(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333002
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】少なくとも1つの容器を取扱う装置および方法
(51)【国際特許分類】
B67C 3/00 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
B67C3/00 Z
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-46579(P2014-46579)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2014-193752(P2014-193752A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2017年1月27日
(31)【優先権主張番号】10 2013 102 516.1
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508120916
【氏名又は名称】クロネス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ゼルナー ユルゲン
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−126239(JP,A)
【文献】
特開2008−207434(JP,A)
【文献】
特開平03−210266(JP,A)
【文献】
特表2003−513861(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0015269(US,A1)
【文献】
特開2008−068494(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第19945500(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/00−11/06
B65B 1/00− 3/36
B29C 49/00−49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料充填プラントにおいて少なくとも1つの容器を充填物で充填することと、容器の二次成形を行なうことの少なくとも一方を行なう、少なくとも1つの容器を取扱う装置(1)であって、
所定の雰囲気を含み、前記容器の取扱いが行なわれる隔離チャンバ(2)と、
前記容器を前記隔離チャンバ(2)に搬入し、前記隔離チャンバ(2)から搬出するための少なくとも1つの容器通路(30、32)と、
前記容器通路(30、32)および前記隔離チャンバ(2)から空気を吸い出す吸引装置(4)と、
前記隔離チャンバ(2)へ供給される空気を調製する供給空気調製ユニット(5)と、を備えており、
前記吸引装置(4)は、前記容器通路(30、32)および前記隔離チャンバ(2)から吸い出された前記空気の少なくとも一部が、新たな調製のために前記供給空気調製ユニット(5)へ供給されるように、前記供給空気調製ユニット(5)と接続されていることを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
前記吸引装置(4)と前記供給空気調製ユニット(5)の間に分流器(6)が設けられており、当該分流器(6)は、前記吸い出された空気のうち前記供給空気調製ユニット(5)に供給される体積を変化させることを特徴とする、
請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記供給空気調製ユニット(5)は、外気を前記供給空気調製ユニット(5)に供給する外気供給部(8)に接続されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記供給空気調製ユニット(5)は、屋外気を前記供給空気調製ユニット(5)に供給する屋外気供給部(9)に接続されていることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
周囲の条件、屋外の条件、および装置(1)に要求される動作条件に基づいて、前記供給空気調製ユニット(5)に供給される吸い出された空気、屋外気、外気の少なくとも1つの比率を制御する制御システムが設けられている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
