(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光ファイバと、該光ファイバの側面に一対の開口端を有し、該一対の開口端を該光ファイバのコアを通って連通させるように該光ファイバに形成された少なくとも1つの孔とを備えており、前記孔に測定対象の液体を進入させた状態で、該光ファイバの一端から該光ファイバに光を入射したときに、前記孔を経由して該光ファイバから出射される光を前記液体の特性の測定用の光として出力する光ファイバセンサ装置であって、
前記孔は、該孔を素材の光ファイバの側面のうち、該孔の一端側開口端の配置箇所と他端側開口端の配置箇所とのそれぞれから、該光ファイバのコアで互いに連通するように該コアに向かって非貫通に各々延在する一端側部分孔と他端側部分孔とにより構成されていることを特徴とする光ファイバセンサ装置。
光ファイバと、該光ファイバの側面に一対の開口端を有し、該一対の開口端を該光ファイバのコアを通って連通させるように該光ファイバに形成された少なくとも1つの孔とを備えており、前記孔に測定対象の液体を進入させた状態で、該光ファイバの一端から該光ファイバに光を入射したときに、前記孔を経由して該光ファイバから出射される光を前記液体の特性の測定用の光として出力する光ファイバセンサ装置であって、
前記光ファイバは、マルチモード光ファイバであり、前記光ファイバの軸心方向に間隔を存して複数の前記孔が配列されており、該複数の孔は、前記光ファイバの軸心方向で見たとき、互いに交差する方向に延在する2つ以上の孔を含むことを特徴とする光ファイバセンサ装置。
光ファイバと、該光ファイバの側面に一対の開口端を有し、該一対の開口端を該光ファイバのコアを通って連通させるように該光ファイバに形成された少なくとも1つの孔とを備えており、前記孔に測定対象の液体を進入させた状態で、該光ファイバの一端から該光ファイバに光を入射したときに、前記孔を経由して該光ファイバから出射される光を前記液体の特性の測定用の光として出力する光ファイバセンサ装置の製造方法であって、
素材の光ファイバの側面のうち、前記孔の一端側開口端の配置箇所にフェムト秒レーザのレーザ光を照射することにより該一端側開口端の配置箇所から前記素材の光ファイバのコアまで連通する一端側部分孔を穿設する第1工程と、前記素材の光ファイバの側面のうち前記孔の他端側開口端の配置箇所にフェムト秒レーザのレーザ光を照射することにより該他端側開口端の配置箇所から前記素材の光ファイバのコアまで連通する他端側部分孔を穿設する第2工程とを備え、前記第1工程及び第2工程のうちの少なくともいずれか一方の工程は、前記一端側部分孔及び他端側部分孔を前記コアで連通させるように、前記レーザ光の照射を行うことを特徴とする光ファイバセンサ装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
種々様々な液体の屈折率等の特性を測定する場合、その測定を種々様々な環境下で簡易に行うことができることが望まれる。
【0010】
しかるに、特許文献1に見られる如き分光光度計を使用する測定手法では、スリット、回折格子、分光器、反射鏡、試料セル等の多数の光学系要素が必要となる。さらに、安定な測定精度を実現するためには、光学系要素等を保持する高剛性の保持機構も必要となる。
【0011】
このため、分光光度計を使用する測定手法では、測定システムが大型で複雑なものとなり、あるいは、高価なものとなりやすい。さらに、測定システムにおける光路の安定性を確保するために、測定環境が限定され、種々様々な環境下で、精度のよい測定を行うことが困難である。
【0012】
一方、特許文献2に提案されている技術によれば、測定システム自体は、簡易な構成のもので済む。しかしながら、当該技術では、光ファイバに穿設される微小孔は、実質的にその一端だけが光ファイバの側面で開口している孔となっている。
【0013】
このため、測定対象の液体を微小孔内に進入させることが難しく、その作業に手間がかかったり、あるいは、その作業のための専用の治具が必要となるという不都合がある。あるいは、測定対象の液体が極めて低粘度の液体に限定されてしまうという不都合がある。
【0014】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、種々様々な環境下で、液体の特性測定を簡易に行うことを可能とする光ファイバセンサ装置を提供することを目的とする。
【0015】
