特許第6332868号(P6332868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6332868有色豆抽出物を含有する薬学組成物、抗血栓組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332868
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】有色豆抽出物を含有する薬学組成物、抗血栓組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/48 20060101AFI20180521BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20180521BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61K36/48
   A61P7/02
   A61P7/06
   A61P9/10
   A61P25/06
   A23L33/105
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-237335(P2015-237335)
(22)【出願日】2015年12月4日
(62)【分割の表示】特願2013-515270(P2013-515270)の分割
【原出願日】2011年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-56181(P2016-56181A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0058067
(32)【優先日】2010年6月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジン クヮン
(72)【発明者】
【氏名】キム, チェ ウク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ジュン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】リム, キュン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ, ヨン ヒョプ
(72)【発明者】
【氏名】パク, ヨン ホ
(72)【発明者】
【氏名】シン, ヒョン ジョン
【審査官】 金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−143609(JP,A)
【文献】 特開昭61−249364(JP,A)
【文献】 特開昭57−095914(JP,A)
【文献】 国際公開第07/148737(WO,A1)
【文献】 国際公開第05/099659(WO,A1)
【文献】 特開2005−015578(JP,A)
【文献】 KOREAN J.,Isoflavone Contents,Antioxidative and Fibrinolytic Activities of some Commercial Cooking-with-・・・,FOOD SCI. TECHNOL.,2002年,Vol.34, No.3,p.498-504
【文献】 Food Science and Biotechnology,2003年,Vol.12, No.2,p.157-160,(abstract) CAPLUS(STN)[online],(検索日 2014年5月21日)STN CAPLUS Accession no. 2003:426676
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板凝集抑制を通じて血管疾患を予防又は治療する薬学組成物であって、
フィールド豆抽出物を含有し、
前記フィールド豆抽出物の抽出溶媒は、7〜20%(v/v)のエタノールとクエン酸との組み合わせであり、
前記血管疾患は、脳卒中、脳出血、貧血及び偏頭痛からなる群より選択される1種以上である、薬学組成物。
【請求項2】
血小板凝集抑制を通じて血管疾患を予防又は治療する薬学組成物であって、
フィールド豆抽出物のレジン分画物を含有し、
前記フィールド豆抽出物の抽出溶媒は、7〜20%(v/v)のエタノールとクエン酸との組み合わせであり、
前記血管疾患は、脳卒中、脳出血、貧血及び偏頭痛からなる群より選択される一つ以上である、薬学組成物。
【請求項3】
前記レジン分画物を得るために使用されるカラムがポリスチレン(polystylene)とベンゼン(benzene)の重合体を含む合成吸着剤カラムである、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記レジン分画物を得るために使用される分画溶媒がブタノールである、請求項に記載の薬学組成物。
【請求項5】
フィールド豆組成物を含有する抗血栓組成物であって、
前記フィールド豆組成物の抽出溶媒が7〜20%(v/v)のエタノールクエン酸との組み合わせである、
抗血栓組成物。
【請求項6】
フィールド豆抽出物のレジン分画を含有する抗血栓組成物であって
前記フィールド豆抽出物の抽出溶媒が7〜20%(v/v)のエタノールとクエン酸との組み合わせである、
血栓組成物。
【請求項7】
前記レジン分画物を得るために使用されるカラムがポリスチレン(polystylene)とベンゼン(benzene)の重合体を含む合成吸着剤カラムである、請求項に記載の抗血栓組成物。
【請求項8】
前記レジン分画物を得るために使用される分画溶媒がブタノールである、請求項に記載の抗血栓組成物。
【請求項9】
血管疾患の予防又は緩和用健康食品組成物である、請求項乃至のいずれか1項に記載の抗血栓組成物。
【請求項10】
前記血管疾患は、脳卒中、脳出血、貧血又は偏頭痛である、請求項に記載の抗血栓組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水又はC‐Cアルコールと有機酸との組み合わせを利用して抽出した有色豆抽出物又はその分画物を有効成分として含有する薬学組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては、食生活様式の変化や内的及び外的ストレスの増加により、中高年層においていわゆる成人病と言われる循環器系疾患の発病増加が大きな問題となっている。2008年度の韓国統計庁の資料によると、動脈硬化症、脳出血、脳卒中、脳梗塞等の脳血管疾患と心臓疾患が、癌を除いた死亡原因の1位、2位を争っているという実情である。これら疾患の主要原因は、血栓(thrombus)であり、血栓症(thrombosis)は、過剰の血小板凝集反応によって起こる病理現象である。血管が損傷した際、血小板は、コラーゲン(collagen)、トロンビン(thrombin)、ADP(adenosine diphosphate)等といった各種作用物質(agonists)の刺激によって活性化されて、粘着反応(adhesion)、放出反応(secretion)及び凝集反応(aggregation)を引き起こす。この過程は、止血(hemostasis)だけでなく、血栓症等を含む循環器系疾患の発病に重要な部分を占めている。
