特許第6332859号(P6332859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パイオラックスの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000002
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000003
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000004
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000005
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000006
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000007
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000008
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000009
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000010
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000011
  • 特許6332859-樹脂ワッシャ 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332859
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】樹脂ワッシャ
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20180521BHJP
   F16B 39/24 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F16B43/00 A
   F16B39/24 G
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-187203(P2014-187203)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-61310(P2016-61310A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】中島 武司
(72)【発明者】
【氏名】戸村 誠之
(72)【発明者】
【氏名】新井 克典
(72)【発明者】
【氏名】永井 浩美
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−091271(JP,A)
【文献】 実開昭63−097716(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 43/00
F16B 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の板材からなる樹脂ワッシャであって、
中央に軸が挿通される挿通孔が形成され、
該挿通孔外周の環状板部は、前記挿通孔に対する、前記軸の挿入方向に直交する方向から見たときに、頂部と底部とが周方向に沿って交互に形成され、前記頂部と前記底部との間は連結部により連結されて、波形をなしており、該連結部は、前記頂部及び前記底部よりも薄い厚さで形成されていることを特徴とする樹脂ワッシャ。
【請求項2】
前記連結部は、その中間が最も薄い厚さとされ、前記頂部及び前記底部に向けて肉厚となるように形成されている請求項1記載の樹脂ワッシャ。
【請求項3】
前記挿通孔の内周には、前記軸の外周に形成された溝に嵌合する突起が形成されている請求項1又は2記載の樹脂ワッシャ。
【請求項4】
前記突起は、前記連結部に形成されている請求項3記載の樹脂ワッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の取付けすべき部材をボルトやナット等で締め付け固定する際に用いられる、樹脂ワッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の取付けすべき部材(以下、「取付部材」という)を、ボルトやナット等を用いて締め付け固定する際には、ボルトやナット等を回り止めしたり、ボルトやナットのすわりや取付部材とのなじみをよくしたりすることを目的として、ボルト頭部と取付部材との間や、ナットと取付部材との間にワッシャが配置されることが多い。
【0003】
