(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332693
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】不正開封防止機能を備えた密閉容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/04 20060101AFI20180521BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20180521BHJP
B65D 1/40 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
B65D43/04
B65D25/20 Z
B65D1/40
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-223704(P2014-223704)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-88561(P2016-88561A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】
植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−168400(JP,A)
【文献】
特開2002−179112(JP,A)
【文献】
特開2008−137694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00−55/16
B65D 1/40
B65D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開口部を形成する開口筒片(3)を上端に設けた有底筒状の容器本体(1)と、該容器本体(1)の上端開口部に密嵌入する筒壁(12)を頂壁(11)に垂下設した有頂短筒状の蓋本体(10)を有し、前記容器本体(1)に、前記開口筒片(3)を囲んで位置するリング体(6)を、破断除去し易い弱化部(8)を介して一体に設け、前記頂壁(11)の周端縁に、少なくとも一つのヒンジ片(13)を外側方に突き出す姿勢でヒンジにより連設し、前記蓋本体(10)の筒壁(12)を容器本体(1)の上端開口部に密嵌入組付けすると共に、前記ヒンジ片(13)を、弾力に逆らって垂下状に折り曲げた状態で、前記開口筒片(3)とリング体(6)の間に、係止により抜け出し不能に挿入組付けしたことを特徴とする不正開封防止機能を備えた密閉容器。
【請求項2】
ヒンジ片(13)を、頂壁(11)の両側端縁に対向させて設けた請求項1に記載の不正開封防止機能を備えた密閉容器。
【請求項3】
開口筒片(3)とリング体(6)の間からのヒンジ片(13)の係止による抜け出し不能を、前記開口筒片(3)の外周面に突設した係止突片(4)に対する、前記ヒンジ片(13)に設けた係止片(14)の下方からの乗り越え係止により達成した請求項1または2に記載の不正開封防止機能を備えた密閉容器。
【請求項4】
開口筒片(3)の外周面下端に鍔片(5)を周設し、該鍔片(5)の上面周端縁に弱化部(8)を介してリング体(6)を起立状に連設した請求項1〜3の何れか1項に記載の不正開封防止機能を備えた密閉容器。
【請求項5】
リング体(6)の一部に、外方に突き出て折れ曲がった摘み片(7)を設け、該摘み片(7)に近接したリング体(6)部分に、弱化部(8)の一部を縦断状に形成した請求項1〜4の何れか1項に記載の不正開封防止機能を備えた密閉容器。
【請求項6】
蓋本体(10)の頂壁(11)の後端縁に、ヒンジ(18)を介して補助蓋片(16)を一体設して蓋体(9)とし、前記補助蓋片(16)を、リング板状のリング頂板(17)と、該リング頂板(17)の両側端縁から前端縁にかけての部分から垂下設された側壁片(19)とで構成し、前記補助蓋片(16)の閉姿勢状態で、垂下状に折り曲げられたヒンジ片(13)に前記側壁片(19)が外側から当接する構成とした請求項1〜5の何れか1項に記載の不正開封防止機能を備えた密閉容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体が不正に開封されたことが一目でわかるような構造にした不正開封防止機能を備えた密閉容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルトやバター、ジャム等の食品を収容するのに適した蓋付きの広口密閉容器において、流通過程、特に店頭に並べられた状態で、容器の蓋が不正に開封され不正行為がなされて、蓋が閉められると、この不正を購入者が察知できない恐れがある。