特許第6332644号(P6332644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6332644化合物、高分子化合物、有機半導体材料、有機半導体デバイス、化合物の合成方法、高分子化合物の合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332644
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】化合物、高分子化合物、有機半導体材料、有機半導体デバイス、化合物の合成方法、高分子化合物の合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/22 20060101AFI20180521BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20180521BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20180521BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C07D495/22CSP
   C08G61/12
   C07F7/10 V
   C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2015-514870(P2015-514870)
(86)(22)【出願日】2014年4月30日
(86)【国際出願番号】JP2014062025
(87)【国際公開番号】WO2014178415
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-95596(P2013-95596)
(32)【優先日】2013年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-156130(P2013-156130)
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(72)【発明者】
【氏名】瀧宮 和男
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 格
(72)【発明者】
【氏名】中野 正浩
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−508311(JP,A)
【文献】 特開2007−277552(JP,A)
【文献】 特開2012−184218(JP,A)
【文献】 特開2012−131939(JP,A)
【文献】 SURARU, S.-L. et al.,Chemical Communications,2011年,Vol. 47,pp. 11504-11506
【文献】 HU, Y. et al.,Chemistry of Materials,2011年,Vol. 23,pp. 1204-1215
【文献】 GAO, J. et al.,Organic Letters,2013年,Vol. 15, No. 6,pp. 1366-1369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07B
C07F
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表される、
ことを特徴とする化合物。
【化1】
(式1中、Rは独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表し、Xは独立に水素、ハロゲン、アリール基又は複素芳香環基を表し、Zは独立に硫黄又はセレンを表す。)
【請求項2】
式3で表される、
ことを特徴とする高分子化合物。
【化2】
(式3中、Rは独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表し、Zは独立に硫黄又はセレンを表し、Yは式4で表される構造を表し、mはを表し、nは正の実数を表す。)
【化3】
(式4中、Wは、独立に炭素又は窒素を表し、炭素の場合は置換基として水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基又はアルキルカルボニル基のいずれかを有し、Qは式5〜式29のいずれかを表し、l及びrはそれぞれ独立に0又は1を表す。)
【化4】
(式5〜式28中、Rは水素、又は、直鎖状でも分岐状でもよい炭素数が6〜30のアルキル基を表す。)
【請求項3】
請求項1に記載の化合物、又は、請求項2に記載の高分子化合物を含有する、
ことを特徴とする有機半導体材料。
【請求項4】
請求項に記載の有機半導体材料を含有する、
ことを特徴とする有機半導体デバイス。
【請求項5】
式A1で表される化合物とトリアルキルシリルアセチレンとを反応させて式A2で表される化合物を合成すること、
【化5】
(式A1中、Rは独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表し、Xはハロゲンを表す。)
【化6】
(式A2中、Rは式A1における定義と同じであり、TASはトリアルキルシリル基を表す。)
式A2で表される化合物と硫化物塩又はセレン化物塩とを反応させて式1aで表される化合物を合成すること、
【化7】
(式1a中、Rは式A1における定義と同じであり、Zは独立に硫黄又はセレンを表す。)
を含む、化合物の合成方法。
【請求項6】
式A1で表される化合物とトリアルキルシリルアセチレンとを反応させて式A2で表される化合物を合成すること、
【化8】
(式A1中、Rは独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表し、Xはハロゲンを表す。)
【化9】
(式A2中、Rは式A1における定義と同じであり、TASはトリアルキルシリル基を表す。)
式A2で表される化合物と硫化物塩又はセレン化物塩とを反応させて式A3で表される化合物を合成すること、
【化10】
(式A3中、Rは式A1における定義と同じであり、TASは式A2における定義と同じであり、Zは独立に硫黄又はセレンを表す。)
式A3で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させて式1bで表される化合物を合成すること、
【化11】
(式1b中、Rは式A1における定義と同じであり、Zは式A3における定義と同じであり、Xはハロゲンを表す。)
を含む、化合物の合成方法。
【請求項7】
式A1で表される化合物とトリアルキルシリルアセチレンとを反応させて式A2で表される化合物を合成すること、
【化12】
(式A1中、Rは独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表し、Xはハロゲンを表す。)
【化13】
(式A2中、Rは式A1における定義と同じであり、TASはトリアルキルシリル基を表す。)
式A2で表される化合物と硫化物塩又はセレン化物塩とを反応させて式A3で表される化合物を合成すること、
【化14】
(式A3中、Rは式A1における定義と同じであり、TASは式A2における定義と同じであり、Zは独立に硫黄又はセレンを表す。)
式A3で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させて式1bで表される化合物を合成すること、
【化15】
(式1b中、Rは式A1における定義と同じであり、Zは式A3における定義と同じであり、Xはハロゲンを表す。)
式1bで表される化合物と式A4で表される化合物とを反応させて重合し、式3で表される高分子化合物を合成すること、
【化16】
(式A4中、Wは、独立に炭素又は窒素を表し、炭素の場合は置換基として水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基又はアルキルカルボニル基のいずれかを有し、Qは式5〜式29のいずれかを表し、Xは、トリアルキルスズ基又はホウ酸エステル基を表し、l及びrはそれぞれ独立に0又は1を表す。)
【化17】
(式5〜式28中、Rは水素、又は、直鎖状でも分岐状でもよい炭素数が6〜30のアルキル基を表す。)
【化18】
(式3中、Rは式A1における定義と同じであり、Zは式A3における定義と同じであり、Yは式4で表される構造を表し、mはを表し、nは正の実数を表す。)
【化19】
(式4中、W、Q、l及びrは式A4における定義と同じである。)
を含む、高分子化合物の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、高分子化合物、有機半導体材料、有機半導体デバイス、化合物の合成方法、高分子化合物の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナフタレンジイミド(以下、NDI)は、電子不足(アクセプター性、若しくはn型半導体性)の有機半導体骨格として広く用いられている骨格である。NDIの共役拡張により様々な材料展開が可能であり、NDI骨格を単結合で連結し、オリゴマーやポリマーの共役系に組み込んだ化合物を用いて作製されたn型半導体、p型半導体、両性半導体が報告されている。
【0003】
また、近年では、NDI骨格に直接、芳香環を縮合することで、π拡張NDI誘導体の開発も検討されており、芳香環としてベンゼン、インドール、置換チオフェン、チアゾール、ピラジンなどを含むものが合成され、低分子有機半導体として検討されている(例えば、非特許文献1〜5、特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Katsuta, S.; Tanaka, K.; Maruya, Y.; Mori, S.; Masuo, S.; Okujima, T.; Uno, H.; Nakayama, K.-i.; Yamada, H. Chemical Communications 2011, 47, 10112-10114.
【非特許文献2】Suraru, S.-L.; Zschieschang, U.; Klauk, H.; Wurthner, F. Chemical Communications 2011, 47, 11504-11506.
【非特許文献3】Hu, Y.; Gao, X.; Di, C.-a.; Yang, X.; Zhang, F.; Liu, Y.; Li, H.; Zhu, D. Chemistry of Materials 2011, 23, 1204-1215.
【非特許文献4】Chen, X.; Guo, Y.; Tan, L.; Yang, G.; Li, Y.; Zhang, G.; Liu, Z.; Xu, W.; Zhang, D. Journal of Materials Chemistry C 2013, 1, 1087-1092.
【非特許文献5】Bhosale, S. V.; Bhosale, S. V.; Bhargava, S. K. Organic & Biomolecular Chemistry 2012, 10, 6455-6468.
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第101885732号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NDIのナフタレンの両側に6員環が縮合した化合物では、6員環に結合するペリ位水素等との立体障害によりねじれた構造を持つ。ねじれ構造によって平面性に乏しく、この骨格を用いて有機半導体層を形成した場合、電荷移動度を向上させることに難がある。
【0007】
また、NDIのナフタレンの両側に5員環が縮合した化合物では、α位にシアノ基等が結合している。共役拡張が困難であり、高分子有機半導体材料への展開に難がある。
【0008】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、平面性が良好で共役拡張に有用な化合物、高分子化合物、有機半導体材料、有機半導体デバイス、化合物の合成方法、高分子化合物の合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係る化合物は、
式1で表される、
ことを特徴とする。
【化1】

