(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の側板と前記一対の側板の第1端部同士を連結した連結板とを含み各側板に前記第1端部とは平行に延びる長孔が形成されたブラケットにおける前記一対の側板の第2端部を、チューブの外周に溶接するときに、前記ブラケットと前記チューブとを位置決めする位置決め治具であって、
第1支持部および第2支持部を有する治具本体と、
前記第1支持部によって支持され、位置決め軸線を有し、前記チューブの中心軸線が前記位置決め軸線に一致するように前記チューブを位置決めする第1位置決め部材と、
前記第2支持部によって対応する側板の対応する長孔に外側から押し込み可能に支持され、前記位置決め軸線と平行である平坦な位置決め面と前記位置決め面に対して傾斜する傾斜面とを含み、前記ブラケットを位置決めする一対の楔状の第2位置決め部材と、を備え、
前記第1支持部および前記第2支持部によって、前記一対の第2位置決め部材の前記位置決め面を含む平面と前記位置決め軸線との間の距離が、予め所定距離に設定されており、
対応する長孔に押し込まれた各第2位置決め部材の傾斜面が、対応する長孔の、前記第2端部側の長手縁部に当接した状態で、各位置決め面によって、対応する長孔の、前記第1端部側の長手縁部が、前記第1位置決め部材によって位置決めされた前記チューブの中心軸線と平行になるように、前記ブラケットが位置決めされるように構成された位置決め治具。
請求項1において、前記一対の側板の外側面にそれぞれに対向する対向部を含む一対の位置規制部材を含み、前記一対の位置規制部材の対向部同士の間の距離が、前記一対の側板の外側面同士の間の距離よりも大きくされており、前記一対の側板の対向方向に関する位置が、前記一対の位置規制部材によって遊びを持って規制される位置決め治具。
請求項1または2において、前記治具本体によって前記所定距離の方向に昇降可能に支持され、前記ブラケットを前記所定距離の方向に受ける受け部材を含み、前記受け部材は、前記ブラケットを、前記長孔の、前記第1端部側の長手縁部が前記位置決め面を含む平面よりも下方に配置される下降位置で、支持可能である位置決め治具。
請求項1〜4の何れか一項において、前記第1位置決め部材が、前記位置決め軸線を中心として拡径して前記チューブの内周面に当接することによって前記チューブを位置決めする拡径部を含む位置決め治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テレスコ調整可能なステアリング装置において、テレスコロック時にインナコラムのがたつきを防止する機構として、チルトブラケットの側板のチルト用長穴およびコラム側ブラケットのテレスコ用長穴を挿通し操作レバーと一体回転する締付軸の外周に、締付軸と一体回転する押上カムを設ける場合がある。ロック時に、押上カムが、アウタコラムの開口を挿通してインナコラムの下部外周を押し上げることにより、インナコラムの上部外周がアウタコラムの内周に押圧されて、インナコラムが位置固定される。
【0005】
アウタコラムの上部内周からインナコラムが受ける押圧反力は、押上カムおよび締付軸(具体的には締付軸に嵌合された筒状部材)を介してテレスコ用長穴の下縁部によって受けられる。
テレスコ用長穴の下縁部の位置精度がばらつくと、締付軸の中心軸線の位置精度がばらつく。このため、がたつき防止効果がばらつくおそれがある。
【0006】
特許文献1のステアリング装置では、被溶接部の溶接時に、一対のコラム側ブラケットとアウタコラムとの位置決め精度が悪いと、テレスコ用長穴の下縁部がアウタコラムの中心軸線とは平行にならず、テレスコ用長穴の下縁部の位置精度がばらつく。
