(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺帯状の支持体シート上に含水ゲル層前駆体を形成し、前記支持体シート及び前記含水ゲル層前駆体を有する積層体から型抜きによって所定形状の含水ゲル層を有する複数の含水ゲルシート材を形成する含水ゲルシート材の製造方法であって、
含水ゲル組成物を前記支持体シートの長手方向に沿って連続的に塗布して前記含水ゲル層前駆体を形成する塗布工程と、
前記積層体の平面領域において、前記含水ゲル層となる領域以外の領域を型押し、互いに離間し隣接する含水ゲル層となる領域に該領域の間に存在する前記含水ゲル組成物を押し込み、前記含水ゲル層を成形する型押し工程と、
前記型押しされた各領域で前記積層体をカットして前記含水ゲルシート材を型抜きする型抜き工程と、を有し、
前記型押し工程と前記型抜き工程とを、同一の平坦ロールの円周の曲面上で連続的に行う含水ゲルシート材の製造方法。
前記塗布工程において、最終製品としての含水ゲルシート材に必要な含水ゲル層の厚み又は単位面積当たりの質量よりも少ない厚み又は単位面積当たりの質量を有する前記含水ゲル層前駆体を形成し、
前記型押し工程において、前記含水ゲル層前駆体を型押しすることで前記含水ゲル組成物を前記含水ゲル層となる領域内へ移動させ、最終製品に必要な含水ゲル層の厚み又は単位面積当たりの質量を得る請求項1記載の含水ゲルシート材の製造方法。
前記型押し工程もしくは前記型抜き工程の工程中または後工程において、前記含水ゲル層又は前記含水ゲル層前駆体の厚みを平準化する均し工程を有する請求項1又は2に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
前記型押し工程が、複数の工程に分割され、前記含水ゲル組成物を徐々に移動させていく工程を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
前記塗布工程において形成された前記含水ゲル層前駆体上に長尺帯状の基材シートを積層する工程を有し、前記型押し工程及び前記型抜き工程は、前記支持体シート又は前記基材シートのうち変形しやすい材料側から型押し及び型抜きを行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る積層体の製造方法の好ましい一実施形態(第1実施形態)について、
図1および
図2を参照して、以下に説明する。
【0011】
まず、
図1を参照して、製品としての含水ゲルシート材の1例を説明する。
図1には、含水ゲルシート材10の断面図が示されている。含水ゲルシート材10は、支持体シート1、含水ゲル層2、基材シート3の3層構造からなる。
支持体シート1及び基材シート3の少なくともいずれか1方は柔軟な変形し易い素材からなる。本実施形態では、基材シート3が柔軟な変形し易い素材である不織布からなり、支持体シート1が硬質のフィルムからなる。身体へ貼付して使用することを考慮して、硬質のフィルムからなる支持体シート1が離型シートをなす。すなわち、含水ゲルシート材10から剥離シートとしての支持体シート1を剥がし、含水ゲル層2の肌当接面2Aを肌に貼着して使用される。なお、含水ゲルシート材10の層構造は3層に限定されるものではなく、2層であってもよく、4層以上であってもよい。例えば、基材シート3は、1層でもよく、2層ないしそれ以上であってもよい。また含水ゲルシート材10として、前記3層構造にさらに別の部材が配される構造であってもよい。
以下の含水ゲルシート材の製造方法の好ましい実施形態では、フィルムからなる支持体シート1、含水ゲル層2、及び不織布からなる基材シート3の3層構造の含水ゲルシート材10の製造方法として説明する。
【0012】
図2(A)には、含水ゲルシート材の製造方法の好ましい一実施形態(第1実施形態)の要部が示されている。この含水ゲルシート材の製造方法では、型押し工程50で、最終製品(完成製品)の含水ゲル層2となる領域(成形領域P)の外側の領域(切り落とし可能領域S)の含水ゲル組成物を全て型押して押出し、最終製品の含水ゲル層を成形する(
図2(B)〜(E)参照)。このとき、型押しにより、含水ゲル組成物が、互いに離間し隣接する該含水ゲル層となる成形領域Pに押し込まれ、無駄なく最終製品の含水ゲル層2として利用できる。従来は型抜きにより切り落とされていた含水ゲル組成物を、本発明ではほとんどを前記含水ゲル層の成形に利用するので、含水ゲルシート材の歩留まりが向上する。例えば、本発明では塗布量の9割以上の含水ゲル組成物を含水ゲル層として利用できる。また、型押し工程50により、後の型抜き工程60において含水ゲル組成物が切り落とされないので機械汚染を防止できる。なお、
図2(B)〜(E)では、積層体10C及び含水ゲルシート材10の中間層である含水ゲル層前駆体201及び含水ゲル層2の理解のため、基材シート連続体300側が無いものとして示している。この点は、
図5(A)及び(B)、
図12(B)においても同様である。
なお、成形領域Pの平面形状は、型抜きされる含水ゲルシート材10に収まる形状である。本実施形態においては、含水ゲルシート材10及び成形されるゲル層2の平面形状は長方形であるが、これに限定されることなく、物品の用途等により任意の所定形状とすることができる。
【0013】
この型押し工程50および型抜きの工程60を含め、本実施形態の含水ゲルシート材の製造方法の各工程について以下に説明する。なお、含水ゲル層2を形成する「含水ゲル組成物」は、調製段階から製品最終段階に向かうにつれ時間とともにゲル化(例えば架橋反応)が進行する。すなわち加工段階では、流動性をある程度有する中間体とされている。本発明の製造方法においては最初のゲル組成物調製から中間体のものも含めて「含水ゲル組成物」という。
【0014】
まず、ゲル成分の配合・混錬工程30において、ニーダーなどの混錬機31を用いて通常の方法により、含水ゲル組成物の成分を配合し混錬して含水ゲル組成物200を調製する。配合する成分としては、この種の物品における含水ゲル組成物を形成しえるものを特に制限なく用いることができる。例えば、ゲル基材となる高分子、架橋剤、水、その他の成分が挙げられる。
【0015】
