特許第6332779号(P6332779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6332779
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】輻射熱利用寝具
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/02 20060101AFI20180521BHJP
   A47G 27/02 20060101ALI20180521BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A47G9/02 Z
   A47G9/02 P
   A47G9/02 U
   A47G27/02 102
   A47C27/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-200053(P2017-200053)
(22)【出願日】2017年10月16日
【審査請求日】2017年10月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512043360
【氏名又は名称】日本遮熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】野口 彩乃
【審査官】 石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−314674(JP,A)
【文献】 特開2008−289823(JP,A)
【文献】 特開平10−229934(JP,A)
【文献】 How Space Blankets Work,米国,DEBRA RONCA,2017年 6月 2日,URL,https://adventure.howstuffworks.com/survival/gear/space-blanket.htm
【文献】 A Wearable Furnace: Keeping Toasty Warm With Nanowire Fabric,米国,2015年 1月13日,URL,http://physicsbuzz.physicscentral.com/2015/01/a-wearable-furnace-keeping-toasty-warm.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/02
A47G 9/06
A47G 9/08
B62B 9/00
B62B 9/14
A47C 27/00
A47G 27/02
E04H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性シート基材の少なくとも片面側に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の表材からなる遮熱層を備える遮熱シートを、少なくとも横臥状態の人体の上側に遮熱層を向けて配置することで、人体から直接・間接に放射される輻射熱を遮熱シートの遮熱層で反射させて、人体側へ輻射熱を戻すようにし
前記遮熱シートの遮熱面と、横臥状態の人体との間には、人体の頭部側から足部側にかけて連通する通気空部が生ずるように、前記遮熱シートを所要形状に保持するシート保持体を備えることを特徴とする輻射熱利用寝具。
【請求項2】
前記シート保持体は、弧状のアーチ型骨材を人体の頭部側から足部側にかけて複数配置し、前記遮熱シートを半円筒状に保持するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の輻射熱利用寝具。
【請求項3】
前記遮熱シートの可撓性シート基材における片面最外層には、任意の印刷や焼き付け加工等を施したプリント層を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の輻射熱利用寝具。
【請求項4】
可撓性シート基材の少なくとも片面側に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の表材からなる遮熱層を備える遮熱シートを、少なくとも横臥状態の人体の下側に遮熱層を向けて配置することで、人体から直接・間接に放射される輻射熱を遮熱シートの遮熱層で反射させて、人体側へ輻射熱を戻すようにした輻射熱利用寝具であって、
第一気密シートと第二気密シートとが重ね合わされて形成された任意形状の嚢体と、この嚢体に設けられた吸排気部とを有し、
前記嚢体内に、前記第一気密シートと前記第二気密シートとが密着されることで形成された密着部によって区画された収納領域を複数備え、
前記遮熱シートが、前記収納領域に収容されているとともに、前記吸排気部から前記収納領域に空気を入れたときに、前記遮熱層よりも上側に第一空気貯留部が形成されることを特徴とする輻射熱利用寝具。
【請求項5】
前記吸排気部から前記収納領域に空気を入れたときに、前記遮熱シートの下側に、第二空気貯留部が形成される、
ことを特徴とする請求項4に記載の輻射熱利用寝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から直接・間接に放射される輻射熱を利用して就寝時の体温を効果的に高める輻射熱利用寝具に関する。
【背景技術】
【0002】
