSトランジスタQn1がオン状態となって出力端子T2からグランドに電流が流れるとき、N型DMOSトランジスタQd1の寄生ダイオードD1にはほとんど電流が流れない。従って、寄生ダイオードD1における不要な電力損失を抑えることができ、発熱による回路特性の劣化等を防止できる。
【0037】
更に、本実施形態に係る半導体集積回路装置によれば、通常状態においてN型DMOSトランジスタQd1のソースとドレインとの電圧差が小さくなるようにN型DMOSトランジスタQd1のゲート電圧が制御されるため、N型MOSトランジスタQn1がオフからオンへ切り替わったとき、N型DMOSトランジスタQd1は既に低インピーダンスの状態となっており、出力端子T2とグランドの間の電流経路が素早く導通状態となる。従って、信号出力用のスイッチング素子がオフのときに逆流電流防止用のスイッチング素子もオフする従来の回路に比べて、出力信号の遅延を小さくすることができる。
【0038】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3は、第2の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る半導体集積回路装置は、図1に示す半導体集積回路装置における制御回路20の構成を具体化したものであり、その他の構成は図1に示す半導体集積回路装置と同じである。
【0039】
図3に示す半導体集積回路装置において、制御回路20は、N型DMOSトランジスタQd1のゲートとソースの間に接続された抵抗R1と増幅回路21を有する。
【0040】
増幅回路21は、N型DMOSトランジスタQd1のドレインとソースとの電圧差を増幅してN型DMOSトランジスタQd1のゲートに出力する。増幅回路21は、例えばP型のMOSトランジスタを出力段に備えたオープンドレイン形式のオペアンプであり、反転入力端子がN型DMOSトランジスタQd1のドレインの電圧に接続され、非反転入力端子がN型DMOSトランジスタQd1のソースに接続される。
【0041】
N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインより高電位の場合、増幅回路21は、ソースとドレインとの電圧差が大きいほど高い電圧をN型DMOSトランジスタQd1のゲートに出力する。すなわち、増幅回路21は、出力段のP型MOSトランジスタによって電源電圧VDDからN型DMOSトランジスタQd1のゲートに電流を流し込み、ゲートの電圧を上昇させる。これにより、N型DMOSトランジスタQd1のチャンネルのインピーダンスが低下して、ソースとドレインとの電圧差が小さくなる。
【0042】
他方、N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインより低電位の場合、増幅回路21は、N型DMOSトランジスタQd1のゲートに接続された出力ノードの出力インピーダンスを高インピーダンス状態にする。すなわち、増幅回路21は、出力段のP型MOSトランジスタをオフ状態とし、N型DMOSトランジスタQd1のゲートを電源電圧VDDから切り離す。この場合、N型DMOSトランジスタQd1のゲートとソースとの間の容量に蓄積された電荷は抵抗R1によって放電されて、ゲート−ソース間の電圧はほぼゼロになる。そのため、N型DMOSトランジスタQd1はオフ状態となる。
【0043】
上記の構成によれば、誤接続等によって出力電圧VOUTがグランド電位VSSより低い異常な状態となった場合、N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインより低電位になり、増幅回路21の出力インピーダンスが高インピーダンス状態となる。そのため、N型DMOSトランジスタQd1のゲートとソースの間の電圧は抵抗R1によってほぼゼロになり、N型DMOSトランジスタQd1はオフ状態となる。従って、既に説明した図1の半導体集積回路装置と同様の動作により、グランドから出力端子T2へ逆流電流が流れることを防止できる。
【0044】