また、このような光ファイバセンサ装置を容易に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の光ファイバセンサ装置は、上記目的を達成するために、光ファイバと、該光ファイバの側面に一対の開口端を有し、該一対の開口端を該光ファイバのコアを通って連通させるように該光ファイバに形成された少なくとも1つの孔とを備えており、前記孔に測定対象の液体を進入させた状態で、該光ファイバの一端から該光ファイバに光を入射したときに、前記孔を経由して該光ファイバから出射される光を前記液体の特性の測定用の光として出力することを
基本構成とする。
【0017】
かかる
基本構成によれば、光ファイバに形成された孔は、該光ファイバの側面に一対の開口端を有する。このため、該孔のいずれか一方の開口端から液体が進入しようとすると、他方の開口端から孔内のガスが流出できる。従って、光ファイバの孔の形成部分を測定対象の液体に浸漬させたり、あるいは、該孔のいずれかの開口端に測定対象の液体を滴下することで、孔内に液体を円滑に進入させることが可能である。
【0018】
そして、測定に際しては、孔内に測定対象の液体を進入させた状態で、光ファイバにその一端から光を入射する。このとき、孔を経由して光ファイバから出射する光は、その強度あるいはスペクトル分布(波長分布)等が、孔内の液体の特性(屈折率、光の吸収度等)に応じて変化する。このため、孔を経由して光ファイバから出射する光を利用して、孔内の液体の特性を測定することが可能となる。
【0019】
この場合、光の光路が光ファイバにより構成されるので、種々様々な環境下で、測定用の光路を容易に確保することができる。また、測定対象の液体を孔内に進入させることを上記の如く容易に行うことができる。
【0020】
従って、
上記基本構成によれば、種々様々な環境下で、液体の特性測定を簡易に行うことが可能となる。
【0021】
上記基本構成では、前記孔の内周面は、粗面に形成されていることが好ましい。
【0022】
これによれば、孔の内周面等で液体の表面張力が生じ難くなるので、該孔内に測定対象の液体を進入させることをより容易に行うことができる。
【0023】
上記基本構成を有する本発明の第1の態様では、前記孔は、該孔を素材の光ファイバの側面のうち、該孔の一端側開口端の配置箇所と他端側開口端の配置箇所とのそれぞれから、該光ファイバのコアで互いに連通するように該コアに向かって非貫通に各々延在する一端側部分孔と他端側部分孔とにより構成されていること
を特徴とする。
【0024】
これによれば、光ファイバセンサ装置の製造にあたって、前記孔を構成する一端側部分孔と他端側部分孔とを個別に形成することができる。そして、この場合、各部分孔の長さ(深さ)は、光ファイバの半径程度の長さで済む。
【0025】
このため、光ファイバにクラック等の損傷が生じるのを防止しつつ、レーザ等により孔を形成することを容易に行うことができる。
【0026】
この場合、前記一端側部分孔と他端側部分孔とは、それぞれの軸心が交差するように設けられていることが好ましい。
【0027】
これによれば、前記孔は、光ファイバのコアにて前記一端側部分孔と他端側部分孔とが連通する箇所で折れ曲がるように形成されることとなる。そして、測定に際して、前記孔の折れ曲がり箇所が該孔の一対の開口端よりも低い位置になるように光ファイバを配置するだけで、該孔に進入させた測定対象の液体が該孔から流出するのを防止できる。
【0028】
このため、信頼性の高い測定を安定且つ容易に行うことができる。
【0029】
また、本発明
の第2の態様では、前記光ファイバは、マルチモード光ファイバであり、前記光ファイバの軸心方向に間隔を存して複数の前記孔が配列されており、該複数の孔は、前記光ファイバの軸心方向で見たとき、互いに交差する方向に延在する2つ以上の孔を含む
ことを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、前記光ファイバのコア中を伝播する多モードの光のうち、前記2つ以上の孔のそれぞれに作用する光のモードを互いに異ならせることができる。
【0031】
このため、孔の個数が1つである場合、あるいは、複数の孔の軸心方向を互いに同一にした場合に比べて、光ファイバに入射する光を効率よく利用することができる。ひいては、光ファイバから出射される光に基づく前記液体の特性の測定に関するS/N比、あるいは、感度を高めることができる。
【0032】
