(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る照明ランプの主要部の構成を示す図である。
図1(a)は斜視模式図であり、
図1(b)は
図1(a)の断面模式図である。
図1及び後述の図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。更に、明細書全文に表れている構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0018】
実施の形態1における照明ランプ(直管型LEDランプ)1は、発光ユニット10と、発光ユニット10を内包するガラス製又はプラスチック製の筒状の外管60とを有している。そして、外管60の一方の端部60Aにはアース口金70の嵌合部73が嵌合され、他方の端部60Bには給電口金80の嵌合部83が嵌合されており、外管60の両端が塞がれた構成となっている。
【0019】
アース口金70は、有底筒状の口金筐体71と、口金筐体71の底部から外方に向かって突出するアース端子72とを備えている。また、給電口金80は、有底筒状の口金筐体81と、口金筐体81の底部から外方に向かって突出する一対の給電端子82とを備えている。
【0020】
発光ユニット10は、発光素子としてのLED30がFPC40に実装されて構成された発光部20と、発光部20が載置され、発光部20の熱を放熱する放熱部50とを有している。
【0021】
FPC40は、プラスチックやポリマーなどの樹脂素材で構成されたフィルム状の基材(ベースフィルム)41と、基材41上に形成された配線パターンである銅箔42とを有している。基材41を構成する樹脂素材は電気絶縁性を有する絶縁体であり、基材41は接合部11により放熱部50に接合されている。
【0022】
放熱部50は、アルミ製のヒートシンクであり、シリコン樹脂などでガラス製又はプラスチック製の外管60と接着されており、発光部20(の主にLED30)から発生する熱を照明ランプ1の外部へ伝達する。
【0023】
なお、
図1(b)は模式図であり、縮尺や寸法などを規定しているものではない。実際の基材41は、50μm以上、5mm以下の板厚寸法(以下、厚寸という)を有する。また、銅箔42は数十μm以下程度の厚寸で構成する。
【0024】
基材41には安価なプラスチック系の材料を用いることができ、また、ガラス転移温度Tgが以下の条件(1)、(2)を満足する範囲のものを使用する。
(1)発光部20の発光に伴う発光部20自身及び放熱部50の最高到達温度T1より高いこと
(2)発光部20におけるLED30を含む構成要素(部品)のFPC40への実装温度よりも低いこと
【0025】
通常点灯時の、発光部20及び放熱部50の少なくとも一方の最高到達温度T1は、概ね90℃程度である。また、例えばLED30を銅箔42に実装する際に用いる半田の溶融温度T2は、概ね180℃〜250℃程度である。よって、基材41にはガラス転移温度Tgが略110℃〜略220℃の範囲のものを使用する。具体的には例えば、基材41は熱伝導フィラを含有したプラスチックで構成される。基材41に上記のガラス転移温度Tgのものを使用する理由については後述する。
【0026】
以上のように構成された照明ランプ1は、照明ランプ1外からの電力が給電端子82を介して発光部20に給電され、発光部20が点灯する。
【0027】
次に、本実施の形態1の特徴について説明する。
本実施の形態1は、発光部20を構成するFPC40の基材41が放熱部50に対してシリコン樹脂などの接着部材を用いることなく、直接、接合されている点を特徴としている。つまり、基材41を構成する樹脂素材自身、つまり基材41の放熱部50との接触面自身が接着剤として機能して接合部11を構成している。このように、基材41自身が接着剤として機能することで、皺や歪み、浮き(剥離)を抑えた固定が可能であり、製造品質の向上を図ることが可能である。また、接着剤が不要であるため、材料費の低減が可能である。
【0028】
