(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332961
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ω−アミノ脂肪酸の製造
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20180521BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20180521BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20180521BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20180521BHJP
C12P 7/64 20060101ALI20180521BHJP
C12P 7/62 20060101ALI20180521BHJP
C12P 13/00 20060101ALI20180521BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20180521BHJP
【FI】
C12N1/21
C12N1/15ZNA
C12N1/19
C12N5/10
C12P7/64
C12P7/62
C12P13/00
!C12N15/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-265665(P2013-265665)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2014-121325(P2014-121325A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2016年12月7日
(31)【優先権主張番号】12199024.6
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン シャファー
(72)【発明者】
【氏名】ヤスミン ギーレン
(72)【発明者】
【氏名】ミリヤ ヴェセル
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ゲオルク ヘネマン
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ヘーガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハース
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリート ブリュームケ
【審査官】
伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−505854(JP,A)
【文献】
特表2012−506715(JP,A)
【文献】
特表2012−525856(JP,A)
【文献】
特表2012−531903(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/094425(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/011376(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/131420(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/008231(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/127409(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/135624(WO,A1)
【文献】
Molecular Plant, 2012.07, Vol.5, No.4, pp.914-928
【文献】
Biochemistry, 2011, Vol.50, pp.7375-7389
【文献】
Applied Microbiology and Biotechnology, 2011, Vol.90, pp.989-995
【文献】
Lipids, 2006, Vol.41, No.5, pp.499-506
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
C12N 15/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み換え型のα−ジオキシゲナーゼを過剰発現するか、または組み換え型の脂肪酸レダクターゼと該脂肪酸レダクターゼをホスホパンテテイニル化するホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼからなる組み合わせを過剰発現し、更にトランスアミナーゼを過剰発現する全細胞触媒であって、前記ホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼおよびトランスアミナーゼが組み換え型である前記全細胞触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の全細胞触媒であって、前記全細胞触媒が、更に、組み換え型であるアミノ酸デヒドロゲナーゼを発現する前記全細胞触媒。
【請求項3】
請求項1または2に記載の全細胞触媒であって、前記全細胞触媒が、更に、組み換え型であるアルカンヒドロキシラーゼを発現する前記全細胞触媒。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の全細胞触媒であって、前記全細胞触媒が、更に、組み換え型であるAlkLファミリーのポリペプチドを発現する前記全細胞触媒。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の全細胞触媒であって、前記全細胞触媒が、更に、組み換え型であるアルコールデヒドロゲナーゼを発現する前記全細胞触媒。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の全細胞触媒であって、β−酸化に関与する少なくとも1つの酵素の活性が、該全細胞触媒の野生型に対して低減されている前記全細胞触媒。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の全細胞触媒であって、BioHまたはその変異体の活性が、該全細胞触媒の野生型に対して低減されている前記全細胞触媒。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の全細胞触媒であって、FadLまたはその変異体の活性が、該全細胞触媒の野生型に対して高められている前記全細胞触媒。
【請求項9】
脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルのアミンへの転化方法であって、
a)脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルを、アルカンヒドロキシラーゼおよび/またはアルコールデヒドロゲナーゼとの接触によって酸化させて酸化生成物とする工程と、
b)前記酸化生成物と、ホスホパンテテイニル化された脂肪酸レダクターゼまたはα−ジオキシゲナーゼとを接触させてアルデヒドとする工程と、
c)前記アルデヒドとトランスアミナーゼとを接触させる工程と、
を含み、請求項1から8までのいずれか1項に記載の全細胞触媒を用いて行う前記方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、工程c)においてアミノ酸デヒドロゲナーゼが存在する前記方法。
【請求項11】
請求項9から10までのいずれか1項に記載の方法であって、前記の脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルが、式(I)
R1−A−COOR2 (I)
[式中、
R1は、−H、−CHO、−OHおよびCOOR3を含む群から選択され、
R2およびR3は、それぞれ互いに独立して、H、メチル、エチルおよびプロピルを含む群から選択されるが、但し、前記基R2およびR3の少なくとも1つは、Hであり、その際、Aは、少なくとも4個の炭素原子を有する非分枝鎖状の、分枝鎖状の、直鎖状の、環状の、置換もしくは非置換の炭化水素基を表す]の化合物である前記方法。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法であって、Aが式−(CH2)n−を有し、その式中、nが、少なくとも4である前記方法。
【請求項13】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の全細胞触媒または請求項9から12までのいずれか1項に記載の方法を、脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのエステルのアミノ化のために用いる使用。
【請求項14】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の全細胞触媒を水溶液で含み、かつ式(I)
R1−A−COOR2 (I)
[式中、
R1は、−H、−CHO、−OHおよびCOOR3を含む群から選択され、
R2およびR3は、それぞれ互いに独立して、H、メチル、エチルおよびプロピルを含む群から選択されるが、但し、前記基R2およびR3の少なくとも1つは、Hであり、その際、Aは、少なくとも4個の炭素原子を有する非分枝鎖状の、分枝鎖状の、直鎖状の、環状の、置換もしくは非置換の炭化水素基を表す]の脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルを含む反応混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み換えα−ジオキシゲナーゼまたは組み換え脂肪酸レダクターゼと該脂肪酸レダクターゼをホスホパンテテイニル化するホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼからなる組み合わせを発現し、更にトランスアミナーゼを発現する全細胞触媒(Ganzzellkatalysator)であって、前記ホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼおよび/またはトランスアミナーゼが好ましくは組み換え型である前記全細胞触媒、ならびに脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルのアミンへの転化方法であって、前記脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルを、アルカンヒドロキシラーゼおよび/またはアルコールデヒドロゲナーゼと接触させることによって酸化させて酸化生成物を得る工程と、前記酸化生成物とホスホパンテテイニル化された脂肪酸レダクターゼまたはα−ジオキシゲナーゼとを接触させてアルデヒドを得る工程と、前記アルデヒドとトランスアミナーゼとを接触させる工程とを含む前記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、アミド基が繰り返されることを特徴とする一つのポリマー種である。概念"ポリアミド"は、化学的に類似したタンパク質との差異において、通常は合成の市販の熱可塑性のプラスチックに該当する。ポリアミドは、慣習的に炭化水素のクラッキングに際して得られる第一級アミンまたは第二級アミンから誘導される。しかし、誘導体、より厳密にはアミノカルボン酸、ラクタムおよびジアミンは、ポリマー製造のために使用することもできる。更に、短鎖の気体状のアルカンは、再生原料から出発して生物工学的な方法で得ることができる出発物質として関心が持たれている。
【0003】
多くの商業的に高い需要のあるポリアミドは、ラクタムから出発して製造される。例えば、"ポリアミド6"は、ε−カプロラクタムの重合によって得られ、"ポリアミド12"は、ラウリンラクタムの重合によって得られる。更なる商業的に関心が持たれる生成物は、ラクタムのコポリマー、例えばε−カプロラクタムおよびラウリンラクタムのコポリマーを含む。
【0004】
アミンの慣用の化学工学的な生成は、化石原料の供給に依存しており、非効率であり、かつその際には多量の不所望な副生成物が、かなり多くの合成工程で80%まで生ずる。かかる方法のための一例は、ラウリンラクタムからの製造である。慣用には、その製造は、低い収率がもたらされるだけでなく、同時に高価なインフラストラクチャーの提供が必要となる多段階の方法で行われる。
【0005】
前記欠点に鑑みて、アミンを再生原料から出発して生体触媒を使用して得る方法を開発した。再生原料とは、特に、脂肪酸のための起源であって、ナタネ油、ヒゴタイ油(Kugeldisteloel)、パーム核油、ココナツ油、ヒマワリ核油および多くの生物学的起源、特に植物からの類似の天然産物の形で得られるものが該当する。
【0006】
特許文献1は、化学的に類似の生成物、より厳密にはω−アミノカルボン酸を、一連の好適な酵素活性を有し、カルボン酸を相応のω−アミノカルボン酸へと変換できる細胞を使用して製造するための生物工学的システムを記載している。前記方法は、酵素的に触媒された反応のカスケードを含み、特に脂肪酸の末端位炭素原子でのアルデヒドへの酸化と、引き続いてのトランスアミナーゼを使用しかつアミノ酸デヒドロゲナーゼにより再生できるアミンドナーとしてのアミノ酸を使用するアミノ化と含む。
【0007】
しかし、その際に使用される、シュードモナス・プチダGPO1(Pseudomonas putida GPO1)由来のAlkBGT−オキシダーゼ系の知られている欠点は、脂肪族アルカンを第一級アルコールへと選択的に酸化させることができないことにある。むしろ多くの酸化生成物が生じ、特により高度に酸化された生成物、例えば相応のアルデヒド、ケトンまたは相応のカルボン酸の割合は、反応時間が増えるにつれて高まる(非特許文献1)。これは所望のアミンの収率を相応して低下させる。
【0008】
比較的非選択的な酸化の問題点は、生ずる酸化生成物が構造的に非常に類似していることによって高まる。その結果として、それを所望の酸化生成物から効果的にかつ大きな収率損失なくして分離することが非常に困難となる。
【0009】
この方法の更なる欠点は、過剰酸化された副生成物、例えば出発物質として使用される脂肪酸のジカルボン酸、生成物を水性反応混合物から分離する分離するために特許文献2によれば使用できる疎水性溶剤および疎水性の液状カチオン交換体のリサイクルが、資源利用における効率化費用に向くことにある。
【0010】
この関連で、特許文献1に記載されるような、所定の酵素によってそれぞれ1つの反応が触媒される反応のカスケードを伴う生物工学的なシステムの複雑さは、反応条件の最適化を困難にすることが強調される。ここで、基本的に反応性の生成物としてのω−アミノ脂肪酸の場合に、それらが規定の臨界濃度以降で細胞内で生物の必須成分と反応し、従って毒性に作用する可能性がある。そうである場合に、生物の成長能力と合成能力は、その細胞の死まで害するため、開発者はその毒性を直接認識できないか、または所定の出発物質、中間生成物または生成物に割り当てることができない。どの生物が化学的に反応性の物質のどの濃度に耐えるのかは、同様に予見できない。
【0011】
また向上すべき生成物収率と低減すべき副生成物の発生に関しても、当業者は特許文献1に記載されるようなシステムにおいては限られた決定的な要因をルーチンに同定できない。生成物の収率が低すぎる場合には、それは、前記酵素の1つが低すぎる濃度で存在するため、該当する酵素がどれであるかが知られないこと、つまり、出発物質は、予定された時間枠でまたは競合する酵素による分解前に不十分な合成能力に基づき転化されないことにある場合がある。その一方で、酵素はたしかに明らかに細胞中でポリペプチドの形で存在するものの、この細胞において活性に必須のフォールディングを有さないか、もしくは今日まで知られていない活性にしかしながら必須の補因子を欠落していることも十分にありうる。同様に、既に述べたように、物質代謝産物が該細胞にとって毒性になりうるか、またはその物質代謝産物が分解されることがある。最後に、内因性の、すなわち天然に全細胞触媒として使用される細胞中に存在する酵素による干渉的相互作用が考慮されるべきである。
【0012】
従って、脂肪酸からのω−アミノ脂肪酸の製造方法であって、酵素により触媒される反応がより選択的に進行し、不所望な副生成物の形成が最小限となる前記製造方法に需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】PCT/EP 2008/067447
【特許文献2】PCT/EP 2011/071491
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】C. Grant, J. M. Woodley and F. Baganz (2011), Enzyme and Microbial Technology 48, 480-486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この背景から、本発明の基礎となる課題は、収率、炭素収支および/または窒素収支および/または純度に関してできるだけ効率的な、ω−アミノ脂肪酸の製造のための生物工学的な方法を提供することである。
【0016】
本発明の基礎となる更なる課題は、収率、炭素収支および/または窒素収支、使用される試薬の再利用可能性および/または生成物の純度に関してできるだけ効率的な、カルボン酸エステルの、アミノ化されたカルボン酸エステルへの転化のための生物工学的な方法を提供することである。この関連で、効率的な炭素収支および/または窒素収支とは、好ましくは、カルボン酸エステルの転化のために好適な基質の形で細胞へと供給される炭素および/または窒素のできるだけ高い割合が、例えば所望の生成物とは別の生成物へと転化される代わりに、所望の最終生成物中にも見出されることを表す。