ここで得られる含水ゲル組成物200の含水率は、水、薬効成分、及び他の成分の保持性を良好にすると共に、含水ゲル組成物200自体の機械的強度を向上させ、また、得られる含水ゲル状組成物200の柔軟性を向上させる観点から、30質量%以上が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、30〜85質量%がさらに好ましい。
【0016】
また、ここで得られる含水ゲル組成物200の粘度は、その後の塗工工程40、型押し工程50、打ち抜き工程60での加工のし易さを考慮して、100Pa・s以上が好ましく、200Pa・s以上がより好ましく、300Pa・s以上がさらに好ましい。これにより、加工中に含水ゲル層の型崩れや不織布等の基材シートからの含水ゲル組成物の染み出しを防止することができる。またその上限は、2000Pa・s以下が好ましく、1500Pa・s以下がより好ましく、1000Pa・s以下がさらに好ましい。これにより、含水ゲル組成物を安定して塗工とすることができる。
【0017】
(含水ゲル組成物の粘度の測定方法)
本工程30での含水ゲル組成物200について、気温20℃、湿度50%で、ヘリカル粘度計(TOKI SANGYO.CO.LTD製)のスピンドル No.T−F、T−D、T−Eを用い、回転速度0.5−5r/min、3分間の条件で測定することができる。
【0018】
含水ゲル層を架橋反応によって形成する場合について以下に説明する。
用いるゲル組成物中のゲル基材となる高分子成分としては、例えば、カルボキシル基、硫酸基又はリン酸基を有する高分子が挙げられる。具体的には、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のアニオン性セルロース誘導体、カラギーナン、アルギン酸及びその塩類、アニオン性の澱粉誘導体等が挙げられる。なかでも、高い保水量と、十分なゲル強度及び皮膚の凹凸やその動きに追従可能な柔軟性とを兼ね備える観点、並びにより高い水分量を保持し得る観点から、ポリ(メタ)アクリル酸類、アニオン性セルロース誘導体、カラギーナンが好ましく、カルボキシメチルセルロースがより好ましい。
【0019】
ゲル組成物に含有される架橋剤としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム等を含む酸化物や水酸化物、塩類のような金属イオン化合物;ポリリジン等のポリアミノ酸のようなカチオン性ポリマー;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等の多官能性エポキシ化合物が挙げられる。
【0020】
その他の含有成分としては、含水ゲルシート材10の用途に応じて種々のものを用いることができる。例えば、保湿剤、非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤など、種々の薬剤を用いることができる。
保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール類;アミノ酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等のNMF成分;ヒアルロン酸、コラーゲン、ムコ多糖類、コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子を例示することができる。
非ステロイド系抗炎症剤としては、サリチル酸及びその塩類、アスピリン等のサリチル酸誘導体、アセトアミノフェンインドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェンなどが挙げられる。
ステロイド系抗炎症剤としては、アムシノイド、吉草酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルトロン、酢酸ベータメゾン、ヒドロコルチゾン、フルオシノニド、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸ヒドロコルチゾンなどが挙げられる。
上記以外にも、ジフェンヒドラミン、リドカイン、ビタミンE、グリチルレチン酸又はこれらの誘導体などが挙げられ、これらは1種単独で又は2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0021】
次いで、塗布工程40において、調製されたゲル組成物200を混錬機31からポンプ41で塗工機42へと送り込む。そして、通常の方法により、別の原反ロールから平坦ロール43へと繰り出される長尺帯状の支持体シート連続体100の一面に対し、塗工機42を用いて含水ゲル組成物200を支持体シート連続体100の長手方向(搬送方向)に沿って連続的に塗布する。これにより、
図3(A)に示されるように、一定厚み(T1)の連続的な含水ゲル層前駆体201が形成される。この一定厚み(T1)は、塗工機42の設定値に沿って塗工された厚みをいい、製造上やむを得ず生じる塗工ムラなどの変化を許容する。この段階での含水ゲル層前駆体201は、最終製品(完成製品)の含水ゲルシート材に必要な平面形状ないし坪量には成形されていない。すなわち、支持体シート連続体100及び含水ゲル層前駆体201からなる、一定厚みの長尺帯状の積層体10Aが形成される。積層体10Aの「一定厚み」とは、前述と同様に塗工ムラによる厚みの変化を許容する(後述の積層体10Bにおいても同様。)。
【0022】
積層体10Aの含水ゲル層前駆体201は、後の型押し工程50での含水ゲル組成物200の移動による厚み増加を考慮して、最終製品に必要とされる厚みよりも薄く形成されている。すなわち、含水ゲル層前駆体201の厚み(T1)は、最終製品としての含水ゲルシート材10における含水ゲル層2の厚み(T)に対して90%以下であり、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。その下限値は、最終製品における十分な厚みとする観点から、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく。60%以上がさらに好ましい。
あるいは、これを質量の変化とした場合でも、積層体10Aの含水ゲル層となる領域における含水ゲル層前駆体201の単位面積当たりの質量(坪量)(W1)は、最終製品としての含水ゲルシート材10における含水ゲル層2の単位面積当たりの質量(坪量)(W)に対して上記の範囲であることが好ましい。
