特許第6332751号(P6332751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332751
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   A61F13/15 352
   A61F13/15 390
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-198583(P2014-198583)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-67500(P2016-67500A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】森谷 晶絵
(72)【発明者】
【氏名】岡田 将幸
(72)【発明者】
【氏名】矢野 広幸
(72)【発明者】
【氏名】越智 良一
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−174234(JP,A)
【文献】 特開2009−155741(JP,A)
【文献】 特開2014−101159(JP,A)
【文献】 特開平04−280760(JP,A)
【文献】 特開平10−180869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、この吸収体の表側を被覆する不織布からなる液透過性トップシートと、トップシートの裏面に貼り合わされたセカンドシートと、を備えており、
前記トップシートに、裏側から表側に押し出されてなる押し出し隆起部が、幅方向及び前後方向にそれぞれ間隔を空けて多数配列されており、
前記トップシートにおける、幅方向及び前後方向に隣接する押し出し隆起部の間がセカンドシートと接合されて、幅方向及び前後方向に間欠的な接合パターンで多数のトップ・セカンド接合部が形成されている、吸収性物品の製造方法において、
前記トップシート及びセカンドシートを組み立てるにあたり、周面に多数の押し込み凸部が前記押し出し隆起部の配列パターンで形成された押し込みロールと、この押し込みロールに対向し、押し込み凸部に対応する凹部及びこれら凹部間に設けられた接合凸部を有する凹ロールと、この凹ロールに対向する接合ロールとを用い、
前記凹ロールにおける、前記押し出し隆起部の形成位置と前記トップ・セカンド接合部の形成位置との間に、周面に多数の押し込み凸部が押し出し隆起部の配列パターンで形成された補助押し込みロールを配置し、
前記押し込みロール、凹ロール及び接合ロールをそれぞれ加熱しつつ、前記トップシートとなる不織布を前記押し込みロール及び凹ロール間に挟み、前記押し込みロールの凸部を前記凹ロールの凹部内に押し込むことにより前記押し出し隆起部を形成した後、そのまま凹ロールに巻き掛けて案内する過程で、前記トップシートとなる不織布に対し、前記補助押し込みロールの凸部を前記凹ロールの凹部内に押し込むことにより前記押し出し隆起部を再形成し、しかる後にトップシートとなる不織布の外側に前記セカンドシートの素材を送り込み、これらトップシートとなる不織布及びセカンドシートの素材を凹ロール及び接合ロール間に挟み、凹ロールの接合凸部と接合ロールの周面との間で融着することにより前記トップ・セカンド接合部を形成するとともに、
前記押し出し隆起部を形成してから前記トップ・セカンド接合部を形成するまでの過程で、前記凹ロール上のトップシートとなる不織布に向かって、その外側から温風を吹き付けることにより、前記凹ロールの周面に前記トップシートとなる不織布を押し付ける、
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記凹ロールにおける凹部に通風孔を形成した、請求項1記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記温風の温度を、前記押し込みロールの温度から前記凹ロールの温度までの範囲内とする、請求項1又は2記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項4】
前記凹ロールの回転速度が190〜288/minであり、前記凹ロールの半径が78〜136cmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項5】
前記温風の吹き付けを前記凹ロールの周方向に間隔を空けた複数の位置で行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項6】
前記押し出し隆起部を形成してから前記トップ・セカンド接合部を形成するまでの凹ロールの回転角度が90度以下となるように、前記押し込みロール、凹ロール及び接合ロールが配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキンを含む吸収性物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の吸収性物品は、吸収体と、この吸収体の表側を被覆する液透過性トップシートとを備えており、尿や経血等の排泄液はトップシートを透過して吸収体により吸収され保持されるようになっている。従来、吸収性物品用の表面シートとして、各種製法による不織布や、それに2次加工として穿孔を施したもの、ポリエチレン等の合成樹脂からなる有孔フィルム等が用いられている。また、多くの吸収性物品において、トップシートから肌への排泄液の逆戻りを改善するために、トップシートの裏面に、嵩高な不織布からなるセカンドシートを貼り合わせることも行われている。
【0003】
吸収性物品においては、尿等の排泄物の漏れを防止することだけでなく、尿等の排泄物が肌に再付着することによる不快感やかぶれ等を防止することも要求される。このため近年では、トップシートに不織布を用いる場合において、例えば特許文献1〜3に示すように、エンボス加工によりトップシートに多数のドーム状の押し出し隆起部を形成し、トップシートと肌との接触面積を低減し、また肌に接触する部分を柔軟なものとすることも行われている。特に、特許文献3記載のもののように、トップシートにおける押し出し隆起部の周囲(隆起部間の窪みの底部)とセカンドシートとを接合する形態は、押し出し隆起部がよりしっかりと形成され、流通過程を経て使用に供されるまで、包装袋内で加圧状態にあっても、押し出し隆起部がしっかりと維持され、吸収性等に優れるのはもちろん、見栄えにも優れるため非常に好ましいものである。エンボス加工を施したトップシートは、高機能であることはもちろん、消費者に機能美を感じさせるものであり、見栄えの点でも非常に重要な要素である。
【0004】
このようなトップシート及びセカンドシートの接合は、例えば図12に示される3ロールタイプの加工設備により製造することができる。すなわち、このトップシートの加工設備は、周面に多数の押し込み凸部90aが配列された押し込みロール90と、この押し込みロール90に対向し、押し込み凸部90aと対応する凹部91a及び凹部91a間に設けられた接合凸部91bを有する凹ロール91と、この凹ロール91に対向する接合ロール92とを備えている。トップシートの素材30Sは、下流側からのドローによりある程度のテンションで送り込まれ、先ず押し込みロール90と凹ロール91との間に挟まれ、押し込みロール90の凸部が凹ロール91の凹部91a側に入り込むことにより多数の押し出し隆起部31(突出部)が形成され、次いで、凹ロール91に巻き掛けられて凹ロール91の回転により案内される過程で、トップシートの素材30Sの外側に、同じく下流側からのドロー(引張)によりある程度のテンションでセカンドシートの素材40Sが送り込まれ、これらトップシートの素材30S及びセカンドシートの素材40Sが接合ロール92との間に挟まれ、凹ロール91の接合凸部91bと接合ロール92の外周面との間で加熱圧着され、トップ・セカンド接合部80が形成される。
