(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
帯電防止剤がカーボンブラックであり、ポリアミドイミド樹脂とカーボンブラックの配合比(質量比〔カーボンブラック/ポリアミドイミド樹脂〕)が、5/95〜30/70であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明のポリアミドイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂の製造方法、並びに本発明のポリアミドイミド樹脂を用いたシームレスベルトについて説明する。
【0018】
<ポリアミドイミド樹脂>
本発明のポリアミドイミド樹脂は、一般式(1)で表される構成単位を該ポリアミドイミド樹脂中の全構成単位を100モル%としたときに10〜90モル%含有することを特徴とする。一般式(1)の構成単位を含有することにより、ポリアミドイミド樹脂本来の耐熱性や耐摩耗性を損なうことなく、柔軟で強靭な皮膜を形成し、吸水、吸湿性が低下して難燃性が向上する。更にはN−メチル−2−ピロリドンやN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶剤だけでなくγ−ブチロラクトンのような吸湿性の低い溶剤で重合することができるようになる。
【0019】
【化1】
一般式(1)中、R
1は、炭素数1以上5以下のアルキル基または−SO
2−(スルホン)を表す。炭素数1以上5以下のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、好ましい炭素数は2以上であり、より好ましくは3以上であり、また4以下であることが好ましい。R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、アリール基または炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。ただし、R
1が、スルホンである場合は、R
2およびR
3は無いものとする。ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であれば特に限定されず、R
2およびR
3が複数のハロゲン原子である場合は、それぞれ1種類のハロゲン原子であってもよく、2種類以上のハロゲン原子であってもよい。工業的には1種類のハロゲン原子であることが好ましく、なかでもR
2、R
3ともにフッ素であることがより好ましい。アリール基は特に限定されないが、置換基を有してもよいフェニル基または置換基を有してもよいナフチル基が好ましく、なかでもフェニル基がより好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、好ましい炭素数は2以上である。
【0020】
好ましいR
1としては、特に限定されないが、メチレン基またはスルホンであり、好ましいR
2およびR
3としては、特に限定されないが、水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基またはフェニル基である。R
1、R
2およびR
3から得られる好ましい態様としては、特に限定されないが、イソプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ジフェニルイソプロピル基、ジフェニルメチレン基またはエチレン基であり、なかでもイソプロピル基がより好ましい。
【0021】
一般式(1)中、R
4は、置換基を有してもよいアリール基を表す。置換基を有してもよいアリール基は特に限定されないが、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基であることが好ましく、なかでもフェニル基がより好ましい。
【0022】
本発明のポリアミドイミド樹脂中における一般式(1)で表される構成単位は、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましい。少なすぎると吸水率が大きく、多すぎると溶剤溶解性が不十分になることがある。
【0023】
また、一般式(3)で表される構成単位をさらに含有することも好ましい。一般式(3)で表される構成単位を含有する場合は、ポリアミドイミド樹脂中に10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
【化3】
一般式(3)中、R
4は前記と同義である。
【0025】
また、トリメリット酸無水物由来の構成単位と、以下の一般式(2)で示される多価カルボン酸二無水物由来の構成単位と、ジイソシアネート又はジアミン由来の構成単位とを含むことが好ましい。
【化2】
一般式(2)中、R
5は、炭素数1以上5以下のアルキル基または−SO
2−(スルホン)を表す。炭素数1以上5以下のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、好ましい炭素数は2以上であり、より好ましくは3以上であり、また4以下であることが好ましい。R
6およびR
7は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、アリール基または炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。ただし、R
5が、スルホンである場合は、R
6およびR
7は無いものとする。ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であれば特に限定されず、R
6およびR
7が複数のハロゲン原子である場合は、それぞれ1種類のハロゲン原子であってもよく、2種類以上のハロゲン原子であってもよい。工業的には1種類のハロゲン原子であることが好ましく、なかでもR