【0003】
循環器系疾患の一例として冠状動脈疾患を挙げることができるが、これは、全世界的にもっともよくある死亡原因の一つとして知られている。特に、急性冠動脈症候群(acute coronary syndrome)は、死亡の直接的な原因となる冠動脈疾患である。急性冠動脈症候群は、不安定狭心症(Unstable angina)、非ST上昇型心筋梗塞(Non‐ST‐segment elevation myocardial infarction; NSTE; Non Q‐wave MI)、ST上昇型心筋梗塞(ST‐elevation myocardial infarction; STE MI; Q‐wave MI)等に分類することができ、前者の2つは治療、予後が類似するために、まとめてNSTE ACS(Non‐ST‐elevation Acute Coronary Syndrome)と呼ばれたりもする。慢性安定狭心症(Chronic Stable Angina)は、粥状硬化により冠状動脈有効直径が減少して虚血が誘発されるが、急性冠動脈症候群は、その機序が異なる。急性冠動脈症候群は、粥状硬化班の破裂或いはびらんにより誘発された冠状動脈内急性血栓(Intracoronary Acute Thrombosis)によって血流が急速に減少或いは遮断されて起こる。
【0004】
より具体的に説明すると、急性冠動脈症候群における血管内血栓形成過程は、外傷により血管の損傷が来た後に止血(hemostasis)が起こる過程と同じである。すなわち、脆弱性動脈硬化班(Vulnerable atherosclerotic plaque)に破裂或いはびらんが発生すると、内皮細胞下の結合組織が血液に露出される。血液中の血小板がこれに付着し(Platelet adhesion)、機械的、生化学的刺激により血小板が活性化されて、TxA2(thromboxane A2)、ADP(adenosine diphosphate)、エピネフリン(epinephrine)等が分泌される(Platelet activation)。これらの物質は、血小板表面の糖タンパク質受容体(GP IIb/IIIa receptor)を活性化させ、活性化されたGP IIb/IIIa受容体は、フィブリノーゲン(fibrinogen)を媒介に血小板を互いに絡み付かせる(Platelet aggregation)。血小板は、数多くの経路を通じて活性化されるが、最終的に、GP IIb/IIIa受容器を介してフィブリノーゲンを媒介に凝集されるので、この過程が血小板凝集の最終共通経路(final common pathway)となる。一次的に生成された血栓は、血小板が豊富な、いわゆる「白色血栓(white thrombus)」であり、止血過程の1次止血(primary hemostasis)に該当する。
【0005】
このときに生じたPRT(platelet rich thrombus)は、粥状硬化斑の損傷部位の血管壁に生成され、冠状動脈を完全に閉塞させないのが普通である(Mural thrombus)。これは、臨床的にNTSE ACSに該当する。PRT(Platelet rich thrombus)上に、2次的に血液凝固過程(coagulation)が活性化され、連鎖反応によってトロンビン(factor IIa)が生成される。トロンビンは、フィブリノーゲン(fibrinogen)をフィブリン(fibrin)に活性化させ、活性化されたフィブリンが網状に絡まるようになりながら(fibrin meshwork)、赤血球等の血液細胞が含まれた血栓が形成される。形成された血栓は、いわゆる「赤色血栓(red thrombus)」であり、止血過程の2次止血(secondary hemostasis)に該当する。局所的な血栓/血栓溶解バランス(Thrombosis/thrombolysis balance)が血栓生成の方向に持続すると、血管が完全に閉塞して(Occlusive Thrombus)、臨床的にSTE MIとして発現される。
【0006】
抗血栓薬物は、1次止血に関与する血小板を抑制する抗血小板製剤(Antiplatelet agent)と、2次止血の血液凝固(Coagulation)を抑制する抗凝固剤(Anticoagulant)とに分類することができる。抗血小板製剤としては、TxA2の生成を抑制するアスピリン(aspirin)、ADP受容体遮断剤(ADP receptor blocker)であるクロピドグレル(clopidogrel)とチクロピジン(ticlopidine)、GP IIb/IIIa受容体遮断剤(GP IIb/IIIa receptor blocker)であるアブシキシマブ(abciximab)等がある。また、テオフィリン(theopylline)、モルシドミン(molsidomine)、ベラパミル(verapamil)、ニフェジピン(nifedipine)、ニトログリセリン(nitroglycerine)等は、cAMPとcGMPの生成を促進してCa2+の動員を抑制するものと知られている。抗凝固剤としては、抗トロンビンIII(antithrombin III)を活性化させてトロンビンを分解するヘパリン(heparin)、DTI(direct thrombin inhibitor)であるヒルジン(hirudin)、ビタミンK拮抗剤であるワルファリン(warfarin)等がある。
【0007】
しかし、前記言及した薬物は、人体に止血過剰抑制、不妊、消化器障害等のいくつかの副作用を惹起するという問題点がある。したがって、抗血栓薬物の副作用を画期的に減らしながらも安全な製剤の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−291761号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2001−0074008号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】HAE-SOOK et al., “Isoflavone Contents, Antioxidant and Fibrinolytic Activities of Some Commercial Cooking-with Rice Soybeans”, Korean J. Food Sci. Technol. Vol.34, No.3, pp.498-504, 2002.