(式1中、Rは独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表し、Xは独立に水素、ハロゲン、アリール基又は複素芳香環基を表し、Zは独立に硫黄又はセレンを表す。)
【0011】
本発明の第の観点に係る高分子化合物は、
式3で表される、
ことを特徴とする。
【化2】
(式3中、Rは独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表し、Zは独立に硫黄又はセレンを表し、Yは式4で表される構造を表し、mはを表し、nは正の実数を表す。)
【化3】
(式4中、Wは、独立に炭素又は窒素を表し、炭素の場合は置換基として水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基又はアルキルカルボニル基のいずれかを有し、Qは式5〜式29のいずれかを表し、l及びrはそれぞれ独立に0又は1を表す。)
【化4】
(式5〜式28中、Rは水素、又は、直鎖状でも分岐状でもよい炭素数が6〜30のアルキル基を表す。)
【0012】
本発明の第の観点に係る有機半導体材料は、
本発明の第1の観点に係る化合物、又は、本発明の第の観点に係る高分子化合物を含有する、
ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第の観点に係る有機半導体デバイスは、
本発明の第の観点に係る有機半導体材料を含有する、
ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第の観点に係る化合物の合成方法は、
式A1で表される化合物とトリアルキルシリルアセチレンとを反応させて式A2で表される化合物を合成すること、
【化5】
(式A1中、Rは独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表し、Xはハロゲンを表す。)
【化6】
(式A2中、Rは式A1における定義と同じであり、TASはトリアルキルシリル基を表す。)
式A2で表される化合物と硫化物塩又はセレン化物塩とを反応させて式1aで表される化合物を合成すること、
【化7】
(式1a中、Rは式A1における定義と同じであり、Zは独立に硫黄又はセレンを表す。)
を含む。
【0015】
本発明の第の観点に係る化合物の合成方法は、
式A1で表される化合物とトリアルキルシリルアセチレンとを反応させて式A2で表される化合物を合成すること、
【化8】
(式A1中、Rは独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表し、Xはハロゲンを表す。)
【化9】
(式A2中、Rは式A1における定義と同じであり、TASはトリアルキルシリル基を表す。)
式A2で表される化合物と硫化物塩又はセレン化物塩とを反応させて式A3で表される化合物を合成すること、
【化10】
(式A3中、Rは式A1における定義と同じであり、TASは式A2における定義と同じであり、Zは独立に硫黄又はセレンを表す。)
式A3で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させて式1bで表される化合物を合成すること、
【化11】
(式1b中、Rは式A1における定義と同じであり、Zは式A3における定義と同じであり、Xはハロゲンを表す。)
を含む。
【0016】
本発明の第の観点に係る高分子化合物の合成方法は、
式A1で表される化合物とトリアルキルシリルアセチレンとを反応させて式A2で表される化合物を合成すること、
【化12】
(式A1中、Rは独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表し、Xはハロゲンを表す。)
【化13】
(式A2中、Rは式A1における定義と同じであり、TASはトリアルキルシリル基を表す。)
式A2で表される化合物と硫化物塩又はセレン化物塩とを反応させて式A3で表される化合物を合成すること、
【化14】
(式A3中、Rは式A1における定義と同じであり、TASは式A2における定義と同じであり、Zは独立に硫黄又はセレンを表す。)
式A3で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させて式1bで表される化合物を合成すること、
【化15】
(式1b中、Rは式A1における定義と同じであり、Zは式A3における定義と同じであり、Xはハロゲンを表す。)
式1bで表される化合物と式A4で表される化合物とを反応させて重合し、式3で表される高分子化合物を合成すること、
【化16】

