【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0026】
(実施例1)
1.ビニルフェロセン−メタクリル酸メチル共重合体[Poly(vinyl ferrocene-co-methyl methacrylate);poly(Vf-co-MMA)]の合成
重合試験管に、ビニルフェロセン(Vf;Sigma-Aldrich Co.製)を5.40ミリモル、メタクリル酸メチル(MMA;関東化学株式会社製)を48.0ミリモル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;関東化学株式会社製)を0.54ミリモル、トルエン(関東化学株式会社製)を5.0ミリリットルを加え、真空封管とし、70℃で24時間重合処理を行った。重合処理後、反応溶液を過剰のメタノール(関東化学株式会社製)中に滴下し、生成したPoly(Vf-co-MMA)を吸引濾過した。その後、得られたPoly(Vf-co-MMA)を再びトルエン中に溶かし、同様の操作を2回繰り返した後、減圧乾燥させてから使用した。
【0027】
得られたPoly(Vf-co-MMA)の分子量は1.3×10
4、ビニルフェロセン含有量は9.3モル%であった。
【0028】
2.カーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド粒子の製造(1段階法)
図1に示すように、還流冷却器を取り付けた試験管にPoly(Vf-co-MMA)を0.05g、カーボンナノチューブとして多層カーボンナノチューブ(MW-CNT;Nanocyl Ltd.製)を0.025g、表面がグラファイト化したダイヤモンド粒子(GD;住石マテリアルズ株式会社製)を0.1g加え、次いで、無水塩化アルミニウム(AlCl
3;関東化学株式会社製)を92.4mgとアルミニウム粉(Al;粒子径53μm〜150μm)を4.73mg、反応溶媒として1,4-ジオキサン(関東化学株式会社製)を10ミリリットル加えた。
【0029】
そして、窒素気流中で、マグネチックスターラーで攪拌しながら80℃で24時間グラフト化反応させた。反応後、メタノールを加え、塩化アルミニウムの活性を失活させて反応を停止させた。また、反応後に得られた生成物中におけるアルミニウムの除去は、生成物を超音波照射により溶媒中へ分散させ、数分後、沈殿したアルミニウムを除去した。
【0030】
なお、上澄み液には非グラフトポリマーも含まれているので、これを取り除くため、反応生成物をポリマーの良溶媒であるジオキサン中へ分散させ、約5分間超音波洗浄を行い、その後1.5×10
4rpmで約40分間遠心分離を行って、非グラフトポリマーが溶解している上澄み液を除去した。この操作を3回繰り返し、非グラフトポリマーを除去した。
【0031】
さらに、生成物中に含まれている塩化アルミニウムの除去は、塩化アルミニウムが塩酸中に溶解するので、1モル/リットルの希塩酸を用いて超音波洗浄を行い、その後遠心分離を行って上澄み液を除去することにより行った。得られたカーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド粒子を減圧下、50℃で十分乾燥させた。なお、未反応のカーボンナノチューブの分離は、ダイヤモンド微粒子とカーボンナノチューブとの比重差を利用して行った。
【0032】
得られたカーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド微粒子の表面を走査型電子顕微鏡(SEM;日本電子株式会社製)で撮影した。
図2Aは、処理前のダイヤモンド粒子の表面を撮影した画像を示し、
図2Bは、処理後のダイヤモンド粒子の表面を撮影した画像を示す。これらの画像を比較すると、ダイヤモンド粒子の表面がカーボンナノチューブにより被覆されていることがわかる。
【0033】
(実施例2)
図
5に示すように、Poly(Vf-co-MMA)及びグラファイト化ダイヤモンド粒子(GD)をグラフト化した後カーボンナノチューブ(CNT)と反応させる2段階法によりカーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド粒子を製造した。
【0034】
1.Poly(Vf-co-MMA)グラフト化ダイヤモンド粒子の合成