【0005】
しかし、このような加工設備においては、トップシートの押し出し隆起部の形状にバラツキが生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−174234号公報
【特許文献2】特開2008−289662号公報
【特許文献3】特開2014−83280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、トップシートに形成される押し出し隆起部の形状のバラツキを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記押し出し隆起部の形状のバラツキについて鋭意研究したところ、トップシートの素材は、押し込みロールの凸部により凹ロールの凹部に押し込まれて押し出し隆起部が形成された後、そのまま(つまり押し出し隆起部が凹ロールの凹部に押し込まれたまま)、凹ロールに巻き掛けられて凹ロールの回転により案内される過程で、遠心力により図12に二点鎖線で示すように凹ロールの表面から浮き上がり、細かく動きながらセカンドシートの素材と接合されており、この浮き上がりが原因でトップシートに形成される押し出し隆起部の形状にバラツキが生じるとの知見を得て、本発明をなしたものである。すなわち、上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0009】
<請求項1記載の発明>
吸収体と、この吸収体の表側を被覆する不織布からなる液透過性トップシートと、トップシートの裏面に貼り合わされたセカンドシートと、を備えており、
前記トップシートに、裏側から表側に押し出されてなる押し出し隆起部が、幅方向及び前後方向にそれぞれ間隔を空けて多数配列されており、
前記トップシートにおける、幅方向及び前後方向に隣接する押し出し隆起部の間がセカンドシートと接合されて、幅方向及び前後方向に間欠的な接合パターンで多数のトップ・セカンド接合部が形成されている、吸収性物品の製造方法において、
前記トップシート及びセカンドシートを組み立てるにあたり、周面に多数の押し込み凸部が前記押し出し隆起部の配列パターンで形成された押し込みロールと、この押し込みロールに対向し、押し込み凸部に対応する凹部及びこれら凹部間に設けられた接合凸部を有する凹ロールと、この凹ロールに対向する接合ロールとを用い、
前記凹ロールにおける、前記押し出し隆起部の形成位置と前記トップ・セカンド接合部の形成位置との間に、周面に多数の押し込み凸部が押し出し隆起部の配列パターンで形成された補助押し込みロールを配置し、
前記押し込みロール、凹ロール及び接合ロールをそれぞれ加熱しつつ、前記トップシートとなる不織布を前記押し込みロール及び凹ロール間に挟み、前記押し込みロールの凸部を前記凹ロールの凹部内に押し込むことにより前記押し出し隆起部を形成した後、そのまま凹ロールに巻き掛けて案内する過程で、前記トップシートとなる不織布に対し、前記補助押し込みロールの凸部を前記凹ロールの凹部内に押し込むことにより前記押し出し隆起部を再形成し、しかる後にトップシートとなる不織布の外側に前記セカンドシートの素材を送り込み、これらトップシートとなる不織布及びセカンドシートの素材を凹ロール及び接合ロール間に挟み、凹ロールの接合凸部と接合ロールの周面との間で融着することにより前記トップ・セカンド接合部を形成するとともに、
前記押し出し隆起部を形成してから前記トップ・セカンド接合部を形成するまでの過程で、前記凹ロール上のトップシートとなる不織布に向かって、その外側から温風を吹き付けることにより、前記凹ロールの周面に前記トップシートとなる不織布を押し付ける、
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【0010】
(作用効果)
凹ロール上の不織布を安定化する手法としては、従来、凹ロール内からの吸引を利用するものが知られているが(特許文献1、3参照)、吸引によると凹ロール及びその上の不織布が冷却されてしまい、接合ロールによる融着にバラツキを生じるおそれがある。そのため、吸引の場合には温度調節が困難であるといった問題や、設備構造が複雑になるといった問題点がある。
これに対して、本発明では、凹ロールの外側から温風を吹き付けて、凹ロールの周面にトップシートとなる不織布を押し付けるため、凹ロール上の不織布が遠心力により浮き上がり難いのはもちろん、凹ロール及びその上の不織布の温度も低下し難いものとなる。よって、本発明によれば、トップシートに形成される押し出し隆起部の形状のバラツキが防止されるだけでなく、トップ・セカンド接合部の融着にバラツキも生じ難いものとなる。
また、補助押し込みロールにより押し出し隆起部を再形成すると、押し出し隆起部がよりしっかりと形成され、その結果として凹ロール表面の不織布の浮き上がりが抑制されるようになるため好ましい。
【0011】
<請求項2記載の発明>
前記凹ロールにおける凹部に通風孔を形成した、請求項1記載の吸収性物品の製造方法。
【0012】
(作用効果)
凹ロールの外側から温風を吹き付ける場合、凹部内に温風の逃げ道がないと、温風の吹き付けの強さによっては凹部内に入り込んだ押し出し隆起部が不安定になることがあるため、本項記載のように通風孔を設けることが望ましい。
【0013】
<請求項3記載の発明>
前記温風の温度を、前記押し込みロールの温度から前記凹ロールの温度までの範囲内とする、請求項1又は2記載の吸収性物品の製造方法。
【0014】
(作用効果)
温風の温度は凹ロール及び押し込みロールによる加工に影響を及ぼす。すなわち、温風を吹き付ける限り、その温度が温風の温度が押し込みロールの温度及び凹ロールの温度に対して低くても、温風でない場合と比べれば格段の冷却防止効果を得られるが、温度が低い以上は凹ロール及びその上の不織布を冷やす方向に作用し、押し出し隆起部の形成が不十分になるおそれがある。また、温風の温度が高過ぎると、加工対象の不織布が硬くなるおそれがある。よって、温風の温度は本項記載の範囲内とすることが望ましい。
【0015】
<請求項4記載の発明>
前記凹ロールの回転速度が190〜288/minであり、前記凹ロールの半径が78〜136cmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【0016】
(作用効果)
凹ロールの回転速度及び半径がこの範囲内にあると、トップシートとなる不織布が遠心力により凹ロールから浮き上がり易くなる。よって、本発明はこのような場合に好適である。
【0017】
<請求項5記載の発明>
前記温風の吹き付けを前記凹ロールの周方向に間隔を空けた複数の位置で行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【0018】
(作用効果)
