特許第6332964号(P6332964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332964
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】レンズユニット及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   G02B7/02 D
   G02B7/02 A
   G02B7/02 B
   G02B7/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-270951(P2013-270951)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-125363(P2015-125363A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】萩原 智美
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽祐
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−017839(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0002938(US,A1)
【文献】 特開2011−059396(JP,A)
【文献】 特開2009−244389(JP,A)
【文献】 特開2009−282068(JP,A)
【文献】 特開2009−216774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 17/08
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズの光軸方向において軸心をもつ筒状のレンズホルダと、前記レンズホルダ内において光軸方向に順次に配列されて保持される最前レンズ及び前記最前レンズの背後に配置される第2レンズを少なくとも含む複数のレンズと、前記最前レンズと前記レンズホルダの間に配置されたシールリングと、を備えたレンズユニットであって、
前記最前レンズは、所定の外径をなす嵌合外周部と、前記嵌合外周部よりも縮径された円筒状の縮径外周部と、前記嵌合外周部及び縮径外周部を接続する環状面と、前記縮径外周部の後端に連続して形成された環状当接面を含み、
前記レンズホルダは、前記最前レンズの嵌合外周部を嵌め込むと共に前記縮径外周部と光軸に垂直な径方向において対向する円筒状の嵌合内周部と、前記最前レンズの環状当接面を光軸方向において当接させるレンズ受け部と、前記最前レンズの環状面と光軸方向において対向する環状対向面と、前記最前レンズと非接触の状態で前記第2レンズを固定するレンズ固定部を含み、
前記シールリングは、前記環状面及び環状対向面の少なくとも一方と非接触の状態で、前記縮径外周部及び嵌合内周部の間において径方向に圧縮して配置されており、
前記レンズ受け部は、環状に形成された環状受け面であり、
前記環状対向面は、前記環状受け面よりも光軸方向の後方に向けて凹むように形成されている、
ことを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
複数のレンズを保持したレンズ光学系と、光軸方向において前記レンズ光学系の後方に配置された撮像素子と、前記レンズ光学系及び撮像素子を収容するハウジングと、を備えた撮像装置であって、
前記レンズ光学系は、請求項1に記載のレンズユニットである、
ことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレンズを備えたレンズユニット及びレンズユニットを搭載した撮像装置に関し、特に、車載カメラ、監視カメラ等として野外環境下において使用されるレンズユニット及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレンズユニットとしては、レンズを保持する筒状のレンズホルダ、レンズホルダ内に収容されて固定される複数のレンズ(光軸方向の最前に位置する防水用レンズ、その背後に順次配列された第2レンズ、第3レンズ、及び第4レンズ)、最前に位置する防水用レンズの外周とレンズホルダの間に嵌め込まれたシールリング(Oリング)等を備え、最前の防止用レンズの外周において、シールリングを装着するべく縮径すると共に傾斜面(円錐状のテーパ面)を画定する環状溝を形成し、レンズホルダに対して、先ず第4レンズを嵌め込み、続いて第3レンズを嵌め込み、続いて第2レンズを嵌め込み、第2レンズの前方側から第2レンズの前面に当接させるようにして、シールリングを装着した防水用レンズを嵌め込み、全てのレンズ(防水用レンズ、第2レンズ、第3レンズ、及び第4レンズ)の光軸を一致させつつ(調芯を行いつつ)、レンズホルダの先端部分を熱変形させて防水用レンズ及び他のレンズを固定した、防水用レンズ組立体(又はレンズユニット)が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【0003】
