特許第6332967号(P6332967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6332967駆動車軸及び従車軸を持つシャシにおける圧力平衡を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332967
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】駆動車軸及び従車軸を持つシャシにおける圧力平衡を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20180521BHJP
   B60G 9/00 20060101ALI20180521BHJP
   B60G 17/016 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B60G17/015 C
   B60G9/00
   B60G17/016
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-541226(P2013-541226)
(86)(22)【出願日】2011年10月21日
(65)【公表番号】特表2014-501657(P2014-501657A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2011005316
(87)【国際公開番号】WO2012072164
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年10月20日
【審判番号】不服2017-3114(P2017-3114/J1)
【審判請求日】2017年3月2日
(31)【優先権主張番号】102010053264.9
(32)【優先日】2010年12月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596055475
【氏名又は名称】ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】WABCO GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ゲラミ−マネツシユ, ビジヤン
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス, ヨハン
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 中田 善邦
【審判官】 島田 信一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−324135(JP,A)
【文献】 特開2001−206036(JP,A)
【文献】 特開2001−213130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後車軸として1つの駆動車軸(TA)及び少なくとも1つの従車軸(LA)を持つシャシ(1)における、駆動車軸(TA)と従車軸(LA)の間でけん引力制御に従って従車軸(LA)の圧力室内の圧力を低下させるとともに駆動車軸(TA)の圧力室内の圧力を上昇させる空気圧力分配を行うことで圧力平衡を制御する方法であって、車両の左側(L)及び車両の右側(R)にあるそれぞれ1つの圧力室(2,3,4,5)がこれらの車軸(TA,LA)に付属し、これらの圧力室を介して、それぞれの駆動車軸(TA)及び従車軸(LA)へ作用する圧力(PLAL,PLAR,PTAL,PTAR)が制御されるものにおいて、
両の左側(L)における駆動車軸(TA)の圧力室(2)と従車軸(LA)の圧力室(3)の圧力関係、車両の右側(R)における駆動車軸(TA)の圧力室(4)と従車軸(LA)の圧力室(5)の圧力関係とを互いに独立に制御し、前記駆動車軸における右側及び左側の個々の車輪ごとの滑りを表す信号(ASR)に基いて、滑りを持つ車輪のある車両の側において、それぞれ独立に側ごとのけん引力制御に従って従車軸(LA)の圧力室内の圧力を低下させるとともに駆動車軸(TA)の圧力室内の圧力を上昇させることで側ごとに従車軸(LA)から駆動車軸(TA)へ荷重移動が行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
各圧力室(2,3,4,5)の圧力(PLAL,PLAR,PTAL,PTAR)が、それぞれの圧力室(2,3,4,5)に付属する圧力センサ(S2,S3,S4,S5)の1つにより、個々に検出され、かつ独立に調節されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