就寝時に用いる寝具として、綿布団や羽毛布団などが一般的に用いられているものの、室温が低い冬期には十分な保温効果を得られない場合もある。そこで、ポリエステル布帛の表面にチタンをスパッタリング加工することにより、400Å程度のチタン膜を形成してなる寝具が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の寝具は、表面にチタンをスパッタリング加工した布帛の表面を使用者の身体側に置くようにすることで、エネルギーの吸収が大きく蓄熱性に優れたチタンの効果により、寝具の保温効果を高めることができる。
【0003】
また、遠赤外線の透過・吸収率が低く、反射率が高いというアルミ箔の特性を利用した保温シートを寝具に敷いて用いることが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2に記載の保温シートは、ポリエステル等のクッション性を有する断熱層のからだ側にアルミ箔シートで構成される遠赤外線反射シートを設けると共に、遠赤外線反射シートと断熱層には多数の通気孔を形成したものである。この通気孔を形成しておくことで、こもる湿気を外部に放出させ、就寝中や着用時に蒸し暑さを感じないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−8229号公報
【特許文献2】特開2004−267659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の寝具では、ポリエステル布帛の表面にチタン膜を形成するために、吸湿性あるいは排湿性が損なわれてしまい、湿気がこもって寝苦しくなる可能性が有る。よって、特許文献1に記載の寝具は、高い保温効果を実現できるとしても、吸湿性あるいは排湿性が損なわれるために湿気がこもり易く、必ずしも快適な睡眠を提供できる寝具とは言えない。
【0006】
また、特許文献2に記載の保温シートの場合、十分な通気性を確保するためには、通気効果を得られる開口面積の通気孔を相当数設けておく必要があると考えられるが、通気孔を多数設けるということは、それだけ、遠赤外線反射シートにおけるアルミ箔の総面積が減ぜられることを意味する。そして、アルミ箔の総面積が少なくなれば、アルミ箔の特性による十分な保温効果を発揮できなくなるのである。すなわち、特許文献2に記載の保温シートでは、保温機能と除湿機能とがトレードオフの関係となるため、保温シート本来の保温性能を維持するためには、通気孔をあまり多くすることができず、こもる湿気を十分に外部に放出できない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、人体から直接・間接に放射される輻射熱を利用して就寝時の体温を効果的に高めると共に、湿気がこもることを効果的に防げる輻射熱利用寝具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、可撓性シート基材の少なくとも片面側に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材からなる遮熱層を備える遮熱シートを、少なくとも横臥状態の人体の上側に遮熱層を向けて配置することで、人体から直接・間接に放射される輻射熱を遮熱シートの遮熱層で反射させて人体側へ輻射熱を戻すようにしたことを特徴とする輻射熱利用寝具である。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の輻射熱利用寝具において、前記遮熱シートの遮熱面と、横臥状態の人体との間には、人体の頭部側から足部側にかけて連通する通気空部が生ずるように、遮熱シートを所要形状に保持するシート保持体を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項2に記載の輻射熱利用寝具において、前記シート保持体は、弧状のアーチ型骨材を人体の頭部側から足部にかけて複数配置し、遮熱シートを半円筒状に保持するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、前記請求項1に記載の輻射熱利用寝具において、前記遮熱シートとして、横臥状態の人体の上側に配置する上面遮熱シートと、横臥状態の人体の下に敷く下面遮熱シートとを用い、少なくとも上面遮熱シートの両側部と下面遮熱シートの両側部とを互いに連結することで、寝袋形状としたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、前記請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の輻射熱利用寝具において、前記遮熱シートの可撓性シート基材における片面最外層には、任意の印刷や焼き付け加工等を施したプリント層を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る発明は、前記請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の輻射熱利用寝具において、前記遮熱シートは、敷き布団、カーペット、こたつ敷き或いはこたつ掛けの遮熱カバーとして利用できるようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に係る発明は、任意形状の嚢体内に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材からなる遮熱材を備える遮熱体を、少なくとも横臥状態の人体の下に敷くことで、人体からの輻射熱を遮熱体の遮熱材で反射させて人体側へ輻射熱を戻すようにしたことを特徴とする輻射熱利用寝具である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る輻射熱利用寝具によれば、横臥状態の人体の上側に遮熱層を向けて遮熱シートを配置し、人体から直接・間接に放射される輻射熱を遮熱シートの遮熱層で反射させて人体側へ輻射熱を戻すので、就寝時の体温を効果的に高めると共に、湿気がこもることを効果的に防げる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る輻射熱利用寝具の第1実施形態を示し、(a)は敷き布団に横臥した人体の上側を覆うように輻射熱利用寝具を配置した状態の正面図、(b)は図1(a)において遮熱シートの手前側を捲った状態の正面図、(c)は頭部側の側面図、(d)は図1(b)におけるId領域の部分拡大図である。