(式A4中、Wは、独立に炭素又は窒素を表し、炭素の場合は置換基として水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基又はアルキルカルボニル基のいずれかを有し、Qは式5〜式29のいずれかを表し、Xは、トリアルキルスズ基又はホウ酸エステル基を表し、l及びrはそれぞれ独立に0又は1を表し、式5〜式28中、Rは水素、又は、直鎖状でも分岐状でもよい炭素数が6〜30のアルキル基を表す。)
【化17】
(式3中、Rは式A1における定義と同じであり、Zは式A3における定義と同じであり、Yは式4で表される構造を表し、mはを表し、nは正の実数を表す。)
【化18】
(式4中、W、Q、l及びrは式A4における定義と同じである。)
を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る化合物は、ナフタレンの両側に5員環であるカルコゲノフェン環が縮合しており、平面性に優れるとともに、カルコゲノフェン環α位を持つため、容易に共役拡張が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(A)、(B)は、C−NDTIの単結晶構造解析に基づく分子構造ORTEP図である。
図2図2(A)、(B)は、C−NDTIのパッキング構造ORTEP図である。
図3】C−NDTIのUV−vis吸収スペクトル、PLスペクトルを示すグラフである。
図4】TCBG型FET素子の構造を示す断面図である。
図5】TCBG−C−NDTIの伝達特性を示すグラフ(図5(A))、出力特性を示すグラフ(図5(B))である。
図6】TGBC型FET素子の構造を示す断面図である。
図7】TCBG−C−NDTIの伝達特性を示すグラフ(図7(A))、出力特性を示すグラフ(図7(B))である。
図8】C26(200,ODTS)素子の伝達特性を示すグラフ(図8(A))、出力特性を示すグラフ(図8(B))である。
図9】P2(OAn350)素子のp型半導体の出力特性を示すグラフ(図9(A))、n型半導体の出力特性を示すグラフ(図9(B))である。
図10】P7素子の伝達特性を示すグラフ(図10(A))、出力特性を示すグラフ(図10(B))である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(化合物)
化合物は、式1で表される。
【化19】
【0020】
式1中、Zは硫黄又はセレンを表し、Zは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0021】
また、式1中、Xは独立に水素、ハロゲン、アリール基又複素芳香環基を表す。アリール基、複素芳香環基はそれぞれ置換基を有していてもよい。アリール基として、例えば、トリフルオロメチルフェニル基が挙げられる。また、複素芳香環基として、例えば、ピリミジル基が挙げられる。
【0022】
また、式1中、Rはアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基又はアリール基を表す。これらはそれぞれ置換基を有していてもよい。Rは同一であっても異なっていてもよい。Rは、炭素数が6〜30であることが好ましく、8〜24であることがより好ましい。また、直鎖状、分岐状のいずれでもよいが、後述の高分子化合物を重合して溶液法にて有機半導体層を作製する場合においては分岐状アルキル基であることが好ましい。
【0023】
式1で表される化合物は、剛直で高い平面性を持つ。そのため、有機半導体材料として適用して活性層を作製した際の分子間距離が短くなり、高い電荷移動度を発揮することができる。
【0024】
更に、式1で表される化合物は、カルコゲノフェン環α位を持つために、容易に共役拡張が可能である。誘導体化、即ち、式1中、Xがハロゲンである化合物では、後述のように共役拡張して種々の高分子化合物への展開が容易である。
【0025】
また、式1で表される化合物は、後述のように580nm付近に顕著な蛍光発光を示したことから、有機EL(Electro Luminescence)などの有機発光材料への応用、或いは、機能性色素としての利用も期待できる。
【0026】
(高分子化合物)
本実施の形態に係る高分子化合物は、高分子主鎖に式2で表される骨格を有する。
【化20】
【0027】
式2中、R及びZは上述した式1における定義と同じである。
【0028】
更には、高分子化合物は式3で表される。
【化21】
【0029】
式3中、R及びZは上述した式1における定義と同じである。また、mは0以上の整数を表し、nは正の実数を表す。また、Yは式4で表される構造を表す。
【化22】
【0030】
式4中、Wは、独立に炭素又は窒素を表す。Wが炭素の場合、置換基として水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基又はアルキルカルボニル基のいずれかを有する。また、l及びrはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。
【0031】
Qは2価の複素環基、アルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基を表す。2価の複素環基、例えば、式5〜式29で表される構造が挙げられる。式5〜式28中、Rは水素又はアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数は6〜30であることが好ましく、8〜24であることがより好ましい。また、アルキレン基の炭素数は1〜4であることが好ましい。また、アルケニレン基及びアルキニレン基の炭素数は2〜4であることが好ましい。
【化23】
【0032】
式3で表される高分子化合物は、共役系高分子化合物であり、高いπ共役平面性を有することから、さらに優れた電荷移動度を発揮し易くなる。
【0033】
上述した式1で表される化合物(式1中、Xが水素である化合物)は、例えば、以下のスキーム1のように合成することができる。
【化24】
【0034】
まず、式A1で表される化合物とトリメチルシリルアセチレン、トリエチルシリルアセチレン、tert−ブチルメチルシリルアセチレン、トリイソプロピルシリルアセチレン、tert−ブチルジフェニルシリルアセチレン等のトリアルキルシリルアセチレンとを反応させる(薗頭カップリング)。これにより、式A2で表される化合物が得られる。
【0035】
式A2で表される化合物と硫化物塩或いはセレン化物塩とを反応させる。環化反応により、ナフタレンの両側にカルコゲノフェン環が縮合する。そして、式A3で表される化合物(中間体)を経て式1aで表される化合物(式1で表される化合物において、Xが水素である化合物)が得られる。
【0036】
硫化物塩として、硫化物金属塩を用いることが好ましく、硫化物アルカリ金属塩を用いることがより好ましい。硫化物アルカリ金属塩として、例えば、硫化ナトリウム・9水和物、硫化ナトリウム・5水和物、硫化ナトリウム無水物、水流化ナトリウム水和物などが挙げられる。セレン化物塩として、セレン化金属塩を用いることが好ましく、セレン化アルキル金属塩を用いることがより好ましい。セレン化物アルカリ金属塩として、例えば、金属ナトリウムと粉末セレンの反応により得られる二セレン化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムと粉末セレンより得られるセレン化水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0037】
なお、上記スキーム1の式A1〜式A3、式1aにおいて、R、Zは式1における定義と同じであり、Xはハロゲンを表し、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0038】
また、式1で表される化合物(式1中、Xがハロゲン)、式2、式3で表される高分子化合物は、例えば、以下のスキーム2のように合成することができる。
【化25】
【0039】
スキーム1の式1aで表される化合物の合成の際の中間体として生成する式A3で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させる。これにより、式1bで表される化合物(式1で表される化合物において、Xがハロゲンである化合物)が合成される。ハロゲン化剤として、例えば、臭素、ヨウ素、又は一塩化ヨウ素などが用いられる。
【0040】
続いて、式1bで表される化合物と式A4で表される化合物とを反応させて重合することで、式3で表される高分子化合物を合成することができる。
【0041】
なお、上記スキーム2の式1bにおけるR、Zは式1における定義と同じであり、Xはハロゲンを表す。また、式A4中、Q、W、l、rは式4における定義と同じであり、Xはトリアルキルスズ基やホウ酸エステル基等の有機金属を有する置換基を表す。
【0042】
また、式1bで表される化合物(式1で表される化合物において、Xがハロゲンである化合物)と、フェニルボロン酸やピリジミルボロン酸等、ボロン酸等を有するアリール基や複素芳香環基とのカップリング反応により、式1で表される化合物において、Xが置換基を有していてもよいアリール基や複素芳香環基である化合物を得ることができる。
【0043】
(有機半導体材料)
有機半導体材料は、上述した式1で表される化合物、式2で表される高分子化合物、及び、式3で表される高分子化合物のいずれかを含有する。式1で表される化合物、式2で表される高分子化合物、及び、式3で表される高分子化合物は、上述したように、剛直で高い平面性を持つので、有機半導体材料を製膜して有機半導体層を作製した場合、有機半導体層中における分子間距離が短く、高い電荷移動度を発揮する。