このように、吹き付け範囲を拡大することにより、凹ロール表面の不織布の浮き上がり防止効果がより一層のものとなる。
【0019】
<請求項6記載の発明>
前記押し出し隆起部を形成してから前記トップ・セカンド接合部を形成するまでの凹ロールの回転角度が90度以下となるように、前記押し込みロール、凹ロール及び接合ロールが配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【0020】
(作用効果)
このように、押し出し隆起部を形成してからトップ・セカンド接合部を形成するまでの凹ロールの回転角度を小さくすると、凹ロール表面の不織布のうち浮き上がり可能な部分が短くなり、その結果として凹ロール表面の不織布の浮き上がりが抑制されるようになるため好ましい。
【0021】
【0022】
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によれば、トップシートに形成される押し出し隆起部の形状のバラツキを防止できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】テープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
図2】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
図3図1の6−6線断面図である。
図4図1の7−7線断面図である。
図5図1の8−8線断面図である。
図6図1の9−9線断面図である。
図7図1の5−5線断面図である。
図8】トップシート及びセカンドシートの平面図である。
図9】トップ・セカンド接合部の接合パターンの拡大平面図である。
図10】トップ・セカンド接合部の接合パターンの拡大平面図である。
図11】トップ・セカンド接合部等の要部を示す断面図である。
図12】トップシート及びセカンドシートの組み立て設備例の説明図である。
図13】トップシート及びセカンドシートの組み立て体の、斜視方向からの写真である。
図14】テープタイプ使い捨ておむつサンプル及び比較サンプルを並べ、トップシート表面を撮影した比較写真である。
図15】トップ・セカンド接合部の接合パターンの拡大平面図である。
図16】凹ロール上の不織布の状態を概略的に示す要部拡大図である。
図17】トップシート及びセカンドシートの組み立て設備例の説明図である。
図18】トップシート及びセカンドシートの組み立て設備例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
<吸収性物品の例>
図1図6はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示しており、図中の符号Xはファスニングテープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示している。各構成部材は、以下に述べる固定又は接合部分以外も、必要に応じて公知のおむつと同様に固定又は接合される。これらの固定又は接合のための手段としては、ホットメルト接着剤や溶着(加熱溶着、超音波溶着)を適宜選択することができる。
【0026】
このテープタイプ使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収要素50が介在する部分である吸収性本体部10と、この吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分である腹側エンドフラップ部EF及び背側エンドフラップ部EFとを有するものである。
【0027】
また、このテープタイプ使い捨ておむつは、吸収性本体部10の側縁よりも側方に延出する一対のサイドフラップ部SF,SFを有しており、背側におけるサイドフラップ部SF,SFにはファスニングテープ13がそれぞれ設けられている。
【0028】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに各サイドフラップ部SF,SFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、セカンドシート40、およびトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0029】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部立体ギャザー60,60が設けられており、この側部立体ギャザー60,60を形成するギャザーシート62,62が、トップシート30の両側部上から各サイドフラップ部SF,SFの内面までの範囲に固着されている。
【0030】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する。
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を囲む部位となる。
【0031】
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m2、特に15〜30g/m2のものが望ましい。
【0032】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0033】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有する有孔又は無孔の不織布を用いる。不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0034】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0035】
(セカンドシート)
トップシート30を透過した排泄液を吸収体56側へ速やかに移動させるため、及び逆戻りを防ぐために、トップシート30の裏面にセカンドシート40が接合されている。セカンドシート40をトップシート30に接合するためにヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、セカンドシート40の素材はトップシート30と同程度の融点をもつものが好ましい。セカンドシート40としては、不織布を用いる他、多数の透過孔を有する樹脂フィルムを用いることもできる。不織布としては、トップシート30の項で説明したものと同様の素材を用いることができるが、トップシート30より親水性が高いものや、繊維密度が高いものが、トップシート30からセカンドシート40への液の移動特性に優れるため好ましい。
【0036】
図示の形態のセカンドシート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。セカンドシート40の前後方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0037】
(側部立体ギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する側部立体ギャザー60、60を設けるのは好ましい。
【0038】
この側部立体ギャザー60は、実質的に幅方向に連続するギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向に沿って伸長状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、図1及び図3に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0039】