H2O2を含む消毒剤と殺菌剤の少なくとも一方を除去するコールドトラップ(7)が前記吸引装置(4)の下流かつ分流器(6)の上流に設けられていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記供給空気調製ユニット(5)は、容器取扱いプラントにおける複数の空気消費部へ供給される空気を調整する中央供給空気調製ユニットとして設けられていることを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記供給空気調製ユニット(5)は、少なくとも1つの無菌フィルタ、少なくとも1つの温度制御装置、少なくとも1つのコールドトラップ(7)、少なくとも1つの湿度調節手段の少なくとも1つを備えていることを特徴とする、
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記吸い出された空気のうち前記供給空気調製ユニット(5)へ供給されない一部から熱エネルギーを抽出するように配置され、当該熱エネルギーを前記供給空気調製ユニット(5)、外気供給部(8)、および屋外気供給部(9)の少なくとも1つへ供給する熱交換器(90)が設けられていることを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
消毒剤と清浄剤の少なくとも一方を破壊する少なくとも1つの触媒が、前記吸引装置(4)の下流に配置されていることを特徴とする、
請求項1から9のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記供給空気調製ユニット(5)において、隔離チャンバ(2)へ供給される空気に対して気体のH2O2を含む消毒剤と洗浄剤の少なくとも一方の投与が行なわれることを特徴とする、
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
隔離チャンバ(2)へ供給される空気を調整するに際し、充填バルブ、製品供給ライン、供給導管、冶具のキャビティの少なくとも1つの表面が、コールドトラップ(7)を通過した冷却剤で冷却されうることを特徴とする、
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項13】
充填物で容器を充填することと、容器の二次成形を行なうことの少なくとも一方を行なう容器の取扱い方法であって、
前記取扱いは、隔離チャンバ(2)内で行なわれ、
容器は少なくとも1つの容器通路(30、32)を介して前記隔離チャンバ(2)へ搬入され、
供給空気調製ユニット(5)により前記隔離チャンバ(2)内に所定の雰囲気が形成され、
前記隔離チャンバ(2)および前記容器通路(30、32)から吸引装置(4)によって空気が吸い出され、
前記容器通路(30、32)および前記隔離チャンバ(2)から前記吸引装置(4)によって吸い出された前記空気の少なくとも一部が、前記供給空気調製ユニット(5)へ送り戻されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの容器を取扱う装置および方法に関し、好ましくは、飲料充填プラントにおける容器への充填物の充填と、容器の二次成形(例えば、プリフォームを充填物が充填される容器に成形する延伸ブロー成形)の少なくとも一方を行なう装置および方法に関する。なお、当該容器の取扱いは、隔離チャンバ内で行なわれる。
【背景技術】
【0002】
容器の取扱いにあたっては、特に飲料の低温無菌充填プラントなどにおいて容器を充填物で充填するにあたっては、容器の取扱いそのものは、いわゆる隔離チャンバの内部で行なわれることが知られている。隔離チャンバとは、周囲から密閉隔離され、所定の雰囲気が存在している空間を意味する。所定の雰囲気とは、例えば、周囲よりも細菌数、胞子数、粒子数が少なく、所定の温度と制御された湿度の少なくとも一方を有する。そのような隔離チャンバには、当該所定の大気を得るために、供給空気調製ユニットにより調製された空気が供給されることが一般的である。供給空気調製ユニットにおいては、例えばフィルタシステムを用いて空気が清浄化され、適当な除湿機あるいは加湿器を用いて所定の湿度とされ、適当な温度制御手段により所定の温度が得られる。
【0003】
飲料充填プラントにおいて飲料の低温無菌充填(例えば乳製品で容器を充填)を行なうにあたっては、少なくとも充填エリアが特定の温度を超えないこと、および充填中における細菌や胞子の進入が低減されることが必要とされる。隔離チャンバにおいては、充填そのものだけでなく、例えば充填される容器の滅菌と封止の少なくとも一方が行なわれることにより、これらの取扱い工程に係る所定の環境条件も維持されうる。充填物の保存期間に関して根本的に重要なのは、細菌数および胞子数が少ないことである。充填物の細菌汚染が少なければ、保存可能期間が長くなる。細菌の増殖は、隔離チャンバ内の温度を下げることによって遅延されうる。