しかしながら、このレンズユニットにおいては、防水用レンズ、第2レンズ、第3レンズ、及び第4レンズが、光軸方向において全て接触した配置関係にあり、最前(最も外側)に位置する防水用レンズがその背後に位置する第2レンズに当接して第2レンズを押圧し、第2レンズが第3レンズを押圧し、第3レンズが第4レンズを押圧する構造となっているため、最前の防水用レンズに対して外部から外力(や衝撃力)等が加わった場合あるいはシールリングが変形(膨張)した場合等に、第2レンズ、第3レンズ、及び第3レンズにも影響が及んで光軸がずれる虞があり、又、逆に、第2レンズ、第3レンズ、及び第4レンズの位置ずれにより、防水用レンズが位置ずれを生じる虞もある。
さらに、防水用レンズの環状溝は、傾斜面(円錐状のテーパ面)をなすように形成されているため、シールリングは、光軸に垂直な径方向の圧縮変形(防水の為の弾性変形)以外に光軸に交差する方向の圧縮変形も受ける状態にあり、経時変化等によるシールリングの劣化、耐久性等が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−216706号公報
【特許文献2】特開2011−059396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、組付け作業の容易化、組付け時のシールリング(Oリング)への傷付き防止、低コスト化等を図りつつ、仮に最前(最も外側)に位置するレンズに外力(又は衝撃力)等が加わったとしても内部に配置されたレンズに影響が及ばないようにして光軸のずれ等を防止でき、全体として、防水性の向上、耐久性の向上等が図れるレンズユニット及びそれを搭載した撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンズユニットは、レンズの光軸方向において軸心をもつ筒状のレンズホルダと、レンズホルダ内において光軸方向に順次に配列されて保持される最前レンズ及び最前レンズの背後に配置される第2レンズを少なくとも含む複数のレンズと、最前レンズとレンズホルダの間に配置されたシールリングと、を備えたレンズユニットであって、上記最前レンズは、所定の外径をなす嵌合外周部と、嵌合外周部よりも縮径された円筒状の縮径外周部と、嵌合外周部及び縮径外周部を接続する環状面と、縮径外周部の後端に連続して形成された環状当接面を含み、上記レンズホルダは、最前レンズの嵌合外周部を嵌め込むと共に縮径外周部と光軸に垂直な径方向において対向する円筒状の嵌合内周部と、最前レンズの環状当接面を光軸方向において当接させるレンズ受け部と、最前レンズの環状面と光軸方向において対向する環状対向面と、最前レンズと非接触の状態で第2レンズを固定するレンズ固定部を含み、上記シールリングは、環状面及び環状対向面の少なくとも一方と非接触の状態で、縮径外周部及び嵌合内周部の間において径方向に圧縮して配置されている、ことを特徴としている。
この構成によれば、最前レンズと第2レンズとの関係において、第2レンズは、(第2レンズの背後に他のレンズを含む場合はそれらのレンズを押圧するようにして)レンズホルダのレンズ固定部により固定され、最前レンズは、第2レンズと非接触となるように、縮径外周部と嵌合内周部との間にシールリングを挟み込みつつ環状当接面をレンズ受け部に当接させると共に嵌合外周部を嵌合内周部に嵌合してレンズホルダに固定されるため、最前レンズに押し込むような外力(衝撃力)が加わったとしても、第2レンズ(第2レンズの背後に他のレンズを含む場合は、第2レンズ及び他のレンズ)に影響が及ぶのを防止することができる。また、シールリングは、径方向においてのみ圧縮された状態で嵌め込まれ、光軸方向においては最前レンズの環状面とレンズホルダの環状対向面との間において少なくとも一方の面と非接触となっているため、シールリングが膨張した場合にも、そのはみ出しを防止でき又その変形が光軸のずれに及ぼす影響を防止することができる。これにより、全体として、光軸のずれ等を防止でき、防水性の向上、耐久性の向上等を達成することができる。
【0007】