また、前記2つ以上の孔のそれぞれに各別の特性の液体を注入することで、各孔内の液体に互いに異なるモードの光を作用させることができるので、それぞれの液体に作用するモードの出射光に基づいて、それぞれの液体の特性を測定することもできる。
【0033】
また、本発明の光ファイバセンサ装置の製造方法は、前記
基本構成の光ファイバセンサ装置の製造方法であって、素材の光ファイバの側面のうち、前記孔の一端側開口端の配置箇所にフェムト秒レーザのレーザ光を照射することにより該一端側開口端の配置箇所から前記素材の光ファイバのコアまで連通する一端側部分孔を穿設する第1工程と、前記素材の光ファイバの側面のうち前記孔の他端側開口端の配置箇所にフェムト秒レーザのレーザ光を照射することにより該他端側開口端の配置箇所から前記素材の光ファイバのコアまで連通する他端側部分孔を穿設する第2工程とを備え、前記第1工程及び第2工程のうちの少なくともいずれか一方の工程は、前記一端側部分孔及び他端側部分孔を前記コアで連通させるように、前記レーザ光の照射を行うことを特徴とする。
【0034】
この製造方法によれば、フェムト秒レーザを使用して前記孔を構成する一端側部分孔及び他端側部分孔を素材の光ファイバに穿設することで、該光ファイバにクラック等の損傷を発生させることなく、前記孔を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を以下に
図1から
図7を参照して説明する。
【0037】
図1(a),(b)に示すように、本実施形態の光ファイバセンサ装置1は、その基体としての光ファイバ2を有する。この光ファイバ2は、本実施形態ではマルチモード光ファイバであり、その中心部の光導波路を形成するコア2aと、該コア2aの周囲のクラッド2bとを有する。
【0038】
光ファイバ2は、その全長のうちの一部(所定長部分)がセンサ本体部2xとなっている。このセンサ本体部2xの光ファイバ2に複数の孔3が形成されている。これらの孔3は、光ファイバ2の軸心方向に一定間隔で並ぶように配列されている。なお、孔3の個数は、1個であってもよい。
【0039】
各孔3は、光ファイバ2の側面(クラッド2bの外周面)で開口する一対の開口端4a,4bを有し、その一対の開口端4a,4bを、光ファイバ2のコア2aを通って連通させるように形成されている。
【0040】
具体的には、各孔3は、その一端側開口端4aの配置箇所と他端側開口端4bの配置箇所とのそれぞれから、光ファイバ2のコア2aに向かって各々非貫通に穿設された一端側部分孔3aと他端側部分孔3bとにより構成されている。これらの部分孔3a,3bは、光ファイバ2のコア2aで互いに連通するように穿設されている。
【0041】
より詳しくは、本実施形態では、各孔3を構成する一端側部分孔3aと他端側部分孔3bとは、光ファイバ2の直径方向に互いに同軸心に形成されている。従って、各孔3は、光ファイバ2の直径方向に1直線状に延在するように形成されている。また、各孔3の一対の開口端4a,4bは、光ファイバ2の周方向に180°の位相をずらして該光ファイバ2の側面に配置されている。
【0042】
さらに、各孔3を構成する一端側部分孔3aと他端側部分孔3bとは、それぞれの開口端4a,4b側からコア2aに向かって概略縮径するように形成されている。さらに、
図2(b)に例示するように、各孔3の内周面は粗面に形成されている。この粗面は、その凹凸の深さが数十から数百nm程度となるナノ構造の粗面に形成される。一例として、該粗面を粒状隆起構造の粗面とみなした場合、隆起部の平均半径が100nm程度となる粗面が形成される。
【0043】
上記の如き各孔3は、例えばフェムト秒レーザを使用して次のように作成される。すなわち、光ファイバ2(孔3の穿設前の素材の光ファイバ)の側面のうち、孔3の一端側開口端4aの配置箇所に、フェムト秒レーザによるレーザ光を光ファイバ2の直径方向に照射することで、一端側部分孔3aを穿設する。このように一端側部分孔3aを穿設する工程が第1工程である。
【0044】
次いで、孔3の他端側開口端4bの配置箇所(すなわち、一端側開口端4aから光ファイバ2の周方向に180°の位相をずらした箇所)に、フェムト秒レーザによるレーザ光を光ファイバ2の直径方向に照射することで、他端側部分孔3bを穿設する。このとき、レーザ光は、他端側部分孔3bを一端側部分孔3aに連通させるように光ファイバ2に照射される。このように他端側部分孔3bを穿設する工程が第2工程である。
【0045】