【0044】
また、有機半導体材料は、式1で表される化合物、式2で表される高分子化合物、及び、式3で表される高分子化合物のほか、有機半導体層の製膜性の向上、ドーピング等のために添加剤や他の半導体材料が混合されてもよい。
【0045】
(有機半導体デバイス)
有機半導体デバイスは、上述した有機半導体材料が用いられて製造されるデバイスであり、基板等の上に有機半導体材料を用いて製膜された活性層を備える。有機半導体デバイスとして、例えば、有機半導体層を有する電界効果トランジスタ、発光デバイス、光電変換素子等、種々のデバイスが挙げられる。
【0046】
有機半導体デバイスにおける有機半導体層の製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の製造方法を用いることができる。例えば、蒸着法、或いは、スピンコート法等の塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などの溶液法が挙げられる。
【実施例】
【0047】
(N,N'-Dioctyl-4,5,9,10-naphtho[2,3-b:6,7-b']dithiophenediimide(以下、化合物C−NDTI)の合成)
【化26】
【0048】
アルゴン雰囲気、60℃の条件下、エタノール(150mL)及び酢酸(3mL)に化合物1(2.0g,2.93mmol)を加えて撹拌した懸濁液に、硫化ナトリウム・9水和物(NaS・9HO,4.23g,17.6mmol)を加えた。
なお、化合物1は、「Buckland, D.; Bhosale, S. V.; Langford, S. J. Tetrahedron Letters 2011, 52, 1990-1992.」で報じられている手法に基づいて合成して用いた。
同温度で12時間撹拌した後、大気中で混合物を3時間室温で撹拌した。
反応混合物を水(50mL)で希釈し、ジクロロメタン(100mL)で抽出した。
抽出物を水で洗浄し(100mL×2回)、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧除去して、C−NDTIの粗生成物を得た。
これをTHF(150mL)及び酢酸(1.5mL)で溶解し、更に、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(1M in THF,16mL)を0℃で加えた。
室温で2時間撹拌した後、溶液を水(100mL)で希釈した。
生成した沈殿物をろ取し、水、メタノール及びヘキサンで洗浄し、紫色固体の化合物C−NDTI(736mg,収率42%)を得た。
【0049】
得られた化合物C−NDTIの測定結果を以下に示す。
Mp 287-288℃;
IR (KBr) ν = 1643 cm-1 (C=O);
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 1.30-1.50 (m, 20H), 1.84 (quin, J = 7.6 Hz, 4H), 4.32 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 8.11 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 8.96 (d, J = 5.8 Hz, 2H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 13.97, 14.02, 22.6, 27.3, 28.2, 29.4, 31.8, 41.3, 117.9, 119.1, 122.6, 124.4, 140.3, 143.0, 145.1, 163.2, 163.3 ;
HRMS (APCI) m/z calcd for C34H39O4N2S2+ [M+H]+ 603.23456, found 603.23458.
【0050】
(N,N'-Dioctyl-2,6-bis(trimethylsilyl)naphtho[2,3-b:6,7-b']dithiophene-4,5,9,10-diimide(以下、化合物2)の合成)
【化27】
【0051】
アルゴン雰囲気、60℃の条件下、エタノール(10mL)及び酢酸(0.2mL)に化合物1(50mg,0.073mmol)を加えて撹拌した溶液に、硫化ナトリウム・9水和物(NaS・9HO(106mg、0.44mmol)を加えた。
同温度で12時間撹拌した後、大気中で混合物を3時間室温で撹拌した。
その後、反応混合物を水(10mL)で希釈し、ジクロロメタン(20mL)で抽出した。
抽出物を水で洗浄し(30mLの×2回)、硫酸マグネシウムで乾燥して濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Rf=0.3、展開溶媒:ジクロロメタン−ヘキサン(v/v=1/2))によって精製し、化合物2の粗生成物を得た。
更に、クロロホルム−メタノールを用いて再結晶を行い、紫色固体の化合物2(17mg、収率32%)を得た。
【0052】
得られた化合物2の測定結果を以下に示す。
Mp > 300℃;
IR (KBr) v = 1653 cm-1 (C=O);
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.54 (s, 18H), 0.88 (t, J = 6.7 Hz, 6H), 1.30-1.50 (m, 20H), 1.86 (quin, J = 7.6 Hz, 4H), 4.32 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 9.12 (s, 2H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-0.23,14.4, 23.0, 27.6, 27.7, 28.6, 29.6, 29.7, 32.2, 41.7, 117.6, 118.8, 122.9, 130.8, 144.5, 148.6, 159.8, 163.62, 163.70;
HRMS (APCI) m/z calcd for C40H55O4N2S2Si2+ [M+H]+ 747.31335, found 747.31363.
【0053】
(N,N'-Dioctyl-2,6-dibromonaphtho[2,3-b:6,7-b']dithiophene-4,5,9,10-diimide(以下、化合物3)の合成)
【化28】
【0054】
アルゴン雰囲気、室温の条件下、ジクロロメタン(10mL)に化合物2(50mg、0.067mmol)を加えて撹拌した懸濁液に、臭素(24mg、0.34mmol)を加えた。
40℃で3時間撹拌した後、混合物を水(10mL)で希釈した。
沈殿物をろ取し、クロロホルム−エタノールを用いた再結晶により、紫色固体の化合物3(33mg,収率65%)を得た。
【0055】
得られた化合物3の測定結果を以下に示す。
Mp 277-278 ℃;
IR (KBr) ν = 1639 cm-1 (C=O);
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 1.30-1.48 (m, 20H), 1.82 (quin, J = 7.5 Hz, 4H), 4.30 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 9.03 (s, 2H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 14.2, 22.8, 27.4, 28.3, 29.4, 29.5, 32.0, 41.5, 104.5, 114.5, 116.6, 118.1, 127.1, 133.2, 142.6, 163.0, 163.3;
HRMS (APCI) m/z calcd for C34H37O4N2Br2S2+ [M+H]+ 759.05530, found 759.05560.
【0056】
(N,N'-Dioctyl-2,6-diiodonaphtho[2,3-b:6,7-b']dithiophene-4,5,9,10-diimide(以下、化合物4)の合成)
【化29】
【0057】
臭素に代えて一塩化ヨウ素(1M in CHCl)を用いた以外、上記の化合物3の合成方法と同様の手法により、紫色固体の化合物4(収率58%)を得た。
【0058】
得られた化合物4の測定結果を以下に示す。
Mp > 300℃;
IR (KBr) ν = 1635 cm-1 (C=O);
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.89 (t, J = 6.5 Hz, 6H), 1.30-1.49 (m, 20H), 1.84 (quin, J = 7.5 Hz, 4H), 4.32 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 9.32 (s, 2H);
HRMS (APCI) m/z calcd for C34H37O4N2I2S2+ [M+H]+ 855.02686, found 855.02786;
The solubility of C8-NDTI-I was not sufficient for measuring 13C NMR spectra.
【0059】
(Poly{(2,7-bis(3-dodecylthiophene-2-yl)-N,N'-Dioctyl-4,5,9,10-naphtho[2,3-b:6,7-b']dithiophenediimide}(以下、PNDTI−BT)の合成)
【化30】