【0004】
湿った空気から凝結した水は、それが濡らす装置の表面に既に存在している微生物の増殖を促進しうる。凝結は、例えば、充填物の流れや別の冷却装置によって冷やされた充填バルブ、供給路、製品供給ライン上において、あるいは、プリフォームが成形される成形具の冷却されたキャビティ上において起こりうる。したがって、衛生的に許容されうる容器の取扱いを行なうために、このような凝結は回避されねばならない。
【0005】
従来技術として、中央供給空気調製ユニットを経由して調製された空気が隔離チャンバに供給される構成が知られている。この中央供給空気調製ユニットは、隔離チャンバを取り囲む領域(例えば、容器を取扱う装置が設置されている製造施設)から空気を吸入することが普通である。この外気は、次いで濾過手段、除湿器あるいは加湿器、および温度制御装置による処理を受け、隔離チャンバに供給される。この空気は、次いで隔離チャンバから制御された方法で吸い出されることが好ましい。これにより、調製空気の供給が一定になされることを確実にし、充填物や容器取扱い工程において導入された粒子を隔離チャンバから除去するためである。そのような粒子は、隔離チャンバ内の雰囲気および消毒蒸気などにとって有害である。プラントの作業者を保護するために、消毒蒸気の抜き取りも行なわれる。
【0006】
供給空気の調製は、隔離チャンバ内の雰囲気を周囲から密閉隔離するために、隔離チャンバ内を周囲に対して正圧に保つ役割もある。抜き出された空気は、屋外に排出されることが普通である。
【0007】
取扱いの対象となる容器を隔離チャンバに対して搬入あるいは搬出するために、少なくとも1つの容器搬送路(隔離搬入路あるいは隔離搬出路)が設けられることが普通である。当該容器搬送路は、周囲と隔離チャンバ間の移行路としても機能する。したがって、周囲の雰囲気から隔離チャンバ内における所定の雰囲気への移行もまた、容器搬送路において行なわれる。この目的のために、容器搬送路は、例えば負圧で稼動されることにより、隔離チャンバから容器搬送路の方へ一定の空気の流れが生ずる。これにより、外気が容器搬送路を介して隔離チャンバに進入することを防止する。容器搬送路から吸い出された空気は、屋外に排出されることが普通である。当該空気は、隔離チャンバから流出した空気と周囲から隔離チャンバに吸入された空気が混合している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
隔離チャンバおよびその内部に配置されたプラント部品の滅菌は、例えばH
2O
2ガスを用いて行なわれる。当該H
2O
2ガスは、給気装置を介して隔離チャンバに供給され、適当な表面に作用する。当該H
2O
2ガスは、次いで隔離チャンバおよび容器搬送路から隔離チャンバ内の他の空気とともに吸い出される。しかしながら、排出規制上の理由により、H
2O
2は、直接屋外に排出できず、ガス洗浄器により念入りに洗浄されることを要する。
【0009】
外気のみが供給空気調製ユニットで調製されるため、隔離チャンバに供給される空気の全ては、常に十分に調製される必要がある。したがって、使用される設備の寸法は、これに応じて大きくなることが避けられない。
【0010】
例えば延伸ブロー成形によって、プリフォームが最終製品としての充填容器に成形されるとき、ブロー金型上(とりわけ冶具のキャビティ内)の結露を避けることが、充填容器の品質に関して重要である。これらのキャビティは冷却されていることが普通であるため、空気中の湿気が結露する場所になりうる。結露は、成形された容器の品質を損ない、既に存在している微生物の繁殖場所になりうる。よって、結露は回避されねばならない。
【0011】
従来技術に係る説明に鑑み、本発明の目的は、隔離チャンバに供給される空気の調製がより効率的に遂行され、装置の微生物学的安全性が向上された、少なくとも1つの容器を取扱う装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載の特徴を備える、少なくとも1つの容器を取扱う装置により達成される。さらなる有利な実施形態は、従属請求項に記載の特徴より得られる。
【0013】