【0017】
本発明の基礎となる更なる課題は、カルボン酸エステルの転化からの多相反応混合物の後処理可能性を改善すること、特に使用される疎水性溶剤および液状のカチオン交換体の後処理のための再利用可能性の点で、ならびにカルボン酸エステルの転化がその中で進行する水相と、有機溶剤および/または液状のカチオン交換体を有する有機相とを含む二相系の場合の相形成と相分離の点で改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの課題と更なる課題は、本願の対象によって、特にまた独立形式請求項に記載の対象によって解決される。その際、実施形態は、従属形式請求項に示される。
【0019】
本発明の基礎となる前記課題は、第一の一態様においては、組み換え型のα−ジオキシゲナーゼまたは組み換え型の脂肪酸レダクターゼと該脂肪酸レダクターゼをホスホパンテテイニル化するホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼからなる組み合わせを発現し、更にトランスアミナーゼを発現する全細胞触媒であって、前記ホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼおよび/またはトランスアミナーゼが好ましくは組み換え型である前記全細胞触媒によって解決される。
【0020】
前記第一の態様の第一の一実施形態においては、前記課題は、更に、組み換え型であることが好ましいアミノ酸デヒドロゲナーゼを発現する全細胞触媒によって解決される。
【0021】
前記の第一の実施形態の一実施形態でもある第二の一実施形態においては、前記課題は、更に、組み換え型であることが好ましいアルカンヒドロキシラーゼを発現する全細胞触媒によって解決される。
【0022】
前記第一のないし第二の実施形態の一実施形態でもある第三の一実施形態においては、前記課題は、更に、組み換え型であることが好ましいAlkL−ファミリーのポリペプチドを発現する全細胞触媒によって解決される。
【0023】
前記の第一のないし第三の実施形態の一実施形態でもある第四の一実施形態においては、前記課題は、更に、組み換え型であることが好ましいアルコールデヒドロゲナーゼを発現する全細胞触媒によって解決される。
【0024】
前記の第一のないし第四の実施形態の一実施形態でもある第五の一実施形態においては、前記課題は、β−酸化に関与する少なくとも1つの酵素の活性が、全細胞触媒の野生型に対して低減されている全細胞触媒によって解決される。
【0025】
前記の第一のないし第五の実施形態の一実施形態でもある第六の一実施形態においては、前記課題は、BioHまたはその変異体の活性が、全細胞触媒の野生型に対して低減されている全細胞触媒によって解決される。
【0026】
前記の第一のないし第六の実施形態の一実施形態でもある第七の一実施形態においては、前記課題は、FadLまたはその変異体の活性が、全細胞触媒の野生型に対して高められている全細胞触媒によって解決される。
【0027】
第二の一態様においては、本発明の基礎となる前記課題は、脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルのアミンへの転化方法であって、
a)脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルを、アルカンヒドロキシラーゼおよび/またはアルコールデヒドロゲナーゼとの接触によって酸化させて酸化生成物とする工程と、
b)前記酸化生成物と、ホスホパンテテイニル化された脂肪酸レダクターゼまたはα−ジオキシゲナーゼとを接触させてアルデヒドとする工程と、
c)前記アルデヒドとトランスアミナーゼとを接触させる工程と、
を含む前記方法によって解決される。
【0028】
第二の一態様においては、本発明の基礎となる前記課題は、工程c)でアミノ酸デヒドロゲナーゼが存在する方法によって解決される。
【0029】
前記の第二の態様の第一の一実施形態においては、前記課題は、ホスホパンテテイニル化された脂肪酸レダクターゼ、α−ジオキシゲナーゼ、トランスアミナーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼおよびアルカンヒドロキシラーゼを含む群からの少なくとも1つの酵素、好ましくは前記の群からの全ての使用される酵素を、本発明の第一の態様による全細胞触媒の形態で提供する方法によって解決される。
【0030】
前記の第一の実施形態の一実施形態でもある第二の一実施形態においては、前記課題は、前記の脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルが、式(I)
R
1−A−COOR
2 (I)
[式中、
R
1は、−H、−CHO、−OHおよびCOOR
3を含む群から選択され、
R
2およびR
3は、それぞれ互いに独立して、H、メチル、エチルおよびプロピルを含む群から選択されるが、但し、前記基R
2およびR
3の少なくとも1つは、Hであり、その際、Aは、少なくとも4個の炭素原子を有する非分枝鎖状の、分枝鎖状の、直鎖状の、環状の、置換もしくは非置換の炭化水素基を表す]の化合物である方法によって解決される。
【0031】
前記の第一のないし第二の実施形態の一実施形態でもある第三の一実施形態においては、前記課題は、Aが、式−(CH
2)
n−を有し、式中、nが少なくとも4であり、好ましくは少なくとも10である方法によって解決される。
【0032】
第三の一態様においては、本発明の基礎となる前記課題は、前記の第一の態様による全細胞触媒または前記の第二の態様による方法を、脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのエステルのアミノ化のために用いる使用によって解決される。
【0033】
第四の一態様においては、本発明の基礎となる前記課題は、前記の第一の態様による全細胞触媒を水溶液で含み、かつ式(I)
R
1−A−COOR
2 (I)
[式中、
R
1は、−H、−CHO、−OHおよびCOOR
3を含む群から選択され、
R
2およびR
3は、それぞれ互いに独立して、H、メチル、エチルおよびプロピルを含む群から選択されるが、但し、前記基R
2およびR
3の少なくとも1つは、Hであり、その際、Aは、少なくとも4個の炭素原子を有する非分枝鎖状の、分枝鎖状の、直鎖状の、環状の、置換もしくは非置換の炭化水素基を、好ましくは式−(CH
2)
n−を表し、式中、nが少なくとも4であり、特に好ましくは少なくとも10である]の脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルを含む反応混合物によって解決される。
【0034】
本発明は、機能的に同時発現される組み換え型の脂肪酸レダクターゼまたはα−ジオキシゲナーゼは、ω−アミノ脂肪酸の脂肪酸からの製造のために使用されかつ相応の酵素装備を有する全細胞触媒において驚くべきことにω−アミノ脂肪酸の収率を高めるという発明者の知見に基づくものである。
【0035】
更に、本発明は、機能的に同時発現される組み換え型の脂肪酸レダクターゼまたはα−ジオキシゲナーゼは、ω−アミノ脂肪酸の脂肪酸からの製造のために使用されかつ相応の酵素装備を有する全細胞触媒において驚くべきことに有害な副生成物の、特にジカルボン酸およびそのエステルの形の過剰酸化された脂肪酸の濃度を生じた生成物において低減するという発明者の知見に基づくものである。
【0036】
更に、本発明は、機能的に同時発現される組み換え型の脂肪酸レダクターゼまたはα−ジオキシゲナーゼは、ω−アミノ脂肪酸の脂肪酸からの製造のために使用されかつ相応の酵素装備を有する全細胞触媒において驚くべきことに全細胞触媒を含む発酵溶液からω−アミノ脂肪酸を除去するために使用されるオレイン酸などの液体カチオン交換体の純度および再利用可能性を改善するという発明者の知見に基づくものである。
【0037】
本発明は、脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルのアミンへの改善された転化方法であって、脂肪酸をその異なる酸化段階を介してアミンへと変換することを触媒する酵素の他に、また少なくとも1つの脂肪酸レダクターゼまたはα−ジオキシゲナーゼまたはその両方の酵素の組み合わせが存在する、好ましくは全細胞触媒が該方法の実施のために使用される場合に存在することを特徴とする前記方法に関する。好ましい一実施形態においては、本願で使用される"脂肪酸レダクターゼ"という概念とは、ω−カルボン酸(ジカルボン酸もしくはω−カルボキシ脂肪酸とも呼ばれる)を、ATPおよびNAD(P)Hを消費して相応のω−オキソ脂肪酸へ変換することを触媒する酵素を表す。先行技術においては、例えばWO/2010/135624においては、脂肪酸レダクターゼは、ω−ヒドロキシ脂肪酸の製造のために記載されているが、ω−アミノ脂肪酸の製造のための系の一部としては記載されていない。更に好ましい一実施形態においては、前記の脂肪酸レダクターゼは、アミノ酸配列YP_887275.1、ZP_11001941.1、ZP_06852401.1、NP_959974.1、YP_001070587.1、ZP_05217435.1、YP_882653.1、YP_639435.1、ZP_10800193.1、YP_006452763.1、YP_006730440.1、ZP_11196216.1、YP_005349252.1、ZP_05224908.1、YP_005338837.1、YP_006307000.1、YP_005343991.1、ZP_11001942.1、ZP_09979565.1、YP_005003162.1、YP_953393.1、YP_001850422.1、ZP_11011489.1、ZP_12689264.1、YP_905678.1、ZP_09976919.1、YP_004746059.1、NP_217106.1、YP_004525443.1、NP_337166.1、ZP_09685823.1、YP_978699.1、ZP_06437984.1、ZP_06514086.1、NP_856267.1、CAA19077.1、NP_301424.1、ZP_06522140.1、ZP_06518098.1、ZP_11008938.1、ZP_07432374.2、AAR91681.1、YP_006808747.1、YP_001851230.1、ZP_15327751.1、ZP_15455857.1、ZP_12874284.1、ZP_15332534.1、ZP_15512956.1、ZP_14244106.1、ZP_15470899.1、ZP_11439367.1、YP_001703694.1、ZP_15446742.1、YP_006808978.1、ZP_07964926.1、YP_006521379.1、WP_007769435.1、ZP_15512957.1、ZP_12874283.1、YP_005350955.1、ZP_14243341.1、YP_001705436.1、ZP_15329649.1、YP_006522325.1、YP_006732197.1、YP_003658971.1、ZP_05227804.1、YP_001703695.1、YP_006308707.1、ZP_15342047.1、YP_006521380.1、ZP_15327752.1、YP_005340557.1、ZP_11439578.1、ZP_15392943.1、ZP_15514789.1、ZP_12996178.1、ZP_09412214.1、ZP_06849686.1、YP_889972.1、YP_006570321.1、ZP_15375693.1、YP_006308219.1、YP_006521600.1、YP_005340029.1、YP_005350457.1、ZP_11439836.1、ZP_12994664.1、ZP_14240588.1、ZP_14236860.1、ZP_09410830.1、YP_006731697.1、YP_005264225.1、YP_001704097.1、ZP_15328186.1、ZP_09402885.1、ZP_12690463.1、AFO59871.1、ZP_07966879.1、YP_118225.1、YP_001828302.1、YP_006566873.1、YP_003660169.1、ZP_15337407.1、ZP_08240521.1、ZP_10456477.1、YP_001537947.1、YP_004016539.1、ZP_07664024.1、ZP_14244107.1、ZP_09794557.1、ZP_09274211.1、ZP_05224899.1、ZP_15484175.1、AAA17105.1、ZP_11437924.1、ZP_15446621.1、YP_003646340.1、ZP_15382134.1、ZP_14237669.1、ZP_09165547.1、YP_004019203.1、ZP_14240225.1、YP_001220863.1、CBA74242.1、ZP_12994240.1、EIE27140.1、ZP_15354547.1、ZP_15432557.1、ZP_15500132.1、ZP_15478632.1、ZP_06846978.1、AAA17108.1、ZP_15333767.1、ZP_05217205.1、AAD44234.1、YP_005348984.1、YP_006306749.1、ZP_05224611.1、YP_005343772.1、YP_006730188.1、YP_882425.1、ZP_10799956.1、ZP_05045132.1、NP_960176.1、ZP_12398880.1、ZP_11192735.1、ZP_11440091.1、ZP_05217203.1、ZP_06846979.1、ZP_10800936.1、ZP_06523596.1、YP_882421.1、YP_006306748.1、YP_006522017.1、ZP_15432556.1、ZP_15354095.1、ZP_05227781.1、ZP_09684639.1、YP_006730187.1、YP_005343770.1、YP_005338616.1、YP_005348983.1、ZP_15472813.1、ZP_15457007.1、ZP_15421152.1、ZP_15488933.1、ZP_14240030.1、YP_001704825.1、ZP_15328982.1、YP_005911512.1、ZP_09411638.1、ZP_12876400.1、ZP_12995435.1、ZP_07667680.1、YP_001281387.1、EIE21044.1、ZP_15375054.1、NP_334518.1、4DQV_A、ZP_06435375.1、YP_003030020.1、YP_976237.1、ZP_04926822.1、YP_004998149.1、YP_004743589.1、YP_005907921.1、NP_214615.1、YP_001286047.1、ZP_06515541.1、ZP_05139482.1、YP_888016.1、ZP_06452908.1、ZP_06519578.1、YP_004721827.1、CAJ77696.1、ZP_09680854.1、ZP_09686453.1、YP_884815.1、YP_884815.1、CAB55600.1、ZP_09081423.1、YP_006521568.1、ZP_11440626.1、ZP_15513309.1、ZP_09410778.1、ZP_15374248.1、ZP_15405954.1、YP_001704047.1、ZP_14236911.1、ZP_12873916.1、ZP_14242094.1、ZP_12994610.1、ZP_07664023.1、ZP_15446620.1、ZP_15484174.1、ZP_14240245.1、YP_005358845.1 und XP_002669159.1、特にYP_006731697.1、ZP_09839660.1、YP_001704097.1、YP_889972.1、ZP_05045132.1、NP_959974.1、ZP_10456477.1、YP_118225.1、YP_905678.1、YP_887275.1、ZP_11001941.1、WP_007769435.1およびYP_005349252.1ならびにその変異体を含む脂肪酸レダクターゼの群から選択される。
【0038】