車両の左側(L)における駆動車軸(TA)と従車軸(LA)との間の圧力室(2,3)のそれぞれの圧力関係の調節と、車両の右側(R)における駆動車軸(TA)と従車軸(LA)との間の圧力室(4,5)のそれぞれの圧力関係の調節が、同時に行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
信号として少なくとも1つの圧力室(2,3,4,5)の圧力(PLAL,PLAR,PTAL,PTAR)及び/又は駆動滑り制御装置の前記信号(ASR)が検出されることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の方法。
【請求項5】
走行状態の前記信号(ASR)に依存して、現れる遠心力(F)に抗するシャシ(1)の傾斜(角β)が調節されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
圧力関係により駆動車軸(TA)と少なくとも1つの従車軸(LA)との間のシャシ(1)の所望の傾斜(角α)及び/又はレベル変化が調節されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
荷重増大が、時間的に最大15分の所定の荷重増大期間(A)に、かつ/又は最大速度30km/hに限定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
圧力室(2,3,4,5)の変化される圧力関係が、前記信号(ASR)の変化の際特定の期間(B)の間維持されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの駆動車軸及び駆動機能のない少なくとも1つの従車軸を持つ車両のシャシにおける圧力平衡を制御する方法であって、車両の左側及び車両の右側にあるそれぞれ1つの圧力室がこれらの車軸に付属し、これらの圧力室を介して、それぞれの車軸へ作用する圧力が制御されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両特に実用車では、大抵の場合一番前の複数の後車軸が駆動され、後の車軸は純粋な従車軸又は昇降軸として駆動機能を持っていない。
【0003】
このような車両の発進の際、付着摩擦が不足するため、駆動車輪が空転することがある。なぜならば、発進中に車体の運動により、従車軸の付加的な負荷及び駆動車軸の荷重軽減が必然的に起こるからである。駆動車軸のこの荷重軽減が特定の閾値を下回ると、これにより駆動車輪の空転が起こる。
【0004】
車軸の圧力室のベローばね内の必要な空気圧力は、負荷状況から生じる。主車軸と付加車軸との間の空気圧力分配は、けん引力制御の原理に従って行われ、その際両方の後車軸の各々に対して、荷物を完全におろされた車軸に相当する空気ばね圧力の固有な許容最大値が規定されている。けん引力制御の目的は、増大する積載の際まず駆動車軸を負荷し、しかも走行レベル維持しながら最大許容圧力まで、駆動車軸の空気ばねベローの給気によって負荷することである。更に積載を増大すると、付加車軸の空気ばねベローに給気することによって、この積載を付加車軸が引き受け、その際駆動車軸のベローの圧力が最大許容圧力に保たれる。
【0005】
その際従車軸のベローの圧力は、立法機関により規定される最低値まで低下される。中継制御は、その際駆動車軸のベローに必然的に生じる高い圧力が、限られた期間にわたってのみ生じるようにする。この時間閾値に達した後、この制御は従車軸のベローを再び正常動作圧力へ切換える。それにより駆動車軸のベローの過負荷が、とりわけ完全積載車両において回避される。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006011183号明細書から、1つの駆動車軸及び1つの昇降車軸を持つ空気圧懸架車両のけん引力制御方法が公知である。車両の両側で駆動車軸及び昇降車軸の空気ばね圧力を測定することによって、車両の片側に、最大許容空気ばね圧力を超過する過荷重が存在するか否かが検査される。
【0007】
車両の過積載のため、車両の少なくとも片側で駆動車軸及び昇降車軸のベロー圧力が最大許容値を超過する場合、システムが過荷重モードへ切換わり、もはやけん引力ではなく、駆動車軸と付加車軸との間の圧力関係が、両方の車軸の許容ベロー圧力に従って制御される。
【0008】