図2】本発明に係る輻射熱利用寝具の第2実施形態を示し、(a)は輻射熱利用寝具の組立説明図であり、(b)は輻射熱利用寝具を利用した状態の外観説明図、(c)は第2実施形態に係る輻射熱利用寝具の改変例を示す外観説明図である。
図3】輻射熱利用寝具に用いる遮熱シートの利用例を示す説明図である。
図4】本発明に係る輻射熱利用寝具の第3実施形態を示し、(a)は外観斜視図、(b)は輻射熱利用寝具を敷いて利用者が横臥した状態の説明図、(c)は収納体と遮熱体の概略断面図、(d)は遮熱体利用寝具の折り畳み動作説明図、(e)は第3実施形態に係る輻射熱利用寝具の改変例を示す外観斜視図、(f)は改変例の遮熱体利用寝具の折り畳み動作説明図である。
図5】本発明に係る輻射熱利用寝具の第4実施形態を示し、(a)は未使用時の平面図、(b)は使用状態とした輻射熱利用寝具を敷いて利用者が横臥した状態の説明図、(c)は気密シートと遮熱体の概略断面図である。
図6】本発明に係る輻射熱利用寝具の第5実施形態を示し、(a)は空気を充填された使用状態の平面図、(b)は使用状態とした輻射熱利用寝具を敷いて利用者が横臥した状態の説明図、(c)は使用状態における収納領域の概略断面図、(d)は空気を抜いた非使用状態における収納領域の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る輻射熱利用寝具の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1に示すのは、第1実施形態に係る輻射熱利用寝具1であり、遮熱シート2とシート保持体3により構成される。そして、この輻射熱利用寝具1は、横臥状態の人体(敷き布団の上に横たわった利用者)に直接当たるように上掛けするものではなく、人体と輻射熱利用寝具1との間に適宜な空間が生ずるように配置するものである。
【0019】
上記遮熱シート2は、ゴム、ガラス、炭素或いはポリエステル等の化学繊維からなる可撓性シート基材21の少なくとも片面側へ、ポリエチレン等の溶着層22によって、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材からなる遮熱層23を熱融着したものである。また、可撓性シート基材21の他面側には、任意の印刷や焼き付け加工等を施したプリント層24を設けてあり、このプリント層24によって、室内環境にマッチした柄や模様等を付けておくことができる。この遮熱シート2においては、プリント層24側の装飾面2aが外向きとなり、遮熱層23側の遮熱面2bが内向き(横臥状態の人体側に向けて配置される状態)となるように使用する。
【0020】
遮熱シート2における遮熱層23は、6〜12〔μm〕程度のアルミホイル等で構成可能であるから、遮熱シート2全体の厚みは0.2〔mm〕程度と非常に薄く作ることができ、遮熱シート2は非常に軽量化できる。そして、比較的大判(例えば、1.8〔m〕×1.8〔m〕の略正方形)となる遮熱シート2を折り畳んで小さくしたり筒状に丸めたりすれば取り扱い易くなるので、軽量化と相まって、遮熱シート2は可搬性に優れたものとなる。また、遮熱シート2にプリント層24を設ける必要が無い場合、可撓性シート基材21の両側に遮熱層23を設けておけば、遮熱シート2をリバーシブルで用いることが可能となる。さらに、遮熱シート2の四側縁部は剥き出しとせず、一定幅のテープ状の縁飾り等で四側縁部を覆っておけば、可撓性シート基材21から遮熱層23が剥離する等の不具合が生じることを抑制できる。
【0021】
一方、上記シート保持体3は、例えば、半円弧状の第1アーチ型骨材31A、第2アーチ型骨材31B、第3アーチ型骨材31C、第4アーチ型骨材31Dを、横臥状態の人体の頭部側(例えば、首付近)から足部(例えば、敷き布団よりも適宜外側となる位置)にかけてほぼ等距離間隔に配置したもので、第1〜第4アーチ型骨材31A〜31Dのアーチに跨がるように広げた遮熱シート2を被せると、遮熱シート2は半円筒状の形態に保持されることとなる。そして、半円筒状に保持された遮熱シート2の遮熱面2bと、横臥状態の人体との間には、頭部側開口4aから足部側開口4bにかけて連通する通気空部4が生ずる。このとき、適正位置に配置した遮熱シート2がシート保持体3からずれて大きな隙間が空いたり、シート保持体3から落ちたりしないように、適宜なシート固定手段(例えば、平板なマグネットシート等である着磁された固着板材32)を設けておくことが望ましい。
【0022】