上記構成において、最前レンズの嵌合外周部は、レンズホルダの嵌合内周部に対して圧入されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、最前レンズの嵌合外周部がレンズホルダの嵌合内周部に対して圧入されているため、嵌合外周部と嵌合内周部の間からシールリングがはみ出すのを確実に防止できると共に、最前レンズをレンズホルダに対して堅固に固定することができる。
【0008】
上記構成において、シールリングの内径は、最前レンズの縮径外周部の外径よりも小さい、構成を採用することができる。
この構成によれば、シールリングを予め縮径外周部に嵌め込んだ後に、最前レンズをレンズホルダ(の嵌合内周部)に嵌め込むことで、シールリングの噛み込みや傷付き等を防止しつつ、最前レンズ及びシールリングを確実に所定位置に嵌め込んで固定することができ、それ故に、組付け作業の容易化を達成することができる。
【0009】
上記構成において、レンズ受け部は、環状に形成された環状受け面であり、環状対向面は、環状受け面よりも光軸方向の後方に向けて凹むように(凹状に)形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、最前レンズをレンズホルダに嵌め込む際に、最前レンズの環状当接面をレンズホルダの環状受け面に対して確実に密接させた状態に組み込むことができ、又、シールリングの収容空間が、両者の接触位置よりもさらに光軸方向の後方に向けて凹状に形成されているため、シールリングが膨張した場合でも、両者の接触界面にシールリングがはみ出す(挟まれる)のを防止することができる。
【0010】
上記構成において、レンズユニットは、最前レンズを熱カシメにより固定する熱カシメ部を含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、熱カシメ部のカシメにより、他の部品を用いることなく、低コスト化等を達成しつつ、最前レンズをより確実にレンズホルダに固定するこができる。
【0011】
また、本発明の撮像装置は、複数のレンズを保持したレンズ光学系と、光軸方向においてレンズ光学系の後方に配置された撮像素子と、レンズ光学系及び撮像素子を収容するハウジングを備えた撮像装置であって、上記レンズ光学系として、上記構成をなすレンズユニットのいずれかを採用する、ことを特徴としている。
この構成によれば、上記構成をなすレンズホルダを備えことにより、防水性、耐衝撃性等に優れ、特に、車載カメラ、監視カメラ等として野外環境下において使用されるのに適した撮像装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成をなすレンズユニットによれば、構造の簡素化、組付け作業の容易化、組付け時のシールリングへの傷付き防止、低コスト化等を達成しつつ、仮に最前(最も外側)に位置するレンズに外力(又は衝撃力)等が加わったとしても内部に配置されたレンズに影響が及ばないようにして光軸のずれ等を防止でき、全体として、防水性の向上、耐久性の向上等を達成でき、又、このレンズユニットを用いることで、車載カメラ、監視カメラ等として野外環境下において使用されるのに適した撮像装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るレンズユニットを搭載した撮像装置を示す分解斜視図である。
図2図1に示す撮像装置の断面図である。
図3図1に示す撮像装置に搭載したレンズユニットの外観斜視図である。
図4図3に示すレンズユニットの断面図である
図5図3に示すレンズユニットの組付け作業を示すものであり、(a)はシールリングを取り付けた最前レンズを吸着ヘッドで吸着した状態を示す断面図、(b)は吸着ヘッドで吸着した最前レンズをレンズホルダに嵌め込む状態を示す断面図である。
図6】本発明に係るレンズユニットの他の実施形態を示すものであり、(a)は前方斜めから視た外観斜視図、(b)は後方斜めから視た外観斜視図である。
図7図6に示すレンズユニットの分解斜視図である。
図8図6に示すレンズユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
この撮像装置は、車体の外部に設けられる車載カメラとして適用されるものであり、図1及び図2に示すように、レンズ光学系としてのレンズユニットU、光軸L方向においてレンズユニットUの後方に配置される撮像素子10、撮像素子10を実装した基板20、レンズユニットU及び基板20を収容するハウジングとしてのハウジング本体30及びハウジングカバー40等を備えている。
【0015】
撮像素子10は、例えば、CCD(電荷結合素子)であり、基板20に対して実装された後に、基板20と一緒にハウジング本体30内の所定位置(光軸L方向において、レンズユニットUの後方)に固定されるようになっている。
