(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記親水性有機官能基が、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、スルホニル基、スルホ基、スルホニルジオキシ基、エポキシ基、メタクリル基又はメルカプト基である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のカバーレイ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、フッ素樹脂を主成分とする透明なフッ素樹脂層と、このフッ素樹脂層の裏面に直接又は透明な接着剤層を介して積層される反射層とを備え、上記フッ素樹脂層が裏面にシロキサン結合及び親水性有機官能基を含む改質層を有する配線板用保護フィルムである。
【0011】
当該配線板用保護フィルムは、このように表面に疎水性のフッ素樹脂層を備えることによって、反射層の吸湿を防止できるので、光反射層の光反射率の低下を抑制する。このため、光反射層としてより光反射率の高い構成を採用できる。また、フッ素樹脂層は透明性が高いので、当該配線板用保護フィルム全体として高い光反射率が得られる。また、フッ素樹脂層自体も酸化、紫外線吸収、吸湿等による変色が少ないので、当該配線板用保護フィルムは光反射率が低下し難い。また、当該配線板用保護フィルムは、フッ素樹脂層が親水性有機官能基を含む改質層を有するため、フッ素樹脂層と反射層又は接着剤層との密着性に優れ、その一方で、フッ素樹脂層表面に汚れが付着し難いので、汚れによる光反射率の低下も抑制できる。さらに、当該配線板用保護フィルムは、フッ素樹脂層と反射層との二層構造としたことにより、フッ素樹脂層と反射層との界面における反射も得られる。結果として、当該配線板用保護フィルムは、光反射率が高く、その光反射率が低下し難い。
【0012】
上記フッ素樹脂層の波長600nmの光に対する光透過率としては、60%以上が好ましい。このようにフッ素樹脂層の波長600nmの光に対する光透過率を上記下限以上とすることによって、フッ素樹脂層における光の吸収が小さくなるので、光反射率をさらに高くできる。
【0013】
上記反射層が金属膜であるとよい。このように反射層が金属膜であることによって、光反射率の高い鏡面を形成できる。また、この鏡面は、フッ素樹脂層により保護されるため、高い光反射率を維持できる。
【0014】
上記反射層が白色顔料及びそのバインダーを含んでもよい。このように反射層を白色顔料及びバインダーを含む光拡散層として形成することによって、高い光反射率が得られると共に、この反射層がフッ素樹脂層により保護されることによって、高い光反射率を維持できる。
【0015】
上記フッ素樹脂層の裏面の純水との接触角としては、90°以下が好ましい。このようにフッ素樹脂層の裏面の純水との接触角が上記上限以下であることによって、フッ素樹脂層と反射層との密着性が高く、これらの層間剥離による光反射率の低下を防止できるので、光反射率を高くでき、この光反射率の低下を防止することもできる。
【0016】
上記改質層の平均厚さとしては、400nm以下が好ましい。このように改質層の平均厚さを上記上限以下とすることによって、光透過率が低くなるおそれのある改質層を薄くすることにより、光反射率を高くできる。
【0017】
上記フッ素樹脂層の裏面の平均表面粗さRaとしては、4μm以下が好ましい。ように改質層の平均表面粗さRaを上記上限以下とすることによって、フッ素樹脂層と反射層との密着性をより高めて反射率を高くできる。また、このように平均表面粗さRaが小さいことにより、フッ素樹脂層の裏面全体に切れ間なく薄い改質層を形成でき、かつ界面での乱反射を抑制することにより光反射率を高くできる。さらに、密着性の高い改質層の裏面は、このように表面粗さを小さくでき、反射層を積層するために粗面化する必要がないので、製造が容易になる。
【0018】
上記親水性有機官能基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、スルホニル基、スルホ基、スルホニルジオキシ基、エポキシ基、メタクリル基又はメルカプト基が好ましい。このように親水性有機官能基を上記のものとすることによって、フッ素樹脂層の裏面の反射層に対する密着性をさらに高められる。
【0019】
また、本発明は、当該配線板用保護フィルムと、この配線板用保護フィルムの裏面に積層される接着剤層とを備えるカバーレイを含む。当該カバーレイは、表面に当該当該配線板用保護フィルムを備えることによって、光反射率が高く、裏面に接着剤層を備えることによって、配線板に容易に貼着できる。このため、当該カバーレイは、配線板の光反射率を高くして光の利用率を高めるために利用できる。
【0020】
また、本発明は、樹脂製のベースフィルム、及びこのベースフィルムの表面側に積層され、導電パターンを含む導電層を有する配線板と、上記配線板に実装される発光ダイオードと、上記配線板の表面側のうち上記発光ダイオード実装領域以外に積層される当該配線板用保護フィルムとを備えるプリント配線板を含む。当該プリント配線板は、このように配線板の発光ダイオード実装領域以外に光反射率が高い当該配線板用保護フィルムを積層することによって、発光ダイオードが発する光を当該配線板用保護フィルムが表面側に反射するので、光の利用効率が高い。
【0021】
ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。「親水性有機官能基」とは、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の非金属元素のみからなる官能基であって、親水性を有する官能基をいう。「波長600nmの光に対する光透過率」とは、JIS−K−7375(2008)の全光線透過率の測定方法に準じて、波長600nmの光の透過率を測定した値である。「純水との接触角」とは、JIS−R−3257(1999)の静滴法により測定される接触角の値である。「平均表面粗さRa」とは、JIS−B−0601(2013)に準拠して測定される算術平均粗さを意味する。また、「表」及び「裏」は、当該配線板用保護フィルムの厚さ方向のうち、配線板に積層される側を表、その反対側を裏とする方向を意味し、当該配線板用保護フィルム、当該カバーレイ又は当該プリント配線板の使用状態における表裏を意味するものではない。さらに、本願明細書で用いられる「化学結合」は、水素結合を含む概念である。