そこで、最初に開封しようとして蓋を開ける時には容器の一部が破断されて、開封されたことが一目で分かるようにして、容器の不正な開封を防止できるようにした不正開封防止機能を備えた密閉容器の従来技術として、実用新案登録第3022583号がある。
【0003】
この従来技術に示された技術は、上面に開口部を有する容器本体と、この容器本体に嵌合可能な蓋体とからなる合成樹脂製の密閉容器において、この蓋体を容器本体に嵌合した際に、この容器本体の外周上端部の上面と蓋体の上面とが略同面となるように形成され、且つ嵌合状態を解除して蓋体を容器本体から取り外すための摘み片が、蓋体の外周縁の少なくとも1カ所から垂下して構成したものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3022583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来技術にあっては、蓋体による容器本体の密閉は、容器本体の開口部上端面に形成された溝部に蓋体の突片を密嵌入させて達成されており、この溝部に対する突片の抜け出しは、摘み片に対する指先での引上げにより行うのであるが、摘み片に対する指先を引っ掛けての引き上げに十分な力を作用させ難く、摘み片による蓋体の開封操作が行い難い、と云う問題があった。また、この従来技術に開示された不正開封防止機能は、容器本体の開口部外周面に突出状に設けられた摘み片に、この摘み片を外側から離脱不能に覆う切取片を、容器本体に破断可能に一体設して構成されているため、この不正開封防止機能部分が、商品としての容器の側方に突出することになり、この不正開封防止機能部分が取扱い時に他の物品に引っ掛かるとか、この引っ掛かりにより、不正開封の有無を識別するための切取片が不要に破断離別して無くなる恐れがある、と云う問題があった。さらに、不正開封の有無の判断は、切取片の有無の確認、もしくは切取片の連結状態の確認が必要となるが、これらの確認は、切取片の有無が容器の外観体裁を大きく変化させることがないので、一瞥しただけで達成できるとは限らず、このため不正開封の有無の確認には、切取片の有無およびその状態を意識して観察する必要がある、と云う問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、不正開封防止機能部分の取扱いを安定的に達成できるようにすることを技術的課題とし、もって不正開封防止機能部分の明確で安定した作用を発揮させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の手段の主たる構成は、
上端開口部を形成する開口筒片を上端に設けた有底筒状の容器本体と、この容器本体の上端開口部に密嵌入する筒壁を頂壁に垂下設した有頂短筒状の蓋本体を有すること、
容器本体に、開口筒片を囲んで位置するリング体を、破断除去し易い弱化部を介して一体に設けること、
蓋本体の頂壁の周端縁に、少なくとも一つのヒンジ片を外側方に突き出す姿勢でヒンジにより連設すること、
蓋本体の筒壁を容器本体の上端開口部に密嵌入組付けすると共に、蓋本体のヒンジ片を、弾力に逆らって垂下状に折り曲げた状態で、開口筒片とリング体の間に、係止により抜け出し不能に挿入組付けすること、
にある。
【0008】
主にヨーグルトやバター、ジャム等の食品である内容物を収容した容器本体の開口筒片が形成する上端開口部に、筒壁を密嵌入させて蓋本体を組付けることにより、容器本体は密閉され、蓋本体を上端開口部から離脱させることにより、容器本体は開封される。
【0009】
リング体は、開口筒片を囲んで設けられることにより、開口筒片とリング体との間に、上方に開放する間隙を形成する。弾力に逆らって垂下状に折り曲げられたヒンジ片が、容器本体の上端開口部に対する蓋本体の筒壁の密嵌入組付けと同時に、開口筒片とリング体との間に形成された間隙に、係止により抜け出し不能に挿入組付けされることにより、容器本体は開封不能に密閉保持される。容器本体の密閉保持状態では、ヒンジ片はリング体により外側から押えられており、これによりヒンジ片の開口筒片に対する抜け出し不能な係止組付きが確保されている。
