特許第6333063号(P6333063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333063電磁弁、流体機械、油圧機械及び再生可能エネルギー型発電装置、並びに電磁弁の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333063
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】電磁弁、流体機械、油圧機械及び再生可能エネルギー型発電装置、並びに電磁弁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20180521BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20180521BHJP
   H01F 7/06 20060101ALI20180521BHJP
   F03D 9/28 20160101ALI20180521BHJP
【FI】
   F16K31/06 305A
   F16K31/06 305D
   H01F7/16 R
   H01F7/06 L
   H01F7/06 M
   F03D9/28
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-105950(P2014-105950)
(22)【出願日】2014年5月22日
(65)【公開番号】特開2015-222087(P2015-222087A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】武田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 毅
(72)【発明者】
【氏名】清水 將之
(72)【発明者】
【氏名】益田 豊次
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−067973(JP,U)
【文献】 実開昭57−153866(JP,U)
【文献】 特開平03−245371(JP,A)
【文献】 特開2011−038630(JP,A)
【文献】 特開2008−240529(JP,A)
【文献】 特表2013−501901(JP,A)
【文献】 特開2010−016365(JP,A)
【文献】 実開昭57−088907(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
H01F 7/06−7/11
F04B 1/00−7/06
F03D 1/00−80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルの電磁力で駆動されるように構成されたバルブ本体と、
円筒部および該円筒部の両端から径方向外方に延在するように設けられる一対のフランジ部とを有し、前記円筒部の外周側において前記一対のフランジ部間に形成される空間に前記ソレノイドコイルを保持するコイルボビンと、
前記コイルボビンの前記円筒部に挿通される軸部を有し、前記軸部の周りに設けられた前記コイルボビン、前記ソレノイドコイル及び前記バルブ本体を収容するバルブケーシングと、
前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間隙に設けられ、空気よりも熱伝導率が大きい充填材と、
を備え、
前記バルブケーシングが前記軸部を形成する第1部材と、前記一対のフランジ部のうち少なくとも一方の外表面に対向する部分を形成する第2部材とを含み、前記第1部材の熱伝導率は前記第2部材よりも高い
電磁弁。
【請求項2】
前記バルブケーシングには、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に前記充填材を充填するための充填孔が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記充填材の熱伝導率が0.5W/K・m以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記第1部材は、前記ソレノイドコイルから前記バルブ本体に至る磁路を形成するための磁性体部を含み、該磁性体部によって前記軸部が形成されており、
前記第2部材は、前記コイルボビンが取り付けられた前記軸部に挿通される環状の非磁性体部を含み、前記非磁性体部によって囲まれた前記軸部が前記バルブ本体に磁力を付与するように構成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記コイルボビンの熱伝導率が50W/K・m以上であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記コイルボビンの材料が金属であり、前記コイルボビンには、前記円筒部の軸方向に延在するスリットが設けられ、前記スリットは絶縁材料で埋められていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記コイルボビンの材料がアルミニウム又はアルミニウム合金を含むことを特徴とする請求項6に記載の電磁弁。
【請求項8】
前記バルブケーシングには前記電磁弁の制御対象である流体の流路が形成されており、
前記バルブケーシングは、前記流路から前記ソレノイドコイルへの流体の通り道を封止するためのシールを有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の電磁弁。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の電磁弁と、前記電磁弁が組み込まれる構造体とを含む流体機械であって、前記構造体には前記電磁弁の制御対象である流体の流路が形成されており、前記構造体の熱伝導率は5W/K・m以上であることを特徴とする流体機械。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の電磁弁を備える油圧機械であって、
前記油圧機械は、
前記バルブケーシングを装着可能なシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの内部に形成されるシリンダと、
前記シリンダに案内されて前記シリンダの軸方向に沿って往復運動可能に構成されたピストンと、を含み、
前記シリンダブロックには、前記シリンダ及び前記ピストンによって画定される作動室に連通可能な流体流路が設けられ、
前記電磁弁は、前記流体流路と前記作動室との間に前記バルブ本体が位置するように前記シリンダブロックに装着され、前記ソレノイドコイルへの電流供給により前記作動室と前記流体流路との接続を切換え可能に構成され、
前記シリンダブロックの熱伝導率は5W/K・m以上であることを特徴とする油圧機械。