【0022】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0023】
[第一実施形態]
図1の配線板用保護フィルム1は、透明なフッ素樹脂層2と、このフッ素樹脂層2の裏面に積層される反射層3とを備える。
【0024】
<フッ素樹脂層>
フッ素樹脂層2は、フッ素樹脂を主成分とし、裏面にシロキサン結合及び親水性有機官能基を含む改質層4を有する。
【0025】
ここで、フッ素樹脂とは、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状又は分岐状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等が挙げられる。
【0026】
「フルオロアルキル基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を意味し、「パーフルオロアルキル基」を含む。具体的には、「フルオロアルキル基」は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルキル基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基等を含む。
【0027】
「フルオロアルコキシ基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基を意味し、「パーフルオロアルコキシ基」を含む。具体的には、「フルオロアルコキシ基」は、アルコキシ基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルコキシ基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基等を含む。
【0028】
「フルオロポリエーテル基」とは、繰り返し単位としてオキシアルキレン単位を有し、末端にアルキル基又は水素原子を有する1価の基であって、このアルキレンオキシド鎖又は末端のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された1価の基を意味する。「フルオロポリエーテル基」は、繰り返し単位として複数のパーフルオロアルキレンオキシド鎖を有する「パーフルオロポリエーテル基」を含む。
【0029】
フッ素樹脂層2を構成するフッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、並びにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライドの3種類のモノマーからなる熱可塑性フッ素樹脂(THV)、及びフロオロエラストマーが挙げられる。また、これらの化合物を含む混合物やコポリマーも、フッ素樹脂層2を構成する材料として使用可能である。
【0030】
中でも、フッ素樹脂層2を構成するフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・ヘキサオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。これらのフッ素樹脂を使用することによって、フッ素樹脂層2が、可撓性、光透過性、耐熱性、及び難燃性を有するものとなる。
【0031】
また、フッ素樹脂層2は、任意成分として、例えばエンジニアリングプラスチック、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、滑剤、加工安定剤、可塑剤、補強材等を含み得る。また、フッ素樹脂に放射線等の電磁線を照射することにより、フッ素樹脂層2の透明性、耐熱性、耐クリープ性、反射層3との接着性、成形時の流動性等を向上させられる。
【0032】
上記エンジニアリングプラスチックとしては、フッ素樹脂層2に求められる特性に応じて公知のものから選択して使用でき、典型的には芳香族ポリエーテルケトンを使用することができる。
【0033】
この芳香族ポリエーテルケトンは、ベンゼン環がパラ位に結合し、剛直なケトン結合(−C(=O)−)又はフレキシブルなエーテル結合(−O−)によってベンゼン環同士が連結された構造を有する熱可塑性樹脂である。芳香族ポリエーテルケトンとしては、例えばエーテル結合、ベンゼン環、エーテル結合、ベンゼン環、ケトン結合及びベンゼン環が、この順序で並んだ構造単位を有するエーテルエーテルケトン(PEEK)、エーテル結合、ベンゼン環、ケトン結合及びベンゼン環が、この順序で並んだ構造単位を有するポリエーテルケトン(PEK)が挙げられる。中でも、芳香族ポリエーテルケトンとしては、PEEKが好ましい。このような芳香族ポリエーテルケトンは、耐摩耗性、耐熱性、絶縁性、加工性等に優れる。
【0034】
PEEK等の芳香族ポリエーテルケトンとしては、市販品を使用することができる。芳香族ポリエーテルケトンとしては、様々なグレードのものが市販されており、市販されている単一のグレードの芳香族ポリエーテルケトンを単独で使用してもよく、複数のグレードの芳香族ポリエーテルケトンを併用してもよく、また変性した芳香族ポリエーテルケトンを使用してもよい。
【0035】
フッ素樹脂層2におけるエンジニアリングプラスチックの合計含有量の上記フッ素樹脂に対する比の下限としては、特に限定されないが、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、35質量%がさらに好ましい。エンジニアリングプラスチックの合計含有量が上記下限未満の場合、フッ素樹脂層2の特性を充分に改善することができないおそれがある。一方、エンジニアリングプラスチックの合計含有量の上記フッ素樹脂に対する比の上限としては、特に限定されないが、50質量%が好ましく、45質量%がより好ましい。エンジニアリングプラスチックの含有量が上記上限を超える場合、フッ素樹脂の有利な特性を充分に発現させることができないおそれがある。
【0036】
難燃剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤が挙げられる。
【0037】
難燃助剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば三酸化アンチモン等が挙げられる。
【0038】
酸化防止剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えばフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0039】