攪拌子を備えた2−5mLのマイクロウェーブ圧力容器に、化合物3(0.076g、0.1mmol)、5,5’−ビス(トリメチルスタンニル)−4,4’−ジドデシル−2,2’−ビチオフェン(0.082g、0.1mmol)、Pd(PPhCl(1.6mg、0.024mmol)、トルエン(5mL)を加えた。
容器を封止してアルゴンを補充し、マイクロウェーブ反応器に入れ、40分間かけて180℃まで加熱した。
室温まで冷却した後、塩酸(1M、1mL)を含有するメタノール(50mL)に反応物を注ぎ、5時間撹拌した。
生じた沈殿物を濾取し、更に、メタノール、ヘキサン、クロロホルム及びクロロベンゼンを用いたシーケンシャルソックスレー抽出により低分子量の分画を取り除いた。
残留物をo−ジクロロベンゼンで抽出し、更に、濃縮分画をメタノール(50mL)で沈殿させ、黒緑色固体の高分子化合物PNDTI−BT(31mg、収率28%)を得た。
【0060】
得られた高分子化合物PNDTI−BTの測定結果を以下に示す。
Anal. Calcd for (C66H88N2O4S4)n: C, 71.82; H, 8.22; N, 2.54%; S, 11.62%. Found C, 71.15; H, 8.76; N, 2.53; S, 12.36%;
Solubility of the polymer was not sufficient for recoding 1H and 13C NMR spectra.
【0061】
(化合物C−NDTIの単結晶構造解析)
得られた化合物C−NDTIについて再結晶(溶媒:クロロベンゼン)を行い、得られた結晶について単結晶X線構造解析装置(Bruker SMART APEX-II)を用い、単結晶構造解析を行った。
【0062】
化合物C−NDTIの単結晶構造解析結果を下記に示す。
Crystallographic data for C8-NDTI: C34H38N2O4S2 (602.78), purple plate, 0.20 × 0.20 × 0.10 mm3, monoclinic, space group, P21/c (#14), a = 16.91(2), b = 5.089(6), c = 18.16(2) A, β= 108.22 (2)°, V = 1485(3) A3, Z = 2, R = 0.070 for 1493 observed reflections (I > 2σ(I)) and 187 variable parameters, wR2 = 0.2246 for all data.
【0063】
また、この単結晶構造解析に基づく分子構造ORTEP(Oak Ridge Thermal Ellipsoid Plot)図及び結晶パッキング(ステレオ)図を、それぞれ図1及び図2に示す。本結果から、化合物C−NDTIが高い平面性を持つことがわかった。
【0064】
また、化合物C−NDTIのUV−vis吸収スペクトル及びPL発光スペクトルを測定した。UV吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(濃度10−5〜10−6M)中にて、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製、UV−3600)で測定した。また、PLスペクトル及び絶対量子収率は、絶対PL量子収率測定装置(λex=530nm)(浜松ホトニクス、Quantaurus−QY)で測定した。
【0065】
UV−vis(Ultraviolet・Visible)吸収スペクトル及びPL(Photo Luminescence)スペクトルを図3に示す。化合物C−NDTIは、580nm付近に顕著な蛍光発光(絶対量子収率71%)を示しており、これにより、有機EL等の発光デバイスへの適用も可能であることがわかった。
【0066】
(電界効果トランジスタ(FET)素子の作製及び特性)
上記で合成した化合物C−NDTI、高分子化合物PNDTI−BTを用いてFET素子を作製し、その特性を検証した。
【0067】
(化合物C−NDTIを用いたトップコンタクト−ボトムゲート(TCBG)型FET素子の作製)
まず、ゲート電極となる200nm厚のシリコン酸化膜を有する高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板を十分洗浄した後、n−型シリコン基板のシリコン酸化膜表面をパーフルオロデシルトリエトキシシランでシラン処理した。
上記表面処理したn−型シリコン基板上に、真空蒸着法で化合物C−NDTIの有機薄膜(約50nm厚)を製膜した。製膜は、1×10−3Pa以下の圧力条件下、1Å/sの製膜速度を維持すべく温度を適宜変更させて行った。
この有機薄膜上に、シャドーマスクを用いて金を真空蒸着し、ソース電極及びドレイン電極を形成した。このようにして、図4に示す構造のTCBG型FET素子を作製した。なお、ソース電極及びドレイン電極の膜厚は80nm、チャネル長は50μm、チャネル幅は1.5mmである。このFET素子をTCBG−C−NDTI素子と記す。
【0068】
作製したTCBG−C−NDTI素子に、ゲート電圧Vgを−10〜60V、ソース・ドレイン間電圧Vdを0〜60Vに変化させてトランジスタ特性を測定した。図5(A)に伝達特性、図5(B)に出力特性をそれぞれ示す。TCBG−C−NDTI素子はn型トランジスタ挙動を示し、電荷移動度は0.05cm/Vsと算出された。
【0069】
(高分子化合物PNDTI−BTを用いたTCBG型FET素子の作製)
まず、ゲート電極となる200nm厚のシリコン酸化膜を有する高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板を十分洗浄した後、n−型シリコン基板のシリコン酸化膜表面をパーフルオロデシルトリエトキシシラン(FDTS)でシラン処理した。
高分子化合物PNDTI−BTをオルトジクロロベンゼンに溶解して3g/Lの溶液を調製し、メンブランフィルターでろ過した後、上記表面処理したn−型シリコン基板上にスピンコート法で約30nm厚の高分子化合物PNDTI−BTの有機薄膜を作製した。
この薄膜を窒素雰囲気下にて、150℃で30分加熱しアニール処理した。
有機薄膜上に、シャドーマスクを用いて金を真空蒸着し、ソース電極及びドレイン電極を形成した。このようにして、図4に示す構造のTCBG型FET素子を作製した。なお、ソース電極及びドレイン電極の膜厚は80nm、チャネル長は50μm、チャネル幅は1.5mmである。このFET素子をTCBG−PNDTI−BT(An)素子と記す。
【0070】
また、高分子化合物PNDTI−BTの有機薄膜を作製後、アニール処理を行わなかった以外、上記と同様にしてTCBG型FET素子を作製した。このFET素子をTCBG−PNDTI−BT(NAn)素子と記す。
【0071】
(高分子化合物PNDTI−BTを用いたトップゲート−ボトムコンタクト(TGBC)型FET素子の作製)
フォトリゾグラフィーによってソース及びドレイン電極(50nm厚、Cr/Au)をパターニングしたガラス基板をアセトン、イソプロパノールで十分に洗浄した。
高分子化合物PNDTI−BTをオルトジクロロベンゼンに溶解して3g/Lの溶液を調製し、メンブランフィルターでろ過した後、上記表面処理したガラス基板上にスピンコート法により約50nm厚の高分子化合物PNDTI−BTの有機薄膜を作製した。
この薄膜を窒素雰囲気下にて、150℃で30分加熱した。
次にゲート絶縁膜としてCYTOP(登録商標、旭硝子株式会社製)をスピンコート法により塗布した(800nm厚)。さらに、ゲート絶縁膜上に、ゲート電極としてアルミニウムを真空蒸着した(50nm厚)。このようにして、図6に示す構造のTGBG型FET素子を作製した。なお、チャネル長は50μm、チャネル幅は3mmである。このTGBG型FET素子をTGBC−PNDTI−BT(An)素子と記す。
【0072】
また、高分子化合物PNDTI−BTの有機薄膜を作製後、アニール処理を行わなかった以外、上記と同様にしてTGBC型FET素子を作製した。このFET素子をTGBC−PNDTI−BT(NAn)素子と記す。
【0073】
作製したTCBG−PNDTI−BT(An)素子、TCBG−PNDTI−BT(NAn)素子、TGBC−PNDTI−BT(An)素子、TGBC−PNDTI−BT(NAn)素子それぞれについて、ゲート電圧Vgを−60〜20V、ソース・ドレイン間電圧Vdを0〜−60Vに変化させてトランジスタ特性を測定した。
【0074】
TGBC−PNDTI−BT(An)素子の伝達特性を図7(A)に、出力特性を図7(B)に示す。また、それぞれのFET素子のホール移動度(μFET)、電流のオン・オフ比(Ion/Ioff)、及び、スレッショルド電圧(Vth)をそれぞれ表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
いずれのFET素子もトランジスタ特性を示し、高分子化合物PNDTI−BTが有機半導体材料として有用であることを確認した。
【0077】
(化合物21の合成)
【化31】