この種のワッシャとしては、円環状をなすものが多いが、圧縮応力が作用したときに、バネ性を発揮する、波形をなしたワッシャも用いられている。このようなワッシャは、上記箇所に用いられるほか、所定部材とそれに回動可能に取付けられる部材との間に配置して、そのバネ性により回動部材に摩擦力を付与して、回動部材を所定角度に保持させるといった使い方もされている。
【0004】
例えば波形ワッシャとして、下記特許文献1には、穴を設けられた薄板材からなり、波形に曲げられている波形座金において、前記穴は軸方向に見て多角形状をなしており、前記穴がなす多角形の頂点が前記波形の頂部と底部の内側端に位置することとなるように波形に曲げられている波形座金が開示されている。
【0005】
上記波形座金は、鋼鉄等の金属からなる薄板材を、打ち抜き成形した後、プレス加工によって波形に曲げて製造されている(特許文献1の段落0027,0028参照)。また、特許文献1の図2及び図4等に示されるように、波形座金の板厚は、その全周に沿って一定の肉厚で形成されている。
【0006】
そして、上記波形座金は、ボルト頭部と取付部材との間や、ナットと取付部材との間、更には複数の取付部材間に配置された状態で、波形の頂部がボルト頭部やナットに当接し、波形の底部が取付部材に当接しており、ボルト及びナットによって、複数の取付部材や固定部材と回動部材等が締め付け固定された際には、波形の頂部や波形の底部が押圧されて、座金全体が偏平に潰れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−270611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示されるように、これまでの波形ワッシャは、その全周が一定肉厚で形成されているので、ボルトやナットで複数の取付部材が締め付け固定されて、ワッシャが押し潰されるときに、波形の頂部や波形の底部に、締め付け時の応力が集中してしまい、ワッシャが破損するおそれがあった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ワッシャを押し潰すような押圧力が、ワッシャに付与された場合に、ワッシャの破損を抑制することができる、樹脂ワッシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、樹脂製の板材からなる樹脂ワッシャであって、中央に軸が挿通される挿通孔が形成され、該挿通孔外周の環状板部は、前記挿通孔に対する、前記軸の挿入方向に直交する方向から見たときに、頂部と底部とが周方向に沿って交互に形成され、前記頂部と前記底部との間は連結部により連結されて、波形をなしており、該連結部は、前記頂部及び前記底部よりも薄い厚さで形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の樹脂ワッシャにおいては、前記連結部は、その中間が最も薄い厚さとされ、前記頂部及び前記底部に向けて肉厚となるように形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の樹脂ワッシャにおいては、前記挿通孔の内周には、前記軸の外周に形成された溝に嵌合する突起が形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の樹脂ワッシャにおいては、前記突起は、前記連結部に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば、ボルト頭部と取付部材との間や、ナットと取付部材との間、更には複数の取付部材間に樹脂ワッシャを配置し、その挿通孔に軸を挿通して、ボルト等で締め付け固定したり、或いは、軸先端にEリング等を装着して抜け止め固定したりすると、波形をなす頂部や底部が取付部材に押圧されて、樹脂ワッシャが偏平状態となるように撓み変形するが、このとき、頂部と底部との間を連結する連結部が、頂部及び底部よりも薄い厚さで形成されているので、主として薄肉の連結部が撓み変形することとなり、上記のようなワッシャを押し潰すような押圧力が作用しても、そのような押圧力が、頂部や底部に集中することを抑制して、樹脂ワッシャの周方向に分散させることができ、樹脂ワッシャの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る樹脂ワッシャの一実施形態を示しており、同樹脂ワッシャ及びそれを適用する部材の斜視図である。
図2】同樹脂ワッシャの拡大斜視図である。
図3】同樹脂ワッシャの正面図である。
図4】同樹脂ワッシャの右側面図である。
図5】同樹脂ワッシャの底面図である。
図6図3のA−A矢示線における断面図である。
図7】同樹脂ワッシャを用いて、複数の取付けすべき部材を取付ける際の説明図である。