補強材としては、例えばカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維等が挙げられ、これらから形成された撚糸や布、例えばガラスクロス等を使用してもよい。
【0040】
フッ素樹脂層2の平均厚さの下限としては、0.1μmが好ましく、6μmがより好ましい。フッ素樹脂層2の平均厚さが上記下限未満の場合、当該配線板用保護フィルム1の強度が不十分となるおそれがある。一方、フッ素樹脂層2の平均厚さの上限としては、5000μmが好ましく、55μmがより好ましい。フッ素樹脂層2の平均厚さが上記上限を超える場合、フッ素樹脂層2の光透過率、ひいては当該配線板用保護フィルム1の光反射率が不十分となるおそれや、当該配線板用保護フィルム1の可撓性が不十分となるおそれがある。
【0041】
また、フッ素樹脂層2の波長600nmの光に対する光透過率の下限としては、60%が好ましく、90%がより好ましい。上記波長に対する光透過率が上記下限未満の場合、フッ素樹脂層2が光を吸収することにより当該配線板用保護フィルム1の光反射率が不十分となるおそれがある。なお、フッ素樹脂層2の上記波長に対する光透過率の上限としては、特に限定されないが、理論上の限界値が100%である。なお、光透過率は、分光光度計、例えば日立ハイテクノロジーズ社の「U−4100」を用いて測定できる。
【0042】
また、フッ素樹脂層2の水蒸気透過度の上限としては、0.1g/m
2・24hが好ましい。フッ素樹脂層2の水蒸気透過度が上記上限を超える場合、反射層3の吸湿による光反射率の低下を十分に抑制できないおそれがある。なお、水蒸気透過度は、JIS−K−7129(2008)付属書Aに準拠し、温度25℃、相対湿度差90%の条件で測定される値である。
【0043】
また、フッ素樹脂層2の吸水率の上限としては、0.01質量%が好ましい。フッ素樹脂層2の吸水率が上記上限を超える場合、反射層3の吸湿による光反射率の低下を十分に抑制できないおそれがある。なお、吸水率は、JIS−K−7209(2000)に準拠して測定される値である。
【0044】
改質層4は、フッ素樹脂層2を構成するフッ素樹脂に、親水性有機官能基を有しシロキサン結合(Si−O−Si)を形成する改質剤が結合して形成される。つまり、改質層4において、親水性有機官能基がシロキサン結合を構成するSi原子に結合する。この親水性有機官能基によって、フッ素樹脂層2の裏面には濡れ性が付与される。フッ素樹脂と改質剤との間の化学結合は、共有結合だけで構成される場合と、共有結合及び水素結合を含む場合とがある。改質層4は、改質層4を除いたフッ素樹脂層2の他の領域とはミクロ構造や分子構造、元素の存在割合が異なると考えられる領域である。
【0045】
シロキサン結合を構成するSi原子(以下、この原子を「シロキサン結合のSi原子」という。)は、N原子、C原子、O原子、及びS原子のいずれか少なくとも1つの原子を介してフッ素樹脂層2のC原子と共有結合する。例えば、シロキサン結合のSi原子は、−O−、−S−、−S−S−、−(CH
2)n−、−NH−、−(CH
2)n−NH−、−(CH
2)n−O−(CH
2)m−(n,mは1以上の整数である。)等の原子団を介してフッ素樹脂のC原子と結合する。
【0046】
上記親水性有機官能基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、スルホニル基、スルホ基、スルホニルジオキシ基、エポキシ基、メタクリル基、又はメルカプト基が好ましい。これらの中でもN原子又はS原子を含むものがより好ましい。これらの親水性有機官能基は、フッ素樹脂層2の裏面の密着性を向上する。なお、改質層4は、これら親水性有機官能基の2種以上を含んでもよい。このように改質層4に異なる性質の親水性有機官能基を付与することによって、フッ素樹脂層2の裏面の反応性等を多様なものとすることができる。これらの親水性有機官能基は、シロキサン結合の構成要素であるSi原子に直接、あるいは1個又は複数個のC原子(例えばメチレン基やフェニレン基)を介して結合する。
【0047】
上記の特徴を有する改質層4を形成するための改質剤としては、分子中に、親水性有機官能基を有するシラン系カップリング剤が好適であり、さらにSi原子を含む加水分解性官能基を有するシラン系カップリング剤がより好適である。このようなシラン系カップリング剤は、フッ素樹脂層2を構成するフッ素樹脂と化学結合する。
【0048】
上記Si原子を含む加水分解性官能基とは、具体的にはSi原子にアルコキシ基が結合した基である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
【0049】
N原子を含む親水性有機官能基としては、例えばアミノ基、ウレイド基等を挙げることができる。
【0050】
N原子を含む親水性有機官能基を有するシラン系カップリング剤としては、例えばアミノアルコキシシラン、ウレイドアルコキシシラン等、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0051】
アミノアルコキシシランとしては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
アミノアルコキシシランの誘導体としては、例えば3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等のケチミン、N−ビニルベンジル−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン酢酸塩等のシラン系カップリング剤の塩などが挙げられる。
【0053】
ウレイドアルコキシシランとしては、例えば3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−(2−ウレイドエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
S原子を含む親水性有機官能基としては、例えばメルカプト基、スルフィド基等が挙げられる。
【0055】
S原子を含む親水性有機官能基を有するシラン系カップリング剤としては、例えばメルカプトアルコキシシラン、スルフィドアルコキシシラン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0056】