【請求項11】
再生可能エネルギー源から電力を生成する再生可能エネルギー型発電装置であって、
少なくとも一本のブレードと、
前記少なくとも一本のブレードが取付けられるハブと、
前記ハブの回転によって駆動されるように構成された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプで生成された圧油によって駆動されるように構成された少なくとも一つの油圧モータと、
前記少なくとも一つの油圧モータによって駆動される発電機とを備える風力発電装置であって、
前記油圧ポンプ又は前記油圧モータは、請求項10に記載の油圧機械であることを特徴とする再生可能エネルギー型発電装置。
【請求項12】
前記発電装置は、前記再生可能エネルギー源としての風から電力を生成する風力発電装置であることを特徴とする請求項11に記載の再生可能エネルギー型発電装置。
【請求項13】
電磁弁の製造方法であって、
前記電磁弁は、
ソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルの電磁力で駆動されるように構成されたバルブ本体と、
円筒部および該円筒部の両端から径方向外方に延在するように設けられる一対のフランジ部とを有し、前記円筒部の外周側において前記一対のフランジ部間に形成される空間に前記ソレノイドコイルを保持するコイルボビンと、
前記コイルボビンの前記円筒部に挿通される軸部を有し、前記軸部の周りに設けられた前記コイルボビン、前記ソレノイドコイル及び前記バルブ本体を収容するバルブケーシングと、を含み、
前記バルブケーシングは、前記軸部を形成する第1部材と、前記一対のフランジ部のうち少なくとも一方の外表面に対向する部分を形成する第2部材とを含み、前記第1部材の熱伝導率は前記第2部材よりも高く、
前記ソレノイドコイルを保持する前記コイルボビンの前記円筒部に、前記バルブケーシングの前記軸部を挿通させる挿通工程と、
前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間隙に空気よりも熱伝導率が大きい充填材を充填する充填工程と、を備えることを特徴とする電磁弁の製造方法。
【請求項14】
前記充填工程では、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間の間隙における圧力を減圧しながら前記充填材を充填することを特徴とする請求項13に記載の電磁弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁弁、流体機械、油圧機械及び再生可能エネルギー型発電装置、並びに電磁弁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁弁は、通電することにより磁気吸引力を発生させるためのソレノイドコイルを有する。ソレノイドコイルに電流を流すと電気抵抗により熱が発生し、通電時間が長いほどソレノイドコイルの温度が上昇する。ソレノイドコイルの温度が上昇するとソレノイドコイルの電気抵抗が大きくなるため、ソレノイドコイルに流れる電流値が低下し、電磁吸引力が低下することが知られている。
【0003】
そこで、このような温度上昇による電磁吸引力の低下を抑制するための電磁弁やソレノイドコイルの構成が提案されている。
例えば、特許文献1には、周方向及び軸方向に複数の層を形成するように巻き回されたコイルと、コイルの内部層で発生した熱をコイルの外部に効率良く移動させるための熱伝達素子とを備えたアクチュエータコイルが開示されている。また、熱伝達素子の例として、コイルの層間に設けられ、熱伝導材料から形成された帯状やシート状のものが挙げられている。この熱伝達素子により、コイルの内部層で発生した熱がコイルの外部領域に移動するようになっている。
また、特許文献2には、コイルボビンと、コイルボビンに巻線を巻き付けて形成される巻線部と、巻線部を樹脂でモールドした樹脂モールド層と、を有するモールドコイルを備えた電磁弁が記載されている。樹脂モールド層にはフィンが形成されており、コイルに通電することにより発生した熱が、樹脂モールド層に伝えられてフィンから放熱されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0026974号明細書
【特許文献2】特開2013−24304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電磁弁の製造工程において、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンとバルブケーシングとが組立てられる際には、例えば製造上の理由により、コイルボビンの内周側とバルブケーシングとの間に間隙が形成されることがある。コイルボビンとバルブケーシングとの間に間隙が存在すると、ソレノイドコイルから内周側に向かってバルブケーシングへ至る熱伝達の経路が途切れて該経路における伝熱速度が低下してしまう。よって、ソレノイドコイルの温度上昇を効果的に抑制することができない。
この点、特許文献1及び2には、例えば製造上の理由によりコイルボビンの内周側とバルブケーシングとの間に存在するかもしれない間隙の存在を前提としたソレノイドコイル
の温度上昇抑制対策について何ら言及されていない。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、ソレノイドコイルで発生する熱の放熱性を向上し得る電磁弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る電磁弁は、
ソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルの電磁力で駆動されるように構成されたバルブ本体と、
円筒部および該円筒部の両端から径方向外方に延在するように設けられる一対のフランジ部とを有し、前記円筒部の外周側において前記一対のフランジ部間に形成される空間に前記ソレノイドコイルを保持するコイルボビンと、
前記コイルボビンの前記円筒部に挿通される軸部を有し、前記軸部の周りに設けられた前記コイルボビン、前記ソレノイドコイル及び前記バルブ本体を収容するバルブケーシングと、
前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に隙間がある場合には、この間隙に設けられ、空気よりも熱伝導率が大きい充填材と、を備える。
【0008】
典型的な電磁弁では、例えば製造上の理由から、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンの前記円筒部の内周面と、ソレノイドコイル及びバルブ本体を収容するバルブケーシングの軸部の外周面との間には間隙(すなわち空気)が存在しているのが通常である。この種の電磁弁では、ソレノイドコイルから内周側に向かってバルブケーシングへ至る熱伝達の経路上に前記間隙(空気)が存在する。