【0023】
塗工機42としては、ゲル塗工に通常用いられるものを採用でき、例えば、ダイコーター、ブレードコーターなどが挙げられる。また、前記支持体シートの素材としては、含水ゲル組成物200を塗工する基盤とでき、最終製品として含水ゲル層2を保護し使用時に剥離できるものであれば特に制限することなく用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0024】
次いで、積層体10Aの含水ゲル層前駆体201の露出面201Aに対し、別の原反ロールから繰り出される長尺帯状の基材シート連続体300を積層する。これにより
図3(B)に示されるような、3層構造の長尺帯状の積層体10Bが得られる。この3層の積層体10Bをベルトコンベア等の搬送手段44で型押し工程50へと搬送する。この3層構造の積層体10Bも一定厚みである。前記基材シートは不織布からなるがこれに限定されず、変形しやすい素材を種々用いることができる。例えば、織布、変形性のある10〜100μm程度の薄層フィルムなどが挙げられる。このような素材の基材シートは、最終製品とされて肌に貼付したときに柔軟に追従し易すく好ましい。
【0025】
次いで、型押し工程50において、積層体10Bの中間層の含水ゲル層前駆体201に対し型押しを行い、複数の、互いに離間した、最終製品として必要な平面形状ないし坪量(W)の含水ゲル層2を成形する。具体的には、平坦ロール51と、型押しロール52との間に長尺帯状の積層体10Bを搬送する。型押しロール52はパターン配置された複数の凸部53を有する。この凸部53が、積層体10Bの平面領域に対し、変形し易い基材シート連続体300側から、含水ゲル層2となる部分以外の切り落とし可能領域Sを全て型押しする(
図4参照)。これにより、切り落とし可能領域Sにあった含水ゲル組成物200が押し出され、互いに離間し隣接する含水ゲル層2となる部分の複数の成形領域P(
図5(A)の一点鎖線で囲まれた横長の長方形領域)へと押し込まれる。その結果、最終製品として必要な平面形状及び坪量(W)の含水ゲル層2が成形される。このとき切り落とし可能領域Sでは、含水ゲル組成物200はほとんど押し出され、ゲル層厚みが実質無い状態となる。この「ゲル層厚みが実質無い状態」とは、ゲルの弾力性や機能が失われる程に厚みがなく、切り落とされても機械汚染を生じない程にしか残存しない状態をいうが、含水ゲル組成物が全くない状態も含まれる。このような状態では、切り落とし可能領域Sの基材シート連続体300と支持体シート連続体100とが僅かなゲル組成物の残部を介して圧着され、その粘着性により互いに接合固定されている。
【0026】
この型押し工程50では、成形領域Pに所望の平面形状ないし坪量(W)の含水ゲル層2を配する3層と、切り落とし可能領域Sにゲル層厚みが実質ない2層とからなる、積層体10Cが得られる。
【0027】
前記「含水ゲル層2となる部分以外の切り落とし可能領域S」は、前述の型押しがなされ、型抜き工程60で切り落とされる部分の領域を示している。この領域には、後工程で廃棄される部分と、含水ゲルシート材10として含水ゲル層2の外側ののりしろ部11(支持体シート1と基材シート3との2層部分)となる部分が含まれる。この切り落とし可能領域Sは、積層体10Bの平面領域全体に亘る場合に限らず、その一部の領域とされる場合もある。例えば、製造上の制限などで加工対象領域から外れる部分がある場合は、その部分を含まない領域である。本実施形態においては、積層体10Bの幅方向の両側部Q,Qが加工対象領域から外れ、切り落とし可能領域Sに含まれない。両側部Q,Qの外側には含水ゲル層2となる部分の成形領域Pがなく、該両側部Q,Qを型押ししては、含水ゲル組成物200が積層体10Bからはみ出し機械汚染しかねないからである。
【0028】
本実施形態では、
図5(B)に示されるように、成形される含水ゲル層2は、大きさM1で横長の長方形である。この長方形の含水ゲル層2が、搬送方向(
図5(B)のY方向)に間隔H2を開けて組み合わせられ、該組み合わせが横方向(
図5(B)のX方向)のに間隔H3を開けて4列とされている。さらに、この4列からなる含水ゲル層2の組み合わせは、搬送方向(Y方向)に間隔H1を開けて複数配置されている。幅方向側縁の成形領域Pの外方には間隔H4を開けて前述の加工対象外の両側部Qが配されている。本実施形態において、間隔H2は間隔H1及びH3よりも狭く、間隔H1とH3とは同幅である。本発明においては、含水ゲル層2の成形される形状及びその数は、本実施形態に限定されるものでなく、型押し工程50及び後の型抜き工程60で含水ゲル層2が成形される限り任意に設定できる。そのため、成形される含水ゲル層2の形状に合わせて切り落とし可能領域Sも適宜設定され、この切り落とし可能領域Sに合わせて凹凸部ロール52の凸部53のパターンが設定される。
【0029】
本実施形態の型押しロール52は、前記横長の含水ゲル層2となる成形領域P以外の切り落とし可能領域Sに一致するパターンの凸部53を有する。具体的には、型押しロール52の周面を平面として見たときに、
図6(A)に示されるように、成形領域Pを取り囲む切り落とし可能領域Sに対応した正方格子パターンの凸部53を有する。
より具体的には凸部53は、型押しロール52のロール軸方向(横方向)に延在する2種類の横凸部53A及び53Bを複数有する。横凸部53Aは前述の間隔H1に一致する幅を有し、横凸部53Bはこれより狭い間隔H2に一致する幅を有する。さらに、型押しロール52の周方向(縦方向)に延在する縦凸部53Cを複数有する。縦凸部53Cは、間隔H3に一致する幅を有する。この縦凸部53Cが横凸部53A及び53Bと直角に交差して、正方格子パターンの凸部53をなしている。また、凸部53の断面形状は、上底が下底よりも短い台形をなしている。横凸部53A及び縦凸部53Cは、
図6(B)に示されるように、互いの上底(積層体10Bとの接触部分)が同じ幅の台形とされ、横断面53Bは、これより上底が幅狭で、
