特許第6332655号(P6332655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332655
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】熱線流速計およびそれを用いた血流速計
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/12 20060101AFI20180521BHJP
   A61B 5/028 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G01P5/12 C
   A61B5/02 835
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-503889(P2016-503889)
(86)(22)【出願日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2014054260
(87)【国際公開番号】WO2015125289
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】佐野 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 証英
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−329599(JP,A)
【文献】 特開平07−313475(JP,A)
【文献】 特表2005−510312(JP,A)
【文献】 特開平10−251003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/10 − 5/12
A61B 5/028
G01F 1/68 − 1/699
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗のうちの一つを、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルを含むものとし、その熱線を流れ方向と交差する方向に延在させて流体内に配置して通電により発熱させ、流体の流速に比例した熱線の冷却による抵抗変化を計測することで流体の流速を測定する熱線流速計において、
前記抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗のうちの他の一つを、前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルに沿わせてその熱線の近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルを含むものとし
前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルと前記先端を回路的に閉じた配線ケーブルとを共通のスリーブ内に収容するとともに、前記熱線を前記スリーブの先端から突出させたことを特徴とする熱線流速計。
【請求項2】
抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗のうちの一つを、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルを含むものとし、その熱線を流れ方向と交差する方向に延在させて血流内に配置して通電により発熱させ、血流速に比例した熱線の冷却による抵抗変化を計測することで血流速を測定する血流速計において、
前記抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗のうちの他の一つを、前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルに沿わせてその熱線の近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルを含むものとし、
血管内に挿入されるスリーブ内に前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルと前記先端を閉じた配線ケーブルとを収容するとともに前記熱線をそのスリーブの先端から絶縁状態で突出させて配置してカテーテル型プローブを構成したことを特徴とする血流速計。
【請求項3】
前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルおよび前記先端を回路的に閉じた配線ケーブルは、互いに縒られたツイスト線であることを特徴とする請求項1または2記載の血流速計。
【請求項4】
前記配線ケーブルは、フッ素樹脂のコーティングを施されたチタン線であることを特徴とする請求項1または2記載の血流速計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱線流速計およびそれを用いた血流速計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱線流速計は通常、例えば特許文献1に記載のように、抵抗ブリッジを組んだ4つの抵抗のうちの一つを、先端に例えば白金等の熱線を繋いだ配線ケーブルとし、その熱線を流れ方向と交差する方向に延在させて流体内に配置して通電により発熱させ、流体の流速に比例した熱線の冷却による抵抗変化を計測することで、流体の流速を測定している。
【0003】
ところで、上記のような構成を有する熱線流速計は、極めて高感度であるとともに外径をきわめて細く形成することが可能であるため、例えばカテーテル型プローブとして血管内に挿入することで血流速を計測することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−266773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の熱線流速計の構成のままでプローブ全体をきわめて細く形成すると、そのプローブ内を通る、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルも極めて細くなって、その配線ケーブルが外部環境の影響をノイズとして高感度に受けてしまうという問題が生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記従来の熱線流速計の課題を有利に解決するものであり、この発明の熱線流速計は、抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗のうちの一つを、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルを含むものとし、その熱線を流れ方向と交差する方向に延在させて流体内に配置して通電により発熱させ、流体の流速に比例した熱線の冷却による抵抗変化を計測することで流体の流速を測定する熱線流速計において、
