特許第6332807号(P6332807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332807
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】シンターハードニング方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/10 20060101AFI20180521BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20180521BHJP
   B22F 5/10 20060101ALI20180521BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B22F3/10 K
   B22F3/24 B
   B22F3/10 M
   B22F5/10
   C21D1/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-230079(P2014-230079)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-94634(P2016-94634A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年6月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 功介
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−136814(JP,A)
【文献】 特公昭61−016912(JP,B1)
【文献】 特開2006−266616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00− 8/00
F27B 1/00−21/00
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄系材料を含む粉末を加圧成形した圧粉体を焼結し、得られた焼結体をガスで冷却するシンターハードニング方法であって、
複数の焼結体がトレーに搭載されており、
前記ガスによる冷却に際し、前記トレーが載置されるテーブルを水平面内において揺動させる、シンターハードニング方法。
【請求項2】
鉄系材料を含む粉末を加圧成形した圧粉体を焼結し、得られた焼結体をガスで冷却するシンターハードニング方法であって、
複数の焼結体が搭載されたトレーが、上下方向に少なくとも2段積層されており、
前記トレーには前記ガスが通過可能な開口が複数形成されており、
前記焼結体は、中央に開口部を有するリング形状又は枠形状を呈しており、
前記焼結体は、当該焼結体の開口部が前記トレーの開口と連通するように当該トレーに搭載されており、
上段のトレーに搭載された焼結体の開口部の位置と、下段のトレーに搭載された焼結体の開口部の位置とが上下方向でずれるように焼結体が配置されており、
前記ガスによる冷却に際し、前記トレーを水平面内において揺動させる、シンターハードニング方法。
【請求項3】
前記ガスによる冷却を、回転自在の複数の搬送ローラーが配設された急冷室内で行い、
前記トレーは前記搬送ローラー上に配置され、
前記ガスによる冷却に際し、前記搬送ローラーを正転又は反転させて前記トレーを搖動させる、請求項に記載のシンターハードニング方法。
【請求項4】
前記ガスによる冷却を、揺動自在のテーブルが配設された急冷室内で行い、
前記トレーは前記テーブル上に配置され、
前記ガスによる冷却に際し、前記テーブルを搖動させる、請求項に記載のシンターハードニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシンターハードニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的複雑な形状を有する機械部品などを製造する技術として粉末冶金法がある。この方法では、鉄系材料を含む種々の組成の粉末材料を所望の形状に加圧成形し、得られた成形体(圧粉体)を加熱して焼結させる。このような成形及び焼結工程を経て焼結体が製造される。
【0003】
かかる焼結体に対し、例えば表面硬さなどの機械的強度を所望の大きさにするために、従来、浸炭焼入れや高周波加熱とともに、シンターハードニングと呼ばれる手法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。シンターハードニング方法は、焼結体に対し窒素ガスなどの冷却ガスを吹き付けて当該焼結体を急冷するものであり、圧粉体の焼結と焼入れとを一工程で連続して行えるという利点がある。