これに対し、上記実施形態に係る電磁弁によれば、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンの前記円筒部の内周面と、ソレノイドコイル及びバルブ本体を収容するバルブケーシングの軸部の外周面との間に隙間がある場合には、この間隙に空気よりも熱伝導率が大きい充填材が設けられる。このため、ソレノイドコイルから内周側に向かってバルブケーシングへ至る熱伝達の経路上において、ソレノイドコイルで生じた熱が充填材を介してバルブケーシング(軸部)に効果的に伝達される。よって、熱伝達の経路上に間隙(空気)が存在する典型的な電磁弁に比べて、充填材の存在によってソレノイドコイルからバルブケーシングへの放熱性を向上させることができ、より効果的な熱伝達が可能となる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)で説明した構成において、前記バルブケーシングには、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に前記充填材を充填するための充填孔が設けられる。
この場合、バルブケーシングとコイルボビンとを組み立てた後に、バルブケーシング外部から充填孔を通して充填材を充填することができるので、コイルボビンの円筒部の内周面とバルブケーシングの軸部の外周面との間に設けられた充填材を備える電磁弁を製造しやすい。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)又は(2)で説明した構成において、前記充填材の熱伝導率が0.5W/K・m以上である。
この場合、充填材の熱伝導率が空気の熱伝導率(室温において0.024W/K・m程度)に比べて大幅に高いため、放熱性に優れる。
なお、本明細書における「熱伝導率」は、室温における熱伝導率のことをいうものとする。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)乃至(3)で説明した構成において、前記バルブケーシングが、前記軸部を形成する第1部材と、前記一対のフランジ部のうち少なくとも一方の外表面に対向する部分を形成する第2部材とを含み、前記第1部材の熱伝導率は前記第2部材よりも高い。
これにより、上記(1)における充填材を介してソレノイドコイルから第1部材の軸部に移動した熱を効果的に外部に散逸させることができる。よって、上記(1)の構成と相まって、ソレノイドコイルから内周側に向かってバルブケーシングへ至る経路を介した熱伝達がより一層促進される。
【0012】
(5)幾つかの実施形態では、例えば上記(4)で説明した構成において、前記第1部材は、前記ソレノイドコイルから前記バルブ本体に至る磁路を形成するための磁性体部を含み、該磁性体部によって前記軸部が形成されており、
前記第2部材は、前記コイルボビンが取り付けられた前記軸部に挿通される環状の非磁性体部を含み、前記非磁性体部によって囲まれた前記軸部が前記バルブ本体に磁力を付与するように構成される。
この場合、コイルボビンの円筒部の内周面よりも内側に存在する第1部材が磁性体部を含み、コイルボビンの円筒部の軸方向に関して外側の部分に存在する第2部材は非磁性体を含むので、第2部材に向かう磁束線を低減させて第1部材に磁束線を集中して形成することができ、バルブ本体を駆動するためのソレノイドコイルの電磁力(電磁吸引力)を向上させることができる。
【0013】
(6)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)乃至(5)で説明した構成において、前記コイルボビンの熱伝導率が50W/K・m以上である。
この場合、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンの熱伝導率が高いため、コイルボビンを介したソレノイドコイルからバルブケーシングへの放熱が促進される。
【0014】
(7)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)乃至(6)で説明した構成において、前記コイルボビンの材料が金属であり、前記コイルボビンには、前記円筒部の軸方向に延在するスリットが設けられ、前記スリットは絶縁材料で埋められている。
この場合、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンは熱伝導率の高い金属から形成されるので、コイルボビンを介したソレノイドコイルからバルブケーシングへの放熱が促進される。また、コイルボビンには円筒部の軸方向に延在するスリットが設けられるので、コイルボビンに生じる渦電流が抑制される。また、該スリットは絶縁材料で埋められるので、渦電流を抑制する効果を低減することなく、コイルを巻回することが可能となり、ソレノイドコイルの製造がしやすくなる。
【0015】
(8)幾つかの実施形態では、例えば上記(7)で説明した構成において、前記コイルボビンの材料がアルミニウム又はアルミニウム合金を含む。
この場合、熱伝導率の高いアルミニウムがコイルボビンの材料に含まれるので、コイルボビンを介したソレノイドコイルからバルブケーシングへの放熱が促進される。
【0016】
(9)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)乃至(8)で説明した構成において、前記バルブケーシングには前記電磁弁の制御対象である流体の流路が形成されており、
前記バルブケーシングは、前記流路から前記ソレノイドコイルへの流体の通り道を封止するためのシールを有する。
バルブケーシングに流体が流れる流路が形成される場合、該流路からソレノイドコイルへの流体の通り道を確保して、該流体を冷却用の媒体として利用することも考えられる。この場合には、ソレノイドコイルの冷却は効果的に行えるかもしれないが、電磁弁から外部への流体の漏出への対策が必要になるかもしれない。
この点、上記(9)の構成では、コイルボビンの前記円筒部の内周面と、バルブケーシングの軸部の外周面との間に充填材を設けることでソレノイドコイルからの放熱性を高めたので(上記(1)の構成)、ソレノイドコイルの冷却目的で流体をソレノイドコイルに積極的に導く必要がない。このため、流路からソレノイドコイルへの流体の通り道を封止するためのシールをバルブケーシングに設けることができ、これにより流体のバルブケーシング外部への漏洩を防ぐことができる。
【0017】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る流体機械は、
例えば上記(1)乃至(9)で説明した構成に係る電磁弁と、前記電磁弁が組み込まれる構造体とを含む流体機械であって、前記構造体には前記電磁弁の制御対象である流体の流路が形成されており、前記構造体の熱伝導率は5W/K・m以上である。
