(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1旋回制御手段は、前記一方のジンバル軸を回動させる速度を、前記回転角センサによって検出される回転角の時間微分値である操舵角速度または操舵角速度の時間微分値である操舵角加速度に応じて制御する手段を含み、
前記第2旋回制御手段は、前記他方のジンバル軸を回動させる速度を、前記回転角センサによって検出される回転角の時間微分値である操舵角速度または操舵角速度の時間微分値である操舵角加速度に応じて制御する手段を含む、請求項4に記載の2輪倒立振子型車両。
前記第1旋回制御手段は、前記一方のジンバル軸を回動させる速度を、前記トルクセンサによって検出される操舵トルクの時間微分値である操舵トルク変化速度または操舵トルク変化速度の時間微分値である操舵トルク変化加速度に応じて制御する手段を含み、
前記第2旋回制御手段は、前記他方のジンバル軸を回動させる速度を、前記トルクセンサによって検出される操舵トルクの時間微分値である操舵トルク変化速度または操舵トルク変化速度の時間微分値である操舵トルク変化加速度に応じて制御する手段を含む、請求項6に記載の2輪倒立振子型車両。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る2輪倒立振子型車両の外観を図解的に示す斜視図である。
2輪倒立振子型車両1は、運転者が搭乗する車体(ステップベース)2と、車体2に回転自在に支持された左車輪3および右車輪4と、左車輪3および右車輪4をそれぞれ回転駆動する左車輪駆動モータ5(
図4参照)および右車輪駆動モータ6(
図4参照)と、車体2に取り付けられたハンドルポスト7と、ハンドルポスト7の上端に固定されたハンドル8と、ハンドル8の左端部および右端部にそれぞれ取り付けられた左側押ボタン9および右側押ボタン10とを含む。
【0014】
各車輪駆動モータ5,6は、たとえば、車輪3,4のホイール内に組み込まれたインホイール型モータである。2輪倒立振子型車両1は、各車輪3,4の回転速度を検出するための車輪速センサ11,12(
図4参照)を備えている。左側押ボタン9は、左旋回指令を入力するための第1入力手段である。右側押ボタン10は、右旋回指令を入力するための第2入力手段である。
【0015】
車体2は、この実施形態は、中空の筐体として構成されている。車体2内には、車体2の前後方向の傾きを検出するための前後傾きセンサ13(
図4参照)、車体2を旋回するために用いられ2つのフライホイール装置20,30、制御装置(コントローラ)40、バッテリー(図示略)等が設けられている。前後傾きセンサ13は、たとえば、ジャイロセンサであり、車体2の前後方向の傾き角およびその角速度を検出する。
【0016】
2つのフライホイール装置20,30は、
図1および
図2に示すように、車体2内に、前後方向に並んで配置されている。以下の説明において、車体2の前後方向をX方向といい、車体2の左右方向をY方向といい、XY平面に垂直な方向をZ方向という場合がある。また、前側のフライホイール装置20を第1フライホイール装置20といい、後側のフライホイール装置30を第2フライホイール装置30という場合がある。
【0017】
図3は、第1および第2フライホイール装置20,30の構成を図解的に示す模式図ある。
図2および
図3を参照して、第1フライホイール装置20は、第1回転軸21を中心に平面視で反時計方向に回転駆動されるフライホイール本体22と第1回転軸21を回転自在に支持する第1ハウジング(支持体)23とを有する第1フライホイール24を含んでいる。第1フライホイール本体22は、
図2および
図3には図示されていない第1フライホイール駆動モータ(第1FW駆動モータ)25(
図4参照)によって回転駆動される。
【0018】
第1フライホイール24の第1ハウジング23には、第1回転軸21と直交しかつ車体2の前後方向(X方向)に延びた第1ジンバル軸26が固定されている。第1ジンバル軸26は、前記車体2に回転自在に支持されている。車体2には、第1ジンバル軸26の車体2に対する回転を拘束するための第1拘束機構27が設けられている。また、車体2には、第1ジンバル軸26を回動させるための第1ジンバル軸回動用モータ28が設けられている。第1拘束機構27としては、たとえば、特許文献2の