【0004】
従来のシンターハードニング方法は、例えば仕切り扉により前後が仕切られた、ローラーハース型焼結炉の急冷室内で行われる。その際、冷却ガスによる冷却を均一にするために複数の焼結体(ワーク)が搭載されたトレーを1段だけ搬送ローラー上に配設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−136814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、冷却ガスの吹出口と複数の焼結体との間の距離が均一ではないことなどから、当該複数の焼結体のすべてを均一に冷却することは難しい。
また、チャージ量を向上させるためには、冷却ガスの供給量を増やして冷却能力を高める方策や、1段積のトレーを2段積にして急冷室の単位面積あたりの処理量を多くすることが考えられる。
【0007】
しかし、2段積にしてシンターハードニング処理を実施すると、下段のトレーに搭載した焼結体の冷却が不十分になる傾向があり、当該焼結体の強度が、例えば1割程度低下することがある。かかる問題は、冷却ガスが下方に通り抜けることができる開口が形成されたトレーを用いたとしても解決することができない。開口を通り抜けた冷却ガスにより下段に搭載された焼結体の表面の冷却は行うことができるが、当該焼結体の内部まで十分に冷却することができない。このため、下段の焼結体は、当該焼結体内部のマルテンサイトが上段の焼結体に比べて少なくなり、このことが強度低下につながるものと考えられる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、トレーに搭載された複数の焼結体を均一に冷却することができるシンターハードニング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るシンターハードニング方法は、鉄系材料を含む粉末を加圧成形した圧粉体を焼結し、得られた焼結体をガスで冷却するシンターハードニング方法であって、
複数の焼結体がトレーに搭載されており、
前記ガスによる冷却に際し、前記トレーが載置されるテーブルを水平面内において揺動させる。
【0010】
本発明の他の態様に係るシンターハードニング方法は、鉄系材料を含む粉末を加圧成形した圧粉体を焼結し、得られた焼結体をガスで冷却するシンターハードニング方法であって、
複数の焼結体が搭載されたトレーが、上下方向に少なくとも2段積層されており、
前記トレーには前記ガスが通過可能な開口が複数形成されており、
前記焼結体は、中央に開口部を有するリング形状又は枠形状を呈しており、
前記焼結体は、当該焼結体の開口部が前記トレーの開口と連通するように当該トレーに搭載されており、
上段のトレーに搭載された焼結体の開口部の位置と、下段のトレーに搭載された焼結体の開口部の位置とが上下方向でずれるように焼結体が配置されており、
前記ガスによる冷却に際し、前記トレーを水平面内において揺動させる。
【発明の効果】
【0011】
上記発明によれば、トレーに搭載された複数の焼結体を均一に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シンターハードニング処理が行われる急冷室の一例の断面説明図である。
図2】2段積のトレーの動きを説明する図である。
図3】(a)は本発明で使用されるトレーの一例の平面説明図であり、(b)は同断面説明図である。
図4】(a)は焼結体の一例の平面説明図であり、(b)は同A−A線断面説明図である。
図5】上下段のトレーとワークの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔本発明の実施形態の説明〕
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明の一態様に係るシンターハードニング方法は、
(1)鉄系材料を含む粉末を加圧成形した圧粉体を焼結し、得られた焼結体をガスで冷却するシンターハードニング方法であって、
複数の焼結体がトレーに搭載されており、
前記ガスによる冷却に際し、前記トレーが載置されるテーブルを水平面内において揺動させる。
【0014】
本態様に係るシンターハードニング方法では、シンターハードニング処理において焼結体をガスで冷却するに際し、当該焼結体を搭載するトレーを水平面内において規則的又は不規則に移動させているので、焼結体への冷却ガスの供給を均一化させることができる。その結果、焼結体を均一に冷却することができ、当該焼結体の表面硬さや強度などのばらつきを小さくすることができる。