前記抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗のうちの他の一つを、前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルに沿わせてその熱線の近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルを含むものとし
前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルと前記先端を回路的に閉じた配線ケーブルとを共通のスリーブ内に収容するとともに、前記熱線を前記スリーブの先端から突出させたことを特徴とするものである。
【0007】
そしてこの発明の血流速計は、抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗のうちの一つを、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルを含むものとし、その熱線を流れ方向と交差する方向に延在させて血流内に配置して通電により発熱させ、血流速に比例した熱線の冷却による抵抗変化を計測することで血流速を測定する血流速計において、
前記抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗のうちの他の一つを、前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルに沿わせてその熱線の近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルを含むものとし、
血管内に挿入される共通のスリーブ内に前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルと前記先端を閉じた配線ケーブルとを収容するとともに前記熱線をそのスリーブの先端から絶縁状態で突出させて配置してカテーテル型プローブを構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
かかるこの発明の熱線流速計にあっては、抵抗ブリッジを組んだ4つの抵抗のうちの、同一極側の2つの抵抗のうちの一つを、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルを含むものとするとともに、前記抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗のうちの他の一つを、前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルに沿わせてその熱線の近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルを含むものとし、前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルと前記先端を回路的に閉じた配線ケーブルとを共通のスリーブ内に収容するとともに、前記熱線を前記スリーブの先端から突出させたため、その熱線を流れ方向と交差する方向に延在させて流体内に配置して通電により発熱させ、流体の流速に比例した熱線の冷却による抵抗変化を計測することで流体の流速を測定する際に、先端に熱線を繋いだ側の配線ケーブルと先端を閉じた側の配線ケーブルとが共通のスリーブ内で互いに同程度に流体等の外部環境の影響をノイズとして受けるので、抵抗ブリッジ内でそれらのノイズが実質的に相殺される。
【0009】
従って、この発明の熱線流速計によれば、細管内の流体の流速等の計測のためにプローブ全体をきわめて細く形成した場合でも、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルが受けるノイズの影響を殆どもしくは全くなくして、流体の流速を高精度に測定することができる。
【0010】
また、この発明の血流速計にあっては、抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗のうちの一つを、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルを含むものとするとともに、前記抵抗ブリッジを組んだ4つの抵抗のうちの、同一極側の2つの抵抗のうちの他の一つを、前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルに沿わせてその熱線の近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルを含むものと、血管内に挿入される共通のスリーブ内に前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルと前記先端を閉じた配線ケーブルとを収容するとともに前記熱線をそのスリーブの先端から絶縁状態で突出させて配置してカテーテル型プローブを構成したため、その熱線を血流方向と交差する方向に延在させて血管内に配置して通電により発熱させ、血流速に比例した熱線の冷却による抵抗変化を計測することで血流速を測定する際に、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルと先端を閉じた配線ケーブルとが共通のスリーブ内で互いに同程度に血流等の外部環境の影響をノイズとして受けるので、抵抗ブリッジ内でそれらのノイズが実質的に相殺される。
【0011】