メルカプトアルコキシシランとしては、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシラン等が挙げられる。
【0057】
スルフィドアルコキシシランとしては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0058】
上記シラン系カップリング剤としては、変性基を導入したものであってもよい。変性基としては、フェニル基が好ましい。
【0059】
シラン系カップリング剤としては、例示した中でも、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又はビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが好ましい。
【0060】
改質剤としては、上記シラン系カップリング剤に加えて他のカップリング剤を使用することができる。他のカップリング剤としては、フッ素樹脂層2のフッ素樹脂又はそのラジカルに対して反応性を有するものであればよく、例えばチタン系カップリング剤を使用することができる。
【0061】
チタン系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)ジイソプロピルチタネート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソプロピルテトラエチルオルソチタネート、テトラブチルオルソチタネート、ブチルポリチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス(トリエタノールアミノ)チタネート、オクチレングリコールチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティックエスチルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトネート、ポリ(チタンアセチルアセトネート)、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0062】
改質層4の裏面の純水に対する接触角の上限としては、90°が好ましく、80°がより好ましい。改質層4の裏面の純水に対する接触角が上記上限を超える場合、反射層3との接着強度が不十分となり、層間剥離を生じることにより当該配線板用保護フィルム1の光反射率が低下するおそれがある。一方、改質層4の裏面の純水に対する接触角の下限は特に限定されない。純水に対する接触角は、ERMA社の接触角測定器「G−I−1000」等を用いて測定できる。
【0063】
フッ素樹脂層2の裏面のぬれ張力の下限としては、50mN/mが好ましく、60mN/mがより好ましい。ぬれ張力が上記下限未満であると、密着力が不足し、反射層3が剥離するおそれがある。上記ぬれ張力の下限は、純粋なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のぬれ張力よりも大きい。すなわち、フッ素樹脂層2の裏面は、上記改質層4を形成することによって、通常のフッ素樹脂に比べて裏面の密着性が高くなる。なお、「ぬれ張力」とは、JIS−K−6768(1999)に準拠して測定される値である。
【0064】
また、この改質層4は、次のエッチング耐性を有することが好ましい。すなわち、塩化鉄を含み、密度が1.31g/cm
3以上1.33g/cm
3以下、遊離塩酸濃度が0.1mol/L以上0.2mol/L以下、温度が45℃以下のエッチング液に1分以上2分以下浸漬するエッチング処理に対して、改質層4が除去されないことが好ましい。ここで、改質層4が除去されないとは、フッ素樹脂層2裏面の親水性が失われないことを示し、例えばフッ素樹脂層2の裏面の純水に対する接触角が90°を超えないことを示す。なお、エッチング処理により、改質層4が形成されている領域において疎水性を示す微小部分が斑状に生じる場合もあるが、この領域全体としては親水性を有する場合は、このような状態は親水性が維持されているものとする。
【0065】
改質層4の平均厚さの下限としては、特に限定されないが、1nmが好ましく、10nmがより好ましい。改質層4の平均厚さが上記下限未満の場合、フッ素樹脂層2の全面を十分に改質できず、反射層3の剥離を防止できないおそれがある。一方、改質層4の平均厚さの上限としては、400nmが好ましく、100nmがより好ましい。改質層4の平均厚さが上記上限を超える場合、フッ素樹脂層2の改質層4が改質されていない領域よりも光透過率が低くなり得ることにより、当該配線板用保護フィルム1の光反射率が不十分となるおそれがある。なお、改質層の平均厚さは、光干渉式膜厚測定機、X線光電子分光(X−rayPhotoelectronSpectroscopy)分析装置、電子顕微鏡等を用いて測定できる。
【0066】
上記改質層4の裏面の平均表面粗さRaの上限としては、4μmが好ましく、1μmがより好ましい。改質層4の裏面の平均表面粗さRaが上記上限を超える場合、フッ素樹脂層2に反射層3を密着して積層するのが容易でなくなるおそれや、フッ素樹脂層2の裏面全体に切れ間なく改質層4を形成すると光透過率が低くなり得る改質層4の厚みが大きくなるおそれがあるので、当該配線板用保護フィルム1の光反射率が不十分となるおそれがある。また、改質層4の裏面を平均表面粗さRaが上記上限を超えるよう粗面化する場合、製造コストが過大となるおそれがある。一方、改質層4の裏面の平均表面粗さRaの下限としては、特に限定されない。
【0067】
<反射層>
反射層3は、フッ素樹脂層2の裏面、つまり改質層4に積層した金属膜により構成される。この反射層3は、フッ素樹脂層2を通して入射する光を鏡面反射する層である。反射層3は、金属箔によって構成できる。
【0068】
反射層3を構成する金属としては、銀、アルミウム、アルミニウム合金、金、パラジウム、ロジウム、SUS等が挙げられる。また、反射層3の材質は、当該配線板用保護フィルム1を使用する配線板に配設する光源が出射する波長に応じて、光反射率が高くなる金属を選択することが好ましい。
【0069】
反射層3の平均厚さの下限としては、0.01μmが好ましく、0.1μmがより好ましい。反射層3の平均厚さが上記下限未満の場合、均一な成膜が容易ではないため、フッ素樹脂層2の全面を覆うことができないおそれがある。一方、反射層3の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、2μmがより好ましい。反射層3の平均厚さが上記上限を超える場合、当該配線板用保護フィルム1の可撓性が不十分となるおそれがある。