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0040】
脚周りにおいては、側部立体ギャザー60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性伸縮部材63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして弾性伸縮部材63の収縮力が作用するので、弾性伸縮部材63の収縮力により側部立体ギャザー60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0041】
図示形態と異なり、ギャザーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0042】
(平面ギャザー)
各サイドフラップ部SF,SFには、図1図3に示すように、ギャザーシート62の固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に、糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64が前後方向に沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップ部SF,SFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。脚周り弾性伸縮部材64はサイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装シート12との間に配置することもできる。脚周り弾性伸縮部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
【0043】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包装シート58とを有している。包装シート58は省略することもできる。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0044】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0045】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0046】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート58上にある形態も排除されるものではない。
【0047】
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0048】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0049】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0050】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0051】
この包装シート58は、図3に示すように、吸収体56の全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包装するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包装シートの構成要素となる)。必要ならば、吸収体56を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0052】
(ファスニングテープ)
図1図2及び図7に示されるように、ファスニングテープ13は、おむつの側部に固定されたテープ取付部13C、及びこのテープ取付部13Cから突出するテープ本体部13Bをなすシート基材と、このシート基材におけるテープ本体部13Bの幅方向中間部に設けられた、腹側に対する係止部13Aとを有し、この係止部13Aより先端側が摘み部とされたものである。ファスニングテープ13のテープ取付部13Cは、サイドフラップ部における内側層をなすギャザーシート62及び外側層をなす外装シート12間に挟まれ、かつホットメルト接着剤により両シート62,12に接着されている。また、係止部13Aはシート基材に接着剤により剥離不能に接合されている。
【0053】
乳幼児用おむつにおいては、テープ取付部13Cの寸法のうち、おむつの幅方向の長さX1は10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さY1は、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、テープ本体部13Bの寸法のうち、おむつの幅方向の長さは30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さ(高さ)は20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニングテープ13の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さや幅方向長さが一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニングテープ13の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。
【0054】
係止部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)が好適である。フック材は、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。もちろん、ファスニングテープ13の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0055】
また、テープ取付部からテープ本体部までを形成するシート基材としては、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができるが、繊度1.0〜3.5dtex、目付け20〜100g/m2、厚み1mm以下のスパンボンド不織布、エアスルー不織布、又はスパンレース不織布が好ましい。
【0056】
おむつの装着に際しては、背側のサイドフラップ部SFを腹側のサイドフラップ部SFの外側に重ねた状態で、ファスニングテープを腹側F外面の適所に係止する。ファスニングテープ13の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。乳幼児用おむつにおいては、係止箇所は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
【0057】