【非特許文献1】DAE-YOUNG KWON et al., “A Study of Traditional Korean Soybeans for Development of Value Added Products”, research report, 2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一側面は、抗血栓効能がある組成物を提供しようとするものである。
【0011】
本発明の他の一側面は、抗血栓効能がある薬学組成物又は健康食品組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、水、C‐Cアルコール又はその混合物、及び有機酸を利用して抽出した有色豆抽出物又はその分画物を有効成分として含有する組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面による組成物は、優れた抗血栓効能が認められ、副作用のない天然物質を使用し、薬学及び健康食品分野等において多様に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フィールド豆の20%エタノール有機酸抽出物をHP‐20レジンで分画した50%エタノール分画物の、濃度による血小板凝集抑制効能を示したグラフである。
図2】複数の豆の20%エタノール有機酸抽出物をHP‐20レジンで分画した50%エタノール分画物の、経口投与時の血栓生成抑制効能を示したグラフである。
図3】フィールド豆の20%エタノール有機酸抽出物、その抽出物のHP‐20レジン分画物、及び有機酸を入れずに抽出したフィールド豆抽出物のHP‐20レジン50%エタノール分画物の、経口投与時の血栓生成抑制効能を示したグラフである。
図4】フィールド豆の20%エタノール有機酸抽出物をHP‐20レジンに分画した50%エタノール分画物の、用量による経口投与時の血栓生成抑制効能を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
従来の豆に関する研究は、豆から薬理活性を示す有効成分を分離、精製する方向で進められ、豆自体の医薬的用途のための研究は不足していた。そして、その抽出方法においても、天然物から通常的に利用する抽出法である、高濃度の有機溶媒を利用した抽出方法を使用していた。
【0016】
豆抽出物は、明らかにされている成分の他に、いくつかの未知の成分を含んでおり、これらのうち一部の成分は、人体に有用な薬理効果を示したりもする。また、その有用な成分は、通常の高濃度有機溶媒を利用した抽出方法によっては、抽出することができない。本発明者らは、天然物及び生薬抽出において一般的に使用される抽出法に対する認識から抜け出して、水又は低濃度の有機溶媒;及び有機酸を抽出溶媒として使用して豆から抽出物を獲得し、この抽出物が高濃度有機溶媒を抽出溶媒として使用する場合よりも、より強力な抗血栓効能があることを明らかにした。
【0017】
本発明の一側面による組成物は、水又は低濃度の有機溶媒;及び有機酸を利用して抽出した豆抽出物を含有することを特徴とする。本発明の一側面による組成物は、水、C‐Cアルコール又はその混合物、及び有機酸を利用して抽出した有色豆抽出物を含有する抗血栓組成物であってよい。本発明の他の一側面による組成物は、水、C‐Cアルコール又はその混合物、及び有機酸を利用して抽出した有色豆抽出物の分画物を含有する抗血栓組成物であってよい。
【0018】
本発明の一側面において、前記有機酸は、クエン酸(citric acid)、酢酸(acetic acid)、酪酸(butyric acid)、パルミチン酸(palmitic acid)、シュウ酸(oxalic acid)、酒石酸(tartaric acid)、カルボン酸(carboxylic acid)及びスルホン酸(sulfonic acid)により構成された群から選択されるいずれか一つ又は二つ以上であってよく、より具体的には、クエン酸(citric acid)であってよい。有色豆から有効成分を抽出する際、低濃度の有機溶媒とともに有機酸を使用することにより、豆からの抽出効率を増加させ、有効成分に対する選択性を高めることができる。
【0019】
本発明の一側面において、前記有機溶媒は、特に制限されるものではなく、低級アルコール、より具体的には、C‐Cアルコールであってよい。前記C‐Cアルコールは、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n‐プロピルアルコール、n‐ブタノール及びイソブタノールにより構成された群から選択されるいずれか一つ又は二つ以上の混合溶媒であってよく、具体的には、エタノールであってよい。たとえば、本発明に係る有色豆抽出物は、エタノール及び有機酸を利用して抽出した抽出物であってよい。
【0020】
本発明の他の一側面において、前記C‐Cアルコールの濃度は、1〜70%(v/v)、具体的には1〜40%(v/v)であり、より具体的には5〜25%(v/v)、さらに具体的には7〜20%(v/v)である。たとえば、前記C‐Cアルコールは、5〜25%(v/v)濃度のエタノール、具体的には、10%又は20%(v/v)濃度のエタノールであってよい。
【0021】
本発明の一側面による組成物は、水又は低濃度の低級アルコール;及び有機酸を利用して豆を抽出することになる。本発明者らは、多様な研究及び反復的な実験を通じて、水を含む複数の種類の有機溶媒の中から低級アルコール、たとえばエタノール、特に低濃度エタノールを利用して有機酸とともに抽出した有色豆抽出物が、血液循環を改善させ、肥満及び糖尿の予防及び治療に効果的であり、高脂血症の予防及び治療に優れた効果を有するという点を確認し、本発明を完成した。
【0022】
