特許第6332983号(P6332983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332983
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ガスサンプリング装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20180521BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20180521BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G01M3/20 L
   G01N1/00 101S
   G01N1/22 B
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-14842(P2014-14842)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-141135(P2015-141135A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 信二
(72)【発明者】
【氏名】久世 恭
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−188024(JP,A)
【文献】 特開2004−286726(JP,A)
【文献】 特開2003−347195(JP,A)
【文献】 特開2013−217757(JP,A)
【文献】 特開2004−053404(JP,A)
【文献】 実開平07−014371(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/070954(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知ガスをガス成分毎に分離するガス成分分離部と、
前記ガス成分分離部の下流に配設し、被検知ガスの濃度を検出する濃度測定部と、
前記濃度測定部および分岐手段の下流に配設し、所望のガス成分の濃度を検出するガス検知部と、を備え、
前記濃度測定部および前記分岐手段の間に、ガスの流動遅延を生じさせる遅延部を備え
前記分岐手段は、前記所望のガス成分が前記ガス検知部を流下する経路と、前記所望のガス成分が前記ガス検知部へ流下しない経路とを切り替え可能に構成してあり、
前記分岐手段は、前記濃度測定部で前記所望のガス成分の濃度を検出したとき、前記所望のガス成分が前記ガス検知部へ流下しない経路に切り替えるように制御するように構成したガスサンプリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知ガスをサンプリングするガスサンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下工事現場、あるいはガス管埋設備近辺において、地中に埋設したガス管等から漏洩した都市ガスを地表において適切に検出することは、ガス洩れ対策上非常に重要な課題である。可燃性ガスの漏洩が発生している場合に、漏洩部位の迅速な特定を容易に行うことができれば、爆発等の災害の発生頻度が減少する。
【0003】
都市ガスは、メタンを主成分とするもの、或いは、プロパンを主成分とするもの等が知られているが、メタンを主成分とする都市ガスは、主成分ガスであるメタン(CH4)と、副成分ガスであるエタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)とを可燃性ガスとして有している(体積比は、通常、メタン:エタン:プロパン:ブタン=88:6:4:2)。そのため、都市ガスの主成分ガスであるメタンを検知することが、都市ガス漏洩の有無を判断する基準の1つとなっている。
【0004】
尚、本発明における従来技術となる上述した都市ガス検出装置は、一般的な技術であるため、特許文献等の従来技術文献は示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス管等から都市ガスが漏洩すると地表にはメタンが存在することになるが、一方、メタンは地中より自然発生することがあり、この場合においても地表にはメタンが存在することになる。そのため、都市ガス漏洩基準がメタン検出の有無のみでは、上述した都市ガス検出装置を用いて検出されたメタンは、地中に埋設したガス管等から漏洩した都市ガス由来のものか、自然発生したものであるかの識別は困難である。