次に、基材(ベースフィルム)41に、ガラス転移温度Tgが略110℃〜略220℃のものを使用する理由について説明する。その理由には照明ランプ1の製造工程が関わるため、ここで、照明ランプ1の要部の製造工程について説明する。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態1に係る照明ランプの要部の製造工程を示すフローチャートである。
(S1)まず、発光部20の組立てを行う。すなわちLED30をFPC40の銅箔42に実装する。この実装方法には、以下の2つの方法を採用できる。
(1)接続部材(図示しない)を用いて実装する方法
接続部材としては、半田、導電ペースト、ACF(異方性導電フィルム)、ACP(異方性導電ペースト)、金属バンプ、などを用いる。
(2)接続部材を用いずに(最もシンプルな構成で)実装する方法
例えば、圧接工法、超音波接合工法、溶接工法、など。
【0030】
(S2)次に、組立てられた発光部20を、FPC40の基材41部分が放熱部50(外管60内に接着された放熱部50)に接触するように放熱部50上に載置する。
【0031】
(S3)上記(S2)の状態で、基材41のガラス転移温度Tg以上の温度(例えば250℃)のリフロー炉に通し、基材41を放熱部50になじみ接合させる。
【0033】
照明ランプ1を製造するにあたり、以上のように基材41のガラス転移温度Tg以上の温度にして加熱して基材41を放熱部50に接合するため、ガラス転移温度Tgが上記S1の実装温度よりも高いと、S3の工程で例えば実装部分の半田が溶けてしまう。このため、基材41には、実装温度よりも低いガラス転移温度のものを使用する。なお、上記S1の実装温度よりも低いとしたが、この実装温度は、LED30を含む構成要素(部品)の耐熱値(温度)や融点より低い温度であることはもちろんである。
【0034】
また、基材41のガラス転移温度Tgが通常点灯時の最高到達温度T1以下であると、照明ランプ1の点灯中に基材41が軟化して基材41と放熱部50とが剥離する可能性がある。よって、基材41のガラス転移温度Tgを最高到達温度T1より高い温度としている。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、FPC40の基材41として発光ユニット10の最高到達温度T1より高く、発光部20におけるLED30を含む構成要素(部品)のFPC40への実装温度よりも低いガラス転移温度の樹脂材料を用い、基材41自身を接着剤として放熱部50に接合するようにした。これにより、基材41を放熱部50となじみ接合できて高い接合強度(剥離強度)とすることができ、硬化(固化)後は剥離が生じることもない。よって、皺や歪み、浮き(剥離)などを抑制できる。
【0036】
また、接着部材の塗布工程が不要で、例えば、250℃程度のリフロー炉を通すだけでよいため、製造工程の簡素化による製造タクトの短縮を可能となる。
【0037】
また、LED30を実装するフィルム状の基材41そのものが、接着部材の機能を有し、これと別に接着部材を用いる必要がないため、接着層が無いことによる薄寸化が可能で、更に、放熱のボトルネックになることもない。
【0038】
なお、ガラス転移温度Tgが例えばポリイミドなどと比較して低いので、例えば再度リフロー炉に通すと基材41が軟化するが、LED30のジャンクション温度が実使用環境で100℃以下になるように照明ランプ1全体の放熱構成を設計しておけば、剥離することはない。
【0039】
以上より、材料費の低減、照明ランプ1の製造工程の簡素化による製造品質の向上と製造タクトの短縮を達成できる発光ユニット10、照明ランプ1を得ることができる。
【0040】
なお、ここでは、発光素子が実装されるプリント基板としてFPCを例に挙げたが、プリント基板はFPCに限られたものではなく、リジッド基板でもよい。また、プリント基板の配線パターンを形成する金属は、上述したように銅に限られたものではなく、アルミでもよい。要は、プラスチックやポリマーなどの樹脂素材であって、最高到達温度T1より高く、発光部20におけるLED30を含む構成要素(部品)のプリント基板への実装温度よりも低いガラス転移温度の樹脂材料で構成された基材に、配線パターンとなる金属膜が形成された構成であればよい。この点は、後述の実施の形態においても同様である。
【0041】
実施の形態2.