脂肪酸レダクターゼは、その活性のために、ホスホパンテテイニル化を、すなわち該酵素のホスホパンテテイニル補因子の共有結合的な固定を必要とする酵素のグループである。従って、本発明により使用される脂肪酸レダクターゼはホスホパンテテイニル化されており、かつ脂肪酸レダクターゼを発現する全細胞触媒は、その装備の一部として内因性に発現された酵素を発現し、または組み換え型で、脂肪酸レダクターゼをホスホパンテテイニル化するホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼを発現する。好ましい一実施形態においては、本願で使用される"ホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼ"という概念とは、ホスホパンテテイニル基をホスホパンテテイニル−CoAから酵素へと、好ましくは脂肪酸レダクターゼへと移す酵素を表す。特に好ましい一実施形態においては、ホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼは、アミノ酸配列ABI83656.1、YP_006811024.1、YP_120266.1、YP_005265173.1、YP_004006671.1、ZP_08152482.1、ZP_11104141.1、ZP_14482198.1、YP_706581.1、ZP_10002626.1、ZP_09308410.1、YP_002783881.1、ZP_18276502.1、ZP_09271851.1、ZP_08204640.1、YP_002766085.1、ZP_09788717.1、ZP_09799863.1、ZP_10961877.1、YP_003273299.1、GAB86168.1、YP_006668875.1、ZP_08766535.1、ZP_09793386.1、ZP_09212827.1、ZP_09276344.1、ZP_09213870.1、ZP_09081490.1、ZP_10947586.1、YP_003658841.1、ZP_06852853.1、YP_953148.1、ZP_11011170.1、YP_639258.1、YP_886985.1、ZP_11194383.1、ZP_09681094.1、ZP_06455719.1、NP_337369.1、YP_004077819.1、NP_217310.1、YP_006452521.1、YP_005339056.1、ZP_05226335.1、ZP_07965127.1、ZP_07419314.2、NP_302077.1、YP_005003342.1、YP_005349465.1、ZP_10800435.1、ZP_06564430.1、YP_882860.1、YP_001135287.1、YP_001850220.1、ZP_05217634.1、YP_003646683.1、YP_004746246.1、ZP_15327906.1、ZP_09979035.1、YP_001703848.1、YP_906028.1、ZP_15395499.1、ZP_11438833.1、ZP_11005955.1、ZP_09410582.1、NP_961833.1、YP_001106197.1、ZP_14237113.1、YP_004085491.1、YP_003835595.1、ZP_12994399.1、YP_004523804.1、ZP_12690887.1、YP_003339468.1、ZP_06589331.1、YP_004801334.1、ZP_09974565.1、ZP_04608379.1、ZP_13037142.1、YP_712537.1、ZP_11236665.1、NP_630748.1、ZP_06527138.1、YP_003835167.1、CCH33620.1、ZP_10309401.1、ZP_08881396.1、YP_003102953.1、YP_003487252.1、ZP_08881565.1、YP_006263961.1、NP_822924.1、YP_004914569.1、ZP_09400366.1、AFV71333.1、ZP_07309518.1、ZP_09172171.1、ZP_06710898.1、CAN89630.1、ZP_06921116.1、ZP_08804003.1、ZP_19189663.1、ZP_10545589.1、YP_006248725.1、ZP_10455557.1、YP_004015869.1、ZP_08801530.1、ZP_10550999.1、YP_004492879.1、ZP_09958730.1、ZP_08286666.1、ZP_11212856.1、AAL15597.1、AAZ94407.1、ZP_19188802.1、AFF18625.1、ZP_06575404.1、AAK06801.1、ADC79635.1、YP_004080528.1、YP_004921314.1、ACY01405.1、YP_004584022.1、YP_003114157.1、YP_003203177.1、AFB69911.1、YP_006876460.1、ZP_08024798.1、YP_006269867.1、YP_006881814.1、CCK26150.1、ZP_07307765.1、ZP_07315112.1、YP_005466392.1、NP_824081.1、YP_003493882.1、ZP_06412387.1、ZP_10068239.1、ZP_08234258.1、YP_001822177.1、ZP_03979107.1、ZP_07979043.1、BAA22407.1、ZP_09402950.1、YP_003112617.1、NP_738483.1、YP_480609.1、EKX90208.1、BAE93744.1、BAB69186.1、ZP_04713061.1、YP_006881735.1、ZP_07274901.1、ZP_11379052.1、ZP_06581115.1、YP_006437406.1、ZP_12871839.1、NP_601186.1、ZP_08451808.1、YP_005057339.1、YP_005303909.1、ZP_07090824.1、YP_003783676.1、YP_004630011.1、ZP_06588772.1、AAX98203.1、AFK80329.1、ZP_08124665.1、ZP_03710365.1、AAB17877.1、ZP_07403633.1、ZP_11268660.1、ZP_07288841.1、ABV83217.1、ZP_16178576.1、AAG43513.1、ZP_09155938.1、YP_004605750.1、ZP_03918977.1、AAF71762.1、ZP_05007864.1、ZP_06836265.1、ZP_03934882.1、YP_001508477.1、ZP_06043756.1、ZP_05366306.1、YP_002835056.1、ZP_03933464.1、ZP_07469321.1、ZP_07713507.1、YP_005160553.1、NP_939820.1、AAU93794.1、ZP_14659796.1、ZP_14383679.1、YP_005058606.1、YP_001221073.1、ZP_08231568.1、YP_250920.1、ZP_11383249.1、YP_003916320.1、ZP_08681170.1、YP_001800249.1、YP_001157632.1、YP_166099.1、ZP_10088015.1、YP_004760065.1、ZP_07947675.1、YP_001603066.1、YP_003812683.1、YP_004403402.1、ZP_08292153.1、ZP_09471260.1、YP_004018108.1、ZP_05115352.1、AAD13565.1、ZP_09295321.1、YP_001535629.1、ZP_04607273.1、YP_006561753.1、ZP_00960958.1、YP_006571985.1、ZP_08862188.1、YP_002906426.1、CCK30433.1、ZP_13042493.1、ZP_09090153.1、YP_614397.1、ZP_11163860.1、YP_003983492.1、YP_004080668.1、ZP_09420475.1、ZP_05914565.1、ZP_01101149.1、ZP_14743088.1、YP_001239694.1、ZP_09127532.1、YP_003833873.1、ZP_08516197.1、ZP_10160483.1、ZP_01987188.1、ZP_01755304.1、ZP_08825027.1、ZP_05077116.1、YP_001444606.1、ZP_03392800.1、ZP_01057781.1、AFB69889.1、ZP_08815097.1およびAAO17175.1ならびにその変異体を含むホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼの群から選択される。特に好ましい一実施形態においては、それは、データベースコードABI83656.1を有するホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼまたはその変異体である。
【0039】
脂肪酸レダクターゼおよびホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼからの組み合わせの代わりにまたはそれに加えて、全細胞触媒は、α−ジオキシゲナーゼを有してもよい。好ましい一実施形態においては、本願で使用される"α−ジオキシゲナーゼ"という概念とは、脂肪酸を分子の酸素を消費してかつ二酸化炭素分子を開裂して末端のω−炭素原子で、出発物質として使用された脂肪酸に対して1炭素原子だけ短縮された、該末端のω−炭素原子に1つのアルデヒド基を有する脂肪酸へと変換することを触媒する酵素を表す。特に好ましい一実施形態においては、前記のα−ジオキシゲナーゼは、アミノ酸配列NP_001066718.1、EAY82977.1、BAH79993.1、ABG22011.1、BAJ90503.1、AFD04418.1、AFD04417.1、BAJ87736.1、AFW75180.1、ABG22012.1、XP_002311389.1、CAH05011.1、XP_002279884.1、CBI34957.3、AAG59584.1、NP_001234414.1、NP_001234410.1、XP_003553942.1、XP_002275161.1、XP_003553937.1、CBI34960.3、CAA07589.1、XP_003543402.1、XP_002517402.1、XP_002882184.1、NP_186791.1、AAK85133.1、CAN77070.1、XP_002529555.1、CAH64542.1、NP_001234061.1、XP_002281357.1、ADM21465.1、XP_002318527.1、NP_177509.1、CAN74266.1、XP_002888940.1、NP_001185393.1、XP_003631072.1、BAJ33800.1、XP_002517377.1、XP_003530944.1、BAJ34623.1、ABG22013.1、ABP02610.1、XP_001773135.1、XP_002960339.1、ABK95279.1、ABD73303.1、ABD73304.1、YP_001805721.1、ZP_08971815.1、ZP_08430366.1、YP_823013.1、ZP_05026427.1、ZP_11003953.1、YP_007064484.1、YP_007113008.1、YP_633369.1、ZP_18906570.1、ZP_09251410.1、ZP_10050808.1、ZP_01306662.1、YP_001516886.1、ZP_05042862.1、AAC49625.1、ZP_09648375.1、ZP_09792714.1、ZP_09788527.1、XP_001728273.1、AAC83355.1、YP_890542.1、ZP_11000891.1、XP_002605323.1、EGO58341.1、YP_006249145.1、YP_001507004.1、YP_001704637.1、ZP_12876141.1、ZP_11150830.1、ZP_14236257.1、ZP_09411385.1、ZP_14243118.1、EKD16664.1、ZP_15416799.1、ZP_15338016.1、ZP_10080295.1、ZP_11438929.1、ZP_12995210.1、ZP_10946648.1、YP_003409541.1、XP_001637870.1、YP_005451221.1、XP_001212758.1、ZP_07290489.1、ZP_05781329.1、ZP_19187748.1、ZP_06574534.1、XP_002605322.1、NP_822950.1、YP_006366425.1、EJP63377.1、EKD21217.1、XP_001795927.1、XP_003042615.1、ZP_06566152.1、EGU88116.1、EFY94417.1、XP_388327.1、EKJ68934.1、ZP_07290463.1、CCC10458.1、YP_001107201.1、 XP_003348248.1、T49753、CAD31840.1、XP_001229975.1、CBN77040.1、YP_004813753.1、XP_002513273.1、XP_001627136.1、AFG52858.1、AFG52857.1、AEW08450.1、NP_841291.1、YP_004512343.1、ACG75701.1およびZP_03500906.1ならびにその変異体を含むα−ジオキシゲナーゼの群から選択される。特に好ましい一実施形態においては、それは、データベースコードNP_001066718.1を有するα−ジオキシゲナーゼまたはその変異体である。
【0040】
α−ジオキシゲナーゼまたは脂肪酸レダクターゼとホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼからの組み合わせの他に、本発明による全細胞触媒は、必要に応じて、ω−オキソ脂肪酸をアミノ化するトランスアミナーゼを有する。好ましい一実施形態においては、本願で使用される概念"トランスアミナーゼ"とは、α−アミノ基を、ドナー分子から、好ましくはアミノ酸から、アクセプター分子へと、好ましくはα−ケトカルボン酸へと転移させることを触媒する酵素を表す。特に好ましい一実施形態においては、前記のトランスアミナーゼは、アミノ酸配列3HMU_A、AAD41041.1、AAK15486.1、ABE03917.1、ADR60699.1、ADR61066.1、ADR62525.1、AEL07495.1、CAZ86955.1、EFW82310.1、EFW87681.1、EGC99983.1、EGD03176.1、EGE58369.1、EGH06681.1、EGH08331.1、EGH24301.1、EGH32343.1、EGH46412.1、EGH55033.1、EGH62152.1、EGH67339.1、EGH70821.1、EGH71404.1、EGH78772.1、EGH85312.1、EGH97105.1、EGP57596.1、NP_102850.1、NP_106560.1、NP_248912.1、NP_248990.1、NP_354026.2、NP_421926.1、NP_637699.1、NP_642792.1、NP_744329.1、NP_744732.1、NP_747283.1、NP_795039.1、NP_901695.1、XP_002943905.1、YP_001021095.1、YP_001059677.1、YP_001061726.1、YP_001066961.1、YP_001074671.1、YP_001120907.1、YP_001140117.1、YP_001170616.1、YP_001185848.1、YP_001188121.1、YP_001233688.1、YP_001268866.1、YP_001270391.1、YP_001345703.1、YP_001412573.1、YP_001417624.1、YP_001526058.1、YP_001579295.1、YP_001581170.1、YP_001668026.1、YP_001669478.1、YP_001671460.1、YP_001685569.1、YP_001747156.1、YP_001749732.1、YP_001765463.1、YP_001766294.1、YP_001790770.1、YP_001808775.1、YP_001809596.1、YP_001859758.1、YP_001888405.1、YP_001903233.1、YP_001977571.1、YP_002229759.1、YP_002231363.1、YP_002280472.1、YP_002297678.1、YP_002543874.1、YP_002549011.1、YP_002796201.1、YP_002801960.1、YP_002875335.1、YP_002897523.1、YP_002912290.1、YP_002974935.1、YP_003060891.1、YP_003264235.1、YP_003552364.1、YP_003578319.1、YP_003591946.1、YP_003607814.1、YP_003641922.1、YP_003674025.1、YP_003692877.1、YP_003755112.1、YP_003896973.1、YP_003907026.1、YP_003912421.1、YP_004086766.1、YP_004142571.1、YP_004147141.1、YP_004228105.1、YP_004278247.1、YP_004305252.1、YP_004356916.1、YP_004361407.1、YP_004378186.1、YP_004379856.1、YP_004390782.1、YP_004472442.1、YP_004590892.1、YP_004612414.1、YP_004676537.1、YP_004693233.1、YP_004701580.1、YP_004701637.1、YP_004704442.1、YP_108931.1、YP_110490.1、YP_168667.1、YP_237931.1、YP_260624.1、YP_262985.1、YP_271307.1、YP_276987.1、YP_334171.1、YP_337172.1、YP_350660.1、YP_351134.1、YP_364386.1、YP_366340.1、YP_369710.1、YP_370582.1、YP_426342.1、YP_440141.1、YP_442361.1、YP_468848.1、YP_521636.1、YP_554363.1、YP_608454.1、YP_610700.1、YP_614980.1、YP_622254.1、YP_625753.1、YP_680590.1、YP_751687.1、YP_767071.1、YP_774090.1、YP_774932.1、YP_788372.1、YP_858562.1、YP_928515.1、YP_983084.1、YP_995622.1、ZP_00948889.1、ZP_00954344.1、ZP_00959736.1、ZP_00998881.1、ZP_01011725.1、ZP_01037109.1、ZP_01058030.1、ZP_01076707.1、ZP_01103959.1、ZP_01167926.1、ZP_01224713.1、ZP_01442907.1、ZP_01446892.1、ZP_01550953.1、ZP_01625518.1、ZP_01745731.1、ZP_01750280.1、ZP_01754305.