図8図7の状態から、ネジに樹脂ワッシャを仮保持させた状態の説明図である。
図9】同樹脂ワッシャを用いて、複数の取付けすべき部材を取付けた状態の説明図である。
図10】同樹脂ワッシャを構成する環状板部の波形の形状を説明するものであり、(a)は曲面状の頂部と底部を有する場合の説明図、(b)は平面状の頂部と底部を有する場合の説明図である。
図11】本発明に係る樹脂ワッシャの、他の実施形態を示しており、その拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜10を参照して、本発明に係る樹脂ワッシャの、一実施形態について説明する。
【0017】
図1及び図9に示すように、この実施形態の樹脂ワッシャ10は、複数の取付けすべき部材、ここでは固定部材1と回動部材3との間に配置されて、段付きボルト5(以下、「ボルト5」という)及び皿付きナット9(以下、「ナット9」という)により締め付け固定されたときに、その締め付け応力で圧縮されて偏平な状態で保持されるものである(図9参照)。なお、この樹脂ワッシャ10は、通常のワッシャのように、ボルト頭部と取付けすべき部材との間や、ナットと取付けすべき部材との間に配置してもよい。
【0018】
前記固定部材1としては、例えば、車両前席側に配置されるシートブラケットや、センターコンソールのボックス、ラゲージルームに設置されるデッキボードを開閉支持するプレートや、ヒンジ装置を介して回動可能に連結される一対のブラケットのうちの、一方のブラケット等を挙げることができる。
【0019】
一方、前記回動部材3としては、例えば、前記シートブラケットに回動可能に取付けられるバックルブラケットや、前記センターコンソールのボックスに開閉可能に取付けられるリッド、前記ラゲージルームのプレートに開閉可能に取付けられるデッキボード、前記一方のブラケットに、ヒンジを介して連結される他方のブラケット等を挙げることができる。
【0020】
なお、樹脂ワッシャは、例えば、車体パネルや車体フレーム等に、トリムボード、ガーニッシュ、アシストグリップ、バンパー、ランプ等を取付ける際に用いてもよく、その適用箇所は特に限定されない。
【0021】
また、この実施形態のボルト5は、頭部6と、該頭部6から延出した軸8とを有している。前記軸8の外周にはネジ溝が形成されており、また、軸8は、その基端部に軸8よりも拡径した段部7を有している。前記段部7の外周には環状の溝7aが形成されている。この実施形態では、この溝7aが、本発明における「軸の外周に形成された溝」をなしているが、軸8の外周に形成されたネジ溝を、本発明における「溝」としてもよい。また、上記のように、固定部材1と回動部材3との連結用にボルト5を用いた場合には、前記軸8が回動部材3を回動させるための回動軸となる。
【0022】
上記のように、樹脂ワッシャ10に挿通される軸は、この実施形態の場合、ボルト5のネジ溝が形成された軸8となっているが、これに限定されるものではない。例えば、皿ねじや、六角ボルト、ビス等の軸であってもよく、又は、ネジ溝が形成されていない、単なる棒状や柱状、ピン状の軸であってもよい。なお、ネジ溝が形成されていない軸の場合には、先端部外周に溝を形成しておき、この溝にEリングやCリング等を装着することで、部材どうしを固定することができる。
【0023】
一方、前記ボルト5に螺着されるナット9は、その外周からフランジ状の皿9aが延設されている。なお、ナットは皿付きでなくてもよく、特に限定はされない。
【0024】
そして、この樹脂ワッシャ10は、樹脂製の板材からなり、その中央に軸が挿通される挿通孔11が形成されている。図3に示すように、この実施形態の樹脂ワッシャ10では、その正面側、すなわち、挿通孔11の貫通方向から見たとき、挿通孔11が概ね円形状をなしている。また、挿通孔11の外周の環状板部13の外周も円形をなしている。
【0025】
また、環状板部13は、挿通孔11に対する、前記ボルト5の軸8の挿入方向に直交する方向から見たときに、頂部14と底部15とが周方向に沿って交互に形成され、頂部14と底部15との間は連結部16により連結されて、波形をなしている。
【0026】
この実施形態においては、環状板部13は、凸状をなした頂部14と、凹状をなした底部15とが、挿通孔11の周方向に沿って交互に形成されると共に、頂部14と底部15との間が連結部16によって連結されて、全体として凹凸形状が交互に連続してなる波形を呈している。
【0027】
なお、環状板部としては、図10(a)に示すように、曲面状をなした頂部14と底部15とが、連結部16を介して連結されて、波形をなしていてもよいが、図10(b)に示すように、頂部14や底部15が所定長さの平面部を有し、これらが連結部16を介して連結されて、波形をなしていてもよい。すなわち、環状板部は、挿通孔に対する、軸の挿入方向に直交する方向から見たときに、頂部と底部とが高低差を有しており、連結部によって連結されて、波形をなしていればよく、特に限定はされない。