図6(C)に示されるような台形とされている。これらの凸部53は、断面が台形に限定されるものでなく、切り落とし可能領域Sを均等に押して含水ゲル組成物200を成形領域P内へ確実に移動させる形状を任意に採用できる。その中でも、断面が台形であることで、ある一定以上の厚みがある含水ゲル組成物の場合、徐々に含水ゲル組成物を成形領域P内へ移動させることができるため好ましい。
【0030】
なお、本実施形態では、型押しロール52のロール軸方向(幅方向)の両側の縦凸部53D,53Dは、間隔H4に位置し、縦凸部53Cよりも幅狭とされている。これは、縦凸部53Dで型押しされる積層体10Bの外方が前述の加工対象外の両側部Q,Qであり、該両側部Q,Qを型押ししないようにするためである。すなわち、縦凸部53Cが両側部Q,Qを型押ししないことで、含水ゲル組成物200のはみ出しとこれによる機械汚染を防止する。
【0031】
前述のように、凸部53で切り落とし可能領域S全体の含水ゲル組成物200を確実に押圧してゲル層厚みを実質なくし、成形領域Pに所望の平面形状(大きさM1の長方形)で所望の坪量(W)ないし厚み(T)の含水ゲル層2を成形する。このとき、互いに離間し隣接する含水ゲル層2となる2つの成形領域Pに対して、その2つの成形領域Pの間に位置する切り落とし可能領域Sを押圧することで、切り落とし可能領域Sに存在する含水ゲル組成物200を2つの成形領域Pへ移動させる。これにより、切り落とし可能領域Sに存在していた含水ゲル組成物200のほとんどを含水ゲル層2の成形に利用できるので、含水ゲルシート材10の歩留りを向上させることができる。
また、成形領域Pに挟まれた切り落とし可能領域Sの幅(間隔H1〜H3)、すなわち型押しロール52の凸部53の上底の幅は、十分な量の含水ゲル組成物200を移動させる観点から、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましい。その上限は、含水ゲル組成物を残さずゲル層厚みを実質なくす観点から、15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、8mm以下がさらに好ましい。一方、切り落とし可能領域Sに対して成形領域Pが片側しかない部分の幅(離間H4)、すなわち凸部53Dの上底部の幅は、上記上限及び下限の半分の値とする範囲が好ましい範囲となる。
【0032】
この型押し工程50で得られる積層体10Cでは、切り落とし可能領域Sの含水ゲル組成物200の押し出しで、押出し直後は成形領域Pの外周部分28が中央部分よりも厚く盛り上がり厚みT2となっている(
図4参照)。しかし、その後のこの外周部分28の厚みT2を平準化して、最終製品として所望の均一な含水ゲル層2の厚みTとなるように含水ゲル組成物を均す均し工程を設けることができる。
この平準化はゲル層2の自然流動による場合でもよいが、均し工程として、当該型押し工程50において、型押しロール52の凸部53以外の平坦面で押圧する工程を有してもよく、また、後の型抜き工程60で用いるカッターロール62の平坦面で押圧する工程を有してもよい。あるいは搬送時の振動による工程であってもよい。前記型押しロール52及びカッターロール62で均す場合、凸部53の高さや後述の型抜き工程60でのカッター刃63の高さを適宜調整し設定しておく必要がある。その設定としては、型押しロール52の場合、凸部53の高さは、型押しにより切り落とし可能領域Sから成形領域Pへ移動してくる含水ゲル組成物の割合に依存する。例えば、1つの成形領域Pに対して20%の面積の切り落とし可能領域Sから含水ゲル組成物が移動するように型押しする場合、凸部53の高さは、形成された含水ゲル層前駆体の厚みより20%アップの高さに設定することが好ましい。また、型抜き工程60でのカッター刃63の高さは、確実に打ち抜くことができるように、含水ゲル層前駆体の厚みの2倍以上、3倍以下であることが好ましい。
あるいは、これらの工程の後に、別工程として均し工程80があってもよい。厚みの均整化を確実にし、最終製品の品質を保持する観点から、別工程として均し工程80を設けることが好ましい。この均し工程80については後述する。
【0033】
次いで、型抜き工程60において、型押し工程50で得た積層体10Cに対し打ち抜き加工がなされる。具体的には、
図7に示されるように、積層体10Cを平坦ロール61とカッターロール62との間に連続的に搬送する。カッターロール62は、その表面に、カッター刃63が複数パターン配置されている。このカッター刃63はそれぞれが、含水ゲル層2の大きさ(M1)よりも若干大きい(M2)横長の長方形を縁取る形状で、最終製品における含水ゲルシート材10の外形に沿った形状である(
図9(A)及び(B)参照)。これによりカッター刃63は、含水ゲル層2の外周縁の近傍の切り落とし可能領域Sに当たるようにされている。すなわち
図7及び
図8(A)に示されるように、ゲル層厚みの実質ない切り落とし可能領域S内で切り込みを入れ、基材シート3、含水ゲル層2及び支持体シート1からなる含水ゲルシート材10を複数型抜きする(
図8(B)参照)。
【0034】
前記「含水ゲル層2の外周縁の近傍」とは、含水ゲルシート材10としたときのシート接合ののりしろ部11の範囲をいう。本実施形態では、含水ゲル層2の外周縁に対し、のりしろ部11の幅H11の長さだけ離間した位置に切り込みを入れ、含水ゲル層2よりも若干大きめ(M2>M1)の含水ゲルシート材10が形成される(
図8(A)及び(B)参照)。幅H11は、切り込み位置ずれによる加工ミスを防ぐ観点から、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましい。その上限は、製品外観上の観点から、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい。
型抜き工程60においては、前述ののりしろ部11の幅H11の位置に限らず、この切り落とし可能領域S内の任意の場所に切り込みをいれることが可能である。前段の型押し工程50で、切り落とし可能領域S全体から含水ゲル組成物200が押し出されて実質なくなっているため、切り落とし可能領域Sのいずれの位置で切り込みを入れても、含水ゲル組成物200がはみ出して機械汚染を生じることがない。これに対し、従来では、例えば、特許文献1記載の発明の加工方法では、型抜きする位置に一致してゲルを型押ししていたため、少しのブレでもゲルのはみ出しが起こり得た。本発明の製造方法では、このようなゲルのはみ出し及び機械汚染の問題をも解決する。