これにより、各孔3が形成される。この場合、一実施例として、各孔3の一端側部分孔3a及び他端側部分孔3bを穿設するときのフェムト秒レーザの動作条件は、例えば次のような動作条件が採用される。
【0046】
照射エネルギー:17μJ/パルス、繰り返し周波数:1000Hz、総パルス数:800、レーザ波長:400nm、パルス幅:210fs。
【0047】
実施例では、例えばコア2a及びクラッド2bの直径がそれぞれ62.5μm、125μmの光ファイバ2(マルチモード光ファイバ)に、上記動作条件にて、各孔3を形成することによって、開口端4a,4bでの径が16.2μm、コア2aの中心部での径が8.5μmの孔3を作成できた。なお、複数の孔3を形成する場合、例えば、0.5μmの間隔で複数の孔3を形成することができる。
【0048】
上記の如く各孔3を形成する場合に、一端側部分孔3aと他端側部分孔3bとの位置合わせ正確に行うために、レーザ光の照射軸方向とこれに直交する横方向との2方向からレーザ光を照射箇所をカメラにより観測することが望ましい。
【0049】
また、孔3を穿設する光ファイバ2を固定した可動テーブルが、3軸方向に動き得ることに加えて、該可動テーブルを光ファイバの軸心方向周りに精度よく所望の角度に回転させ得る機構を採用することが望ましい。
【0050】
図2(a)はこのようにして作成された1つの孔3の全体の縦断面の撮像画像を示し、
図2(b)は該孔3の一部の詳細撮像画像を示している。
図2(b)に示すように、孔3の内周面は粗面に形成されている。
【0051】
なお、各孔3の作成にあたって、例えば2台のフェムト秒レーザを使用して、一端側部分孔3a及び他端側部分孔3bを同時に穿設するようにしてもよい。
【0052】
次に、本実施形態の光ファイバセンサ装置1を使用した測定システムの例を
図3を参照して説明する。
【0053】
図3に示す測定システム10は、上記センサ本体部2xを備える光ファイバ2に入射する光を出力する光源11と、光ファイバ2から出射する光を受光する光検出器12とを備える。
【0054】
光源11は、光ファイバ2の一端から該光ファイバ2に光を入射すべく、光ファイバ2の一端に接続される。この光源11としては、例えば多波長光としての白色光を出力する白色光源もしくは多波長光源、あるいは、所定波長のレーザ光を出力するレーザ光源が使用される。
【0055】
光検出器12は、光ファイバ2の他端から出射する光を受光すべく、光ファイバ2の他端に接続される。この光検出器12としては、例えばスペクトルアナライザ(分光器)等が使用される。
【0056】
なお、図示の測定システム10では、光検出器12は、パーソナルコンピュータ13(以降、単にPC13という)に接続されている。そして、該光検出器12の計測データをPC13に取り込んで、データ解析等をすることが可能となっている。
【0057】
また、光ファイバ2の中間部のセンサ本体部2xの両端部分(光ファイバ2の軸心方向の両端部分)は治具14に装着される。この治具14により、センサ本体部2xは、直線状に張設された状態で保持される。そして、この治具14を動かすことで、センサ本体部2xを移動させたり、センサ本体部2xを測定対象の液体Aに浸漬させたりすることが可能となっている。
【0058】
かかる測定システム10による測定は次のように行われる。すなわち、光ファイバセンサ装置1のセンサ本体部2xを治具14により保持した状態で、該センサ本体部21xが、測定対象の液体Aに浸漬される。これにより、液体Aが、センサ本体部21xの各孔3に進入し、該孔3に充填される。
【0059】
この場合、各孔3は、前記した如く、その両端が開口端4a,4bとなっている。このため、開口端4a,4bの一方の開口端4a又は4bから液体Aが進入するときに、他方の開口端4b又は4aから孔3内のガス(空気)が流出できる。
【0060】
しかも、各孔3の内周面が粗面に形成されている。このため、各孔3の内周面での液体Aの表面張力が生じ難くなる。
【0061】
その結果、センサ本体部21xを液体Aに浸漬させるだけで、各孔3に測定対象の液体Aを円滑に進入させることができる。
【0062】
また、各孔3の体積は十分に微小(実施例では、20ピコ・リットル程度)であるので、測定対象の液体Aの量が少なくても、1つ又は複数の孔3に、液体Aを充填させることができる。
【0063】
上記の如くセンサ本体部21xの孔3に測定対象の液体Aを充填した状態で、光源11により光ファイバ2の一端から光を入射する。
【0064】