【0028】
なお、以下の説明及び図面においては、紙面の上方及び左側(図4)の、波形の頂部を「頂部14」とし、底部を「底部15」としているが、これは便宜上のものであって、紙面の下方及び右側の、波形の頂部を「頂部14」とし、底部を「底部15」としてもよい。
【0029】
図3に示すように、この実施形態の樹脂ワッシャ10の環状板部13では、頂部14と底部15とが交互に3つずつ形成された波形をなしている。ただし、樹脂ワッシャ10の、頂部14及び底部15の個数は2つずつでもよいし、4つずつ以上であってもよい。
【0030】
また、この実施形態の樹脂ワッシャ10は、挿通孔11が円形状をなし、環状板部13の外周も円形状をなしているが、この態様に限定されるものではない。例えば、環状板部13の外周を、正方形や長方形、五角形、六角形等の矩形状としたり、楕円形状、小判形状等としてもよく、挿通孔11も、矩形状の孔や長孔等としてもよい。
【0031】
また、図4及び図5に示すように、凹凸状の頂部14及び底部15の波高さH、すなわち、頂部14の頂部と底部15の底部との距離Hは、全ての頂部14及び底部15において、一定となるように形成されている。なお、図8に示すように、ボルト5の頭部6から段部7の先端面までの長さをH1とし、固定部材1と回動部材3との間に樹脂ワッシャ10を配置し、ボルト5をナット9で締め付ける前の状態における、固定部材1と回動部材3との距離をH2としたとき、H1はH2よりも小さく、かつ、前記波高さHはH2よりも小さくなるように設定することが好ましい。
【0032】
前記頂部14と前記底部15との間は、前述したように連結部16により連結されている。そして、図4及び図5に示すように、この連結部16は、頂部14及び底部15の厚さt1よりも、薄い厚さで形成されている。
【0033】
この実施形態の場合、連結部16の中間が最も薄い厚さt2(図4及び図5参照)で形成されていると共に、前記頂部14及び前記底部15に向けて次第に肉厚となるように、徐変した形状をなしている。
【0034】
また、図6に示すように、この実施形態では、上記連結部16は、樹脂ワッシャ10の径方向内側から径方向外側に向けて、一定の肉厚で形成されている(断面参照)。更に図示はしないが、環状板部13を構成する頂部14及び底部15も、樹脂ワッシャ10の径方向内側から径方向外側に向けて一定肉厚で形成されている。なお、上述した、頂部14、底部15及び連結部16の、径方向内側から外側に向かう厚さは、一定厚さでなくともよく、変化した肉厚としてもよい。このような例については、後述することとする。
【0035】
また、前記挿通孔11の内周からは、ネジ外周の溝に嵌合する突起18が突設されている。この実施形態では、所定の連結部16の、挿通孔11の内周側の中間から、均等な間隔をあけて、挿通孔中心に向けて複数(ここでは3つ)の突起18が突設されている。そして、これらの突起18が前記ボルト5の段部7の溝7aに嵌合して、同ボルト5に樹脂ワッシャ10が仮保持されるようになっている(図8参照)。
【0036】
図2及び図3に示すように、この実施形態の各突起18は、基部側が一定幅で、かつ、挿通孔中心に向けて先細のテーパ状をなす、楔のような形状をなしている。また、複数の突起18の先端どうしを結ぶ径D1(図3参照)は、ボルト5の段部7の外径D2(図7参照)よりも小さく、かつ、同段部7の溝7aの内径D3(図7参照)よりも大きく形成されている。
【0037】
そのため、図7及び図8に示すように、ボルト5の軸8を、樹脂ワッシャ10の挿通孔11に挿通させる際に、複数の突起18がボルト5の段部7の外周に押圧されて突起18及び環状板部13が撓み変形しつつ、複数の突起18が段部7を乗り越えて環状板部13溝7aに係合し、樹脂ワッシャ10が仮保持されるようになっている。
【0038】
なお、突起18の形状は、例えば、基端から先端にかけて一定幅で伸びる小片状や、先端が円弧状に丸みを帯びた形状、三角板状等であってもよく、特に限定はされない。
【0039】
また、以上説明した樹脂ワッシャ10は、樹脂により射出成形等によって製造することができる。更に樹脂ワッシャ10の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロン等のポリアミド系樹脂や、フッ素樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、POM(ポリアセタール)、PP(ポリプロピレン)等の樹脂材料を挙げることができる。また、上記樹脂材料に、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等を含有させて補強した樹脂材料を用いてもよい。
【0040】