本発明の一側面において、前記有色豆抽出物は、水、C‐Cアルコール又はその混合物、及び有機酸を利用した抽出物であり、その分画物は、前記有色豆抽出物をレジンで分離した分画物、又は有色豆抽出物を溶媒であるブタノールで分画化した分画物である。前記レジン分画物は、たとえば、ポリスチレン(polystylene)とベンゼン(benzene)の重合体を含む合成吸着剤カラムであり、具体的には、HP‐20レジン(resin)である。本発明者らは、代表的な例として、低濃度エタノールを利用して抽出した有色豆抽出物に対する多様な分画を抽出する実験を行った。実験の結果、HP‐20レジン分画物又はブタノール分画物が、水分画物に比べて抗血栓効能に優れることを確認した。
【0023】
本明細書において「有色豆(colored‐bean)」は、豆粒の皮の色が濃い色を帯びた豆を総称する意味であり、黒色だけでなく、赤色、黄色、青色等の色をする場合も包括する。前記有色豆は、霜太 (black bean、 Glycinemax)、鼠目太(Seomoktae、Rhynchosia Nolubilis)、青豆(blue bean、Glycine max MERR)、黄豆(yellow bean、Glycine maxMERR)、フィールド豆 (field bean、 Phaseolus vulgaris L.)、インゲン豆(kidney bean、Phaseolus vulgaris)、うずら豆(pinto bean、Phaseolus vulgarisL.)、赤小豆 (small red bean、Vigna angularis L.)、黒小豆 (small black bean、Phaseolus angularis W.F.WIGHT.)、豆もやし原料豆(sprouting bean、Glycine max (L.) Merr.)、大豆(soybean、Glycine max)及び黒大豆(Black soybean、Glycine max(L.) Merr.)により構成された群から選択されるいずれか一つ又は二つ以上であってよいが、これらに限定されるものではない。本発明の一側面において、本発明に係る有色豆は、フィールド豆であってよい。有色豆の名称は、地域や分類、方言などの影響により多様に呼ばれ得る。本明細書において「有色豆抽出物」は、多様な抽出過程を通じて有色豆から抽出された物質を総称し、たとえば、有機溶媒等を利用して抽出された物質を含み、抽出された物質に対する多様な分画物(たとえば、HP‐20レジン分離分画)等を含んでよい。
本発明に係る有色豆抽出物又はその分画物を含有する組成物は、血小板凝集を抑制して血栓の生成を阻害する効能があり、こうした効能を通じて、血液の循環を改善することができ、肥満、糖尿及び高脂血症等の治療又は予防に効果的に使用することができる。
【0024】
本発明の一側面は、前記組成物を有効成分として含む薬学組成物を提供する。本発明の他の一側面において、前記薬学組成物は、血管疾患の予防、軽減又は治療用組成物であってよい。本発明に係る組成物を含む薬学組成物は、血栓生成防止、血管収縮抑制及び/又はコレステロール抑制効能が認められる。具体的に、前記薬学組成物は、抗血栓効能に起因する血液循環改善用薬学組成物であってよく、肥満、糖尿及び高脂血症等を含む血管疾患の軽減又は治療用薬学組成物であってよい。前記血管疾患は、たとえば、肥満、糖尿、脳卒中、脳出血、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、高血圧、貧血、偏頭痛又は高脂血症等を含む。
【0025】
本発明に係る組成物を医薬品に適用する場合には、前記組成物を有効成分として使用される無機又は有機の担体を加えて、固体、半固体又は液体の形態で経口投与剤或いは非経口投与剤に製剤化してよい。
【0026】
前記経口投与のための剤材としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、軟質及び硬質カプセル剤、散剤、細粒剤、粉剤、乳濁剤、シロップ剤、ペレット剤等を挙げることができる。また、前記非経口投与のための剤材としては、注射剤、点滴剤、軟膏、ローション、スプレー、懸濁剤、乳剤、坐剤等を挙げることができる。常法に従って実施すれば、本発明の有効成分を容易に製剤化することができ、また、界面活性剤、賦形剤、着色料、香辛料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤又はその他常用される補助剤を適当に使用してよい。
【0027】
本発明に係る前記薬学組成物は、経口、非経口、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下等に投与されてよい。
【0028】
また、前記有効成分の投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重、治療する特定の疾患又は病理状態や疾患又は病理状態の深刻度、投与経路及び処方者の判断に応じて異なるであろう。こうした因子に基づいた投与量の決定は、当業者の水準内にある。一般的な投与量は、0.001mg/kg/日〜2000mg/kg/日、より具体的には0.5mg/kg/日〜1500mg/kg/日であってよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明の一側面は、本発明に係る組成物を有効成分として含む食品添加剤、機能性食品又は健康食品組成物を提供する。本発明の他の一側面において、本発明に係る組成物を含む食品添加剤、機能性食品又は健康食品組成物は、血液循環改善用組成物であってよく、肥満、糖尿及び高脂血症等を含む血管疾患の予防又は緩和用組成物であってよい。前記血管疾患は、たとえば、肥満、糖尿、脳卒中、脳出血、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、高血圧、貧血、偏頭痛又は高脂血症等を含む。
【0030】
本発明に係る組成物を含む食品添加剤又は機能性食品の例としては、発酵乳、チーズ、ヨーグルト、ジュース、生菌製剤又は健康補助食品等を挙げることができ、その他、多様な類型を含む。
【0031】