光ファイバ2に光源11から入射した光は、光ファイバ2のコア2a内を他端側に向かって進行し、光ファイバ2の他端から出射する。このとき、該光は、センサ本体部2xにて各孔3を経由(透過)して進行する。
【0065】
そして、光ファイバ2の他端から出射した光が光検出器12で受光され、該光検出器12により、出射光の強度、スペクトル分布(波長分布)等が測定される。
【0066】
ここで、液体Aが充填された各孔3での光の屈折率、あるいは、光の吸収度等が液体Aの成分、種類等の該液体Aの特性に依存して変化する。このため、光検出器12で受光される光の強度、スペクトル分布等も液体Aの特性に依存して変化する。
【0067】
従って、光検出器12の測定データ(受光強度、スペクトル分布等)に基づいて、液体Aの特性を測定することができる。
【0068】
以下により具体的な測定例を説明する。
【0069】
[測定例1]
前記実施例の光ファイバ2のセンサ本体部2xを、屈折率が互いに相違する複数種類の液体のそれぞれに浸漬させることで、各種類の液体毎に、該液体をセンサ本体部2xの各孔3に充填した。
【0070】
上記複数種類の液体は、水(屈折率1.33)、エタノール(屈折率1.36)、パラフィンオイル(屈折率1.48)の3種類である。
【0071】
そして、前記光源11、光検出器12として、それぞれ白色光源、スペクトルアナライザを使用した測定システム10によって、各種類の液体毎に、光ファイバ2の一端から白色光を入射し、該光ファイバ2の他端から出射する光のスペクトル分布を測定した。
【0072】
その測定結果を示すグラフが
図4(a),(b)に示されている。
図4(a)は、各種類の液体毎に測定された、光の波長λと、光ファイバ2を透過した光の強度である透過光強度(光検出器12で受光される出射光の強度)との関係を示すグラフ、
図4(b)は、特定波長(例えば850nm)における、液体の屈折率と透過光強度との関係を示すグラフである。
【0073】
なお、
図4(a),(b)の縦軸の透過光強度は、光ファイバ2の各孔3が空洞となっている状態(各孔3に空気が充填されている状態)での透過光強度を基準とする相対強度(比率)をデシベル単位で示すものである。また、この測定例では、センサ本体部2xに形成されている孔3の個数は、10個である。
【0074】
図4(a)に示すように、幅広い波長範囲で、液体の屈折率の相違に応じて透過光強度が顕著に変化することが判る。そして、1つの特定波長、例えば850nmに着目したとき、
図4(b)に示すように、透過光強度は、液体の屈折率に対してほぼリニアに変化することが判る。
【0075】
このように、センサ本体部2xの各孔3に充填する液体の屈折率に依存して、透過光強度が変化する。
【0076】
従って、測定システム10により測定される透過光強度に基づいて、各孔3に充填された液体の屈折率、あるいは、該液体の種類を同定することができることとなる。
【0077】
なお、各孔3に充填された液体の屈折率、あるいは、該液体の種類を特定する場合、光ファイバ2に入射する光は、白色光である必要はなく、単一の波長(例えば850nm)のレーザ光を使用してもよい。その場合には、光ファイバ2の出射光のスペクトル分布を測定せずとも、透過光強度に基づいて、液体の屈折率、あるいは種類を同定できる。
【0078】
補足すると、測定対象の液体の屈折率の相違に対する透過光強度の変化の感度は、センサ本体部2xに形成された孔3の個数に応じて変化し、基本的には、該個数が多いほど、当該感度が高まる。
【0079】
[測定例2]
前記実施例の光ファイバ2のセンサ本体部2xを、蛍光物質であるローダミン(詳しくは、ローダミン6G)を含有するエタノール溶液(以降、単にローダミンエタノール溶液という)に浸漬させることで、該ローダミンエタノール溶液をセンサ本体部2xの各孔3に充填した。なお、この測定例では、ローダミンエタノール溶液の組成は、ローダミン6G:0.2g、水:10g、エタノール:10gである(ローダミンの濃度は、重量%で1%)。
【0080】
そして、前記光源11、光検出器12として、それぞれ白色光源、スペクトルアナライザを使用した測定システム10によって、光ファイバ2の一端から白色光を入射し、該光ファイバ2における光の吸収度(入射光の強度に対する出射光の強度の相対値)のスペクトル分布を測定した。
【0081】
その測定結果を示すグラフが
図5に示されている。
図5は、測定された、光の波長と吸収度との関係を示すグラフである。なお、