したがって、飲料充填プラントにおいて少なくとも1つの容器を充填物で充填することと、容器の二次成形を行なうことの少なくとも一方を行なう、少なくとも1つの容器を取扱う装置が提案される。当該装置は、所定の雰囲気を含み、前記容器の取扱いが行なわれる隔離チャンバと、前記容器を前記隔離チャンバに搬入し、前記隔離チャンバから搬出するための少なくとも1つの容器通路と、前記容器通路および前記隔離チャンバから空気を吸い出す吸引装置と、前記隔離チャンバへ供給される空気を調製する供給空気調製ユニットとを備えている。本発明によれば、前記吸引装置は、前記容器通路と前記隔離チャンバの少なくとも一方から吸い出された前記空気の少なくとも一部が、新たな調製のために前記供給空気調製ユニットへ供給されるように、前記供給空気調製ユニットと接続されている。
【0014】
吸引装置は、容器通路と隔離チャンバの少なくとも一方から吸い出された空気の少なくとも一部が、新たな調製のために供給空気調製ユニットへ供給されるように、供給空気調製ユニットと接続されているため、既に調整を経た容器通路と隔離チャンバの少なくとも一方からの空気が、再度の調製に供されることが可能となり、例えば、空気を濾過するフィルタを再度通過する。なお、濾過による無菌空気の生成は、確率に基づいている。換言すると、特定の微生物や粒子が適当な濾過装置内に保持される特定の確率が存在する。したがって、濾過を繰り返すことにより、調製された空気がよりよく殺菌される確率が増す。よって、隔離チャンバと容器通路から吸い出された空気を送り返すことにより、装置における無菌度と微生物学的安全性の向上を達成できる。
【0015】
さらに、隔離チャンバと容器通路の少なくとも一方から吸い出された空気は、ほぼ正確な温度とほぼ所望の湿度を有している。これにより、外気だけを供給する際に求められる労力と比較して、正確な温度への復帰と湿度の調節の少なくとも一方を行なう労力が低減される。これにより、装置の構成要素の小型化と、動作時に消費されるエネルギー削減の少なくとも一方が可能である。
【0016】
隔離チャンバと容器通路から吸い出される空気の総流量は、隔離チャンバへ再度供給される調製済み空気の流量よりも大きいことが普通である。容器通路の領域においては、隔離チャンバから流れ出る調製済みの空気だけでなく、周囲に面する容器通路の外端から流入する外気も吸い出されるからである。加えて、容器が隔離チャンバ内で取扱われる際に処理空気が用いられるため、吸引される空気の総流量が増す。また、取扱われる容器は充填物により充填されることが普通であり、容器内に存在する空気が置換されることによっても、吸引される空気の総流量が増す。隔離チャンバと容器通路から吸い出される空気の総流量が隔離チャンバへ戻される調製済み空気の流量よりも大きいという事実には、これらの要因が寄与している。
【0017】
このような理由により、分流器が設けられることが好ましい。当該分流器により、隔離チャンバと容器通路の少なくとも一方から吸い出され、供給空気調製ユニットに供給される空気の一部が分離される。特に、可変分流器が設けられることが好ましい。当該可変分流器により、吸い出された空気のうち供給空気調製ユニットに供給される体積が可変調節されうる。いずれの場合においても、吸い出された空気の残りの部分は、例えば屋外へ排出される。分流器を設けることにより、供給空気調製ユニットに流入する空気の全てが吸い出された空気から供給されるようにできる。これにより、特に効率的な装置の動作が達成されうる。吸い出された空気のみが供給空気調製ユニットに供給されるため、温度制御および加湿あるいは除湿の労力が抑制され、装置の微生物学的安全性が向上される。
【0018】
より好ましい実施形態においては、供給空気調製ユニットへの外気供給部がさらに設けられる。当該外気供給部を通じて、例えば装置が設置された製造施設内の外気が供給空気調製ユニットへ供給されうる。これにより、供給空気の調整中において、循環に新たに加えられる外気の一部が正確に特定されうる。
【0019】
より好ましくは、供給空気調製ユニットへの屋外気供給部がさらに設けられる。当該屋外気供給部を通じて、屋外などの外部領域から外気が供給空気調製ユニットへ供給されうる。
【0020】
これにより、周囲の条件や屋外の条件に応じたプラントの効率的な管理が達成されうる。例えば、冬季の冷たい空気は比較的乾燥している。この場合、わずかな労力で除湿が達成されうる。除湿そのものを行なわないことも可能である。例えば夏季においては、暖かな空気が吸入されるため、別途の加熱が不要となる場合がある。加えて、当該プラント用の適当な制御システムは、周囲(例えば製造施設)から吸入された空気と、屋外から吸入された空気の比率を調節できる。これにより、供給空気の調製に消費されるエネルギーの更なる削減が可能となる。
【0021】
より好ましい実施形態においては、周囲の条件、屋外の条件、および装置に要求される動作条件に基づいて、供給空気調製ユニットに供給される吸い出された空気、屋外気、外気の少なくとも1つの比率を制御する制御システムが設けられている。