図3または
図4に示された拘束機構を用いることができる。第1ジンバル軸回動用モータ28は、この実施形態では、ステッピングモータである。
【0019】
第2フライホイール装置30は、第1フライホイール装置20と同様な構成である。
図2および
図3を参照して、第2フライホイール装置30は、第2回転軸31を中心に平面視で時計方向に回転駆動される第2フライホイール本体32と第2回転軸31を回転自在に支持する第2ハウジング(支持体)33とを有する第2フライホイール34を含んでいる。第2フライホイール本体32は、
図2および
図3には図示されていない第2フライホイール駆動モータ(第2FW駆動モータ)35(
図4参照)によって回転駆動される。
【0020】
第2フライホイール34の第2ハウジング33には、第2回転軸31と直交しかつ車体2の前後方向(X方向)に延びた第2ジンバル軸36が固定されている。第2ジンバル軸36は、前記車体2に回転自在に支持されている。車体2には、第2ジンバル軸36の車体2に対する回転を拘束するための第2拘束機構37が設けられている。また、車体2には、第2ジンバル軸36を回動させるための第2ジンバル軸回動用モータ38が設けられている。第2拘束機構37としては、たとえば、特許文献2の
図3または
図4に示された拘束機構を用いることができる。第2ジンバル軸回動用モータ38は、この実施形態では、ステッピングモータである。
【0021】
図4は、制御装置40の電気的構成を示すブロック図である。
制御装置40には、車輪速センサ11,12、前後傾きセンサ13、左側押ボタン9、右側押ボタン10等の出力信号が入力される。
制御装置40は、マイクロコンピュータ41と、マイクロコンピュータ41によって制御される複数の駆動回路42〜49とを含んでいる。複数の駆動回路42〜49には、左車輪駆動モータ5の駆動回路42、右車輪駆動モータ6の駆動回路43、第1フライホイール駆動モータ(第1FW駆動モータ)25の駆動回路44、第1拘束機構27のアクチュエータの駆動回路45、第1ジンバル軸回動用モータ28の駆動回路46、第2フライホイール駆動モータ(第2FW駆動モータ)35の駆動回路47、第2回拘束機構37のアクチュエータの駆動回路48および第2ジンバル軸回動用モータ38の駆動回路49が含まれている。
【0022】
マイクロコンピュータ41は、CPUおよびメモリ(ROM,RAM,不揮発性メモリなど)を備えており、所定のプログラムを実行することにより、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、安定化制御部51と、旋回制御部52とが含まれる。
安定化制御部51は、車体2が前後方向に倒れないように安定化制御を行うものである。具体的には、安定化制御部51は、車輪速センサ11,12によって検出される各車輪3,4の車輪速および前後傾きセンサ13によって検出される前後傾き角およびその角速度に基いて、車体2が前後方向に倒れないように安定化させるのに必要な駆動トルクを演算する。そして、安定化制御部51は、各車輪駆動用モータ5,6の出力トルクが、演算された駆動トルクと等しくなるように、これらのモータ5,6の駆動回路42,43を制御する。これにより、運転者が自身の重心を前にずらすことによって前進走行ができ、自身の重心を後ろにずらすことによって後進走行ができる。このような安定化制御は、たとえば、特許文献3に開示されているように、よく知られている制御である。
【0023】
旋回制御部52は、左側押ボタン9および右側押ボタン10の出力信号に基いて、駆動回路44〜46を介して第1フライホイール装置20を制御するとともに駆動回路47〜49を介して第2フライホイール装置30を制御することにより、旋回制御を行うものである。
図5A〜
図5Cを参照して、旋回制御部52による旋回制御の考え方について説明する。
【0024】
図5Aに示すように、第1フライホイール装置20の第1ジンバル軸26および第2フライホイール装置30の第2ジンバル軸36は、常時は、第1拘束機構27および第2拘束機構37によって、第1回転軸21および第2回転軸31がそれぞれZ方向軸と平行となるような回転角度位置(以下、「基準回転角度位置」という場合がある。)に固定される。