1、ZP_01763880.1、ZP_01769626.1、ZP_01865961.1、ZP_01881393.1、ZP_01901558.1、ZP_02145337.1、ZP_02151268.1、ZP_02152332.1、ZP_02167267.1、ZP_02190082.1、ZP_02242934.1、ZP_02360937.1、ZP_02367056.1、ZP_02385477.1、ZP_02456487.1、ZP_02883670.1、ZP_03263915.1、ZP_03263990.1、ZP_03400081.1、ZP_03452573.1、ZP_03456092.1、ZP_03517291.1、ZP_03529055.1、ZP_03571515.1、ZP_03572809.1、ZP_03587785.1、ZP_03588560.1、ZP_03697266.1、ZP_03697962.1、ZP_04521092.1、ZP_04590693.1、ZP_04890914.1、ZP_04891982.1、ZP_04893793.1、ZP_04902131.1、ZP_04905327.1、ZP_04941068.1、ZP_04944536.1、ZP_04945255.1、ZP_04959332.1、ZP_04964181.1、ZP_05053721.1、ZP_05063588.1、ZP_05073059.1、ZP_05077806.1、ZP_05082750.1、ZP_05091128.1、ZP_05095488.1、ZP_05101701.1、ZP_05116783.1、ZP_05121836.1、ZP_05127756.1、ZP_05637806.1、ZP_05742087.1、ZP_05783548.1、ZP_05786246.1、ZP_05843149.1、ZP_05945960.1、ZP_06459045.1、ZP_06487195.1、ZP_06492453.1、ZP_06493162.1、ZP_06703644.1、ZP_06731146.1、ZP_06839371.1、ZP_07007312.1、ZP_07266194.1、ZP_07374050.1、ZP_07662787.1、ZP_07778196.1、ZP_07797983.1、ZP_08099459.1、ZP_08138203.1、ZP_08141719.1、ZP_08142973.1、ZP_08177102.1、ZP_08185821.1、ZP_08186468.1、ZP_08208888.1、ZP_08266590.1、ZP_08402041.1、ZP_08406891.1、ZP_08522175.1、ZP_08527488.1、ZP_08631252.1、ZP_08636687およびそれらの変異体を含むトランスアミナーゼの群から選択される。
【0041】
本発明により使用される脂肪酸レダクターゼ、好ましくはまた本発明により使用される他の酵素は、組み換え型の酵素である。好ましい一実施形態においては、本願で使用される概念"組み換え"とは、相応の酵素をコードする核酸分子が本来の細胞には存在せず、かつ/または遺伝子工学的手法を用いて製造されたことを意味する。好ましい一実施形態においては、相応のポリペプチドが組み換え核酸によってコードされている場合には、それは組み換えタンパク質と呼ばれる。好ましい一実施形態においては、本願で使用される組み換え細胞とは、少なくとも1つの組み換え核酸または組み換えポリペプチドを有する細胞を表す。例えば該方法は、Sambrook/Fritsch/Maniatis (1989): Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第二版に記載されている。組み換え酵素は、好ましくは、例えば当業者に公知のpETベクター系またはpGEXベクター系を使用して過剰発現される。
【0042】
生物の選択の点では、本発明により使用可能な全細胞触媒には、制限が課されないが、前記細胞は、培養可能であり、安定性であり、かつ任意に遺伝子工学的に導入できる改変、例えば酵素活性の減退のための方法、例えばノックアウトの方法が利用できるものに限る。このように、前記細胞は、同様に、原核細胞または真核細胞であってよい。真核細胞の場合には、単細胞の真核生物が特に好ましく、特に酵母、例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびピチア・パストリス(Pichia pastoris)が殊に好ましい。原核細胞の場合には、例えばマグネトコッカス(Magnetococcus)、マリプロフンドゥス(Mariprofundus)、アセトバクター(Acetobacter)、アセトバクテリウム(Acetobacterium)、アシジフィリウム(Acidiphilium)、アフィピア(Afipia)、アーレンシア(Ahrensia)、アスチッカコーリス(Asticcacaulis)、アウランチモナス(Aurantimonas)、アゾリゾビウム(Azorhizobium)、アゾスピリルム(Azospirillum)、バシラス(Bacillus)、バルトネラ(Bartonella)、トリボコルム(tribocorum)、ベイジェリンキア(Beijerinckia)、ブラジリゾビウム(Bradyrhizobium)、ブレブンジモナス(Brevundimonas)、スブビブリオイデス(subvibrioides)、ブルセラ(Brucella)、カウロバクター(Caulobacter)、ケラチボランス(Chelativorans)、シトレイセラ(Citreicella)、シトロミクロビウム(Citromicrobium)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ディノロセオバクター(Dinoroseobacter)、エリスロバクター(Erythrobacter)、フルビマリーナ(Fulvimarina)、グルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)、グラニュリバクター(Granulibacter)、ヒルシア(Hirschia)、ホエフレア(Hoeflea)、ハイフォミクロビウム(Hyphomicrobium)、ハイフォモナス(Hyphomonas)、ケトグロニシゲニウム(Ketogulonicigenium)、ラブレンジア(Labrenzia)、ロクタネラ(Loktanella)、マグネトスピリルム(Magnetospirillum)、マリカウリス(Maricaulis)、マリチミバクター(Maritimibacter)、メソリゾビウム(Mesorhizobium)、メチロバクテリウム(Methylobacterium)、メチロシスティス(Methylocystis)、メチロシヌス(Methylosinus)、ニトロバクター(Nitrobacter)、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)、オセアニブルブス(Oceanibulbus)、オセアニカウリス(Oceanicaulis)、オセアニコラ(Oceanicola)、オクロバクトルム(Ochrobactrum)、オクタデカバクター(Octadecabacter)、オリゴトロファ(Oligotropha)、パラコッカス(Paracoccus)、パルビバキュルム(Parvibaculum)、パルブラルキュラ(Parvularcula)、ペラギバカ(Pelagibaca)、ファエオバクター(Phaeobacter)、フェニロバクテリウム(Phenylobacterium)、ポリモルフム(Polymorphum)、シュードビブリオ(Pseudovibrio)、ロドバクター(Rhodobacter)、ロドミクロビウム(Rhodomicrobium)、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)、ロドスピリルム(Rhodospirillum)、ロセイビウム(Roseibium)、ロセオバクター(Roseobacter)、ロセオモナス(Roseomonas)、ロセオバリウス(Roseovarius)、ルエゲリア(Ruegeria)、サジツーラ(Sagittula)、シリシバクター(Silicibacter)、スフィンゴビウム(Sphingobium)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、スフィンゴフィキシス(Sphingopyxis)、スタルケヤ(Starkeya)、スルフィトバクター(Sulfitobacter)、タラシオビウム(Thalassiobium)、キサントバクター(Xanthobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、リゾビウム(Rhizobium)、シノリゾビウム(Sinorhizobium)、アナプラズマ(Anaplasma)、エールリキア(Ehrlichia)、ネオリケッチア(Neorickettsia)、オリエンティア(Orientia)、リケッチア(Rickettsia)、ボルバキア(Wolbachia)、ボルデテラ(Bordetella)、ブルクホルデリア(Burkholderia)、クプリアビダス(Cupriavidus)、タイワネンシス(Taiwanensis)、ラウトロピア(Lautropia)、リムノバクター(Limnobacter)、ポリヌクレオバクター(Polynucleobacter)、ラルストニア(Ralstonia)、クロモバクテリウム(Chromobacterium)、エイケネラ(Eikenella)、コロデンス(corrodens)、バスフィア(Basfia)、キンゲラ(Kingella)、ラリバクター(Laribacter)、ルチエラ(Lutiella)、ネイセリア(Neisseria)、シモンシエラ(Simonsiella)、アクロモバクター(Achromobacter)、アシドボラックス(Acidovorax)、アリシクリフィルス(Alicycliphilus)、アロマトレウム(Aromatoleum)、アゾアルクス(Azoarcus)、コマモナス(Comamonas)、デクロロモナス(Dechloromonas)、デルフチア(Delftia)、ガリオネラ(Gallionella)、ヘルバスピリルム(Herbaspirillum)、ヘルミニイモナス(Herminiimonas)、ヒレモネラ(Hylemonella)、ヤンチノバクテリウム(Janthinobacterium)、レプトトリックス(Leptothrix)、メチリビウム(Methylibium)、メチロバシラス(Methylobacillus)、メチロフィラレス(Methylophilales)、メチロベルサチリス(Methyloversatilis)、メチロボルス(Methylovorus)、ニトロソモナス(Nitrosomonas)、ニトロソスピラ(Nitrosospira)、オキサロバクター(Oxalobacter)、パラステレラ(Parasutterella)、ポラロモナス(Polaromonas)、ポラロモナス(Polaromonas)、プシリモナス(Pusillimonas)、ロドフェラックス(Rhodoferax)、ルブリビバックス(Rubrivivax)、シデロキシダンス(Sideroxydans)、ステレラ(Sutterella)、ワドスウォルテンシス(wadsworthensis)、テイロレラ(Taylorella)、タウエラ(Thauera)、チオバシラス(Thiobacillus)、チオモナス(Thiomonas)、バリオボラックス(Variovorax)、ベルミネフロバクター(Verminephrobacter)、アナエロミクソバクター(Anaeromyxobacter)、ブデロビブリオ(Bdellovibrio)、バクテリオボルス(bacteriovorus)、ビロフィラ(Bilophila)、デスルファルクルス(Desulfarculus)、デスルファチバシルム(Desulfatibacillum)、デスルフォバッカ(Desulfobacca)、デスルフォバクテリウム(Desulfobacterium)、デスルフォブルブス(Desulfobulbus)、デスルフォコッカス(Desulfococcus)、デスルフォハロビウム(Desulfohalobium)、デスルフィトバクテリウム(Desulfitobacterium)、デスルフォミクロビウム(Desulfomicrobium)、デスルフォナトロノスピラ(Desulfonatronospira)、デスルフォタレア(Desulfotalea)、デスルフォビブリオ(Desulfovibrio)、デスルフロモナス(Desulfuromonas)、ゲオバクター(Geobacter)、ハリアンギウム(Haliangium)、ヒッペア(Hippea)、ローソニア(Lawsonia)、ミクソコッカス(Myxococcus)、ペロバクター(Pelobacter)、プレシオシスティス(Plesiocystis)、ソランギウム(Sorangium)、スティグマテラ(Stigmatella)、シントロフォバクター(Syntrophobacter)、シントロファス(Syntrophus)、アルコバクター(Arcobacter)、カミニバクター(Caminibacter)、カンピロバクター(Campylobacter)、ヘリコバクター(Helicobacter)、ニトラチフラクター(Nitratifractor)、ニトラチルプター(Nitratiruptor)、スルフリクルブム(Sulfuricurvum)、スルフリモナス(Sulfurimonas)、スルフロスピリルム(Sulfurospirillum)、スルフロブム(Sulfurovum)、ウォリネラ(Wolinella)、ブフネラ(Buchnera)、ブロクマニア(Blochmannia)、ハミルトネラ(Hamiltonella)、レギエラ(Regiella)、リエシア(Riesia)、シトロバクター(Citrobacter)、クロノバクター(Cronobacter)、ディケヤ(Dickeya)、エドワードシエラ(Edwardsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、エシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、パントエア(Pantoea)、ペクトバクテリウム(Pectobacterium)、プロテウス(Proteus)、プロビデンシア(Providencia)、ラーネラ(Rahnella)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、シゲラ(Shigella)、ソダリス(Sodalis)、ウィグレスウォルチア(Wigglesworthia)、グロシナ(Glossina)、キセノラブダス(Xenorhabdus)、エルシニア(Yersinia)、アシジチオバシラス(Acidithiobacillus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、アエロモナス(Aeromonas)、アルカニボラックス(Alcanivorax)、アルカリリムニコラ(Alkalilimnicola)、アロクロマチウム(Allochromatium)、アルテロモナダレス(Alteromonadales)、アルテロモナス(Alteromonas)、バウマニア(Baumannia)、ベギアトア(Beggiatoa)、ベルマネラ(Bermanella)、カルソネラ(Carsonella)、ルチア(Ruthia)、ベシコミソシウス(Vesicomyosocius)、カルジオバクテリウム(Cardiobacterium)、クロモハロバクター(Chromohalobacter)、コルウェリア(Colwellia)、コングレギバクター(Congregibacter)、コキシエラ(Coxiella)、ジケロバクター(Dichelobacter)、エンドリフチア(Endoriftia)、エンヒドロバクター(Enhydrobacter)、フェリモナス(Ferrimonas)、フランシセラ(Francisella)、グラシエコラ(Glaciecola)、ハヘラ(Hahella)、ハロモナス(Halomonas)、ハロロドスピラ(Halorhodospira)、ハロチオバシラス(Halothiobacillus)、イディオマリーナ(Idiomarina)、カンギエラ(Kangiella)、レジオネラ(Legionella)、マリノバクター(Marinobacter)、マリノモナス(Marinomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、メチロコッカス(Methylococcus)、メチロミクロビウム(Methylomicrobium)、メチロファガ(Methylophaga)、モラキセラ(Moraxella)、モリテラ(Moritella)、ネプツニイバクター(Neptuniibacter)、ニトロコッカス(Nitrococcus)、シュードアルテロモナス(Pseudoalteromonas)、サイクロバクター(Psychrobacter)、サイクロモナス(Psychromonas)、レイネケア(Reinekea)、リケッチエラ(Rickettsiella)、サッカロファグス(Saccharophagus)、シェワネラ(Shewanella)、スクシナチモナス(Succinatimonas)、テレジニバクター(Teredinibacter)、チオアルカリミクロビウム(Thioalkalimicrobium)、チオアルカリビブリオ(Thioalkalivibrio)、チオミクロスピラ(Thiomicrospira)、トルモナス(Tolumonas)、ビブリオナレス(Vibrionales)、アクチノバシラス(Actinobacillus)、アグレガチバクター(Aggregatibacter)、ガリバクテリウム(Gallibacterium)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ヒストフィルス(Histophilus)、マンハイミア(Mannheimia)、パスツレラ(Pasteurella)、アゾトバクター(Azotobacter)、セルビブリオ(Cellvibrio)、シュードモナス(Pseudomonas)、アリイビブリオ(Aliivibrio)、グリモンチア(Grimontia)、フォトバクテリウム(Photobacterium)、フォトバクテリウム(Photobacterium)、ビブリオ(Vibrio)、シュードキサントモナス(Pseudoxanthomonas)、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)、キサントモナス(Xanthomonas)、キシレラ(Xylella)、ボレリア(Borrelia)、ブラキスピラ(Brachyspira)、レプトスピラ(Leptospira)、スピロヘータ(Spirochaeta)、トレポネマ(Treponema)、ホジキニア(Hodgkinia)、プニセイスピリルム(Puniceispirillum)、リベリバクター(Liberibacter)、ペラギバクター(Pelagibacter)、