【0035】
本実施形態の型押し工程50及び型抜き工程60では、積層体10Bないし積層体10Cに対して、変形し易い不織布からなる基材シート側から加工を行っている。これにより、不織布の変形性で凸部53の型押し圧力が含水ゲル組成物200に良く伝わり含水ゲル組成物を効果的に押出しすることができ、その結果、後工程のカッター刃63の切り込みが良好なものとなる。すなわち、変形し易い不織布からなる基材シート側からの加工が、型押し工程50及び型抜き工程60の仕上がりの質を向上さる点で好ましい。
幅H11の大きさにもよるが、型抜きされた含水ゲルシート材10は、その縁部において、基材シート3と支持体シート1とが接合された状態となっていてもよい。
【0036】
本実施形態においては、型押し工程50及び型抜き工程60でそれぞれ異なる平坦ロール51と61とを搬送方向に並べてそれぞれの加工をおこなっていた。この平坦ロールについては、本実施形態の形態に限定されることなく、
図10に示すような形態であってもよい。すなわち、型押し工程50の型押しロール52による型押し加工、型抜き工程60のカッターロール62による型抜き加工を、全て同一の平坦ロール55の円周面上で行ってもよい。
この場合、平坦ロール55の円周の曲面で、積層体10Bから積層体10Cとして型押し部分(切り落とし可能領域S)を拡張したまま連続的に型抜き加工を行う。この加工方法であれば、コンベア等で積層体10Bを水平にした状態で両工程を別々に行う場合に比べて、型押し部分(切り落とし可能領域S)が拡張し型抜きし易い。また拡張したままの連続加工であるので、含水ゲル組成物200が戻り難く含水ゲル層2の形状保持性、機械汚染防止性が高まり好ましい。
【0037】
次いで、切り落とし部分(スクラップ部分)は、回収ロール71によって回収される。
一方、型抜きされた複数の含水ゲルシート材10は、その後の製品形成工程へと搬送される。ここで、含水ゲルシート材10は、前述のとおり、最終製品の品質を保持する観点から、均し工程80を経ることが好ましい。この均し工程80においては、2つの平坦ロール81及び82の間に含水ゲルシート材10を通過させ圧をかけていく。これにより、型押し工程50及び型抜き工程60の各ロール圧では均しきれなかった含水ゲル組成物200の偏在(外周部分28)を均一にする(
図11参照)。
【0038】
次いで、図示しないが、型抜きされた含水ゲルシート材10をそれぞれ、搬送方向及び幅方向にリピッチし、アルミニウム材などによる密封袋に封入する。そして、所定個数を1カートンとし、複数カートンを1パッケージとして包装する。
【0039】
次に、本発明に係る積層体の製造方法の好ましい別の一実施形態(第2実施形態)について、
図12および
図13を参照して、以下に説明する。
【0040】
第2実施形態では、
図12(A)に示されるように、前述の第1実施形態における型押し工程50が複数の工程に分割されており、型押しロール52による型押しを複数回行う。これにより
図12(B)に示されるように、最終製品における含水ゲル層2を徐々に成形し、含水ゲル組成物200の移動をより確実に行うことができる。特に、成形される含水ゲル層2が、方形でなく、
図12(B)に示されるように三日月状など曲線からなる形状の場合に効果的である。それ以外の工程は、第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態との相違点である型押し工程50について説明する。
【0041】
図12(A)では、含水ゲル層前駆体201を有する積層体10Bに対し、型押し工程50を型押し1から型押し3まで段階的におこなうことが示されている。これにより、三日月状の含水ゲル層2を2つ搬送方向に離間配置した組み合わせ25を幅方向(X方向)に2組(25A及び25B)形成するようにしている。なお、組み合わせ25の幅方向への配置数は、本実施形態の2組に限らずそれ以上であってもよい。
【0042】
まず、型押し1(第1段階)において、搬送方向(Y方向)に沿う長方形の含水ゲル層の第1前駆体21A及び21Bを成形する。具体的には、第1前駆体21A及び21Bの周囲の切り落とし可能領域S1に対応する凸部53Aを有する型押しロール52A(
図13(A)参照)を用い、含水ゲル組成物200を第1前駆体21A及び21Bとなる領域に移動させる。
次いで、型押し2(第2段階)において、第1前駆体21A及び21Bのそれぞれの領域内に、最終製品として所望の大きさよりもやや大きめの三日月状の含水ゲル層(第2前駆体22A〜D)を成形する。具体的には、第2前駆体22A〜D内のそれぞれの外周の切り落とし可能領域S2に対応する凸部53Bを有する型押しロール52B(
図13(B)参照)を用い、含水ゲル組成物200を第2前駆体22A〜Dとなる部分にさらに移動させる。すなわち、第1前駆体21A及び21Bと第2前駆体22A〜Dとの外径差を利用して的確に含水ゲル組成物200を第2前駆体22A〜Dとなる部分に移動させる。
次いで、型押し3(第3段階)において、第2前駆体22A〜D内のそれぞれの外周をさらに型押しして、最終製品として所望の大きさ、形状及び坪量(W)の含水ゲル層2A〜Dを成形する。具体的には、含水ゲル層2A〜D内のそれぞれの外周の切り落とし可能領域S3に対応する凸部53Cを有する型押しロール52C(
図13(C)参照)を用い、含水ゲル組成物200を含水ゲル層2A〜Dとなる部分にさらに移動させる。すなわち、第2前駆体22A〜Dと最終製品としての含水ゲル層2A〜Dとの外径差を利用して的確に含水ゲル組成物200を含水ゲル層2A〜Dとなる部分に移動させる。
【0043】
このように段階的に周囲から徐々に型押しするので、確実に、含水ゲル組成物200を含水ゲル層2となる領域へと移動できる。これにより、切り落とし可能領域S1〜S3での含水ゲル組成物200の残留を効果的に抑制でき、三日月状のように種々の形状の含水ゲル層2を成形することができる。本実施形態では、複数回の型押しでは、1回のみの型押しに比べて、含水ゲル組成物200の移動量を多くすることができる。このことを考慮して、第2実施形態では、塗布工程40での含水ゲル組成物200の塗工厚み(T1)も適宜設定することが好ましい。本実施形態の長方形から三日月状へと成形していったが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち各段階の型押しの範囲ないし形状は、最終製品となる含水ゲル層2の形状及び個数に併せて適宜設定できる。また、型押しの回数も本実施形態の3回に限らず、2回でもよく、4回以上でもよい。