【0025】
第1フライホイール装置20のフライホイール本体22は、平面視で反時計方向に回転しているので、前方に向かって反時計周りのロール方向のジャイロモーメントM1が車体2に発生する。このジャイロモーメントM1は、車体2を左方向に旋回させるように作用する。一方、第2フライホイール装置30のフライホイール本体32は、平面視で時計方向に回転しているので、前方に向かって時計周りのロール方向のジャイロモーメントM2が車体2に発生する。このジャイロモーメントM2は、車体2を右方向に旋回させるように作用する。これらのジャイロモーメントM1,M2の大きさは、フライホイール本体22,32の回転速度が大きくなるほど大きくなる。
【0026】
第1フライホイール本体22の回転速度および第2フライホイール本体32の回転速度は、それぞれ、第1フライホイール装置20によって発生するジャイロモーメントM1の大きさと第2フライホイール装置30によって発生するジャイロモーメントM2の大きさとが等しくなるような、第1所定回転速度および第2所定回転速度に設定される。これにより、常時は、第1フライホイール装置20によって発生するジャイロモーメントM1と、第2フライホイール装置30によって発生するジャイロモーメントM2とが打ち消されるため、車体2は旋回しない。
【0027】
以下において、第1フライホイール装置20の第1ジンバル軸26を、第1回転軸21がZ方向軸と平行となるような回転角度位置に固定し、第1フライホイール本体22が前記第1所定回転速度で回転するように、第1拘束機構27および第1フライホイール駆動モータ25を制御する処理を、「第1フライホイール定常制御処理(第1FW定常制御処理)」ということにする。同様に、第2フライホイール装置30の第2ジンバル軸36を、第2回転軸31がZ方向軸と平行となるような回転角度位置に固定し、第2フライホイール本体32が前記第2所定回転速度で回転するように、第2拘束機構37および第2フライホイール駆動モータ35を制御する処理を、「第2フライホイール定常制御処理(第2FW定常制御処理)」ということにする。
【0028】
図5Bに示すように、
図5Aの状態から、第1フライホイール装置20の第1ジンバル軸26のみを前方に向かって反時計方向に回動させて、第1回転軸22をZ方向軸に対して傾斜させると、第1フライホイール装置20によって発生するジャイロモーメントM1が増大する。これにより、第1フライホイール装置20によって発生するジャイロモーメントM1が、第2フライホイール装置30によって発生するジャイロモーメントM2よりも大きくなるので、車体2は左方向に旋回する。
【0029】
図5Cに示すように、
図5Aの状態から、第2フライホイール装置30の第2ジンバル軸36のみを前方に向かって時計方向に回動させて、第2回転軸31をZ方向軸に対して傾斜させると、第2フライホイール装置30によって発生するジャイロモーメントM2が増大する。これにより、第2フライホイール装置30によって発生するジャイロモーメントM2が、第1フライホイール装置30によって発生するジャイロモーメントM1よりも大きくなるので、車体2は右方向に旋回する。
【0030】
図6Aは、旋回制御部52の動作を説明するためのフローチャートである。
図6Aの処理は、所定の演算周期毎に繰り返し実行される。
図6Aを参照して、旋回制御部52は、左側押しボタン9がオンか否かを判定する(ステップS1)。左側押しボタン9がオフであれば(ステップS1:NO)、旋回制御部52は、「第1フライホイール定常制御処理(第1FW定常制御処理)」を行う(ステップS2)。次に、旋回制御部52は、右側押しボタン10がオンか否かを判別する(ステップS3)。右側押しボタン10がオフであれば(ステップS3:NO)、旋回制御部52は、「第2フライホイール定常制御処理(第2FW定常制御処理)」を行う(ステップS4)。そして、旋回制御部52は、今演算周期での処理を終了する。
【0031】
前記ステップS3において、右側押しボタン10がオンであれば(ステップS3:YES)、旋回制御部52は、右旋回制御処理を行った後(ステップS5)、今演算周期での処理を終了する。右旋回制御処理については、後述する。