オデッセラ(Odyssella)、アキュムリバクター(Accumulibacter)、
特にB.サチリス(B. subtilis)、B.メガテリウム(B. megaterium)、
C.グルタミクム(C. glutamicum)、E.コリ(E. coli)、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、アシネトバクター・エスピー(Acinetobacter sp.)、
ブルクホルデリア・エスピー(Burkholderia sp.)、ブルクホルデリア・タイランデンシス(Burkholderia thailandensis)、藍藻(Cyanobakterien)、クレブシエラ・エスピー(Klebsiella sp.)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、
サルモネラ・エスピー(Salmonella sp.)、リゾビウム・エスピー(Rhizobium sp.)およびリゾビウム・メリロチ(Rhizobium meliloti)を含む群から選択される細菌であってよい。特に好ましい一実施形態においては、腸内細菌、最も好ましくはエシェリキア・コリである。
【0043】
本発明による全細胞触媒が、脂肪酸レダクターゼ、ホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼおよびトランスアミナーゼの他に、トランスアミナーゼによってω−オキソ脂肪酸のアミノ化に際して消費されるアラニンを無機の含窒分子から再生するためにアラニンデヒドロゲナーゼをも有することが好ましい。好ましい一実施形態においては、本願で使用される概念"アラニンデヒドロゲナーゼ"とは、L−アラニンを水とNAD
+とを消費してピルベート、アンモニアおよびNADHに変換することとその逆反応を触媒する酵素を表す。特に好ましい一実施形態においては、バシラス・サチリス由来(Bacillus subtilis)(データベースコードL20916)の、リゾビウム・レグミノサルム由来(Rhizobium leguminosarum)(データベースコードCP001622)の、ビブリオ・プロテオリティクス由来(Vibrio proteolyticus)(データベースコードAF070716)の、マイコバクテリウム・ツベルクロシス由来(Mycobacterium tuberculosis)(データベースコードX63069)の、エンテロバクター・アエロゲネス由来(Enterobacter aerogenes)(データベースコードAB013821)のアラニンデヒドロゲナーゼ、EGR93259.1、YP_003654745.1、YP_003651439.1、YP_003637111.1、YP_003631815.1、YP_001327051.1、YP_001262560.1、YP_886996.1、YP_882850.1、YP_704410.1、YP_703508.1、ZP_08624689.1、YP_001230376.1、P17557.1、P17556.1、CCB94892.1、CCB73698.1、YP_001168635.1、YP_004668736.1、YP_004569425.1、YP_003513168.1、YP_004561169.1、ZP_08554945.1、YP_400777.1、ZP_08311476.1、ZP_08310170.1、ZP_08267322.1、ZP_08263846.1、ZP_07898723.1、YP_149301.1、YP_148605.1、YP_004340432.1、EFT09946.1、EFS80513.1、EFS51332.1、EFS42459.1、YP_003060895.1、YP_003059033.1、ZP_03305373.1、YP_847214.1、YP_004095847.1、YP_003338282.1、YP_003337256.1、YP_355846.1、YP_253131.1、ZP_08197563.1、ZP_08196283.1、ADW06447.1、YP_734091.1、NP_372233.1、NP_102173.1、ZP_08170259.1、EGD36706.1、EGD32748.1、ZP_08155540.1、YP_004142849.1、YP_002417649.1、YP_001301040.1、YP_002992892.1、YP_081348.1、YP_080482.1、YP_002476349.1、ZP_08115025.1、ZP_08114403.1、YP_003552869.1、YP_002358112.1、YP_575010.1、YP_477594.1、YP_474564.1、YP_130399.1、YP_129373.1、YP_123314.1、NP_810467.1、NP_646469.1、NP_626044.1、NP_391071.1、ZP_08086822.1、ZP_08084776.1、ZP_08083119.1、ZP_08020768.1、ZP_08013590.1、ZP_08011832.1、YP_003783744.1、YP_002781576.1、YP_002780533.1、ZP_02195873.1、NP_797482.1、ZP_07645051.1、ZP_07643260.1、ZP_06611917.1、AAT40119.1、ZP_07864946.1、YP_004068409.1、YP_002796203.1、YP_002774420.1、YP_003600348.1、YP_003599946.1、YP_003565624.1、YP_003565223.1、YP_335198.1、YP_423850.1、YP_155059.1、ZP_07843538.1、ZP_07841226.1、ZP_06928932.1、ZP_05692073.1、ZP_05687006.1、ZP_04867480.1、YP_775531.1、CBE70214.1、ZP_07721182.1、ZP_04302850.1、ZP_04298961.1、ZP_04287684.1、ZP_04277177.1、ZP_04248389.1、ZP_04235899.1、ZP_02159718.1、ZP_02152178.1、YP_003974610.1、YP_003546595.1、YP_002317127.1、ZP_07313778.1、ZP_07302778.1、ZP_07298850.1、CBK69442.1、YP_003413835.1、YP_003595089.1、ZP_06807811.1、YP_003582455.1、YP_003464731.1、YP_003496397.1、YP_003421918.1、CBL07274.1、CBK64956.1、YP_003508515.1、AAL87460.1、AAC23579.1、AAC23578.1、AAC23577.1、ACU78652.1、YP_003471439.1、YP_003452777.1、ZP_06384971.1、ACY25368.1、ABC26869.1、AAP44334.1、EEZ80018.1、ZP_05110458.1、1PJB_A、ZP_04717201.1、ZP_04689103.1、CAO90307.1、CAM75354.1、CAA44791.1、BAA77513.1、EGR96638.1、EGL90046.1、YP_004510847.1、ZP_08450330.1、YP_003387804.1、YP_003058152.1、EFS74272.1、EFS67128.1、ZP_06844564.1、YP_826658.1、YP_001195249.1、YP_003095978.1、YP_469292.1、YP_004442054.1、YP_004461174.1、YP_004055616.1、YP_003576656.1、YP_003094537.1、YP_001295973.1、AEE71143.1、YP_004447480.1、YP_003761844.1、YP_040853.1、YP_003154888.1、YP_003142045.1、YP_002280953.1、NP_371963.1、NP_422368.1、EGC98966.1、EGC76398.1、YP_004263661.1、YP_004252039.1、YP_679036.1、YP_499973.1、ZP_08054972.1、ZP_08053009.1、ZP_04067276.1、ZP_03968868.1、ZP_03963857.1、ZP_03933079.1、ZP_03497046.1、ZP_06668924.1、ZP_06667106.1、ZP_06324464.1、ZP_06196777.1、ZP_05114159.1、ZP_05083968.1、ZP_05070370.1、ZP_05030022.1、ZP_04673064.1、ZP_03517011.1、ZP_03505783.1、XP_001310698.1、ABK27691.1およびCAB59281.2ならびにその変異体を含むアラニンデヒドロゲナーゼの群から選択される。アラニンデヒドロゲナーゼによって触媒される反応については、全細胞触媒として考慮されるあらゆる細胞の一次代謝の一部として形成されるピルベートの存在だけでなく、アンモニウムの存在も必要とする。後者のアンモニウムは、通常は、無機の窒素塩の形で、例えばアンモニウム塩、硝酸塩などの形で提供される。好ましくは、水性反応媒体にアンモニウム塩が、例えば塩化アンモニウムが添加される。
【0044】
更に、本発明による全細胞触媒が、アルカンヒドロキシラーゼと、任意にアルカンヒドロキシラーゼの活性に必須の更なる酵素を発現することが好ましく、それは、特にω−アミノ脂肪酸の製造のための基質として、アルデヒドの酸化段階よりも低い酸化段階を末端のω−炭素原子で有する脂肪酸が使用される場合に好ましい。アルカンヒドロキシラーゼおよび/または追加で発現されるアルコールデヒドロゲナーゼは、前記の末端の炭素原子をその際アルデヒド基にまで酸化させ、それは引き続きトランスアミナーゼによってアミノ化されうる。好ましい一実施形態においては、本願で使用される"アルカンヒドロキシラーゼ"という概念とは、少なくとも6個の、好ましくは12個の炭素基を含む非置換の直鎖状のアルキル基のヒドロキシル化を触媒する酵素を表す。
【0045】
アルカンヒドロキシラーゼとしては、本発明によれば、多岐にわたる酸化系が適しており、それは、例えばとりわけPCT/EP 2008/067447に記載されている。好ましい一実施形態においては、アルカンヒドロキシラーゼは、CYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼである。好ましい一実施形態においては、概念"CYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ"とは、細胞質ゾル性オキシダーゼであって、更にフェレドキシンとフェレドキシン−レダクターゼを含む3成分系の一部であり、アルカン結合部位とアルカンのヒドロキシル化能力とを有するオキシダーゼを表す。特に好ましい一実施形態においては、アルカニボラックス・ボルクメンシスSK2(Alcanivorax borkumensis SK2)由来のCYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ(データベースコードYP_691921)に対して少なくとも80%の、好ましくは90%の、最も好ましくは95%もしくは99%の配列同一性を有する酵素であるか、またはアルカニボラックス・ボルクメンシスSK2由来のCYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ(データベースコードYP_691921)に対して少なくとも80%の、好ましくは90%の、最も好ましくは95%もしくは99%の配列同一性を有し、更にアルカンヒドロキシラーゼ活性を有する酵素である。上述のデータベースコードは、その際、本願で通して、NCBI(国立生物工学情報センター、米国ベセズダ)データベースに対するものであり、より正確に言うと2012年11月21日にオンラインで取得できるバージョンに対するものである。好ましい一実施形態においては、概念"CYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ"とは、非膜結合型のオキシダーゼであって、アルカン、少なくとも5個の、好ましくは12個の炭素基を含む非置換の直鎖状のアルキル基または一回ヒドロキシル化されたアルカンのための結合部位とそのポリペプチド鎖が、モチーフLL(I/L)(V/I)GGNDTTRNを含む前記オキシダーゼを表す。好ましい一実施形態においては、本願で使用される"CYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ"は、アルカニボラックス・ボルクメンシスSK2由来のCYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ(データベースコードYP_691921)または好ましくはアルカンヒドロキシラーゼ活性を有する変異体である。
【0046】
CYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼに還元剤、好ましくはNADHから電子を最適に提供するためには、前記細胞が、モノオキシゲナーゼを、それと機能的に相互作用するフェレドキシン−レダクターゼおよびそれと機能的に相互作用するフェレドキシンと一緒に発現することが好ましい。それは、別個のポリペプチドであるか、または全細胞触媒が使用される場合には、同時発現されたポリペプチドであるか、またはN末端もしくはC末端でCYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼと融合されたポリペプチドである。フェレドキシン−レダクターゼまたはフェレドキシンが所定のCYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼと互いに機能的に相互作用するかどうかを、当業者は、該還元剤がアルカン基質と前記3種のポリペプチドの存在下で、前記3種の少なくとも1種を欠いている場合よりも効率的に酸化されるかどうかによって容易に確認できる。その一方で、Scheps, D., Malca, H., Hoffmann, B., Nestl, B. M, und Hauer, B. (2011) Org. Biomol. Chem., 9, 6727によって記載された酵素試験を使用でき、その試験は、機能的に相互作用するポリペプチドの場合に反応速度の明らかな向上を示す。特に好ましい一実施形態においては、CYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ、フェレドキシンおよびフェレドキシン−レダクターゼは、同じ生物由来である。特に好ましい一実施形態においては、それは、アルカニボラックス・ボルクメンシスSK2由来のフェレドキシン−レダクターゼ(データベースコードYP_691923)またはその変異体、アルカニボラックス・ボルクメンシスSK2由来のフェレドキシン(データベースコードYP_691920)またはその変異体およびアルカニボラックス・ボルクメンシスSK2由来のCYP153−ファミリーのシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ(データベースコードYP_691921)またはその変異体である。
【0047】
更なる好ましい一実施形態においては、前記のアルカンヒドロキシラーゼは、AlkB−モノオキシゲナーゼである。AlkBは、まずシュードモナス・プチダGpo1(Pseudomonas putida Gpo1)由来のAlkBGT系から知られているオキシドレダクターゼであって、2種の更なるポリペプチドAlkGおよびAlkTに依存するオキシドレダクターゼである。AlkTは、FAD依存性ルブレドキシン−レダクターゼとして特徴付けられており、それは、電子をNADHからAlkGへと伝える。AlkGは、ルブレドキシンという含鉄のレドックスタンパク質であり、該タンパク質は、AlkBのための直接的な電子供与体として機能する。好ましい一実施形態においては、概念"AlkB−モノオキシゲナーゼ"とは、好ましさの程度が高まる順序において示してシュードモナス・プチダGpo1のAlkBの配列(データベースコード:CAB54050.1;このデータベースコードは、本願で使用される他の全ても同様に、先行技術に由来する、すなわちNCBIデータベースに由来する、より正確に言うと2012年10月15日にオンラインで取得できるバージョンに由来するものである)に対して少なくとも75%の、80%の、85%の、90%の、92%の、94%の、96%の、98%のまたは99%の配列ホモロジーを有するポリペプチドを表すと解される。特に好ましい一実施形態においては、前記のAlkB−モノオキシゲナーゼは、シュードモナス・プチダGpo1由来のAlkG(CAB54052.1)ポリペプチドおよびAlkT(CAB54063.1)ポリペプチドと機能的に共同作用するアルカンを酸化させるオキシドレダクターゼである。AlkB−アルカンヒドロキシラーゼに電子を最適に供給するためには、前記細胞がモノオキシゲナーゼを、それと機能的に相互作用する補助タンパク質、好ましくはAlkGおよび/またはAlkTまたはそれぞれの変異体と一緒に発現することが好ましく、その際、特に好ましい一実施形態においては、改めて、シュードモナス・プチダGpo1由来のAlkG(CAB54052.1)ポリペプチドおよびAlkT(CAB54063.1)ポリペプチドである。