【0022】
隔離チャンバおよび容器通路から吸い出された空気を消毒剤と殺菌剤の少なくとも一方(例えばH
2O
2)が含まれていない状態とするために、吸引装置の下流にコールドトラップが設けられることが好ましい。これを達成すべく、コールドトラップ内の空気は、除去される物質(例えば適当な濃度で存在するH
2O
2)の凝結点を下回る温度に冷却される。これにより当該物質は凝固し、空気流から除去される。したがって、抜き出された空気の一部が屋外に排出される前に、消毒剤と殺菌剤の少なくとも一方(例えばH
2O
2)が除去されうる。精巧なガス洗浄器によってこれを行なう必要性もない。よって、プラント全体がより簡単な構成を有しうる。そして、比較的乾燥し、かつ消毒剤と殺菌剤の少なくとも一方をほぼ含まない空気の一定な供給を、供給空気調製ユニットが受けうる。供給空気調製ユニットは、当該空気の処理(例えば新たな濾過および温度制御)を行なう。
【0023】
消毒剤と殺菌剤の少なくとも一方の周囲への排出を削減あるいは防止するために、コールドトラップは、分流器の上流に設けられることが好ましい。別の実施形態においては、消毒剤と殺菌剤の少なくとも一方の排出を防止するコールドトラップは、屋外へ延びる通気路の分岐点において、分流器の下流側にも配置されうる。これにより、コールドトラップのエネルギー消費が低減される。吸い出された空気のうち屋外へ排出される分のみがコールドトラップの処理を受ければよいからである。
【0024】
上述の実施形態においては、隔離チャンバへ供給される空気を乾燥させるために、少なくとも1つのさらなるコールドトラップが供給空気調製ユニット内に設けられることが好ましい。このコールドトラップは、例えば、異なる温度で動作されうる。これにより、特定の用途について各コールドトラップを最適化することが可能になる。
【0025】
コールドトラップに加えてあるいは代えて、消毒剤と清浄剤の少なくとも一方を破壊する少なくとも1つの触媒が、吸引装置の下流に設けられうる。これにより、抜き出された空気が周囲に排出される前に、あるいは抜き出された空気が隔離チャンバに送り戻されることにより再利用される前に、消毒剤と清浄剤の少なくとも一方が破壊されうる。触媒の使用により、コールドトラップもより高い温度で動作されうる。結果として、コールドトラップを動作させるエネルギーコストが削減されうる。
【0026】
供給空気調製ユニットは、中央供給空気調製ユニットの形態であることが好ましい。当該中央供給空気調製ユニットにより、容器取扱いプラントにおける複数の空気消費部への空気が調整および供給される。
【0027】
供給空気調製ユニットは、少なくとも1つの無菌フィルタ、少なくとも1つの温度制御装置、少なくとも1つのコールドトラップ、少なくとも1つの湿度調節手段の少なくとも1つを備えていることが好ましい。これにより、隔離チャンバ内に所望の雰囲気が形成されるように、供給される空気が調製されうる。そして適当なファンによって隔離チャンバ内に僅かな正圧が生成され、容器通路の向きに一定の気流を維持することにより、隔離チャンバの隔離を達成する。
【0028】
前記吸い出された空気のうち前記供給空気調製ユニットへ供給されない一部から熱エネルギーを抽出するように配置され、当該熱エネルギーを前記供給空気調製ユニット、外気供給部、および屋外気供給部の少なくとも1つへ供給する熱交換器が設けられることが好ましい。これにより、装置のエネルギー効率がさらに向上されうる。吸い出された空気の熱エネルギーは、装置内にほぼ保持されうるからである。
【0029】
さらに好ましい実施形態においては、供給空気調製ユニットは、隔離チャンバへ供給される空気に対して消毒剤と洗浄剤の少なくとも一方を投与するように設けられる。例えば、消毒剤として気体のH
2O
2が投与されうる。隔離チャンバの内部の清浄と殺菌は、隔離チャンバに供給される空気によって行なわれうる。
【0030】
特に、隔離チャンバへ供給される空気を調整するに際し、充填バルブ、製品供給ライン、供給導管、冶具のキャビティの少なくとも1つの表面が、コールドトラップを通過した冷却剤で冷却されうることが好ましい。これにより、装置の表面がコールドトラップよりもやや高い温度に維持されうる。コールドトラップを通過し、隔離チャンバに供給される空気は、装置の表面に結露することがない。当該空気は、コールドトラップ内においてより冷たい表面を既に通過し、乾燥されているからである。適当な寸法とされたコールドトラップを共通の冷却剤を介して容器成形用冶具の表面冷却にリンクさせることにより、当該冶具の冷却されたキャビティ内における結露が回避される。
【0031】
