(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水素供給源(1)と車両(20)のタンク(21)に水素を充填するための充填ホース(2)と該充填ホース(2)に接続された充填ノズル(3)を有する水素充填装置において、前記水素供給源(1)に充填される水素ガスの温度を低下させるための冷却装置(6)に接続され、該冷却装置(6)は水素供給管(5)を介して水素充填を中止する水素充填中止機構(4)に接続され、該水素充填中止機構(4)に前記充填ホース(2)が接続されており、前記冷却装置(6)の下流側の水素供給管(5)には水素供給配管温度計測装置(8)と水素供給配管圧力計測装置(9)が設けられ、他方車両(20)のタンク(21)には車両タンク内温度計測装置(23)が設けられ、前記水素供給配管温度計測装置(8)および前記水素供給配管圧力計測装置(9)に接続された制御装置(10)を設け、該制御装置(10)には通信装置(25)を介して前記車両タンク内温度計測装置(23)が接続されており、車両タンク内温度計測装置(23)からのデータは所定のサイクル毎に制御装置(10)に送信され、前記制御装置(10)は前記水素供給配管温度計測装置(8)と前記水素供給配管圧力計測装置(9)と前記車両タンク内温度計測装置(23)からの信号で前記冷却装置(6)および前記水素充填中止機構(4)を制御するものであり、該制御装置(10)は、充填率が100%となる圧力のしきい値と車両タンク内温度との特性およびタンク内温度作動限界(θ)が記憶されている記憶装置(14)と、前記車両タンク内温度計測装置(23)からの計測信号と記憶装置(14)における前記特性に基づいて充填率が100%となる圧力のしきい値を決定する圧力しきい値決定ブロック(11)と、前記水素供給配管圧力計測装置(9)の計測信号から推定した車両タンク内の圧力と前記圧力しきい値決定ブロック(11)で決定された前記しきい値とを比較する充填圧力比較ブロック(12)と、前記充填圧力比較ブロック(12)における比較結果を受信し且つ前記水素供給配管圧力計測装置(9)の計測信号から推定した車両タンク(21)内圧力と充填終了圧力とを比較する終了圧力比較ブロック(13)を備え、そして制御装置(10)は各制御サイクル毎に前記通信装置(25)を介して車両タンク内温度計測装置(23)の計測信号を受信したか否かを判断し(S4)、受信していれば車両タンク内の温度データを取得し(S5)、取得した車両タンク内温度データに対応する充填率100%となる圧力を算出し(S6)、当該制御サイクルにおける水素供給配管圧力計測装置(9)の計測結果から車両タンク内の圧力を推定し(S7)、前記推定した車両タンク内の圧力と前記充填率100%となる圧力のしきい値とを比較し(S8)、車両タンク内の圧力が充填率100%となる圧力のしきい値以上であれば水素充填中に異常ありと判断し(S9)、車両タンク内の圧力が充填率100%となる圧力のしきい値以下の場合には車両タンク内の圧力と記憶装置(14)から取り込まれ且つ前記充填率100%となる圧力よりも低圧な充填終了圧力と比較し(S11)、車両タンク内の圧力が該充填終了圧力以上となった場合は水素充填が正常に終了と判断し(S12)、車両タンク内の圧力が充填終了圧力に達しない場合は車両タンク内温度計測装置(23)の計測結果を受信したか否かの判断(S4)に戻り、水素充填を継続する機能を有していることを特徴とする水素充填装置。
【背景技術】
【0002】
図5で示すように、燃料電池自動車300の燃料タンク301へ水素を充填する水素供給設備では、水素供給(充填)装置200から水素充填ホース201、水素充填ノズル202を介して、車両の燃料タンク301内に水素が充填される。充填に際しては、水素充填ノズル202は
図5では図示しない車両側のコネクタと一体的に結合されている。
水素供給(充填)装置200は、水素供給配管(
図5では図示せず)を介して水素供給源(
図5では図示せず)と連通しており、その内部には車両側に供給される水素を冷却する冷却装置(
図5では図示せず:例えば、特許文献1参照)が内蔵されている。
【0003】
燃料電池自動車の燃料タンクへ水素を充填するための規格では、充填率(SOC)を管理することが求められている。
係る規格に対応するため、従来技術では、燃料電池自動車の燃料タンク内の温度と圧力を計測し、計測された温度と圧力からその時点(制御サイクル)における水素の圧縮係数と密度を求めている。そして、燃料タンク内の圧力70MPa、温度15℃の密度(40.2g/L)を充填率100%として、水素の充填中に充填率100%に到達した場合に、水素充填を停止している。
ここで、計測された温度と圧力からその時点(制御サイクル)における水素の圧縮係数を求める演算は非常に複雑であり、高度な演算機能を有する情報処理機器が必要となる。