次に、本発明の樹脂ワッシャ10の使用方法及び作用効果について説明する。
【0041】
まず、図7に示すように、固定部材1のネジ孔2にボルト5の軸8を挿入し、その頭部6をネジ孔2の外面(回動部材3の対向面とは反対側の面)側の周縁に係合させると共に、段部7及び溝7aをネジ孔2から挿出させる。なお、この状態で溝7aの下端は、固定部材1の内面(回動部材3との対向面)よりも、板厚方向外方に位置している。
【0042】
上記状態で、軸8の外周に樹脂ワッシャ10を外装すべく、軸8を樹脂ワッシャ10の挿通孔11に挿通させる。すると、樹脂ワッシャ10の複数の突起18が、ボルト5の段部7の外周に押圧されて、突起18及び環状板部13が撓み変形しつつ、複数の突起18が段部7を乗り越えて溝7aに係合し、図8に示すように、ボルト5の頭部6と樹脂ワッシャ10で固定部材1を挟持して、固定部材1に対して、ボルト5及び樹脂ワッシャ10を仮保持させることができる。これによって、固定部材1に回動部材3やナット9を組み付けて締め付ける際の作業性を向上させることができる。
【0043】
このとき、複数の突起18は、先端が先細テーパ状をなす楔形状となっているので、ボルト5の溝7aに、スムーズに入り込ませることができる。また、上記のように樹脂ワッシャ10をボルト5に仮保持させた状態では、樹脂ワッシャ10の凹状の底部15が、固定部材1の内面に弾性的に当接するようになっている。
【0044】
また、樹脂ワッシャ10に設けた突起18は、頂部14と底部15との間の連結部16に形成されているので、樹脂ワッシャ10のどちら側からボルト5の軸8を挿入しても、ボルト5の溝7aに対する突起18の位置が同じになるため、樹脂ワッシャ10を仮保持させる際の方向性をなくすことでき、利便性を向上させることができる。
【0045】
次いで、ボルト5の軸8を、回動部材3のネジ孔4に挿入して、同ネジ孔4に段部7を挿入すると共に、ネジ孔4から挿出した軸8に、ナット9を螺着させて締め付ける。すると、凸状の頂部14が回動部材3の内面(固定部材1との対向面)に当接して、同回動部材3に押圧されると共に、凹状の底部15が固定部材1の内面に当接して、同固定部材1に押圧されて、凹凸状をなした波形の環状板部13が偏平状態となるように撓み変形する。
【0046】
このとき、図2図4〜6に示すように、頂部14と底部15との間を連結する連結部16が、頂部14及び底部15よりも薄い厚さで形成されているので、主として薄肉の連結部16が撓み変形することとなる。その結果、ナット9をボルト5の軸8に螺着して締め付け固定するときの締め付け応力、すなわち、樹脂ワッシャ10を偏平に押し潰すような押圧力が作用しても、そのような押圧力が、頂部14や底部15に集中することを抑制して、樹脂ワッシャ10の環状板部13の周方向に分散させることができ、樹脂ワッシャ10の破損を抑制することができる。
【0047】
また、取付けすべき部材が、本実施形態のように、シートブラケットのような固定部材1に、回動可能に取付けられるバックルブラケットのような回動部材3であって、それらの間に樹脂ワッシャ10を配置した場合には、樹脂ワッシャ10が撓み変形することによる抵抗力を、回動部材3に付与することができる。
【0048】
そのため、例えば、回動部材3が、シートブラケット(固定部材1)に回動可能に取付られるバックルブラケットであるような場合には、同バックルブラケットを所定の角度となるように回動させた後に手を離しても、バックルブラケットが自重により下方に回動せず、任意の角度で停止させることができる、いわゆるフリーストップ構造を付与することができる。
【0049】
また、図9に示すように、一対の部材間に樹脂ワッシャ10が押し潰された偏平状態で保持されているので、樹脂ワッシャ10の弾性復元力が一対の部材にそれぞれ作用して、一対の部材間にガタ付きを生じることを抑制することができる。
【0050】
上記のように、樹脂ワッシャ10を一対の部材間で挟み込んで保持した場合、両部材間のクリアランスC(図9参照)が大きいと、樹脂ワッシャ10の環状板部13の変形量が小さいため、その抵抗力が小さく、一方、部材間のクリアランスCが小さいと、樹脂ワッシャ10による抵抗力が大きくなり、部材間のクリアランスCによって、回動部材3に付与される抵抗力が大きく変動することとなる。
【0051】
しかしながら、この樹脂ワッシャ10においては、連結部16が、頂部14や底部15よりも薄く形成されているので、バネ定数を小さくして変形量を大きくとることによってバネ力を高めるようにすることができ、取付けすべき部材間のクリアランスCのバラつきが大きくても、回動部材3に付与される抵抗力の変動を低く抑えることができる。
【0052】