また、前述の目的は、請求項13に記載の特徴を有する方法により達成される。
【0032】
したがって、充填物で容器を充填することと、容器の二次成形を行なうことの少なくとも一方を行なう容器の取扱い方法が提案される。当該取扱いは、隔離チャンバ内で行なわれる。容器は、少なくとも1つの容器通路を介して隔離チャンバへ搬入される。供給空気調製ユニットにより隔離チャンバ内に所定の雰囲気が形成される。隔離チャンバおよび容器通路から吸引装置によって空気が吸い出される。本発明によれば、容器通路と隔離チャンバの少なくとも一方から吸引装置によって吸い出された空気の少なくとも一部が、供給空気調製ユニットへ送り戻される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明に係るさらなる好適な実施形態および態様は、下記の図面に続く記載においてより詳細に説明される。
【0034】
【
図1】第1実施形態に係る容器取扱い装置を模式的に示す図である。
【
図2】第2実施形態に係る容器取扱い装置を模式的に示す図である。
【
図3】第3実施形態に係る容器取扱い装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
好適な実施形態例について図面を参照しつつ以下説明する。図面において、同一または同様の要素、あるいは同一の効果を有する要素は、同一の参照符号により指示され、これらの要素についての繰返しとなる説明は、冗長性を回避するために一部省略される。
【0036】
図1は、少なくとも1つの容器を取扱う装置1を模式的に示している。隔離チャンバ2が設けられており、その内部では、容器の取扱い(例えば、滅菌、容器の充填と封止)が行なわれる。容器の取扱いは、容器の二次成形(例えば、プリフォームを、充填物で充填される容器に成形)によっても行なわれうる。
【0037】
容器(例えばプリフォームや充填物で充填される容器)を、隔離チャンバ2に対して搬入あるいは搬出するために、2つの容器搬送路30、32が設けられている。第1容器搬送路30は、隔離チャンバ2への搬入路として構成されており、容器の隔離チャンバ2への搬入を可能にしている。第2容器搬送路32は、隔離チャンバ2からの搬出路として構成されており、容器の隔離チャンバ2からの搬出を可能にしている。
【0038】
隔離チャンバ2は、周囲の雰囲気に対してほぼ気密的に封止されるように構成されている。所定の細菌数、所定の胞子数、所定の温度、および所定の湿度などを伴う所定の雰囲気が、隔離チャンバ2内に形成されている。これにより、例えば、隔離チャンバ2内で行なわれる容器の取扱いが容器の充填(飲料の低温無菌充填など)である場合、容器に充填された充填物の保存可能期間が延びる。この目的のために、特に低温無菌充填やESL(extended shelf life)充填を隔離チャンバ2で行なう場合、可能な限り低い細菌数と胞子数、約4℃と常温の間の温度、および低湿度に雰囲気を維持することが好ましい。装置の充填エリアに配備された隔離チャンバ2は、例えば、内部に含まれる雰囲気にクリーンルーム規格ISO5が適用されうるように動作される。
【0039】
隔離チャンバ2内は僅かに正圧とされることが好ましい。これにより、隔離チャンバ2から容器搬送路30と容器搬送路32の少なくとも一方へ一定の空気流が生ずる。これにより、容器搬送路の外端300と320の少なくとも一方からの外気の進入が防止されうる。したがって、隔離チャンバ2内に所定の雰囲気が生成および維持されうる。また、流出する隔離チャンバ雰囲気からプラントの作業者が保護されうる。この事は、H
2O
2のような健康を害する殺菌剤を用いて隔離チャンバ2の清掃や消毒を行なう際に特に重要となる。
【0040】
隔離チャンバ2と容器搬送路30、32の双方から空気を吸い出しうる吸引装置4が設けられている。これにより、隔離チャンバ2内に含まれる空気の入れ替えが一定に行なわれ、隔離チャンバ2内に所定の雰囲気が提供されうる。吸引装置4を介する容器搬送路30、32からの空気の抜き取りは、容器搬送路30、32の領域を周囲の外気に対して僅かに負圧にすることを可能にする。これにより、容器搬送路の外端300、320から進入する外気が吸引装置4によって吸い出され、やはり隔離チャンバ2へ進入不能とされる。隔離チャンバ2における僅かな正圧と容器搬送路30、32における僅かな負圧は、容器が容器搬送路30、32を介して隔離チャンバ2に出入りしていようとも、周囲の外気に対する隔離チャンバ2の完全な隔離を達成可能にする。
【0041】