化合物1の代わりに化合物11を用いる以外、上記化合物C−NDTIの合成方法と同様の手法により、化合物21(収率40%)を合成した。
【0078】
得られた化合物21の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.87 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 1.26-1.46 (m, 60H), 1.83 (quin, J = 7.2 Hz, 4H), 4.31 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 8.10 (d, J = 5.6 Hz, 2H) , 8.93 (d, J = 5.6 Hz, 2H).
【0079】
(化合物22の合成)
【化32】

化合物1の代わりに化合物12を用いる以外、上記化合物C−NDTIの合成方法と同様の手法により、化合物22(収率20%)を合成した。
【0080】
得られた化合物22の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.18 (d, J = 6.8 Hz, 24H), 2.77 (sept, J = 6.8 Hz, 4H), 7.41 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 7.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 8.18 (d, J = 5.2 Hz, 2H) , 9.02 (d, J = 5.2 Hz, 2H).
【0081】
(化合物23の合成)
【化33】

化合物1の代わりに化合物13を用いる以外、上記化合物C−NDTIの合成方法と同様の手法により、化合物23(収率12%)を合成した。
【0082】
得られた化合物23の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.20 (t, J = 14.6 Hz, 4H), 8.24 (d, J = 6.0 Hz, 2H) , 9.03 (d, J = 6.0 Hz, 2H).
【0083】
(化合物24の合成)
【化34】

化合物1の代わりに化合物14を用いる以外、上記化合物C−NDTIの合成方法と同様の手法により、化合物24(収率45%)を合成した。
【0084】
得られた化合物24の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.85 (m, 12H), 1.20-1.40 (m, 64H), 2.13 (m, 2H), 4.29 (m, 4H), 8.17 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 9.03 (d, J = 6.0 Hz, 2H).
【0085】
(化合物26の合成)
【化35】

化合物1の代わりに化合物16を用いる以外、上記化合物C−NDTIの合成方法と同様の手法により、化合物26(収率25%)を合成した。
【0086】
得られた化合物26の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ1.09-1.34 (m, 10H), 1.48-1.78 (m, 12H), 1.89 (quin, J= 6.2 Hz, 4H), 4.38 (t, J= 7.6 Hz, 4H), 8.15 (d, J= 5.8 Hz, 2H), 9.04 (d, J= 5.8 Hz, 2H)
【0087】
(化合物27の合成)
【化36】

化合物1の代わりに化合物17を用いる以外、上記化合物C−NDTIの合成方法と同様の手法により、化合物27(収率30%)を合成した。
【0088】
得られた化合物27の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.87 (t, J = 6.4 Hz, 12H), 1.30-1.76 (m, 82H), 1.79 (quin, J= 7.6 Hz, 4H), 4.33 (t, J= 7.6 Hz, 4H), 8.17 (d, J= 5.6 Hz, 2H), 9.03 (d, J= 5.6 Hz, 2H)
【0089】
(化合物28の合成)
【化37】

化合物1の代わりに化合物18を用いる以外、上記化合物C−NDTIの合成方法と同様の手法により、化合物28(収率22%)を合成した。
【0090】
得られた化合物28の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.87 (t, J = 6.4 Hz, 12H), 1.30-1.76 (m, 82H), 1.79 (quin, J= 7.6 Hz, 4H), 4.33 (t, J= 7.6 Hz, 4H), 8.17 (d, J= 5.6 Hz, 2H), 9.03 (d, J= 5.6 Hz, 2H)
【0091】
(化合物26を用いたトップコンタクト−ボトムゲート(TCBG)型FET素子の作製)
化合物C−NDTIに代えて、化合物26を用い、上記の化合物C−NDTI用いたトップコンタクト−ボトムゲート(TCBG)型FET素子の作製と同様の手法により、FET素子を作製した。なお、蒸着基板温度を150℃、200℃とし、それぞれにつきシラン処理剤として、オクチルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)を用いた。作製したそれぞれのFET素子をC26(150,OTS)素子、C26(150,ODTS)素子、C26(200,OTS)素子、C26(200,ODTS)素子と記す。
【0092】
作製したそれぞれのEFT素子に、ゲート電圧Vgを−20〜60V、ソース・ドレイン間電圧Vdを0〜60Vに変化させてトランジスタ特性を測定した。それぞれのFET素子の電荷移動度(μ)、電流のオン・オフ比(Ion/Ioff)、及び、スレッショルド電圧(Vth)を表2に示すとともに、C26(200,ODTS)素子の伝達特性を図8(A)に、出力特性を図8(B)にそれぞれ示す。
【0093】
【表2】
【0094】
(化合物31の合成)
【化38】

化合物1の代わりに化合物11を用いる以外、上記化合物2の合成方法と同様の手法により、化合物31(収率33%)を合成した。
【0095】
得られた化合物31の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.56 (s, 18H), 0.87 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 1.26-1.50 (m, 60H), 1.82 (quin, J = 7.2 Hz, 4H), 4.31 (d, J = 7.3 Hz, 4H), 9.03 (s, 2H).
【0096】
(化合物32の合成)
【化39】

化合物1の代わりに化合物12を用いる以外、上記化合物2の合成方法と同様の手法により、化合物32(収率20%)を合成した。
【0097】
得られた化合物32の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.45 (s, 18H), 1.18 (d, J = 6.8 Hz, 24H), 2.80 (sept, J = 6.8 Hz, 4H), 7.41 (d, J = 7.4 Hz, 4H), 7.52 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 9.14 (s, 2H).
【0098】
(化合物33の合成)
【化40】