本発明の一側面において、前記組成物は、本発明が目的とする主効果を損なわない範囲内で、主効果に相乗効果を与え得る他の成分を含有してよい。たとえば、物性改善のために、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤、保湿剤、増粘剤、無機塩類、乳化剤及び合成高分子物質等の添加剤をさらに含んでよい。その他にも、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖及び海藻エキス等の補助成分をさらに含んでもよい。前記成分は、剤形又は使用目的に応じて、当業者が困難なく適宜選定して配合してよく、その添加量は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲内で選択してよい。たとえば、前記成分の添加量は、組成物全体の重量を基準として、0.01〜5重量%、より具体的には0.01〜3重量%の範囲であってよい。
【0032】
本発明に係る組成物の剤形は、溶液、乳化物、粘性型混合物、タブレット、粉末等の多様な形態であってよく、これらは、単純飲用、注射投与、スプレー方式又はスクイーズ方式等の多様な方法で投与されてよい。
【0033】
以下、本発明の実施例及び実験例を通じて本発明をさらに詳述するが、下記実施例及び実験例は、本発明の効果を例示的に確認するためのものであり、本発明の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]20%エタノール及び有機酸を利用した霜太抽出物の製造
乾燥した霜太1kgを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温で保管した。
【0035】
[実施例2]20%エタノール及び有機酸を利用した鼠目太抽出物の製造
乾燥した鼠目太1kgを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温で保管した。
【0036】
[実施例3]20%エタノール及び有機酸を利用したインゲン豆抽出物の製造
乾燥したインゲン豆300gを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液1.5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温で保管した。
【0037】
[実施例4]20%エタノール及び有機酸を利用したうずら豆抽出物の製造
乾燥したうずら豆300gを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液1.5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温で保管した。
【0038】
[実施例5]20%エタノール及び有機酸を利用した豆もやし原料豆抽出物の製造
乾燥した豆もやし原料豆300gを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液1.5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温で保管した。
【0039】
[実施例6]20%エタノール及び有機酸を利用した黄豆抽出物の製造
乾燥した黄豆300gを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液1.5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温で保管した。
【0040】
[実施例7]20%エタノール及び有機酸を利用した青豆抽出物の製造
乾燥した青豆300gを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液1.5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温で保管した。
【0041】
[実施例8]20%エタノール及び有機酸を利用したフィールド豆抽出物の製造
乾燥したフィールド豆1kgを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温保管した。
【0042】
[実施例9]20%エタノール及び有機酸を利用した大豆抽出物の製造
乾燥した大豆1kgを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで冷蔵保存した。
【0043】
[実施例10]20%エタノール及び有機酸を利用した黒小豆抽出物の製造
乾燥した黒小豆300gを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液1.5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温で保管した。
【0044】
[実施例11]20%エタノール及び有機酸を利用した赤小豆抽出物の製造
乾燥した赤小豆300gを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液1.5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温で保管した。
【0045】
[実施例12]20%エタノール及び有機酸を利用した黒大豆抽出物の製造
乾燥した黒大豆300gを、60℃の温度で、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール水溶液1.5Lに浸漬して、3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して粉末試料を製造した。収率は、3〜15%であり、調製された粉末は、使用時まで低温で保管した。
【0046】
[実施例13]霜太抽出物のHP‐20レジン(resin)を利用した分離