【0018】
上記流体機械によれば、電磁弁が組み込まれる構造体の熱伝導率が5W/K・m以上と比較的高いため、ソレノイドコイルにおいて発生した熱が、バルブケーシングを介して電磁弁の外側の構造体にスムーズに伝達される。このため、ソレノイドコイルで発生する熱をより一層効果的に散逸させることができる。
【0019】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る油圧機械は、
例えば上記(1)乃至(9)で説明した構成に係る電磁弁を備える油圧機械であって、
前記油圧機械は、
前記バルブケーシングを装着可能なシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの内部に形成されるシリンダと、
前記シリンダに案内されて前記シリンダの軸方向に沿って往復運動可能に構成されたピストンと、を含み、
前記シリンダブロックには、前記シリンダ及び前記ピストンによって画定される作動室に連通可能な流体流路が設けられ、
前記電磁弁は、前記流体流路と前記作動室との間に前記バルブ本体が位置するように前記シリンダブロックに装着され、前記ソレノイドコイルへの電流供給により前記作動室と前記流体流路との接続を切換え可能に構成され、
前記シリンダブロックの熱伝導率は5W/K・m以上である。
【0020】
上記油圧機械によれば、電磁弁が組み込まれるシリンダブロックの熱伝導率が5W/K・m以上と比較的高いため、ソレノイドコイルにおいて発生した熱が、バルブケーシングを介して電磁弁の外側のシリンダブロックにスムーズに伝達される。このため、ソレノイドコイルで発生する熱の放熱性をより一層向上させることができる。
【0021】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る再生可能エネルギー型発電装置は、
再生可能エネルギー源から電力を生成する再生可能エネルギー型発電装置であって、
少なくとも一本のブレードと、
前記少なくとも一本のブレードが取付けられるハブと、
前記ハブの回転によって駆動されるように構成された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプで生成された圧油によって駆動されるように構成された少なくとも一つの油圧モータと、
前記少なくとも一つの油圧モータによって駆動される発電機とを備える風力発電装置であって、
前記油圧ポンプ又は前記油圧モータは、例えば上記(10)又は(11)で説明した構成に係る油圧機械である。
【0022】
上記再生可能エネルギー型発電装置によれば、油圧ポンプ又は油圧モータにおいて、電磁弁が組み込まれるシリンダブロックの熱伝導率が5W/K・m以上と比較的高いため、ソレノイドコイルにおいて発生した熱が、バルブケーシングを介して電磁弁の外側のシリンダブロックにスムーズに伝達される。このため、ソレノイドコイルで発生する熱の放熱性をより一層向上させることができる。
【0023】
(13)幾つかの実施形態では、例えば上記(12)で説明した構成において、前記発電装置は、前記再生可能エネルギー源としての風から電力を生成する風力発電装置である。
【0024】
(14)本発明の少なくとも一実施形態に係る電磁弁の製造方法は、
電磁弁の製造方法であって、
前記電磁弁は、
ソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルの電磁力で駆動されるように構成されたバルブ本体と、
円筒部および該円筒部の両端から径方向外方に延在するように設けられる一対のフランジ部とを有し、前記円筒部の外周側において前記一対のフランジ部間に形成される空間に前記ソレノイドコイルを保持するコイルボビンと、
前記コイルボビンの前記円筒部に挿通される軸部を有し、前記軸部の周りに設けられた前記コイルボビン、前記ソレノイドコイル及び前記バルブ本体を収容するバルブケーシングと、を含み、
前記ソレノイドコイルを保持する前記コイルボビンの前記円筒部に、前記バルブケーシングの前記軸部を挿通させる挿通工程と、
前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に隙間がある場合には、この間隙に空気よりも熱伝導率が大きい充填材を充填する充填工程と、を備える。
【0025】
上記電磁弁の製造方法によれば、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンの円筒部に、バルブケーシングの軸部を挿通させた後に、コイルボビンの円筒部の内周面とバルブケーシングの軸部の外周面との間に隙間がある場合には、この間隙に空気よりも熱伝導率が大きい充填材を充填させる。その結果得られる電磁弁では、コイルボビンの円筒部の内周面とバルブケーシングの軸部の外周面との間に存在する充填材により、ソレノイドコイルから内周側に向かってバルブケーシングへ至る熱伝達の経路上において、ソレノイドコイルで生じた熱が充填材を介してバルブケーシング(軸部)に効果的に伝達される。よって、熱伝達の経路上に間隙(空気)が存在する典型的な電磁弁に比べて、充填材の存在によってソレノイドコイルからバルブケーシングへの放熱性を向上させることができ、より効果的な熱伝達が可能となる。
【0026】
(15)幾つかの実施形態では、例えば上記(14)で説明した構成において、前記充填工程では、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間の間隙における圧力を減圧しながら前記充填材を充填する。
この場合、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間の間隙における圧力を減圧しながら充填材を充填するので、充填材をコイルボビン円筒部の内周面及びバルブケーシングの軸部の外周面に密着させやすいため、ソレノイドコイルで発生する熱の放熱性をより向上させることができる。
【0027】
(16)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)乃至(13)で説明した構成において、前記電磁弁は、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に設けられる空気よりも熱伝導率が大きい充填材を備える。
【0028】