しかし、水素供給設備に高度な演算機能を有する情報処理機器を設置することは困難である。一方、一般的なレベルの演算機能を有する情報処理機器を備えた水素供給設備では、水素充填の制御に際して、制御機構に大きな負荷を強いることになり、水素供給設備の稼動に悪影響を及ぼしてしまう。
【0004】
その他の従来技術として、水素が車両タンクに入る以前の段階で冷却する技術が存在する(特許文献1参照)。
しかし、係る技術においても、制御サイクル毎に密度を演算する必要があるため、水素供給装置の制御機構に大きな負荷が掛かるという上述の問題を解消してはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、制御機構に大きな負荷が掛かけることなく、水素充填中に充填率100%に到達した場合に水素充填を確実に停止することが出来る水素充填装置及び充填方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、充填率100%となった際の圧力と、その時点における温度の間には、相関関係があることに着目した。
本発明は係る知見に基づいて創作された。
【0008】
本発明
の水素充填装置は、水素供給源(1)と車両(20)のタンク(21)に水素を充填するための充填ホース(2)と該充填ホース(2)に接続された充填ノズル(3)を有する水素充填装置において、前記水素供給源(1)に充填される水素ガスの温度を低下させるための冷却装置(6)に接続され、該冷却装置(6)は水素供給管(5)を介して水素充填を中止する水素充填中止機構(4)に接続され、該水素充填中止機構(4)に前記充填ホース(2)が接続されており、前記冷却装置(6)の下流側の水素供給管(5)には水素供給配管温度計測装置(8)と水素供給配管圧力計測装置(9)が設けられ、他方車両(20)のタンク(21)には車両タンク内温度計測装置(23
)が設けられ、前記水素供給配管温度計測装置(8)および前記水素供給配管圧力計測装置(9)に接続された制御装置(10)を設け、該制御装置(10)には通信装置(25)を介して前記車両タンク内温度計測装置(23
)が接続されており
、車両タンク内温度計測装置(23
)からのデータは所定のサイクル毎に制御装置(10)に送信され、前記制御装置(10)は前記水素供給配管温度計測装置(8)と前記水素供給配管圧力計測装置(9)と前記車両タンク内温度計測装置(23
)からの信号で前記冷却装置(6)および前記水素充填中止機構(4)を制御するものであり、該制御装置(10)は、充填率が100%となる圧力のしきい値と車両タンク内温度との特性およびタンク内温度作動限界(θ)が記憶されている記憶装置(14)と、前記車両タンク内温度計測装置(23)からの計測信号と記憶装置(14)における前記特性に基づいて充填率が100%となる圧力のしきい値を決定する圧力しきい値決定ブロック(11)と、前記
水素供給配管圧力計測装置(9)の計測信号から推定した車両タンク内の圧力と前記圧力しきい値決定ブロック(11)で決定された前記しきい値とを比較する充填圧力比較ブロック(12)と、前記充填圧力比較ブロック(12)における比較結果を受信し且つ前記
水素供給配管圧力計測装置(9)の計測信号から推定した車両タンク(21)内圧力と充填終了圧力とを比較する終了圧力比較ブロック(13
)を備え、そして制御装置(10)は各制御サイクル毎に前記通信装置(25)を介し
て車両タンク内温度計測装置(23
)の計測信号を受信したか否かを判断し(S4)、受信していれば車両タンク内の温度データを取得し(S5)、取得した車両タンク内温度データに対応する充填率100%となる圧力を算出し(S6)、当該制御サイクルにおける
水素供給配管圧力計測装置(9)の計測結果から車両タンク内の圧力を
推定し(S7)、前記
推定した車両タンク内の圧力と前記充填率100%となる圧力のしきい値とを比較し(S8)、車両タンク内の圧力が充填率100%となる圧力のしきい値以上であれば水素充填中に異常ありと判断し(S9)、車両タンク内の圧力が充填率100%となる圧力のしきい値以下の場合
には車両タンク内の圧力と記憶装置(14)から
取り込まれ且つ前記充填率100%となる圧力よりも低圧な充填終了圧力と比較し(S11)、車両タンク内の圧力が該充填終了圧力以上となった場合は水素充填が正常に終了と判断し(S12)、車両タンク内の圧力が充填終了圧力に達しない場合は
車両タンク内温度計測装置(23)の計測結果を受信したか否かの判断(S4)に戻り、水素充填を継続する機能を有している。
【発明の効果】
【0009】