【0070】
反射層3の表面(フッ素樹脂層2側の面)の全光線反射率の下限としては、70%が好ましく、90%がより好ましい。反射層3の表面全光線反射率が上記下限未満の場合、当該配線板用保護フィルム1の光反射率が不十分となるおそれがある。なお、全光線反射率とは、JIS−K−7375(2008)に準拠して測定される値である。
【0071】
また、反射層3を構成する金属箔は、当該配線板用保護フィルム1の光反射率を向上させるために、電解研磨等により表面の凹凸を小さくしてから積層することが好ましい。
【0072】
[配線板用保護フィルムの製造方法]
次に、当該配線板用保護フィルム1を製造する方法について説明する。
【0073】
当該配線板用保護フィルム1は、改質剤付着工程と、フッ素樹脂積層工程とを備える製造方法によって製造できる。
【0074】
<改質剤付着工程>
改質剤付着工程は、反射層3を形成する金属箔の表面に、アルコールと、水と、フッ素樹脂層2を改質して改質層4を形成するための改質剤とを含むプライマーを付着させる工程である。金属箔にプライマーを付着させる方法は、特に限定されないが、例えば浸漬法、スプレー法、塗布法等が採用できる。そして、乾燥により、プライマーのアルコールを除去する。アルコールの除去は、自然乾燥、加熱による乾燥、または減圧による乾燥等が採用できる。なお、この乾燥は、次の積層工程の熱圧着を行うプレス機において、連続して行ってもよい。乾燥後、加熱(例えば120℃15分)し、Si−O−Si結合を形成させる。
【0075】
改質剤のプライマー全体における含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。改質剤の含有量が上記下限未満の場合、フッ素樹脂層2の裏面を十分に改質できないおそれがある。一方、改質剤の含有量の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。改質剤の含有量が上記上限を超える場合、改質剤の凝集が生じ、金属箔の表面において、均一な厚さのプライマーの膜を形成できないおそれがある。
【0076】
プライマー中の水は微量で足りるが、改質剤の縮合の際の必須物質である。水のプライマー全体における含有量としては、例えば0.01質量%以上0.1質量%以下とすることができる。
【0077】
<フッ素樹脂積層工程>
フッ素樹脂積層工程は、反射層3の表面、すなわち改質剤付着工程において付着したプライマーの上にフッ素樹脂層2を構成するフッ素樹脂のシートを積層する工程である。フッ素樹脂層2と反射層3との積層体は、プレス機によって熱圧着される。フッ素樹脂層2と反射層3との間に気泡や空隙が形成されないようにするために、この熱圧着は減圧下で行うことが好ましい。この熱圧着によって、フッ素樹脂のC原子と改質剤から形成されるSi−O−Si結合との間に他の原子を介して化学結合が形成される。また、反射層3を構成する金属箔の酸化を抑制するため、例えば窒素雰囲気中等の低酸素条件下で熱圧着を行うことが好ましい。
【0078】
熱圧着温度の下限としては、フッ素樹脂層2を構成するフッ素樹脂の融点が好ましく、上記フッ素樹脂の分解開始温度がより好ましい。さらに、熱圧着温度とフッ素樹脂の融点との差の下限としては30℃が好ましく、50℃がより好ましい。熱圧着温度が上記下限未満の場合、フッ素樹脂が活性化しないため改質剤との反応が不十分となるおそれがある。また、熱圧着温度をフッ素樹脂の分解開始温度以上とすることにより、フッ素樹脂の一部がよりラジカルになり易く、改質剤と他の原子を介してより結合すると考えられる。一方、上記熱圧着温度の上限としては、フッ素樹脂の分解温度が好ましい。ここで、分解開始温度とは、フッ素樹脂が熱分解し始める温度をいい、分解温度とは、フッ素樹脂が熱分解によってその質量が10%減少する温度をいう。熱圧着温度が上記上限を超える場合、フッ素樹脂が分解してフッ素樹脂層2が破損するおそれがある。
【0079】
例として、フッ素樹脂層2を構成するフッ素樹脂がテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)である場合、フッ素樹脂の融点が約270℃であるため、熱圧着温度の下限としては、300℃が好ましく、320℃がより好ましい。一方、この時の熱圧着温度の上限としては、600℃が好ましく、500℃がより好ましい。
【0080】
熱圧着時の圧力としては、0.01MPa以上100MPa以下が好ましい。また、熱圧着の加圧時間は、0.01分以上1000分以下が好ましい。ただし、熱圧着圧力及び加圧時間はこれらに制限されるものではなく、改質剤の反応性等を考慮して設定すればよい。
【0081】
このような熱圧着により、改質剤からSi−O−Si結合が形成され、他の原子を介してその一部がフッ素樹脂に結合する。これらの結合は、改質層4が上述のエッチング耐性を有することから、共有結合を含むものであると推察される。また、改質層4が膜状に広がった高分子から構成され、この高分子とフッ素樹との間において多数の水素結合が形成されることによって両者が強く結合している可能性があるため、上記結合には、水素結合も含まれると推察される。一方で、金属箔の表面近傍には上記Si−O−Si結合及び親水性有機官能基が存在するため、フッ素樹脂表面に金属箔が固定される。
【0082】
また、このフッ素樹脂積層工程では、上記加圧加熱に加えて、他の公知のラジカル生成方法、例えば、電子線照射等を併用してもよい。電子線照射としては、例えばγ線照射処理が挙げられる。電子線照射等を併用することで、フッ素樹脂のラジカルをより効果的に生成させることができるため、フッ素樹脂層2と反射層3を形成する金属箔との間の接着の確実性をさらに高めることができる。また、電子線照射は、必ずしも接着工程において行う必要はなく、例えばフッ素樹脂層2を形成するときに同時に行ってもよいし、接着工程後に行ってもよい。
【0083】
[利点]
当該配線板用保護フィルム1は、透明なフッ素樹脂層2と反射層3との2層構造としたので、フッ素樹脂層2が表面の汚れ及び反射層3の吸湿を抑制して光反射率の低下を防止する。具体的には、フッ素樹脂層2は、疎水性であるため表面に汚れが付着し難く、耐候性が高いため高温高湿環境でも透明性を長期間維持することができる。また、疎水性のフッ素樹脂層2は、水分に対する高いバリア性を有するので、反射層3を形成する金属の酸化を抑制し、反射層3の光反射率低下を防止する。また、当該配線板用保護フィルム1は、フッ素樹脂層2と反射層3との界面において光を反射する鏡面を形成するので光反射率が高い。さらに、当該配線板用保護フィルム1は、フッ素樹脂層2の裏面に親水性の改質層4が形成されていることによってフッ素樹脂層2と反射層3との接合強度が高く、層間剥離による光反射率の低下を防止できる。