(17)幾つかの実施形態では、例えば上記(14)又は(15)で説明した構成において、前記充填工程では、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に、空気よりも熱伝導率が大きい充填材を充填する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、ソレノイドコイルで発生する熱の放熱性を向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る電磁弁の構成を示す概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコイルボビンの構成を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコイルボビンの構成を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る風力発電装置(再生可能エネルギー型発電装置)の概略を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る油圧機械(流体機械)の概略的な横断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る油圧機械(流体機械)の一部を電磁弁とともに示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、又は、「直交」等の相対的な配置関係を表す表現は、厳密にそのような相対的配置関係を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度をもって相対的に傾斜している状態をも表すものとする。また、例えば、四角形状や円筒形状などの形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等のみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、位置の構成要素を「備える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0032】
まず、図1図3を用いて、本発明の実施形態に係る電磁弁の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電磁弁の構成を示す概略断面図である。同図に示すように、電磁弁1は、ソレノイドコイル10と、ソレノイドコイル10の電磁力で駆動されるように構成されたバルブ本体20と、ソレノイドコイル10を保持するコイルボビン30と、コイルボビン30、ソレノイドコイル10及びバルブ本体20を収容するバルブケーシング40と、を備える。
コイルボビン30は、円筒部32と、円筒部32の両端から径方向外方に延在するように設けられる一対のフランジ部34とを有し、円筒部32の外周側において一対のフランジ部34の間に形成される空間にソレノイドコイル10を保持するように構成される。
バルブケーシング40は、コイルボビン30の円筒部32に挿通される軸部42を有する。軸部42の周りにコイルボビン30が設けられ、このコイルボビン30、コイルボビン30に保持されるソレノイドコイル10及びバルブ本体20を収容するように構成される。
【0033】
図1に示す電磁弁1はノーマルクローズ式の電磁弁であり、図1には、ソレノイドコイル10に通電をしていない閉弁時の状態が示されている。
この電磁弁1は、ソレノイドコイル10に通電しない状態では、バルブ本体20がスプリング22により弁座24に対して付勢されて閉弁状態となり、図1に示す第1ポート48と第2ポート49は接続されていない状態となる。
一方、ソレノイドコイル10に通電すると電磁弁1が励磁され、ソレノイドコイル10の電磁力によってバルブ本体20のアーマチュア26が吸引されて、バルブ本体20は、電磁力によってスプリング22の付勢力に抗して弁座24から離れる方向に移動して開弁状態となり、図1に示す第1ポート48と第2ポート49が接続される。
すなわち、このような電磁弁1では、ソレノイドコイルへの電流の供給を制御することにより、第1ポート48と第2ポート49との間の接続状態を切り替えることができる。したがって電磁弁1は、例えば、ガス(空気等)や液体(油等)等の流体の制御に用いることができる。
幾つかの実施形態では、電磁弁1は、ソレノイドコイル10に通電していない時に開弁し、ソレノイドコイル10の通電時に閉弁する、ノーマルオープン式の電磁弁であってもよい。
【0034】
図1に示す電磁弁1は、コイルボビン30の円筒部32とバルブケーシング40の軸部42の外周面43との間に設けられる充填材2をさらに備える。そして、この充填材2は、空気よりも熱伝導率が大きい。
【0035】
上記実施形態に係る電磁弁1によれば、ソレノイドコイル10を保持するコイルボビン30の円筒部32の内周面33と、ソレノイドコイル10及びバルブ本体20を収容するバルブケーシング40の軸部42の外周面43との間に隙間がある場合には、この間隙に空気よりも熱伝導率が大きい充填材2が設けられる。このため、ソレノイドコイル10から内周側に向かってバルブケーシング40へ至る熱伝達の経路上において、ソレノイドコイル10で生じた熱が充填材2を介してバルブケーシング40(軸部42)に効果的に伝達される。よって、熱伝達の経路上に間隙(空気)が存在する典型的な電磁弁に比べて、充填材2の存在によってソレノイドコイル10からバルブケーシング40への放熱性を向上させることができ、より効果的な熱伝達が可能となる。
【0036】
幾つかの実施形態では、充填材2の熱伝導率は0.5W/K・m以上である。
また、幾つかの実施形態では、充填材2の熱伝導率は1.0W/K・m以上である。
充填材2の熱伝導率が上記範囲であると、空気の熱伝導率(室温において0.024W/K・m程度)に比べて大幅に高いため、放熱性に優れる。
【0037】
充填材2の材料の例としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの樹脂やグリースが挙げられる。また、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂が挙げられる。
幾つかの実施形態では、充填材2の材料として、絶縁性に優れた材料を用いる。
【0038】
幾つかの実施形態では、図1に示されるように、バルブケーシング40には充填孔44が設けられる。この充填孔44は、コイルボビン30の円筒部32の内周面33とバルブケーシング40の軸部42の外周面43との間に充填材2を充填するための孔である。
充填孔44を設けることにより、バルブケーシング40とコイルボビン30とを組み立てた後に、バルブケーシング40の外部から充填孔44を通して充填材2を充填することができるので、コイルボビン30の円筒部32の内周面33とバルブケーシング40の軸部42の外周面43との間に隙間がある場合には、この間隙に設けられた充填材2を備える電磁弁1を製造しやすい。
【0039】
図1に示すように、バルブケーシング40は、軸部42を形成する第1部材46と、一対のフランジ部34のうち少なくとも一方の外表面36に対向する部分を形成する第2部材47とを含む。
【0040】