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、長孔を有するブラケットとチューブとを溶接する構成において、チューブの中心軸線に対する、長孔の長手縁部の位置精度を向上させる位置決め治具および当該位置決め治具を用いた溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、一対の側板(20)と前記一対の側板の第1端部(201)同士を連結した連結板(21)とを含み各側板に前記第1端部とは平行に延びる長孔(22)が形成されたブラケット(16)における前記一対の側板の第2端部(202)を、チューブ(12)の外周(12e)に溶接するときに、前記ブラケットと前記チューブとを位置決めする位置決め治具(50)であって、第1支持部(51,54)および第2支持部(52)を有する治具本体(53)と、前記第1支持部によって支持され、位置決め軸線(C2)を有し、前記チューブの中心軸線(C1)が前記位置決め軸線に一致するように前記チューブを位置決めする第1位置決め部材(55,56)と、前記第2支持部によって対応する側板の対応する長孔に外側から押し込み可能に支持され、前記位置決め軸線と平行である平坦な位置決め面(72)と前記位置決め面に対して傾斜する傾斜面(73)とを含み、前記ブラケットを位置決めする一対の楔状の第2位置決め部材(57)と、を備え、前記第1支持部および前記第2支持部によって、前記一対の第2位置決め部材の前記位置決め面を含む平面(S)と前記位置決め軸線との間の距離(L2)が、予め所定距離(L1)に設定されており、対応する長孔に押し込まれた各第2位置決め部材の傾斜面が、対応する長孔の、前記第2端部側の長手縁部(222)に当接した状態で、各位置決め面によって、対応する長孔の、前記第1端部側の長手縁部(221)が、前記第1位置決め部材によって位置決めされた前記チューブの中心軸線と平行になるように、前記ブラケットが位置決めされるように構成された位置決め治具である。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1において、前記一対の側板の外側面にそれぞれに対向する対向部(70)を含む一対の位置規制部材(59)を含み、前記一対の位置規制部材の対向部同士の間の距離(H1)が、前記一対の側板の外側面同士の間の距離(H2)よりも大きくされており、前記一対の側板の対向方向に関する位置が、前記一対の位置規制部材によって遊びを持って規制される位置決め治具である。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2において、前記治具本体によって前記所定距離の方向(Z)に昇降可能に支持され、前記ブラケットを前記所定距離の方向に受ける受け部材(78)を含み、前記受け部材は、前記ブラケットを、前記長孔の、前記第1端部側の長手縁部が前記位置決め面を含む平面よりも下方に配置される下降位置で、支持可能である位置決め治具である。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3において、前記受け部材の接近に基づいて、前記受け部材によって受けられた前記ブラケットの存在を検知する近接センサ(76)を備える位置決め治具である。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項において、前記第1位置決め部材が、前記位置決め軸線を中心として拡径して前記チューブの内周面(12b)に当接することによって前記チューブを位置決めする拡径部(69)を含む位置決め治具である。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の位置決め治具を用いて前記一対の側板の第2端部をチューブの外周に溶接する溶接方法であって、前記第1位置決め部材によって、前記チューブの中心軸線が前記位置決め軸線に一致するように前記チューブを位置決めする工程と、前記一対の第2位置決め部材を対応する側板の対応する長孔に外側から押し込むことで、前記傾斜面が前記第2端部側の長手縁部に当接した状態で、各前記位置決め面によって、前記第1端部側の長手縁部が前記チューブの中心軸線と平行になるように、前記ブラケットを位置決めする工程と、前記ブラケットにおける前記一対の側板の第2端部をチューブの外周に溶接する工程とを含む溶接方法である。