【0016】
本発明の他の態様に係るシンターハードニング方法は、
(2)鉄系材料を含む粉末を加圧成形した圧粉体を焼結し、得られた焼結体をガスで冷却するシンターハードニング方法であって、
複数の焼結体が搭載されたトレーが、上下方向に少なくとも2段積層されており、
前記トレーには前記ガスが通過可能な開口が複数形成されており、
前記焼結体は、中央に開口部を有するリング形状又は枠形状を呈しており、
前記焼結体は、当該焼結体の開口部が前記トレーの開口と連通するように当該トレーに搭載されており、
上段のトレーに搭載された焼結体の開口部の位置と、下段のトレーに搭載された焼結体の開口部の位置とが上下方向でずれるように焼結体が配置されており、
前記ガスによる冷却に際し、前記トレーを水平面内において揺動させる。
【0017】
本態様に係るシンターハードニング方法では、少なくとも2段積のトレーに搭載される焼結体における中央の開口部を上下でずれるように当該焼結体を配置するので、下段の焼結体に対しても均一に冷却ガスを供給することができる。その結果、焼結体を均一に冷却することができ、当該焼結体の表面硬さや強度などのばらつきを小さくすることができる。また、焼結体を搭載するトレーを水平面内において揺動させているので、焼結体への冷却ガスの供給をさらに均一化させることができる。
【0019】
)上記()のシンターハードニング方法において、前記ガスによる冷却を、回転自在の複数の搬送ローラーが配設された急冷室内で行い、
前記トレーは前記搬送ローラー上に配置され、
前記ガスによる冷却に際し、前記搬送ローラーを正転又は反転させて前記トレーを搖動させることが望ましい。この場合、搬送ローラーを正転又は反転させることで複数の焼結体を搭載したトレーを搖動させることができ、当該焼結体への冷却ガスの供給を均一化させることができる。
)上記()のシンターハードニング方法において、前記ガスによる冷却を、揺動自在のテーブルが配設された急冷室内で行い、
前記トレーは前記テーブル上に配置され、
前記ガスによる冷却に際し、前記テーブルを搖動させることができる。








【0020】
〔本発明の実施形態の詳細〕
以下、添付図面を参照しつつ、本発明のシンターハードニング方法の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
本実施形態に係るシンターハードニング方法では、鉄系材料を含む種々の組成の粉末材料を所望の形状に加圧成形した圧粉体を焼結することで得られる焼結体に窒素ガスなどの冷却ガスを吹き付けて当該焼結体を急冷する。
【0022】
圧粉体は、ダイ、上下のパンチ及びコアなどの金型を備えた通常のプレス成型機を用いて製造することができる。また、圧粉体の焼結、及び得られる焼結体の急冷(焼入れ)は、脱ガスゾーン、予熱ゾーン、加熱ゾーン及び冷却ゾーンを有する、一般的な連続焼結炉を用いて行うことができる。
【0023】
図1は、本発明のシンターハードニング方法を実施し得る連続焼結炉の一例であるローラーハース型焼結炉における急冷室1の断面説明図である。
本実施形態における急冷室1は、ローラーハース型焼結炉の冷却ゾーンに位置しており、上流側の焼結ゾーンから搬送ローラー2により搬送されてきた焼結体Wに窒素ガスGを吹き付けて当該焼結体Wを焼入れするためのスペースである。
【0024】
急冷室1の上流側(図1において左側)には、仕切り扉3を介して焼結ゾーンの徐冷室4が配設されており、急冷室1の下流側には、同じく仕切り扉5を介して冷却ゾーンの冷却室6が配設されている。徐冷室4は、急冷室1におけるシンターハードニングの準備が整い、仕切り扉3が開放されるまでの間、焼結を終えた焼結体Wをトレー7とともに待機させるためのスペースである。焼結体Wは、前記徐冷室4で徐々に温度が下げられるが、仕切り扉3が開放されるまでは、A点以上の焼入れ温度(変態点以上、900℃以下の温度)に保持される。
【0025】
シンターハードニングが終了すると仕切り扉5が開放されて、急冷された焼結体Wは搬送ローラー2によって冷却室6に搬送され、当該冷却室6において300℃より低い温度になるまで冷却され、その後、焼結体Wは、冷却室6の下流側に配設された置換室(図示せず)に向けて搬送される。その間に、焼結体Wは酸化が生じない温度(200℃以下、好ましくは150℃以下)まで冷却されてローラーハース型焼結炉から搬出される。
【0026】
急冷室1の天井面1aには、冷却ガスである窒素ガスの供給口8が形成されており、ローラーハース型焼結炉の外部に配設された冷却ファン(図示せず)から当該供給口8を介して所定量の窒素ガスGが急冷室1内に供給される。