前記ステップS1において、左側押しボタン9がオンであると判別されたときには(ステップS1:YES)、旋回制御部52は、右側押しボタン10がオンか否かを判別する(ステップS6)。右側押しボタン10がオフであれば(ステップS6:NO)、旋回制御部52は、「第1フライホイール定常制御処理」を行った後(ステップS7)、左旋回制御処理を行う(ステップS8)。左旋回制御処理については、後述する。この後、旋回制御部52は、今演算周期での処理を終了する。
【0032】
前記ステップS6において、右側押しボタン10がオンであると判別されたときには(ステップS6:YES)、つまり、両押しボタン9,10が共にオンであるときには、旋回制御部52は、「第1フライホイール定常制御処理」および「第2フライホイール定常制御処理」を行う(ステップS9)。そして、旋回制御部52は、今演算周期での処理を終了する。
【0033】
図6Bは、
図6AのステップS8の左旋回制御処理の手順を示すフローチャートである。
左旋回制御処理では、旋回制御部52は、まず、第1回転軸21のZ方向軸に対する傾斜角度が所定の閾値より小さいか否かを判別する(ステップS11)。この閾値は、たとえば、20degに設定される。この判別は、具体的には、第1ジンバル軸26の基準回転角度位置からの回転量が所定回転量より小さいか否かに基いて判別される。
【0034】
この実施形態のように、第1ジンバル軸回動用モータ28がステッピングモータである場合には、旋回制御部52は、第1ジンバル軸回動用モータ28の回転量を認識できる。このため、旋回制御部52は、第1ジンバル軸26の基準回転角度位置からの回転量を認識できる。第1ジンバル軸回動用モータ28がステッピングモータ以外の電動モータである場合には、第1ジンバル軸回動用モータ28のロータまたは第1ジンバル軸26の回転角を検出するための回転角センサを設けておくことにより、第1ジンバル軸26の基準回転角度位置からの回転量を検出することができる。
【0035】
第1回転軸21のZ方向軸に対する傾斜角度が所定の閾値より小さいときには(ステップS11:YES)、旋回制御部52は、前述の
図5Bに示すように、第1回転軸21をZ方向軸に対して傾斜させる(ステップS12)。具体的には、旋回制御部52は、第1拘束機構27による第1ジンバル軸26の拘束を一時的に解除させるとともに、第1ジンバル軸回動用モータ28を回転駆動させて第1ジンバル軸26を前方に向かって反時計方向に所定量だけ回動させる。これにより、第1回転軸21がZ方向軸に対して傾斜する。これにより、第1フライホイール装置20によるジャイロモーメントが、第2フライホイール装置30によるジャイロモーメントより大きくなるので、車体2が左方向に旋回する。この後、旋回制御部52は、今演算周期での処理を終了する。
【0036】
前記ステップS11において、第1回転軸21のZ方向軸に対する傾斜角度が所定の閾値以上であると判別されたときには(ステップS11:NO)、旋回制御部52は、第1フライホイール駆動モータ25の回転速度を大きくする(ステップS13)。これにより、第1フライホイール22の回転速度が大きくなるから、第1回転軸21のZ方向軸に対する傾斜角度を現在の傾斜角度より大きくすることなく、第1フライホイール装置20によるジャイロモーメントを大きくすることができる。これにより車体2の左方向の旋回速度を高めることができる。この後、旋回制御部52は、今演算周期での処理を終了する。
【0037】
図6Cは、
図6AのステップS5の右旋回制御処理の手順を示すフローチャートである。
右旋回制御処理では、旋回制御部52は、まず、第2回転軸31のZ方向軸に対する傾斜角度が所定の閾値より小さいか否かを判別する(ステップS21)。この閾値は、たとえば、20degに設定される。この判別は、具体的には、第2ジンバル軸36の基準回転角度位置からの回転量が所定回転量より小さいか否かに基いて判別される。
【0038】