図5の縦軸の吸収度は、各波長における光の入射強度と出射強度との差を対数値で示したものである。また、この測定例では、センサ本体部2xに形成した孔3の個数は、10個である。
【0082】
図5に示す如く、光の吸収度は、ローダミン6Gの固有の蛍光励起波長(吸収波長)である530nmでピーク値となっている。従って、測定システム10により、光の吸収度のピーク値の波長を測定することで、該波長の測定値から、センサ本体部2xの孔3に充填した液体中の蛍光物質の蛍光励起波長、ひいては、該蛍光物質の種別(ここでは、ローダミン6G)を同定できることが判る。
【0083】
[測定例3]
前記実施例の光ファイバ2のセンサ本体部2xを、ローダミン(詳しくは、ローダミン6G)の濃度が互いに相違する複数種類のローダミンエタノール溶液のそれぞれに浸漬させることで、各種類のローダミンエタノール溶液毎に、該ローダミンエタノール溶液をセンサ本体部2xの各孔3に充填した。なお、このローダミンエタノール溶液は、エタノールにローダミンを含有させた溶液である。
【0084】
上記複数種類のローダミンエタノール溶液のそれぞれのローダミン濃度は、16.5M,8.24M,1.65M,0.82M,0.17Mの5種類である。なお、Mは、[モル/リットル/10
-3]という単位を表している。
【0085】
そして、前記測定例2と同様に、前記光源11、光検出器12として、それぞれ白色光源、スペクトルアナライザを使用した測定システム10によって、各種類のローダミンエタノール溶液毎に、光ファイバ2の一端から白色光を入射し、該光ファイバ2における光の吸収度のスペクトル分布を測定した。
【0086】
その測定結果を示すグラフが
図6(a),(b)に示されている。
図6(a)は、各種類のローダミンエタノール溶液毎に測定された、光の波長λと吸収度との関係を示すグラフ、
図6(b)は、ローダミンの濃度と、吸収度のピーク値との関係を示すグラフである。
【0087】
なお、
図6(a),(b)の縦軸の吸収度は、
図5と同様に対数値で示したものである。また、この測定例では、センサ本体部2xに形成した孔3の個数は、1個である。
【0088】
また、センサ本体部2xに形成した孔3の個数を、
図6の測定例の場合と異ならせた光ファイバセンサ装置1を使用して、上記複数種類(5種類)のローダミンエタノール溶液について、上記と同様に測定を行った。その測定結果を示すグラフが
図7(a),(b)に示されている。
【0089】
なお、この場合の測定例では、センサ本体部2xに形成した孔3の個数は、
図6の測定例の場合よりも多く、例えば10個である。
【0090】
図6(a)又は
図7(a)に示すように、光の吸収度は、いずれの濃度のローダミンエタノール溶液でも、ローダミン6Gの固有の蛍光励起波長である530nmでピーク値となっている。さらに、
図6(a)又は
図7(a)に示すように、あるいは、
図6(b)又は
図7(b)に示すように、ローダミン濃度が高いほど、光の吸収度のピーク値が増加している。
【0091】
従って、測定システム10により、ローダミン6Gに固有の蛍光励起波長での吸収度(ピーク値)を測定することで、該吸収度から、ローダミンエタノール溶液中のローダミン6Gの濃度を同定したり、あるいは、該濃度の大小の程度を把握することもできる。
【0092】
このように、光ファイバセンサ装置1を使用して、固有の蛍光励起波長を有する蛍光物質の濃度の測定を行うこともできる。なお、蛍光物質の種類が事前に判っている場合には、光ファイバ2に入射する光は、該蛍光物質の蛍光励起波長と同一もしくはほぼ同一の単一波長のレーザ光であってもよい。
【0093】
また、
図6(b)及び
図7(b)を比較して判るように、センサ本体部2xに備える孔3の個数が多いほど、各孔3に充填する液体中の蛍光物質(ここではローダミン6G)の濃度の変化に対する光の吸収度の変化の感度が高くなる。従って、孔3の個数が多いほど、の光の吸収度の測定感度、ひいては、蛍光物質の濃度の測定感度を高めることができることが判る。
【0094】
以上の如く、本実施形態の光ファイバセンサ装置1を使用して、各種液体の屈折率、液体の種別、液体中の物質による光の吸収度がピークとなる波長、液体中の特定の物質の濃度等、液体の種々様々な特性を測定できる。
【0095】
この場合、光ファイバセンサ装置1のセンサ本体部2xを測定対象の液体に浸漬させるだけで、該センサ本体部2xの各孔3に測定対象の液体を円滑に進入させることができる。
【0096】