乾燥した霜太1kgを、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール溶液5Lに浸漬して、60℃の温度で3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して20%エタノール抽出物試料を収得した。疎水性レジンであるDIAION HP‐20(SUPELCO)を利用して、下記のように20%エタノール有機酸霜太抽出物に対するレジン分離分画を得た。
【0047】
HP‐20レジンを利用した分離のために、カラムに、30cmの長さとなるようにHP‐20レジンを充填した後、1Lのエタノールを500mlずつ利用して2回、1Lの50%エタノールを500mlずつ利用して2回、1Lの蒸留水を500mlずつ利用して2回、それぞれ洗浄した。6gの20%エタノール有機酸霜太抽出物を水に溶かした後、HP‐20レジン充填カラムに加え、75mlの蒸留水、750mlの50%エタノール、500mlのエタノールを順次入れながら、流れ出てきた溶媒を250ml三角フラスコに受けた後、それぞれを減圧濃縮し、凍結乾燥して分画試料を製造した。
【0048】
[実施例14]フィールド豆抽出物のHP‐20レジン(resin)を利用した分離
乾燥したフィールド豆1kgを、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール溶液5Lに浸漬して、60℃の温度で3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して20%エタノール有機酸抽出物試料を収得した。疎水性レジンであるDIAION HP‐20(SUPELCO)を利用して、下記のように20%エタノール有機酸フィールド豆抽出物に対するレジン分離分画を得た。
【0049】
HP‐20レジンを利用した分離のために、カラムに、30cmの長さとなるようにHP‐20レジンを充填した後、1Lのエタノールを500mlずつ利用して2回、1Lの50%エタノールを500mlずつ利用して2回、1Lの蒸留水を500mlずつ利用して2回、それぞれ洗浄した。6gの20%エタノール有機酸フィールド豆抽出物を水に溶かした後、HP‐20レジン充填カラムに加え、750mlの蒸留水、750mlの50%エタノール、500mlのエタノールを順次入れながら、流れ出てきた溶媒を250ml三角フラスコに受けた後、それぞれを減圧濃縮して凍結乾燥して分画試料を製造した。
【0050】
[実施例15]インゲン豆抽出物のHP‐20レジン(resin)を利用した分離
乾燥したインゲン豆1kgを、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール溶液5Lに浸漬して、60℃の温度で3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して20%エタノール有機酸抽出物試料を収得した。疎水性レジンであるDIAION HP‐20(SUPELCO)を利用して、下記のように20%エタノール有機酸インゲン豆抽出物に対するレジン分離分画を得た。
【0051】
HP‐20レジンを利用した分離のために、カラムに、30cmの長さとなるようにHP‐20レジンを充填した後、1Lのエタノールを500mlずつ利用して2回、1Lの50%エタノールを500mlずつ利用して2回、1Lの蒸留水を500mlずつ利用して2回、それぞれ洗浄した。6gの20%エタノール有機酸インゲン豆抽出物を水に溶かした後、HP‐20レジン充填カラムに加え、750mlの蒸留水、750mlの50%エタノール、500mlのエタノールを順次入れながら、流れ出てきた溶媒を250ml三角フラスコに受けた後、それぞれを減圧濃縮し、凍結乾燥して分画試料を製造した。
【0052】
[実施例16]大豆抽出物のHP‐20レジン(resin)を利用した分離
乾燥した大豆1kgを、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール溶液5Lに浸漬して、60℃の温度で3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して20%エタノール有機酸抽出物試料を収得した。疎水性レジンであるDIAION HP‐20(SUPELCO)を利用して、下記のように20%エタノール有機酸大豆抽出物に対するレジン分離分画を得た。
【0053】
HP‐20レジンを利用した分離のために、カラムに、30cmの長さとなるようにHP‐20レジンを充填した後、1Lのエタノールを利用して500mlずつ2回、1Lの50%エタノールを用いて500mlずつ2回、1Lの蒸留水を利用して500mlずつ2回、それぞれ洗浄した。6gの20%エタノール有機酸大豆抽出物を水に溶かした後、HP‐20レジン充填カラムに加え、750mlの蒸留水、750mlの50%エタノール、500mlのエタノールを順次入れながら、流れ出てきた溶媒を250ml三角フラスコに受けた後、それぞれを減圧濃縮し、凍結乾燥して分画試料を製造した。
【0054】
[実施例17]鼠目太抽出物のHP‐20レジン(resin)を利用した分離
乾燥した鼠目太1kgを、1%クエン酸(citric acid)を含んだ20%のエタノール溶液5Lに浸漬して、60℃の温度で3時間還流抽出した後、常温で一定時間放置した。抽出液をろ過して減圧濃縮し、凍結乾燥して20%エタノール有機酸抽出物試料を収得した。疎水性レジンであるDIAION HP‐20(SUPELCO)を利用して、下記のように20%エタノール有機酸鼠目太抽出物に対するレジン分離分画を得た。
【0055】
HP‐20レジンを利用した分離のために、カラムに、30cmの長さとなるようにHP‐20レジンを充填した後、1Lのエタノールを500mlずつ使用して2回、1Lの50%エタノールを500mlずつ使用して2回、1Lの蒸留水を500mlずつ使用して2回、それぞれ洗浄した。6gの20%エタノール有機酸鼠目太抽出物を水に溶かした後、HP‐20レジン充填カラムに加え、750mlの蒸留水、750mlの50%エタノール、500mlのエタノールを順次入れながら、流れ出てきた溶媒を250ml三角フラスコに受けた後、それぞれを減圧濃縮し、凍結乾燥して分画試料を製造した。
【0056】