図1に示す電磁弁1では、第2部材47は、コイルボビン30の一対のフランジ部34のうち、バルブ本体20に近い方の外表面36に対向する部分を形成する環状の部材である。一方、コイルボビン30の円筒部32の軸方向に関して、コイルボビン30を挟んで第2部材47の反対側(すなわち、一対のフランジ部34のうちバルブ本体20から遠い方)には、第1部材46のフランジ部45がバルブケーシング40の軸部42の径方向に沿って延出している。
すなわち、第2部材47は、ソレノイドコイル10に対して、ソレノイドコイル10のバルブケーシング40への挿入方向の反対側に位置し、コイルボビン30に隣接している。
また、第1部材46が形成するバルブケーシング40の軸部42は、軸部42の軸方向に関して、コイルボビン30よりもバルブ本体20側に延出した延出部41を有する。この延出部41は、バルブケーシング40において、第2部材47よりも内周側に存在し、バルブ本体20のアーマチュア26と隣接している。
【0041】
図1に示す電磁弁1では、第1部材46は、ソレノイドコイル10からバルブ本体20に至る磁路を形成するための磁性体部52を含み、該磁性体部52によって軸部42が形成されている。また、第2部材47は、コイルボビン30が取り付けられた軸部42に挿通される環状の非磁性体部54を含む。そして、電磁弁1は、非磁性体部54によって囲まれた軸部42がバルブ本体20に磁力を付与するように構成される。
【0042】
この場合、コイルボビン30の円筒部32の内周面33よりも内側に存在する第1部材46が磁性体部52を含み、コイルボビン30の円筒部32の軸方向に関して外側の部分に存在する第2部材47は非磁性体部54を含むので、第2部材47に向かう磁束線を低減させて延出部41を含む第1部材46に磁束線を集中して形成することができ、バルブ本体20を駆動するためのソレノイドコイル10の電磁力(電磁吸引力)を向上させることができる。
【0043】
すなわち、バルブ本体20において、アーマチュア26は、軸部42の軸方向に関して、軸部42(延出部41)に隣り合う部分である。したがって、ソレノイドコイル10の電磁力により、上述のように軸部42(延出部41)に磁束線が集中して形成されて、軸部42(延出部41)に隣り合うアーマチュア26に特に磁力を及ぼし、アーマチュア26が軸部42に効果的に吸引されてバルブ本体20の全体が移動するようになっている。
【0044】
第1部材46の磁性体部52を形成する材料としては、磁性体の金属、例えば、磁性体のクロムモリブデン鋼(例えば、SCM440)が挙げられる。
また、第2部材47の非磁性体部54を形成する材料としては、非磁性体の金属、例えば、非磁性体のステンレス鋼(例えば、SUS303)が挙げられる。
【0045】
幾つかの実施形態では、第1部材46の熱伝導率は第2部材47よりも高い。
これにより、充填材2を介してソレノイドコイル10から第1部材46の軸部42に移動した熱を効果的に外部に散逸させることができる。よって、上述した構成と相まって、ソレノイドコイル10から内周側に向かってバルブケーシング40へ至る経路を介した熱伝達がより一層促進される。
【0046】
第2部材47よりも熱伝導率が高い第1部材46を形成する材料の例としては、クロムモリブデン鋼(例えば、SCM440;熱伝導率60W/K・m)が挙げられる。
また、第1部材46よりも熱伝導率が低い第2部材47を形成する材料の例としては、ステンレス鋼(例えば、SUS303;熱伝導率16W/K・m)が挙げられる。
【0047】
幾つかの実施形態では、図1に示すように、バルブケーシング40には電磁弁1の制御対象である流体の流路56が形成されており、バルブケーシング40は、流路56からソレノイドコイル10への流体の通り道を封止するためのシール58を有する。
図1に示す電磁弁1では、コイルボビン30の円筒部32の内周面33と、バルブケーシング40の軸部42の外周面43との間に充填材2を設けることでソレノイドコイル10からの放熱性を高めたので、ソレノイドコイル10の冷却目的で流体をソレノイドコイル10に積極的に導く必要がない。このため、流路56からソレノイドコイル10への流体の通り道を封止するためのシール58をバルブケーシング40に設けることができ、これにより流体のバルブケーシング40外部への漏洩を防ぐことができる。
【0048】
なお、図1に示されるように、電磁弁1には、コイルボビン30に巻回されるコイルの両端を外部に取り出すためのコイル取出孔51が設けられていてもよい。電磁弁1は、コイルボビン30に巻回されるコイルの両端が、コイルボビン30に設けられる切欠き37(後述)及び該コイル取出孔51を通して電磁弁1の外部に取り出されるように構成されていてもよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、コイルボビン30の熱伝導率は50W/K・m以上である。
この場合、ソレノイドコイル10を保持するコイルボビン30の熱伝導率が高いため、コイルボビン30を介したソレノイドコイル10からバルブケーシング40への放熱が促進される。
【0050】
幾つかの実施形態では、コイルボビン30の材料は樹脂(例えばポリアミド系樹脂やエポキシ系樹脂)であってもよい。
【0051】
幾つかの実施形態では、コイルボビン30の材料は金属であってもよい。
ここで、図2及び図3は、本発明の一実施形態に係るコイルボビンの構成を示す図でありそれぞれ平面図及び斜視図である。なお、図2及び図3には、コイルボビン30は、ソレノイドコイル10が未だ巻回されていない状態のコイルボビン30が示される。
図2及び図3に示すコイルボビン30の材料は金属であり、コイルボビン30には、円筒部32の軸方向に延在するスリット38が設けられている。コイルボビン30に設けられたスリット38は、絶縁材料39で埋められている。また、コイルボビン30には、図1に示すように、巻回されるコイルの両端をコイルボビン30の外部に取り出すための切欠き37が設けられていてもよい。
【0052】
図2及び図3に示すコイルボビン30を備える電磁弁1では、ソレノイドコイル10を保持するコイルボビン30は熱伝導率の高い金属から形成されるので、コイルボビン30を介したソレノイドコイル10からバルブケーシング40への放熱が促進される。また、コイルボビン30には円筒部32の軸方向に延在するスリット38が設けられるので、コイルボビンに生じる渦電流が抑制される。
【0053】
また、スリット38は絶縁材料39で埋められるので、渦電流を抑制する効果を低減することなく、コイルを巻回することが可能となり、ソレノイドコイル10の製造がしやすくなる。
仮にコイルボビン30に形成したスリット38を絶縁材料39で埋めないままコイルボビン30にコイルを巻回すると、コイルを巻き締める力によってスリット38が閉塞してしまうことがある。そうすると、スリット38を形成することによる渦電流防止効果が低下してしまう。そこで、スリット38を絶縁材料39で埋めることで、コイルを巻回するときにもスリット38が閉塞せずに、コイル巻回後もスリット38が維持され、渦電流防止効果を有するソレノイドコイル10の製造がしやすくなる。