また、出力電圧VOUTがグランド電位VSSより高い正常状態では、N型DMOSトランジスタQd1のソースがドレインより高電位になり、増幅回路21からN型DMOSトランジスタQd1のゲートに出力される電圧は、N型DMOSトランジスタQd1のソースとドレインとの電圧差が大きいほど高くなる。これにより、N型DMOSトランジスタQd1のソースとドレインとの電圧差が小さくなるため、既に説明した図1の半導体集積回路装置と同様の動作により、寄生ダイオードD1に電流が流れることによる不要な電力損失を抑えることができる。また、従来の回路に比べて出力信号の遅延を小さくすることができる。
【0045】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図4は、第3の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成の一例を示す図である。図4に示す半導体集積回路装置は、図3に示す半導体集積回路装置に第2スイッチング回路12を追加したものであり、他の構成は図2に示す半導体集積回路装置と同じである。
【0046】
図2に示す半導体集積回路装置において、増幅回路21の出力電圧の上限は電源電圧VDDによって制限される。すなわち、増幅回路21は、電源電圧VDDを超える電圧は出力できない。もし出力端子T2が電源電圧VDDと同じ電圧にプルアップされているとすると、N型MOSトランジスタQn1がオフのとき、出力電圧VOUTはほぼ電源電圧VDDと等しくなる。この場合、制御回路20(増幅回路21)の出力電圧が最高値(VoMAX)に達しても、N型DMOSトランジスタQd1のゲート−ソース間の電圧(VoMAX−VDD)はゼロ付近であり、N型DMOSトランジスタQd1はオフ状態となる。N型DMOSトランジスタQd10がオフの状態でN型MOSトランジスタQn1がオンすると、N型DMOSトランジスタQd1の寄生ダイオードD1に電流が流れてしまう。そこで、本実施形態に係る半導体集積回路装置では、出力電圧VOUTが制御回路20(増幅回路21)の出力電圧の最高値(VoMAX)に近い場合において寄生ダイオードD1に電流が流れることを防ぐため、第2スイッチング回路12が設けられている。
【0047】
第2スイッチング回路12は、N型DMOSトランジスタQd1と並列に接続される。第2スイッチング回路12は、グランド電位VSSを基準とする出力端子T2の出力電圧VOUTが正の第1電圧V1より高くなるとオンし、第1電圧V1より低くなるとオフする。第1電圧V1は、制御回路20(増幅回路21)の出力電圧の最高値VoMAXより低い電圧である。
【0048】
例えば第2スイッチング回路12は、図1において示すように、第1のP型MOSトランジスタQp1によって構成される。第1のP型MOSトランジスタQp1は、ソースが出力端子T2に接続され、ドレインが第1スイッチング回路11に接続され、ゲートがグランドに接続される。第1のP型MOSトランジスタQp1のバルクは、適切な電位(例えば電源電圧VDD)に接続される。出力電圧VOUTは、第1のP型MOSトランジスタQp1のゲート−ソース間の電圧と等しくなる。第1のP型MOSトランジスタQp1は、この出力電圧VOUTが第1電圧V1より高くなるとオンし、第1電圧V1より低くなるとオフする。第1電圧V1は、第1のP型MOSトランジスタQp1におけるゲート−ソース間のしきい電圧に相当する。
【0049】
ここで、上述した構成を有する半導体集積回路装置の動作を説明する。
まず、出力電圧VOUTがグランド電位VSSより高い正常状態の動作について述べる。出力端子T2は、図示しないプルアップ抵抗によって電源電圧VDDにプルアップされているものとする。N型MOSトランジスタQn1がオフのとき、出力端子T2からグランドへの電流経路が遮断されるため、出力電圧VOUTはほぼ電源電圧VDDと等しくなる。増幅回路21は、電源電圧VDDを超える電圧を出力できないため、N型DMOSトランジスタQd1のゲートとソースの間の電圧はゼロに近い電圧となり、N型DMOSトランジスタQd1はオフ状態となる。一方、第2スイッチング回路12の第1のP型MOSトランジスタQp1は、出力電圧VOUTが第1電圧V1より高い電圧であるためオン状態となる。
【0050】
N型MOSトランジスタQn1がオフからオンに変化すると、出力端子T2から第1のP型MOSトランジスタQp1及びN型MOSトランジスタQn1を通ってグランドに電流が流れるため、出力電圧VOUTは不図示のプルアップ抵抗の電圧降下により低下する。このとき、第1のP型MOSトランジスタQp1がオン状態のため、寄生ダイオードD1には電流が流れない。
