特許第6332941号(P6332941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6332941-美容健康用経口組成物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332941
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】美容健康用経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/899 20060101AFI20180521BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20180521BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180521BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61K36/899
   A61K36/48
   A61K35/742
   A61P43/00 105
   C12P1/04
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-228698(P2013-228698)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-86207(P2015-86207A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】591155884
【氏名又は名称】株式会社東洋発酵
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】岡田 利孝
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/129674(WO,A1)
【文献】 特開2012−167021(JP,A)
【文献】 特開2012−056890(JP,A)
【文献】 特開2013−014561(JP,A)
【文献】 特開平08−081381(JP,A)
【文献】 特開平08−104647(JP,A)
【文献】 特開2013−017445(JP,A)
【文献】 FRAGRANCE JOURNAL,2005年,Vol.33, No.9,p.75-80
【文献】 新 化粧品ハンドブック,2006年,p.733-735,「3.老化防止効果に関する評価法」
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 35/00−35/768
A23L 33/10
A61K 8/00−8/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠類及び大豆類を含む培地に納豆菌を接種する納豆菌接種工程と、
前記納豆菌接種工程の後、前記米糠類及び前記大豆類の発酵を行う発酵工程と、を備え
前記培地は、更に、炭素源、窒素源及びリン源を含有し、
前記培地における、前記大豆類、前記炭素源、前記窒素源及び前記リン源の含有量は、前記米糠類100質量部に対して、それぞれ、50〜200質量部であることを特徴とするヒアルロン酸産生促進剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの皮膚に対するコラーゲン又はヒアルロン酸の産生促進剤として好適な美容健康用経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚(肌)は、主として、表皮、真皮及び皮下組織に分けられる。特に、真皮を主に構成する線維芽細胞は、コラーゲン等のタンパク質と、ヒアルロン酸等のグリコサミノグリカンとを産生して、結合組織(細胞外マトリックス)を形成し、皮膚の恒常性維持に重要な役割を果たしている。
近年、加齢とともに増加するシワ、シミ等の皮膚の老化を防ぐアンチエイジングに対する研究が盛んに行われており、コラーゲン及びヒアルロン酸について、特に注目されている。
【0003】
コラーゲンは、生体内のタンパク質の約1/3を占めて、血管や皮膚、骨に多く含まれる。コラーゲンは、加齢とともに減少し、それが、血管の脆弱化、皮膚の弾力性・柔軟性の低下、角膜障害、関節障害等を招くことが知られている。特に皮膚に関しては、加齢とともに線維芽細胞の働きが低下して、それに伴い細胞がコラーゲン繊維を引っ張る力(コラーゲン収縮力)も弱まることにより、皮膚の弾力性がなくなり、タルミの原因になることが知られている。
一方、ヒアルロン酸は、細胞間隙への水分の保持、組織内にゼリー状のマトリックスを形成することによる細胞の保持、組織の潤滑性と柔軟性の保持、機械的障害等の外力への抵抗、細菌感染の防止等、多くの作用を有している。ヒアルロン酸もまた、加齢とともに減少し、例えば、皮膚においては、小ジワ、カサツキ等をもたらすことが知られている。
【0004】
コラーゲンやヒアルロン酸が配合された美容化粧品を用いると、皮膚表面の保湿効果が高まるものの、老化肌が本質的に改善されるものではなかった。そこで、体内からコラーゲン又はヒアルロン酸の減少による不具合を改善するための、経口用コラーゲン産生促進剤又は経口用ヒアルロン酸産生促進剤の検討がなされている。例えば、特許文献1には、アブシジン酸を含むコラーゲン又はヒアルロン酸産生促進剤が開示されている。特許文献2には、コロナリックアシッドからなるコラーゲン産生促進剤及びヒアルロン酸産生促進剤が開示されている。特許文献3には、デヒドロコスツスラクトンを含むコラーゲン又はヒアルロン酸産生促進剤が開示されている。また、特許文献4には、コスツノリドを含むコラーゲン又はヒアルロン酸産生促進剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−74725号公報