基板20は、図1に示すように、略矩形の外輪郭をなし、撮像素子10、その他の電子部品を実装するように形成されており、ハウジング本体30内の所定位置においてネジ等を用いて締結固定されるようになっている。
【0016】
ハウジング本体30は、樹脂材料等を用いて形成されており、図1及び図2に示すように、基板20を収容する収容部31、基板20を固定する固定部32、車体等に取り付けられる取付け部33、ハウジングカバー40をネジ等により締結して結合する結合部34等を備えている。
【0017】
ハウジングカバー40は、樹脂材料等を用いて形成されており、図1及び図2に示すように、レンズユニットUを収容する収容部41、レンズユニットUを位置決めして固定する固定部42、レンズユニットUの最前レンズ50を露出させる開口部43、ハウジング本体30の結合部34にネジ等により締結して結合される結合部44等を備えている。
【0018】
レンズユニットUは、図1図2図3図4に示すように、光軸L方向に軸心をもつ筒状のレンズホルダ50、レンズホルダ50に対して光軸L方向の前側から順次に配列されて固定される最前レンズ60、第2レンズ70、第2レンズ70の後方に配列される他の複数のレンズ80(第3レンズ81、第4レンズ82、第5レンズ83、第6レンズ84)、最前レンズ60とレンズホルダ50の間に配置されるシールリング90等を備えている。
【0019】
レンズホルダ50は、樹脂材料等を用いて、レンズの光軸L方向に軸心をもつ筒状に形成されており、図2図3図4に示すように、ハウジングカバー40の固定部42に位置決めして固定される鍔状部51、鍔状部51よりも光軸L方向の前方に形成されて最前レンズ60を収容する大径外筒部52、鍔状部51よりも光軸L方向の後方に形成されて第2レンズ70及び他のレンズ80を収容する小径外筒部53、最前レンズ60の嵌合外周部61を嵌め込むと共に縮径外周部62と光軸Lに垂直な径方向において対向する円筒状の嵌合内周部54、最前レンズ60の環状当接面64を光軸L方向において当接させるレンズ受け部としての環状受け面55、最前レンズ60の環状面63と光軸L方向において対向する環状対向面56、最前レンズ60と非接触の状態で第2レンズ70を固定するレンズ固定部57、他のレンズ80のうち第3レンズ81及び第4レンズ82を収容して保持する収容保持部58a及び環状当接部58b、他のレンズ80のうち第5レンズ83を収容して固定する(又は、適宜、口径板あるいは絞り板を挟み込んで固定する)レンズ固定部58c、第6レンズ84を光軸L方向の後方側から収容して固定するレンズ固定部59等を備えている。
【0020】
鍔状部51は、図1ないし図3に示すように、環状に形成されると共に、周方向において所定間隔をおいて形成された切り欠き51aを有し、レンズユニットUをハウジングカバー40に固定する際に、大径外筒部52を開口部43に通した状態で、固定部42に対して光軸L方向の位置及び光軸L回りの角度位置を位置決めしつつ固定されるようになっている。
大径外筒部52は、図2に示すように、ハウジングカバー40の開口部43に非接触にて通される外径寸法をなす円筒状の外周面を画定するように形成されており、又、光軸L方向の先端側において外径寸法を小さくして先細りに形成された環状の熱カシメ部52aを備えている。
尚、大径外筒部52は、必要に応じて、その外周面と開口部43の内周面との間に所望のシール部材を嵌め込むことも可能である。
小径外筒部53は、図2に示すように、第2レンズ70及び他のレンズ80を収容して保持するべく、大径外筒部52よりも小さい外径寸法をなす円筒状の外周面を画定するように形成されている。
【0021】
嵌合内周部54は、図4に示すように、最前レンズ60の嵌合外周部61を軽度の圧入状態で嵌め込むと共に縮径外周部62と光軸Lに垂直な径方向において所定の隙間をおいて対向する円筒状の内周面を画定するように形成されている。
環状受け面55は、図4に示すように、最前レンズ60の環状当接面64を光軸L方向において当接させて受けるように形成されており、第2レンズ70に対して最前レンズ60を非接触の状態に保持するべく、最前レンズ60のみを受けて光軸L方向において位置決めするものである。
【0022】
環状対向面56は、図4に示すように、嵌合内周部54と環状受け面55を接続する領域において、最前レンズ60の環状面63と光軸L方向において対向する環状の面を画定するように、かつ、環状受け面55よりも光軸L方向の後方に向けて凹むように(凹状に)形成されている。