ファスニングテープ13は、背側のエンドフラップ部EFと吸収要素50の境界線上にファスニングテープ13のテープ取付部13Cが重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13の取り付け部分間に働く張力により、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニングテープ13の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13のテープ取付部13C間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側のエンドフラップ部EFの前後方向長さは、ファスニングテープ13のテープ取付部13Cの前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0058】
(ターゲットシート)
腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所には、係止を容易にするためのターゲット有するターゲットシート12Tを設けるのが好ましい。ターゲットシート12Tは、係止部がフック材13Aの場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート基材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。また、腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニングテープ13の係止部がフック材13Aの場合には、ターゲットシート12Tを省略し、フック材13Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。この場合、ターゲットシート12Tを外装シート12と液不透過性シート11との間に設けてもよい。
【0059】
(エンドフラップ部)
エンドフラップ部EFは、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側エンドフラップ部EFであり、後側の延出部分が背側エンドフラップ部EFである。
【0060】
背側エンドフラップEFの前後方向長さは、前述の理由によりファスニングテープ13の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収要素50とが近接しすぎると、吸収要素50の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
【0061】
腹側エンドフラップ部EF及び背側エンドフラップ部EFの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0062】
(背側伸縮ウエストシート)
図示形態では、両ファスニングテープ13間に、幅方向に弾性伸縮する帯状の背側伸縮ウエストシート70が設けられ、おむつ背側部におけるフィット性を向上させている。背側伸縮ウエストシート70の両端部は両ファスニングテープ13の取り付け部分と重なる部位まで延在されているのが好ましいが、幅方向中央側に離間していても良い。背側伸縮ウエストシート70の前後方向寸法は、ファスニングテープ13の取り付け部分の前後方向寸法と概ね同じにするのが適当であるが、±20%程度の寸法差はあってもよい。また、図示のように背側伸縮ウエストシート70が背側エンドフラップ部EFと吸収要素50の境界線と重なるように配置されていると、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。背側伸縮ウエストシート70は、ゴムシート等のシート状弾性部材を用いても良いが、通気性の観点から不織布や紙を用いるのが好ましい。この場合、伸縮不織布のような通気性を有するシート状弾性部材を用いることもできるが、図5に示すように、二枚の不織布等のシート基材71をホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせるとともに、両シート基材71間に有孔のシート状、網状、細長状(糸状又は紐状等)等の弾性伸縮部材72を幅方向に沿って伸長した状態で固定したものが好適に用いられる。この場合におけるシート基材71としては、外装シート12と同様のものを用いることができる。弾性伸縮部材72の伸長率は150〜250%程度であるのが好ましい。また、弾性伸縮部材72として細長状(糸状又は紐状等)のものを用いる場合、太さ420〜1120dtexのものを3〜10mmの間隔72dで5〜15本程度設けるのが好ましい。
【0063】
また、図示のように弾性伸縮部材72の一部が吸収要素50を横断するように配置すると、吸収要素50のフィット性が向上するため好ましいが、この場合は、弾性伸縮部材72が吸収要素50と重なる部分の一部又は全部を、切断等の手段により収縮力が働かないようにすると、吸収要素50の背側端部が幅方向に縮まないため、フィット性がさらに向上する。
【0064】
なお、弾性伸縮部材72は、シートの長手方向(おむつの幅方向)にシート基材71の全長にわたって固定されていてもよいが、おむつ本体への取り付け時の縮みやめくれ防止のため、シートの前後方向(おむつの幅方向)端部の5〜20mm程度の範囲においては、収縮力が働かないように、または弾性伸縮部材72が存在しないようにするとよい。
【0065】
背側伸縮ウエストシート70は、図示形態では、液不透過性シート11の幅方向両側ではギャザーシート62と外装シート12との間に挟まれ、且つ液不透過性シート11と重なる部位では、液不透過性シート11と吸収要素50との間に挟まれるように設けられているが、液不透過性シート11と外装シート12との間に設けても良いし、外装シート12の外面に設けても良く、またトップシート30と吸収要素50との間に設けてもよい。また、背側伸縮ウエストシート70はトップシート30の上に設けても良く、この場合、液不透過性シート11の幅方向両側ではギャザーシート62の上に設けても良い。また、外装シート12を複数枚のシート基材を重ねて形成する場合には、背側伸縮ウエストシート70全体を、外装シート12のシート基材間に設けても良い。
【0066】
(トップシートの押し出し隆起部)
トップシート30には、エンボス加工により裏側から表側に押し出されてなる押し出し隆起部31が、幅方向及び前後方向にそれぞれ間隔を空けて多数配列される。この配列様式は、図8及び図9に示すように行列状とする他、図10に示すように千鳥状(隣接列で互い違いとなる配置)とする等、任意の配置とすることができる。
【0067】
押し出し隆起部31の寸法等は適宜定めることができるが、図8図11に示すように、押し出し隆起部31のMD方向寸法31mは、押し出し隆起部31のMD方向一方側に位置するトップ・セカンド接合部80(後述する)と他方側に位置するトップ・セカンド接合部80との中心間隔80y以下とされ、その下限は0.9倍程度であるのが好ましく、乳幼児用途の場合2.7〜9mm程度とすることが好ましい。同様に、押し出し隆起部31のCD方向寸法31cは、押し出し隆起部31のCD方向一方側に位置するトップ・セカンド接合部80と他方側に位置するトップ・セカンド接合部80との中心間隔80x以下とされ、その下限は0.9倍程度であるのが好ましく、乳幼児用途の場合2.7〜9mm程度とすることが好ましい。また、押し出し隆起部31の高さ31zは、乳幼児用途の場合0.8〜2mm程度とすることが好ましい。
【0068】