上記第1〜第4アーチ型骨材31A〜31Dは、軽量の中空パイプを複数連結して半円弧状にしたアーチ型パイプ311の両端部分に定置部312を設けた構造としてあり、アーチ型パイプ311が略鉛直面に沿った起立状態で、第1〜第4アーチ型骨材31A〜31Dを畳や床等の寝具設置面に定置することができる。このとき、第1〜第4アーチ型骨材31A〜31Dの配置間隔を一定にすると共に、第1〜第4アーチ型骨材31A〜31Dが倒れ難くするように、第1アーチ型骨材31Aの定置部312近傍と第2アーチ型骨材31Bの定置部312近傍を連結する第1連結部材33A、第2アーチ型骨材31Bの定置部312近傍と第3アーチ型骨材31Cの定置部312近傍を連結する第2連結部材33B、第3アーチ型骨材31Cの定置部312近傍と第4アーチ型骨材31Dの定置部312近傍を連結する第3連結部材33Cを用いても良い。そして、第1〜第3連結部材33A〜33Cを着脱可能にすると共に、第1〜第4アーチ型骨材31A〜31Dの各アーチ型パイプ311も複数の分割パーツに分離可能な構成としておけば、個々のパーツに分解することで、シート保持体3も持ち運びに適したものとなる。
【0023】
また、第1〜第4アーチ型骨材31A〜31Dにおける各定置部312の少なくとも外側(敷き布団に向いていない側)には、平坦な強磁性面を設けてあり、この強磁性面と固着板材32との間に遮熱シート2を挟み込むようにすれば、遮熱シート2を固定することができ、固着板材32を取り外せば、遮熱シート2の固定を解除できる。なお、シート固定手段としては、固着板材32を用いるものに限らず、例えば、遮熱シート2の両サイドに適数設けた固着孔を、第1〜第4アーチ型骨材31A〜31Dそれぞれの定置部312に設けた固着突片に引っかけて固定する構造でも良いし、第1〜第4アーチ型骨材31A〜31Dそれぞれの定置部312に設けた鰐口クリップ等によって遮熱シート2の縁部を挟んで固定するような構造としても良い。
【0024】
上述した第1実施形態に係る輻射熱利用寝具1は、敷き布団に寝た利用者の上側を覆うように配置して用いるが、人体と遮熱シート2の遮熱面2bとの間には適宜な空間である通気空部4が確保されているので、利用者が毛布や薄手の掛け布団などをかけて寝る場合でも、輻射熱利用寝具1が障害となることはない。そして、人体から直接放射される輻射熱あるいは人体によって暖まった毛布や掛け布団から間接放射される輻射熱は、半円筒状に配置された遮熱シート2の遮熱面2bに到達すると、この遮熱面2bにより大部分(例えば、97%)が反射されて人体側に戻るので(例えば、図1(c)を参照)、人体や毛布(あるいは掛け布団)に吸収されて熱となる。従って、人体や毛布等から輻射熱として失われた熱量が効率良く人体側に戻されるので、就寝時の体温を効果的に高めることができる。
【0025】
加えて、就寝時の発汗で人体から蒸散した湿気は、通気空部4内に溜まることとなるが、通気空部4は頭部側開口4aおよび足部側開口4bを介して外気と連通しているので、輻射熱利用寝具1を設置した部屋の室温よりも通気空部4内の温度が高まると、温度差による自然対流が生じて、通気空部4内の高温・高湿度の空気は低温低湿度の空気と入れ替わることとなる。すなわち、第1実施形態に係る輻射熱利用寝具1は、自然通気による除湿機能を発揮できるので、人体の回りに湿気がこもることを効果的に防ぎ、快適な睡眠を提供できる。しかも、湿気を含んだ暖かい空気は通気空部4内の高い位置に溜まってゆくので、人体よりも適宜離れた高い位置で気流が生じ易くなり、人体や毛布等の回りを包む暖気まで気流によって引き剥がされることを抑制できる。従って、輻射熱利用寝具1の利用者が自然通気によって寒い思いをすることも防げる。
【0026】
なお、第1実施形態の輻射熱利用寝具1では、遮熱シート2を半円筒形状に保持できるシート保持体3を用いたが、これに限定されるものではなく、断面が略四角形状あるいは五角以上の多角形状とした半多角柱状に遮熱シート2を保持できるようなシート保持体を用いるようにしても良い。また、中空パイプのような軽量化素材ではなく、剛性の高い構造体により遮熱シート2を所要形状に保持することと併せて、地震等での落下物から人体を守れるような機能を付加しても良い。ただし、シート保持体3によって遮熱シート2を保持したときに形成される通気空部4が広くなり過ぎる(人体表面から遮熱シート2の遮熱面2bまでの距離が遠過ぎる)ようでは、遮熱シート2から人体側に戻せる輻射熱の量が減ってしまうし、逆に、通気空部4が狭過ぎる(人体表面から遮熱シート2の遮熱面2bまでの距離が近過ぎる)と、輻射熱利用寝具1の利用時に人が遮熱シート2の下に入ったり出たりすることが煩雑になる上、寝具利用者が就寝時に寝返りを打つことさえ困難になる可能性がある。すなわち、遮熱シート2の保持形状を決定するシート保持体3の構造は、輻射熱の効率的利用と寝具利用者の利便性を勘案して、通気空部4が好適なサイズ・形状となるように設定しておくことが望ましい。本実施形態に係る輻射熱利用寝具1のように、敷き布団の横幅程度を直径とする半円筒状に遮熱シート2を保持するサイズ・形状は理に適ったものである。
【0027】
上記のように構成した第1実施形態の輻射熱利用寝具1は、一般家庭の寝室で使用できることは勿論、キャンプなどのアウトドアで使用したり、介護用ベッドを覆うように配置して用いたり、広い講堂など災害時の避難所で用いたりすることもできる。なお、第1実施形態に係る輻射熱利用寝具1は、ちょうど肩まで覆うような位置に遮熱シート2を配置する構造としたが、頭頂部まで完全に隠れるように遮熱シート2で覆う配置とし、就寝時のパーソナルスペースを遮熱シート2で完全に隠せるようにすると、災害時の避難所での利用に適したものとなる。
【0028】