6、R
7ともにフッ素であることがより好ましい。アリール基は特に限定されないが、置換基を有してもよいフェニル基または置換基を有してもよいナフチル基が好ましく、なかでもフェニル基がより好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、好ましい炭素数は2以上である。
【0026】
好ましいR
5としては、特に限定されないが、メチレン基またはスルホンであり、好ましいR
6およびR
7としては、特に限定されないが、水素、メチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基またはフェニル基である。R
5、R
6およびR
7から得られる好ましい態様としては、特に限定されないが、イソプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ジフェニルイソプロピル基、ジフェニルメチレン基またはエチレン基であり、なかでもイソプロピル基がより好ましい。
【0027】
<ポリアミドイミド樹脂の酸成分>
本発明では酸成分の一部に、トリメリット酸無水物由来の構成単位と、一般式(2)で示される多価カルボン酸二無水物由来の構成単位とを含むことが好ましく、より好ましくは、ポリアミドイミド樹脂に共重合していることである。一般式(2)で示される多価カルボン酸二無水物由来の構成単位を適量範囲で導入することにより、ポリアミドイミド樹脂本来の耐熱性や耐摩耗性を損なうことなく、柔軟で強靭な皮膜を形成し、吸水、吸湿性が低下して難燃性が向上する。更にはN−メチル−2−ピロリドンやN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶剤だけでなくγ−ブチロラクトンのような吸湿性の低い溶剤で重合することができるようになる。その理由は、一般式(2)で示される多価カルボン酸二無水物が屈曲性に優れた構造を有しているうえ比較的分子量が大きく、且つ酸無水物であることから分子中のアミド結合量が低下するためであると考えられる。
【0028】
トリメリット酸無水物の共重合量は全酸成分中、好ましくは10〜90モル%、さらに好ましくは15〜85モル%、特に好ましくは20〜80モル%である。この共重合量が10モル%に満たない場合は、溶剤溶解性が不十分になる場合があり、逆に90モル%を超えると吸水率が大きい場合がある。
【0029】
一般式(2)で示される多価カルボン酸二無水物の共重合量は全酸成分中、10〜90モル%である。好ましくは15〜85モル%、更に好ましくは20〜80モル%である。この共重合量が10モル%に満たない場合は吸水率が大きく、逆に90モル%を超えると、溶剤溶解性が不十分になることがある。
【0030】
トリメリット酸無水物と一般式(2)で示される多価カルボン酸二無水物のモル比は、20/80〜80/20の範囲にあることが好ましい。
【0031】
一般式(2)で示される多価カルボン酸二無水物として、特に限定されないが具体的には4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物、4,4’−(4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物、4,4’−(4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物、4,4’−(4,4’−エチレンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物、4,4’−(4,4’−スルホニルジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物などが挙げられ、これらの中では低吸水性や溶解性から4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物(以下、BISDAともいう。)が好ましい。
【0032】
本発明では、酸成分としてトリメリット酸無水物と一般式(2)で示される多価カルボン酸二無水物のほかに以下に示す多価カルボン酸またはそれらの無水物を本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。
【0033】
3官能以上の芳香族多価カルボン酸としてはピロメリット酸、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート、1,4−ブタンジオールビストリメリテート、ポリエチレングリコールビストリメリテートなどのアルキレングリコールビストリメリテート、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、3,3’、4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−、2−ビス(2,3−または3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−または3,4−ジカルボキシフェニル)プロパンまたはこれらの無水物などが挙げられ、これらの中ではピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸またはこれらの無水物が好ましい。これらは単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
また、脂肪族ジカルボン酸としてはシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカ二酸、ドデカン二酸などが、分岐構造を有するものとしては、2−メチルコハク酸など上記ジカルボン酸に炭化水素の置換基を有するものが挙げられる。
【0035】
芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。