けん引力制御から過荷重モードにおける圧力関係制御へ移行する際、駆動車軸に存在するけん引力を少なくとも十分維持するため、過荷重が車両全体のため一括して検出されるのではなく、車両の片側だけで過荷重を検出する際、まずこの過荷重側のみが圧力関係制御に従って過荷重モードで制御され、他方の軽い方の車両側が適合を伴うけん引力制御のままにされる。車両の側ごとの過荷重検出のため、駆動車軸から従車軸へ圧力が移されることによって、負担過重が回避される。
【0009】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3545222号明細書は、従車軸のベローの圧力を車両の全過重に合わせて異なるように制御するのを可能にする空気懸架車両の従車軸の部分荷重軽減装置を開示している。このため従車軸のベロー圧力が、駆動車軸のベローの圧力により、特定の比例圧力調整器を介して制御される。それにより両方の車軸の間の固定圧力関係としての両方の車軸の同期化、又は車両の左側及び右側の両車軸の固定的な圧力関係として両方の車軸の車両左側及び右側の同期化が提案される。
【0010】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3815612号明細書により、少なくとも1つの車体と少なくとも1つの車軸との間に設けられる複数の空気ばね素子を持つ圧縮空気援助車両懸架装置の制御方法が公知である。その際制御装置により、複数の空気ばね素子の間の大きすぎる圧力差異が検出され、圧力平衡制御過程が開始される。これにより、車体のレベル及び空気ばね素子の個々の群への荷重の分配を許容できないほど強く変化することなしに、複数の空気ばね素子の間、例えば1つの車軸において車両の左側及び右側の空気ばね素子の間の大きすぎる圧力差異をなくすことができる。これにより異なる空気ばね素子における圧力の偏差を回避することができる。
【0011】
更にドイツ連邦共和国特許出願公開第3841476号明細書は、車両の右側及び左側用の車両懸架装置のレベル制御に関する。例えば車体の重量がほぼ完全に第1の空気ばね素子により支えられるか、又は他の車軸により引継がれるので、レベルの低下の際、車両の1つの側がこのレベルより上に留まるのを避けるため、レベルが既に許容範囲内にある車両側で、平均車両レベルを許容値に調節するため、レベルが既に許容範囲内にある車両側で、制御装置により排気が行われるようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の基礎になっている課題は、このように作動せしめられる車両のけん引力を著しく改善できる方法を創造することである。特に車両運転者にとって実際上特に困難な発進状況を簡単化する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴に記載の方法によって解決される。本発明のそれ以外の構成は従属請求項からわかる。
【0014】
本発明によれば、1つの駆動車軸及び駆動機能のない少なくとも1つの従車軸を持つシャシにおける圧力平衡を制御する方法が意図され、車両の左側及び車両の右側にあるそれぞれ1つの圧力室がこれらの車軸に付属し、これらの圧力室を介して、圧力又はそれぞれの車軸上の荷重が制御され、車両の両側のための荷重分布を変化するため、検出される信号に関係して、駆動車軸と少なくとも1つの従車軸との間の圧力室の圧力関係が無関係に調節される。本発明による方法によって、駆動車軸及び駆動されない従車軸の実際にベローばねとして構成される圧力室における圧力分布が制御されて、信号に関係して、駆動車軸と少なくとも1つの従車軸との間の側ごとのけん引力制御を行うことができる。信号は特に駆動車軸の車輪の車輪回転数又は制御情報を含み、この制御情報から駆動車軸及び従車軸のすべての車輪の滑りが誘導される。検出される走行状態の信号に基いて、側ごとに、駆動車軸への時間的に限定された一時的な荷重移動が行われる。この方法は、車両の両側に対して車輪と車道との間の異なる大きさの摩擦係数が存在するいわゆるμスプリット状態においても、著しく改善されたけん引力を可能にする。その際けん引力の改善のため車両の両側のために駆動車軸への荷重を独立して高める目的で、個々の圧力関係が調節可能である。
【0015】
もちろん従車軸の荷重軽減のみによっても、荷重分布の変化を行うことができるのかもしれないしかしそうではなく、検出される荷重状態又は走行状態の信号に基いて、駆動車軸に作用する荷重が車両の少なくとも1つの側で高められると、所定のレベルを下回る従車軸の望ましくない低下が回避されるという特別な効果を生じる。それどころかレベルはけん引力の改善のため短時間高められ、それにより最低地上高の増大も有利に行われる。
【0016】