【0010】
この蓋本体による容器本体の密閉保持は、弱化部を破断してリング体が開口筒片の周囲から除去されない限り維持され、蓋本体の不正開封を防止する。すなわち、リング体とヒンジ片の組み合わせは、不正開封防止機能部分を形成することになる。リング体が開口筒片の周囲から除去されると、容器の上端部に鉢巻状に位置して目立つものであったリング体が無くなるので、このリング体の有無を一目で識別できる。また、リング体が除去されると、ヒンジ片はヒンジ結合部分の弾力により、外側方に突き出す姿勢に復帰するので、このヒンジ片の姿勢変化がきわめて目立つものとなる。
【0011】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、蓋本体のヒンジ片を、頂壁の両側端縁に対向させて設けた、ことを加えたものである。
【0012】
ヒンジ片を、頂壁の両側端縁に対向させて設けたものにあっては、容器本体に対する蓋本体の離脱不能な組付きを、蓋本体の両側部分で達成維持することになる。
【0013】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、容器本体の開口筒片とリング体の間からのヒンジ片の係止による抜け出し不能を、開口筒片の外周面に突設した係止突片に対する、ヒンジ片に設けた係止片の下方からの乗り越え係止により達成する、ことを加えたものである。
【0014】
開口筒片の外周面に係止突片を設けると共に、ヒンジ片に係止片を設けたものにあっては、開口筒片とリング体の間の間隙に対して、垂下姿勢に折り曲げたヒンジ片を上方からの押下げ挿入するだけで、ヒンジ片の係止片が開口筒片の係止突片を乗り越えて下方から係止し、容器本体に対する蓋本体の離脱不能な組付きを達成維持する。
【0015】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、開口筒片の外周面下端に鍔片を周設し、この鍔片の上面周端縁に弱化部を介してリング体を起立状に連設した、ことを加えたものである。
【0016】
鍔片に弱化部を介してリング体を起立連設したものにあっては、垂下状に折り曲げたヒンジ片が挿入係止する、開口筒片とリング体の間の隙間を形成する成形が、弱化部の構成を複雑にすることなく、簡単に実施することができる。
【0017】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、リング体の一部に、外方に突き出て折れ曲がった摘み片を設け、この摘み片に近接したリング体部分に、弱化部の一部を縦断状に形成した、ことを加えたものである。
【0018】
リング体の一部に摘み片を設けたものにあっては、容器表面から外方に突き出た摘み片を指先で摘んで引っ張ることにより、弱化部を簡単に破断して、リング体を容器本体から分離除去して、ヒンジ片に対するリング体の押え付けを解除する。
【0019】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、蓋本体の頂壁の後端縁に、ヒンジを介して補助蓋片を一体設して蓋体とし、補助蓋片を、リング板状のリング頂板と、このリング頂板の両側端縁から前端縁にかけての部分から垂下設された側壁片とで構成し、補助蓋片の閉姿勢状態で、垂下状に折り曲げられたヒンジ片に側壁片が外側から当接する構成とした、ことを加えたものである。
【0020】
蓋本体に補助蓋片を一体にヒンジ結合したものにあっては、不正開封防止機能が解除された後、すなわち容器が開封された後、補助蓋片が開いた状態では、この補助蓋片を利用して蓋体の開閉操作を行うことができる。また、補助蓋体が閉じた状態では、側壁片が、垂下状に折り曲がった姿勢のヒンジ片を外側から押える状態となるので、ヒンジ片の容器本体側に対する係止組付き状態を確保する。さらに、蓋本体に対して補助蓋片を少し浮き上げた状態では、リング頂板の窓孔に指先を引っ掛けて、そのまま引き上げることにより、補助蓋片を利用して蓋体を容器本体から容易に取り外して、容器本体の開封を達成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の不正開封防止機能を備えた密閉容器の主たる構成においては、リング体とヒンジ片により不正開封不能に容器を密閉保持できるので、容器の安全を確保することができる。