【0036】
また本発明の効果を損なわない範囲でその他の酸成分として脂肪族あるいは脂環族のポリカルボン酸またはそれらの無水物や脂環族のジカルボン酸を用いることができる。例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、ヘキサヒドロピロメリット酸、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2)、5,6−テトラカルボン酸、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3)、3,4−テトラカルボン酸、1,3−ジプロピル−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸、ジシクロヘキシル−3,4,3’、4’−テトラカルボン酸、ビシクロ(2.2.1)ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、1,3−ジプロピルクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸またはこれらの無水物、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
トリメリット酸無水物と一般式(2)で示される多価カルボン酸二無水物以外の上記酸成分の共重合量は本発明のポリアミドイミド樹脂の特徴を損なわないためには全酸成分中の20モル%以下が望ましく、10モル%以下がより望ましい。
【0038】
<ポリアミドイミド樹脂のジアミン成分>
本発明のポリアミドイミド樹脂のジアミン成分としては、ジイソシアネートまたはジアミンが挙げられる。ジアミン成分を、ジイソシアネートとして例示するが、ジイソシアネートに対応するジアミンであってもよい。
【0039】
本発明のポリアミドイミド樹脂のジアミン成分はジイソシアネート又はジアミンであればよく、好ましくは芳香族ジイソシアネート又は芳香族ジアミンが好ましい。以下に、芳香族ジイソシアネートとしてとして例示するが芳香族ジイソシアネートに対応する芳香族ジアミンであってもよい。
【0040】
本発明で用いることのできる芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3,2’−または3,3’−または4,2’−または4,3’−または5,2’−または5,3’−または6,2’−または6,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3,2’−または3,3’−または4,2’−または4,3’−または5,2’−または5,3’−または6,2’−または6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3,2’−または3,3’−または4,2’−または4,3’−または5,2’−または5,3’−または6,2’−または6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’ −ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−(2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン)ジイソシアネート、3,3’−または2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−または2,2’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどが挙げられる。これらの中では、低吸湿性、寸法安定性、価格及び重合性の点からジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネートやナフタレン−2,6−ジイソシアネートが好ましく、これらは単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
本発明の効果を損なわない範囲で、ジイソシアネート成分として脂肪族もしくは脂環族構造を用いることができる。例えば、前項で挙げた成分のいずれかを水素添加したジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0042】
本発明のポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.5dl/g以上が好ましく、より好ましくは0.6dl/g以上である。ポリアミドイミド樹脂の対数粘度の上限は特に定めるものではないが、現実的には3.0dl/g以下が好ましく、2.5dl/g以下であると作業性などの点からより好ましい。対数粘度が0.5dl/gより低いと、たとえば後述のシームレスベルトにした場合、長期使用中にベルトが変形したり、破断したりすることがある。
【0043】
<ポリアミドイミド樹脂の製造方法>
一般に、ポリアミドイミド樹脂は酸クロリド法や直接法、ジイソシアネート法によって製造することができるが、ジイソシアネート法のほうが安価で工業的に優位である。
【0044】
通常のポリアミドイミド樹脂は酸成分とジイソシアネート又はジアミン成分とから合成され、分子中にアミド結合とイミド結合が交互に繰り返されて高分子を形成しており、本質的に剛直性が強いため耐熱性は高く、強度も大きいのが特徴である。このポリアミドイミド樹脂の特性を改良するために、アミド結合とイミド結合の比率を変えたり、芳香族性を強めたり、脂肪族成分を導入したりすることができる。
【0045】
以下に、本発明のポリアミドイミド樹脂の製造方法についてジイソシアネート法を例に説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。