また、測定に際しての光の伝送は、光ファイバ2内で行われるので、種々様々な環境下での光路の確保が容易である。また、光ファイバ2内での光の伝送によって、外乱の影響を受け難いと共に、精密な光学系を必要としない。そして、光ファイバ2の一端に光源11を接続し、他端に光検出器12を接続するだけで、測定を行うことができる。
【0097】
さらに、各孔3の体積が微小であることから、測定対象の液体の量は、微量なものであってもよい。
【0098】
従って、種々様々の測定環境において、液体の特性を簡易且つ安価な測定システムで容易に測定することができる。ひいては、利便性あるいは汎用性が極めて高い光ファイバセンサ装置1を実現できる。
【0099】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を
図8を参照して説明する。なお、本実施形態は、センサ本体部に形成する孔の形状だけが第1実施形態と相違するので、その相違点を中心に説明する。そして、第1実施形態と同一の事項については説明を省略する。
【0100】
図8を参照して、本実施形態の光ファイバセンサ装置21のセンサ本体部2xに形成される各孔23は、それぞれの軸心が光ファイバ2のコア2aにて互いに交差するように形成された一端側部分孔23aと他端側部分孔23bとにより構成されている。
【0101】
さらに詳細には、各孔23の一対の開口端24a,24bは光ファイバ2の周方向で、180°よりも小さい角度間隔(例えば約90°)を有するように配置されている。そして、開口端24a,24bのそれぞれの配置箇所から、一端側部分孔23aと他端側部分孔23bとが、各々光ファイバ2の直径方向でコア2aの中心部に向かって穿設され、該コア2aの中心部で連通されている。
【0102】
これにより、各孔23を構成する一端側部分孔23aと他端側部分孔23bとは、光ファイバ2の軸心方向で見たとき、それぞれの軸心がコア2aの中心部で交差する(図示例では、ほぼ直交する)ように設けられている。換言すれば、各孔23は、コア2aの中心部で折れ曲がるように形成されている。
【0103】
なお、一端側部分孔23aと他端側部分孔23bとは、第1実施形態と同様に、フェムト秒レーザを使用して穿設される。
【0104】
本実施形態の光ファイバセンサ装置21の構成は、以上説明した事項以外は、第1実施形態と同じである。
【0105】
この光ファイバセンサ装置21を使用して液体の特性を測定する場合、測定対象の液体を各孔23に充填させた状態で、各孔23の中央部(一端側部分孔23aと他端側部分孔23bと交差部)が、
図8に示す如く該孔23の開口端24a,24bの両方よりも低い位置となるように、センサ本体部2xを保持する。
【0106】
このようにすることで、測定対象の液体の粘性が低い場合であっても、測定中に、各孔23から液体が流出してしまうのを容易に防止できる。ひいては、信頼性の高い測定を、安定且つ容易に行うことができる。
【0107】
なお、本実施形態は、各孔23の一対の開口端24a,24bを、光ファイバ2の周方向で約90°の角度間隔を有するように配置している。ただし、各孔23の一対の開口端24a,24bを、例えば光ファイバ2の周方向でより小さい角度間隔を有するように配置してもよい。
【0108】
さらには、各孔23の一対の開口端24a,24bを、光ファイバ2の側面で光ファイバ2の軸心方向に間隔を有して並ぶように配置してもよい。この場合には、各孔23の一端側部分孔23aと他端側部分孔23bとは、光ファイバ2の径方向で見て(側面視で見て)、それぞれの軸心がコア2aの中心部で互いに交差するように穿設すればよい。
【0109】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を
図9を参照して説明する。なお、本実施形態は、センサ本体部に形成する孔の配列パターンだけが第1実施形態と相違するので、その相違点を中心に説明する。そして、第1実施形態と同一の事項については説明を省略する。
【0110】
図9を参照して、本実施形態の光ファイバセンサ装置41のセンサ本体部2xには、互いに軸心が直交するように形成された一対(2個)の孔43,43が光ファイバ2の軸心方向に間隔を存して設けられている。
【0111】
各孔43は、第1実施形態の各孔3と同様に、光ファイバ2の周方向に180°の角度間隔を存して配置される一対の開口端44a,44bのそれぞれの配置箇所からコア2aの中心部に向かって同軸心に各々穿設された一端側部分孔43aと他端側部分孔43bとにより構成されている。