上述の構成を具備する本発明によれば、充填中の各瞬間あるいは各制御サイクル(例えば、100msec毎に行われる制御サイクル)において、車両タンク(21)の温度を計測し、その温度に対応する「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を求め、その瞬間あるいは制御サイクルにおける車両タンク内圧力と、「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」とを比較し、車両タンク内圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」以下である場合に、水素の充填を行なっている。そして本発明によれば、車両タンク内圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を超えた場合には、直ちに充填を中止している。
そのため本発明によれば、水素の充填中、安全な水素充填を行うことが出来る領域(
図1の特性βよりも下方の領域で、且つ、タンク内温度作動限界θよりも右側の領域)を外れてしまうことはない。
【0010】
本発明において、車両タンク内圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」以下の状態を保持したまま、充填終了圧力(終了圧力)に到達したならば、水素充填が正常に終了したと判断して、水素充填終了に必要な所定の処理を行うことが出来る。
すなわち本発明によれば、水素の充填中、安全な水素充填を行うことが出来る領域(
図1の特性βよりも下方の領域で、且つ、タンク内温度作動限界θよりも右側の領域)を外れてしまうことがなく、水素充填を安全に終了させることが出来る。
【0011】
ここで、「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」は、制御サイクル毎に、車両タンク内温度の計測結果より、予め決定された特性(例えば、
図1の特性β:車両タンク内温度−「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」特性)、テーブル(車両タンク内温度と「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」との関係を表示するテーブル、表)、数式(車両タンク内温度と「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」との関係を表示する数式)を用いて、容易に演算、決定することが出来る。
そして、制御サイクル毎に決定された「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」と車両タンク内圧力とを比較すれば、その制御サイクルにおいて水素充填を続行するか否かを判断することが出来る。
そのため本発明によれば、従来技術における密度演算のような複雑を演算を行う必要が無く、制御装置(10)に多大な負担を掛けてしまう情報処理は行なわれず、その結果、水素充填の制御や設備に悪影響を及ぼしてしまうこともない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に
図1を参照して、図示の実施形態における作動原理を説明する。
図1は「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)−温度特性」を示している。
図1において、横軸は車両タンク内温度、縦軸は圧力を示している。上述した様に、充填率100%(燃料タンク内の圧力70MPa、温度15℃の密度が40.2g/L)となる圧力と車両タンク内温度との間には相関関係があり、当該相関関係は
図1では特性βとして示されている。
図1において、符号θは、車両タンク内温度の許容限界値であるタンク内温度作動限界(
図1では符号θで示す:例えば85℃)を示している。
図1において、特性βよりも下方の領域であり、且つ、タンク内温度作動限界θ(例えば85℃)よりも左側の領域(
図1において、ラインマーカーの点線で囲った領域α)の範囲内であれば、安全に水素を充填することが出来る。
【0014】
図1における特性δ及び特性εは、水素充填特性の例示である。
特性δで示す水素充填においては、充填中、特性βよりも下方の領域で且つタンク内温度作動限界θよりも左側の領域を外れてしまうことはなく、特性βで示す充填率100%に対応する圧力まで到達して、終了する。すなわち特性δで示す水素充填により、安全な水素充填が行われる。
一方、特性εで示す水素充填では、符号εεで示す領域において、圧力が特性線βを超過している。すなわち、特性εで示す水素充填では、領域εεに入った時点で充填率100%に対応する圧力を越えてしまっており、領域εεに入った時点で充填率100%を超過しているので、水素充填が中止されている。
【0015】
水素充填において、充填中の各瞬間あるいは各制御サイクル(例えば、100msec毎の制御サイクル)において、車両タンク内の温度が計測されていれば、その計測結果と
図1の特性βから、当該瞬間あるいは制御サイクルにおける「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を求めることが出来る。