上述した第1実施形態の輻射熱利用寝具1は、好適な通気空部4を形成できるようにシート保持体3を用いて遮熱シート2の形状を保持できるようにしたものであるが、輻射熱利用寝具1を持ち運ぶ場合、遮熱シート2と併せてシート保持体3も運ばなければならず、シート保持体3を分離可能な軽量構造にしたとしても、やはり遮熱シート2の可搬性の高さには及ばない。そこで、シート保持体3を用いずに構成できる第2実施形態の輻射熱利用寝具について説明する。
【0029】
図2に示すのは、第2実施形態に係る輻射熱利用寝具1′であり、これは、一対の遮熱シート2′を用いて寝袋形状としたものである。遮熱シート2′は、上述した第1実施形態の輻射熱利用寝具1における遮熱シート2と同様に、プリント層24側である装飾面2aと遮熱層23側である遮熱面2bを備えるもので、その一側部(寝具利用時に頭部あるいは足部とならない二側部の一方)に雄型スナップボタン25を適数設け、他側部に雌型スナップボタン26を適数設けたものである。すなわち、一方の遮熱シート2′の雄型スナップボタン25と他方の遮熱シート2′の雌型スナップボタン26とが対向するように配置して各ボタンを閉じると、一対の遮熱シート2′の両側部を互いに連結することができ、寝袋形状となる。なお、一般的な寝袋は足部側を閉じて使うが、本実施形態に係る輻射熱利用寝具1′は、頭部側も足部側も開いており、寝具としての使用時には、どちらを頭側として使っても構わない。
【0030】
輻射熱利用寝具1′の非使用時には、一対の遮熱シート2′がほぼ重なった平板状で、そのまま折り畳んだり丸めたりして、簡単に持ち運ぶことができる。無論、2枚の遮熱シート2′にバラして、個別に保管するようにしても構わない。また、輻射熱利用寝具1′を使用するときには、閉じられてない二側部の一方に頭を、他方に足を入れるように潜り込めば良い。このとき、人体の下側に配置される遮熱シート2′は、便宜上、下面遮熱シートとなり、人体の上側に配置される遮熱シート2′は、便宜上、上面遮熱シートとなる。なお、輻射熱利用寝具1′をアウトドア等で使う場合、下面遮熱シートは剥き出しの地面など冷たい凹凸面に接する可能性があるので、適宜なクッション性と断熱性を遮熱シート2′に付加できるよう、2〜5〔mm〕厚程度のウレタン素材を可撓性シート基材21として用いても良い。
【0031】
上記のように構成した輻射熱利用寝具1′を利用するとき、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材からなる遮熱層23を備える遮熱シート2′は、毛布や掛け布団のように人体表面へ柔らかく纏わり付くようなことはなく、例えば、足先や胸元など、人体の突出した部分に当たって多少折れ曲がる程度であるから、その隙間として、頭部側開口4aから側部側開口4bにかけて連通する通気空部4が形成される。そして、この通気空部4により、輻射熱利用寝具1′の利用者が就寝時に発汗しても、内部に湿気が篭もって蒸し暑くなることを効果的に防げる。無論、遮熱シート2′の遮熱面2bにより人体側へ効率良く輻射熱を戻せるので、就寝時の体温を効果的に高める機能も発揮できる。
【0032】
上述した輻射熱利用寝具1′は、上面遮熱シートおよび下面遮熱シートとして共通の遮熱シート2′を用いるものとしたが、これらを別々に構成しても良い。例えば、図2(c)に示す輻射熱利用寝具1″は、上面遮熱シート2−1と下面遮熱シート2−2の両側部を連結して寝袋形状とするものであるが、下面遮熱シート2−2の上縁側は上面遮熱シート2−1の上縁側よりも適宜長くなるように形成しておくことで、寝具利用者の頭部まで下面遮熱シート2−2を敷けるようにしたものである。また、上面遮熱シート2−1の両側部と下面遮熱シート2−2の両側部を連結する構造は別々に設けておくことができるので、連結構造の自由度を高めることができる。例えば、この輻射熱利用寝具1″においては、線ファスナー27によって上面遮熱シート2−1と下面遮熱シート2−2を着脱可能な構造とした。
【0033】
以上説明した輻射熱利用寝具1の遮熱シート2は、寝具として用いない場合、折り畳んだり丸めたりして、場所をとらずに収納しておくことができるものの、遮熱カバーとして有効利用することも可能である。例えば、図3に示すように、こたつ50のこたつ布団51と上掛け52との間に遮熱シート2をかけておくことで、遮熱カバーとして利用できる。また、遮熱シート2をこたつ敷き53の下側に敷く遮熱カバーとして利用できる。あるいは、フローリング面Fとカーペット60との間に複数枚の遮熱シート2を並べて敷けば、広い面に対応した遮熱カバーとして利用できる。
【0034】
次に、横臥状態の人体の下に敷いて用いる輻射熱利用寝具について説明する。
【0035】
図4に示すのは、第3実施形態に係る輻射熱利用寝具100であり、折り畳み可能なクッションマット状に構成したものである。すなわち、輻射熱利用寝具100は、嚢体たる収納体110を構成する第1収納部111a、第2収納部111b、第3収納部111c、第3収納部111dのそれぞれに扁平な略四角板状の遮熱体120を収納したものであり、第1〜第4収納部111a〜111dを一列状に広げて敷けば、寝具利用者が横たわれるクッションマットとなり、人体からの輻射熱を遮熱体120で反射させて人体側へ戻すのである。
【0036】
上記遮熱体120は、例えばクッション性の高い発泡ウレタン等を可撓性シート基材121とし、その両面へ、ポリエチレン等の溶着層122によって、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材からなる遮熱層123を熱融着したものである。なお、輻射熱利用寝具100を一般的なシングルマットと同程度の200〔cm〕×100〔cm〕に形成する場合、各遮熱体120は50〔cm〕×100〔cm〕と大型になるが、各遮熱体120の厚みを5〜6〔mm〕程度にしておけば、輻射熱利用寝具100の持ち運びに負担を感じない程度の軽量化が可能である。また、遮熱体120は、両面に遮熱層120を設けてあるので、輻射熱利用寝具100のどちらの面を上側に使っても遮熱効果がある。