【0054】
幾つかの実施形態では、コイルボビン30の材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む。
この場合、熱伝導率の高いアルミニウム(熱伝導率:127〜193W/K・m)がコイルボビン30の材料に含まれるので、コイルボビン30を介したソレノイドコイル10からバルブケーシング40への放熱が促進される。
【0055】
コイルボビン30に設けられるスリット38を埋める絶縁材料39としては、非磁性体であり、かつ、導電性のない材料であれば、特に限定することなく用いることができる。絶縁材料39の例としては、樹脂が挙げられる。
【0056】
次に、図1に示す電磁弁1の製造方法について説明する。
一実施形態に係る電磁弁1の製造方法は、挿通工程と、充填工程とを備える。
【0057】
挿通工程では、ソレノイドコイル10を保持するコイルボビン30の円筒部32に、バルブケーシング40の軸部42を挿通させる。
バルブケーシング40の軸部42をコイルボビン30の円筒部32に挿通させた後、軸部42を形成する第1部材46と第2部材47とが、一対のフランジ部34の両側からコイルボビン30を挟んで配置されるようにバルブケーシング40を組み立ててもよい。
【0058】
充填工程では、コイルボビン30の円筒部32の内周面33とバルブケーシング40の軸部42の外周面43との間に隙間がある場合には、この間隙に空気よりも熱伝導率が大きい充填材2を充填する。
挿通工程では、コイルボビン30がバルブケーシング40の軸部42を形成する第1部材46に嵌合されるが、この挿通工程において、コイルボビン30の内周側とバルブケーシング40との間に間隙が形成される。これは、仮に間隙が形成されないようにコイルボビン30の円筒部32及びバルブケーシング40の軸部42の径を設計すると、スムーズに挿通できなくなり、電磁弁1の組立てが容易でなくなってしまう。このため、若干の間隙が形成されるように、予めコイルボビン30とバルブケーシング40が設計されることが通常であるためである。
例えばこのような理由から挿通工程においてコイルボビン30の円筒部32の内周面33とバルブケーシング40の軸部42の外周面43との間に形成された間隙がある場合には、この間隙に空気よりも熱伝導率が大きい充填材2を充填する。
この際、充填材2は、バルブケーシング40に設けられた充填孔44を通じてバルブケーシング40の外部から充填されてもよい。
【0059】
幾つかの実施形態では、充填工程において、コイルボビン30の円筒部32の内周面33とバルブケーシング40の軸部42の外周面43との間の間隙における圧力を減圧しながら充填材2を充填してもよい。
この際、コイルボビン30の円筒部32の内周面33とバルブケーシング40の軸部42の外周面43との間の間隙における圧力は、バルブケーシング40に設けられたコイル取出孔51を通じて外間隙に存在するガスを吸引することによって減圧されてもよい。
この場合、コイルボビン30の円筒部32の内周面33とバルブケーシング40の軸部42の外周面43との間の間隙における圧力を減圧しながら充填材2を充填するので、充填材2をコイルボビン円筒部32の内周面33及びバルブケーシング40の軸部42の外周面43に密着させやすいため、ソレノイドコイル10で発生する熱の放熱性をより向上させることができる。
【0060】
次に、図4〜6を参照して、本発明の実施形態に係る電磁弁が適用される流体機械及び再生可能エネルギー型発電装置の一例である油圧機械及び風力発電装置の構成について説明する。
【0061】
図4は、本発明の一実施形態に係る風力発電装置(再生可能エネルギー型発電装置)の概略を示す図である。
図4に示す風力発電装置60(再生可能エネルギー型発電装置)は、 再生可能エネルギー源から電力を生成するように構成されている。再生可能エネルギーは、例えば、風や波等の流体エネルギーが例として挙げられるが、本実施形態における再生可能エネルギーは風である。
図4に示す風力発電装置60は、少なくとも一本のブレード62と、ブレード62が取付けられるハブ64と、油圧ポンプ66と、少なくとも1つの油圧モータ68と、発電機61と、を備える。
油圧ポンプ66は、ハブ64の回転によって駆動されるように構成される。油圧モータ68は、油圧ポンプ66で生成された圧油によって駆動されるように構成される。また、発電機61は、油圧モータ68によって駆動されるように構成される。そして、油圧ポンプ66又は油圧モータ68は、後述する油圧機械80である。
【0062】
一実施形態では、少なくとも一本のブレード62及びハブ64を含むロータ63には、回転シャフト65を介して油圧ポンプ66が連結される。油圧ポンプ66には、高圧ライン67及び低圧ライン69を介して油圧モータ68が接続される。具体的には、油圧ポンプ66の出口が高圧ライン67を介して油圧モータ68の入口に接続され、油圧ポンプ66の入口が低圧ライン69を介して油圧モータ68の出口に接続される。油圧ポンプ66は、回転シャフト65によって駆動されて作動油を昇圧し、高圧の作動油(圧油)を生成する。油圧ポンプ66で生成された圧油は高圧ライン67を介して油圧モータ68に供給され、この圧油によって油圧モータ68が駆動される。油圧モータ68で仕事をした後の低圧の作動油は、油圧モータ68の出口と油圧ポンプ66の入口との間に設けられた低圧ライン69を経由して、油圧ポンプ66に再び戻される。
【0063】
油圧モータ68には発電機61が連結される。一実施形態では、発電機61は、電力系統に連系されるとともに、油圧モータ68によって駆動される同期発電機である。
【0064】
なお、回転シャフト65の少なくとも一部は、タワー76上に設置されたナセル78によって覆われている。一実施形態では、油圧ポンプ66、油圧モータ68及び発電機61は、ナセル78の内部に設置される。
【0065】
図4に示す風力発電装置60では、ロータ63は再生可能エネルギーである風のエネルギーを利用して回転するように構成される。ロータ63の回転エネルギーは、油圧ポンプ66及び油圧モータ68を含む油圧トランスミッション71を介して発電機61に入力され、発電機61において電力が生成されるようになっている。
【0066】
図5は、一実施形態に係る油圧機械(流体機械)の構成を概略的に示す横断面図であり、図6は、一実施形態に係る油圧機械(流体機械)の一部を電磁弁とともに示す概略断面図である。
図5及び図6に示す油圧機械80(流体機械)は、上述の電磁弁1の備えるバルブケーシング40を装着可能なシリンダブロック82と、シリンダブロック82の内部に形成されるシリンダ84と、シリンダ84に案内されてシリンダ84の軸方向に沿って往復運動可能に構成されたピストン86と、を含む。シリンダブロック82には、シリンダ84及びピストン86によって画定される作動室88に連通可能な流体流路81が設けられる。電磁弁1は、流体流路81と作動室88との間にバルブ本体20が位置するようにシリンダブロック82に装着され、ソレノイドコイル10への電流供給により作動室88と流体流路81との接続を切換え可能に構成される。