ここで、特性β(温度−圧力のしきい値特性)のみならず、車両タンク内温度の計測結果と「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」の関係(特性)を示すテーブル(図示せず)や数式から、「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を求めることが可能である。
なお、温度と「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」との特性βは例示であり、
図1の特性線に限定されるものではない。同様に、温度と「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」との関連を示すテーブル(図示せず)や数式も、種々の条件によりケース・バイ・ケースに決定されるべきである。
【0016】
「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を求めたならば、次にその瞬間あるいは制御サイクルにおける車両タンク内圧力と、「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」とを比較する。
その結果、車両タンク内圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」以下であれば、特性δで示す水素充填と同様に、安全な範囲内で充填がされていると判断される。従って、さらに水素充填を継続することが出来る。
一方、車両タンク内圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を超えた場合(例えば、特性εで示す領域εεに入った場合)、安全に水素充填を出来る領域から外れたと判断して、充填を中止する。
【0017】
図1を参照して上述した様に、図示の実施形態における制御では、制御サイクル毎に、当該制御サイクルにおける車両タンク内温度に対応する「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を決定し、当該制御サイクルにおける車両タンク内圧力と「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を比較し、車両タンク内圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」以下であれば充填を続行し、車両タンク内圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を越えていれば充填を中止するようにしている。
これにより、領域α(安全に水素が充填できる領域)内でのみ、水素充填を行うことが可能になる。
ここで、上述した水素充填における制御では、「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」は、充填中(制御サイクル毎に)、常に変動する。図示の実施形態では、当該変動するしきい値と、車両タンク内圧力とを比較して、充填を続けるべきであるか中止するべきであるかを判断する。
【0018】
次に
図2〜
図4を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態の概要を示している。
図2において全体を符号100で示す水素充填装置は、水素供給源1(水素タンク)、充填ホース2(水素充填ホース)、充填ノズル3(水素充填ノズル)、水素充填中止機構4(例えば、開閉弁)、制御装置10、表示装置7を有している。水素供給源1と充填ホース2とは水素供給配管5により連結されている。
【0019】
図2の水素充填装置100は、水素充填が正常に終了した際の終了処置を実行するための水素充填終了機構(35:
図3参照)を有しているが、当該水素充填終了機構は、
図2では示されていない。
制御装置10と水素充填中止機構4とは、制御信号ラインSo1で接続され、制御装置10と表示装置7とは制御信号ラインSo2で接続される。
図2において、符号6は、水素供給配管5に設けた適用可能な公知の冷却装置を示し、制御装置10と制御信号ラインSo3で接続される。冷却装置6は、車両タンク21が充填される際に、充填される水素ガスの温度を低下する機能を有している。
【0020】
図2において、全体を符号20で示す車両には、水素充填装置100から供給された水素を貯蔵する車両タンク21、車両タンク内温度計測装置(車両タンク内温度センサ)23及び車両タンク内圧力計測装置(車両タンク内圧力センサ)24が設けられている。
車両タンク内温度計測装置23は、車両タンク21内の温度を計測し、入力信号ラインSi1及び通信装置25を介して、水素充填装置100の制御装置10に伝送する。
車両タンク内圧力計測装置24は、車両タンク21内の圧力を計測し、入力信号ラインSi2及び通信装置25を介して、水素充填装置100の制御装置10に伝送する。