【0037】
上記収納体110は、例えば、布(薄い布でも、帆布のような厚手の生地でも良い)を縫い合わせて遮熱体120を収納できる内空状の第1〜第4収納部111a〜111dを作り、第1収納部111aと第2収納部111bを第1連結部112aにより連結し、第2収納部111bと第3収納部111cを第2連結部112bにより連結し、第3収納部111cと第4収納部111dを第3連結部112cにより連結したものである。このとき、第1連結部112aと第3連結部112cを同じ側(図4(a),(b)においては下面側)に設けると共に、第2連結部112bは反対側(図4(a),(b)においては上面側)に設けることで、第1〜第4収納部111a〜111dに収納された各遮熱体120を重ねるように折り畳むことができる(例えば、図4(d)を参照)。折り畳んだ状態の輻射熱利用寝具100は、椅子(例えば、座面の硬いベンチ130)等に敷くクッションとして使うこともできる。また、収納体110の外表面に防水加工を施しておくと、屋外での利用に適したものとなる。
【0038】
上述した第3実施形態に係る輻射熱利用寝具100は、広げると所要の大きさとなるので、そのまま寝具として使えるものの、折り畳んだ状態でもそれなりの大きさがあり、可搬性が高いとは言えない。そこで、ポケットサイズにすることで、可搬性を高められるようにした輻射熱利用寝具100′を図4(e),(f)に示す。
【0039】
この輻射熱利用寝具100′も、嚢体たる収納体110′を構成する第1収納部111a、第2収納部111b、第3収納部111c、第3収納部111dのそれぞれに扁平な略四角板状の遮熱体120を収納したものであり、例えば、第1収納部111aと第2,第4収納部111b,111dが隣接するように第1〜第4収納部111a〜111dを田の字状に広げると(例えば、図4(e)を参照)、寝具利用者の下側に敷くことができる大きさ(例えば、一辺が20〔cm〕〜30〔cm〕の略四角形状)のクッションマットとなり、人体からの輻射熱を遮熱体120で反射させて人体側へ戻すのである。
【0040】
上記収納体110′は、例えば、防水性のある素材(例えば、ポリ塩化ビニル等の樹脂素材や防水処理を施した布等)で遮熱体120を収納できる内空状の第1〜第4収納部111a〜111dを作り、第1収納部111aと第2収納部111bを第1連結部112aにより連結し、第2収納部111bと第3収納部111cを第2連結部112bにより連結し、第3収納部111cと第4収納部111dを第3連結部112cにより連結したものである。なお、第1収納部111aと第4収納部111dは連結していないので、面ファスナーなどの固定手段で第1収納部111aと第4収納部111dを連結し、第1〜第4収納部111a〜111dが田の字状に保持されるようにしても良い。
【0041】
上記収納体110′における第1連結部112aと第3連結部112cを同じ側(図4(e)においては上面側)に設けると共に、第2連結部112bは反対側(図4(e)においては下面側)に設けることで、第1〜第4収納部111a〜111dに収納された各遮熱体120を重ねるように折り畳むことができる(例えば、図4(f)を参照)。なお、第1〜第4収納部111a〜111dの折り畳み手法はこれに限らず、例えば、ハンカチを折り畳むように縦折りと横折りで畳めるようにしても良い。これら第1〜第4収納部111a〜111dは、それぞれ一辺が概ね10〔cm〕〜15〔cm〕程度で、厚さが5〜6〔mm〕程度の遮熱体120を収納してあるので、折り畳むと、ハンドバッグや上着のポケット等に入るコンパクトサイズとなる。
【0042】
そして、田の字状に広げた輻射熱利用寝具100′を複数用意しておき、面ファスナー等の連結手段によって複数の輻射熱利用寝具100′を縦横に適宜連結すれば、人体が横たわれる大きさにして使うことができる。なお、輻射熱利用寝具100′単体でも、腰・背中・肩・足下などの必要部位にのみ敷いて用いることができるし、硬い座面などに敷くクッションとしても用いることができる。また、輻射熱利用寝具100′の収納体110′は防水性が高いので、輻射熱利用寝具100′を湿った地面などに敷いて使うことができ、アウトドアでの利用に適している。
【0043】
図5に示すのは、膨縮可能なエアマット状に構成した第4実施形態に係る輻射熱利用寝具200であり、空気を入れて膨らませたり空気を抜いて平坦な状態に戻したりできる収納体210の内部に複数の遮熱体220を収納したものである。
【0044】
上記収納体210は、機密性の高い素材(例えば、軟質PVC樹脂など)でできた略長方形の第1気密シート211と第2気密シート212を重ねて、四側縁部を密着(例えば、熱融着)させた辺縁密着部213を形成すると共に、収納体210の長手方向(以下、これを縦方向という)に第1縦密着部214aと第2縦密着部214bと第3縦密着部214cと第4縦密着部214dを不連続で形成し、第1縦密着部214aと第2縦密着部214bとの間の短手方向(以下、これを横方向という)に第1横密着部215aと第2横密着部215bを不連続で形成し、第2縦密着部214bと第3縦密着部214cとの間の横方向に第3横密着部215cと第4横密着部215dを不連続で形成し、第3縦密着部214cと第4縦密着部214dとの間の横方向に第5横密着部215eと第6横密着部215fを不連続で形成する。