従って、この発明の血流速計によれば、プローブ全体をきわめて細く形成してカテーテル型プローブを構成した場合でも、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルが受けるノイズの影響を殆どもしくは全くなくして、血流速を高精度に測定することができる。
【0012】
なお、この発明の血流速計においては、前記先端に熱線を繋いだ配線ケーブルおよび前記先端を回路的に閉じた配線ケーブルは、互いに縒られたツイスト線(縒り線)であると、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルと先端を閉じた配線ケーブルとがスリーブ内で互いに密接して、それらの配線ケーブルが受ける血流等の外部環境の影響がより良く一致するようになることから、抵抗ブリッジ内でそれらの配線ケーブルが受けるノイズをより有効に相殺することができるので好ましい。
【0013】
また、この発明の血流速計においては、前記配線ケーブルはポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂のコーティングを施したチタン線であると、コーティングの低摩擦性により配線ケーブルがスリーブ内で円滑に動けるためカテーテル型プローブの血管内への挿入が円滑になるとともに、コーティングの絶縁性により配線ケーブル同士の短絡も防止できるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、本発明の熱線流速計の一実施形態を模式的に示す説明図であり、(b)は、本発明の熱線流速計の他の一実施形態を模式的に示す説明図である。
図2】(a)は、上記した先の実施形態の熱線流速計を適用した、本発明の血流速計の一実施形態を模式的に示す説明図、(b)は、(a)中のカテーテル型プローブの先端部を含むA部を拡大して示す側面図、(c)は、(a)中のカテーテル型プローブのスリーブを含むB部を拡大して示す縦断面図、(d)は、この実施形態の血流速計の一変形例を示す説明図である。
図3】(a)は、図2(b)中の先端部の構成例を拡大して示す縦断面図、(b)は、図2(c)中のスリーブの構成例を拡大して示す斜視図、(c)は、図2(c)中の配線ケーブルの構成例を拡大して示す縦断面図である。
図4】(a)は、図2(c)中のスリーブ内の配線ケーブルの配置例を拡大して示す横断面図、(b)は、その配線ケーブルの構成例を拡大して示す横断面図である。
図5】上記実施形態の血流速計の回路構成を示す説明図である。
図6図2(c)に示すスリーブ内の配線ケーブルの一変形例を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1(a)は、本発明の熱線流速計の一実施形態を模式的に示す説明図である。この実施形態の熱線流速計は、抵抗ブリッジを組んだ4つの抵抗R1,R2,R3,R4のうち、同一極であるグランド側の2つの抵抗R3,R4のうちの一つである抵抗R3を、先端にコイル状の熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1すなわち熱線HWの抵抗と二本の配線ケーブルC1の抵抗の直列接続とし、その熱線HWをスリーブSの先端から突出させて固定するとともに配線ケーブルC1をスリーブS内に通してプローブPを構成し、その熱線HWのコイルの軸線方向をスリーブSの軸線方向と一致させることで、熱線HWを図中矢印で示す流体の流れ方向FLと交差する方向に延在させて流体内に配置して、抵抗ブリッジからの通電により発熱させ、流体の流速に比例した熱線HWの冷却による抵抗変化をブリッジドライブ回路BDで電流変化として計測することで、流体の流速を測定するものである。
【0016】
しかしてこの実施形態の熱線流速計では特に、抵抗ブリッジを組んだ4つの抵抗R1,R2,R3,R4のうち、同一極であるグランド側の2つの抵抗R3,R4のうちの他の一つである抵抗R4を、先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1に沿わせてその熱線HWの近くまでスリーブS内で延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルC2すなわち二本の配線ケーブルC1の抵抗の直列接続としている。なお、熱線HWは、例えば白金線の表面に薄い絶縁樹脂皮膜をコーティングしたものとし、配線ケーブルC1,C2もそれぞれ、例えば銅線やチタン線の等の導電性金属線の表面に薄い絶縁樹脂皮膜をコーティングしたものとしている。
【0017】
かかる実施形態の熱線流速計にあっては、抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗R3,R4のうちの一つである抵抗R3を、先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1を含むものとするとともに、抵抗ブリッジの同一極側の2つの抵抗R3,R4のうちの他の一つである抵抗R4を、先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1に沿わせてその熱線HWの近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルC2を含むものとしたため、その熱線HWを流れ方向と交差する方向に延在させて流体内に配置して通電により発熱させ、流体の流速を測定する際に、配線ケーブルC1と配線ケーブルC2とが互いに同程度に流体等の外部環境の影響をノイズとして受けて抵抗値を変化させるので、抵抗ブリッジ内でそれらのノイズが実質的に相殺される。
【0018】
従って、この実施形態の熱線流速計によれば、細管内の流体の流速等の計測のためにプローブPの全体をきわめて細く形成した場合でも、先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1が受けるノイズの影響を殆どもしくは全くなくして、流体の流速を高精度に測定することができる。
【0019】
図1(b)は、本発明の熱線流速計の他の一実施形態を模式的に示す説明図であり、この実施形態では、先端に熱線HWを繋いだ二本の配線ケーブルC1のうちの一本を、先端を回路的に閉じた二本の配線ケーブルC2のうちの一本と共用にして、スリーブS内に延在させる配線ケーブルを三本にしたものであり、このようにしても先の実施形態と同様にノイズの影響を除去する作用効果を得ることができ、しかもこの実施形態によれば配線ケーブルの本数が減るので、スリーブSをより細く構成することができる。