ここで、製品における「MD方向(マシンディレクション。シートの移送方向のこと。)」及び「CD方向(MD方向と直交する方向。横断方向のこと。)」とは、押し出し隆起部31の加工設備の「MD方向」及び「CD方向」を意味し、いずれか一方が前後方向となるものであり、他方が幅方向となるものである。そして、製品におけるMD方向は、トップシート30の不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。図示形態は、殆ど多くの吸収性物品の製品と同様に、前後方向がMD方向となり、幅方向がCD方向となるものである。
【0069】
押し出し隆起部31の配置間隔は適宜定めることができるが、乳幼児用途では、図8及び図9に示すような行列状配列の場合、CD方向に隣接する押し出し隆起部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xは3〜10mm程度、MD方向に隣接する押し出し隆起部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yは3〜10mm程度とするのが好ましい。また、図10に示すような千鳥状配列の場合、CD方向に隣接する押し出し隆起部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xは3〜10mm程度、MD方向に隣接する押し出し隆起部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yは3〜10mm程度とするのが好ましい。
【0070】
押し出し隆起部31の形状は、円形ドーム状とするのが好ましいが、楕円ドーム状や、正多角形ドーム状とする等、任意の形状とすることが可能である。なお、押し出し隆起部31はトップシート30がエンボス加工により押し出されて形成される部分であるため、その加工に用いる凸部の形状を適宜変更することにより所望の形状を得ることができる。
【0071】
(トップ・セカンド接合部)
図9及び図10にも示すように、トップシート30における、幅方向及び前後方向に隣接する押し出し隆起部31の間の部分がセカンドシート40と接合されることにより、幅方向及び前後方向に間欠的な接合パターンで多数のトップ・セカンド接合部80が形成されている。このトップシート30及びセカンドシート40の接合パターンは、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間では、当該隣接する押し出し隆起部31のCD方向中央部と対応するCD方向中央位置及びこの中央位置のCD方向両側の側方位置にトップ・セカンド接合部80が形成される接合パターンであって、かつ中央位置から側方に向かうにつれて連続的又は段階的にMD方向接合範囲A1,A2が広くなる接合パターン(以下、皺防止パターンともいう)とされていると好ましい。図9(a)に示されるパターンを採用したトップシート30及びセカンドシート40の組み立て体のサンプル写真が図13に示されている。このように、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間に特徴的な接合パターンを採用することにより、図14(a)に示すサンプルからも明らかなように、押し出し隆起部31の形成時に縦皺が形成されたとしても、セカンドシート40との接合の際に押し出し隆起部31の形状を崩さずにその皺をCD方向両側に伸ばして無くす又は目立たなくすることができる。これに対して、上記条件を満たさないトップ・セカンド接合部80を有する比較サンプルでは、図14(b)に示すように、MD方向に沿う皺がCD方向に間隔を空けて多数形成されてしまい、見栄えが悪化する。
【0072】
MD方向接合範囲の最も短い部分A1の長さ、MD方向接合範囲の最も長い部分A2の長さは適宜定めれば良いが、最も長い部分A2は最も短い部分A1の1.1〜2倍程度とすることが好ましい。
【0073】
MD方向接合範囲A1,A2の変化の程度は適宜定めれば良いが、図15に示すように、押し出し隆起部31の中心(MD方向及びCD方向の中心)を中心CPとし、この中心CPを通るMD方向に沿う仮想中心線VLとトップ・セカンド接合部80の近位縁NEとの交点XPを通る仮想円弧CL上か、又はその仮想円弧CLよりも外側に、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間におけるトップ・セカンド接合部80が位置するように定めると、押し出し隆起部31の形状を大きく丸みを帯びた形状(円形又は角の丸い四角形)とすることができるため好ましい。またこの場合、CD方向に隣接する押し出し隆起部31の間におけるトップ・セカンド接合部80も、その近位縁が仮想円弧CL上か、又はその仮想円弧CLよりも外側に位置するように配置することが望ましい。図示しないが、反対に、上記仮想円弧CLよりも内側に、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間におけるトップ・セカンド接合部80及びCD方向に隣接する押し出し隆起部31の間におけるトップ・セカンド接合部80の少なくとも一方を位置させることもできる。
【0074】
皺防止パターンは、特に限定されないが、例えば、図9(a)及び図10(a)に示すように、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間におけるトップ・セカンド接合部80を、中央位置からCD方向両側に連続的に延びるとともに、側方に向かうにつれて連続的(又は段階的)にMD方向長さが長くなる一体的な接合部とすることにより形成することができる。MD方向の長さの変化は段階的とすることもできるが、図示形態のように連続的として全体として瓢箪形状の接合部とすることが好ましい。この一体的なトップ・セカンド接合部80による皺防止パターンは、後述するような互いに離間する複数のトップ・セカンド接合部80による皺防止パターンよりも皺防止効果に優れたものとなる。
【0075】
この皺防止パターンにおける一体的なトップ・セカンド接合部80の寸法・形状は適宜定めることができるが、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間におけるトップ・セカンド接合部80のMD方向長さ80mは、MD方向に隣接する押し出し隆起部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yの0.1〜1倍(乳幼児用度の場合例えば0.5〜10mm)程度、かつCD方向長さ80cが、CD方向に隣接する押し出し隆起部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xの0.3〜1倍(乳幼児用度の場合例えば1〜10mm)程度の、CD方向に長い横長形状であるのが好ましい。
【0076】
また、皺防止パターンは、図9(b)及び図10(b)に示すように、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間において、中央位置及び側方位置にトップ・セカンド接合部80を互いに離間するようにそれぞれ設け、MD方向のトップ・セカンド接合部80の数を、中央位置から側方に向かうにつれて段階的に多くすることによっても形成することができる。図示しないが、MD方向の数を変化させるのではなく、トップ・セカンド接合部80の長さを変化させることもでき、またその変化は連続的とすることもできる。前述の一体的なトップ・セカンド接合部80による皺防止パターンの場合はトップシート30の透過性や柔軟性が低下するおそれがあるのに対して、互いに離間する複数のトップ・セカンド接合部80による皺防止パターンは、そのようなおそれを低減することができ、また、皺防止効果も十分に発揮させることができる。