【0045】
上記のように各種密着部を形成した収納体210には、略四角形で平板状の遮熱体220をそれぞれ収納できる8つの領域が形成される。具体的には、辺縁密着部213と第1縦密着部214aと第1横密着部215aとで囲まれた第1収納領域216a、辺縁密着部213と第1横密着部215aと第2縦密着部214bと第3横密着部215cとで囲まれた第2収納領域216b、辺縁密着部213と第3横密着部215cと第3縦密着部214cと第5横密着部215eとで囲まれた第3収納領域216c、辺縁密着部213と第5横密着部215eと第4縦密着部214dとで囲まれた第4収納領域216d、辺縁密着部213と第1縦密着部214aと第2横密着部215bとで囲まれた第4収納領域216e、辺縁密着部213と第2横密着部215bと第2縦密着部214bと第4横密着部215dとで囲まれた第6収納領域216f、辺縁密着部213と第4横密着部215dと第3縦密着部214cと第6横密着部215fとで囲まれた第7収納領域216g、辺縁密着部213と第6横密着部215fと第4縦密着部214dとで囲まれた第8収納領域216hである。
【0046】
上記収納体210に形成した第1〜第8収納領域216a〜216hは、完全には区画されておらず、各密着部の間に生じた空隙を介して連通しているので、吸排気部217から収納体210内に空気を入れると、第1〜第8収納領域216a〜216hの全領域を膨らませることができる。
【0047】
上記遮熱体220は、例えば、四つ角を弧状に面取りした略四角形状の平板な遮熱シート221と、遮熱シート221の四側縁を囲む額縁状に形成された縁部ガード体222から成る。遮熱シート221は、不織布等からなる可撓性シート基材221aの両面にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材からなる遮熱層221bを形成したもので、0.2〔mm〕程度の厚さである。縁部ガード体222は、収納体210の内部を傷つけるような先鋭部が生じないように、外側面が半円弧状となる弧状摺動面222aとする。なお、遮熱体220が収納体210内を低摩擦で摺動できるようにするため、縁部ガード体222を低摩擦の素材(例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等)で形成するか、あるいは弧状摺動面222aを低摩擦材料でコーティングする。また、各遮熱体220は、空気を抜いた収納体210における第1〜第8収納領域216a〜216hよりも一回り小さいが(図5(a)を参照)、収納体210内に空気を入れて第1〜第8収納領域216a〜216hが膨らんだときには、各領域を区画する各密着部の間にちょうど収まる大きさである(図5(b),(c)を参照)。
【0048】
上記のように構成した輻射熱利用寝具200は、不使用時に第1縦密着部214a〜第4縦密着部214dおよび第1横密着部215a〜第8横密着部215fに沿って折り畳むことで、ほぼ遮熱体220の大きさにして収納することができる。また、遮熱シート220も極めて薄く形成してあるので、折り畳んだ輻射熱利用寝具200全体の厚みも非常に薄くでき、可搬性に優れたものとなる。
【0049】
一方、輻射熱利用寝具200を使用するときには、吸排気部217から収納体210内へ給気することで、第1〜第8収納領域216a〜216hを均等に膨らませる。このとき、第1気密シート211と第2気密シート212は内部に空気が入ることで上下方向へ互いに離れ、その分だけ縦横が縮んでゆくこととなり、第1〜第8収納領域216a〜216hの各領域もそれぞれ縦横に縮んでゆく。このとき、第1〜第8収納領域216a〜216h内に収納されている各遮熱体220は、第1〜第8収納領域216a〜216hの収縮に追随して収縮することはないが、第1〜第8収納領域216a〜216h内で自由に動けるので、遮熱体220が置かれている底部が縦横に縮んだら、縦横方向に広い空間のある上方へと移動する。特に、遮熱体220の縁部ガード体222には弧状摺動面222aを形成してあるので、遮熱体220が第1〜第8収納領域216a〜216hの内面に引っかかって動かなくなるような不具合は生じ難く、膨張時に縦横が最も広い状態となっている各密着部が位置する平面上(第1〜第8収納領域216a〜216hにおける上下方向のほぼ中央:図5(c)を参照)に収まることとなる。
【0050】
したがって、第1〜第8収納領域216a〜216hを膨らませたとき、遮熱体220と第1気密シート211との間に生じる上側空気貯留部218aと、遮熱体220と第2気密シート212との間に生じる下側空気貯留部218bとが、ほぼ均等となり、第1気密シート211を下向きにして使っても、第2気密シート212を下向きにして使っても、輻射熱利用寝具200上に横たわった人体からの輻射熱を遮熱体220で反射させて人体側へ戻すことができる。
【0051】
上述した第4実施形態に係る輻射熱利用寝具200は、上下リバーシブルで使用できる反面、遮熱体220に縁部ガード体222を設ける必要があるために高コストになってしまう。そこで、低コストで製造できる膨縮可能なエアマット状に構成した輻射熱利用寝具を、図6に示す第5実施形態に基づき説明する。
【0052】
第5実施形態に係る輻射熱利用寝具300は、空気を入れて膨らませたり、空気を抜いて平坦な状態に戻したりできる収納体310の内部に複数の遮熱体320を収納したものである。
【0053】