【0044】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の含水ゲルシート材の製造方法を開示する。
【0045】
<1>長尺帯状の支持体シート上に含水ゲル層前駆体を形成し、前記支持体シート及び前記含水ゲル層前駆体を有する積層体から型抜きによって所定形状の含水ゲル層を有する複数の含水ゲルシート材を形成する含水ゲルシート材の製造方法であって、
含水ゲル組成物を前記支持体シートの長手方向に沿って連続的に塗布して前記含水ゲル層前駆体を形成する塗布工程と、
前記積層体の平面領域において、前記含水ゲル層となる領域以外の領域を型押し、互いに離間し隣接する含水ゲル層となる領域に該領域の間に存在する前記含水ゲル組成物を押し込み、前記含水ゲル層を成形する型押し工程と、
前記型押しされた各領域で前記積層体をカットして前記含水ゲルシート材を型抜きする型抜き工程と、を有する含水ゲルシート材の製造方法。
【0046】
<2>前記塗布工程において、最終製品としての含水ゲルシート材に必要な含水ゲル層の厚み又は単位面積当たりの質量よりも少ない厚み又は単位面積当たりの質量を有する前記含水ゲル層前駆体を形成し、
前記型押し工程において、前記含水ゲル層前駆体を型押しすることで前記含水ゲル組成物を前記含水ゲル層となる領域内へ移動させ、最終製品に必要な含水ゲル層の厚み又は単位面積当たりの質量を得る前記<1>に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<3>前記型押し工程もしくは前記型抜き工程の工程中または後工程において、前記含水ゲル層又は前記含水ゲル層前駆体の厚みを平準化する均し工程を有する前記<1>又は<2>に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<4>前記型押し工程が、複数の工程に分割され、前記含水ゲル組成物を徐々に移動させていく工程を有する前記<1>〜<3>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<5>前記塗布工程において形成された前記含水ゲル層前駆体上に長尺帯状の基材シートを積層する工程を有し、前記型押し工程及び前記型抜き工程は、前記支持体シート又は前記基材シートのうち変形しやすい材料側から型押し及び型抜きを行う前記<1>〜<4>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
【0047】
<6>前記塗布工程において、塗布する含水ゲル組成物の含水率は30質量%以上が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、30〜85質量%がさらに好ましい、前記<1>〜<5>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<7>前記塗布工程において、塗布する含水ゲル組成物の粘度は100Pa・s以上が好ましく、200Pa・s以上がより好ましく、300Pa・s以上がさらに好ましい、前記<1>〜<6>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<8>前記塗布工程において形成される含水ゲル層前駆体の厚み(T1)もしくは単位面積当たりの質量(W1)が、最終製品としての含水ゲルシート材における含水ゲル層の厚み(T)もしくは単位面積当たりの質量に対して、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、その上限は、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい、前記<1>〜<7>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<9>前記支持体シートがフィルムからなる前記<1>〜<8>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<10>前記フィルムがポリエチレンテレフタレートからなる前記<9>に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<11>前記基材シートが不織布からなる前記<1>〜<10>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<12>前記型押し工程において、含水ゲル層となる領域以外の領域に一致するパターンの凸部を有する型押しロールで型押しする前記<1>〜<11>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<13>前記型押しロールの凸部の断面は、上底が下底よりも短い台形である前記<1>〜<12>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<14>前記型押しロールの凸部の上底の幅は、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましく、その上限は、15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、8mm以下がさらに好ましい、前記<13>に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<15>互いに離間し隣接する含水ゲル層となる領域の間の幅が、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上がさらに好ましく、その上限は、15mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、8mm以下がさらに好ましい、前記<1>〜