また、リング体とヒンジ片による不正開封防止機能が解除されると、容器の上端部に鉢巻状に位置して目立つ存在であったリング体が無くなるので、このリング体の有無が識別し易く、これにより不正開封の有無を、簡単に判断することができる。さらには、ヒンジ片は、その弾力により、容器の外側方に突き出す姿勢に復帰するので、このヒンジ片の外側方への突き出しにより、容器の外観体裁の大きな変化し、これによっても不正開封の有無を、簡単に判断することができる。
【0022】
ヒンジ片を、頂壁の両側端縁に対向させて設けたものにあっては、容器本体に対する蓋本体の離脱不能な組付きを、蓋本体の両側部分で達成維持することになるので、不正開封防止作用をより強力にかつ確実に発揮することができる。
【0023】
開口筒片の外周面に係止突片を設けると共に、ヒンジ片に係止片を設けたものにあっては、容器本体に対する蓋本体の離脱不能な組付きの達成維持を、簡単な構造および操作で得ることができるので、簡単にかつ適切に実施することができる。
【0024】
鍔片に弱化部を介してリング体を起立連設したものにあっては、垂下状に折り曲げたヒンジ片が挿入係止する、開口筒片とリング体の間の隙間を形成する成形が、弱化部の構成を複雑にすることなく、簡単に実施することができるので、容器の製造実施が容易である。
【0025】
リング体の一部に摘み片を設けたものにあっては、ヒンジ片に対するリング体の押え付けを解除する操作が簡単なものとなるので、容器の取扱いが簡単となる。
【0026】
蓋本体に補助蓋片を一体にヒンジ結合したものにあっては、リング体を除去した後、補助蓋体が開いた状態では、補助蓋片を利用して蓋体の開閉操作を行うことができるので、蓋体の開閉操作が行い易い。また、補助蓋体が閉じた状態では、側壁片が、ヒンジ片の容器本体側に対する係止組付き状態を確保することになるので、開封後の容器の密閉確保を安定して達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態例の、全体平面図である。
【
図2】
図1中、A−A線に沿って切断矢視した、全体側縦断面図である。
【
図3】
図1中、B−B線に沿って切断矢視した、全体縦断面図である。
【
図4】
図1図示実施例における容器本体の、全体平面図である。
【
図5】
図1図示実施例における蓋体の、全体斜視図である。
【
図6】
図1図示実施例における、B−B線に沿って切断矢視した、閉状態の要部拡大縦断面図である。
【
図7】
図6に示した構造部分の、請求項1に対応した構成を示す要部拡大縦断面図である。
【
図8】
図1図示実施例における、B−B線に沿って切断矢視した、リング体除去後の開動作途中の要部拡大縦断面図である。
【
図9】
図1図示実施例の補助蓋片による開操作の、全体側縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の実施形態例の説明では、容器本体1に対して蓋体9が組付いた側を上方とし、また蓋本体10に対して補助蓋片16をヒンジ18で結合した側を後方とする。
【0029】
図1〜
図3は、一実施形態例の閉状態の全体図を示すもので、
図1は平面図、
図2は全体縦断側面図、
図3は全体縦断正面図である。本発明における容器は、ヨーグルト、バター、ジャム等の主に食品内容物を収容する用途を目的とするもので、内容物を収容する主体部分である容器本体1と、この容器本体1に着脱して開閉する蓋体9とから構成されている。
【0030】
容器本体1(以下、
図1、
図2、
図3参照)は、角部を丸く角取りした有底四角筒状をし、上方に拡径した筒壁を有する本体部2の上端に、短筒状をし、上方に開放する上端開口を形成する開口筒片3を延長して起立連設して構成されている。この開口筒片3の両側壁外面には、それぞれ横長の係止突片4(
図2、
図3、
図4参照)が突設されており、開口筒片3の外周面下端部には、鍔片5(
図2、
図3、
図4参照)が全周に亘って突周設されている。この鍔片5の上面周端縁には、破断し易い弱化部8(
図2、
図3、
図6、
図7参照)を介してリング体6が全周に亘って起立姿勢で一体に連設されている。このリング体6の後側中央部には、外方に突き出して周方向に折れ曲がった摘み片7(