ここでは、環状対向面56が環状受け面55よりも光軸L方向の後方に向けて凹むように(凹状に)形成されているため、最前レンズ60をレンズホルダ50に嵌め込む際に、最前レンズ60の環状当接面64をレンズホルダ50の環状受け面55に対して確実に密接させた状態に組み込むことができ、又、シールリング90の収容空間が、両者の接触位置よりもさらに光軸L方向の後方に向けて凹状に形成されているため、シールリング90が膨張した場合でも、両者の接触界面にシールリング90がはみ出す(挟まれる)のを防止することができる。
レンズ固定部57は、図4に示すように、第2レンズ70を光軸L方向の前方から嵌め込んで収容し、その一部を接着剤等により接着固定し得うるように(例えば、接着剤溜め部を備えるように)形成されている。
【0023】
収容保持部58aは、図4に示すように、第3レンズ81及び第4レンズ82を光軸L方向において重ねて収容し得る内径寸法をなすように形成されている。
環状当接部58bは、図4に示すように、光軸L方向において第3レンズ81及び第4レンズ82を重ねた状態で第4レンズ82の後端面82bを当接させて受けるように形成され、光軸L方向の前方から嵌め込まれる第2レンズ70の後端面72と協働して、第3レンズ81及び第4レンズ82を挟み込んで固定する役割をなすようになっている。
レンズ固定部58cは、図4に示すように、他のレンズ80のうち第5レンズ83を光軸L方向の前方から嵌め込んで収容しつつ光軸L方向において位置決めし、その一部を接着剤等により接着固定し得うるように(例えば、接着剤溜め部を備えるように)形成されている。
レンズ固定部59は、図4に示すように、第6レンズ84を光軸L方向の後方から嵌め込んで収容しつつ光軸L方向において位置決めし、その一部を接着剤等により接着固定し得うるように(例えば、接着剤溜め部を備えるように)形成されている。
【0024】
最前レンズ60は、図2ないし図4に示すように、物体側に凸面及び像面側に凹面をもつメニスカス形状をなすと共に、レンズユニットUにおいて光軸L方向の最前に配置される広角のガラスレンズであり、所定の外径をなす嵌合外周部61、嵌合外周部61よりも縮径された円筒状の縮径外周部62、嵌合外周部61及び縮径外周部62を接続する環状面63、縮径外周部62の後端に連続して形成された環状当接面64等を備えている。
【0025】
嵌合外周部61は、図4に示すように、所定の外径寸法をなす円筒状の外周面を画定し、レンズホルダ50の嵌合内周部54に対して軽度の圧入状態にて嵌め込まれるように形成されている。
ここでは、嵌合外周部61がレンズホルダ50の嵌合内周部54に対して圧入される構造であるため、嵌合外周部61と嵌合内周部54の間からシールリング90がはみ出すのを確実に防止できると共に、最前レンズ60をレンズホルダ50に対して堅固に固定することができる。
【0026】
縮径外周部62は、図4に示すように、嵌合外周部61よりも小さい外径寸法をなす(縮径された)円筒状の外周面を画定し、シールリング90を嵌め込んで保持し得るように形成されている。ここで、縮径外周部62の外径寸法は、シールリング90の内径寸法よりも僅かに大きくなるように形成されている。
環状面63は、図4に示すように、嵌合外周部61と縮径外周部62を接続するように、段差領域において光軸L方向に向く環状の平面として形成され、最前レンズ60がレンズホルダ50に組み込まれた状態で、光軸L方向において環状対向面56と対向するようになっている。そして、環状面63は、シールリング90が縮径外周部62に予め嵌め込まれた状態で最前レンズ60がレンズホルダ50に組み込まれる際に、光軸L方向においてシールリング90を当接(接触)させて受けるようになっている。
環状当接面64は、図4に示すように、縮径外周部62の後端に連続して、光軸L方向に向く環状の平面として形成され、最前レンズ60がレンズホルダ50に組み込まれた状態で、光軸L方向において環状受け面55に当接するようになっている。
そして、最前レンズ60は、第2レンズ70及び第3レンズ81〜第5レンズ83が組み込まれた状態において、シールリング90を縮径外周部62に組み込み、光軸L方向の前方から嵌合内周部54に嵌め込まれて、第2レンズ70と非接触の状態で固定されるようになっている。
【0027】
第2レンズ70は、図2及び図4に示すように、物体側に凹面及び像面側に凹面をもつ両凹形状をなすと共に最前レンズ60の背後に配置されるプラスチックレンズであり、レンズホルダ50のレンズ固定部57に固定される固定部71、第3レンズ81の前端面81aに当接して押圧する後端面72等を備えている。
そして、第2レンズ70は、第5レンズ83が収容されて固定され、第3レンズ81及び第4レンズ82が重ねて収容された後に、第3レンズ81の前端面81aを押圧するように、光軸L方向の前方から嵌め込まれて接着剤等により固着されるようになっている。
【0028】