基材41は樹脂素材で構成されているため、その特性上、接合の対象となる面は必ずしも平坦な面である必要はなく、曲面や、凸凹を有する面であっても良い。よって、実施の形態2では、基材41を外管60の内面に直接的に接合した構成としたものである。
【0042】
図3は、本発明の実施の形態2に係る照明ランプの主要部の構成を示す図である。
図3(a)は斜視模式図であり、
図3(b)は
図3(a)の断面模式図である。以下、実施の形態2が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。なお、銅箔42は配線パターンであるが、
図3(a)では詳細には示しておらず、簡略化して示している。また、実施の形態1と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施の形態2についても同様に適用される。この点は後述の実施の形態においても同様である。
【0043】
実施の形態2の照明ランプ1aの発光ユニット10aでは、FPC40aの基材(ベースフィルム)41aを外管60で構成された放熱部50aに直接的に接合し、発光部20a(の主にLED30)から発生する熱を照明ランプ1aの外管60から外部へ、より直接的に伝達する。
【0044】
放熱部50aとなる外管60aは上述したようにガラス製やプラスチック製であるが、このような材質に対しても、実施の形態1と同様の工程にてFPC40aの基材41aを放熱部50aに強固に接合できる。すなわち、実施の形態2の製造工程は、
図2に示した実施の形態1のS2において、FPC40aを外管60の放熱部50aに載置する点が実施の形態1と異なるが、それ以外は、実施の形態1と同様の方法でFPC40aの基材41aを放熱部50aに接合でき、接合部11aが構成されている。
【0045】
なお、基材41aは実施の形態1の基材41に比べて厚寸を厚くしているが、50μm以上、5mm以下の厚寸である点は実施の形態1と同様である。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果が得られると共に、外管60とは別途設けられていたアルミ製の放熱部50が不要となるため、実施の形態1に比べて更にコスト低減が可能であり、また、実施の形態1に比べて効果的な放熱ができる。
【0047】
実施の形態3.
実施の形態3は、光の利用率の低下を抑制するための反射部材を設けた照明ランプに関するものである。
【0048】
図4は、本発明の実施の形態3に係る照明ランプの主要部の構成を示す断面模式図である。以下、実施の形態3が実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
実施の形態3における照明ランプ1bの発光ユニット10bは、
図1に示した実施の形態1の照明ランプ1において銅箔42が形成された状態の基材41のLED設置側の表面に、全反射の特性を有する反射部材12をLED30の発光天面を覆わないように更に配置した構成を有する。なお、ここでいう「全反射の特性」とは完全な全反射に限らず、略全反射の様相を得られる特性を有していればよい。なお、
図4には、基材41の側面及び放熱部50のLED設置側表面も反射部材12で覆った構成を示しているが、少なくとも基材41のLED設置側表面が反射部材12で覆われていればよい。
【0049】
LED30から出射された光は外管60から外方へと出射されるが、一部は外管60で反射又は拡散される。外管60で反射又は拡散された光が基材41、銅箔42、放熱部50などに吸収されると、光の利用率が低下する。また、基材41は、一般にプラスチックやポリマーなどの樹脂素材からなる熱や光に晒されることによる変色が発生することがある。よって、反射部材12を配置することで、光の利用率の低下及び基材の変色を抑制できる。
【0050】
反射部材12としては、高反射フィラーを含有した樹脂材料や、白色のレジストコーティングなどが用いられ、これを塗布することにより設置する。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果が得られると共に以下の効果が得られる。すなわち、光を吸収する構成要素(基材41、銅箔42、放熱部50など)の表面に反射部材12を施して光の利用率を向上させる(点線矢印)ことで、光の利用率の低下を改善でき、また、基材41の変色を抑制できる。
【0052】
実施の形態4.
実施の形態4は、
図3に示した実施の形態2と実施の形態3の特徴(反射部材)を組み合わせた実施の形態に相当するものである。
【0053】
図5は、本発明の実施の形態4に係る照明ランプの主要部の構成を示す断面模式図である。以下、実施の形態4が実施の形態2と異なる部分を中心に説明する。
実施の形態4における照明ランプ1cの発光ユニット10cは、
図3に示した実施の形態2の照明ランプ1aにおいて銅箔42が形成された状態の基材41aのLED設置側の表面に、略全反射の特性を有する反射部材12cをLED30の発光天面を覆わないように更に配置した構成を有する。
図5には、基材41aの側面及び放熱部50aのLED設置側表面も反射部材12cで覆われた構成を示しているが、少なくとも基材41aのLED設置側表面が反射部材12cで覆われていればよい。
【0054】
反射部材12cは、実施の形態3と同様に高反射フィラーを含有した樹脂材料や、白色のレジストコーティングなどが用いられ、これを、塗布することにより設置する。
【0055】
このように構成された実施の形態4は、実施の形態2と同様の効果が得られると共に、以下の効果が得られる。すなわち、光を吸収する構成要素(基材41a、銅箔42、放熱部50aなど)の表面に反射部材12cを施して光の利用率を向上させる(点線矢印)ことで、光の利用率の低下を改善でき、また、基材41aの変色を抑制できる。
【0056】
実施の形態5.