【特許文献2】特開2011−126814号公報
【特許文献3】特開2012−62287号公報
【特許文献4】特開2012−62288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、肌の乾燥、弾力の低下等、肌状態の不具合を解消するコラーゲン又はヒアルロン酸の産生促進剤として好適な美容健康用経口組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤(以下美容健康用経口組成物」ともいう。)の製造方法は、米糠類及び大豆類を含む培地に納豆菌を接種する納豆菌接種工程と、米糠類及び大豆類の発酵を行う発酵工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明におけるヒアルロン酸産生促進剤によれば、皮膚における線維芽細胞の活性化及び増殖促進効果によって、肌の保湿、弾力の向上等を得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[実施例]における皮膚に対する評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における美容健康用経口組成物は納豆菌接種工程と、発酵工程とを備える方法により得られた発酵組成物を含有する。発酵組成物の有効成分は、水溶性の固体であるので、本発明における美容健康用経口組成物は、有効成分を含む固体組成物であってよいし、有効成分等が、後述する液体の中に溶解又は分散された液状組成物であってもよい。
【0011】
納豆菌接種工程において用いられる培地は、米糠類及び大豆類を含み、納豆菌(枯草菌)を培養できるものであれば、液体培地及び固体培地のいずれでもよい。本発明においては、有効成分を効率よく回収できることから、米糠類と、大豆類と、水とを含む液体培地が好ましい。尚、培地は、更に、後述する炭素源、窒素源、リン源、ビタミン源等の他の栄養素を含むことが好ましく、液体培地の場合、消泡剤等を含むことが好ましい。
【0012】
米糠類としては、米糠、米胚芽、脱脂米胚芽、脱脂米糠、米糠エキス等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
また、大豆類としては、生大豆、乾燥大豆、脱脂大豆、キナ粉、ずんだ、大豆粉、大豆カス、大豆エキス、大豆タンパク質、大豆ペプチド、これらの加水分解物等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
培地に含まれる、米糠類及び大豆類の質量割合は、納豆菌を用いた発酵が効率よく進められ、コラーゲン又はヒアルロン酸の産生促進に好適な発酵組成物が得られることから、以下の通りである。即ち、米糠類を100質量部とした場合に、大豆類は、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部、更に好ましくは50〜200質量部であるが、本発明では50〜200質量部である
【0014】
炭素源としては、リボース、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、ラムノース等の単糖類;スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類;ラフィノース、マルトトリオース、シクロデキストリン等の三糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
炭素源を用いる際の使用量は、納豆菌を用いた発酵が効率よく進められることから、米糠類を100質量部とした場合に、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部、更に好ましくは50〜200質量部であるが、本発明では50〜200質量部である
【0016】
窒素源としては、アルギニン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、トリプトファン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン、セリン、アスパラギン酸、システイン、プロリン、チロシン等のアミノ酸;硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム等の硝酸塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩;尿素等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、アルギニン等のアミノ酸が好ましい。
【0017】
窒素源を用いる際の使用量は、納豆菌を用いた発酵が効率よく進められることから、米糠類を100質量部とした場合に、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部、更に好ましくは50〜200質量部であるが、本発明では50〜200質量部である
【0018】
リン源としては、フィチン酸又はその塩(以下、これらを合わせて「フィチン酸類」という。)、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸アンモニウム等のリン酸塩等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、フィチン酸類が好ましい。
【0019】
フィチン酸類は、人工的に得られたものであってよいし、天然物(植物等)に由来するものであってもよい。