また、この実施形態においては、連結部16の中間が最も薄い厚さt2とされ、頂部14又は底部15に向けて次第に肉厚とされているので(図4〜6参照)、連結部16の肉厚変動を少なくすることができ、樹脂ワッシャ10を押し潰すような押圧力(ここではネジ及びナットでの締め付け固定による締め付け応力)が、連結部16に作用したときに、その押圧力が集中することをより緩和させることでき、連結部16をバランスよく、より一層撓み変形させやすくすることができる。
【0053】
ところで、金属製で内周に突起が突設されている金属ワッシャを、回動部材の回動軸となるネジ外周に配置した場合には、回動部材が回動したときに、金属ワッシャの突起が、金属製のネジ外周で跳ねるように動く、いわゆるスティックスリップが生じて、不快な異音が生じることがある。
【0054】
これに対して本発明の樹脂ワッシャ10によれば、樹脂製の板材からなり、突起18も樹脂からなるので、上述したように、回動部材3を固定部材1に回動可能に取付けるためのネジ兼回動軸として、ボルト5を用いても、上記のようなスティックスリップを防止して、異音を抑制することができる。
【0055】
また、この実施形態では、樹脂ワッシャ10は、樹脂製の板材からなるので、金属ワッシャとは異なり、組付け作業時に作業者の手や指を傷付けることを抑制することができる。
【0056】
更に、樹脂ワッシャ10は、上述したように、例えば、射出成形によって製造することができるので、金属ワッシャのように、プレス加工する場合等と比べて、頂部14及び底部15に対して、連結部16を薄肉となるように容易に成形することができる。また、樹脂ワッシャ10の径方向内側又は径方向外側での肉厚を、適宜変化させることができるので、所望の性能の樹脂ワッシャを製造することができる。
【0057】
更に、樹脂ワッシャ10を射出成形した場合には、金属ワッシャをプレス加工する場合のように、端材が生じることを防止できるので、使用材料を減らすことができ、製品コストを低減することができる。
【0058】
また、樹脂ワッシャ10は、鉄系合金(ステンレス等)やアルミニウム合金等からなる金属ワッシャと比べて一般的に比重が小さいので、製品重量を軽くすることができ、その結果、車両重量を軽減でき、低燃費に貢献することができる。
【0059】
ところで、以上説明した実施形態においては、樹脂ワッシャ10の環状板部13(頂部14、底部15及び連結部16)は、樹脂ワッシャ10の径方向内側から径方向外側に向けて、一定の肉厚で形成されているが、この態様に限定されるものではない。
【0060】
例えば、樹脂ワッシャ10の環状板部13を、径方向内側を肉厚とし、径方向外側をそれよりも薄肉としてもよい。すなわち、環状板部13の外周縁よりも内周縁の方が周長が短いことから、環状板部13の径方向内側が撓みにくくなり、ボルトにナットを締め付け固定した際に、ワッシャ内側に樹脂ワッシャ10を押し潰すような押圧力(締め付け応力)が集中しやすい傾向となるが、上記のように、環状板部13の径方向内側を外側よりも肉厚とすることで、ワッシャ内側への押圧力の集中に対して、より効果的に耐え得ることができる。
【0061】
一方、樹脂ワッシャ10の環状板部13を、径方向外側を肉厚とし、径方向内側をそれよりも肉薄としてもよい。この場合、環状板部13の内周縁よりも外周縁の方が周長が長いことから、環状板部13の径方向外側は撓みやすいものの、この径方向外側を内側よりも肉厚にすることで、樹脂ワッシャ10のバネ定数を上げることができる。
【0062】
また、回動部材3を固定部材1に回動可能に取付ける際に、樹脂ワッシャ10を用いた場合、回動部材3が樹脂ワッシャ10に摺接しながら回転するため、樹脂ワッシャ10が次第に摩耗する。このとき、樹脂ワッシャ10の径方向外側の方が径方向内側よりも周長が長いために、その摩耗量も多くなるが、上記のように、環状板部13の径方向外側を内側よりも肉厚とすることにより、上記摩耗に対して効果的に耐えることができる。
【0063】
図11には、本発明に係る樹脂ワッシャの、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0064】
この実施形態の樹脂ワッシャ10aは、環状板部13を構成する凸状をなした頂部14、又は、凹状をなした底部15から、ネジ外周の溝に嵌合する突起18が形成されている。
【0065】
この実施形態では、複数の凸状の頂部14の、挿通孔11の内周側から、均等な間隔をあけて、挿通孔中心に向けて複数(ここでは3つ)の突起18が突設されている。そして、この樹脂ワッシャ10においても、複数の突起18が、例えば、ボルト5の段部7の溝7aに嵌合することにより、同ボルト5に樹脂ワッシャ10を仮保持させることができる。
【符号の説明】
【0066】
10,10a 樹脂ワッシャ
11 挿通孔
13 環状板部
14 頂部
15 底部
16 連結部
18 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11