【0084】
[第二実施形態]
図2の配線板用保護フィルム11は、フッ素樹脂を主成分とする透明なフッ素樹脂層2と、このフッ素樹脂層2の裏面に積層される反射層13とを備える。
図2の配線板用保護フィルム11において、フッ素樹脂層2は
図1の配線板用保護フィルム1のフッ素樹脂層2と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
<反射層>
反射層13は、フッ素樹脂層2の改質層4が形成された裏面に積層した金属薄膜により構成される。この反射層13は、
図1の反射層3と同様にフッ素樹脂層2を通して入射する光を鏡面反射する層であるが、フッ素樹脂層2の裏面に蒸着、スパッタリング、メッキ、印刷、塗工等で形成した金属薄膜により構成される点が
図1の反射層3とは異なる。反射層13を構成する金属としては、
図1の反射層3と同様のものや金属粒子及びバインダーからなる組成物が使用できる。
【0086】
反射層13の平均厚さの下限としては、0.01μmが好ましく、0.1μmがより好ましい。反射層13の平均厚さが上記下限未満の場合、均一な成膜が容易ではないため、フッ素樹脂層2の裏面全体を覆うことができないおそれがある。一方、反射層13の平均厚さの上限としては、1μmが好ましく、0.5μmがより好ましい。反射層13の平均厚さが上記上限を超える場合、当該配線板用保護フィルム11が不要に高価となるおそれがある。
【0087】
[配線板用保護フィルムの製造方法]
次に、当該配線板用保護フィルム11を製造する方法について説明する。
【0088】
図2の配線板用保護フィルム11は、フッ素樹脂改質工程と、反射層積層工程とを備える製造方法によって製造できる。
【0089】
<フッ素樹脂改質工程>
フッ素樹脂改質工程は、フッ素樹脂層2を構成するフッ素樹脂を主成分とする樹脂製フィルムの裏面に改質剤を塗布及び必要に応じて加熱処理して改質層4を形成する工程である。改質剤塗布性向上及び加熱処理(ラジカル化)工程省略のために、樹脂製フィルムの裏面に、Naエッチング処理、プラズマ処理、スパッタ処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射、エキシマレーザー照射等の下処理を行ってもよい。
【0090】
例えば、Naエッチング処理は、フッ素樹脂の表面にナトリウムを含む溶液を塗布し、Naの還元力を利用してフッ素樹脂表面のF原子を引き抜いて炭素ラジカルを発生させ、この炭素ラジカルが雰囲気中の酸素、水素、水等と反応してヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、カルボニル基(−C(=O)−)等の官能基を形成する。これにより、フッ素樹脂にシランカップリング剤の加水分解性官能基が容易に結合可能となる。
【0091】
<反射層積層工程>
反射層積層工程は、フッ素樹脂層2に形成した改質層4の裏面に金属薄膜を積層して反射層13を形成する工程である。金属薄膜の積層は、蒸着、スパッタリング、メッキ、印刷、塗工等の公知の成膜技術を利用して行うことができる。なお、印刷又は塗工により反射層13を積層する場合は、金属粒子とバインダーとを含むペーストを使用するが、このペーストに上記改質剤を配合することにより、上記フッ素樹脂改質工程とこの反射層積層工程とを同時に行うこともできる。
【0092】
[利点]
当該配線板用保護フィルム11では、公知の成膜技術を利用することにより、光反射率の高い鏡面を形成する反射層13を積層できる。この反射層13の表面は、フッ素樹脂層2により保護されているので、光反射率が容易に低下しない。
【0093】
[第三実施形態]
図3の配線板用保護フィルム21は、フッ素樹脂を主成分とする透明なフッ素樹脂層2と、このフッ素樹脂層2の裏面に積層される反射層23とを備える。
図2の配線板用保護フィルム21において、フッ素樹脂層2は
図1の配線板用保護フィルム1のフッ素樹脂層2と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0094】
<反射層>
反射層23は、フッ素樹脂層2の改質層4が形成された裏面に積層された層であり、白色顔料25及びそのバインダー26を含む。この反射層23は、フッ素樹脂層2を通して入射する光を拡散反射する層である。
【0095】
(白色顔料)
白色顔料25は、反射層23に入射した光をランダムに屈折させて拡散し、最終的には反射層23からフッ素樹脂層2側に出射させる。この白色顔料25の材質としては、白色度が高く光吸収率が低いものが好ましく、具体的には、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化珪素等が挙げられる。
【0096】
白色顔料25の平均粒子径の下限としては、0.01μmが好ましく、0.1μmがより好ましい。白色顔料25の平均粒子径が上記下限未満の場合、白色顔料25が凝集しやすく、バインダー26中に均等に分散させることが困難となるおそれがある。一方、白色顔料25の平均粒子径の上限としては、50μmが好ましく、10μmがより好ましい。白色顔料25の平均粒子径が上記上限を超える場合、光を十分に拡散できず、十分にフッ素樹脂層2側に出射させられないおそれがある。
【0097】
白色顔料25の波長600nm、入射角82°における光反射率の下限としては、70%が好ましく、90%がより好ましい。白色顔料25の光反射率が上記下限未満の場合、十分な光反射率を有する反射層23を形成できないおそれがある。なお、上記「光反射率」は、分光光度計、例えば日立ハイテクノロジーズ社の「U−4100」を用い、硫酸バリウム標準白色板を基準として測定される。
【0098】
反射層23における白色顔料25の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。白色顔料25の含有量が上記下限未満の場合、反射層23の光反射率が不十分となるおそれがある。一方、反射層23における白色顔料25の含有量の上限としては、90質量%が好ましく、50質量%がより好ましい。白色顔料25含有量が上記上限を超える場合、後述するバインダー26の含有量が少なくなることにより反射層23の強度が不十分となるおそれがある。