【0051】
出力電圧VOUTが第1電圧V1まで低下すると、第1のP型MOSトランジスタQp1がオンからオフへ変化する。ここで、制御回路20(増幅回路21)の出力電圧の最高値VoMAXが、第1電圧V1に比べてしきい電圧Vthより高いものとすると(VoMAX>V1+Vth)、出力電圧VOUTが第1電圧V1まで低下しても、制御回路20(増幅回路21)が最大値VoMAXを出力した場合に、N型DMOSトランジスタQd1のゲート−ソース間の電圧(VoMAX−V1)はしきい電圧Vthより高くなる(VoMAX−V1>Vth)。すなわち、出力電圧VOUTが第1電圧V1まで低下して第1のP型MOSトランジスタQp1がオフ状態になっても、制御回路20(増幅回路21)によるゲート電圧の制御によってN型DMOSトランジスタQd1のソースとドレインとの電位差が小さくなるため、寄生ダイオードD1には電流が流れない。
【0052】
次に、出力電圧VOUTがグランド電位VSSより低い異常状態の動作について述べる。この場合、第1のP型MOSトランジスタQp1のゲート−ソース間電圧はしきい電圧(第1電圧V1)より低くなるため、第1のP型MOSトランジスタQp1はオフする。第1のP型MOSトランジスタQp1のバルクには電源電圧VDDが印加されるため、第1のP型MOSトランジスタQp1の寄生ダイオードには逆方向の電圧が加わり、電流が流れない。つまり、第1のP型MOSトランジスタQp1において逆流電流は流れない。N型DMOSトランジスタQd1においても、図1に示す半導体集積回路装置について既に説明したように逆流電流は流れない。従って、グランドと出力端子T2との間の電流経路が全て遮断されるため、グランドから出力端子T2へ逆流電流は流れない。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体集積回路装置によれば、出力電圧VOUTが制御回路20の出力電圧の最高値VoMAXに近い場合であっても、N型DMOSトランジスタQd1と並列に設けられた第2スイッチング回路12(第1のP型MOSトランジスタQp1)がオン状態になることによって、寄生ダイオードD1に電流が流れることを確実に防止できる。また、制御回路20の出力電圧の最高値VoMAXが第1電圧V1に比べてしきい電圧Vthより高いため、出力電圧VOUTが第1電圧V1まで低下した場合でも、制御回路20(増幅回路21)によるゲート電圧の制御によってN型DMOSトランジスタQd1のソースとドレインとの電位差が小さくなるため、寄生ダイオードD1に電流が流れることを防止できる。
【0054】
ここまで本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0055】
例えば、図1図3に示す半導体集積回路装置では、第1スイッチング回路11としてN型MOSトランジスタ(Qn1)を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種類のスイッチング素子を用いてもよい。また、図4に示す半導体集積回路装置では、第2スイッチング回路12としてP型MOSトランジスタ(Qp1)を用いているが、出力電圧VOUTが所定の第1電圧V1より高くなるとオン状態となり、第1電圧V1より低くなるとオフ状態となるスイッチング素子であって、グランドから出力端子T2への逆流電流が流れないものであれば、他の種類のスイッチング素子を用いてもよい。
【0056】
出力端子T2とグランドとの電流経路に設けられたトランジスタ(Qd1,Qn1,Qp1)は、それぞれ単一のトランジスタで構成してもよいし、電流容量やレイアウトの都合に応じて、複数の同一種類のトランジスタを並列に設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
11…第1スイッチング回路、12…第2スイッチング回路、20…制御回路、21…増幅回路、Qd1…N型DMOSトランジスタ、Qn1…N型MOSトランジスタ、Qp1…第1のP型MOSトランジスタ、D1,D2…寄生ダイオード、T1…グランド端子、T2…出力端子、VSS…グランド電位、VDD…電源電圧、VOUT…出力電圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8