還流冷却器を取り付けた試験管に、実施例1で用いたグラファイト化ダイヤモンド粒子(GD)を0.1gと実施例1で得られたPoly(Vf-co-MMA)を0.05g加え、次いで、実施例1と同様に、無水塩化アルミニウム92.4mg及びアルミニウム粉4.73mg、反応溶媒として1,4-ジオキサンを10ミリリットル加え、窒素気流中で、マグネチックスターラーで攪拌しながら80℃で24時間グラフト化反応させた。反応後、メタノールを加え、塩化アルミニウムの活性を失活させて反応を停止させた。また、反応後に得られた生成物中におけるアルミニウムの除去は、生成物を超音波照射により溶媒中へ分散させ、数分後、沈殿したアルミニウムを除去した。
【0035】
なお、上澄み液には非グラフトポリマーも含まれているので、これを取り除くため、反応生成物をポリマーの良溶媒であるジオキサン中へ分散させ、約5分間超音波洗浄を行い、その後1.5×10
4rpmで約40分間遠心分離を行って、非グラフトポリマーが溶解している上澄み液を除去した。この操作を3回繰り返し、非グラフトポリマーを除去した。
【0036】
さらに、生成物中に含まれている塩化アルミニウムの除去は、塩化アルミニウムが塩酸中に溶解するので、1モル/リットルの希塩酸を用いて超音波洗浄を行い、その後遠心分離を行って上澄み液を除去することにより行った。得られたPoly(Vf-co-MMA)グラフト化ダイヤモンド粒子を減圧下、50℃で十分乾燥させた。ダイヤモンド粒子へのPoly(Vf-co-MMA)のグラフト率(グラフトしたポリマーのダイヤモンド粒子に対する質量%)は、32.7%であった。
【0037】
2.Poly(Vf-co-MMA)グラフト化ダイヤモンド粒子とカーボンナノチューブとの反応
還流冷却器を取り付けた試験管に、得られたPoly(Vf-co-MMA)グラフト化ダイヤモンド粒子0.05g及び実施例1で用いたカーボンナノチューブ0.025gを加え、次いで、実施例1と同様に、無水塩化アルミニウム92.4mg及びアルミニウム粉4.73mg、反応溶媒として1,4-ジオキサンを10ミリリットル加え、窒素気流中で、マグネチックスターラーで攪拌しながら80℃で24時間反応させた。反応後、メタノールを加え、塩化アルミニウムの活性を失活させて反応を停止させた。また、反応後に得られた生成物中におけるアルミニウムの除去は、前述の方法と同様に行った。
【0038】
なお、未反応のカーボンナノチューブの分離は、実施例1と同様に、ダイヤモンド粒子とカーボンナノチューブとの比重差を利用して行った。得られたカーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド粒子の表面をSEMで撮影した。
図4に撮影した画像を示す。撮影画像をみると、ダイヤモンド粒子の表面がカーボンナノチューブにより被覆されていることがわかる。
【0039】
(実施例3)
図
3に示すように、Poly(Vf-co-MMA)及びカーボンナノチューブ(CNT)をグラフト化した後グラファイト化ダイヤモンド粒子(GD)と反応させる2段階法によりカーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド粒子を製造した。
【0040】
1.Poly(Vf-co-MMA)グラフト化カーボンナノチューブの合成
還流冷却器を取り付けた試験管に、実施例1で用いたカーボンナノチューブ0.1gとPoly(Vf-co-MMA)0.1gを加え、次いで、実施例1と同様に、無水塩化アルミニウム92.4mg及びアルミニウム粉4.73mg、反応溶媒として1,4-ジオキサンを20ミリリットル加え、窒素気流中で、マグネチックスターラーで攪拌しながら80℃で24時間グラフト化反応させた。反応後、メタノールを加え、塩化アルミニウムの活性を失活させて反応を停止させた。また、反応後に得られた生成物中におけるアルミニウムの除去は、生成物を超音波照射により溶媒中へ分散させ、数分後、沈殿したアルミニウムを除去した。
【0041】
なお、上澄み液には非グラフトポリマーも含まれているので、これを取り除くため、反応生成物をポリマーの良溶媒であるジオキサン中へ分散させ、約5分間超音波洗浄を行い、その後1.5×10
4rpmで約40分間遠心分離を行って、非グラフトポリマーが溶解している上澄み液を除去した。この操作を3回繰り返し、非グラフトポリマーを除去した。
【0042】