<14>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<16>前記型抜き工程において、含水ゲル層となる領域の外周縁からのりしろ部の幅H11の長さだけ離間した位置に切り込みを入れ、前記積層体をカットする前記<1>〜<15>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<17>前記カットによって、前記含水ゲル層よりも大きい(M2>M1)含水ゲルシート材10が形成される前記<16>に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<18>前記幅H11は、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、その上限は、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい、前記<16>又は<17>に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<19>前記型抜き工程は、前記積層体を平坦ロールとカッターロールとの間に搬送して行われる前記<1>〜<18>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<20>前記カッターロールはカッター刃を有し、該カッター刃の高さは、前記含水ゲル層前駆体の厚みの2倍以上であり、3倍以下である前記<19>に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<21>前記型押し工程の型押しロールによる型押し加工、前記型抜き工程のカッターロールによる型抜き加工を、全て同一の平坦ロールの円周面上で行う前記<19>又は<20>に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<22>前記型抜き工程後に均し工程を有し、該均し工程においては、2つの平坦ロールの間に前記含水ゲルシート材を通過させ圧をかける前記<1>〜<21>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<23>前記含水ゲル組成物は、カルボキシル基、硫酸基又はリン酸基を有する高分子をゲル基材として含有する前記<1>〜<22>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<24>前記高分子はカルボキシメチルセルロースからなる前記<23>に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<25>前記含水ゲル組成物は、架橋剤を含有する前記<1>〜<24>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<26>前記含水ゲル組成物は、保湿剤を含有する前記<1>〜<25>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<27>前記所定形状が、曲線のみからなる形状である前記<1>〜<26>のいずれか1に記載の含水ゲルシート材の製造方法。
<28>前記所定形状が、三日月状である前記<27>記載の含水ゲルシート材の製造方法。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本発明が限定して解釈されるものではない。
【0049】
(実施例1)
実施例1では、
図2に示される含水ゲルシート材の製造方法を実施した。具体的には、ゲル成分の配合・混錬工程30において、カルボキシメチルセルロール、水酸化アルミニウム、水を配合して混錬し、含水量85%、粘度400Ps・sの含水ゲル組成物200を得た。次いで、塗布工程40において、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体シート連続体100の一面側に前記含水ゲル組成物200を連続的に塗工して含水ゲル層前駆体201を形成した。さらに不織布からなる基材シート連続体300を積層して、積層体10Bの連続体を得た。
このときの含水ゲル層前駆体201の厚み(T1)は、0.9mmで、坪量(W1)は720g/m
2であった。
【0050】
次いで、型押し工程50において、
図6のパターンで、積層体10Bを型押しした。具体的には、H1=10mm、H2=4mm、H3=10mmの幅の正方格子の凸部53を有する型押しロール52と平坦ロールとを用い、積層体10Bに対し、基材シート連続体300側から、スクラップ部分となる切り落とし可能領域Sを全て型押しした。このときの型押しロールの圧力は、4,000N(油圧シリンダー φ50×2 使用圧力 1Mpa)であった。これにより、X方向の横幅55mm、Y方向の縦幅41mmの含水ゲル層2を2つ搬送方向に4mm(=H2)離間させて形成し、この組み合わせを幅方向(X方向)に10mm(H3)離間させて4列形成し、この4列を搬送方向(Y方向)に10mm(=H1)離間させて連続的に形成した。これにより型押しされた切り落とし可能領域S(H1〜3で形成される正方格子の領域)では、含水ゲル組成物200が押し出されゲル層厚みが実質なくなっていた。
得られた含水ゲル層2の大きさM1は、横幅55mm×縦幅41mmであった。
また、得られた含水ゲル層2の坪量(W)は1000g/m
2となり、塗工工程40における坪量(W1)から増加し、最終製品(完成製品)として必要とされる坪量となっていた。
【0051】
次いで、型抜き工程60において、積層体10Bの型押しされた切り落とし可能領域Sに対して、
図9のパターンのカッター刃63を有するカッターロール62と平坦ロール61とで型抜きを行った。カッターロール62は、型押し工程50で得られた、横幅55mm及び縦幅41mmの含水ゲル層2の外周縁から2mm離間した切り落とし可能領域Sにカッター刃63があたるパターンとされている。このときのカッターロール62の圧力は、8,000N(油圧シリンダー φ50×2 使用圧力 2Mpa)であった。
これにより、横幅55mm×縦幅41mm(M1)の含水ゲル層2を有し、その外周縁より2mmののりしろ部11を有する横幅59mm×縦幅45mm(M2)の含水ゲルシート材10を複数得た。