【0048】
全細胞触媒が使用される場合には、基質を細胞内に局在された酵素と接触させて所望の反応を引き起こさねばならないという問題が生じうる。長鎖アルカンおよびその誘導体の場合には、全細胞触媒がAlkL−ファミリーのポリペプチドを有することが好ましい。AlkLは、長鎖脂肪酸およびその誘導体を細菌細胞にインポートできるシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来の膜タンパク質である。好ましい一実施形態においては、本願で使用される"AlkL−ファミリーのポリペプチド"は、230の連続したアミノ酸長にわたって、シュードモナス・プチダ由来のAlkL(データベースコードCAB69081)もしくはシュードモナス・プチダ由来のAlkLの変異体に対して少なくとも80%の、好ましくは90%の、更により好ましくは90%の配列同一性を有し、かつ好ましくは長鎖アルカンを細胞内部へとインポートすることを促す能力を有するポリペプチドである。更なる一実施形態においては、本願で使用される"AlkL−ファミリーのポリペプチド"は、グラム陰性細菌の外膜に局在化するポリペプチドであって、配列モチーフDXWAPAXQ(V/A)GXRを有し、そこでXはタンパク質原性アミノ酸を表すポリペプチドであり、更にシュードモナス・プチダ由来のAlkL(データベースコードCAB69081)またはその変異体が好ましい。AlkL−ファミリーの例示される構成員には、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来(データベースコードCAB69081)の、マリノバクター・アクアエオレイVT8(Marinobacter aquaeolei VT8)由来(データベースコードYP_957722)の、オセアニカウリス・アレクサンドリイHTCC2633(Oceanicaulis alexandrii HTCC2633)由来(データベースコードZP_00953584)の、マリノバクター・マンガンオキシダンスMnI7−9(Marinobacter manganoxydans MnI7-9)由来(データベースコードZP_09158756)の、カウロバクター・エスピーK31(Caulobacter sp. K31)由来(データベースコードYP_001672217)の、シュードモナス・オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)由来(データベースコードQ00595)のAlkLおよびそれらの変異体が含まれる。
【0049】
本発明の教示は、本願で引き合いに出される、正確なアミノ酸配列もしくは核酸配列を有する巨大分子を使用して説明されているだけでなく、あるいはその都度の野生型と比較して低減された、本願で引き合いに出される、正確なアミノ酸配列を有するポリペプチドの活性を有する細胞を使用して説明されているだけでなく、かかる巨大分子の変異体もしくはその都度の細胞のその都度の野生型と比較して低減された、1もしくはそれより多くのアミノ酸もしくは核酸の欠失、付加もしくは置換によって得ることができる該ポリペプチドの変異体の活性を有する細胞を使用して説明されていてよい。好ましい一実施形態においては、本願で使用される概念核酸配列もしくはアミノ酸配列の"変異体"は、以下に概念"ホモロゴン(Homologon)"と同じ意味でもしくは交換可能に用いられ、それは、相応の本来の野生型の核酸配列もしくは野生型のアミノ酸配列に対して70%の、75%の、80%の、85%の、90%の、92%の、94%の、96%の、98%の、99%のまたはそれより高いパーセンテージのホモロジー(本願では同一性と同じ意味で使用される)を有する配列を含むまたは当該配列である別の核酸配列もしくはアミノ酸配列を意味し、その際、好ましくは、触媒活性中心を形成するアミノ酸とは別のアミノ酸または構造もしくはフォールディングに必須のアミノ酸が欠失もしくは置換されているか、またはかかるアミノ酸が保存的に置換されているにすぎない、例えばアスパラギン酸の代わりにグルタミン酸にまたはバリンの代わりにロイシンに置き換えられている。先行技術では、例えばArthur Lesk (2008), Introduction to bioinformatics, 第三版では、2つの配列のホモロジーの程度を計算するために使用することができるアルゴリズムが記載されている。本発明の更なる好ましい一実施形態においては、アミノ酸配列もしくは核酸配列の変異体は、好ましくは上述の配列ホモロジーに加えて、本質的に、野生型分子もしくは本来の分子の同じ酵素活性を有する。例えば、プロテアーゼとして酵素的に活性なポリペプチドの変異体は、前記ポリペプチド酵素と同じ、もしくは本質的に同じタンパク質分解活性を有し、すなわちペプチド結合の加水分解を触媒する能力を有する。具体的な一実施形態においては、概念"本質的に同じ酵素活性"は、野生型のポリペプチドの基質に対する活性であって、明らかにバックグラウンド活性を上回り、かつ/または三桁未満、好ましくは二桁、更に好ましくは一桁だけ、野生型ポリペプチドが同じ基質に対して有するK
M値および/またはk
cat値とは異なる活性を意味する。更なる好ましい一実施形態においては、核酸配列もしくはアミノ酸配列の"変異体"という概念には、核酸配列もしくはアミノ酸配列の少なくとも1つの活性部分もしくは活性断片が含まれる。更なる好ましい一実施形態においては、本願で使用される概念"活性部分"は、全長のアミノ酸配列よりも短い配列を有し、あるいは全長のアミノ酸配列より短い配列をコードしているアミノ酸配列もしくは核酸配列を意味し、その際、前記のアミノ酸配列またはコードされたアミノ酸配列は、野生型のアミノ酸配列よりも短い長さをもって、本質的に、野生型ポリペプチドもしくはその変異体と同じ酵素活性、例えばプロテアーゼとしての活性を有する。具体的な一実施形態においては、核酸の"変異体"という概念には、その相補鎖が、好ましくはストリンジェントな条件下で野生型の核酸に結合する核酸が含まれる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーは、当業者には簡単に決定でき、一般にプローブの長さ、洗浄時の温度および塩濃度に依存している。一般に、プローブがより長ければ、ハイブリダイゼーションのためにはより高い温度が必要となり、それに対してプローブ(Probe)がより短ければより低い温度でうまくいく。ハイブリダイゼーションが起こるか否かは、一般に変性されたDNAが、その周囲に存在する相補鎖に、特に解離温度未満でアニーリングする能力に依存する。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーおよび相応の条件は、F M Ausubel (1995), Current Protocols in Molecular Biology. John Wiley & Sons, Inc.でより詳細に記載されている。ハイブリダイゼーションによるDNA配列の同定の手引きは、当業者によれば、とりわけBoehringer Mannheim GmbH社のハンドブック"フィルターハイブリダイゼーションのためのDIGシステムユーザーズガイド(The DIG System Users Guide for Filter Hybridization)"(ドイツ・マンハイム、1993)およびLiebl et al.(International Journal of Systematic Bacteriology 41: 255-260 (1991))に見出される。前記のハイブリダイゼーションは、好ましい一実施形態においては、ストリンジェントな条件下で行われる。すなわち、プローブと標的配列、すなわち該プローブで処理されるポリヌクレオチドとが少なくとも70%同一である場合にのみハイブリッドが形成される。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、洗浄工程を含めて、バッファー組成、温度および塩濃度のバリエーションによって影響を受けあるいは決定されることは公知である。ハイブリダイゼーション反応は、一般に、洗浄工程と比較して相対的に低いストリンジェンシーの場合に起こる(Hybaid Hybridisation Guide, Hybaid Limited, Teddington, UK, 1996)。ハイブリダイゼーション反応のためには、例えば5×SSCバッファーに相当するバッファーを、約50℃〜68℃の温度で使用できる。その際、プローブは、また、該プローブの配列に対して70%未満の同一性を有するポリヌクレオチドともハイブリダイゼーションできる。かかるハイブリッドは、より安定性が低く、ストリンジェントな条件下での洗浄によって遠ざけられる。それは、例えば2×SSCへと塩濃度を下げ、任意に引き続き0.5×SSCへと下げることによって(フィルターハイブリダイゼーションのためのDIGシステムユーザーズガイド、ドイツ・マンハイム、1995年)達成でき、その際、好ましさの程度が高まる順序において、約50℃〜68℃、約52℃〜68℃、約54℃〜68℃、約56℃〜68℃、約58℃〜68℃、約60℃〜68℃、約62℃〜68℃、約64℃〜68℃、約66℃〜68℃の温度に調整される。約64℃〜68℃または約66℃〜68℃の温度範囲が好ましい。場合により、塩濃度を、0.2×SSCまたは0.1×SSCに相当する濃度にまで下げることも可能である。約1〜2℃のステップで50℃から68℃までハイブリダイゼーション温度を段階的に高めることによって、例えば、好ましさの程度が高まる順序において、使用される核酸分子の配列に対して少なくとも70%の、少なくとも80%のもしくは少なくとも90%の、少なくとも91%の、少なくとも92%の、少なくとも93%の、少なくとも94%の、少なくとも95%の、少なくとも96%の、少なくとも97%の、少なくとも98%のまたは少なくとも99%の同一性を有するポリヌクレオチド断片を単離することができる。ハイブリダイゼーションのための更なる手引きは、いわゆるキットの形で市販されている(例えばRoche Diagnostics GmbH社、ドイツ・マンハイム社製のDIG Easy Hyb、カタログ番号1603558)。好ましい一実施形態においては、本願で使用される、核酸の"変異体"という概念には、本来の核酸と同じアミノ酸配列またはこのアミノ酸配列の変異体を遺伝子コードの縮重の範囲内でコードする任意の核酸配列が含まれる。
【0050】
好ましい一実施形態においては、本発明により使用される細胞は、脂肪酸のβ−酸化の反応の一つを触媒する少なくとも1つの酵素の、その野生型に対して低減された活性を有し、その際、前記酵素が、好ましくは、脂肪酸−CoA−リガーゼ、アシル−CoA−デヒドロゲナーゼ、2,4−ジエノイル−CoA−レダクターゼ、エノイル−CoA−ヒドラターゼおよび3−ケトアシル−CoA−チオラーゼ、脂肪酸インポーターもしくはその変異体を含む群からの酵素である。脂肪酸のβ−酸化は、原核生物および真核生物が、同様に、脂肪酸を酸化することを可能にし、かつそこに含まれる化学的エネルギーを前記物質代謝に利用可能にする広く知られた物質代謝経路である。更なる意味においては、その経路は、細胞内への脂肪酸の取り込みで開始する。そこでは、脂肪酸は、その条件を要する限りは、まずCoA−脂肪酸エステルのβ位でアシル−CoA−デヒドロゲナーゼ(E.コリの場合にはFadE)によって酸化される。類似の分子は、その一方で、二重不飽和脂肪酸からも、2,4−ジエノイル−CoA−レダクターゼ(E.コリの場合にはFadH)による還元によって形成されうる。多機能酵素であるエノイル−CoA−ヒドラターゼ/3−ヒドロキシアシル−CoA−デヒドロゲナーゼ(E.コリの場合にはFadB)は、引き続き水化を触媒して第二級アルコールを形成し、それを引き続き酸化させてケトンにする。最終工程で3−ケトアシル−CoA−チオラーゼ(E.コリの場合にはFadA)は、ケトアシル−CoAの分解を触媒し、その結果として、アセチル−CoAおよび出発分子に比して2つの炭素原子だけ短縮された脂肪酸のCoA−エステルが遊離される。同様にそれがアセチル−CoAではない限り、それは新たにβ−酸化サイクルに供給され、酸化されつつ短縮されうる。脂肪酸のβ−酸化の調節には、脂肪酸の分解に必要な遺伝子を含むFadオペロンのレギュレーターであるFadRも関与するものの、FadRはβ−酸化の反応を触媒しない。好ましい一実施形態においては、概念"脂肪酸のβ−酸化の反応の一つを触媒する酵素"とは、脂肪酸基質ともしくはアセチル−CoAへの経路でそこから生ずる分子と直接的に相互作用する、好ましくは基質として認識し、かつそれをこの分解経路でアセチル−CoAのより近くにある物質代謝産物へと変換することを触媒するあらゆる酵素を表し、好ましくは脂肪酸を細胞に取り込むことを行う脂肪酸インポーターを含む。例えば、前出の定義による前記酵素には、アシル−CoA−デヒドロゲナーゼが当てはまる。それというのも、その酵素は、脂肪酸−CoA−エステルと相互作用し、当該エステルを、β−酸化の代謝経路において脂肪酸−CoA−エステルよりもアセチル−CoAの近くにあるエノイル−CoAへの変換を触媒するからである。特に好ましい一実施形態においては、本願で使用される、"脂肪酸のβ−酸化の反応の一つを触媒する酵素"という概念は、E.コリ由来の遺伝子産物であるFadA、FadB、FadD、FadLおよびFadEおよび/または他の生物由来のその変異体もしくはホモロガ(Homologa)を含む群からのあらゆる酵素を表す。E.コリ由来の遺伝子産物であるFadA、FadB、FadD、FadLおよびFadEと同様に、数多くの他の生物工学的に利用可能な生物由来の変異体およびホモロガならびにそれらの核酸配列およびポリペプチド配列は、先行技術に記載されている。例えばFadAは、アクセッション番号AP009048.1として、FadBは、アクセッション番号BAE77457.1として、FadDは、アクセッション番号BAA15609.1として、FadEは、アクセッション番号BAA77891.2として示されている。先行技術は、脂肪酸のβ−酸化の反応の一つを触媒する酵素の活性の測定に適した数多くの試験を、例えばK Kameda & W D Nunn (1981) J. Biol. Chem. 256, 5702-5707、Hi Marrakchi, W E DeWolf, C Quinn, J West, B J Polizzi, C Y So et al. (2003) Biochem. J. 370, 1055-1062、Lobo et al. (2001)およびX Yu, T Liu, F Zhu, and C Khosla (2011) PNAS, elektronische Veroeffentlichung vor Drucklegungに開示している。
【0051】
本発明による全細胞触媒の効率については、転化されるべき基質、好ましくは脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸もしくはω−オキソ脂肪酸が、該全細胞触媒の内部に局在化されている本発明によれば必要な酵素と容易に接触しうることが好ましい。従って、前記基質は細胞内部に到達しうることが重要である。それを容易にするために、前記の全細胞触媒は、細菌性の全細胞触媒の場合に、特にグラム陰性の全細胞触媒の場合に、脂肪酸インポーターを、特に好ましくは脂肪酸インポーターFadL(データベースコード:BAA16205.1)またはその変異体を、好ましくは相応の全細胞触媒の野生型の活性に対して高められている濃度および活性で発現することが好ましい。前記細胞の野生型に対するポリペプチドの活性の向上は、当業者に通常利用できる種々の様式により、例えば該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のプロモーターと機能的に結合された追加のコピーを導入することによって、またはより強力なプロモーターにとの交換によって達成できる。
【0052】
本発明によれば、前記全細胞触媒中で内因的に発現される酵素のバックグラウンドが、本発明による方法の出発物質、中間生成物もしくは生成物を、または本発明による細胞を使用して、好ましくはω−アミノ脂肪酸を代謝経路で分解するか、または所望の生成物を生成させなくする別の方法で改質する内因性の酵素の活性が低減もしくはスイッチオフされているように最適化されている場合に、ω−アミノ脂肪酸は、より高い収率および純度において産生されることが判明した。このバックグラウンドに対して、本発明による全細胞触媒が、その野生型に対して低減されたエステラーゼBioH[データベースコードYP_492020.1]またはその変異体の活性を有する細胞である場合に好ましい。低減されたBioH活性を有するかかる細胞、その製造および活性測定のための試験は、欧州特許出願EP 12007663.3に記載されている。
【0053】
本発明による全細胞触媒は、脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸またはω−オキソ脂肪酸の相応のアミンへの、好ましくはω−アミノ脂肪酸への転化方法であって、前記の脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルが、式(I)
R
1−A−COOR
2 (I)
[式中、
R
1は、−H、−CHO、−OHおよびCOOR
3を含む群から選択され、
R
2およびR
3は、それぞれ互いに独立して、H、メチル、エチルおよびプロピルを含む群から選択されるが、但し、前記基R
2およびR
3の少なくとも1つは、Hであり、その際、Aは、少なくとも4個の炭素原子を有する非分枝鎖状の、分枝鎖状の、直鎖状の、環状の、置換もしくは非置換の炭化水素基を表す]の化合物である前記方法で使用できる。好ましい一実施形態においては、前記のAは、式−(CH