【0006】
従って、本発明の目的は、確実に都市ガスを識別可能なガスサンプリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るガスサンプリング装置の特徴構成は、被検知ガスをガス成分毎に分離するガス成分分離部と、前記ガス成分分離部の下流に配設し、被検知ガスの濃度を検出する濃度測定部と、前記濃度測定部および分岐手段の下流に配設し、所望のガス成分の濃度を検出するガス検知部と、を備え、前記濃度測定部および前記分岐手段の間に、ガスの流動遅延を生じさせる遅延部を備え、前記分岐手段は、前記所望のガス成分が前記ガス検知部を流下する経路と、前記所望のガス成分が前記ガス検知部へ流下しない経路とを切り替え可能に構成してあり、前記分岐手段は、前記濃度測定部で前記所望のガス成分の濃度を検出したとき、前記所望のガス成分が前記ガス検知部へ流下しない経路に切り替えるように制御するように構成した点にある。
【0008】
本発明のガスサンプリング装置では、例えば都市ガスの漏洩を検知する際、分岐手段を備え、種類の異なるガス検知素子として、所望のガス成分(エタン)の濃度を検出するガス検知部、および、被検知ガス(メタン、エタン、プロパン、ブタンなど)の濃度を検出する濃度測定部を備えるため、分岐手段を切り替え操作することで、所望のガス成分検知モードおよび被検知ガス測定モードの何れかを行なうことができる。これにより、種類の異なるガス検知素子を役割分担させて、地中に埋設したガス管付近に存在する被検知ガスや当該被検知ガスに含まれる所望のガス成分の有無を検知することができる。
【0009】
特に、本構成では、ガス成分分離部により所望のガス成分を分離することで、所望のガス成分(エタン)の濃度をガス検知部によって確実に検知できる。即ち、都市ガス漏洩の有無を判断する基準を、例えば都市ガスの副成分ガスであるエタン検知の有無を考慮して、確実に都市ガスの検知識別が行える。
【0010】
また、ガス成分検知モードにおいて所望のガス成分の濃度を濃度測定部で検出した場合はガス検知部で所望のガス成分の濃度を検出する必要がなく、かつガス検知部に不必要に所望のガス成分を流下させたくない場合がある。本発明ではガス検知部の上流に遅延部を備えることができ、当該遅延部によってガスの流動遅延を生じさせることができる。そのため、濃度測定部で所望のガス成分の濃度を検出する時間を十分確保できることとなり、ガスの濃度を検出している間に、分岐手段によってガス検知部へ流下する経路に切り替わってしまうのを防止できる。従って、濃度測定部で所望のガス成分の濃度を検出すれば、分岐手段によってガス検知部へ流下しない経路となるように制御する。そのため、本構成では、ガス検知部への所望のガス成分の流下を最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のガスサンプリング装置の概要を示す図である。
図2】ガス流下経路を示す概略図である((a)被検知ガス測定モード、(b)ガス成分検知モード、(c)パージモード)。
図3】別実施形態のパージモードにおけるガス流下経路を示す概略図である。
図4】別実施形態のパージモードにおけるガス流下経路を示す概略図である。
図5】ガス成分分離部に充填される分離剤を種々変更してガス検知した結果、発生した出力信号の結果を示したグラフである。
図6】パージモードの有無によって可燃性ガス(プロパン)の除去の程度を調べた結果を示したグラフである((a)20℃、(b)40℃(加熱))。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明のガスサンプリング装置は、被検知ガスをサンプリングして当該被検知ガスの濃度を測定する。本実施形態では、エタンを精度よく検知して、サンプリングした被検知ガスに都市ガスが含まれるか否かを判定する態様について説明する。
【0013】
図1に示したように、本発明のガスサンプリング装置Xは、被検知ガスをガス成分毎に分離するガス成分分離部10と、ガス成分分離部10の下流に配設し、被検知ガスの濃度を検出する濃度測定部40と、濃度測定部40および分岐手段20の下流に配設し、所望のガス成分の濃度を検出するガス検知部30と、を備え、濃度測定部40および分岐手段20の間に、ガスの流動遅延を生じさせる遅延部60を備える。