【0027】
急冷室1内には、複数の搬送ローラー2が配設されており、当該搬送ローラー2の上にトレー7が乗せられている。急冷室1内に配設されている搬送ローラー2は、回転自在である。すなわち、図示しないモータを含む駆動機構により正転動作及び反転動作を自在に行うことができる。その結果、搬送ローラー2を駆動させることにより当該搬送ローラー2の上に乗せられたトレー7を水平面内において前後方向(ローラーハース型焼結炉における焼結体Wの進行方向を前後方向とする)に搖動させることができる。
【0028】
トレー7を搖動させる距離は、急冷室1内におけるトレー7の配置状況、すなわちトレー7の下流端縁と仕切り扉5の急冷室7側表面との距離や、トレー7の上流端縁と仕切り扉4の急冷室7側表面との距離により異なるが、通常、20〜300mm程度とすることができる。また、搖動の速さは、本発明において特に限定されるものではないが、トレー7上に搭載された焼結体Wの位置ずれなどを防止するという点より、通常、10〜100mm/s程度である。
【0029】
図1に示される例では、トレー7は1段積であるが、搬送ローラー2上に2段以上トレー7を乗せることも可能である。図2は、2段積の場合の断面説明図である。この場合、下段のトレー7と上段のトレー17との間には、一定のトレー間隔を維持するためのスペーサ―9が配設される。
【0030】
図3の(a)は、図2における下段側のトレー7の平面説明図であり、図3の(b)は同断面説明図である。なお、図1におけるトレー7の構成は、図2の下段側のトレー7の構成と同様である。
図3に示されるトレー7は、最大18個の焼結体Wを搭載することができるトレーであり、複数の開口を有する板体7bが枠体7aにはめ込まれた構成を備えている。枠体7a及び板体7bはカーボンで作製されている。
【0031】
本実施形態におけるトレー7では、焼結体Wが搭載される位置に開口としての丸孔10が形成されている。また、各丸孔10に対応して円形の凹所11が形成されており、当該凹所11内にリング状の耐火板12が配設される。各凹所11の中心と各丸孔10の中心は一致している。また、耐火板12は、当該耐火板12の中央の開口(丸孔)12aの中心が、前記丸孔10の中心と一致するように前記凹所11内に配設される。耐火板12の厚さは、当該耐火板12を凹所11内に配設したときに耐火板12の表面12bとトレー7の表面7cとが略面一になるか、又は耐火板12の表面がトレー7の表面からわずかに(例えば、2mm程度)突出する厚さである。耐火板12は、焼結時における焼結体Wとトレー7を構成するカーボンとの反応を防ぐために当該焼結体Wとトレー7の板体7bとの間に配設されている。耐火板12は、例えば熱膨張係数が3.0×10−6/℃以下のコージライト系セラミックスで作製することができる。
【0032】
前記耐火板12の上に焼結体Wが搭載される(図1参照)。本実施形態における焼結体Wは、自動車用変速機などで用いられるシンクロハブであり、図4に示されるように、中央に開口部13を有するリング形状を呈している。焼結体Wの内周と外周には歯部14、15が形成されている。焼結体Wは、前記開口部13の中心が前記耐火板12の開口12aの中心、すなわちトレー7の丸孔11の中心と略一致するように当該耐火板12の上に配置される。したがって、前記焼結体Wの開口部13、耐火板12の開口及びトレー7の丸孔10を介してトレー7の厚さ方向(図1〜2において上下方向)に当該トレー7を貫通する冷却ガスの通路が形成される。
【0033】
本実施形態では、上段のトレー17と下段のトレー7とで、図5に示されるように焼結体Wの配置が異なっている。具体的には、上段のトレー17に搭載された焼結体Wの開口部13の位置と、下段のトレー7に搭載された焼結体Wの開口部13の位置とが上下方向でずれるように焼結体Wの配置が選定されている。各トレーにおける長手方向の並びを列とすると、下段のトレー7及び上段のトレー17ともに、焼結体Wは4列に配置されている。下段のトレー7では図5において左側からの列から順に5個、4個、5個、4個の焼結体Wが配置されており、一方、上段のトレー17では図5において左側の列から順に4個、5個、4個、5個の焼結体Wが配置されている。このように、焼結体Wの開口部13が上段と下段とで水平方向にずれるようにトレーを段積することで、冷却ガスを下段の焼結体Wにも効率よく供給することができる。
【0034】
[試験例]
<試験例1及び比較試験例1>