フィチン酸の塩としては、非毒性塩が用いられ、好ましくは、金属、有機塩基、塩基性アミノ酸、有機エステル残基等との塩である。例えば、カリウム、ナトリウム、アルギニン、オルニチン、リジン、ヒスチジン、グルカミン、モノエタノールアミン等の塩を用いることができる。
【0020】
リン源を用いる際の使用量は、納豆菌を用いた発酵が効率よく進められることから、米糠類を100質量部とした場合に、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部、更に好ましくは50〜200質量部であるが、本発明では50〜200質量部である
【0021】
ビタミン類としては、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、イノシトール、ミオイノシトール、ビタミンK等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
ビタミン類を用いる際の使用量は、納豆菌を用いた発酵が効率よく進められることから、米糠類を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
【0023】
本発明において、液体培地を用いる場合、上記のように、好ましい媒体は水であり、米糠類の濃度が、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%となるように用いられる。
【0024】
本発明において、液体培地を用いる場合、発酵工程における発泡を抑制するための消泡剤を添加しておくことが好ましい。
【0025】
消泡剤としては、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、ダイズ油等の動植物油の油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;イソアミルステアリン酸、ジグリコールラウリン酸、ジステリルコハク酸、エチレングリコール、ジステアリン酸、ソルビタンモノラウリン酸、ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ブチルステアレート、スルホン化リチノール酸のエチル酢酸アルキルエステル、天然ワックス等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレングリコールとその誘導体、ポリオキシアルキレンアルコール一水和物、3−tert−アミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ−tert−アミルフェノキシエタノール、3−ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ−3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアマイド、アシレイトポリアミン、ジオクタデカノイルピペリジン等のアマイド系消泡剤;Al−ステアリン酸、Ca−ステアリン酸、K−オレイン酸、ウールオレインのCa塩等の金属石鹸系消泡剤;ジメチルポリシロキサン、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、シリコーン処理粉末、有機変性ポリシロキサン、フッ素シリコーン等のシリコーン系消泡剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、脂肪酸エステル系消泡剤が好ましい。
【0026】
液体培地の調製に、消泡剤を用いる場合には、消泡剤の濃度が、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%となるように用いられる。
【0027】
発酵工程において、納豆菌が接種された培地(納豆菌含有培地)のpHは、好ましくは6.5〜10、より好ましくは7.0〜9.0であるので、納豆菌接種工程において用いられる培地(納豆菌の接種前)は、予め、上記範囲のpHに調整されていることが好ましく、以下に例示される。
【0028】
pH調整剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の塩基、又は、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、二酸化炭素等の酸が用いられる。これらの成分は、そのまま、あるいは、水溶液として用いることができる。
【0029】
納豆菌接種工程において用いられる納豆菌は、バチルス属の細菌であれば、特に限定されず、市販品(高橋菌、成瀬菌、朝日菌、日東菌、目黒菌、宮城野菌等)であってよいし、ニトロソグアニジン等の化学物質、X線、紫外線等により人為的変異手段により得られ、菌学的性質が変異した変異株であってもよい。用いる納豆菌は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
【0030】
納豆菌は、特に限定されないが、培地中の菌数が、好ましくは10〜1010個/mL、より好ましくは10〜10個/mLとなるように接種される。
尚、納豆菌の接種に際しては、他の細菌又は酵母を併用してもよい。また、納豆菌を接種する場合には、予め、培地を滅菌しておくことが好ましい。滅菌方法は、特に限定されないが、例えば、90℃〜130℃で、10〜30分間の熱処理を行うことが好ましい。
【0031】
次に、納豆菌が接種された培地(以下、「納豆菌含有培地」という。)を、所定の条件下に供することにより、納豆菌の培養並びに米糠類及び大豆類の発酵が行われる(発酵工程)。この発酵工程における処理温度は、好ましくは30℃〜45℃、より好ましくは35℃〜40℃である。また、処理時間は、好ましくは6〜48時間、より好ましくは12〜30時間である。