【0020】
図2(a)は、上記実施形態の熱線流速計を適用した、本発明の血流速計の一実施形態を模式的に示す説明図、図2(b)は、図2(a)中のカテーテル型プローブの先端部を含むA部を拡大して示す側面図、図2(c)は、図2(a)中のカテーテル型プローブのスリーブを含むB部を拡大して示す縦断面図であり、図中、先の実施形態と同様の部分はそれと同一の符号にて示す。
【0021】
すなわち、この実施形態の血流速計は、後述する図5に示すように、抵抗ブリッジを組んだ4つの抵抗R1,R2,R3,R4のうちのグランド側の一つである抵抗R3を、先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1とそれに直列接続した補助抵抗R3’、すなわち熱線HWの抵抗と二本の配線ケーブルC1の抵抗と補助抵抗R3’との直列接続とし、その熱線HWを血液の流れ方向と交差する方向に延在させて血管内の血流内に配置して通電により発熱させ、血流速に比例した熱線HWの冷却による抵抗変化を計測することで血流速を測定するものである。
【0022】
そして、この実施形態では特に、抵抗ブリッジを組んだ4つの抵抗R1,R2,R3,R4のうちのグランド側の他の一つである抵抗R4を、先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1に沿わせてその熱線HWの近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルC2とそれに直列接続した補助抵抗(図示例では可変抵抗)R4’、すなわち二本の配線ケーブルC1の抵抗と補助抵抗R4’との直列接続とし、血管内に挿入されるスリーブS内に先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1と先端を閉じた配線ケーブルC2とを収容するとともに、スリーブSの先端部を液密に封止する先端が丸まった絶縁樹脂製チップT内に熱線HWを封入することで熱線HWをそのスリーブSの先端から絶縁状態で突出させて配置して、カテーテル型プローブPを構成している。なお、補助抵抗R3’,R4’は、抵抗ブリッジの平衡状態の調整や抵抗R3,R4の抵抗値の設定等に用いられる。
【0023】
図3(a)は、図2(b)中の先端部の構成例を拡大して示す縦断面図、図3(b)は、図2(c)中のスリーブの構成例を拡大して示す斜視図、図3(c)は、図2(c)中の配線ケーブルの構成例を拡大して示す縦断面図であり、また図4(a)は、図2(c)中のスリーブ内の配線ケーブルの配置例を拡大して示す横断面図、図4(b)は、その配線ケーブルの構成例を拡大して示す横断面図である。
【0024】
図3(a)に示すように、この実施形態における熱線HWは、例えば直径10μmの白金細線を隙間を空けてコイル状に巻くとともにそのコイルの軸線方向一端部から白金細線の両端部を引き出したものであり、また図3(b)に示すように、この実施形態におけるスリーブSは、例えば直径80μmのステンレス線をコイルバネ状に密巻きして外径360μmで内径200μmの可撓性の筒状に形成したものであり、そして図3(c)に示すように、配線ケーブルC1,C2は各々、例えば直径50μmのチタン線TWの表面にフッ素樹脂としてのトリテトラフルオロエチレン(商標名テフロン)の10〜20μm厚のコーティングTCを施したものである。
【0025】
ここで、図4(a)に示すように、二本ずつ合計四本の配線ケーブルC1,C2は、スリーブS内に互いに隣接して収容され、このとき、図4(b)に示すように、テフロンコーティングTCの厚さを10μmとすると、合計四本の配線ケーブルC1,C2の最大径は149,9μmとなるので、四本の配線ケーブルC1,C2は、内径200μmのスリーブS内に遊びを持って円滑に挿通でき、また、スリーブSは配線ケーブルC1,C2との摺接による摩擦で妨げられずに、自由に撓み変形して血管内の所望の部位まで挿入されることができる。
【0026】
図5は、上記実施形態の血流速計の回路構成を示す説明図であり、この実施形態の血流速計では、4つの抵抗R1,R2,R3(=HW+2C1+R3’),R4(=2C2+R4’)からなる上述した抵抗ブリッジの、血流の流速に比例した熱線HWの冷却による抵抗変化をブリッジドライブ回路BDで電流変化として計測し、そのブリッジドライブ回路BDのアナログ出力信号をA/Dコンバーターでデジタル出力信号に変換して中央処理ユニット(CPU)に入力し、そのCPUで図示しないメモリ中のプログラムに基づき演算処理することで、上記デジタル出力信号を、血流速を示す信号に変換して出力する。
【0027】
この回路構成のうち、カテーテル型プローブPを構成する熱線HWおよび四本の配線ケーブルC1,C2を除く部分は、図2(a)に示す、カテーテル型プローブPの基端部に固定された血流速計の本体MB内のプリント基板に実装されており、その本体MB内のプリント基板には、血流速を示す信号を出力する信号出力端子と、外部から電源を入力する電源入力端子とが設けられている。
【0028】
なお、この本体MBはそれ自体を、信号出力端子と電源入力端子とを持つコネクターとして形成してもよく、このようにすれば、対応するソケットへの接続により容易に外部からの電源供給と外部への信号の取り出しとを行うことができる。
【0029】
また、図2(a)に示す例では、カテーテル型プローブPの基端部に本体MBが固定されているが、代わりに図2(d)に示すように、カテーテル型プローブPの基端部に本体MBがコネクターCNを介して着脱可能に結合され、スリーブS内の四本の配線ケーブルC1,C2がそのコネクターCNを介して本体MB内のプリント基板に着脱可能に接続されていてもよく、このようにすれば、本体MBを残してカテーテル型プローブPだけを容易に交換することができる。
【0030】