【0012】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、第1位置決め部材によって、チューブの中心軸線が位置決め軸線に一致するようにチューブが位置決めされる。また、楔状の各第2位置決め部材が、対応する長孔に押し込まれることにより、前記所定距離の方向に関して、チューブに対するブラケットの位置が拘束される。その拘束状態で、各第2位置決め部材の位置決め面によって、対応する長孔の第1端部側(チューブに溶接される端部とは反対側)の長手縁部とチューブの中心軸線との両者が平行になり且つ両者間の距離が予め設定された所定距離になるようにブラケットが位置決めされる。この状態でチューブに溶接されたブラケットにおいては、チューブの中心軸線に対する長孔の長手縁部の位置精度を向上させることができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、一対の側板の位置が一対の位置規制部材によって遊びを持って規制される。そのため、各位置規制部材が対応する側板に対して、拘束力を及ぼすことがない。よって、各位置規制部材が、一対の第2位置決め部材によるブラケットの位置決め拘束を邪魔することがない。
請求項3記載の発明によれば、受け部材によってブラケットを受けた状態で、一対の側板の長孔の、第1端部側の長手縁部が位置決め面を含む平面よりも下方に配置される。このため、一対の第2位置決め部材を対応する長孔に押し込むことができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、近接センサは、受け部材によって受けられたブラケットの存在を、受け部材の接近に基づいて検知することができる。
請求項5記載の発明によれば、第1位置決め部材の拡径部が、位置決め軸線を中心に拡径してチューブの内周面に当接してチューブの位置を固定するため、チューブの中心軸線を位置決め軸線に一致させられる。
【0016】
請求項6記載の発明のように、請求項1〜5の何れか一項に記載の位置決め治具を用いた溶接方法によってチューブにブラケットを溶接してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の溶接方法を用いて溶接されたチューブブラケットアッセンブリTBAが適用されたステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、主として、図示しない操舵部材が一端に取り付けられたステアリングシャフト2が挿通するステアリングコラム3と、ステアリングコラム3を支持するアッパーブラケット4と、ステアリングコラム3の位置をロックするロック機構6とを備えている。
【0019】
ステアリングコラム3は、ステアリングシャフト2の軸方向(
図1において紙面とは直交する方向)に伸縮可能である。ステアリングコラム3は、相対摺動可能に嵌合された筒状のアウターチューブ12と筒状のインナーチューブ13とを有している。
アウターチューブ12は、軸方向に延びる中心軸線C1を有している。アウターチューブ12の下端部には、アウターチューブ12の軸方向に延びる挿通孔12aが形成されている。インナーチューブ13の外周面には、アウターチューブ12の内周面12bに当接可能な突起13aが形成されている。
【0020】
アッパーブラケット4は、車体14に固定されるチルトブラケット15と、アウターチューブ12に固定されるサポートブラケット16とを備えている。
チルトブラケット15は、車体14に取り付けられる取付板11に固定された天板17と、天板17から下方に延びる一対の第1側板18とを含む。一対の第1側板18のそれぞれには、チルト方向(車体14の上下方向)に延びるチルト用の長孔19が形成されている。
【0021】
サポートブラケット16は、対応する第1側板18に沿って延びる一対の第2側板20と、一対の第2側板20の下端部である第1端部201同士を連結した連結板21とを含む。
図2を参照して、一対の第2側板20の上端部である第2端部202は、アウターチューブ12の外周12eに溶接されている。これにより、第2端部202とアウターチューブ12の外周12eとを連結する溶接部Wが第2端部202とアウターチューブ12の外周12eとの間に形成される。
【0022】
第1端部201は、一対の第2側板20において、アウターチューブ12から遠い側の端部であり、第2端部202は、アウターチューブ12から近い側の端部である。第1端部201は、テレスコ方向と平行である。