【0099】
(バインダー)
バインダー26は、白色顔料25を分散して保持する。バインダー26の材質としては、光透過率が高いものであればよく、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を使用できる。これらの中でも反射層23の耐熱性を向上できる熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0100】
バインダー26として用いるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型、F型、S型、AD型、ビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型、ナフタレン型、ノボラック型、ビフェニル型、ジシクロペンタジエン型等のエポキシ樹脂や、高分子エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂が挙げられる。
【0101】
また、上記バインダー26は溶剤に溶解して使用できる。この溶剤としては、例えばエステル系、エーテル系、ケトン系、エーテルエステル系、アルコール系、炭化水素系、アミン系等の有機溶剤が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を使用できる。
【0102】
さらに、上記バインダー26には硬化剤を添加できる。この硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、酸及び酸無水物系硬化剤、塩基性活性水素化合物、第三アミノ類、イミダゾール類等が挙げられる。
【0103】
バインダー26には、上述した成分に加えて、増粘剤、レベリング剤等の助剤を添加できる。
【0104】
白色顔料25とバインダー26とを例えば三本ロールや回転攪拌脱泡機等により混合することにより、白色顔料25をバインダー26中に均等に分散できる。
【0105】
[配線板用保護フィルムの製造方法]
次に、当該配線板用保護フィルム21を製造する方法について説明する。
【0106】
当該配線板用保護フィルム21は、反射層形成工程と、改質剤付着工程と、フッ素樹脂積層工程とを備える製造方法によって製造できる。この製造方法において、改質剤付着工程及びフッ素樹脂積層工程は、
図1の配線板用保護フィルム1の製造方法における改質剤付着工程及びフッ素樹脂積層工程と同様であるため、説明を省略する。
【0107】
<反射層形成工程>
反射層形成工程は、白色顔料25及びバインダー26を含む組成物をシート状に成形して反射層23を構成する工程である。上記組成物をシート状に形成する方法としては、離形シート上に白色顔料25及びバインダー26を含む塗料を塗工する方法や、白色顔料25及びバインダー26を含む組成物を押出成型する方法等がある。
【0108】
[利点]
当該配線板用保護フィルム21は、反射層23の中に分散した白色顔料による拡散反射に加え、フッ素樹脂層2と反射層3との界面における反射が得られるため、高い光反射率を達成できる。また、当該配線板用保護フィルム21は、フッ素樹脂層2が反射層23の吸湿による変色を防止するので、光反射率が低下し難い。
【0109】
[第四実施形態]
図4の配線板用保護フィルム31は、フッ素樹脂を主成分とする透明なフッ素樹脂層2と、このフッ素樹脂層2の裏面に、透明な接着剤層37を介して積層される反射層3とを備える。
図4の配線板用保護フィルム31において、フッ素樹脂層2は
図1の配線板用保護フィルム1のフッ素樹脂層2と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0110】
上記接着剤層37の材質としては、特に限定されるものではないが、柔軟性や耐熱性に優れたものが好ましく、かかる接着剤としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミドイミド、高流動フッ素樹脂等の各種の樹脂系の接着剤が挙げられる。
【0111】
また、接着剤層37の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。接着剤層37の平均厚さが上記下限未満の場合、フッ素樹脂層2と反射層3との接着強度が不十分となるおそれがある。一方、接着剤層37の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、40μmがより好ましい。接着剤層37の平均厚さが上記上限を超える場合、当該配線板用保護フィルム31が不要に厚くなるおそれがある。
【0112】
[配線板用保護フィルムの製造方法]
次に、当該配線板用保護フィルム31を製造する方法について説明する。
【0113】
図5の配線板用保護フィルム31は、フッ素樹脂改質工程と、接着剤層積層工程と、反射層圧着工程とを備える製造方法によって製造できる。この製造方法において、フッ素樹脂積層工程は、
図2の配線板用保護フィルム11の製造方法におけるフッ素樹脂積層工程と同様であるため、説明を省略する。
【0114】
<接着剤層積層工程>
接着剤層積層工程では、フッ素樹脂層2に形成した改質層4の裏面に流動性を有する接着剤を塗布又はシート状の接着剤を重ねて配置することによって、フッ素樹脂層2の裏面に接着剤層37を積層する。
【0115】
<接着剤層積層工程>
反射層圧着工程では、接着剤層37の裏面に反射層3を構成する金属箔を配置し、熱圧着により接着する。これにより、フッ素樹脂層2、接着剤層37及び反射層3が一体化される。
【0116】
[利点]
当該配線板用保護フィルム31では、透明な接着剤層37を介してフッ素樹脂層2に反射層3を積層しているが、フッ素樹脂層2に形成した改質層4は、フッ素樹脂層2の接着剤層37に対する接着強度が向上している。このため、
図4の当該フッ素樹脂層配線板用保護フィルム31も、
図1の配線板用保護フィルム1と同様に、フッ素樹脂層2で反射層3を覆い、反射層3の吸湿を抑制することによって反射層3反射率の低下を防止できる。
【0117】
[プリント配線板]
図5のプリント配線板は、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板である。このプリント配線板は、配線板8と、配線板8に実装される発光ダイオード9と、配線板8の表面側のうち発光ダイオード9の実装領域以外に積層されるカバーレイ10とを備える。