この実施形態のように、第2ジンバル軸回動用モータ38がステッピングモータである場合には、旋回制御部52は、第2ジンバル軸回動用モータ38の回転量を認識できる。このため、旋回制御部52は、第2ジンバル軸36の基準回転角度位置からの回転量を認識できる。第2ジンバル軸回動用モータ38がステッピングモータ以外の電動モータである場合には、第2ジンバル軸回動用モータ38のロータまたは第2ジンバル軸36の回転角を検出するための回転角センサを設けておくことにより、第2ジンバル軸36の基準回転角度位置からの回転量を検出することができる。
【0039】
第2回転軸31のZ方向軸に対する傾斜角度が所定の閾値より小さいときには(ステップS21:YES)、旋回制御部52は、前述の
図5Cに示すように、第2回転軸31をZ方向軸に対して傾斜させる(ステップS22)。具体的には、旋回制御部52は、第2拘束機構37による第2ジンバル軸36の拘束を一時的に解除させるとともに、第2ジンバル軸回動用モータ38を回転駆動させて第2ジンバル軸36を前方に向かって時計方向に所定量だけ回動させる。これにより、第2回転軸31がZ方向軸に対して傾斜する。これにより、第2フライホイール装置30によるジャイロモーメントが、第1フライホイール装置20によるジャイロモーメントより大きくなるので、車体2が右方向に旋回する。この後、旋回制御部52は、今演算周期での処理を終了する。
【0040】
前記ステップS21において、第2回転軸31のZ方向軸に対する傾斜角度が所定の閾値以上であると判別されたときには(ステップS21:NO)、旋回制御部52は、第2第1フライホイール駆動モータ35の回転速度を大きくする(ステップS23)。これにより、第2フライホイール本体32の回転速度が大きくなるから、第2回転軸31のZ方向軸に対する傾斜角度を現在の傾斜角度より大きくすることなく、第2フライホイール装置30によるジャイロモーメントを大きくすることができる。これにより車体2の右方向の旋回速度を高めることができる。この後、旋回制御部52は、今演算周期での処理を終了する。
【0041】
図7は、本発明の第2実施形態に係る2輪倒立振子型車両の外観を図解的に示す斜視図である。
図7において、前述の
図1の各部に対応する部分には
図1と同じ符号を付して示す。
この2輪倒立振子型車両1Aでは、第1実施形態のような左側押しボタン9および右側押しボタン10は設けられていない。この2輪倒立振子型車両1Aでは、ハンドルポスト7は、車体2に回転自在に支持されている。図示しないが、車体2には、ハンドルポスト7を中立位置(ハンドル8がY方向と平行となる位置)に付勢する付勢機構が設けられている。また、車体2内には、ハンドル8の操舵方向を検出するために、ハンドルポスト7の回転角および回転方向(以下、「操舵方向」という)を検出する回転角センサ14が設けられている。また、この2輪倒立振子型車両1Aでは、旋回制御方法が、第1実施形態と異なっている。
【0042】
図8は、制御装置40Aの電気的構成を示すブロック図である。
図8において、前述の
図4の各部に対応する部分には
図4と同じ符号を付して示す。
制御装置40A内のマイクロコンピュータ41Aは、安定化制御部51と旋回制御部52Aとを含んでいる。安定化制御部51は、第1実施形態の安定化制御部51と同様である。旋回制御部52Aには、回転角センサ14によって検出されるハンドルポスト7の回転角および操舵方向が入力する。
【0043】
図9は、旋回制御部52Aの動作を説明するためのフローチャートである。
図9の処理は、所定の演算周期毎に繰り返し実行される。
旋回制御部52Aは、回転角センサ14によって検出されたハンドルポスト7の回転角および操舵方向を取得する(ステップS31)。そして、旋回制御部52Aは、操舵方向が左方向であるか否かを判別する(ステップS32)。操舵方向が左方向でなければ(ステップS32:NO)、旋回制御部52Aは、「第1フライホイール定常制御処理(第1FW定常制御処理)」を行う(ステップS33)。
【0044】
この後、旋回制御部52Aは、操舵方向が右方向であるか否かを判別する(ステップS34)。操舵方向が右方向でなければ(ステップS34:NO)、旋回制御部52Aは、「第2フライホイール定常制御処理(第2FW定常制御処理)」を行う(ステップS35)。そして、旋回制御部52Aは、今演算周期での処理を終了する。