本発明のポリアミドイミド樹脂は、溶剤中で酸成分とイソシアネート成分を溶解、60℃〜200℃、好ましくは80℃〜150℃に加熱、攪拌することによって得られる。この時、酸成分とイソシアネート成分の比率(モル比)は100:91〜100:109の範囲であることが好ましい。この範囲から外れると、分子量が十分に上がらず機械的強度が不足したり、重合中にゲル化したりするおそれがある。
【0046】
本発明のポリアミドイミド樹脂の重合に用いられる溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、重合溶液の保存安定性や取り扱い作業性と重合性から、N−メチル−2−ピロリドンまたはγ−ブチロラクトンが好ましい。また、重合中または重合後に重合に用いた溶剤、および/または他の低沸点溶剤で希釈して不揮発分濃度や溶液粘度を調節することができる。
【0047】
低沸点溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤が挙げられる。
【0048】
また、反応を促進するために触媒を用いることができる。例えば、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属類、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネンなどのアミン類を用いることができる。
【0049】
<用途及び配合>
このようにして得られた本発明のポリアミドイミド樹脂の用途は特に制限されないが、最も有用な用途は電子写真複写機やレーザープリンターに用いられているトナーを転写したり、紙を搬送するシームレスベルトである。
【0050】
また、電子写真複写機やレーザープリンターのシームレスベルトの場合、適度な導電性が必要になるために本発明のポリアミドイミド樹脂には帯電防止剤を配合する必要がある。本発明に用いられる帯電防止剤としてはケッチェンブラック、アセチレンブラック、ブラファイトなどのカーボンブラック類、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性の界面活性剤、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレンなどの電子伝導性ポリマーなどが用いられる。これらの中では、導電性の湿度依存性が小さく、ポリアミドイミドへの分散性や溶解性に優れるカーボンブラックやポリアニリンが好ましい。ポリアニリンの場合、酸化重合したポリアニリン誘導体に無機酸やドデシルベンゼンスルホン酸などの有機プロトン酸ドーパントでドーピングされた、有機溶剤や水に溶解または分散可能なタイプが好ましい。
【0051】
本発明のポリアミドイミド樹脂に配合する帯電防止剤の量は帯電防止剤によって異なるが、ベルトに成形したときの表面抵抗値が10E+6〜10E+14Ω/□の範囲になるように調節する必要すればよい。たとえば、カーボンブラックの場合、本発明のポリアミドイミド樹脂とカーボンブラックの配合比(質量比〔カーボンブラック/ポリアミドイミド樹脂〕)が、5/95〜30/70の導電性樹脂組成物とすればよい。好ましくは配合比(質量比〔カーボンブラック/ポリアミドイミド樹脂〕)が5/95〜20/80であればよい。
【0052】
本発明のポリアミドイミド樹脂に帯電防止剤を配合する方法は、デイゾルバー、3本ロールミル、サンドミル、ボールミル、アトライター、プラネタリウムミキサーなど通常の分散機を単独または組み合わせて行うことができる。
【0053】
本発明のポリアミドイミド樹脂には、本来の特性を損なわない範囲で着色剤、分散剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤や本発明以外のポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などを配合することができる。さらに、シリコーン離形剤や架橋剤なども配合することができる。架橋剤としては2官能以上のエポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0054】
本発明のポリアミドイミド樹脂に帯電防止剤を配合した導電性組成物からシームレスベルトを成形する方法は、押し出し成型、ブロー成形、射出成型、コーテイング、遠心成形などによって行うことができるが、これらの中では溶液成型が可能な遠心成形が好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例によって本発明は何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例で試験された導電性成形品は以下の方法で作製したものである。
【0056】
(導電性成形品の作製例)
実施例及び比較例で合成したポリアミドイミド樹脂溶液にラーベン780(コロンビアカーボン社製)を固形分比で25%配合して、3本ロールミルに2回通して分散させた。これらの分散液を直径150mmの円筒金型の内側に流して200回転/分で回転させながら100℃で30分、次いで220℃で5時間乾燥させた後、金型から脱着して厚みが約0.1mmのシームレスベルトを作製した。
尚、実施例に示される測定値は以下の方法で測定した値である。
【0057】
1.溶解性
ポリアミドイミド樹脂溶液をガラス容器に充填、密閉して25℃の雰囲気で24時間静置した時の溶解状態を目視で判定した。
○:透明状態を維持している
×:不透明〜固化
【0058】
2.対数粘度
0.5gの乾燥したポリアミドイミド樹脂を100mlのN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、ウベローデ型粘度管を用い、30℃の恒温漕に30分以上浸漬した後測定した値を下記式に従って計算した。
ηinh(dl/g)=ln(t/t0)