また、分岐手段20は、所望のガス成分がガス検知部30を流下する経路と、所望のガス成分がガス検知部30へ流下しない経路とを切り替え可能に構成してあり、分岐手段20は、濃度測定部40で所望のガス成分の濃度を検出したとき、所望のガス成分がガス検知部30へ流下しない経路に切り替えるように制御するように構成してある。
【0014】
(ガス成分分離部)
ガス成分分離部10は、可燃性ガスの分子量に応じて流動遅延を生じさせてガス成分毎に分離可能に構成すれば、どのような態様であってもよい。本実施形態では、ガス成分分離部10は、都市ガスのガス成分のうち、メタンとエタンを分離するための分離剤が充填してあるカラムにより構成した場合について説明する。当該分離剤は活性炭が用いられる。当該分離剤は活性炭に限らず、都市ガスのガス成分を分離する場合には、酸化カルシウム(CaO)、二酸化珪素(SiO2)、活性アルミナ、PEG系部材、ユニカーボン部材、多孔質ポリマー等の少なくとも何れかを含有して構成すればよく、例えば酸化カルシウムと酸化珪素の混合粉末とすることも可能である。分離された各ガス成分はタイムラグをもって流動する。
ガス成分分離部10は、1つだけでなく複数設定することも可能であり、本実施形態では2つのガス成分分離部10(第一ガス成分分離部10a、第二ガス成分分離部10b)を備えた場合について説明する。このように複数のガス成分分離部10を備えることで、サンプリングしたガスが高濃度であっても、被検知ガスをガス成分毎に確実に分離することができる。
ガス成分分離部10は、分離剤に応じて適切な温度(例えば45℃)に維持して分離を行なうとよい。
【0015】
(分岐手段)
本実施形態では、流路50を分岐する分岐手段20を5つ(第一分岐手段20a〜第五分岐手段20e)備えた場合について説明する。当該分岐手段20は、例えば三方弁を使用することができるが、このような態様に限定されるものではない。
第一分岐手段20aは、ノズルなどで構成されたガス入口部1よりサンプリングしたガス、即ち、雰囲気ガス(1a)、或いは、地中よりサンプリングした被検知ガス(1b)の何れをガスサンプリング装置Xの内部に投入するかを切り替える。
第二分岐手段20bは、投入したガスにおいて、ガス成分分離部10を流下させるか否かを切り替える。
第三分岐手段20cは、第一ガス成分分離部10aからのガスを分岐する。
第四分岐手段20d,第五分岐手段20eは、ガス成分分離部10からのガスを分岐する。
これら分岐手段20a〜20eの開閉は、制御手段(図外)によって制御するとよい。
【0016】
(ガス検知部)
本実施形態のガス検知部30は、濃度測定部40および第五分岐手段20eの下流に配設する。また、本実施形態におけるガス検知部30は、ガス成分分離部10により分離されたガス成分を検知可能な半導体式ガス検知素子を使用した場合について説明する。
【0017】
半導体式ガス検知素子は、金属酸化物半導体表面でのガス吸着による熱伝導変化及び電気伝導度変化を電極で検出するように構成され、例えば白金、パラジウム、白金−パラジウム合金等の貴金属線に、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物を主成分とする金属酸化物半導体を塗布、乾燥後焼結成型してあるガス感応部を備えている。
このように構成された半導体式ガス検知素子は、可燃性ガスのうち分子量が大きいガス成分ほど高感度を示すものとなる。
【0018】
(濃度測定部)
濃度測定部40は、被検知ガスの濃度を検出する。本実施形態では、濃度測定部40として接触燃焼式ガス検知素子を使用した場合について説明する。
【0019】
接触燃焼式ガス検知素子は、アルミナ等の金属酸化物焼結体に白金等の貴金属触媒を担持したガス感応部としての燃焼触媒部を、白金等の貴金属線に設けてあり、燃焼触媒部において検知対象となる可燃性ガスを貴金属触媒と接触・燃焼させることで、燃焼の際に生じる温度変化を貴金属線の抵抗値の変化として検出する。可燃性ガスの燃焼熱は可燃性ガスの濃度に比例し、貴金属線の抵抗値は燃焼熱に比例するため、可燃性ガスの燃焼による貴金属線の抵抗の変化値を測定することによって可燃性ガスの濃度を測定することができる。
【0020】
濃度測定部40は、ガス成分分離部10の上流あるいは下流の何れに配設してもよい。本実施形態における濃度測定部40は、ガス成分分離部10の下流、かつ、第四分岐手段20dの下流に配設した場合について説明する。
【0021】
(遅延部)
遅延部60は、濃度測定部40および第五分岐手段20eの間に備える。本実施形態の遅延部60は、流動経路をコイル状に形成することにより、可燃性ガスの流動遅延を生じさせているが、このような態様に限定されるものではない。