一対の第2側板20のそれぞれには、各第2側板20の第1端部201とは平行(テレスコ方向)に延びるテレスコ用の長孔22が形成されている。長孔22は、第1端部201側の第1長手縁部221と第2端部202側の第2長手縁部222とを含む。第1端部201側の各第1長手縁部221は、アウターチューブ12の中心軸線C1と平行である。
【0023】
図1を参照して、ロック機構6は、一対の第1側板18の長孔19と一対の第2側板20の長孔22とに挿通される締付軸25と、締付軸25の一端に取り付けられた操作レバー26と、操作レバー26と一体回転する回転カム27と、回転カム27に対してカム係合し一方の第1側板18を締め付ける非回転カム28とを備える。
締付軸25は、テレスコ方向とは直交する方向に延びる中心軸線C3を有している。締付軸25の頭部25aと一方の第1側板18との間に、操作レバー26と、回転カム27と、非回転カム28とが介在している。回転カム27および非回転カム28は、締付軸25の頭部25aの近傍において、軸部25bによって支持されている。
【0024】
非回転カム28は、回転カム27と対向しチルトブラケット15の一方の第1側板18の外側面に沿う環状板29と、環状板29から軸方向に延びるボス30とを備えている。ボス30は、一方の第1側板18の長孔19と一方の第2側板20の長孔22とに挿通している。
ロック機構6は、締付軸25のねじ部にねじ係合したナット31と、他方の第1側板18とナット31との間に介在し他方の第1側板18を締め付ける締付部材32と、締付部材32とナット31との間に介在した介在部材33とをさらに含む。
【0025】
締付部材32は、チルトブラケット15の他方の第1側板18の外側面に沿う環状板35と、環状板35から延びるボス36とを備えている。締付部材32のボス36は、他方の第1側板18の長孔19と他方の第2側板20の長孔22とに挿通している。
締付軸25の軸部25bの外周には、例えばセレーション嵌合により締付軸25と一体回転するスリーブ40が嵌合している。スリーブ40の外周には、押上カム41が一体回転可能に設けられている。
【0026】
操作レバー26の操作に応じて、非回転カム28と締付部材32との間でチルトブラケット15の一対の第1側板18が挟持されて締め付けられる。これにより、一対の第1側板18のそれぞれが対応する第2側板20に摩擦係合されて、ステアリングコラム3のチルトロックおよびテレスコロックが達成される。また、ロック時には、押上カム41がインナーチューブ13を押し上げることにより、インナーチューブ13の突起13aがアウターチューブ12の内周面12bに押圧される。これにより、アウターチューブ12に対してインナーチューブ13が位置固定される。
【0027】
このとき、押上カム41は、インナーチューブ13から押圧反力を受ける。押上カム41が受けた押圧反力は、締付軸25に伝達されて、締付軸25に取り付けられた非回転カム28のボス30および締付部材32のボス36が長孔22の第1長手縁部221によって受けられる。
押上カム41がインナーチューブ13をアウターチューブ12に押圧するときの押圧力は、インナーチューブ13が位置固定された状態でインナーチューブ13からの押圧反力を受ける長孔22の第1長手縁部221とアウターチューブ12の中心軸線C1との間の距離L1に応じて変化する。
【0028】
そのため、距離L1を調節することでアウターチューブ12とインナーチューブ13との間のがたつきを防止することができる。
図3を参照して、以下では、サポートブラケット16の一対の第2側板20の第2端部202をアウターチューブ12の外周12eに溶接するときに、第1長手縁部221とアウターチューブ12の中心軸線C1とが平行になるようにアウターチューブ12とサポートブラケット16とを位置決めする位置決め治具50の構成について説明する。
【0029】
図3を参照して、位置決め治具50は、一対の第1支持部51,54および一対の第2支持部52を有する治具本体53と、アウターチューブ12を位置決めする一対の第1位置決め部材55,56と、サポートブラケット16を位置決めする一対の第2位置決め部材57と、サポートブラケット16の連結板21を支持する支持部材58と、遊びを設けて所定の位置範囲内にサポートブラケット16の側方位置を規制する一対の位置規制部材59とを備えている。一対の第1位置決め部材55,56と、一対の第2位置決め部材57と、支持部材58と、一対の位置規制部材59とは、治具本体53によって支持されている。