【0077】
この互いに離間する複数のトップ・セカンド接合部80を有する皺防止パターンの寸法・形状は適宜定めることができるが、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間における個々のトップ・セカンド接合部80は、MD方向長さ80mが、MD方向に隣接する押し出し隆起部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yの0.1〜0.4倍(乳幼児用度の場合例えば0.5〜3mm)程度、かつCD方向長さ80cが、CD方向に隣接する押し出し隆起部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xの0.1〜0.4倍(乳幼児用度の場合例えば0.5〜3mm)程度の、点状接合部であるのが好ましい。
【0078】
他方、図10に示すように、押し出し隆起部31が千鳥状の場合には、CD方向に隣接する押し出し隆起部31の間はMD方向に隣接する押し出し隆起部31の間でもあるため、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間と同様のトップ・セカンド接合部80が設けられるのに対して、図9に示すように、押し出し隆起部31が行列状配列の場合には、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間のトップ・セカンド接合部80とは別に、CD方向に隣接する押し出し隆起部31の間にも、トップ・セカンド接合部80がMD方向に間欠的に設けられる。このトップ・セカンド接合部80のパターンは特に限定されないが、点状のトップ・セカンド接合部80を前後方向に間隔を空けて配列することが好ましい。このトップ・セカンド接合部80のMD方向列は、図示例のようにCD方向に隣接する押し出し隆起部31の中間位置に一列設ける他、CD方向に間隔を空けて複数列設けることもできる。また、この点状のトップ・セカンド接合部80の寸法は特に限定されないが、MD方向長さ80mが、MD方向に隣接する押し出し隆起部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yの0.1〜0.4倍(乳幼児用度の場合例えば0.5〜3mm)程度、かつCD方向長さ80cが、CD方向に隣接する押し出し隆起部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xの0.1〜0.4倍(乳幼児用度の場合例えば0.5〜3mm)程度であるのが好ましい。
【0079】
トップ・セカンド接合部80は、幅方向及び前後方向に間欠的な接合パターンで形成され、各方向の間隔は適宜定めることができるが、例えば、MD方向に隣接する押し出し隆起部31の間における各トップ・セカンド接合部80によるCD方向接合範囲A3は、CD方向に隣接する押し出し隆起部31のMD方向列のCD方向中心間隔31xの0.3〜1倍(乳幼児用度の場合例えば1〜10mm)程度であるのが好ましく、また、CD方向に隣接する押し出し隆起部31の間における各トップ・セカンド接合部80によるMD方向接合範囲A4は、MD方向に隣接する押し出し隆起部31のCD方向列のMD方向中心間隔31yの0.3〜1倍(乳幼児用度の場合例えば1〜10mm)程度であるのが好ましい。これらCD方向接合範囲A3及びMD方向接合範囲A4が広すぎると、トップ・セカンド接合部80がCD方向及びMD方向に連続するのと変わりなくなり、トップシート30の透過性や柔軟性が低下するおそれがある。
【0080】
<使い捨ておむつの製造方法の例>
図12は、上述の使い捨ておむつを製造するためのトップシート30及びセカンドシート40の加工設備を示している。すなわち、この設備は、周面に多数の押し込み凸部90aが前述の押し出し隆起部31の配列パターンで形成された押し込みロール90と、この押し込みロール90に対向し、押し込み凸部90aに対応する凹部91a、及びこれら凹部91a間に前述のトップ・セカンド接合部80の配列で設けられた接合凸部91bを有する凹ロール91と、この凹ロール91に対向する接合ロール92とを備えている。押し込みロール90の凸部の形状は適宜定めることができるが、形成する押し出し隆起部31の形状に合わせた断面(例えば円形、楕円形、正多角形等)の裁頭円錐台状であるのが好ましい。また、凹ロール91の凹部91aは、隆起部が形成される限り、凸部が入り込む大きさの、底面がない「開孔」でもよい(本発明における「凹部」もかかる「開孔」を含む)。これら押し込みロール90及び凹ロール91により形成される押し出し隆起部31の寸法・形状は、図9及び図10に二点鎖線で示すように押し込み凸部及び凹部91aとほぼ対応するものとなる。
【0081】
加工に際しては、押し込みロール90、凹ロール91及び接合ロール92をそれぞれ加熱しつつ、トップシートとなる不織布30Sを下流側からのドローにより移送し、先ず、押し込みロール90及び凹ロール91間に挟み、押し込みロール90の凸部を凹ロール91の凹部91a内に押し込むエンボス加工により、押し出し隆起部31を形成する。
【0082】
しかる後、この押し出し隆起部31を形成した不織布30Sをそのまま凹ロール91に巻き掛けて案内する過程で、トップシートとなる不織布30Sの外側に、下流側からのドローによりセカンドシートの素材40Sを送り込み、これらトップシートとなる不織布30S及びセカンドシートの素材40Sを凹ロール91及び接合ロール92間に挟み、凹ロール91の接合凸部91bと接合ロール92の周面との間で融着することにより、前述の接合パターンのトップ・セカンド接合部80を形成し、トップシート30及びセカンドシート40の組み立て体を製造する。接合パターンについては前述のとおりであるため、ここでは敢えて説明を省略する。加工したトップシート30及びセカンドシート40の組み立て体は、公知の方法に従って吸収体等に対して組み付けることにより使い捨ておむつを製造することができる。
【0083】
このように、押し出し隆起部31の形成直後に、その皺が吸収される間があまり無い状態でセカンドシートの素材40Sと接合する加工法では、皺がより残りやすいため、前述のトップ・セカンド接合部80の接合パターンを採用することが好ましい。もちろん、エンボス加工により押し出し隆起部31を形成した後に、トップ・セカンド接合部80を形成するのであれば、上記3ロールの加工設備でなくても良い。また、図示例では、押し込みロール90と凹ロール91とが噛み合う位置に直接的にトップシートとなる不織布30Sを送り込んでいるが、押し込みロール90の周面の接線方向から押し込みロール90にのみ巻き付けるようにトップシートとなる不織布を送り込み、そのまま凹ロール91との間に挟んだ後に、凹ロール91の周面に移すように案内しても良い。
【0084】
押し込みロール90及び凹ロール91の温度は押し出し隆起部31の形成に適した温度とし、接合ロール92の温度はトップ・セカンド接合部80の融着に適した温度とすれば良い。通常の場合、押し込みロール90の温度は60〜100℃程度、凹ロール91の温度はそれよりも高く90〜130℃程度、接合ロール92の温度は更にそれよりも高く120〜180℃程度とすることができる。