【0118】
<配線板>
配線板8は、樹脂製のベースフィルム41と、このベースフィルム41の表面側に積層され、導電パターンを含む導電層42とを有する。
【0119】
(ベースフィルム)
ベースフィルム41は、可撓性及び電気絶縁性を有する樹脂製のシート状部材で構成される。ベースフィルム41の材料としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等が好適に用いられる。
【0120】
ベースフィルム41の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。ベースフィルム41の平均厚さが上記下限未満の場合、ベースフィルム41の強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム41の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。ベースフィルム41の平均厚さが上記上限を超える場合、当該プリント配線板が不要に厚くなったり、当該プリント配線板の可撓性が不足するおそれがある。
【0121】
(導電層)
導電層42は、金属等の導電体で形成された層であり、電気回路の電気流路を構成する導電パターンを含む平面形状を有する。この平面形状は、例えばベースフィルム41に積層された導電体をエッチングすることによって形成される。このような導電層42を形成する材料としては、導電性を有するものであればよいが、好ましくは金属、典型的には銅によって形成される。
【0122】
上記導電体をベースフィルム41に積層する方法としては、特に限定されず、例えば金属箔を接着剤で貼り合わせる接着法、金属箔上にベースフィルム41の材料である樹脂組成物を塗布するキャスト法、スパッタリングや蒸着法でベースフィルム41上に形成した厚さ数nmの薄い導電層の上に電解メッキで金属層を形成するスパッタ/メッキ法、金属箔を熱プレスで貼り付けるラミネート法等を用いることができる。
【0123】
上記導電層42の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。導電層42の平均厚さが上記下限未満の場合、導電性が不十分となるおそれがある。一方、導電層42の平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましい。導電層42の平均厚さが上記上限を超える場合、当該プリント配線板が不要に厚くなるおそれがある。
【0124】
<発光ダイオード>
発光ダイオード9は、配線板8の表面側に、好ましくは導電層42が形成する導電パターン領域上に実装される。発光ダイオード9は、ベアチップ型であってもよく、パッケージ型であってもよい。また、発光ダイオード9の配線板8への実装方法は、半田リフロー、導電性ペーストを用いたダイボンディング、金属線を用いたワイヤボンディング等を用いることができる。
【0125】
<カバーレイ>
カバーレイ10は、配線板用保護フィルム1と、この配線板用保護フィルム1の裏面に積層された保護フィルム接着剤層43とを備える。
図4のプリント配線板において、配線板用保護フィルム1は、
図1の配線板用保護フィルム1と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0126】
このカバーレイ10は、保護フィルム接着剤層43により配線板8の表面側のうち上記発光ダイオード実装領域以外に積層される。カバーレイ10は、発光ダイオード9の実装領域を開放するよう開口や切り欠きが形成されている。
【0127】
(保護フィルム接着剤層)
保護フィルム接着剤層43を構成する接着剤としては、特に限定されるものではないが、柔軟性や耐熱性に優れたものが好ましく、かかる接着剤としては、例えばナイロン系、エポキシ系、ブチラール系、アクリル系等の樹脂接着剤が挙げられる。
【0128】
上記保護フィルム接着剤層43の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。保護フィルム接着剤層43の平均厚さが上記下限未満の場合、当該配線板用保護フィルム1の配線板8に対する密着性が不十分となったり、配線板8(特に導電層42)が反射層3に接触して反射層3を傷付けたりするおそれがある。一方、保護フィルム接着剤層43の平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、25μmがより好ましい。保護フィルム接着剤層43の平均厚さが上記上限を超える場合、当該カバーレイ10ひいては当該プリント配線板の可撓性が不十分となるおそれがある。
【0129】
[利点]
当該プリント配線板は、
図1当該配線板用保護フィルムを備えるカバーレイ10が表面側に積層されていることにより、発光ダイオード9が発する光のうち当該配線板用保護フィルム1に入射する光の大半を反射できるので、光の利用効率、つまりエネルギー効率が高い。
【0130】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0131】
当該配線板用保護フィルムは、接着剤層を備えるカバーレイとして提供されることが好ましいが、接着剤を塗布した配線板上に、接着剤層が積層されていない当該配線板用保護フィルムを積層してもよい。
【0132】
また、白色顔料及びバインダーを含む反射層は、改質層を形成したフッ素樹脂層の裏面に白色顔料及びバインダーを含む塗料を塗工して形成してもよく、白色顔料を分散したバインダーをフィルム状に成形し、このフィルムを改質層が形成されたフッ素樹脂層の裏面に熱プレスして積層してもよい。
【0133】
当該カバーレイ及び当該プリント配線板は、
図2又は
図3の配線板用保護フィルムを備えるものであってもよい。
【0134】
また、当該配線板用保護フィルム、当該カバーレイ及び当該プリント配線板は、上述の実施形態において説明した各層に加えてさらに別の層を備えてもよい。当該配線板用保護フィルムの裏面に、例えば金属薄膜からなる反射層をフッ素樹脂層と独立して形成するための基材層、反射層を保護するための保護層、接着剤層との接着性を高めるための接着促進層等を有してもよい。また、表面に従来のカバーレイが積層された配線板にさらに当該配線板用保護フィルムを貼着してもよい。
【0135】
当該プリント配線板は、可撓性のない配線板の表面側に当該配線板用保護フィルムを積層したものであってもよい。