【0030】
図4を参照して、治具本体53は、ベース板60を含む。ベース板60は、互いに直交する第1方向X、第2方向Yおよび第3方向Zを含む。第3方向Zは、ベース板60の板厚方向である。
一対の第1支持部51,54は、ベース板60の一部である。一対の第1支持部51,54は、第1方向Xに間隔を隔てている。一方の第1位置決め部材55は、対応する第1支持部51によって第1方向Xに移動可能に支持されている。他方の第1位置決め部材56は、対応する第1支持部54によって第1方向Xに固定された状態で支持されている。一方の第1位置決め部材55は、一方の第1支持部51から第3方向Zに延びており、他方の第1位置決め部材56は、他方の第1支持部54から第3方向Zに延びている。
【0031】
一方の第1位置決め部材55は、ベース板60とは反対側の端部に位置決め部63を有する。位置決め部63は、第1方向Xと平行に延びる位置決め軸線C2と、位置決め軸線C2を中心とするテーパ面であって、他方の第1位置決め部材56側へ向かって縮径したテーパ面63aとを有する。
一方の第1支持部51は、対応する第1位置決め部材55に設けられた被案内部55aに係合して第1位置決め部材55を案内する案内部61を備える。案内部61は、たとえばガイド溝である。
【0032】
位置決め治具50は、一方の第1位置決め部材55を第1方向Xに駆動する駆動機構としての油圧シリンダ62をさらに備える。
油圧シリンダ62は、ベース板60に固定された固定部としてのシリンダ本体65と、第1位置決め部材55に連結され、第1方向Xに駆動される可動部としてのシリンダロッド64とを含む。シリンダロッド64は、一方の第1位置決め部材55のベース板60側の端部から下方に延設されたアーム66に連結されている。
【0033】
他方の第1位置決め部材56は、ベース板60とは反対側の端部に位置決め部67を有する。位置決め部67は、一方の第1位置決め部材55の位置決め部63と同じ位置決め軸線C2と、位置決め軸線C2とは直交する平坦な係止面68を含む。また、位置決め部67は、係止面68よりも一方の第1位置決め部材55側に突出する中心軸67aの周りに環状に配列され、位置決め軸線C2を中心として拡径可能な複数の爪状の拡径部69を含む。
【0034】
図5は、一対の第1位置決め部材55,56によってアウターチューブ12を位置決めした状態を示している。拡径部69は、拡径してアウターチューブ12の内周面12bに当接することによってアウターチューブ12を位置決めしている。油圧シリンダ62によって駆動された一方の第1位置決め部材55が第1方向Xに移動することで、アウターチューブ12は、一対の第1位置決め部材55,56同士の間に挟持される。この状態で、一方の第1位置決め部材55の位置決め部63のテーパ面63aは、軸方向(
図5では、第1方向Xと一致している)におけるアウターチューブ12の内周面12bの一端側に設けられたテーパ面12cに沿っている。拡径部69とテーパ面63aとによって第2方向Yおよび第3方向Zにおけるアウターチューブ12の位置が規制される。これにより、アウターチューブ12が調芯されて、位置決め軸線C2とアウターチューブ12の中心軸線C1とが一致する。
【0035】
また、アウターチューブ12の軸方向(
図5では、第1方向Xと一致している)における他方側の端面12dが係止面68と面接触している。テーパ面63aと係止面68とによって第1方向Xにおけるアウターチューブ12の位置が規制される。
図6を参照して、治具本体53に設けられた一対の第2支持部52は、対応する駆動機構としての油圧シリンダ80を介して、対応する第2位置決め部材57を、サポートブラケット16の対応する長孔22(
図7参照)に外側から押し込み可能に支持している。
【0036】
各油圧シリンダ80は、対応する第2支持部52を介してベース板60に固定された固定部としてのシリンダ本体74と、対応する第2位置決め部材57を支持し、シリンダ本体74によって駆動されることにより対応する第2位置決め部材57を押込方向(第2方向Yに相当)へ移動させて対応する長孔22(
図7参照)に押し込む押込部としてのシリンダロッド75とを含む。
【0037】