【0112】
ただし、本実施形態では、上記一対の孔43,43は、光ファイバ2の軸心方向で見たとき、互いに交差する方向に延在している。より詳しくは、本実施形態では、上記一対の孔43,43のうちの一方の孔43の開口端44a,44bの配置箇所と、他方の孔43の開口端44a,44bの配置箇所とは、光ファイバ2の周方向で90°の位相だけずらされている。このため、当該一対の孔43,43は、光ファイバ2の軸心方向で見たとき、それぞれの軸心が互いに直交している。
【0113】
なお、各孔43の一端側部分孔43aと他端側部分孔43bとは、第1実施形態と同様に、フェムト秒レーザを使用して穿設される。
【0114】
本実施形態の光ファイバセンサ装置41の構成は、以上説明した事項以外は、第1実施形態と同じである。
【0115】
本実施形態の光ファイバセンサ装置41によれば、一対の孔43,43のそれぞれの軸心方向の位相が、光ファイバ2の周方向にずらされている。このため、光ファイバ2のコア2a中を伝播する多モードの光のうち、一方の孔43内の物質に作用する光のモードと、他方の孔43内の物質に作用する光のモードとを異ならせることができる。
【0116】
このため、孔43の個数が1つである場合、あるいは、複数の孔43の軸心方向を互いに同一にした場合に比べて、光ファイバ2に入射する光を効率よく利用することができる。例えば、光ファイバ2の入射端側の孔43での光の吸収あるいは散乱が比較的大きくても、出射端側の孔43内の物質には、入射端側の孔43に作用するモードとは別のモードの光を作用させることができる。ひいては、S/N比、あるいは、感度を高めることができる。
【0117】
なお、本実施形態では、一対の(2つの)孔43,43の軸心方向を直交させたものを示したが、これらの孔43,43の軸心方向を、光ファイバ2の軸心方向で見たときに、90°と異なる角度で交差させるようにしてもよい。
【0118】
さらに、3つ以上の孔を、光ファイバ2に形成すると共に、それらの孔の軸心方向(延在方向)が、光ファイバ2の軸心方向で見たときに互いに交差するように、当該3つ以上の孔を形成してもよい。
【0119】
また、本実施形態の光ファイバセンサ装置41では、各孔43毎に、各別の特性の液体を注入するようにしてもよい。
【0120】
このようにした場合には、各孔43の液体に、各孔43毎に各別のモードの光が作用することとなるため、各孔43に対応するモードの光の出射光に基づいて、各孔43内の液体の特性を測定することもできる。このことは、3つ以上の孔を、光ファイバ2に形成すると共に、それらの孔の軸心方向(延在方向)が、光ファイバ2の軸心方向で見たときに互いに交差するように、当該3つ以上の孔を形成した場合についても同様である。
【0121】
[変形態様について]
次に、以上説明した実施形態以外の変形態様をいくつか説明する。
【0122】
前記各実施形態では、光ファイバ2の一端から入射した光を該光ファイバ2の他端から出射させるようにした。ただし、例えば、該光ファイバ2の他端で光を反射させると共に、センサ本体部2xの手前で光を半反射させるように光路を構成してもよい。そして、センサ本体部2xの手前での反射光と、センサ本体部2xを経由した反射孔とを用いて孔内の液体の特性を測定するようにしてもよい。
【0123】
また、前記各実施形態では、センサ本体部2xに備える孔の個数を調整することで、測定感度を変化させることができるだけでなく、孔の径を調整することで、測定感度を変化させることもできる。この場合、孔の径がより大きいほど、測定感度を高めることができる。
【0124】
また、センサ本体部2xの各孔に充填する測定対象の液体が蛍光物質を含む場合、その蛍光物質を励起する所定波長の励起光を光ファイバ2に入射することで、孔内の蛍光物質が発生する蛍光のスペクトルを測定することもできる。
【0125】
さらに、孔内の蛍光物質の蛍光強度が、ある物質(酸素等)により変化する場合には、光ファイバ2の出射光に基づき測定される蛍光強度を指標として、当該物質の定量測定が可能である。
【0126】
例えば、上記蛍光物質が、pH(酸塩基)指示薬としてのフェノールフタレインである場合には、pH値に依存して、蛍光強度が変化する。従って、該蛍光強度に基づいて、pH測定を行うこともできる。
【0127】
また、前記各実施形態では、光ファイバ2としてマルチモード光ファイバを使用したが、光ファイバ2は、シングルモード光ファイバであってもよい。