第3レンズ81は、図2及び図4に示すように、物体側に凸面及び像面側に凹面をもつメニスカス形状をなすと共に第2レンズ70の背後に配置されるプラスチックレンズであり、第2レンズ70の後端面72が当接する前端面81a、第4レンズ82の前端面82aに当接して押圧する後端面81b等を備えている。
そして、第3レンズ81は、第4レンズ82の前方から収容されて光軸L方向において、その後端面81bが第4レンズ82の前端面82aに当接して押圧するように重ねて配置され、第2レンズ70の後端面72により前端面81aが押圧されて固定されるようになっている。
【0029】
第4レンズ82は、図2及び図4に示すように、物体側に凸面及び像面側に凹面をもつメニスカス形状をなすと共に第3レンズ81の背後に配置されるプラスチックレンズであり、第3レンズ81の後端面81bが当接する前端面82a、レンズホルダ50の環状当接部58bに当接する後端面82b等を備えている。
そして、第4レンズ82は、第5レンズ83の前方から収容されて光軸L方向において、その後端面82bが環状当接部58bに当接するように配置され、第3レンズ81の後端面81bにより前端面82aが押圧されて固定されるようになっている。
【0030】
第5レンズ83は、図2及び図4に示すように、物体側に凸面及び像面側に平面をもつ凸平形状をなすと共に第4レンズ82の背後に配置されるプラスチックレンズであり、レンズホルダ50のレンズ固定部58cに当接する後端面83b等を備えている。
そして、第5レンズ83は、光軸L方向の前方からレンズホルダ50内に収容されて、その後端面83bがレンズ固定部58cに当接するように配置され、接着剤等により固着されるようになっている。
【0031】
第6レンズ84は、図2及び図4に示すように、物体側に凸面及び像面側に凸面をもつ両凸形状をなすと共に第5レンズ83の背後に配置されるプラスチックレンズであり、レンズホルダ50のレンズ固定部59に当接する前端面84a等を備えている。
そして、第6レンズ84は、光軸L方向の後方からレンズホルダ50内に収容されて、その前端面84aがレンズ固定部59に当接するように配置され、接着剤等により固着されるようになっている。
【0032】
シールリング90は、図1図2図4に示すように、ゴム材料を用いて環状に形成されたOリングであり、その内径寸法は最前レンズ60の縮径外周部62の外径寸法よりも僅かに小さく形成され、かつ、縮径外周部62に嵌め込まれて縮径外周部62と嵌合内周部54とが径方向において対向するように最前レンズ60がレンズホルダ50(の嵌合内周部54)に組み込まれた状態において、光軸Lに垂直な径方向において所定の圧縮代に圧縮され、光軸L方向において環状面63及び環状対向面56の少なくとも一方と非接触の状態となる寸法に形成されている。
ここでは、シールリング90の内径は最前レンズ60の縮径外周部62の外径よりも小さく形成されているため、シールリング90を予め縮径外周部62に嵌め込んだ後に、最前レンズ60をレンズホルダ50(の嵌合内周部54)に嵌め込む際に、シールリング90の噛み込みや傷付き等を防止できると共に、シールリング90の脱落を防止しつつ最前レンズ60及びシールリング90を確実に所定位置に嵌め込んで固定することができ、それ故に、組付け作業の容易化を達成することができる。
【0033】
次に、上記構成をなすレンズユニットUの組付け作業について、図5(a),(b)を参照しつつ説明する。
先ず、レンズホルダ50に対して、光軸L方向の後方からレンズ固定部59に第6レンズ84が嵌め込まれて接着剤等により固着され、光軸L方向の前方からレンズ固定部58cに第5レンズ83が嵌め込まれて接着剤等で固着され、第5レンズ83の前方から収容保持部58a及び環状当接部58bに第4レンズ82が嵌め込まれ、続けて第3レンズ81が嵌め込まれ、第3レンズ81の前方からレンズ固定部57に第2レンズ70が嵌め込まれて第3レンズ81及び第4レンズ82を押圧しつつ接着剤等により固着される。
続いて、図5(a)に示すように、吸着ヘッドHを用いて、最前レンズ60をエアー吸引により吸着保持し、縮径外周部62に対してシールリング90を嵌め込む。
続いて、図5(b)に示すように、第2レンズ70及び他のレンズ80(第3レンズ81〜第6レンズ84)を嵌め込んだレンズホルダ50を、治具J1,J2により位置決めして保持し、その状態において、吸着ヘッドHにより吸着保持した最前レンズ60(及びシールリング90)をレンズホルダ50の前方に近づけて、吸着ヘッドHを移動させつつ最前レンズ60(の嵌合外周部61)を嵌合内周部54に嵌め込んで、最前レンズ60の環状当接面64を環状受け面55に当接させる。
その後、熱カシメ機を用いて、熱カシメ部52aを熱変形させて熱カシメを施す。