一対の第2位置決め部材57のそれぞれは、楔状であり、第2方向Yに互いに間隔を隔てている。
図7を参照して、一対の第2位置決め部材57(
図7では、一方の第2位置決め部材57のみを示してある)のそれぞれは、位置決め軸線C2と平行である平坦な位置決め面72と、位置決め面72に対して斜めに対向するように位置決め面72に対して傾斜する傾斜面73とを含む。一対の第2位置決め部材57は、板状の部材である。傾斜面73は、第2位置決め部材57が押込方向(第2方向Yに相当)に向かっての先細り状になる(板厚が次第に薄くなる)ように位置決め面72に対して傾斜している。
【0038】
このように、一対の第1位置決め部材55,56のそれぞれが対応する第1支持部51,54によって支持され(
図4参照)、一対の第2位置決め部材57のそれぞれが対応する第2支持部52によって支持される。これにより、一対の第2位置決め部材57の位置決め面72を含む平面Sと位置決め軸線C2との間の距離L2は、予め所定距離(チューブブラケットアッセンブリTBAの中心軸線C1と長孔22の第1長手縁部221との間の距離L1に相当)に設定されている。
【0039】
図7に示した状態から、一対の第2位置決め部材57が押込方向へ移動し、対応する長孔22に押し込まれることで、
図8に示すように、一対の第2位置決め部材57(
図8では一方の第2位置決め部材57のみを示してある)の傾斜面73が対応する長孔22の第2長手縁部222に当接する。この状態で、位置決め面72によって第1長手縁部221が、第1位置決め部材55,56によって位置決めされたアウターチューブ12の中心軸線C1と平行になるように、サポートブラケット16が位置決めされる。
【0040】
図6を参照して、一対の位置規制部材59は、第3方向Zに沿ってベース板60から位置決め軸線C2側へ延びている。一対の位置規制部材59のそれぞれは、第2方向Yに互いに間隔を隔てて対向する対向部70と、対応する第2位置決め部材57を押込方向にガイドするガイド孔71とを含む。
図9に示すように、一対の位置規制部材59の対向部70のそれぞれは、対向方向(第2方向Yに相当)に関して、一対の第2側板20の外側面20aのそれぞれに対向している。対向部70同士の間の距離H1は、サポートブラケット16の一対の第2側板20の外側面20a同士の間の距離H2よりも大きい。
【0041】
図6を参照して、支持部材58は、サポートブラケット16の連結板21を載置するための載置面78aを有する受け部材78と、受け部材78を支持する付勢部材79とを含む。
付勢部材79は、たとえば、弾性変形可能なコイルバネ等である。付勢部材79は、油圧シリンダやエアシリンダ等のアクチュエータであってもよい。
【0042】
ベース板60には、受け部材78を位置決め軸線C2側に突出させた状態で受け部材78を収容する収容孔77が形成されている。受け部材78は、所定距離L1の方向(第3方向Zに相当)に昇降可能に付勢部材79を介して治具本体53によって支持されている。
また、位置決め治具50は、受け部材78がサポートブラケット16を受けることによって受け部材78との間の距離が近付いたことを検知する近接センサ76をさらに含む。近接センサ76は、受け部材78と上下方向(第3方向Zに相当)対向するように収容孔77内に配置されている。
【0043】
図9に示すように、載置面78aに連結板21が載置されると、サポートブラケット16の自重によって付勢部材79が撓ませられるため、受け部材78が収容孔77内へ退避するように下降する。この状態で、受け部材78は、下降位置に位置しており、サポートブラケット16を支持している。また、付勢部材79は、受け部材78を介してサポートブラケット16を位置決め軸線C2側へ付勢する。また、近接センサ76は、受け部材78の接近に基づいて、受け部材78によって受けられたサポートブラケット16の存在を検知する。また、サポートブラケット16の載置により受け部材78が前記下降位置に下降した状態で、
図7に示すように、第1長手縁部221が位置決め面72を含む平面Sよりも下方に配置される。
【0044】
次に、
図3に示す位置決め治具50を用いて一対の第2側板20の第2端部202をアウターチューブ12の外周12eに溶接する溶接方法について説明する。