隔離チャンバ2へ供給される空気を調製する供給空気調製ユニット5が設けられている。当該空気は、所定の特性を有している。供給空気調製ユニット5は、例えば、供給される空気から細菌と胞子の少なくとも一方をほぼ除去し、特定の温度および湿度にすべく機能する。この目的のために、少なくとも1つの無菌フィルタが供給空気調製ユニット5内に設けられることが好ましい。これにより、供給される空気の細菌汚染が低減される。無菌フィルタは、例えばHEPA(High Efficiency Particle Air)フィルタの形態をとりうる。供給空気調製ユニット5は、温度制御手段(加熱あるいは冷却装置など)をさらに備えることが好ましい。これにより、隔離チャンバ2へ供給される空気が所望の温度とされる。供給空気調製ユニット5には、湿度調節手段も設けられることが好ましい。湿度調節手段の例としては、空気から湿気を除去するコールドトラップや、空気に湿気を加えるヴェポライザが挙げられる。これにより、隔離チャンバ2へ供給される空気が所望の湿度とされる。
【0042】
供給空気調製ユニット5は、殺菌剤と清浄剤の少なくとも一方(気体のH
2O
2など)を投与する投与装置(不図示)をさらに備えうる。結果として、適当な清浄剤と殺菌剤の少なくとも一方が隔離チャンバ2に供給される調製済み空気流に投与されることにより、隔離チャンバ2の清浄と殺菌の少なくとも一方が簡単に行なわれる。
【0043】
図1に示される実施形態例における吸引装置4は、適当な空気ガイド40と可変分流器6を介して供給空気調製ユニット5に接続されている。これにより、吸引装置4により隔離チャンバ2および容器搬送路30、32から抜き出される空気の少なくとも一部は、空気ガイド40と可変分流器6を介して供給空気調製ユニット5に供給される。
【0044】
隔離チャンバ2および容器搬送路30、32から抜き出された空気を供給空気調製ユニット5に戻して再循環させることにより、供給空気調製ユニット5における無菌フィルタが既に濾過された空気に曝されるため、隔離チャンバ2に供給される空気の微生物学的汚染のさらなる低減が達成されうる。空気の無菌濾過処理は、確率に基づいているため、空気を再循環させることにより、微生物学的汚染レベルが下がる確率が高くなる。
【0045】
さらに、再循環される空気は、既に温度制御を経ているとともに特定の湿度を有している。したがって、供給空気調製ユニット5において調製に要するエネルギーが少なくて済む。
【0046】
隔離チャンバ2および容器搬送路30、32においては、供給空気調製ユニット5によって求められるよりも大きな体積の空気が、吸引装置4によって常に抜き出されている。その理由は、第一に、さらなる外気が開放された容器搬送路30、32の外端300、320を経由して吸入されるからであり、第二に、容器の取扱い処理が隔離チャンバ2内で行なわれるからである。これらの処理においては、例えば、処理空気が用いられたり、充填容器内の空気が充填物によって置き換えられたりする。吸引装置4によって抜き出される空気の一部のみが、分流器6を介して供給空気調製ユニット5へ供給される。残りの空気は、屋外へ排出される。
【0047】
隔離チャンバ2の内部の消毒と殺菌の少なくとも一方は、消毒剤と殺菌剤の少なくとも一方(例えばH
2O
2)を用いて行なわれ、これらの物質も吸引装置により抜き出される。例えばH
2O
2のような物質は、吸引装置4の下流に配置されたコールドトラップ7により濾過除去されることが好ましい。そのため、コールドトラップ7は、当該物質の凝結点(例えば、適当な濃度のH
2O
2におけるH
2O
2の凝結点)よりも低い温度を有する必要がある。これにより、抜き出された空気の屋外への排出を、環境汚染のリスクを回避しつつ、問題なく行なうことができる。
【0048】
図示しない別の実施形態においては、殺菌剤と清浄剤の少なくとも一方を破壊する少なくとも1つの触媒が、コールドトラップ7に加えてあるいは代えて、設けられうる。触媒の使用は、コールドトラップ7によりもたらされる温度を上昇させることができ、必要とされるエネルギーが削減されうる。
【0049】
触媒が用いられる場合、コールドトラップ7は、例えば分流器6の下流に配置されうる。これにより、新たな調製のために供給空気調製ユニット5へ供給される一部の空気のみが、コールドトラップ7を通過する。屋外に排出される一部の空気は、触媒によって殺菌剤を含まない状態とされうるが、さらに乾燥される必要がない。したがって、動作時のエネルギーが節約されうる。
【0050】
供給空気調製ユニット5は、装置1において容器を取扱う複数の空気消費部が所定の雰囲気を供給されうる中央供給空気調製ユニットであることが好ましい。
【0051】