t:ポリアミドイミド溶液の通過秒数、t0:N−メチル−2−ピロリドンの通過秒数
【0059】
3.引っ張り強度、伸度
導電性成形品を東洋ボールドウイン社製引張試験機を用いて引張速度20mm/分で測定した。
【0060】
4.引き裂き強度:柔軟性の指標
導電性成形品をJIS K7128−1(トラウザー引き裂き法)の条件に従って測定した。
【0061】
5.吸水率:低吸水性の指標
導電性成形品約1gを精秤し(w0)、これを25℃の水中に24時間浸漬した後、再度精秤し(w1)次式により求めた。
吸水率(%)=[(w1−w0)/w1]×100
【0062】
6.湿度膨張係数:低吸水性の指標
導電性成形品を4mm幅の短冊にして一方の端に3gの荷重をかけ、室温で測定雰囲気を40%RHと65%RHにして各々の寸法変化を測定した。
【0063】
(実施例1)
冷却管と窒素導入口のついた4ツ口フラスコにトリメリット酸無水物(TMA)0.8モル、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物(BISDA)0.2モル、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)0.99モル、ジアザビシクロウンデセン(DBU)0.005モルを固形分濃度が20%となるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)とともに仕込み、90℃に昇温しながら3時間、さらに120℃に昇温しながら3時間攪拌して重合を行った。特性を表1に示す。
【0064】
(実施例2)
実施例1と同様の容器にTMA0.6モル、BISDA0.4モル、MDI0.99モル、フッ化カリウム(KF)0.01モルを固形分濃度が20%となるようにNMPと共に仕込み、90℃に昇温しながら2時間、120℃に昇温しながら1時間、更に180℃に昇温しながら3時間攪拌して重合を行った。特性を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
実施例2のポリアミドイミド樹脂の合成例のうちNMPをγ−ブチロラクトン(GBL)に変え、90℃に昇温しながら2時間、120℃に昇温しながら1時間、さらに150℃に昇温しながら2時間撹拌して重合を行った。特性を表1に示す。
【0066】
(実施例4)
実施例1と同じような容器にTMA0.2モル、BISDA0.8モル,MDIを1モル、KF0.01モルを固形分濃度が20%となるようにNMPと共に仕込み、90℃に昇温しながら2時間、120℃に昇温しながら1時間、更に180℃に昇温しながら3時間撹拌を続けて重合した。特性を表1に示す。
【0067】
(実施例5)
実施例1で作製したポリアミドイミド樹脂溶液100質量部に対し、カーボンブラック(ConductexSC Ultra;コロンビヤン・カーボン日本製)を樹脂固形分100重量部に対し400重量部加え、ボールミルで1時間(25℃)十分混合しカーボンブラックのマスターバッチを得た。これに分散に用いた樹脂と同じものを加え、ポリアミドイミド樹脂/カーボンブラック=95/5(固形分質量比)となるよう混合した。
このカーボンブラック含有ワニスを以下の手順でシームレスベルトにした。円筒状のシリンダーで内周面が鏡面仕上げされたものと円筒状シリンダーの幅に相対する長さのスリット状出口を持つ塗工機を用意した。シリンダーをゆっくり回転させながら、その内周面にカーボンブラック含有ワニスを供給した。ワニスの供給が終わってから、シリンダーの回転速度を上げ全体を均一にした後100℃〜120℃で30分乾燥させた後、加熱を停止し、常温に冷却し回転を止め、自己支持性のあるシームレスベルトを得た。このシームレスベルトを該シリンダーから剥離し、次いで該ベルト状物の内径より約3%小さい外径を有する棒体を該ベルト状物に挿入した後、別の加熱装置に入れて、徐々に温度を上げながら200℃で40分間、250℃で120分間加熱して導電剤を含有するシームレスベルトを得た。厚みはトータルで約100ミクロンであった。このシームレスベルトの特性を表2に示す。
【0068】
(実施例6)
ポリアミドイミド樹脂/カーボンブラック=75/25(固形分質量比)と変更した以外は、実施例5と同様にシームレスベルトを得た。このシームレスベルトの特性を表2に示す。
【0069】
(比較例1)
実施例1の重合に用いたのと同じような容器に、TMA0.05モル、BISDA0.95モル、MDI1.01モル、KF0.01モルを固形分濃度が20%となるようにγ−ブチロラクトンと共に仕込み、90℃に昇温しながら2時間、120℃に昇温しながら1時間、180℃に昇温しながら3時間撹拌を続けて重合した。このポリアミドイミド樹脂溶液は重合途中から濁りはじめ、溶解性が悪かったため導電性成形品は作製せず、特性も評価できなかった。
【0070】
(比較例2)
実施例1の重合に用いたのと同じような容器に、TMA1.0モル、MDI0.99モル、KF0.005モルを固形分濃度が20%となるように仕込み、90℃に昇温しながら2時間、120℃に昇温しながら3時間撹拌を続けて重合した。特性を表1に示す。
【0071】
(比較例3)
比較例2で得たポリアミドイミド樹脂溶液を用い、実施例5と同様の方法でシームレスベルトを得た。この評価結果を表2に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
実施例1〜4で示される特定構造を有するポリアミドイミド樹脂は、比較例のポリアミドイミド樹脂に対し、高いガラス転移温度を維持しつつ、吸水率や湿度膨張係数が低下しており、かつ引裂強度が向上している。
【0075】
実施例5および6で示される、特定構造を有するポリアミドイミド樹脂を用いたシームレスベルトは、比較例3のシームレスベルト対し、吸水率や湿度膨張係数が低下しており、かつ引裂強度が向上している。