前記ステップS34において、操舵方向が右方向であると判別されたときには(ステップS34:YES)、旋回制御部52Aは、右旋回制御処理を行った後(ステップS36)、今演算周期での処理を終了する。右旋回制御処理は、前述の
図6Cを用いて説明した右旋回制御処理と同様である。ただし、第2実施形態においては、
図6CのステップS22において、ハンドルポスト7の回転角の時間微分値である操舵角速度(ハンドルポスト7の回転角の時間的変化量)または操舵角速度の時間微分値である操舵角加速度に応じて、第2ジンバル軸36の回転量を変化させるようにしてもよい。具体的には、操舵角速度または操舵角加速度が大きいほど、その演算周期における第2ジンバル軸36の回転量を大きくする。これにより、操舵角速度または操舵角加速度が大きいほど、第2ジンバル軸36を回動させる速度(第2回転軸31を傾斜させる速度)が速くなるので、操舵角速度または操舵角加速度に応じて旋回速度を制御できるようになる。
【0045】
前記ステップS31において、操舵方向が左方向であると判別されたときには(ステップS31:YES)、旋回制御部52Aは、左旋回制御処理を行った後(ステップS37)、今演算周期での処理を終了する。左旋回制御処理は、前述の
図6Bを用いて説明した左旋回制御処理と同様である。ただし、第2実施形態においては、
図6BのステップS12において、ハンドルポスト7の回転角の時間微分値である操舵角速度(ハンドルポスト7の回転角の時間的変化量)または操舵角速度の時間微分値である操舵角加速度に応じて、第1ジンバル軸26の回転量を変化させるようにしてもよい。具体的には、操舵角速度または操舵角加速度が大きいほど、その演算周期における第1ジンバル軸26の回転量を大きくする。これにより、操舵角速度または操舵角加速度が大きいほど、第1ジンバル軸26を回動させる速度(第1回転軸21を傾斜させる速度)が速くなるので、操舵角速度または操舵角加速度に応じて旋回速度を制御できるようになる。
【0046】
前述の第2実施形態では、回転角センサ14によってハンドル8の操舵方向を検出しているが、
図8に破線で示すように、ハンドル8に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ15を設け、トルクセンサ15によって検出される操舵トルクからハンドル8の操舵方向を検出するようにしてもよい。具体的には、
図7の2輪倒立振子型車両1Aのハンドルポスト7を、ハンドル8が固定された第1部分と、車体2に固定された第2部分と、第1部分と第2部分とを連結するトーションバーとから構成する。そして、トーションバーの捩れ量を操舵トルクとして検出するトルクセンサ15を設ける。
【0047】
この場合には、前述の
図9のステップS31では、トルクセンサ15によって検出された操舵トルクが取得される。また、
図9のステップS32では、取得された操舵トルクに基いて操舵方向が左方向か否かが判別され、
図9のステップS34では、取得された操舵トルクに基いて操舵方向が右方向か否かが判別される。
また、
図6BのステップS12において、操舵トルクの大きさ(絶対値)、操舵トルクの時間微分値である操舵トルク変化速度(操舵トルクの時間的変化量)または操舵トルク変化速度の時間微分値である操舵トルク変化加速度に応じて、第1ジンバル軸26の回転量を変化させるようにしてもよい。同様に、
図6CのステップS22において、操舵トルクの大きさ(絶対値)、操舵トルクの時間微分値である操舵トルク変化速度(操舵トルクの時間的変化量)または操舵トルク変化速度の時間微分値である操舵トルク変化加速度に応じて、第2ジンバル軸36の回転量を変化させるようにしてもよい。
【0048】
図10は、本発明の第3実施形態に係る2輪倒立振子型車両の外観を図解的に示す斜視図である。
図11は、
図10に示す2輪倒立振子型車両を図解的に示す平面図である。
図10において、前述の
図1の各部に対応する部分には
図1と同じ符号を付して示す。
この2輪倒立振子型車両1Bでは、左車輪3と右車輪4とは、前後方向位置がずれて配置されている。この実施形態では、左車輪3が車体2の前寄りの位置に取り付けられ、右車輪4が車体2の後寄りの位置に取り付けられている。
【0049】
また、この2輪倒立振子型車両1Bでは、1つのフライホール装置20のみが設けられている。このフライホール装置20の構成は、第1実施形態における第1フライホール装置20の構成と同じである。