図1、
図2、
図4参照)が一体設されているが、この摘み片7の自由端(
図1、
図4参照)は、摘み片7の妄りな変位を抑制する破断し易い連結片でリング体本体部分に結合されており、また摘み片7を一体に突き出し連設したリング体7の側近部分には、弱化部8の一部(
図4参照)が、溝状となってリング体7を上下方向に縦断している。
なお、摘み片7は、リング体6に切欠きやスリットを形成して摘み部としても良く、形状は限定されない。
【0031】
蓋体9(以下、
図1、
図2、
図3、
図5参照)は、蓋本体10と補助蓋片16とから構成されている。蓋本体10は、中央部分を角形状に膨出させ、角部を丸く角取りした四角板体の下面周端付近部分から、開口筒片3が形成する容器本体1の上端開口部に密嵌入する短筒片状の筒壁12
図2、
図3、
図5、
図6、
図7、
図8、
図9参照)を垂下設し、頂壁11の左右両側端縁中央部から、ヒンジ片13(
図2、
図3、
図5、
図6、
図7、
図8、
図9参照)を、それぞれ外側方に突き出す姿勢で、一体にヒンジ連結されている。このヒンジ片13の下面には、容器本体1の係止突片4に、下方から乗り越え係止する横長な係止片14(
図2、
図3、
図4、
図5、
図6、
図7、
図8、
図9参照)が突設されている。さらに、頂壁11の両角部を含む後端縁からは垂下壁片15(
図2、
図5、
図9参照)が垂下設されている。蓋体9は、
図5に示した状態で射出成形されるので、蓋本体10の頂壁11の左右両側端縁から外方にヒンジ結合部分を介して延出設されている。それゆえ、リング体6および側壁片19が外側に位置していない状態では、
図3、
図6、
図7に破断線で示すように、弾力により成形時の状態、すなわち外方に突き出た姿勢となる。なお、
図7は、補助蓋片16を設けない場合の、開口筒片3とリング体6とヒンジ片13との、閉姿勢時の組付き構成を示すもので、請求項1の構成に対応している。
【0032】
また、補助蓋片16(主に、
図5参照)は、中央に、頂壁11の中央の膨出部分が嵌り込み状に位置する(
図2、
図3、
図9参照)ことができる開放部を有する、角部を丸く角取りしたリング平板状のリング頂板17を有し、このリング頂板17の後端縁を、頂壁11の後端縁にヒンジ18で一体に連結し、リング頂板17の両側端縁から前側端縁にかけての部分から、垂下壁片15と略高さの等しい側壁片19を垂下設して構成されている。それゆえ、容器の閉状態では、側壁片19が、垂下姿勢となっている両ヒンジ片13を含めて、開口筒片3の前側壁部分から両側壁部分の外側を覆う(
図2、
図3、
図6、
図8参照)ことになる。
【0033】
このように、容器は、容器本体1と蓋体9の組み合わせで構成されているのであるが、この容器における不正開封防止機構は、リング体6とヒンジ片13で構成されている。この不正開封防止機構は、補助蓋片16が設けられている場合には、容器の上端部に鉢巻状に位置していたリング体6の有無により、既に開封されたものであるか否かを判断することができ、また補助蓋片16が設けられていない場合には、リング体6の有無に加えて、ヒンジ片13の突き出しの有無により、既に開封されたものであるか否かを判断することができる。
なお、補助蓋片16が閉じた状態の蓋体9を開口筒片3に組付けた状態では、蓋体9ヒンジ片13、垂下壁片15そして側壁片19は、開口筒片3とリング体6との間に位置している。
【0034】
容器は、容器本体1の上端開口部に蓋体9の筒壁12を密嵌入させることにより、密封状態(
図2、
図3参照)となるが、この密封状態は、ヒンジ片13がその係止片14を係止突片4に係止させていることにより確保されている。蓋体9が補助蓋片16を設けて構成した場合、容器の密封状態では、垂下姿勢に折り曲げられたヒンジ片13の外側には側壁片19が位置(
図3、
図6参照)している。このため、容器を開封すべくリング体6を除去しただけの状態では、ヒンジ片13は側板片19で抑えられて、弾力により外側に突き出る姿勢に変位することができず(
図8参照)、不正開封防止機能はリング体6の有無だけにより発揮されることになる。
【0035】
これに対して、蓋体9が蓋本体10だけで構成した場合、容器の密封状態では、垂下姿勢に折り曲げられたヒンジ片13の外側にはリング体6だけが位置して(