2)
n−の構造であり、式中、nは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30である。好ましい一実施形態においては、前記の脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸またはω−オキソ脂肪酸は、ラウリン酸、ω−ヒドロキシラウリン酸もしくはω−オキソラウリン酸である。更なる好ましい一実施形態においては、前記の脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸またはω−オキソ脂肪酸は、ヘキサン酸、ω−ヒドロキシヘキサン酸もしくはω−オキソヘキサン酸である。更なる好ましい一実施形態においては、前記の脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸またはω−オキソ脂肪酸は、デカン酸、ω−ヒドロキシデカン酸もしくはω−オキソデカン酸である。
【0054】
前記脂肪酸に関しても本願に記載されるあらゆる化合物についても、その都度示される式は、その都度の化合物の全ての塩、プロトン化されたまたは脱プロトン化されたものを含むことが当てはまる。例えば、ラウリン酸は、プロトン化された形だけでなく、全てのカチオンとの塩、つまりラウリン酸塩、例えばラウリン酸ナトリウムを含む。
【0055】
本発明による方法は、本発明による方法のために使用される酵素を、任意に本発明による全細胞触媒の形で提供されて、脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸もしくはω−オキソ脂肪酸と水溶液中で接触させる必要がある。好ましい一実施形態においては、本願で使用される概念"接触する"とは、その都度の酵素が、その基質と直接的な接触に至るが、特に不透過性の膜などの物理的な障壁が介在されていないことを表す。その接触は、最も簡単には、前記の基質を、酵素または全細胞触媒が存在する水溶液へと加えることによって行われる。
【0056】
本発明による教示の実施のために、本発明による全細胞触媒を水溶液で含み、かつ式(I)で示され、その式中、R
1は、−H、−CHO、−OHおよびCOOR
3を含む群から選択され、R
2およびR
3は、それぞれ互いに独立して、H、メチル、エチルおよびプロピルを含む群から選択されるが、但し、前記基R
2およびR
3の少なくとも1つは、Hであり、その際、Aは、少なくとも4個の炭素原子を有する非分枝鎖状の、分枝鎖状の、直鎖状の、環状の、置換もしくは非置換の炭化水素基を、好ましくは式−(CH
2)
n−を表し、式中、nが少なくとも4であり、特に好ましくは少なくとも10である脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルを含む反応混合物が適している。前記水溶液は、例えば組成、pH値および温度に関して、前記水溶液が、その生存性または少なくとも全細胞触媒の触媒能を少なくともしばらくの間促進するものでなければならない。当業者には、水溶液として適した数多くの水性培養培地であって、細胞の取得または培養のために、特に生物工学的に重要な細胞の取得または培養のために適している前記培地が知られている。それには、同様に、LB培地、最少培地、例えばM9培地などの完全培地、ならびに選択培地、例えば高い塩濃度を含むため好塩性もしくは少なくとも耐塩性の生物の成長のみを可能にする培地が含まれる。好ましい一実施形態においては、本願で使用される概念"水性培養培地"とは、全ての関連の要因、特にpH値、塩含量および温度の点で、前記培地がそこに含まれる細胞の、好ましくは微生物の生存能を保持または促進し、かつ水性培養培地も疎水性有機相も液体形で存在するようなものである水系の反応媒体を表す。生物工学的に重要な種々の細胞の温度要求は、微生物学的なおよび分子生物学的な教科書、例えばFuchs/Schlegl, 2008に見ることができる。好ましい一実施形態においては、前記の水性培養培地のpH値は、接触の時点で、4〜9、好ましくは4.5〜8.5、最も好ましくは6.5〜7.5である。更なる好ましい一実施形態においては、温度は、0〜45℃、好ましくは15〜40℃、最も好ましくは20〜37℃である。前記反応混合物は、一般に発酵器中に含まれている。滅菌され、好ましくはオートクレーブに掛けられてよく、全細胞触媒の培養、通気および反応条件の制御、例えば酸素含量および温度の制御を可能にする、あらゆる反応容器が発酵器として機能する。
【0057】
好ましい一実施形態においては、前記反応混合物は、水溶液に加えて疎水性の有機相を含む。前記有機相は、有機溶剤および/または疎水性の液状のカチオン交換体であって、水溶液からω−アミノ脂肪酸を除去するための交換体を含んでよい。好適な溶剤およびカチオン交換体は、EP11191520.3に記載されている。
【0058】
本発明を、更に以下の図面および制限されない実施例によって具体的に示す。そこから、本発明の更なる特徴、実施形態、態様および利点を見出すことができる。
【実施例】
【0059】
例1
脂肪酸レダクターゼをコードする遺伝子と、ノカルディア・エスピー(Nocardia sp.)由来のnptとを同時発現するための発現ベクターの製造
脂肪酸レダクターゼをコードする遺伝子と、ノカルディア・エスピー(Nocardia sp.)由来の、ホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼをコードするnpt(配列番号1、ABI83656.1をコードする)とを同時発現するためのベクターの製造のために、それらの遺伝子を、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)での発現のためにコドン最適化し、そしてlacuv5−プロモーター(配列番号2)と一緒に合成し、かつ同時にそれぞれ1つの制限切断部位を上流と下流に導入した。以下の脂肪酸レダクターゼ遺伝子を使用した:
・ マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)由来のMSMEG_2956(carA、配列番号3、YP_887275.1をコードする)
・ マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)由来のMSMEG_5739(carB、配列番号4、YP_889972.1をコードする)
・ マイコバクテリウム・イントラセルラレMOTT−64(Mycobacterium intracellulare MOTT-64)由来のfadD9(car_Mint、配列番号5、YP_005349252.1をコードする)
・ マイコバクテリウム・フォルツイツム・サブエスピー・フォルツイツムDSM46621(Mycobacterium fortuitum subsp. fortuitum DSM 46621)由来のMFORT_07381(car_Mfort、配列番号6、ZP_11001941.1をコードする)
・ マイコバクテリウム・アビウム・サブエスピー・パラツベルクロシスK−10(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis K-10)由来のFadD9(car_Mavi、配列番号7、NP_959974.1をコードする)
・ シアノビウム・エスピーPCC7001(Cyanobium sp. PCC 7001)由来のCPCC7001_1320(car_Cs、配列番号8、ZP_05045132.1をコードする)
・ マイコバクテリウム・アブセッサスATCC19977(Mycobacterium abscessus ATCC 19977)由来のMAB_3367(car_Mab、配列番号9、YP_001704097.1をコードする)
・ ノカルディア・ブラシリエンシスATCC700358(Nocardia brasiliensis ATCC 700358)由来のFadD9(car_nbr、配列番号10、ZP_09839660.1をコードする)
・ マイコバクテリウム・インディカス・プラニイMTCC9506(Mycobacterium indicus pranii MTCC 9506)由来のMIP_06852(car_Mip、配列番号11、YP_006731697.1をコードする)
・ ノカルディア・ファルシニカIFM10152(Nocardia farcinica IFM 10152)由来のnfa20150(car_nfa、配列番号12、YP_118225.1をコードする)
・ マイコバクテリウム・ウルセランスAgy99(Mycobacterium ulcerans Agy99)由来のMUL_1722(car_Mul、配列番号13、YP_905678.1をコードする)
・ ストレプトマイセス・アシディスカビエス84−104(Streptomyces acidiscabies 84-104)由来のSaci8_010100039603(car_Sac、配列番号14、ZP_10456477.1をコードする)
・ マイコバクテリウム・コロムビエンスCECT3035(Mycobacterium colombiense CECT 3035)由来のMCOL_V203220(car_Mcol、配列番号15、WP_007769435.1をコードする)
合成されたDNA断片を、制限エンドヌクレアーゼNdeIおよびAvrIIを用いて消化し、そして相応して切断されたベクターpSC101(配列番号16)中にライゲーションした。ベクターpSC101は、非常に低コピーのベクターであって、テトラサイクリン耐性を有し、かつ1細胞あたり約4コピーの低いコピー数を有する。このように、以下の発現ベクターを製造できた:
・ pSC101{Placuv5}[carA_Ms(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号17)
・ pSC101{Placuv5}[carB_Ms(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号18)
・ pSC101{Placuv5}[car_Mint(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号19)
・ pSC101{Placuv5}[car_Mfort(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号20)
・ pSC101{Placuv5}[car_Mavi(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号21)
・ pSC101{Placuv5}[car_Csp(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号22)
・ pSC101{Placuv5}[car_Mab(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号23)
・ pSC101{Placuv5}[car_nbr(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号24)
・ pSC101{Placuv5}[car_Mip(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号25)
・ pSC101{Placuv5}[car_nfa(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号26)
・ pSC101{Placuv5}[car_Mul(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号27)
・ pSC101{Placuv5}[car_Sac(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号28)
・ pSC101{Placuv5}[car_Mcol(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)](配列番号29)
遺伝子産物nptは、脂肪酸レダクターゼの活性化のために、ホスホパンテテイニル基を補酵素Aから脂肪酸レダクターゼ酵素へと転移する。
【0060】
例2
遺伝子bioHに欠失を有する、アミノラウリン酸メチルエステルをラウリン酸メチルエステルから製造するための、増強された脂肪酸レダクターゼ活性とホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性とを有するE.コリ菌株の製造
エステラーゼをコードする遺伝子bioHの欠失と、アミノラウリン酸メチルエステルの製造のための増強された脂肪酸レダクターゼ活性を有するE.コリ菌株の作成のために、菌株エシェリキア・コリW3110ΔbioH(製造は、EP12007663を参照のこと)を、プラスミドpBT10_alkL(配列と製造は、WO/2011/131420の例1もしくはそこに挙げられるSeq ID NR: 8と同等)、pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct)(WO/2013/024114の例1およびそこに挙げられるSEQ ID Nr. 17と同等)および例1で作成された、脂肪酸レダクターゼの発現のためのベクターでエレクトロポレーションによって形質転換し、そしてカナマイシン(50μg/ml)、アンピシリン(100μg/ml)およびテトラサイクリン(5μg/ml)を有するLBアガープレート上にプレーティングした。形質転換体を、プラスミド調製と制限分析によって正確なプラスミドの存在について調べた。こうして以下の菌株を作成した:
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[carA_Ms(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[carB_Ms(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_Mint(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_Mfort(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_Mavi(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_Csp(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_Mab(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_nbr(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_Mip(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_nfa(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_Mul(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_Sac(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
・ E.コリ W3110 ΔbioH pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[car_Mcol(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]
前記の菌株を、ラウリン酸メチルエステルから出発するアミノラウリン酸メチルエステルの製造のためのその能力を調査するために使用した。
【0061】
発現ベクターpBT10_alkLは、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来のalkオペロンからの遺伝子alkB、alkG、alkT、alkSおよびalkLを含む。前記遺伝子産物によって、基質であるラウリン酸メチルエステルのヒドロキシラウリン酸メチルエステルを介したオキソラウリン酸メチルエステルの酸化が触媒される。ベクターpJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct)は、バシラス・サチリス由来の遺伝子ald(アラニンデヒドロゲナーゼをコードする、NP_391071.1)と、クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のCv_2505(ω−トランスアミナーゼをコードする、NP_901695.1)を含む。遺伝子産物Cv_2505は、オキソラウリン酸メチルエステルをアミノラウリン酸メチルエステルに転化させることができ、そのために必要とされるアミンドナーであるアラニンは、遺伝子産物aldによってピルベートから提供される。追加で発現される脂肪酸レダクターゼであって、同様に過剰発現されるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼnptによって活性化される酵素をもとに、アミノラウリン酸メチルエステルの生産に際して生ずる副生成物、特にドデカン二酸メチルエステルは、アミノラウリン酸メチルエステルのドデカン二酸メチルエステルに対する比率を高めるために低減されるべきである。
【0062】
例3
アミノラウリン酸メチルエステルをラウリン酸メチルエステルから製造するための、増強された脂肪酸レダクターゼ活性とホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ活性とを有するE.コリ菌株の製造