この2輪倒立振子型車両1Bでは、車体2に対する左車輪3の前後方向位置が右車輪4の前後方向位置より前側にあるため、両車輪3,4が同じ回転速度で回転した場合には、車体2は
図11の矢印Aで示すように右方向に旋回する。そこで、
図11の矢印Bで示すように、フライホール装置20によって車体2を左方向に旋回させるためのジャイロモーメントを発生させることにより、車体2を直進させることができる。
【0050】
常時は、フライホイール装置20の第1ジンバル軸26は、第1回転軸21がZ方向軸と平行となるような回転角度位置に固定される。また、第1フライホイール本体22は、車体2が直進するような回転速度で回転される。
車体2を左方向に旋回させる場合には、フライホール装置20の第1ジンバル軸回動用モータ28を回転駆動させて第1ジンバル軸26を前方に向かって反時計方向に回動させることにより、
図5Bに示すように第1回転軸21をZ方向軸に対して傾斜させる。これにより、フライホイール装置20によるジャイロモーメントが増大するので、車体2は左方向に旋回する。
【0051】
一方、車体2を右方向に旋回させる場合には、フライホール装置20の第1フライホイール駆動モータ25を制御して、第1フライホール22の回転速度を低下させる。これにより、フライホイール装置20によるジャイロモーメントが減少するので、車体2は右方向に旋回する。
また、次のような旋回制御を行うことも可能である。
【0052】
常時は、フライホイール装置20の第1ジンバル軸26は、第1回転軸21がZ方向軸に対して
図5Bに示す方向に所定角度傾斜するような回転角度位置に固定される。また、第1フライホイール本体22は、車体2が直進するような回転速度で回転される。
車体2を左方向に旋回させる場合には、フライホール装置20の第1ジンバル軸回動用モータ28を回転駆動させて第1ジンバル軸26を前方に向かって反時計方向に回動させることにより、第1回転軸21のZ方向軸に対する傾斜角を増大させる。これにより、フライホイール装置20によるジャイロモーメントが増大するので、車体2は左方向に旋回する。
【0053】
車体2を右方向に旋回させる場合には、フライホール装置20の第1ジンバル軸回動用モータ28を逆方向に回転駆動させて第1ジンバル軸26を前方に向かって時計方向に回動させることにより、第1回転軸21のZ方向軸に対する傾斜角を減少させる。これにより、フライホイール装置20によるジャイロモーメントが減少するので、車体2は右方向に旋回する。
【0054】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。例えば、前述の第1および第2実施形態では、第1フライホイール装置20と第2フライホイール装置30とは、車体2に対して前後方向に並んで配置されているが、各フライホイール装置20,30の配置は任意に設定することができる。たとえば、第1フライホイール装置20と第2フライホイール装置30とを、車体2に対して上下方向に並べて配置してもよい。また、第1フライホイール装置20と第2フライホイール装置30とを、左右方向に並べて配置してもよい。
【0055】
また、前述の第1および第2実施形態では、第1フライホイール装置20の第1ジンバル軸26および第2フライホイール装置30の第2ジンバル軸36は、それぞれ第1ジンバル軸回動用モータ28および第2ジンバル軸回動用モータ38によって回動されるようになっている。しかし、これらのジンバル軸26,36を手動で回転駆動させるようにしてもよい。たとえば、ハンドルポスト7を左右方向に傾動可能に車体2に取り付け、ハンドルポスト7の傾動動作に応じて第1ジンバル軸26または第1ジンバル軸36を回転させる機構を設けてもよい。より具体的には、ハンドルポスト7が左方向に傾動されたときには、第1ジンバル軸26を前方に向かって反時計方向に回動させる機構を設けるとともに、ハンドルポスト7が右方向に傾動されたときには、第2ジンバル軸36を前方に向かって時計方向に回動させる機構を設ければよい。
【0056】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。