本発明による方法の特に有利な構成によれば、各圧力室の圧力が、それぞれの圧力室に付属する圧力センサの1つにより、個々に検出され、かつ独立に調節される。これにより個々の調節が実現可能であることによって、けん引力の一層の改善が行われる。更に圧力室の検出される圧力を、操作器としても荷重状態の指示器としても使用することができる。更に適当な弁回路によって、共通な圧力センサにより複数の圧力室の圧力を検出することができる。
【0017】
駆動車軸と従車軸との間のそれぞれの圧力関係の調節が車両の両側で同時に行われる時にも、同様に特別な効果を期待させる別の変更が行われる。これにより車両の両側に対してそれぞれの走行状況にとって最適な荷重分布が、共通な方法段階において調節されることによって、不安定な走行状態が確実に排除される。こうして特にμスプリット発進状況において、駆動される車輪の空転を確実に回避することができる。
【0018】
信号としてそれぞれの圧力室の圧力及び/又は駆動滑り制御装置の信号が検出される方法の構成は、特に実際に近い。これにより存在するシステムのそれ自体既に使用可能な制御情報を利用でき、圧力分配の制御の際適当に考慮することができる。このために駆動滑り制御及びけん引力制御(ATC自動けん引力制御)の制御情報が適している。
【0019】
更に走行状態の検出される信号に関係して、現れる遠心力に抗するシャシの傾斜が調節されると、更に調節可能な傾斜が有利に利用可能である。このような傾斜技術により、カーブの一層速い通過、又は減少したと感じられる横加速度による快適さの改善が行われる。
【0020】
本発明による方法の同様に特に有利な他の展開では、圧力関係により駆動車軸と少なくとも1つの従車軸との間のシャシの所望の傾斜及び/又はレベル変化が調節される。これにより例えば荷降ろしのため、車体の所望の傾斜を、一時的に特に車両の停止中に調節するのに成功する。その際車両の両側に関してかつ/又は駆動車軸と少なくとも1つの従車軸との間で傾斜を調節できるので、車両の前側と後側との間の傾斜、車両の左側と右側との間の傾斜、又は両方の傾斜面の重なりが調節される。このような傾斜は、例えば公共旅客近距離交通の旅客輸送用車両において、いわゆる“ひざ曲げ”による旅客の乗車及び降車を、車両のこの側で車両レベルが設定された最小値に達するまで、容易にする。実用車ではこのような傾斜により、荷重状態を短時間高め、こうしてけん引力に適当に影響を及ぼすことができる。
【0021】
更に30km/hの最大速度に達するまで又は数分例えば最大15分の期間に荷重増大が限定され、こうして所望の走行条件に達した後駆動車輪の荷重軽減を調節し、僅かな滑りで走行作動に最適な荷重分布に戻ると、摩耗傾向の増大を回避するために有利である。
【0022】
その際特に適切な変化により、信号の変化の際荷重増大が特定時間保持されることがわかる。増大するけん引力需要がなくなった後、“遅れ”とも称されるこの段階において、調節された荷重分布がまずなお一定に保持され、それから例えば連続的に標準荷重分布へ戻される。
【0023】
もちろんこの方法は駆動車軸とただ1つの従車軸との組合わせに限定されない。むしろ複数の駆動車軸及び/又は従車軸を本発明による方法によって制御することができ、従車軸のうち1つ又は複数を昇降車軸として構成することができる。その際変形例によれば、特に車両の両側に対して異なる従車軸の間の圧力室の圧力関係も独立に調節することができる。
【0024】
更に方法を、成功の見込みのあるやり方で、路面車両特に実用車に対しても、鉄道車両に対するように使用することができる。
【0025】
本発明は種々の実施例を可能にする。その基本原理を更に明らかにするため、その1つが図面に示され、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】 方法が使用される車両の原理図を示す。
図2a】 滑り信号の時間的経過の線図を示す。
図2b】 従車軸において調節される荷重の時間的経過の線図を示す。
図2c】 駆動車軸において調節される荷重の時間的経過の線図を示す。
図3】 従車軸に対する駆動車軸のシャシの傾斜の原理図を示す。
図4】 車両の右側に対する車両の左側のシャシの傾斜の原理図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、かじ取りされる前車軸A、駆動車軸TA及び昇降ベロー6により持上げ可能で昇降車軸として構成される駆動なしの従車軸LAを持つそれ以上図示しない自動車のシャシ1の原理図を平面図で示す。センサ装置により検出されて走行状態に関係する信号に関係して、駆動車軸TAの左の車輪TAL及び右の車輪TARの滑り、及び従車軸LAの左の車輪LAL及び右の車輪LARの滑りを誘導するための制御情報に基いて、側ごとのけん引力制御が行われる。走行状態のこれらの信号に基いて、図2aに示すように増大された滑りSを持つ車輪TAL,TAR,LAL,LARのある車両の側が、増大された荷重を一時的に加えられる。このために、従車軸LAから駆動車軸TAへ荷重移動が行われる。この目的のため、図1に示す圧力室3及び5内の圧力が低下され、圧力室2及び4内の圧力が上昇される。圧力室2,3,4及び5の各々に、それぞれの圧力を検出しかつ監視するため、別々の圧力センサS2,S3,S4及びS5が付属している。