図10は、位置決め治具50を用いた溶接方法を概略的に示した図であり、(a)から(f)へ順に工程が進行する。
図10(a)を参照して、まず、サポートブラケット16の連結板21を受け部材78の載置面78aに載置する。これにより、サポートブラケット16の一対の第2側板20が対向部70同士の間に収まるので、一対の位置規制部材59によって遊びを設けて所定の位置範囲(距離H1と距離H2との差に相当)内に規制された状態で、サポートブラケット16が配置される。
【0045】
次に、
図10(b)に示すように、一方の第1位置決め部材55のテーパ面63aと他方の第1位置決め部材56の係止面68および拡径部69とによってアウターチューブ12の位置が規制される。これにより、一対の第1位置決め部材55,56によって、アウターチューブ12の中心軸線C1が一対の第1位置決め部材55,56の位置決め軸線C2に一致するようにアウターチューブ12が位置決めされる。
【0046】
次に、
図10(c)に示した一対の第2位置決め部材57を
図10(d)に示すように外側から長孔22に押し込む。これにより、
図8に示すように、傾斜面73が第2長手縁部222に当接した状態で、位置決め面72によって、第1長手縁部221がアウターチューブ12の中心軸線C1と平行になるように、サポートブラケット16が位置決めされる。
【0047】
次に、
図10(e)に示したように、サポートブラケット16の中心軸線C1と第1長手縁部221とが平行になった状態で、
図10(f)に示すように、サポートブラケット16における一対の第2側板20をアウターチューブ12の外周12eに溶接する。これにより、
図2に示すTBAが完成する。
本実施形態によれば、一対の第1位置決め部材55,56によって、アウターチューブ12の中心軸線C1が第1位置決め部材55,56の位置決め軸線C2に一致するようにアウターチューブ12が位置決めされる。また、楔状の各第2位置決め部材57が、対応する長孔22に押し込まれることにより、所定距離L1の方向に関して、アウターチューブ12に対するサポートブラケット16の位置が拘束される。その拘束状態で、各第2位置決め部材57の位置決め面72によって、対応する長孔22の第1長手縁部221とアウターチューブ12の中心軸線C1との両者が平行になり、両者間の距離L2が予め設定された所定距離L1になるようにサポートブラケット16が位置決めされる。この状態でアウターチューブ12に溶接されたサポートブラケット16においては、中心軸線C1に対する第1長手縁部221の位置精度を向上させることができる。
【0048】
また、仮に、一対の第2位置決め部材57によって位置決めされる前の一対の長孔22の一対の第1長手縁部221が同一平面S内に配置されていない場合でも、各長孔22に対応する第2位置決め部材57が押し込まれることで、一対の第1長手縁部221が同一平面内に配置されるようにサポートブラケット16が変形され、その変形状態に拘束される。
【0049】
また、一対の第2側板20の側方位置が一対の位置規制部材59によって遊びを持って所定の位置範囲(距離H1と距離H2との差に相当)内に規制される。そのため、各位置規制部材59が対応する第2側板20に対して、拘束力を及ぼすことがない。よって、各位置規制部材59が、一対の第2位置決め部材57によるサポートブラケット16の位置決めの拘束を邪魔することがない。
【0050】
また、受け部材78によってサポートブラケット16を受けた状態で、一対の第2側板20の長孔22の、第1長手縁部221が位置決め面72を含む平面Sよりも下方に配置される。このため、一対の第2位置決め部材57を対応する長孔22に押し込むことができる。
また、近接センサ76は、受け部材78によって受けられたサポートブラケット16の存在を、受け部材78の接近に基づいて検知することができる。
【0051】
また、他方の第1位置決め部材56の拡径部69が、一対の第1位置決め部材55,56の位置決め軸線C2を中心に拡径してアウターチューブ12の内周面12bに当接してアウターチューブ12の位置を固定するため、アウターチューブ12の中心軸線C1を位置決め軸線C2に一致させられる。
本発明は、各前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。