【0032】
発酵工程において、納豆菌含有培地を撹拌しながら進めることが好ましい。そして、所定時間の処理に供した後、納豆菌含有培地のpHを6以下、好ましくは5以下、より好ましくは1〜4とすることにより、発酵工程を終了することができる。pHを調整する場合には、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、二酸化炭素等を用いることができる。
この発酵工程により得られた培養発酵物(発酵工程後の納豆菌含有培地)は、本発明に係る発酵組成物以外に、培地の調製に用いた原料又は原料変性物を含む。従って、培地が水を用いた液体培地である場合には、固液分離を行うことで、水に溶解した発酵組成物を回収することができる。また、培地が固体培地である場合には、培養発酵物から、発酵組成物を水により抽出し、同様にして発酵組成物を回収することができる。その後、必要に応じて、濃縮された発酵組成物(液体の発酵組成物)、又は、凍結乾燥、噴霧乾燥等を行って、水が留去された乾固物(固体の発酵組成物)を得ることができる。この乾固物は、実質的に、本発明における有効成分である。
【0033】
本発明において、上記有効成分の含有割合は、美容健康用経口組成物の性状により、適宜、選択されるが、固体組成物の場合、好ましくは0.0001〜100質量%、より好ましくは0.01〜50質量%、更に好ましくは0.1〜20質量%である。また、液体組成物の場合、好ましくは0.0001〜50質量%、より好ましくは0.01〜25質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0034】
本発明における美容健康用経口組成物は、更に、カンゾウ、ソウハクヒ、アロエ、スギナ、キンギンカ、オウバク、ガイヨウ、ゲンチアナ等からの植物抽出物や、レチノイン酸、I型コラーゲンペプチド、ビタミンC及びその誘導体等のコラーゲン合成促進物質、オクラ、ラベンダー、ゲットウ、ビルベリー等からの抽出物、水溶性β−1,3−グルカン誘導体、コラーゲンペプチド、プロテオグリカン、エラスチンペプチド等のヒアルロン酸合成促進物質、他の栄養成分、薬効成分、調味成分、匂い成分等を含有してもよい。
【0035】
本発明における美容健康用経口組成物が固体組成物である場合、粉体のままの態様、粉体をカプセルに封入された態様、又は、必要により、スターチ、α化でんぷん、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のバインダーとともに圧縮成形等に供された態様等とすることができる。
また、本発明により得られる美容健康用経口組成物が液体組成物である場合、液体のままの態様、液体をカプセルに封入された態様等とすることができる。尚、媒体としては、水、アルコール(エタノール等)等が挙げられる。
以上より、本発明における美容健康用経口組成物は、使用目的に応じた性状の美容健康用経口組成物とすることができ、特に、コラーゲン産生促進剤又はヒアルロン酸産生促進剤として好適であるが、本発明においてはヒアルロン酸産生促進剤である。
【0036】
コラーゲンは、真皮中において細胞外マトリックスの大半を占めており、肌のハリに大きく関与している。真皮まで到達するUV−Aを受光すると、線維芽細胞はコラゲナーゼであるMMP−1を産生し、コラーゲンの分解が進み、肌のシワ、タルミを引き起こす。また、加齢によってもMMP−1の産生量は増大する。真皮は絶えずMMP−1の影響を受けているものの、コラーゲン産生量が増大すれば、光老化や加齢によるシワ、タルミの形成が抑制されることから、美容健康用経口組成物をコラーゲン産生促進剤として用いた場合には、抗シワ剤として有用である。
【0037】
一方、ヒアルロン酸は、コラーゲンと同様に真皮の細胞外マトリックスの重要な構成成分であり、1グラム当たり、約6リットルもの水分を保持することが可能といわれている。その保水性の高さによって、コラーゲン、エラスチン等の線維成分の隙間を埋め、皮膚に柔軟性を与える役割を担っている。しかしながら、老化とともに、真皮に存在するヒアルロン酸の変性、紫外線の受光、炎症等によって活性酸素が発生し、この活性酸素がヒアルロン酸を切断してしまう。そして、皮膚の水分保持能が低下し、柔軟性を低下させてシワ、タルミを引き起こすと考えられていることから、本発明における美容健康用経口組成物をヒアルロン酸産生促進剤として用いた場合には、線維芽細胞によるヒアルロン酸合成を促進するため、抗シワ剤として有用である。
【0038】
また、本発明における美容健康用経口組成物の使用量(摂取量)は、1日あたり、上記有効成分換算で、好ましくは0.001〜20g、より好ましくは0.01〜5g、更に好ましくは0.05〜1gである。使用量が上記範囲内にある場合には、例えば、4週間以上継続した場合に、肌の保湿、弾力の向上等を得ることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。また、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準である。
【0040】
1.発酵組成物の調製
水約80部に、米糠エキス1.8部、大豆タンパク質1.8部、フィチン酸1.8部、グルコース1.8部、アルギニン1.8部及びグリセリン脂肪酸エステルからなる消泡剤0.1部を加えて十分に混合した後、水酸化カリウムを用いて、混合液のpHを8.0に調整した。そして、全量が100部となるように水を加えて、培地を調製した。
次に、オートクレーブを用いて、上記培地を、121℃で20分間滅菌した。その後、培地を37℃まで冷却し、これに納豆菌を植菌し、納豆菌の培養並びに米糠エキス及び大豆タンパク質の発酵を開始した。このとき、通気を行わなかった。納豆菌を植菌してから18時間後、培地100部に対して、3部の使用量としたクエン酸を発酵物に添加して、pHを3.4に調整した。