さらに、生成物中に含まれている塩化アルミニウムの除去は、塩化アルミニウムが塩酸中に溶解するので、1モル/リットルの希塩酸を用いて超音波洗浄を行い、その後遠心分離を行って上澄み液を除去することにより行った。得られたPoly(Vf-co-MMA)グラフト化カーボンナノチューブを減圧下、50℃で十分乾燥させた。なお、カーボンナノチューブへのPoly(Vf-co-MMA)のグラフト率(グラフトしたポリマーのカーボンナノチューブに対する質量%)は54.5%であった。
【0043】
2.Poly(Vf-co-MMA)グラフト化カーボンナノチューブとダイヤモンド粒子との反応
還流冷却器を取り付けた試験管に、得られたPoly(Vf-co-MMA)グラフト化カーボンナノチューブ0.05g及び実施例1で用いたダイヤモンド粒子0.05gを加え、次いで、実施例1と同様に、無水塩化アルミニウム92.4mg及びアルミニウム粉4.73mg、反応溶媒として1,4-ジオキサンを10ミリリットルを加え、窒素気流中で、マグネチックスターラーで攪拌しながら80℃で24時間反応させた。反応後、メタノールを加え、塩化アルミニウムの活性を失活させて反応を停止させた。また、反応後に得られた生成物中におけるアルミニウムの除去は、1.と同様の方法で行った。なお、未反応カーボンナノチューブの分離は、実施例1と同様に、ダイヤモンド粒子とカーボンナノチューブとの比重差を利用して行った。得られたカーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド粒子の表面をSEMで撮影した。
図6に撮影した画像を示す。撮影画像をみると、ダイヤモンド粒子の表面がカーボンナノチューブにより被覆されていることがわかる。
【0044】
(実施例4)
作製されたカーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド粒子を純水中に1g/リットルの濃度で分散させ、超音波処理により十分に分散させた後、カチオン性界面活性剤(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)を0.02g/リットルの濃度となるように添加し、さらに超音波処理により十分に分散させた。
【0045】
得られたダイヤモンド微粒子及び界面活性剤が均一に分散した分散液を金属めっき液に添加し、下記の組成のめっき液を調製した。
・硫酸ニッケル四水和物500g/リットル
・塩化ニッケル5g/リットル
・ホウ酸10g/リットル
・カーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド粒子10g/リットル
【0046】
調製しためっき液は、スルファミン酸又は炭酸ニッケル溶液を適宜添加してpH5.0に調整した。次に、めっき液の温度を60℃(めっき液の使用温度)に昇温させた。このとき、攪拌によりめっき液中のカーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド微粒子は、良好な分散状態を維持しており、製造されためっき液は、使用温度に昇温しても安定した分散状態を保持することが確認できた。分散状態は、凝集による沈殿或いは浮遊物の有無を目視でチェックして良好な分散状態であることを確認した。
【0047】
調製したカーボンナノチューブ被覆ダイヤモンド粒子含有めっき液を用いて、ピアノ線(線径0.12mm;トクセン工業株式会社製)に脱脂、下地処理、ダイヤモンド粒子固着めっき処理(電流密度:1A/dm
2)、最後に仕上げめっき(電流密度:3A/dm
2)による砥粒の固着処理を行い、ソーワイヤを製造した。
【0048】
得られたソーワイヤ及び従来のソーワイヤをシングルワイヤソー(株式会社タカトリ製)によるシリコンインゴットの切削を行うことで、砥粒保持力向上の検証を行った。切削加工条件は以下の通りである。
<単結晶シリコン切削条件>
・ワークサイズ 直径150mm×長さ125mm
・ワイヤ仕様 直径0.12mm
・固着したダイヤモンド粒子 粒径10μm〜20μm
・線速度 800m/分
・ワイヤピッチ 1.0mm
・張力 20N
・クーラント ユシロ化学工業株式会社製
・シングルワイヤソー WSD−K2(株式会社タカトリ製)
・切断時間 30分
・ワイヤ供給量 0.3m/分
【0049】
評価方法としては、シリコンの移動量を30mm/回とし、昇降速度を1.2mm/分にて切削を行い、これを3回繰り返した後のソーワイヤ表面のダイヤモンド砥粒の残存個数を観察した。その結果、従来品に比べて得られたソーワイヤは、表面のダイヤモンド粒子が多く残存しており、切削時におけるダイヤモンド粒子の保持力の向上が認められた。