【0028】
路床の状態により、このように増大される滑りが、車両の片側に対してのみ、例えば車両の右側の車輪TAR及びLARにおいて検出される場合、荷重移動を車両の1つの側へ限定することもまた、車両の他方の側とは差をもたせてこの側で行うことできる。このため例えば右側の車輪で滑りが検出される場合には、車両の側に設けられる駆動車軸TAの圧力室4の圧力が増大されるとともに、車両の右側に設けられる従車軸LAの圧力室の圧力が減少される。一方、例えば左側の車輪で滑りが検出される場合には、車両の左側に設けられる駆動車軸TAの圧力室2の圧力が増大されるとともに、車両の左側に設けられる従車軸LAの圧力室の圧力が減少される。これにより、とりわけいわゆるμスプリット状態においても、著しく改善されるけん引力が得られる。第1の圧力室2、第2の圧力室3、第3の圧力室4、第4の圧力室5及び昇降ベロー6を、高さ変化可能な空気ばねとして、特に巻きベロー空気ばね及び/又は折畳みベロー空気ばねとして構成することができる。
【0029】
本発明による方法は、なお図2a〜2cにより補足して示され、これらの図は、車両の右側R及び左側Lに対して別々に、対応する時間的経過を示している。図2aには、まず図1に示す駆動車軸TAの車輪TAL,TARの滑りsを表す信号ASRの経過を示している。この線図は、第1の時間部分I,第3の時間部分III及び第4の時間部分IVの経過において無視できる滑りsを示し、この滑りsは、飛躍的に高められるが第2の時間部分IIに限定される滑りによってのみ中断されている。
【0030】
図1に示されて車両の左側に設けられる駆動車軸TAの圧力室2及び従車軸LAの圧力室3内の圧力PLAL、及び車両の右側に設けられる駆動車軸TAの圧力室4及び従車軸LAの圧力室5内の圧力PLARは、第2の時間部分IIにおいて、図2b及び2cからわかるように、車両のそれぞれの側で独立に、第1の時間部分I及び第4の時間部分IVにおける標準値から始まって、第2の時間部分IIにおいて検出される増大した滑りのため、駆動車軸TAの車両左側における圧力PTAL、及び駆動車軸TAの車両右側における圧力PTARが、それぞれの側で独立に同時に増大される。第2の時間部分IIの終わりにそれぞれ達する圧力PLAL,PLAR,PTAL,PTARは、次の第3の時間部分IIIにおいて、既に無視できる滑りとは無関係に、この第3の時間部分IIIにおいてまずなお期間B中一定に保たれ、こうして力伝達の安定化を行う。時間部分II,III及びIVは、こうして荷重増大期間Aを規定する。
【0031】
車両の右側Rに対する左側Lのそれぞれの線図経過の図2a〜2bに示す相違は1例にすぎない。もちろんこれらの相違は、実際にはもっと著しいものであってもよい。更に第1の時間部分I、第2の時間部分II,第3の時間部分III又は第4の時間部分IVは、車両の両側L,Rに対して異なる大きさにされてもよい。更に逆に車両の左側L及び右側Rのそれぞれの経過が一致していてもよい。
【0032】
図3には、従車軸LAに対する駆動車軸TAのシャシの傾斜も補足的に角αで示され、一層よく理解できるようにするため、傾斜が誇張して示されている。角αは、車両縦方向において、駆動車軸TA及び従車軸LAにより形成される仮想面に対する車体例えば積載面の床の傾斜を表すか、又は簡単に表現すれば、車両縦方向において傾斜しない車道表面に対する車体の傾斜が角αにより表される。傾斜を調節するため、駆動車軸TAの圧力室2の圧力が増大され、従車軸LAの圧力室3の圧力が低下される。
【0033】
更に図4には、走行作動中に現れる遠心力Fとは逆に、車両の右側に対して車両の左側のシャシの傾斜も、同様に図において誇張された角βで示されている。角βは、車両横方向において、駆動車軸TAと従車軸LAとにより形成される仮想面に対する車体例えば積載面の床の側方傾斜を表すか、又は簡単に表現すれば、角βによって、図示しない道路表面に対する車体の側方傾斜が表される。わかるように、これに対して駆動車軸TAの左側TALの圧力室2が、駆動車軸TAの右の車輪TARの圧力室4より高い圧力を加えられる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4