その後、オートクレーブを用いて、発酵物を、121℃で20分間滅菌した。そして、発酵物を、室温(約20℃)まで冷却し、トミー精工社製遠心分離機「GRX−250」(型式名)を用いて、遠心分離(回転速度:5000rpm、時間:15分)に供した。次いで、上澄み液を回収し、ろ過(#1のろ紙を使用)することにより、褐色液体の発酵組成物(固形分濃度:12%)を得た。そして、この褐色液体の発酵組成物に、バインダーとしてスターチ48部を加えて十分に撹拌した後、噴霧乾燥機を用いて、水を留去して、乾固物(固体の発酵組成物)60部を得た。
以下の実験例において、この乾固物を美容健康用経口組成物として用いた。
【0041】
2.細胞増殖試験
線維芽細胞の増殖に与える効果を確認するために、美容健康用経口組成物を用いて細胞増殖試験を行った。
液体窒素中に保存している正常ヒト線維芽細胞(NB1RGB)を解凍し、試験に供するに十分な細胞数となるまで5%FBS含有MEM培地にて培養を行った。
予備試験にて細胞に毒性を示さない濃度を確認し、本試験に適した最高濃度から0.5%FBS含有MEM培地で3倍の段階希釈を行い、異なる濃度(0.12mg/mL、0.37mg/mL、1.11mg/mL及び3.33mg/mL)の美容健康用経口組成物を含む4種の試験溶液を得た。
次に、試験を供するに十分な数となった細胞をトリプシン処理により回収し、その後、96ウェルマイクロプレート(以下、「プレート」という。)の各ウェルに播種し、24時間の前培養を行った。そして、プレートから培地を除去し、上記で調製した試験溶液に置き換え、更に培養を続けた。48時間後、MTTアッセイにより、細胞生存率を測定した。各試験溶液に含まれる美容健康用経口組成物の濃度に対する線維芽細胞増殖率を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から、美容健康用経口組成物の濃度を0.12〜3.33mg/mLとした試験溶液を用いると、美容健康用経口組成物を含まないcontrolよりも高い細胞生存率が得られ、線維芽細胞賦活作用を有することが明らかである。そして、線維芽細胞が活発に増殖することにより、細胞から作られるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等の産生も活発となり、老化防止効果の発現が期待される。
【0044】
3.ヒトI型コラーゲン産生試験
増殖培地(10%FBS添加DMEM培地)で1×10cells/mLに調整した正常ヒト線維芽細胞を、1ウェル(96ウェルマイクロプレート)当たり100μLを播種した。24時間後、上記増殖培地を、美容健康用経口組成物の濃度を、0.0032mg/mL及び0.0160mg/mLとした2種の試験培地(1%FBS添加DMEM培地)に交換して72時間培養した。次いで、培養上清をサンプリングし、コラーゲンの量を測定した。コラーゲン量の測定は、エーセル社製「ヒトコラーゲンタイプ1 ELISAキット」(商品名)を用いて行った。各試験培地に含まれる美容健康用経口組成物の濃度に対するヒトI型コラーゲンの産生量を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2から明らかなように、0.0032〜0.0160mg/mLといった低濃度、即ち、少量の美容健康用経口組成物により、controlに対して15%以上のコラーゲン産生率向上効果が得られた。
【0047】
4.ヒアルロン酸産生試験
増殖培地(10%FBS添加DMEM培地)で1×10cells/mLに調整した正常ヒト線維芽細胞を、1ウェル(96ウェルマイクロプレート)当たり100μLを播種した。24時間後、上記増殖培地を、美容健康用経口組成物の濃度を、0.016mg/mL及び0.080mg/mLとした2種の試験培地(1%FBS添加DMEM培地)に交換して72時間培養した。次いで、培養上清をサンプリングし、ヒアルロン酸の量を測定した。ヒアルロン酸量の測定は、R&Dシステムズ社製「Hyaluronan DuoSet」(商品名)を用いて行った。各試験培地に含まれる美容健康用経口組成物の濃度に対するヒアルロン酸の産生量を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
表3から明らかなように、0.016〜0.080mg/mLといった低濃度、即ち、少量の美容健康用経口組成物により、controlに対して6%以上のヒアルロン酸産生率向上効果が得られた。
【0050】
5.ヒト経口投与による肌状態の改善確認試験
以下の要領で、20〜50歳代の男女13名を被験者として、上記美容健康用経口組成物100mgを、毎日接種してもらい、4週間後の肌状態について調べた。
【0051】
実施例
上記美容健康用経口組成物100mgをハードカプセルに内包させ(3粒)、被験者は、就寝前に摂取した。摂取前、及び、4週間後における頬の水分及び弾力を調べた。尚、肌の診断は、ジャパンギャルズ社製「サイバースキンチェッカーPT」(商品名)を用いて行った。その結果を図1に示す。
【0052】
図1から明らかなように、水分及び弾力において改善効果が見られた。また、被験者の13名のうち、10名から、その効果が体感できたと回答があった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明における美容健康用経口組成物は、コラーゲン及びヒアルロン酸の産生促進能を有し、且つ、細胞毒性を有さずに安全に使用され得るので、粉体、錠剤、内包されたマイクロカプセル、飲料等の形態で、食品(健康食品)、サプリメント、医薬品等に有用である。
図1