上記各実施の形態では外管60を筒状に構成していたが、外管60は筒状に限定されるものではない。実施の形態5は、筒状以外の外管60の構成に関するものである。
【0057】
図6は、本発明の実施の形態5に係る照明ランプの主要部の構成を示す断面模式図である。以下、実施の形態5が
図1に示した実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0058】
実施の形態5における照明ランプ1dは、上記各実施の形態1〜4において筒状に構成していた外管60に代えて、外周面の一部を管軸方向に切り欠いて断面C字状に構成された外管60dを用いている。また、実施の形態5における発光ユニット10dは、外管60dにおいて切り欠かれた部分を補うように大型化した放熱部50dを有しており、放熱部50dが外管60dと接合されて全体として外型をここでは円形状に構成している。外管60dと放熱部50dとの接合方法は特に限定するものではなく任意の方法を採用できる。
【0059】
このように構成された実施の形態5は、上記各実施の形態1〜4の効果が得られると共に、放熱部50dを大きく構成できるため、放熱量を増加させることができる。
【0060】
実施の形態6.
実施の形態6は、
図6に示した実施の形態5の構成に更に反射部材を設けたものである。
【0061】
図7は、本発明の実施の形態6に係る照明ランプの主要部の構成を示す断面模式図である。以下、実施の形態6が
図6に示した実施の形態5と異なる部分を中心に説明する。
実施の形態6における照明ランプ1eの発光ユニット10eは、銅箔42が形成された状態の基材41のLED設置側の表面に、LED30の発光天面を覆わないように略全反射の特性を有する反射部材12を更に配置した構成を有する。
【0062】
このように構成された実施の形態6は、実施の形態5と同様の効果が得られると共に、以下の効果が得られる。すなわち、光を吸収する構成要素(基材41、銅箔42、放熱部50dなど)の表面に反射部材12を施して光の利用率を向上させる(点線矢印)ことで、光の利用率の低下を改善でき、また、基材41の変色を抑制できる。
【0063】
なお、上記各実施の形態では、直管形LEDランプを例示して説明しているが、本発明は直管形LEDランプに限られたものではなく、ミニクリプトン形、ハロゲン形、HID形を含む電球形LEDランプにも適用可能である。
【0064】
また、上記各実施の形態では、発光部20の発光素子としてLEDを用いた構成を説明したが、発光部20の発光素子はLEDに限られたものではなく、レーザーダイオード、有機ELなどを用いてもよいし、光を発するものであれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0065】
また、
図2のフローチャートに記載していないが、照明ランプの仕様(発光ユニットの仕様)に応じて、実施の形態3、4、6に示す反射部材を配置(塗布)する場合には、反射部材を配置する工程をステップS4の後に追加すればよい。
【0066】
実施の形態7.
実施の形態7は照明装置に関するものである。
【0067】
図8は、本発明の実施の形態7に係る照明装置の構成を示す斜視図である。
照明装置100は、本体101と、本体101に取り付けられ、照明ランプを保持する一対のソケット102と、一対のソケット102に取り付けられる照明ランプとを備えている。照明ランプには、上記実施の形態1〜6の照明ランプ1、1a、1b、1c、1d、1eを適用することができる。
【0068】
なお、上記実施の形態1〜7では、プリント基板がFPCであるとして説明したが、上述したようにプリント基板はFPCに限らず、リジッド基板でもよい。つまり、上記実施の形態1〜7で説明した技術を採用することにより、プリント基板がFPC及びリジッド基板のどちらであっても、直管形LEDランプの長尺化に伴う、反り、変形、接着後のめくれ、皺等の改善を図ることができる。