以上により、レンズユニットUの組付けが完了する。尚、最前レンズ60、第2レンズ70、及び他のレンズ80(第3レンズ81、第4レンズ82、第5レンズ83、第6レンズ84)は、それぞれ、組付け時に所定の基準軸に対して光軸合わせが行われるようになっている。
【0034】
上記構成をなすレンズユニットUによれば、最前レンズ60と第2レンズ70との関係において、第2レンズ70は、他のレンズ80(第3レンズ81及び第4レンズ82)を押圧するようにしてレンズホルダ50のレンズ固定部57により固定され、最前レンズ60は、第2レンズ70と非接触となるように縮径外周部62と嵌合内周部54との間にシールリング90を挟み込みつつ環状当接面64を環状受け面55に当接させると共に嵌合外周部61を嵌合内周部54に嵌合してレンズホルダ50に固定されるため、最前レンズ60に押し込むような外力(衝撃力)が加わったとしても、第2レンズ70及び他のレンズ80(81,82)に影響が及ぶのを防止することができる。
また、シールリング90は、光軸Lに垂直な径方向においてのみ圧縮された状態で嵌め込まれ、光軸L方向においては最前レンズ60の環状面63とレンズホルダ50の環状対向面56との間において少なくとも一方の面と非接触(非圧縮)となっているため、シールリング90が膨張した場合にも、そのはみ出しを防止でき又その変形が光軸Lのずれに及ぼす影響を防止することができる。これにより、全体として、光軸Lのずれ等を防止でき、防水性の向上、耐久性の向上等を達成することができる。
【0035】
図6ないし図8は、本発明に係るレンズユニットの他の実施形態を示すものであり、前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
この実施形態に係るレンズユニットU´は、図6(a),(b)、図7図8に示すように、光軸L方向に軸心をもつ筒状のレンズホルダ50´、レンズホルダ50´に対して光軸L方向の前側から順次に配列されて固定される最前レンズ60、第2レンズ70´、第2レンズ70´の後方に配列される、口径板100、第3レンズ81´、絞り板110、第4レンズ82´、最前レンズ60とレンズホルダ50´の間に配置されるシールリング90´等を備えている。
【0036】
レンズホルダ50´は、樹脂材料等を用いて、レンズの光軸L方向に軸心をもつ筒状に形成されており、図8に示すように、ハウジングカバー40の固定部42に位置決めして固定されると共に最前レンズ60を収容する大径外筒部52、大径外筒部52よりも光軸L方向の後方に形成されて第2レンズ70及び他のレンズ(第3レンズ81´、第4レンズ82´)並びに口径板100及び絞り板110を収容する小径外筒部53、最前レンズ60の嵌合外周部61を嵌め込むと共に縮径外周部62と光軸Lに垂直な径方向において対向する円筒状の嵌合内周部54、最前レンズ60の環状当接面64を光軸L方向において当接させるレンズ受け部としての環状受け面55、最前レンズ60の環状面63と光軸L方向において対向する環状対向面56´、最前レンズ60と非接触の状態で第2レンズ70´を固定するレンズ固定部57、第3レンズ81´及び第4レンズ82´を収容して保持する収容保持部58a及び環状当接部58b等を備えている。
環状対向面56´は、光軸L方向において、環状受け面55と同一面に位置するように形成されている。
【0037】
第2レンズ70´は、図8に示すように、物体側に凸面及び像面側に凹面をもつメニスカス形状をなすと共に最前レンズ60の背後に配置されるプラスチックレンズであり、レンズホルダ50´のレンズ固定部57に固定される固定部71、第3レンズ81´の前端面81aに口径板100を介して当接し押圧する後端面72等を備えている。
そして、第2レンズ70´は、第4レンズ82´、絞り板110、第3レンズ81´、口径板100が順次に重ねて収容された後に、口径板100を前方から押圧するように、光軸L方向の前方から嵌め込まれて接着剤等により固着されるようになっている。
【0038】
第3レンズ81´は、図8に示すように、物体側に凸面及び像面側に凹面をもつメニスカス形状をなすと共に第2レンズ70´の背後に配置されるプラスチックレンズであり、第2レンズ70´の後端面72が口径板100を介して押圧する前端面81a、絞り板110を介して第4レンズ82´の前端面82aを押圧する後端面81b等を備えている。
そして、第3レンズ81´は、第4レンズ82´の前方から絞り板110を挟んで収容されて光軸L方向において押圧するように重ねて配置され、第2レンズ70´により口径板100を介して押圧されて固定されるようになっている。
【0039】