車両20には車両タンク21用のコネクタ22が設けられており、コネクタ22は水素充填装置100の充填ノズル3と連結される。
【0021】
図2〜
図4の第1実施形態では、車両側の各種パラメータを外部(図示の実施形態では水素充填装置100の制御装置10)に伝送する車両通信機能を備えている。通信装置25は車両通信機能を実行するための部材であり、水素充填装置100と車両側との情報伝達を担っている。
換言すれば、車両通信機能により、車両タンク内温度計測装置23及び車両タンク内圧力計測装置24の計測結果が、水素充填装置100の制御装置10に直接入力される。そのため、水素充填装置100の制御装置10は、車両タンク21内の温度データ、圧力データを直接取得することができる。
【0022】
水素供給源1に貯蔵されている水素は、水素供給配管5により、水素充填中止機構4、充填ホース2を流過し、充填ノズル3、車両側コネクタ22を介して、車両タンク21内に供給される。
車両タンク21へ水素充填(供給)を行う際に、制御装置10は、水素充填中止機構4の作動を制御し、安全で適切な水素充填を行う機能を奏する(
図3、
図4)。
水素充填中止機構は、「開」の状態で水素充填を継続し、「閉」の状態で水素充填を中止する機能を有している。
表示装置7は、各種パラメータを表示する機能を有しており、例えば、車両タンク内の温度、圧力データ、充填の継続・中止の判断結果、等を表示する。
【0023】
図2において、水素充填装置100の水素供給配管5には、水素供給配管温度計測装置8(供給配管温度センサ)と、水素供給配管圧力計測装置9(供給配管圧力センサ)を介装している。そして、水素供給配管温度計測装置8は供給配管5内の温度を計測し、その計測結果を入力信号ラインSi28により制御装置10に伝送する。
水素供給配管圧力計測装置9は供給配管5内の圧力を計測し、その計測結果を入力信号ラインSi29により制御装置10に伝送する。
【0024】
水素供給配管温度計測装置8、水素供給配管圧力計測装置9、入力信号ラインSi28、Si29は、水素充填装置100における水素供給配管5の温度、圧力から、車両タンク内温度及び車両タンク内圧力の推定値を求め、当該推定値に基づいて制御を行うために設けられている。
すなわち、予め(車両20に水素を充填する以前の段階で)、水素充填装置100の水素供給配管5の温度と車両タンク内温度との関係(特性)と、水素充填装置100の水素供給配管5の圧力と車両タンク内圧力との関係(特性)を、特性線、テーブル、数式等で決定する。
そして、当該予め決定された関係に基づいて、水素充填装置100の水素供給配管5の温度から車両タンク21内の温度を決定(推定)し、水素充填装置100の水素供給配管5の圧力から車両タンク21内の圧力を決定(推定)する。
そして、決定(或いは推定)されたタンク内温度から、
図1の特性β、テーブル(図示せず)或いは特性を用いて「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を決定する。そして当該圧力しきい値と決定(推定)されたタンク内圧力を比較して、そのサイクルにおける水素充填は、安全に水素充填が出来る状態で行なわれているか否かを判断できる。
例えば、水素充填装置100側の車両通信機能及び/又は車両20側の車両通信機能が故障した場合や、車両通信機能がない車両に水素充填を行う場合には、制御装置10が車両タンク21内の温度データ、圧力データを取得することが出来ない。そのような場合には、水素供給配管温度計測装置8、水素供給配管圧力計測装置9で計測した水素供給配管5の温度、圧力から、車両タンク内温度及び車両タンク内圧力の推定値を求め、当該推定値に基づいて制御を行なう。
なお、水素供給配管温度計測装置8、水素供給配管圧力計測装置9、入力信号ラインSi28、Si29は省略することが可能である。
【0025】
図3を参照して、制御装置10を説明する。
図3において全体を符号10で示す制御装置は、圧力しきい値決定ブロック11、充填圧力比較ブロック12、終了圧力比較ブロック13、記憶装置14、入力側インターフェイス15及び出力側インターフェイス16を備えている。
図3は機能ブロック図であり、制御装置10は例えばPC等で構成されている。そして、制御装置10内は各ブロック毎に物理的に仕切られていても良いし、物理的な仕切りが存在しない状態であっても良い。
【0026】
記憶装置14には、特性β、すなわち「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」と車両タンク内温度との特性が記憶されている。また、記憶装置14には、タンク内温度作動限界θ(例えば85℃)が記憶されている。
また記憶装置14には、水素充填が正常に終了したか否かを判断するための充填終了圧力(終了圧力)が記憶されている。