化合物1の代わりに化合物13を用いる以外、上記化合物2の合成方法と同様の手法により、化合物33(収率12%)を合成した。
【0099】
得られた化合物33の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.54 (s, 18H)) 5.21 (t, J = 15.6 Hz, 4H), 9.11 (s, 2H).
【0100】
(化合物34の合成)
【化41】

化合物1の代わりに化合物14を用いる以外、上記化合物2の合成方法と同様の手法により、化合物34(収率45%)を合成した。
【0101】
得られた化合物34の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.54 (s, 18H), 0.85 (m, 12H), 1.19-1.40 (m, 64H), 2.15 (m, 2H), 4.30 (m, 4H), 9.11 (s, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 14.6, 23.2, 26.9, 30.1, 30.2, 32.4, 37.0, 45.7, 117.6, 118.8, 122.9, 131.0, 144.6, 148.6, 159.8, 164.0, 164.1.
【0102】
(化合物35の合成)
【化42】

化合物1の代わりに化合物15を用いる以外、上記化合物2の合成方法と同様の手法により、化合物35(収率40%)を合成した。
【0103】
得られた化合物35の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.57 (s, 18H), 0.86 (t, J = 3.6 Hz, 6H), 0.88 (t, J = 3.6 Hz, 6H), 1.19-1.40 (m, 80H), 2.11 (sept, J = 7.3 Hz, 2H), 4.25 (d, J = 7.3 Hz, 4H), 9.12 (s, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 14.22, 22.79, 26.54, 29.43, 29.46, 29.77, 30.23, 31.67, 32.00, 32.02, 36.54, 116.90, 118.11, 122.28, 130.54, 143.97, 148.05, 159.29, 163.28, 163.45.
【0104】
(化合物36)の合成)
【化43】

化合物1の代わりに化合物17を用いる以外、上記化合物2の合成方法と同様の手法により、化合物36(収率40%)を合成した。
【0105】
得られた化合物36の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.56 (s, 18H), 0.87 (t, J = 6.4 Hz, 12H), 1.30-1.56 (m, 82H), 1.76 (quin, J= 7.6 Hz, 4H), 4.33 (t, J = 7.3 Hz, 4H), 9.06 (s, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 14.22, 22.79, 26.54, 29.43, 29.46, 29.77, 30.23, 31.67, 32.00, 32.02, 36.54, 116.90, 118.11, 122.28, 130.54, 143.97, 148.05, 159.29, 163.28, 163.45.
【0106】
(化合物41の合成)
【化44】

化合物2の代わりに化合物34を用いる以外、上記化合物3の合成方法と同様の手法により、化合物41(収率80%)を合成した。
【0107】
得られた化合物41の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.86 (m, 12H), 1.20-1.40 (m, 64H), 2.01 (m, 2H), 4.15 (m, 4H), 8.91 (s, 2H).
【0108】
(化合物42の合成)
【化45】

化合物2の代わりに化合物35を用いる以外、上記化合物3の合成方法と同様の手法により、化合物42(収率82%)を合成した。
【0109】
得られた化合物42の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.85 (t, J = 3.6 Hz, 6H), 0.88 (t, J = 3.6 Hz, 6H), 1.21-1.40 (m, 80H), 2.04 (sept, J = 6.8 Hz, 2H), 4.16 (d, J = 6.8 Hz, 4H), 8.97 (s, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 14.23, 22.80, 26.49, 29.47, 29.73, 29.77, 30.14, 31.72, 32.03, 36.6, 45.18, 116.02, 117.57, 122.05, 126.83, 142.26, 146.22, 162.93, 163.26.
【0110】
(化合物43の合成)
【化46】

化合物2の代わりに化合物36を用いる以外、上記化合物3の合成方法と同様の手法により、化合物43(収率74%)を合成した。
【0111】
得られた化合物43の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.88 (t, J = 6.4 Hz, 12H), 1.30-1.66 (m, 82H), 1.74 (quin, J= 7.6 Hz, 4H), 4.26 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 9.02 (s, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 14.23, 22.80, 26.49, 29.47, 29.73, 29.77, 30.14, 31.72, 32.03, 36.6, 45.18, 116.02, 117.57, 122.05, 126.83, 142.26, 146.22, 162.93, 163.26.
【0112】
(高分子化合物P1の合成)
【化47】

化合物3の代わりに化合物41を、5,5’−ビス(トリメチルスタンニル)−4,4’−ジドデシル−2,2’−ビチオフェンの代わりに5,5’−ビス(トリメチルスタンニル)−2,2’−ビチオフェンを用いる以外、上記高分子化合物PNDTI−BTの合成方法と同様の手法により、高分子化合物P1(収率18%)を合成した。
【0113】
得られた高分子化合物P1の測定結果を以下に示す。
Anal. Calcd for (C66H88N2O4S4)n: C, 71.82; H, 8.22; N, 2.54%; Found C, 70.905; H, 7.98; N, 2.30%;
【0114】
(高分子化合物P2の合成)
【化48】

化合物3の代わりに化合物42を、5,5’−ビス(トリメチルスタンニル)−4,4’−ジドデシル−2,2’−ビチオフェンの代わりに5,5’−ビス(トリメチルスタンニル)−2,2’−ビチオフェンを用いる以外、上記高分子化合物PNDTI−BTの合成方法と同様の手法により、高分子化合物P2(収率94%)を合成した。
【0115】
得られた高分子化合物P2の測定結果を以下に示す。
Anal. Calcd for (C74H104N2O4S4)n: C, 73.10; H, 8.79; N, 2.30%; Found C, 73.05; H, 8.75; N, 2.16%
【0116】
(高分子化合物P3の合成)
【化49】

上記反応式に示すように、上記高分子化合物PNDTI−BTの合成方法と同様の手法により、高分子化合物P3(収率92%)を合成した。
【0117】
得られた高分子化合物P3の測定結果を以下に示す。
Anal. Calcd for (C76H108N2O4S4)n: C, 73.50; H, 8.77; N, 2.26%; Found C, 73.22; H, 8.64; N, 2.13%;
【0118】
(高分子化合物P4の合成)
【化50】

5,5’−ビス(トリメチルスタンニル)−2,2’−ビチオフェンの代わりに2,7−ビス(トリメチルスタンニル)ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェンを用いる以外、上記高分子化合物PNDTI−BTの合成方法と同様の手法により、高分子化合物P4(収率85%)を合成した。
【0119】
得られた高分子化合物P4の測定結果を以下に示す。
Anal. Calcd for (C80H108N2O4S4)n: C, 74.37; H, 8.58; N, 2.17%; Found C, 74.05; H, 8.58; N, 2.06%;
【0120】
(高分子化合物P5の合成)
【化51】