【0022】
(その他の部材)
ガスサンプリング装置Xの電源は電池を用いるとよいが、これに限られるものではない。電池を用いることによって、ガスサンプリング装置Xを小型化することができる。電池を使用する場合は、できるだけ電力の消費を抑えるのが好ましいため、ポンプを小型化することや、パージモードを加熱しないで行っても加熱して行った場合と同様の効果が認められる態様を採用することが好ましい(後述の実施例2,3参照)。
【0023】
第一分岐手段20aおよび第二分岐手段20bの間には、サンプリングしたガスを、ガス成分分離部10に投入する前に一旦貯留するガス貯留部2を備える。本実施形態のガス貯留部2は、20〜30mL程度の容量を有する。サンプリングしたガスをこのガス貯留部2の内部に所定時間(例えば10秒程度)流下させることで、ガス貯留部2の内部は確実にサンプリングしたガスで満たされる。この状態でガス貯留部2の内部のガスをガス成分分離部10に投入すれば、サンプリングしたガスを確実に分離することができる。
【0024】
ガス検知部30の下流には、ポンプPが配管50を介して接続されている。ポンプPの下流には、ガス流量を検知する流量検知部3が配設されている。ポンプPを作動することにより、雰囲気ガスおよび被検知ガスは吸引され、ガス成分分離部10、ガス検知部30などを経てガス排気口4から排出される。尚、ポンプPの配設位置は、ガス検知部30の下流に限らず、ガス検知部30の上流であってもかまわない。
【0025】
検知された結果発生した出力信号は、被検知ガスに含まれる都市ガス成分(エタン)を演算部(図外)にて演算し、必要に応じてその演算結果を表示部(図外)にて表示する。また、演算結果が所定値以上の濃度の都市ガスを含むと判定された場合は、警報部(図外)により、アラーム等の手段により使用者に知らせることが可能である。
【0026】
(ガス流下経路について)
上述したガスサンプリング装置Xは、複数の分岐手段20を備えており、動作態様に応じてガスを流下させる経路を変更することができる。本実施形態では、(i)被検知ガス
測定モード、(ii)ガス成分検知モード、(iii)パージモード、の3つのモードについて説明する。
【0027】
(i)被検知ガス測定モード
被検知ガス測定モードでは、地中に埋設したガス管付近に含まれる被検知ガスの濃度を検出する。例えば、都市ガス13Aは、可燃性ガスとしてメタン、エタン、プロパンおよびブタンが含まれている。被検知ガス測定モードでは、これら全ての可燃性ガスの濃度を検出する。従って、このモードでは、ガス成分を分離するガス成分分離部10を流下させずに濃度測定部40を流下させるように各分岐手段20a〜20eを制御する(図2(a))。
【0028】
(ii)ガス成分検知モード
ガス成分検知モードでは、被検知ガスに含まれる所望のガス成分(エタンなど)の濃度を検出する。従って、このモードでは、まず被検知ガスを流下させてガス貯留部2に貯留し(流下させる経路は、図2(a)のフローと同じ)、その後、流路を切り替えてガス成分を分離するガス成分分離部10に雰囲気ガスを流下させて、他のガスと分離して流動した所望のガス成分がガス検知部30を流下するように各分岐手段20a〜20eを制御する(図2(b))。被検知ガスを流す順番は、第一ガス成分分離部10a、第二ガス成分分離部10bの順である。
【0029】
(iii)パージモード
パージモードでは、ガス成分分離部10の内部に留まっている可燃性ガスを清浄な空気(雰囲気ガス)によって押し出すように、各分岐手段20a〜20eを制御する(図2(c))。即ち、パージモードでは、被検知ガス検知モードでガス成分分離部10を流下するガスの方向と反対の方向で空気を流すことにより、ガス成分分離部10の内部に留まっている可燃性ガスを除去する。第一ガス成分分離部10aおよび第二ガス成分分離部10bに直列的に空気を流して両ガス成分分離部10a、10bをパージする場合には、空気を流す順番は、第二ガス成分分離部10b、第一ガス成分分離部10aの順である。このパージモードは、都市ガスの漏洩検知が終了した後などに行なうとよい。
【0030】
都市ガスの漏洩を検知する際、例えばサンプリングした被検知ガスをガス貯留部2の内部を流下させて、(i)被検知ガス測定モードにより、地中に埋設したガス管付近に含ま