【0085】
特徴的には、図17及び図18に示すように、押し出し隆起部31を形成してからトップ・セカンド接合部80を形成するまでの過程で、凹ロール91上のトップシートとなる不織布30Sに向かって、その外側に配置された吹き付けノズル95から温風HAを吹き付けることにより、凹ロール91の周面にトップシートとなる不織布30Sを押し付ける。このように、凹ロール91の外側から温風HAを吹き付けると、図16に示すように、凹ロール91の周面にトップシートとなる不織布30Sが押し付けられ、その不織布30Sが遠心力により浮き上がり難くなるのはもちろん、凹ロール91及びその上のトップシートとなる不織布30Sの温度も低下し難いものとなる。よって、トップシート30に形成される押し出し隆起部31の形状のバラツキが防止されるだけでなく、トップ・セカンド接合部80の融着にバラツキも生じ難いものとなる。
【0086】
上述のように凹ロール91の外側から温風HAを吹き付ける場合、凹部91a内に温風HAの逃げ道がないと、温風HAの吹き付けの強さによっては凹部91a内に入り込んだ押し出し隆起部31が不安定になることがあるため、図16に示すように、凹ロール91における凹部91aに通風孔91hを設けることが望ましい。通風孔91hは図示形態のように凹部91aの底部全体とする他、底部の一部又は側面の一部に設けることもできる。
【0087】
温風HAの温度は凹ロール91及び押し込みロール90による加工に影響を及ぼす。すなわち、温風HAを吹き付ける限り、その温度が温風HAの温度が押し込みロール90の温度及び凹ロール91の温度に対して低くても、温風HAでない場合と比べれば格段の冷却防止効果を得られるが、温度が低い以上は凹ロール91及びその上の不織布30Sを冷やす方向に作用し、押し出し隆起部31の形成が不十分になるおそれがある。また、温風HAの温度が高過ぎると、加工対象の不織布30Sが硬くなるおそれがある。よって、温風HAの温度は適宜定めることができるが、押し込みロール90の温度から凹ロール91の温度までの範囲内とすることが望ましい。また、通常の場合、温風HAの温度は60〜130℃程度とすることが望ましい。
【0088】
凹ロール91の大きさや加工速度は特に限定されないが、通常の場合、凹ロール91の回転速度が190〜288/minであり、凹ロール91の半径が78〜136cmであると、トップシートとなる不織布30Sが遠心力により凹ロール91から浮き上がり易くなるとの知見を得ている。よって、温風HAの吹き付けはこのような場合に好適である。
【0089】
吹き付けノズル95の位置(温風HAの吹き付け位置)は、図17(a)に示すように、最も浮き上がりが高くなる位置、つまり、押し出し隆起部31を形成してからトップ・セカンド接合部80を形成するまでの凹ロール91の回転範囲の中央一か所とするだけでも良いが、図17(b)に示すように、凹ロール91の周方向に間隔を空けた複数の位置とし、吹き付け範囲を拡大すると、凹ロール91表面におけるトップシートとなる不織布30Sの浮き上がり防止効果がより一層のものとなるため好ましい。
【0090】
押し込みロール90、凹ロール91及び接合ロール92は、図12及び図17に示すように直線的に配置しても良いが、図18(a)に示すように、押し出し隆起部31を形成してからトップ・セカンド接合部80を形成するまでの凹ロール91の回転角度が90度となるL型配置や、それ以下となるV型配置(図示略)とすることもできる。後二者の配置は、押し出し隆起部31を形成してからトップ・セカンド接合部80を形成するまでの凹ロール91の回転角度が小さいため、凹ロール91表面の不織布のうち浮き上がり可能な部分が短くなり、その結果として凹ロール91表面の不織布の浮き上がりが抑制されるようになるものである。
【0091】
また、図18(b)に示すように、凹ロール91における、押し出し隆起部31の形成位置とトップ・セカンド接合部80の形成位置との間に、周面に多数の押し込み凸部90aが押し出し隆起部31の配列パターンで形成された補助押し込みロール93を配置し、トップシートとなる不織布30Sに対し、押し込みロール90により押し出し隆起部31を形成した後、そのまま凹ロール91に巻き掛けて案内する過程で、補助押し込みロール93の凸部を凹ロール91の凹部91a内に押し込むことにより押し出し隆起部31を再形成し、しかる後に接合ロール92によりトップ・セカンド接合部80を形成するのも、一つの好ましい形態である。このように補助押し込みロール93により押し出し隆起部31を再形成すると、押し出し隆起部31がよりしっかりと形成され、その結果として凹ロール91表面の不織布の浮き上がりが抑制されるようになる。補助押し込みロール93は押し込みロール90と同じものを用いることができるが、異なるロールを用いることもできる。なお、図示形態では、吹き付けノズル95の位置(温風HAの吹き付け位置)は押し込みロール90と補助押し込みロール93との間となっているが、これとともに又はこれに代えて、補助押し込みロール93と接合ロール92との間とすることもできる。
【0092】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後(縦)方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
【0093】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
【0094】
【0095】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0096】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0097】
・吸水量は、JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0098】
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、上記例のようなテープタイプ使い捨ておむつに限られず、パンツタイプやパッドタイプの使い捨ておむつ、あるいは生理用ナプキン等、吸収性物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0100】
A1,A2…MD方向接合範囲、HA…温風、11…液不透過性シート、12…外装シート、12T…ターゲットシート、13…ファスニングテープ、13A…係止部、13B…テープ本体部、13C…テープ取付部、30…トップシート、30S…トップシートとなる不織布、31…押し出し隆起部、40…セカンドシート、40S…セカンドシートの素材、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…側部立体ギャザー、62…ギャザーシート、70…背側伸縮ウエストシート、80…トップ・セカンド接合部、90…押し込みロール、90a…押し込み凸部、91…凹ロール、91a…凹部、91b…接合凸部、91h…通風孔、92…接合ロール、93…補助押し込みロール、95…吹き付けノズル。
図1
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