[実施例18]フィールド豆抽出物の溶媒別分画
実施例8で得られた20%エタノール有機酸フィールド豆抽出物10.18gを蒸留水100mlに溶かした後、分液漏斗を使用して酢酸エチル(EtOAc)100mlで2回抽出し、残った水層をn‐ブタノール(n‐BuOH)100mlで2回抽出した。得られた酢酸エチル(EtOAc)、n‐ブタノール(n‐BuOH)及び水層をそれぞれ集めて減圧濃縮した後、凍結乾燥して試料を製造した。収率は、酢酸エチル(EtOAc)は4.62%、n‐ブタノール(n−BuOH)は6.58%、及び水層は8.88%であり、製造された試料は使用時まで冷蔵保管した。
【0057】
[実験例1]コラーゲンによって誘導されたヒト血小板凝集抑制の観察
エタノール含量による抽出物の活性の差を比較するために、エタノール含量を変えて抽出したフィールド豆を利用して、下記実験を実施した。
ヒトの血小板濃縮血漿(Platelet Rich Plasma, PRP)を分離するために、3.2%クエン酸ナトリウム(sodium citrate)を抗凝固剤として使用し、2週間以上薬物を服用していない健康な男性の静脈から血液を採取した。採血された血液150gを15分間遠心分離した後、上層液(PRP)を得、残渣を再び遠心分離して血小板欠乏血漿(platelet poor plasma, PPP)を分離した。分離されたPRPの血小板数は細胞カウンターを使用して数え、PRPをPPPで希釈して1mlあたり3×10個の血小板が含まれるように希釈した後、実験に使用した。
【0058】
血小板の凝集活性は、血小板凝集計(lumi‐aggregometer, Chrono‐Log Co., USA)を利用して、吸光度変化として測定した。2分間、37℃となるように熱混合器(thermomixer)で先培養したPRPに、フィールド豆抽出物を200μg/ml濃度となるように加え、7分間培養した。培養されたPRP500μlを、シリコンがコーティングされた血小板凝集計用キュベットに入れ、3分間培養した。その次に、血小板凝集誘発試料であるコラーゲンを、最大凝集を引き起こす最小濃度である1〜3μg/ml加え、その後6分間、反応を観察した。観察した結果、コラーゲンのみ処理した対照群の血小板凝集抑制率を0%としたときの比較値を、表1(血小板凝集抑制率(%))に示した。
【0059】
【表1】
【0060】
表1を参照すると、水と、10%、20%エタノール抽出物が、他の抽出物に比べて血小板凝集抑制効能に優れるものと示され、その中でも、血小板凝集抑制効能にもっとも優れるものと示された20%エタノール有機酸抽出物により、以降の実験を進めた。
【0061】
[実験例2]豆の種類別のヒト血小板凝集抑制効能の観察
活性にもっとも優れるものと示された20%エタノール有機酸抽出条件において、多様な豆に対しても血小板凝集抑制効能が示されるのかを調べるために、下記の実験を実施した。実験に使用された豆は、すべて韓国産で購入して使用した。
【0062】
黒小豆、大豆、霜太、鼠目太、フィールド豆、インゲン豆、うずら豆、赤小豆、青豆、豆もやし原料豆、黄豆、黒大豆に対して実験を実施した。対象の豆は、実施例に記載された方法により抽出した。また、抗血小板凝集抑制効能を観察するために、実験例1と同一の条件において、20%エタノール有機酸抽出物200μg/mlを処理して実験を行った。実験の結果は、下記表2(血小板凝集抑制率(%))に示した。
【0063】
【表2】
【0064】
表2を参照すると、血小板凝集抑制効能は、フィールド豆がもっとも大きいものと示された。
【0065】
[実験例3]各豆の分画別の血小板凝集抑制活性
先の結果において活性がもっとも良かった20%エタノール有機酸抽出条件により、実施例に示したとおり、多様な豆に対してHP‐20レジンを利用して分画化を進めた。
各豆の20%エタノール有機酸抽出物を、HP‐20レジンを利用して分画した分画物である水分画物(以下、HP‐20レジン水分画物)と50%エタノール分画物(以下、HP‐20レジン50%エタノール分画物)に対して、実験例1と同じ条件において、200μg/mlを処理して実験を行った。実験の結果は、下記表3(血小板凝集抑制率(%))に示した。
【0066】
【表3】
【0067】
表3を参照すると、すべての豆において、HP‐20レジン水分画物に比べて、HP‐20レジン50%エタノール分画物の血小板凝集抑制効能に顕著に優れるものと示され、また、活性成分は大部分が50%エタノール分画に集中するものと確認された。こうした活性は濃度依存的に示され、フィールド豆の例を図1に示した。
【0068】
[実験例4]血小板凝集刺激源別の活性抑制特異性の観察
活性がもっとも優れていた各豆のHP‐20レジン50%エタノール分画物において、血小板凝集刺激源によって特異的な活性抑制効能を見せるのかについて調べるための実験を実施した。
【0069】
血管が損傷すると、その部位の内皮細胞層が破壊されるとともに、血液内に露出されるコラーゲン(collagen)、血小板から分泌するADP(adenosine diphosphate)、トロンビン(thrombin)が血小板の凝集を刺激する原因となるものと知られている。これを土台に、HP‐20レジン50%エタノール分画物が、ADP、トロンビン(thrombin)による活性抑制特異性を有するのかについての評価を実施した。評価は、前記実験例1と同一の方法によって実施し、ただし実験例1のコラーゲンに代えてADP、トロンビン刺激を加えたという点のみが異なっている。その結果は、表4(血小板凝集抑制率(%))に示した。
【0070】
【表4】
【0071】
表4から分かるとおり、HP‐20レジン50%エタノール分画物は、コラーゲンにより誘導された血小板凝集だけでなく、ADP、トロンビン等、他の刺激剤により誘導された血小板凝集に対しても抑制効能が示され、特に、鼠目太、フィールド豆の場合において、その効果がより優れているものと示された。
【0072】
[実験例5]フィールド豆の分画別のヒト血小板凝集抑制効能の観察