なお、上記の特性βに代えて、温度と「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」との関係(特性)を示すテーブル(図示せず)あるいは数式を、記憶装置14に記憶させることも可能である。
【0027】
車両タンク内温度計測装置23(車両タンク内温度センサ)と車両タンク内圧力計測装置24(車両タンク内圧力センサ)からの計測信号は、それぞれ信号ラインSi1と、Si2と入力側インターフェイス15を介して、制御装置10に送信される。
制御装置10に入力された車両タンク内温度計測装置23の計測結果は、圧力しきい値決定ブロック11に送信される。
圧力しきい値決定ブロック11では、車両タンク21内の温度の計測結果と、記憶装置14から取り込んだ特性βに基づいて、車両タンク内温度計測装置23の計測結果を取り込んだ制御サイクルにおける「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を決定し、その結果を充填圧力比較ブロック12に送信する機能を有する。
【0028】
制御装置10に入力された車両タンク内圧力計測装置(車両タンク内圧力センサ)24の計測結果は、充填圧力比較ブロック12及び終了圧力比較ブロック13に送信される。
充填圧力比較ブロック12では、車両タンク21内の圧力の計測結果と、圧力しきい値決定ブロック11から送信された「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」と比較する。そして、車両タンク21内の圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を超えた場合に、水素充填を中止する旨の制御信号を、信号ラインSo1及び出力側インターフェイス16を介して、水素充填中止機構4に送信する。
一方、車両タンク21内の圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」以下であれば、その旨の比較結果を終了圧力比較ブロック13に送信する。
【0029】
終了圧力比較ブロック13では、充填圧力比較ブロック12における「車両タンク21内の圧力が充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)以下である」旨の比較結果を受信する。それと共に、車両タンク21内の圧力の計測結果を受信して、記憶装置14から取込んだ充填終了圧力(終了圧力)と比較する。
そして、当該比較結果に基づき、車両タンク21内の圧力が充填終了圧力(終了圧力)に達した場合に、水素充填を終了する旨の制御信号を、信号ラインSo4及び出力側インターフェイス16を介して、水素充填終了機構35に発信する。
【0030】
次に主として
図4を参照して、
図1、
図3をも参照しつつ、第1実施形態における水素充填の制御を説明する。
図4のステップS1では、水素充填装置100側の充填ノズル(水素充填ノズル)3を車両側の車両タンクのコネクタ22に接続させ、水素供給源1から車両タンク21に水素ガスの充填(供給)が可能な状態にする。その際に、車両通信を成立させて、車両タンク21に関するデータ(例えば、温度データや圧力データ)を取得する。そしてステップS2に進む。
なお、車両通信により通信される前記車両からのデータは、所定の制御サイクル毎に(例えば、100msec毎に)、車両20から制御装置10へ送信される。
【0031】
ステップS2では車両タンク21の容量、初期圧力、外気温度から昇圧率、充填停止圧力を設定し、ステップS3で車両タンク21への水素充填を開始する。そしてステップS4に進む。
ステップS4では、制御装置10は、車両通信機能により取得した車両タンク内温度計測装置23の計測結果(車両タンク内温度)や、車両タンク内圧力計測装置24の計測結果(車両タンク内圧力)を受信したか否かを判断する。
車両タンク内温度、車両タンク内圧力を受信していれば(ステップS4が「YES」)ステップS5に進む。受信していない場合には(ステップS4が「NO」)には、ステップS4が「NO」のループを繰り返す。
【0032】
ステップS5では、制御装置10は車両タンク内温度データを取得する。
続くステップS6では、ステップS5で取得した車両タンク内温度データに対応する「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を、その制御サイクルにおける圧力のしきい値として、特性βを参照して求める。
ここで、特性ベータを用いることなく、図示しないテーブルや数式から、車両タンク内温度と「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を求めてもよい。
【0033】
ステップS7では、制御装置10が、当該制御サイクルにおける車両タンク内圧力計測装置(車両タンク内圧力センサ)24の計測結果である車両タンク内の圧力データを取得する。