この実施形態の血流速計にあっては、抵抗ブリッジの同一極であるグランド側の2つの抵抗R3,R4のうちの一つである抵抗R3を、先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1とそれに直列接続した補助抵抗R3’、すなわち熱線HWの抵抗と二本の配線ケーブルC1の抵抗と補助抵抗R3’との直列接続とするとともに、抵抗ブリッジの同一極であるグランド側の2つの抵抗R3,R4のうちの他の一つである抵抗R4を、先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1に沿わせてその熱線HWの近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルC2とそれに直列接続した補助抵抗R4’、すなわち二本の配線ケーブルC1の抵抗と補助抵抗R4’との直列接続としたため、血管内に挿入されるスリーブS内に先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1と先端を閉じた配線ケーブルC2とを収容するとともに熱線HWをそのスリーブSの先端部に絶縁状態で配置してカテーテル型プローブPを構成し、その熱線HWを血流方向と交差する方向に延在させて血管内に配置して通電により発熱させ、血流速に比例した熱線の冷却による抵抗変化を計測することで血流速を測定する際に、配線ケーブルC1と配線ケーブルC2とが互いに同程度に血流等の外部環境の影響をノイズとして受けるので、抵抗ブリッジ内でそれらのノイズが実質的に相殺される。
【0031】
従って、この実施形態の血流速計によれば、プローブ全体をきわめて細く形成してカテーテル型プローブPを構成した場合でも、先端に熱線HWを繋いだ配線ケーブルC1が受けるノイズの影響を殆どもしくは全くなくして、血流速を高精度に測定することができる。
【0032】
さらに、この実施形態の血流速計によれば、配線ケーブルC1,C2はテフロンコーティングTCを施したチタン線TWであることから、コーティングTCの低摩擦性により配線ケーブルC1,C2がスリーブS内で円滑に動けるためカテーテル型プローブPの血管内への挿入が円滑になるとともに、コーティングTCの絶縁性により配線ケーブルC1,C2同士の短絡も防止することができる。また、この実施形態の血流速計によれば、スリーブSは、コイルバネ状ステンレス線からなることから、スリーブSの柔軟性によりカテーテル型プローブPの血管内への挿入が円滑になるとともに、スリーブSの耐食性により血液でのプローブPの腐食も防止することができる。
【0033】
図6は、図2(c)に示すスリーブS内の配線ケーブルの一変形例を拡大して示す斜視図であり、この変形例では、スリーブS内の4本の配線ケーブルC1,C2をツイスト線(縒り線)としている。この変形例によれば、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルC1と先端を閉じた配線ケーブルC2とがスリーブS内で互いに密接して、それらの配線ケーブルC1,C2が受ける血流等の外部環境の影響がより良く一致するようになり、抵抗ブリッジ内で配線ケーブルが受けるノイズをより有効に相殺することができる。なお、この配線ケーブルC1,C2をツイスト線(縒り線)とする構成は、図1に示す先の実施態様の熱線流速計にも適用することができる。
【0034】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えばこの発明の熱線流速計は、例えばラジエターコア内の冷却管等の細管内の流体の流速の直接計測にも用いることができる。
【0035】
また、この発明の血流速計においては、例えばカテーテル型プローブPの先端部の絶縁樹脂製チップTの形状を、熱線HWのコイル内や螺旋状の熱線HWの周囲を血流が通過するように、先端部と外周部とに開口を持つ筒状に形成してもよく、図1(b)に示すと同様に、二本の配線ケーブルC1のうちの一本を、二本の配線ケーブルC2のうちの一本と共用にして、スリーブS内に延在させる配線ケーブルを三本にしてもよい。
【0036】
さらに、この発明の血流速計においては、例えばカテーテル型プローブPのスリ−ブS内に、配線ケーブルC1,C2に沿わせて一本または複数本の偏向ワイヤーを配置し、その偏向ワイヤーの先端部をスリ−ブSの先端部に接続するとともに基端部をハンドルやレバー等で押し引き可能にすることで、血管内でカテーテル型プローブPの先端部の向きを血管に沿うように変更可能にしてもよい。
【0037】
さらに、上記各実施形態では同一極側としてのグランド(負極)側の二つの抵抗R3,R4のうちの一つを、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルを含むものとし、他の一つを先端に熱線を繋いだ配線ケーブルに沿わせてその熱線の近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルを含むものとしたが、この発明の熱線流速計および血流速計においては、同一極側としての正極側の二つの抵抗R1,R2のうちの一つを、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルを含むものとし、他の一つを先端に熱線を繋いだ配線ケーブルに沿わせてその熱線の近くまで延在させた、先端を回路的に閉じた配線ケーブルを含むものとしてもよく、それらを組み合わせてもよい。
【0038】
そして、この発明の熱線流速計および血流速計においては、各部材の構成材料は、上記実施形態におけるものに限定されず、所要に応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
かくしてこの発明の熱線流速計によれば、細管内の流体の流速等の計測のためにプローブ全体をきわめて細く形成した場合でも、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルが受けるノイズの影響を殆どもしくは全くなくして、流体の流速を高精度に測定することができる。
【0040】
また、この発明のこの発明の血流速計によれば、プローブ全体をきわめて細く形成してカテーテル型プローブを構成した場合でも、先端に熱線を繋いだ配線ケーブルが受けるノイズの影響を殆どもしくは全くなくして、血流速を高精度に測定することができる。
【符号の説明】
【0041】
C1,C2 配線ケーブル
CN コネクター
FL 流れ方向
HW 熱線
MB 本体
P プローブ
R1〜R4 抵抗
R3’,R4’ 補助抵抗
S スリーブ
TC テフロンコーティング
TW チタン線
図1
図2
図3
図4
図5
図6