この型抜きと同時に、型抜きされた後の切り落とし部分(スクラップ部分)は、回収ロール71によって回収された。
【0052】
次いで、均し工程80で、型抜きされた各含水ゲルシート材10を2つの平坦ロール81及び82の間で通過させ圧力をかけて中間層の含水ゲル層2の厚みを均した。
これにより含水ゲル層2は、最終製品として必要な厚み(T)1.0mmとなっていた。
【0053】
以上のようにして含水ゲルシート材10を複数得た。これら一連の工程を加工速度は10m/分で30分間実施した。使用した基材シート及び支持体シートの長さは3mであった。
【0054】
(実施例2)
実施例2では、前述の均し工程80を有さない以外、実施例1と同様にして行った。
【0055】
(比較例1)
比較例1では、実施例1の工程のうち、塗工工程40での塗工量を最終製品の基準とし、型押し工程50として前記特許文献1に記載の製造方法の部分型押しを行い、均し工程80を実施しなかった以外は、実施例1で実施した製造方法を実施しした。これにより、実施例1と同様の含水ゲルシート材10を得た。
具体的には、比較例1の塗工工程40では、最終製品として必要な層厚み(T)1.0mm、坪量(W)1000g/m
2の含水ゲル層2の連続体を形成した。そのため、実施例1における型押し工程50での含水ゲル層2の成形は実施しなかった。すなわち、含水ゲル層2に必要な量の含水ゲル組成物200を移動させるための型押しではなく、型抜き後の外端縁からのゲルはみ出しや刃の汚れ防止のための必要最小限の範囲での部分型押しを行った。
この部分型押しでは、積層体10Bに対し、カッターロール62のカッター刃63が当たる線上の両側1.5mmずつの幅(合計3mm幅)の領域を型押しした。すなわち、切り落としとなる切り落とし可能領域Sのうち、横幅56mm×縦幅42mm(M1)の含水ゲル層2の外周縁に沿って3mm幅のみを型押しした。したがって、切り落とし可能領域Sには、含水ゲル組成物200がかなりの量残っていた。なお、比較例1では、当初から最終製品に必要な層厚み(T)及び坪量(W)の含水ゲル層となっているため、製品品質の観点から上記の範囲以上の型押しができなかった。
次いで、型抜き工程60において、実施例1と同様のカッターロール62及び平坦ロール61を用いて、実施例1と同様のパターンで含水ゲルシート材10を複数型抜きした。すなわち、横幅56mm×縦幅42mm(M1)の含水ゲル層2を有し、その外周縁より1.5mmののりしろ部11を有する横幅59mm×縦幅45mm(M2)の含水ゲルシート材10を複数得た。
【0056】
(比較例2)
比較例2では、比較例1の部分型押しを行わなかった以外は、比較例1の製造方法と同様にして実施した。
【0057】
上記の実施例1及び2並びに比較例1及び2の実施結果について、下記の表1に示す。
表1中の「製品状態」とは、得られた含水ゲルシート材10における含水ゲル層2の厚みことである。「良好」は厚みが全て均一の状態を示す。「カッター周辺部編肉」は含水ゲル層の外周縁部分の厚みが他の部分より厚くなっている状態を示す。この評価は、定圧厚み測定器を用い測定を行った。
表1中の「刃の汚れ」は、上記の製造工程を全て実施した後において、カッターロール62のカッター刃63及び加工ライン中に含水ゲル組成物付着しているかどうかを評価した。この評価は、目視により行った。
表1中の「ゲル打ち抜き歩留まり」は、塗工された含水ゲル組成物200の最終製品における利用率を示す。その評価は、30分間運転した時に塗工工程で使用した含水ゲル量と最終製品の生産枚数とそれに使用した含水ゲル量から算出した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示されるように、実施例1及び2は、ゲル打ち抜き歩留まりが96%とほぼ無駄なく含水ゲル組成物を利用することができた。これに対し、比較例1及び2は、廃棄されてしまう含水ゲル組成物が大量に発生してしまっていた。また、実施例1及び2は、型抜きで使用したカッターロールの刃の汚れが無く、良好な継続製造が可能であることが分かった。これに対し、比較例2では、製造の障害となりかねない刃の汚れや加工ライン中の汚れが認められた。
【0060】
(実施例3)
実施例3では、
図12に示される含水ゲルシート材の製造方法を、実施例1と同じ条件で実施した。
具体的には、塗工工程40において、含水ゲル組成物200の層厚み(T1)を0.6mm、坪量(W1)を600g/m
2として塗工した。次いで、型押し工程50で、
図13(A)〜(C)までの3つの型押しロールを用い、3段階の型押しを行った。その後、型抜き工程50で、得られた三日月状の含水ゲル層2の外周縁より2mmののりしろ部11を有するようにして型抜きした。その後、均し工程80等を経て、三日月状の含水ゲルシート材10を複数得た。
このようにして得られた含水ゲルシート材10における、含水ゲル層2の層厚み(T)は1.00mmとなっていた。また、得られた含水ゲル層2の坪量(W)は1000g/m
2となり、塗工工程40における坪量(W1)から増加し、最終製品(完成製品)として必要とされる坪量となっていた。
【0061】
(実施例4)
実施例4では、
図12に示される含水ゲルシート材の製造方法を、実施例2と同じ条件で実施した。すなわち、実施例3のうち均し工程80を実施しなかった。
【0062】
(比較例3)
比較例3では、含水ゲル層2及び含水ゲルシート材10の形状を実施例3と同じ三日月状とした以外は、比較例1と同様にして実施した。
【0063】
(比較例4)
比較例4では、含水ゲル層2及び含水ゲルシート材10の形状を実施例3と同じ三日月状とした以外は、比較例2と同様にして実施した。
【0064】
【表2】
【0065】
表2に示されるように、実施例3及び4は、ゲル打ち抜き歩留まりが95%とほぼ無駄なく含水ゲル組成物を利用することができた。これに対し、比較例3及び4は、廃棄されてしまう含水ゲル組成物が60%ないし55%と塗工量の約半分程度しか利用されず、多量の廃棄が発生した。また、実施例3及び4は、型抜きで使用したカッターロールの刃の汚れが無く、良好な継続製造が可能であることが分かった。これに対し、比較例4では、製造の障害となりかねない刃の汚れが認められた。