5,5’−ビス(トリメチルスタンニル)−2,2’−ビチオフェンの代わりに1,2−ビス(トリメチルスタンニル)エチレンを用いる以外、上記高分子化合物PNDTI−BTの合成方法と同様の手法により、高分子化合物P5(収率45%)を合成した。
【0121】
得られた高分子化合物P5の測定結果を以下に示す。
Anal. Calcd for (C68H104N2O4S4)n: C, 75.79; H, 9.73; N, 2.60%; Found C, 75.54; H, 10.23; N, 2.48%;
【0122】
(高分子化合物P6の合成)
【化52】

5,5’−ビス(トリメチルスタンニル)−2,2’−ビチオフェンの代わりに4,7−ビス(トリメチルスタンニル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを用いる以外、上記高分子化合物PNDTI−BTの合成方法と同様の手法により、高分子化合物P6(収率67%)を合成した。
【0123】
得られた高分子化合物P6の測定結果を以下に示す。
Anal. Calcd for (C72H104N2O4S3)n: C, 72.93; H, 8.84; N, 4.72%; Found C, 72.49; H, 8.79; N, 4.55%;
【0124】
(高分子化合物P7の合成)
【化53】

5,5’−ビス(トリメチルスタンニル)−2,2’−ビチオフェンの代わりに4,9−ビス(トリメチルスタンニル)ナフト[1,2−c:5,6−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾールを用いる以外、上記高分子化合物PNDTI−BTの合成方法と同様の手法により、高分子化合物P7(収率88%)を合成した。
【0125】
得られた高分子化合物P7の測定結果を以下に示す。
Anal. Calcd for (C76H104N6O4S4)n: C, 70.55; H, 8.10; N, 6.50%; Found C, 66.48; H, 7.39; N, 6.60%;
【0126】
(高分子化合物P8の合成)
【化54】

化合物42の代わりに化合物43を用いる以外、上記高分子化合物P2の合成方法と同様の手法により、高分子化合物P8(収率81%)を合成した。
【0127】
得られた高分子化合物P8の測定結果を以下に示す。
Anal. Calcd for (C76H110N2O4S4)n: C, 73.38; H, 8.91; N, 2.25%; Found C, 73.31; H, 8.69; N, 2.19%;
【0128】
(高分子化合物P2を用いたTCBG型FET素子の作製)
高分子化合物P2を用い、上述した高分子化合物PNDTI−BTを用いたTCBG型FET素子の作製と同様の手法でFET素子を作製した。なお、n−型シリコン基板のシラン処理には、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用いた。また、アニール処理を行わずに作製したFET素子をP2(HNAn)素子、150℃、30minの条件でアニール処理して作製したFET素子をP2(HAn150)素子、350℃、30minの条件でアニール処理して作製したFET素子をP2(HAn350)素子と記す。
【0129】
また、上記同様に、n−型シリコン基板のシラン処理にオクタデシルトリクロロシラン(ODTS)を用い、150℃、30minの条件でアニール処理して作製したFET素子をP2(OAn150)素子、350℃、30minの条件でアニール処理して作製したFET素子をP2(OAn350)素子と記す。
【0130】
作製したそれぞれのFET素子について、ゲート電圧Vgを−80〜0V、ソース・ドレイン間電圧Vdを−60〜0Vに変化させてp型トランジスタ特性を測定した。また、ゲート電圧Vgを0〜60V、ソース・ドレイン間電圧Vdを0〜60Vに変化させてn型トランジスタ特性を測定した。
【0131】
それぞれの素子のホール移動度(μh)、電子移動度(μ)、電流のオン・オフ比(Ion/Ioff)、及び、スレッショルド電圧(Vth)をそれぞれ表3に示す。また、P2(OAn350)素子のp型半導体の出力特性を図9(A)に、n型半導体の出力特性を図9(B)にそれぞれ示す。
【0132】
【表3】
【0133】
いずれのFET素子もp型トランジスタ挙動及びn型トランジスタ挙動を示しており、両極性を備えていることがわかる。特に、P2(OAn350)素子では、ホール移動度が0.10cm/Vs、電子移動度が0.27cm/Vsと良好であった。以上のように、高分子化合物P2では、p型半導体材料、n型半導体材料のいずれにも用い得ることがわかった。
【0134】
(高分子化合物P7を用いたTCBG型FET素子の作製)
高分子化合物P2に代わりに高分子化合物P7を用い、シラン処理にオクタデシルトリクロロシラン(ODTS)を用い、150℃、30minの条件でアニール処理した以外、高分子化合物P2を用いたTCBG型FET素子の作製と同様の手法により、FET素子を作製した。
【0135】
そして、P7素子について、ゲート電圧Vgを−20〜60V、ソース・ドレイン間電圧Vdを0〜60Vに変化させてトランジスタ特性を測定した。
P7素子の電荷移動度(μ)、電流のオン・オフ比(Ion/Ioff)、及び、スレッショルド電圧(Vth)を表4に示す。また、P7素子の伝達特性を図10(A)に、出力特性を図10(B)にそれぞれ示す。
【0136】
【表4】
【0137】
(化合物51の合成)
【化55】
【0138】
2M NaCO水溶液(1mL)及び1,4−ジオキサン(3mL)の混合物をアルゴンガスでパージして脱気した。そして、4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(57mg、0.3mmol)、化合物3(76mg、0.1mmol)、Pd(PPh)(2mol%)を添加した。
アルゴン雰囲気下で混合物を12時間加熱した後、10% HCl水溶液(10mL)を加えてクエンチした。
有機相をジクロロメタン(20mL)で抽出した。抽出物を水、ブラインで洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮させて粗生成物を得た。この粗生成物をトルエン−エタノールを用いた再結晶により精製し、化合物51(66mg、収率74%)を得た。
【0139】
得られた化合物51の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.85 (t, J = 3.7 Hz, 6H), 1.26-1.43 (m, 20H), 1.87 (quin, J = 7.2 Hz, 4H), 4.37 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 7.73 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 8.01 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 9.20 (s, 2H).
【0140】
(化合物52の合成)
【化56】

4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸の代わりに5−ピリミジルボロン酸を用いる以外、上記化合物51の合成方法と同様の手法により、化合物52(収率83%)を合成した。
【0141】
得られた化合物52の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 1.26-1.43 (m, 20H), 1.88 (quin, J = 7.2 Hz, 4H), 4.40 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 9.31 (s, 2H), 9.33 (s, 2H), 9.43 (s, 2H).
【0142】
なお、本発明は、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0143】
本出願は、2013年4月30日に出願された日本国特許出願2013−95596号及び2013年7月26日に出願された日本国特許出願2013−156130号に基づく。本明細書中に、日本国特許出願2013−95596号及び日本国特許出願2013−156130号の明細書、特許請求の範囲全体、並びに、本明細書で引用したすべての刊行物、特許および特許出願を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明に係る化合物は平面性に優れるとともに、カルコゲノフェン環α位を持つため、容易に共役拡張が可能である。これにより、共役拡張して種々の高分子化合物の合成、並びに、有機半導体材料への展開が期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10