れる被検知ガスの濃度を濃度測定部40にて検出する。このとき、例えば被検知ガスにメタンが含まれていた場合、地中に埋設したガス管等から漏洩した都市ガス由来のメタンであるか、自然発生したメタンが可燃性ガスとして検出される。そのため、所定時間(約10秒)経過後に、(ii)ガス成分検知モードに切り替えて被検知ガスに含まれる所望のガス成分(エタン)の有無をガス検知部30にて検出する。このとき、当該ガス検知部30にてエタンが検出されれば、都市ガスの漏洩が検知されたと確実に判定できる。一方、(ii)ガス成分検知モードにおいてエタンが検出されない場合は、(i)被検知ガス測定モ
ードで検出された可燃性ガスは都市ガスではなく自然発生したメタンであると判定できる。
【0031】
このように本発明のガスサンプリング装置Xでは、都市ガスの漏洩を検知する際、分岐手段20を備え、種類の異なるガス検知素子、即ち、所望のガス成分の濃度を検出するガス検知部30、および、被検知ガスの濃度を検出する濃度測定部40を備えるため、分岐手段20を切り替え操作することで(i)被検知ガス測定モードおよび(ii)ガス成分検
知モードを行なうことができる。これにより、地中に埋設したガス管付近に存在する被検知ガスや当該被検知ガスに含まれる所望のガス成分の有無を検知することができる。
特に、本構成では、ガス成分分離部10によりガス成分を分離することで、所望のガス成分(エタン)の濃度を確実に検知できる。即ち、都市ガス漏洩の有無を判断する基準を、都市ガスの副成分ガスであるエタン検知の有無を考慮して、確実に都市ガスの検知識別が行える。
【0032】
また、(ii)ガス成分検知モードにおいて所望のガス成分の濃度を濃度測定部40で検出した場合はガス検知部30で所望のガス成分の濃度を検出する必要がなく、かつガス検知部30に不必要に所望のガス成分を流下させたくない場合がある。本発明では、濃度測定部40および第五分岐手段20eの間に遅延部60を備えている。即ち、ガス検知部30の上流に遅延部60を備えることができ、当該遅延部60によってガスの流動遅延を生じさせることができる。そのため、濃度測定部60で所望のガス成分の濃度を検出する時間を十分確保できることとなり、ガスの濃度を検出している間に、第五分岐手段20eによってガス検知部30へ流下する経路に切り替わってしまうのを防止できる。従って、濃度測定部40で所望のガス成分の濃度を検出すれば、第五分岐手段20eによってガス検知部へ流下しない経路となるように制御する。そのため、本構成では、ガス検知部30への所望のガス成分の流下を最小限に抑制することができる。
【0033】
〔別実施形態1〕
上述した実施形態におけるパージモードとは異なる態様のパージモードについて説明する(図3,4)。本実施形態では、2つのガス成分分離部10a,10bを設け、濃度測定部40はガス検知部30と直列になるように配設し、分岐手段20a〜20hを制御する。
【0034】
本実施形態では、第一ガス成分分離部10aおよび第二ガス成分分離部10bにおいて、被検知ガス検知モードでこれらガス成分分離部10を流下するガスの方向と反対の方向で空気を流すことにより、ガス成分分離部10の内部に留まっている可燃性ガスを除去するパージを行っている。
【0035】
図3(a)では、空気を流す順番は第二ガス成分分離部10b、第一ガス成分分離部10aの順とした。図3(b)では第一ガス成分分離部10aのみにおいて空気を流し、図4(c)では第二ガス成分分離部10bのみにおいて空気を流し、図4(d)では第一ガス成分分離部10aおよび第二ガス成分分離部10bにおいて同時に、すなわち並列して空気を流すことにより、パージを行っている。
【0036】
また、パージを2段階で行うように上記のパージモードを組み合わせることも可能である。例えば、まず、第二ガス成分分離部10bのみのパージを行い(図4(c))、第二ガス成分分離部10bにおいて残留物が無くなったことがガス検知部30或いは濃度測定部40によって確認されれば、第一ガス成分分離部10aおよび第二ガス成分分離部10bにおいてパージを行う(図3(a))ように制御する。このようにパージできることによって、ガス成分分離部10a,10bにおいて残留物の残留量が異なる場合であっても、効率よく残留物の除去を行うことができる。
また、上記のように様々なパージを行うことができるので、ガス成分分離部10の使用状態や残留物の付着の程度によって、最適な残留物の除去を行うことができる。
【0037】
〔別実施形態2〕
上述した実施形態では、濃度測定部40は、ガス成分分離部10の下流に配設した場合について説明した。しかし、このような態様に限らず、濃度測定部40をガス成分分離部10の上流、例えば、第一分岐手段20aおよび第二分岐手段20bの間に配設してもよい(図外)。