第4レンズ82´は、図8に示すように、物体側に凸面及び像面側に凸面をもつ両凸形状をなすと共に第3レンズ81´の背後に配置されるプラスチックレンズであり、第3レンズ81´の後端面81bにより絞り板110を介して押圧される前端面82a、レンズホルダ50´の環状当接部58bに当接する後端面82b等を備えている。
そして、第4レンズ82´は、後端面82bが環状当接部58bに当接するように配置され、第3レンズ81´により絞り板110を介して押圧されて固定されるようになっている。
【0040】
シールリング90´は、予めレンズホルダ50´の嵌合内周部54に嵌め込まれる寸法に形成されており、最前レンズ60の縮径外周部62と嵌合内周部54の間において、光軸Lに垂直な径方向に圧縮されて収容され、光軸L方向において環状面63及び環状対向面56´の少なくとも一方の面(ここでは、環状面63)と非接触の状態となるように配置されている。
【0041】
上記構成をなすレンズユニットU´においても、前述の実施形態と同様に、最前レンズ60と第2レンズ70´との関係において、第2レンズ70´は、他のレンズ(第3レンズ81´及び第4レンズ82´)及び口径板110並びに絞り板110を押圧するようにしてレンズホルダ50´のレンズ固定部57により固定され、最前レンズ60は、第2レンズ70´と非接触となるように、縮径外周部62と嵌合内周部54との間にシールリング90´を挟み込みつつ、環状当接面64を環状受け面55に当接させると共に嵌合外周部61を嵌合内周部54に嵌合してレンズホルダ50´に固定されるため、最前レンズ60に押し込むような外力(衝撃力)が加わったとしても、第2レンズ70´及び他のレンズ(81´,82´)に影響が及ぶのを防止することができる。
また、シールリング90´は、光軸Lに垂直な径方向においてのみ圧縮された状態で嵌め込まれ、光軸L方向においては最前レンズ60の環状面63とレンズホルダ50´の環状対向面56´との間において少なくとも一方の面(環状面63)と非接触(非圧縮)となっているため、シールリング90´が膨張した場合にも、そのはみ出しを防止でき又その変形が光軸Lのずれに及ぼす影響を防止することができる。これにより、全体として、光軸Lのずれ等を防止でき、防水性の向上、耐久性の向上等を達成することができる。
【0042】
上記実施形態においては、レンズユニットU,U´に組み込まれるレンズとして、最前レンズ60及び第2レンズ70,70´の他に、第3レンズ81,81´、第4レンズ82,82´、あるいは、第5レンズ83及び第6レンズ84を含む場合を示したが、これに限定されるものではなく、その他の組み合わせからなるレンズ構成において、本発明を採用してもよい。
上記実施形態においては、最前レンズ60の嵌合外周部61をレンズホルダ50,50´の嵌合内周部54に対して圧入により嵌合する構成を示したが、これに限定されるものではなく、圧入代が零の嵌合状態を適用してもよい。
上記実施形態においては、最前レンズ60の環状当接面64を受けるレンズ受け部として、環状受け面55を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、最前レンズ60を光軸L方向の所定位置に位置決めし得るものであれば、環状以外の周方向に等間隔に配置された複数の突起、又は他の形態を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上述べたように、本発明のレンズユニットは、構造の簡素化、組付け作業の容易化、組付け時のシールリングへの傷付き防止、低コスト化等を達成しつつ、仮に最前(最も外側)に位置するレンズに外力(又は衝撃力)等が加わったとしても内部に配置されたレンズに影響が及ばないようにして光軸のずれ等を防止でき、全体として、防水性の向上、耐久性の向上等を達成できるため、車載カメラ、監視カメラ等として野外環境下において使用される撮像装置のレンズ光学系として適用できるのは勿論のこと、その他の激しい環境下で使用される撮像装置のレンズ光学系としても有用である。
【符号の説明】
【0044】
10 撮像素子
20 基板
30 ハウジング本体(ハウジング)
40 ハウジングカバー(ハウジング)
U,U´ レンズユニット(レンズ光学系)
L 光軸
50,50´ レンズホルダ
52a 熱カシメ部
54 嵌合内周部
55 環状受け面(レンズ受け部)
56,56´ 環状対向面
57 レンズ固定部
60 最前レンズ
61 嵌合外周部
62 縮径外周部
63 環状面
64 環状当接面
70,70´ 第2レンズ
81,81´ 第3レンズ
82,82´ 第4レンズ
83 第5レンズ
84 第6レンズ
90,90´ シールリング
100 口径板
110 絞り板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8