図4に示されるような円板形状の焼結体を1段積にしてシンターハードニング処理を行った。試験例1では焼結体を搭載したトレーを搖動させながらシンターハードニング処理を行い、比較試験例1ではトレーを搖動させずにシンターハードニング処理を行った。トレーには30個の焼結体を搭載した。
【0035】
焼結体に対し50〜100℃の窒素ガスを冷却ガスとして供給して当該焼結体を急冷した。窒素ガスによる冷却に際し、試験例1では搬送ローラーを回転させて焼結体が搭載されているトレーを前後に搖動させた。搖動の距離は188mmであり、また、搖動の速度は30mm/sであった。
シンターハードニング処理後の焼結体の表層硬さ(HRA)及び強度(kN)を測定した。表層硬さについては、試験例1及び比較試験例1でほとんど差はなく、強度(kN)について差が見られた。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1より、搖動させた場合(試験例1)と搖動させなかった場合(比較試験例1)とでは、平均強度はほぼ同じであるが、搖動させることで強度のバラツキが小さくなることがわかる。これは、急冷中に焼結体を移動させることで、当該焼結体に対し冷却ガスがより均一に吹き付けられるためであると考えられる。
【0038】
<試験例2及び比較試験例2>
図4に示されるような円板形状の焼結体を2段積にしてシンターハードニング処理を行った。試験例2では焼結体を搭載したトレーを搖動させながらシンターハードニング処理を行い、比較試験例2ではトレーを搖動させずにシンターハードニング処理を行った。各トレーには30個の焼結体を搭載した。
また、上段の焼結体の開口部と下段の焼結体の開口部とが上下方向でずれるように当該焼結体をトレーに搭載した。下段のトレーの4隅にスペーサ―を配設し、上下のトレー間の間隔を15mmに保った。
【0039】
焼結体に対し50〜100℃の窒素ガスを冷却ガスとして供給して当該焼結体を急冷した。窒素ガスによる冷却に際し、搬送ローラーを回転させて焼結体が搭載されているトレーを前後に搖動させた。搖動の距離は188mmであり、また、搖動の速度は30mm/sであった。
【0040】
シンターハードニング処理後の焼結体の表層硬さ(HRA)及び強度(kN)を測定した。表層硬さについては、試験例2及び比較試験例2でほとんど差はなく、強度(kN)について差が見られた。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2より、搖動させた場合(試験例1)と搖動させなかった場合(比較試験例1)とでは、上段トレーの平均強度はほぼ同じであるが、搖動させることで強度のバラツキが小さくなることがわかる。これは、急冷中に焼結体を移動させることで、当該焼結体に対し冷却ガスがより均一に吹き付けられるためであると考えられる。
また、下段トレーについては、搖動させることで平均強度が大きく向上するとともに、強度のバラツキも小さくなっていることがわかる。これは、急冷中に焼結体を移動させることで、当該焼結体に対し冷却ガスがより均一に吹き付けられるためであると考えられる。また、これに加えて、上段の焼結体の開口部の位置と下段の焼結体の開口部の位置を上下でずれるようにしているので、焼結体に対し均一に冷却ガスが供給されるからであると考えられる。
【0043】
〔その他の変形例〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では、トレーを2段積にしているが、搖動時におけるトレーの安定性が確保されるかぎり、例えば3段積とすることも可能である。
また、前述した実施形態では、18個の焼結体を一枚のトレーに搭載しているが、その数は17以下であってもよいし、18以上であってもよい。
【0044】
また、前述した実施形態では、リング形状の焼結体をシンターハードニング処理しているが、焼結体の形状や構造は、本発明において特に限定されるものではなく、例えば中央に矩形の開口を有する枠状の焼結体であってもよい。
【0045】
また、前述した実施形態では、搬送ローラーを正逆転させることで焼結体を搭載したトレーを移動(搖動)させているが、このような搬送ローラーによることなく、例えばトレーを載置したテーブル又は台をシリンダ機構などを利用して移動(搖動)させることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 :急冷室
2 :搬送ローラー
3 :仕切り扉
4 :徐冷室
5 :仕切り扉
6 :冷却室
7 :トレー
7a:枠体
7b:板体
7c:表面
8 :供給口
9 :スペーサー
10 :丸孔
11 :凹所
12 :耐火板
12a:開口
12b:表面
14 :歯部
15 :歯部
17 :トレー
図1
図2
図3
図4
図5