なお、ステップS7は、ステップS5の前でも、ステップS5とステップS6の間でも良い。さらに、ステップS5とステップS7を同時に行なってもよい。
【0034】
次のステップS8では、ステップS7で取得した車両タンク内の圧力(計測値)と、ステップS6で求めた「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」とを比較する。
「車両タンク内の圧力」が、「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を超えた場合は(ステップS8が「YES」)、ステップS9に進む。
一方、「車両タンク内の圧力」が、「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」以下の場合は(ステップS8が「NO」)、ステップS11に進む。
【0035】
ステップ9(「車両タンク内の圧力」が、「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を超えた場合)では、車両タンクにおける水素の充填率が100%を超えており、安全に水素充填が出来る状態ではないと判断し、「水素充填中に異常あり」と判断して、ステップS10に進む。
ステップS10では、車両タンクにおける水素の充填率が100%を超えたことを受け、水素充填中止機構4を作動し(「閉」の状態にせしめ)、車両タンク21への水素充填を中止する。それと同時に、水素充填を中止した旨の警報を、表示装置7等から出力して、制御を終了する。
【0036】
一方、ステップS11(「車両タンク内の圧力」が、「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」以下の場合)では、車両タンク21内の圧力(計測値)と、記憶装置14から取込んだ充填終了圧力(終了圧力)と比較する。
「車両タンク内の圧力」が、「充填終了圧力(終了圧力)」以上となった場合(ステップS11が「YES」)は、ステップS12に進む。
一方、「車両タンク内の圧力」が、「充填終了圧力(終了圧力)」に達しない場合(ステップS11が「NO」)は、水素充填は安全に行われているが、必要な充填は完了していない旨の判断をして、ステップS4に戻り、水素充填を継続する。
【0037】
ステップS12では、車両タンク21における充填圧力が、充填終了圧力(終了圧力)に達した(以上となった)と判断し、水素充填が正常に終了したと判断して、ステップS13に進む。
ステップS13では、別途定められた充填終了のシーケンスに従って、車両タンク21への水素充填を終了する。
【0038】
上述した様に、水素充填装置100側の車両通信機能及び/又は車両20側の車両通信機能が故障した場合や、車両通信機能がない車両に水素充填を行う場合には、制御装置10が車両タンク21内の温度データ、圧力データを取得することが出来ない。
その場合には、
図4では示されていないが、第2実施形態で後述するのと同様に、水素供給配管温度計測装置8、水素供給配管圧力計測装置9で計測した水素供給配管5の温度、圧力から、車両タンク内温度及び車両タンク内圧力の推定値を求め、当該推定値に基づいて制御を行なう。
【0039】
図2〜
図4の第1実施形態によれば、充填中の各制御サイクル(例えば、100msec毎に行われる制御サイクル)において、車両タンク21の温度を計測し、計測された車両タンク24内の温度に対応する「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を当該制御サイクルにおける車両タンク内圧力のしきい値として求める。そして、車両タンク内圧力の計測結果と、「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」とを比較する。
その結果、車両タンク内圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」以下である場合には、水素充填を安全に行うことが出来る状態にあると
判断して、水素の充填を続行する。一方、車両タンク内圧力が「充填率100%となる圧力(圧力のしきい値)」を超えた場合には、水素充填を安全に行うことが出来る状態ではないと判断して、直ちに充填を中止する。
そのため第1実施形態によれば、水素の安全な充填が実行される。
【0040】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、車両タンク内温度データがタンク内温度作動限界θ(例えば85℃)よりも高温となった場合に、「異常」と判断して充填を中止する制御を実行することが可能である。
また、図示の実施形態では、コンピュータ等の情報処理装置で構成された制御装置10、10Aにより自動制御がされているが、オペレータによる判断に基づいて水素充填を継続するか中止するかを判断することが可能である。