使用される宿主菌株E・コリW3110を、発現ベクタープラスミドpBT10_alkL(配列と製造は、WO/2011/131420の例1もしくはそこに上げられるSeq ID NR: 8と同等)、pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct)(WO/2013/024114の例1およびそこに挙げられるSEQ ID Nr. 17と同等)およびpSC101{Placuv5}[carB_Ms(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]もしくはpSC101の空ベクターでエレクトロポレーションによって形質転換し、そしてカナマイシン(50μg/ml)、アンピシリン(100μg/ml)およびテトラサイクリン(5μg/ml)を有するLBアガープレート上にプレーティングした。形質転換体を、プラスミド調製と制限分析によって正確なプラスミドの存在について調べた。こうして、菌株E.コリ W3110 pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101{Placuv5}[carB_Ms(co_Ec)-npt_Noc(co_Ec)]およびE.コリ W3110 pBT10_alkL / pJ294_alaDH_B.s._TA_C.v.(Ct) / pSC101が作成された。
【0063】
例4
脂肪酸レダクターゼ遺伝子とノカルディア・エスピー(Nocardia sp.)由来の遺伝子nptのための発現ベクターおよびバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)由来の遺伝子aldとクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)由来のCv_2025についての発現ベクターを、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来のalkオペロンからの遺伝子alkB、alkG、alkTおよびalkLについての発現ベクターと組み合わせて有するE.コリ菌株によるアミノラウリン酸の生産
例2および例3で作成された菌株を、アミノラウリン酸メチルエステルの生産のためのその能力を調査するために使用した。
【0064】
ラウリン酸メチルエステルのアミノラウリン酸メチルエステルへの生体内変換は、DASGIP社製の8連の並列発酵システム(8-fach Parallelfermentationssystem)において行った。その際には、以下の通りの措置をとった:
発酵のために、1Lのリアクターを使用した。pHプローブを、pH4.0とpH7.0の基準溶液で二点校正法によって校正した。前記リアクターに、300mLの飲料水を満たし、滅菌性を保証するために121℃で20分にわたりオートクレーブにかけた。引き続き、pO
2プローブを、一晩(少なくとも6時間長)にわたりDASGIPシステムで分極させた。翌朝に、水をクリーンベンチのもとで取り除き、100mg/Lのアンピシリン、50mg/Lのカナマイシンおよび5mg/Lのテトラサイクリンを有する300mLの高細胞密度培地に置き換えた。次に、pO
2プローブを一点校正法(撹拌機:400rpm/給気:10sL/h空気)により校正し、供給区間、校正剤区間および誘導剤区間を定置洗浄(Clean-in-Place)で洗浄した。そのために、それらのチューブを、70%エタノールで、引き続き1MのNaOHで、次いで滅菌完全脱塩水ですすぎ、最後にその都度の培地で満たした。
【0065】
ALSおよびALSMEを産生するE.コリ菌株を、まず、その都度の凍結培養物(Cryokultur)から100mg/Lのアンピシリンを有するLB培地(100mLのバッフル付フラスコ中25mL)中で37℃および200rpmで一晩にわたり約18時間にわたり増殖させた。引き続き、前記培養それぞれ2mLを、100mg/Lのアンピシリン、50mg/Lのカナマイシンおよび5mg/Lのテトラサイクリンを有する高細胞密度培地(グルコース 15g/L(1%MgSO
4*7H
2Oおよび2.2%NH
4Clを有する個別にオートクレーブにかけた500g/Lのストック溶液を30mL/Lで)、(NH
4)
2SO
4 1.76g/L、K
2HPO
4 19.08g/L、KH
2PO
4 12.5g/L、酵母エキス 6.66g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物 2.24g/L、クエン酸鉄アンモニウム溶液 個別にオートクレーブにかけた1%ストック溶液を17mL/Lで、微量元素溶液 個別にオートクレーブにかけたストック溶液(HCl(37%) 36.50g/L、MnCl
2*4H
2O 1.91g/L、ZnSO
4*7H
2O 1.87g/L、エチレンジアミン四酢酸二水和物 0.84g/L、H
3BO
3 0.30g/L、Na
2MoO
4*2H
2O 0.25g/L、CaCl
2*2H
2O 4.70g/L、FeSO
4*7H
2O 17.80g/L、CuCl
2*2H
2O 0.15g/L)を5mL/Lで)(それぞれの菌株は、100mLのバッフル付フラスコ中25mL)に接種し、37℃/200rpmで更に5.5時間にわたりインキュベートした。
【0066】
相応の容量の前培養を5mLの注射器(滅菌条件下)に吸い上げ、そして前記リアクターにカニューレを介して70%エタノールを被せた隔膜を介して接種することでリアクターに光学密度0.1で接種した。
【0067】
以下の標準プログラムを使用した:
【表1】
【0068】
実施した実験は、細胞を規定の光学密度に達すべく培養するフェーズと、基質であるラウリン酸メチルエステルの添加後に発現で形成された酵素によるアミノラウリン酸エステルへの転化が行われるべき引き続いての生体内変換のフェーズの2つのフェーズに分けることができる。それらのpH値は、一方だけアンモニア(12.5%)でpH6.8に調節した。培養と生体内変換の間に、培養物中の溶解された酸素(DO、溶解酸素)は撹拌機回転数とガス供給速度により30%に調節した。発酵は流加培養法として行った。その際、5g/Lhのグルコースフィード(500g/Lのグルコース、1%のMgSO
4*7H
2Oおよび2.2%のNH
4Clを含む)の供給開始はDOピークをトリガとした。供給開始とともに、事前の37℃の温度も30℃に下げた。トランスアミナーゼ、アラニンデヒドロゲナーゼおよび脂肪酸レダクターゼの発現は、供給開始2時間後にIPTG(1mM)の自動添加によって誘導した。alk遺伝子の誘導は、DCPK(0.025%(v/v))の手動添加により供給開始10時間後に行った。生体内変換の開始前に培養ブロスの光学密度を測定した。
【0069】
生体内変換フェーズの開始は、供給開始14時間後に行った。そのために、ラウリン酸メチルエステルおよびイオン交換体のオレイン酸(工業用90%)からなる混合物150mLをバッチとして発酵ブロスへと添加した。トランスアミナーゼのためのアミノ基ドナーを提供するために、生体内変換開始30分前に3Mの硫酸アンモニウム溶液5mLを発酵ブロスに添加した。試料採取のために、2mLの発酵ブロスをタンクから取り出し、その一部をアセトン−HCl混合物(c(HCl)=0.1モル/L)中で1/20希釈し、抽出した。試料を、生体内変換開始の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、7.5時間後、10.5時間後、19.5時間後および21時間後に全てのリアクターから取り出した。酸素についての転化率(OTR=酸素転移率(oxygen transfer rate))および炭素についての転化率(CTR=炭素転移率(carbon transfer rate))を、発酵の間にDASGIP−システムでのオフガス分析によって測定した。発酵は、生体内変換開始の21時間後に終了した。撹拌機、ガス供給、温度調節およびpH調節を止め、タンクを5〜10分間にわたり静置させた。
【0070】
発酵試料における、DDS(C12−ジカルボン酸)、DDSME(C12−ジカルボン酸メチルエステル)、LS(ラウリン酸)、LSME(ラウリン酸メチルエステル)、HLS(ω−ヒドロキシラウリン酸)、HLSME(ω−ヒドロキシラウリン酸メチルエステル)、OLS(ω−オキソラウリン酸)、OLSME(ω−オキソラウリン酸メチルエステル)、ALS(ω−アミノラウリン酸)およびALSME(ω−アミノラウリン酸メチルエステル)の定量化のために、培養の間に試料を取り出した。これらの試料を、分析のために準備した(LC−ESI/MS
2ベースの生成物の定量化を参照のこと)。
【0071】
LC−ESI/MS
2ベースの生成物の定量化
発酵試料におけるALS、ALSME、DDS、DDSME、LS、LSME、HLS、HLSME、OLSおよびOLSMEの定量化は、LC−ESI/MS
2によって、全ての分析物についての外部校正(0.1〜50mg/L)をもとに、かつアミノウンデカン酸(AUD、これは、HLS、DDS、OLS、HLSME、OLSMEのため)、d4−ALSME(ALSMEのため)、
13C−DDSME(DDSMEのため)、d3−LS(LSのため)およびd3−LSME(LSMEのため)といった内部標準を用いて行った。
【0072】
その際に以下の機器を使用する:
・ オートサンプラー(G1367E)と、バイナリポンプ(G1312B)と、カラムオーブン(G1316A)とを備えたHPLCシステム1260(Agilent;Boeblingen)
・ ESI源を備えた質量分析計TripelQuad 6410(Agilent;Boeblingen)
・ HPLCカラム:Kinetex C18、100×2.1mm、粒度:2.6μm、細孔サイズ100Å(Phenomenex;Aschaffenburg)
・ プレカラム:KrudKatcher Ultra HPLC In-Line Filter;0.5μmの濾層厚および0.004mmの内径(Phenomenex;Aschaffenburg)
試料を、1900μLの溶剤(80%(v/v)のACN、20%の二回蒸留H
2O(v/v)+0.1%のギ酸)および100μLの試料を2mLの反応容器にピペット導入することによって準備した。その混合物を、約10秒間にわたりボルテックスにかけ、引き続き約13000rpmで5分間にわたり遠心分離した。澄明な上清を、ピペットで取り出し、希釈剤(80%(v/v)のACN、20%の二回蒸留H
2O(v/v)+0.1%のギ酸)での相応の希釈の後に分析した。それぞれ900μLの試料に対して100μLのISTDを更にピペット導入した(試料容量90μLの場合に10μL)。
【0073】
HPLC分離は、上述のカラムもしくはプレカラムで行った。注入容量は0.7μLであり、カラム温度は50℃であり、流速は0.6mL/分である。移動相は、溶出剤A(0.1%(v/v)の水性ギ酸)と溶出剤B(アセトニトリルと0.1%(v/v)のギ酸)とからなる。以下のグラジエントプロフィールを用いた:
【表2】
【0074】
ESI−MS
2分析は、ポジティブモードで以下のESI源のパラメータをもって行った:
・ ガス温度 280℃
・ ガス流速 11L/分
・ ネブライザー圧力 50psi
・ キャピラリー電圧 4000V
化合物ALS、ALSME、DDS、DDSME、HLS、HLSME、OLS、OLSMEの検出および定量化は、以下のMRMパラメータをもって行った。その際、それぞれ1つのプロダクトイオンをクオリファイアとして用い、1つをクオンティファイアとして用いた:
【表3】
【0075】
分析物LSおよびLSMEは、SIMモードで検出した(m/z 201および215)。
【0076】
前記菌株は、ラウリン酸メチルエステルから、中間生成物のヒドロキシラウリン酸メチルエステルおよびオキソラウリン酸メチルエステルを介してアミノラウリン酸メチルエステルを製造することができ、その際に形成される副生成物、例えばドデカン二酸メチルエステルおよびドデカン二酸は、脂肪酸レダクターゼ活性によって還元でき、従って再びアミノラウリン酸メチルエステルの形成のための物質代謝へと持ち込むことができることが示された(第1表および第2表)。更に、種々の脂肪酸レダクターゼの導入によって、所望の生成物(アミノラウリン酸メチルエステルおよびアミノラウリン酸)の副生成物(ドデカン二酸メチルエステルおよびドデカン二酸)に対する比率を高められることが示された(第1表および第2表)。また、種々の脂肪酸レダクターゼの導入によってアミノラウリン酸メチルエステルの最終生成物濃度が高められることも示された(第1表および第2表)。最後に、脂肪酸レダクターゼの導入によって、アミノラウリン酸メチルエステル形成の空時収量(生体内変換の開始1時間後と19時間後の間に測定される)は高められ、かつ属する生成物特異的なグルコース消費量は低減されることが示された(第2表)。
【0077】
第1表: 例2で生成された、過剰発現される脂肪酸レダクターゼと、ノカルディア・エスピー(Nocardia sp.)由来の遺伝子nptを有する菌株の、脂肪酸レダクターゼ活性を有さない菌株と比較した、生成物形成および副生成物形成
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
第2表: 例3で生成された、脂肪酸レダクターゼとノカルディア・エスピー(Nocardia sp.)由来の遺伝子nptを過剰発現する菌株による、脂肪酸レダクターゼ活性を有さない菌株と比較した、生成物形成および副生成物形成、生成物形成率および収率
【表6】
【0080】
[本発明の態様]
1. 組み換え型のα−ジオキシゲナーゼまたは組み換え型の脂肪酸レダクターゼと該脂肪酸レダクターゼをホスホパンテテイニル化するホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼからなる組み合わせを発現し、更にトランスアミナーゼを発現する全細胞触媒であって、前記ホスホパンテテイニル−トランスフェラーゼおよび/またはトランスアミナーゼが好ましくは組み換え型である前記全細胞触媒。
2. 1に記載の全細胞触媒であって、前記全細胞触媒が、更に、好ましくは組み換え型であるアミノ酸デヒドロゲナーゼを発現する前記全細胞触媒。
3. 1または2に記載の全細胞触媒であって、前記全細胞触媒が、更に、好ましくは組み換え型であるアルカンヒドロキシラーゼを発現する前記全細胞触媒。
4. 1から3までのいずれかに記載の全細胞触媒であって、前記全細胞触媒が、更に、好ましくは組み換え型であるAlkLファミリーのポリペプチドを発現する前記全細胞触媒。
5. 1から4までのいずれかに記載の全細胞触媒であって、前記全細胞触媒が、更に、好ましくは組み換え型であるアルコールデヒドロゲナーゼを発現する前記全細胞触媒。
6. 1から5までのいずれかに記載の全細胞触媒であって、β−酸化に関与する少なくとも1つの酵素の活性が、該全細胞触媒の野生型に対して低減されている前記全細胞触媒。
7. 1から6までのいずれかに記載の全細胞触媒であって、BioHまたはその変異体の活性が、該全細胞触媒の野生型に対して低減されている前記全細胞触媒。
8. 1から6までのいずれかに記載の全細胞触媒であって、FadLまたはその変異体の活性が、該全細胞触媒の野生型に対して高められている前記全細胞触媒。
9. 脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルのアミンへの転化方法であって、
a)脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルを、アルカンヒドロキシラーゼおよび/またはアルコールデヒドロゲナーゼとの接触によって酸化させて酸化生成物とする工程と、
b)前記酸化生成物と、ホスホパンテテイニル化された脂肪酸レダクターゼまたはα−ジオキシゲナーゼとを接触させてアルデヒドとする工程と、
c)前記アルデヒドとトランスアミナーゼとを接触させる工程と、
を含む前記方法。
10. 9に記載の方法であって、工程c)においてアミノ酸デヒドロゲナーゼが存在する前記方法。
11. 9または10に記載の方法であって、ホスホパンテテイニル化された脂肪酸レダクターゼ、α−ジオキシゲナーゼ、トランスアミナーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼおよびアルカンヒドロキシラーゼを含む群からの少なくとも1つの酵素、好ましくは前記の群からの全ての使用される酵素が、1から8までのいずれかに記載の全細胞触媒の形で提供される前記方法。
12. 9から11までのいずれかに記載の方法であって、前記の脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルが、式(I)
R
1−A−COOR
2 (I)
[式中、
R
1は、−H、−CHO、−OHおよびCOOR
3を含む群から選択され、
R
2およびR
3は、それぞれ互いに独立して、H、メチル、エチルおよびプロピルを含む群から選択されるが、但し、前記基R
2およびR
3の少なくとも1つは、Hであり、その際、Aは、少なくとも4個の炭素原子を有する非分枝鎖状の、分枝鎖状の、直鎖状の、環状の、置換もしくは非置換の炭化水素基を表す]の化合物である前記方法。
13. 9から12までのいずれかに記載の方法であって、Aが式−(CH
2)
n−を有し、その式中、nが、少なくとも4であり、好ましくは少なくとも10である前記方法。
14. 1から8までのいずれかに記載の全細胞触媒または8から12までのいずれかに記載の方法を、脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのエステルのアミノ化のために用いる使用。
15. 1から8までのいずれかに記載の全細胞触媒を水溶液で含み、かつ式(I)
R
1−A−COOR
2 (I)
[式中、
R
1は、−H、−CHO、−OHおよびCOOR
3を含む群から選択され、
R
2およびR
3は、それぞれ互いに独立して、H、メチル、エチルおよびプロピルを含む群から選択されるが、但し、前記基R
2およびR
3の少なくとも1つは、Hであり、その際、Aは、少なくとも4個の炭素原子を有する非分枝鎖状の、分枝鎖状の、直鎖状の、環状の、置換もしくは非置換の炭化水素基を、好ましくは式−(CH
2)
n−を表し、式中、nが少なくとも4であり、特に好ましくは少なくとも10である]の脂肪酸、ω−ヒドロキシ脂肪酸、ω−オキソ脂肪酸またはそれらのモノエステルを含む反応混合物。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]