図7参照)いる。このため、容器を開封すべくリング体6を除去すると、ヒンジ片13の外側は開放された状態となり、ヒンジ片13はその弾力により外側に突き出る姿勢に変位する(
図8参照)ので、不正開封防止機能はリング体6の有無と、このヒンジ片13の突き出し変位とにより発揮されることになる。
【0036】
蓋体9は、その筒壁12を、容器本体1の上端開口部に密嵌入させること、この筒壁12を容器本体1の上端開口部から強引に離脱させる際に、ある程度の撓み変形が要求されること、ヒンジ片13および補助蓋片16を一体にヒンジ連設すること等に対応して、成形合成樹脂材料としてはポリプロピレン樹脂等が適している。
【0037】
次に、蓋体9を蓋本体10と補助蓋片16の組み合わせで構成した場合における容器の開封操作を説明する。
図2および
図3に示した容器の封止状態から、摘み片7を指先で摘んで外方に引っ張って弱化部8を破断しながら除去する。この状態では、ヒンジ片13の外側に補助蓋片16の側壁片19が位置しているので、ヒンジ片13は弾力により外方に突き出る姿勢に変位することができず、その係止片14を係止突片4に係止させたままであるので、蓋本体10を容器本体1から離脱させて、容器本体1を開封することはできない。
【0038】
この状態から、補助蓋片16のリング頂板17の窓部から露出した頂壁11部分を指先で押えながら、他の指先で補助蓋片16の前側端縁を引き上げて、蓋本体10に対して補助蓋片16を揺動離脱(
図8、
図9参照)させて、蓋本体10に対する補助蓋片16の外装組付きを解除すると、ヒンジ片13の外側には側壁片19が位置しなくなるので、ヒンジ片13は、その弾力により外方に突き出る姿勢に搖動復帰して、その係止片14の係止突片4に対する係止を解除する。この係止突片9と係止片14との係止解除により、容器本体1に対する蓋体9の離脱が可能となったので、補助蓋片16もしくはヒンジ片13を持って、容器本体1に対して蓋本体10を引き上げ、この蓋本体10の引き上げにより、容器本体1の上端開口に対する筒壁12の密嵌入を解除し、容易に容器本体1の開封を達成する。
【0039】
開封された容器の再密封状態への復帰は、容器本体1の上端開口部に筒壁12を密嵌入させてから、両ヒンジ片13を垂下姿勢にして係止突片9と係止片14を係止させた状態で、蓋本体10に補助蓋片16を覆い被せて達成される。この蓋本体10に対する補助蓋片16の覆い被せ状の組み付けにより、係止突片9と係止片14の係止は、側壁片19により維持されるので、蓋体9による容器本体1の再密封は安定して強固に維持される。
【0040】
なお、容器本体1に対する蓋体9の組付き状態を補強すべく、開口筒片3の外周面後側と、蓋本体10の垂下壁片15の内側面との間、および開口筒片3の外周面前側と、補助蓋片16の側壁片19の前側壁の内側との間のそれぞれに、係止し合う、横長の係止突条部分で構成されるアンダーカット結合部分(
図2参照)を設けると良い。
【0041】
以上、実施形態例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態例に限定されるものではない。例えば、ヒンジ片13は頂壁11の両側端縁に加えて、前側端縁にも設けても良く、少なくとも一つ設けてあればよい。また補助蓋片16の側壁片19をヒンジ片13の外側に位置しない構成とし、リング体6の除去によりヒンジ片13の突き出しが可能となるようにしても良い。また、容器本体1を有底円筒状に構成し、これに対応して蓋体9の頂壁11およびリング頂板17を円板状に構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の不正開封防止機能を備えた密閉容器は、リング体の除去前と除去後の容器の外観体裁がきわめて大きく変化して、その外観体裁の変化が一目で認識させられるので、高い不正開封防止機能を発揮することができ、不正開封防止機能を備えた密閉容器として広い分野での適用を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ;容器本体
2 ;本体部
3 ;開口筒片
4 ;係止突片
5 ;鍔片
6 ;リング体
7 ;摘み片
8 ;弱化部
9 ;蓋体
10;蓋本体
11;頂壁
12;筒壁
13;ヒンジ片
14;係止片
15;垂下壁片
16;補助蓋片
17;リング頂板
18;ヒンジ
19;側壁片