図2においては、装置1の別実施形態が示されている。本実施形態においては、さらに外気の一部が外気供給部8を介して供給空気調製ユニット5に供給される。これにより、吸引装置4により抜き出された空気と外気の混合物が生成されうる。そして、当該混合物が供給空気調製ユニット5に供給されうる。
【0052】
図3は、適当な製造施設を取り囲むエリア(例えば屋外)から屋外気が屋外気供給部9を介して供給空気調製ユニット5に調製されうる別実施形態を示している。
【0053】
図2と
図3に示した製造施設の内外から外気を供給する装置を有利に組み合わせることにより、混合比率を適当に調節することで、供給空気調製ユニット5において調製される空気を特に好ましい状態で供給することが可能となる。抜き出された空気を外気や屋外気と混合することにより、プラントの微生物学的安全性向上と併せ、エネルギー消費の最適化が可能となる。
【0054】
したがって、製造施設と屋外の条件に応じて、制御システム(不図示)は、供給空気調製ユニット5へ供給され、調整される空気の最適化を行ないうる。例えば冬季において、屋外の空気が冷たく乾燥している場合、供給空気を冷却したり乾燥させたりする処理を低減させつつ、屋外気が供給されうる。他方、夏季においては、暖かい空気が屋外から取り入れられうる。よって、供給空気を加熱する必要性が低減あるいは回避されうる。
【0055】
熱交換器90を用いることにより、エネルギーはさらに節約されうる。熱交換器90により、吸い出された空気に含まれる熱エネルギーの一部が、屋外に排出される前に抽出されうる。そして、この熱エネルギーは、調整される空気を冷却あるいは加熱するために利用可能なエネルギーを追加すべく、供給空気調製ユニット5へ供給されうる。これに加えたあるいは代えて、当該熱エネルギーは、外気供給部8または屋外気供給部9へ供給されうる。
【0056】
また、上記の装置は、層流システムに基づいて充填プラント内に配備されうる。当該システムにおいては、底に配置されたオーバーフロー開口から空気が吸引あるいは流出される。そして、当該空気は、供給空気調製ユニットにおける調製の後、上方からクリーンルームへ送り戻される。
【0057】
図4は、冷却剤回路70を模式的に示している。当該冷却剤回路70により、冷却剤(例えばグリコール)がコールドトラップ7から容器(例えば充填容器になるプリフォーム)を成形する冶具10に流れる。図示の実施形態においては、コールドトラップ7は、供給空気調製ユニット7と一体化されている。これにより、隔離チャンバ2に供給される空気は、隔離チャンバ2に入る前に、供給空気調製ユニット5と一体化されたコールドトラップ7を通過する。
【0058】
冷却剤は、冷却ユニット72により、サーモスタットTT1により制御された温度に維持され、ポンプ78により一定の体積流量で汲み出される。冷却ユニット72は、周知の方法でコンプレッサ74を備えている。コンプレッサ74は、冷却剤の冷却を可能にするエネルギーを提供する。
【0059】
成形冶具10においては、適当な冷却剤ライン76が冶具10の表面(好ましくは、冶具10のキャビティの冷却を行なう。コールドトラップ7を通過した冷却剤は、冷却剤回路70内の冶具10の表面を冷やすために冷却剤ライン76に達する。冷却剤は、コールドトラップ7の領域で熱エネルギーを吸収済みである。したがって、冷却剤が冷却剤ライン76を通過する際には、コールドトラップ7を通過する際よりも、幾らか高い温度を有している。よって、コールドトラップ7を通過する空気は、後段の冶具10の表面よりも冷たい表面に接触済みである。したがって、冶具10の表面における結露が発生しないか、ごく僅かな発生に留まる。
【0060】
また、例えば容器を充填するフィラーに同様の構成が設けられうる。この場合、例えば供給導管、製品供給ライン、充填バルブの少なくとも1つを冷却すべく、適当な冷却剤ライン76が製品の通路に設けられる。冷却剤がまずコールドトラップを通過し、次いで製品の通路における冷却剤ラインを通過する適当な冷却剤回路により、コールドトラップ7よりも製品の通路を僅かに高い温度とすることができる。これにより、製品の通路を形成する表面における結露が抑制あるいは防止されうる。
【0061】
本発明から逸脱することなく利用可能な範囲で、各実施形態において記載された各特徴は、組合せと置替えの少なくとも一方がなされうる。
【符号の説明】
【0062】
1:少なくとも1つの容器を取扱う装置、10:容器を成形する冶具、2:隔離チャンバ、30:容器通路、32:容器通路、300:容器通路の外端、320:容器通路の外端、4:吸引装置、40:空気ガイド、5:供給空気調製ユニット、6:分流器、7:コールドトラップ、70:冷却剤回路、72:冷却ユニット、74:コンプレッサ、76:冷却剤ライン、78:ポンプ、8:外気供給部、9:屋外気供給部、90:熱交換器