活性がもっとも優れていたフィールド豆の溶媒別分画によってどの部分がもっとも優れた活性を示すのかについて調べるための実験を実施した。
まず、酢酸エチル、ブタノール及び水分画を、前記実施例18の方法により製造した。各分画に対する血小板凝集抑制効能は、前記実験例1と同一の方法を使用して、各分画別に200μg/mlの濃度で使用して実施した。結果は、表5(血小板凝集抑制率(%))に示した。
【0073】
【表5】
【0074】
表5から分かるとおり、血小板凝集抑制効能は、ブタノール分画がもっとも優れており、酢酸エチルと水画分は類似している。したがって、フィールド豆の低濃度エタノール抽出物における血小板凝集抑制効能は、ブタノール分画に含まれる活性成分によるものと推測することができる。
【0075】
[実験例6]ブタノール分画物の血小板凝集刺激源別の活性抑制特異性の観察
フィールド豆のブタノール分画物が、血小板凝集刺激源別に、活性抑制の特異性を有するのかについて調べるために、ADP、トロンビン刺激に対して、前記実験例4と同一の方法により実験を行い、試料の処理濃度は200μg/mlで実施した。その結果は、表6(血小板凝集抑制率(%))に示した。
【0076】
【表6】
【0077】
表6から分かるとおり、フィールド豆のブタノール分画物は、コラーゲンだけでなく、ADP、トロンビン刺激による凝集をすべて抑制することを知ることができる。
【0078】
[実験例7]分画物に対する血小板凝集後の活性化物質分泌抑制効能の観察
各豆のHP‐20レジン50%エタノール分画物及びフィールド豆のブタノール分画物が、血小板凝集時に生成されるトロンボキサンの生成を抑制させる効能を調べるために、実験例1において使用したPRPに試料を400μg/mlとなるように加え、37℃で10分間培養した後、コラーゲン5μg/mlを加え、6分間反応させた。EDTA2mM、インドメタシン(Indomethacin)50μMを加えて反応を終結させ、2000xgで20分間遠心分離し、上清液のみを取って、生成されたトロンボキサンを酵素免疫法を使用して定量した。その結果は、表7(トロンボキサン生成抑制率(%))に示した。
【0079】
【表7】
【0080】
表7から見られるとおり、各豆のHP‐20レジン50%エタノール分画物及びフィールド豆のブタノール分画物は、血小板凝集後に生成されるトロンボキサンの生成を抑制するものと観察された。
【0081】
[実験例8]SDラットを利用した静脈血栓塞生成抑制効能の観察
霜太、フィールド豆、鼠目太、大豆の分画物を実際に摂取した場合に、生体内において血栓生成抑制効能があるのかについて調べるための実験を実施した。体重220〜250gの雄SD(Sprague Dawley)ラット(rat)を対象に、静脈血栓生成能試験を実施した。
【0082】
SDラットに対し、200mgの各豆の分画物を食塩水(saline)に溶解させて10ml/kgの容量で経口投与した後、1時間放置した。1時間後、ウレタン(Urethane)12.5g/kgを腹腔投与して全身麻酔させた後、開腹し、後大静脈(caudal vena cava)がよく見えるように脂肪組織を取り除いた。脂肪組織を取り除く際、周辺の血管が損傷しないように注意した。5%FeCl溶液をフィルターペーパー(filter paper, 2mm×4mm)に3μl湿らせて、後大静脈の上に5分間適用した後、除去した。30分後、血栓を含有している後大静脈を12mmの長さで結紮した後、切除した。食塩水に血栓塊を取り離した後、水分は除去し、重さを測定し各試験群を比較し、その結果を図2に示した。
【0083】
図2を参照すると、霜太とフィールド豆のHP‐20レジン50%エタノール分画物200mg/kgを経口投与した際に、有意に血栓生成が抑制されることを知ることができる。
【0084】
また、同一の方法により、フィールド豆の20%エタノール有機酸抽出物と、HP‐20レジン50%エタノール分画物、及び抽出時に有機酸を含有せずにフィールド豆を抽出してHP‐20レジンで分画した分画物に対する比較試験の結果を図3に示した。図3を参照すると、フィールド豆の20%エタノール有機酸抽出物とHP‐20レジン50%エタノール分画物の200mg/kg投与時に、有意に血栓生成が抑制されることを知ることができた。
【0085】
最後に、同一の方法により、フィールド豆の20%エタノール有機酸抽出物のHP‐20レジン50%エタノール分画物100,200mg/kgと、市販されている抗血栓剤であるクロピドグレル(clopidogrel)2.5mg/kgに対して試験した。前記有効成分を含んでいない溶媒を陰性対照群とした。その結果は、図4に示した。この結果を参照すると、フィールド豆の20%エタノール有機酸抽出物のHP‐20レジン50%エタノール分画物が、陰性対照群に比べて濃度依存的に血栓生成を抑制することを知ることができ、そのうち、200mg/kg投与群は、クロピドグレル2.5mg/kg投与群と類似した効能を示すことを知ることができる。したがって、フィールド豆のHP‐20レジン50%エタノール分画物は、優れた抗血栓剤として作用することを知ることができる。
【0086】
[実験例9]SDラット(rat)から分離した血小板凝集抑制効能の観察
前記において効能を観察していたフィールド豆のHP‐20レジン50%エタノール分画物と、フィールド豆のブタノール分画物、そして食品として多く摂取する大豆のHP‐20レジン50%エタノール分画物に対し、ラット(rat)から分離した血小板凝集抑制効能があるのかについて調べるために、前記実験例1と同一の方法により、刺激源であるコラーゲンの濃度を15μg/ml濃度で実験を行った。各豆の分画の処理濃度は400μg/mlであり、その結果は、表8(血小板凝集抑制率(%))に示した。
【0087】
【表8】
【0088】
表8から分かるとおり、フィールド豆のHP‐20レジン50%エタノール分画物だけでなく、ブタノール分画物と大豆のHP‐20レジン50%エタノール分画物のすべてが、ラットにおいて優れた血小板の凝集抑制効能を示した。
図1
図2
図3
図4