【0067】
幾つかの実施形態に係る油圧機械80は、図5に示すように、回転シャフト90と、回転シャフト90の半径方向に沿って延びる少なくとも1つのシリンダ84を具備するシリンダブロック82と、シリンダ84内に配置され、シリンダ84とともに作動室88を形成するピストン86と、ピストン86の往復運動と回転シャフト90の回転運動との間の変換を行うように構成された変換機構とを有する。
なお、シリンダ84は、シリンダブロック82においてシリンダボアを区画する部分であり、シリンダブロック82(流体機械における構造体)は、シリンダ84を有する一体の成形物であってもよく、或いは、独立したシリンダスリーブ(シリンダライナ)によって形成されるシリンダ84を含む集合物であってもよい。
【0068】
幾つかの実施形態では、油圧機械80は、作動流体の流れを制御するための複数の制御弁を有する。制御弁は、相対的に高圧の作動流体の流れを制御するための高圧弁92と、相対的に低圧の作動流体の流れを制御するための低圧弁94とを含む。
そして、幾つかの実施形態では、高圧弁92又は低圧弁94の少なくとも一方は、上述した、図1に示される電磁弁1である。図5及び図6に示す油圧機械80では、高圧弁92が図1に示す電磁弁1である。
【0069】
上記油圧機械80が油圧ポンプ66である場合、回転シャフト90が回転運動すると、変換機構の働きにより、ピストン86が往復運動する。そして、ピストン86が往復運動している間に、低圧弁94を通じて作動室88に低圧の作動流体が供給されると、作動流体が作動室88内で圧縮され、そして、高圧弁92を通じて作動室88から高圧の作動流体が吐出される。つまり、油圧機械80が油圧ポンプ66である場合、低圧弁94は、作動室88に対する作動流体の供給を制御する給油弁として機能し、高圧弁92は、作動室88からの作動流体の排出を制御する排油弁として機能する。
【0070】
上記油圧機械80が油圧モータ68である場合、高圧弁92を通じて作動室88に高圧の作動流体が供給されると、作動流体の流体エネルギーによってピストン86が往復運動し、変換機構の働きにより、回転シャフト90が回転運動する。なお、作動室88内で低圧になった作動流体は、低圧弁94を通じて作動室88から排出される。つまり、油圧機械80が油圧モータ68である場合、高圧弁92は、作動室88に対する作動流体の供給を制御する給油弁として機能し、低圧弁94は、作動室88からの作動流体の排出を制御する排油弁として機能する。
【0071】
幾つかの実施形態では、変換機構は、図5に示したように、回転シャフト90に対し偏心して連結されて回転シャフト90と一体に回転可能な偏心カム96と、偏心カム96と摺接するシュー97と、シュー97とピストン86との間を連結する球継手98とからなる。
幾つかの実施形態では、変換機構は、回転シャフト90に対し固定され、カム面を有するローブカム(リングカム)と、カム面とピストン86との間に挟まれるローラと、を有する。
幾つかの実施形態では、変換機構は、クランクピンとコネクティングロッドからなる。
【0072】
幾つかの実施形態では、油圧機械80は、シリンダブロック82に固定された少なくとも1つのバルブブロック83を備える。バルブブロック83には、少なくとも1つの高圧弁92及び少なくとも1つの低圧弁94が取り付けられる。
幾つかの実施形態では、図5に示したように、例えば6個のシリンダ84が回転シャフト90の周りに配列され、シリンダ84の数に対応して、6個のバルブブロック83がシリンダブロック82に取り付けられている。
【0073】
幾つかの実施形態では、シリンダブロック82は、高圧流体の流路である高圧流路102と、低圧流体の流路である低圧流路104とを有する。シリンダブロック82の高圧流路102は、バルブブロック83における高圧流体の流路106に接続されており、また、シリンダブロック82の低圧流路104は、バルブブロック83における低圧流体の流路108に接続されている。
【0074】
幾つかの実施形態では、図5に示すように、シリンダブロック82に設けられる高圧流路102は、バルブブロック83における高圧流体の流路106を介して、シリンダ84及びピストン86によって画定される作動室88に連通可能な流体流路81を構成する。
【0075】
幾つかの実施形態では、高圧流路102は、シリンダブロック82の内部を回転シャフト90の軸方向に沿って延びる高圧軸方向流路103を含み、この高圧軸方向流路103を介して、風力発電装置60の高圧ライン67と連通するように構成される。
幾つかの実施形態では、低圧流路104は、シリンダブロック82の内部を回転シャフト90の軸方向に沿って延びる低圧軸方向流路105を含み、この低圧軸方向流路105を介して、風力発電装置60の低圧ライン69と連通するように構成される。
【0076】
幾つかの実施形態では、シリンダブロック82の熱伝導率は5W/K・m以上である。
該実施形態に係る油圧機械80によれば、電磁弁1が組み込まれるシリンダブロック82の熱伝導率が5W/K・m以上と比較的高いため、電磁弁1のソレノイドコイル10において発生した熱が、バルブケーシング40を介して電磁弁1の外側のシリンダブロック82にスムーズに伝達される。このため、ソレノイドコイル10で発生する熱の放熱性をより一層向上させることができる。
また、上記実施形態に係る油圧機械80を採用した再生可能エネルギー型発電装置によれば、油圧ポンプ66又は油圧モータ68において、電磁弁1が組み込まれるシリンダブロック82の熱伝導率が5W/K・m以上と比較的高いため、ソレノイドコイル10において発生した熱が、バルブケーシング40を介して電磁弁1の外側のシリンダブロック82にスムーズに伝達される。このため、ソレノイドコイル10で発生する熱の放熱性をより一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 電磁弁
2 充填材
10 ソレノイドコイル
20 バルブ本体
22 スプリング
24 弁座
26 アーマチュア
30 コイルボビン
32 円筒部
33 内周面
34 フランジ部
36 外表面
38 スリット
39 絶縁材料
40 バルブケーシング
41 延出部
42 軸部
43 外周面
44 充填孔
45 フランジ部
46 第1部材
47 第2部材
48 第1ポート
49 第2ポート
52 磁性体部
54 非磁性体部
56 流路
58 シール
60 風力発電装置
61 発電機
62 ブレード
64 ハブ
66 油圧ポンプ
68 油圧モータ
80 油圧機械
81 流体流路
82 シリンダブロック
84 シリンダ
86 ピストン
88 作動室
図1
図2
図3
図4
図5
図6