上記収納体310は、機密性の高い素材(例えば、軟質PVC樹脂など)でできた略長方形で8つの膨出領域が形成された第1気密シート311と、略長方形で平坦な第2気密シート312を重ねて、四側縁部を密着(例えば、熱融着)させた辺縁密着部313を形成すると共に、収納体310の長手方向(以下、これを縦方向という)に第1縦密着部314aと第2縦密着部314bと第3縦密着部314cと第4縦密着部314dを不連続で形成し、第1縦密着部314aと第2縦密着部314bとの間の短手方向(以下、これを横方向という)に第1横密着部315aと第2横密着部315bを不連続で形成し、第2縦密着部314bと第3縦密着部314cとの間の横方向に第3横密着部315cと第4横密着部315dを不連続で形成し、第3縦密着部314cと第4縦密着部314dとの間の横方向に第5横密着部315eと第6横密着部315fを不連続で形成する。
【0054】
上記のように各種密着部を形成した収納体310は、第1気密シート311に形成した8つの膨出領域が各密着部で区画される。具体的には、辺縁密着部313と第1縦密着部314aと第1横密着部315aとで囲まれた第1膨出領域316a、辺縁密着部313と第1横密着部315aと第2縦密着部314bと第3横密着部315cとで囲まれた第2膨出領域316b、辺縁密着部313と第3横密着部315cと第3縦密着部314cと第5横密着部315eとで囲まれた第3膨出領域316c、辺縁密着部313と第5横密着部315eと第4縦密着部314dとで囲まれた第4膨出領域316d、辺縁密着部313と第1縦密着部314aと第2横密着部315bとで囲まれた第4膨出領域316e、辺縁密着部313と第2横密着部315bと第2縦密着部314bと第4横密着部315dとで囲まれた第6膨出領域316f、辺縁密着部313と第4横密着部315dと第3縦密着部314cと第6横密着部315fとで囲まれた第7膨出領域316g、辺縁密着部313と第6横密着部315fと第4縦密着部314dとで囲まれた第8膨出領域316hである。
【0055】
上記収納体310に設けた第1〜第8膨出領域316a〜216hは、必要十分な空気が封入されて膨らんでいるとき、何れも扁平な四角錘台形状であり、錘台の上底となる平坦面に寝具利用者が横たわることができる(図6(b)を参照)。一方、第1〜第8膨出領域316a〜216hにおける錘台の下底となる平坦面(第1〜第8膨出領域316a〜216hにそれぞれ対応する第2気密シート312の内面)には、それぞれ略四角形状の遮熱体320を設ける。
【0056】
上記遮熱体320は、第1〜第8膨出領域316a〜216hに対応する第2気密シート312の内面(図6(b)〜(d)においては上面)に、アルミホイル等の遮熱シート321をそれぞれ貼着することで構成したが、この構成に限らない。例えば、不織布や樹脂フィルムをシート基材として片面にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材からなる遮熱層を形成することで遮熱体を構成し、遮熱層が外表面となるように第2気密シート312の内面にそれぞれ取り付けるようにしても良い。何れにしても、遮熱体320は廉価に設けることができ、遮熱体利用寝具300のコストを低減できる。
【0057】
上記のように構成した輻射熱利用寝具300を使用するとき、吸排気部317から収納体310内へ給気する。これにより、第1〜第8収納領域216a〜216h本来の扁平な四角錘台形状が保持され、エアクッションとして機能する(図6(c)を参照)。また、輻射熱利用寝具300上に横たわった人体からの輻射熱を遮熱体320で反射させて人体側へ戻すことができる。
【0058】
また、輻射熱利用寝具300を使用しないときは、収納体310内から空気を抜く。これにより、第1気密シート311の膨出部が自重で潰れて、第1〜第8膨出領域316a〜216h本来の扁平な四角錘台形状が維持できなくなり、第2気密シート312上へ重なるようにしぼむので、第1気密シート311側も平坦に近い薄さとなる(図6(d)を参照)。よって、輻射熱利用寝具300を各密着部に沿って折り畳むと、嵩張らない大きさとなり、収納に適したものとなる。
【0059】
以上、本発明に係る輻射熱利用寝具の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。
【符号の説明】
【0060】
1 輻射熱利用寝具(第1実施形態)
2 遮熱シート
21 可撓性シート基材
23 遮熱層
3 シート保持体
4 通気空部
4a 頭部側開口
4b 側部側開口
【要約】
【課題】人体から直接・間接に放射される輻射熱を利用して就寝時の体温を効果的に高めると共に、湿気がこもることを効果的に防げる輻射熱利用寝具を提供する。
【解決手段】可撓性シート基材21の片面側へアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材からなる遮熱層23を設けた遮熱シート2を、シート保持体3の第1〜第4アーチ型骨材31A〜31Dのアーチに跨がるように広げて被せると、遮熱シート2が半円筒状の形態に保持された輻射熱利用寝具1を、敷き布団に寝た利用者の上側を覆うように配置すると、人体から輻射熱として失われた熱量が遮熱シート2で効率良く人体側に戻されて暖かくなると共に、遮熱シート2の遮熱面2bと横臥状態の人体との間に、頭部側開口4aから足部側開口4bにかけて連通する通気空部4が生じるので、就寝時の発汗で人体から蒸散した湿気は自然通気で排除され、人体の回りに湿気がこもることを防げる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6