【実施例】
【0038】
〔実施例1〕
ガス成分分離部に充填される分離剤を種々変更して、メタンおよびエタンの分離の様子を調べた。
【0039】
分離剤は、活性炭、ポラパックN、活性アルミナを使用した(ジーエルサイエンス社製)。カラム条件は、活性炭が3.0cm、ポラパックNが70cm、活性アルミナが70cmとした(共通条件:カラムid:3mm、充填剤粒径80/100メッシュ)。実験条件は、温度40℃とし、流量は、活性炭が100mL/分、ポラパックNが20mL/分、活性アルミナが20mL/分とした。
サンプルガスの濃度は、メタン440ppm、エタン30ppmとし、ガス注入量を5mL/分とした。
【0040】
ガス成分分離部によって分離され、検知された結果発生した出力信号の結果を図5に示した。この結果、分離剤の充填量が少ない場合においても、活性炭のメタンおよびエタンの分離が優れているものと認められ、特にエタンの分離が優れているものと認められた。
【0041】
〔実施例2〕
ガスサンプリング装置Xとして機能するために、所定の流量は確保する必要がある。本発明のガスサンプリング装置Xは、小型化実現のために、ポンプも小型化したものを用いるのがよい。また、電力消費の観点からも、小型化したポンプを用いるのがよい。しかしながら、小型化したポンプを使用すれば、ポンプの能力に制限がかかる。そのため、例えば100mL/分のガス流量を達成するのに必要な圧力を評価した。
【0042】
長さを1〜10cmの間で種々変更したカラムを使用し、圧力測定点はガス成分分離部10の下流かつ第四分岐手段20dの上流とし、圧力測定点においてマノメータを使用して圧力を測定した。結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
このように、所定の流量を維持でき、かつポンプへの負荷を所定値以下(例えば−15kPa以下)とするためには、カラムの長さが長いと達成できず、ある程度、カラムの長さが短い範囲に決まってくるものと認められた。
【0045】
〔実施例3〕
上述したパージモード(逆パージ)において、可燃性ガス(プロパン)の除去の程度を、順パージ(順方向に流下)の場合と比較した。この比較は、流下させる空気の温度を、20℃および40℃(加熱)について行った。
【0046】
カラム条件は、カラムの長さ3cm、カラムid:3mm、充填剤粒径80/100メッシュとし、逆パージの場合、順パージの場合ともに流量を580mL/分とした。結果を図6((a)20℃、(b)40℃)に示した。
【0047】
この結果、20℃の場合、逆パージを行った場合においては、250秒経過後ではプロパンの出力はゼロ付近まで低下したのに対して、順パージを行った場合は、250秒経過後では400ΔmV程度の出力が得られた。40℃(加熱)の場合では、逆パージを行った場合においてプロパンの出力がゼロ付近まで低下した時間が150秒程度であり、順パージを行った場合は、150秒経過後では400ΔmV程度の出力が得られた。
【0048】
従って、20℃および40℃(加熱)について、逆パージを行った場合においてプロパンの出力がゼロ付近まで低下した時間が異なるものの、同様の傾向を示すものと認められた。これより、逆パージを行うことによりガス成分分離部10の可燃性ガスを確実に除去することができ、この効果は加熱を行わない場合および加熱を行った場合において同程度の効果が認められた。
実施例1〜3より、分離剤として活性炭を用いることで、カラムの長さが短くても(充填量が少なくても)十分なガス成分の分離を行うことができるので、例えば小型のポンプを用いる場合でも、十分なガス成分の分離を行うことができることがわかる。
また、カラムの長さを短くし、分離剤として活性炭を用いることで加熱を行わなくても、十分な残留物の除去を行うことができることがわかる。
従って、電池を電源としても、十分なガス成分の分離と残留物の除去を実現することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、被検知ガスをサンプリングするガスサンプリング装置に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
X ガスサンプリング装置
10 ガス成分分離部
20 分岐手段
30 ガス検知部
40 濃度測定部
60 遅延部
図1
図2
図3
図4
図5
図6