【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る電磁弁は、
ソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルの電磁力で駆動されるように構成されたバルブ本体と、
円筒部および該円筒部の両端から径方向外方に延在するように設けられる一対のフランジ部とを有し、前記円筒部の外周側において前記一対のフランジ部間に形成される空間に前記ソレノイドコイルを保持するコイルボビンと、
前記コイルボビンの前記円筒部に挿通される軸部を有し、前記軸部の周りに設けられた前記コイルボビン、前記ソレノイドコイル及び前記バルブ本体を収容するバルブケーシングと、
前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に隙間がある場合には、この間隙に設けられ、空気よりも熱伝導率が大きい充填材と、を備える。
【0008】
典型的な電磁弁では、例えば製造上の理由から、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンの前記円筒部の内周面と、ソレノイドコイル及びバルブ本体を収容するバルブケーシングの軸部の外周面との間には間隙(すなわち空気)が存在しているのが通常である。この種の電磁弁では、ソレノイドコイルから内周側に向かってバルブケーシングへ至る熱伝達の経路上に前記間隙(空気)が存在する。
これに対し、上記実施形態に係る電磁弁によれば、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンの前記円筒部の内周面と、ソレノイドコイル及びバルブ本体を収容するバルブケーシングの軸部の外周面との間に隙間がある場合には、この間隙に空気よりも熱伝導率が大きい充填材が設けられる。このため、ソレノイドコイルから内周側に向かってバルブケーシングへ至る熱伝達の経路上において、ソレノイドコイルで生じた熱が充填材を介してバルブケーシング(軸部)に効果的に伝達される。よって、熱伝達の経路上に間隙(空気)が存在する典型的な電磁弁に比べて、充填材の存在によってソレノイドコイルからバルブケーシングへの放熱性を向上させることができ、より効果的な熱伝達が可能となる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)で説明した構成において、前記バルブケーシングには、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に前記充填材を充填するための充填孔が設けられる。
この場合、バルブケーシングとコイルボビンとを組み立てた後に、バルブケーシング外部から充填孔を通して充填材を充填することができるので、コイルボビンの円筒部の内周面とバルブケーシングの軸部の外周面との間に設けられた充填材を備える電磁弁を製造しやすい。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)又は(2)で説明した構成において、前記充填材の熱伝導率が0.5W/K・m以上である。
この場合、充填材の熱伝導率が空気の熱伝導率(室温において0.024W/K・m程度)に比べて大幅に高いため、放熱性に優れる。
なお、本明細書における「熱伝導率」は、室温における熱伝導率のことをいうものとする。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)乃至(3)で説明した構成において、前記バルブケーシングが、前記軸部を形成する第1部材と、前記一対のフランジ部のうち少なくとも一方の外表面に対向する部分を形成する第2部材とを含み、前記第1部材の熱伝導率は前記第2部材よりも高い。
これにより、上記(1)における充填材を介してソレノイドコイルから第1部材の軸部に移動した熱を効果的に外部に散逸させることができる。よって、上記(1)の構成と相まって、ソレノイドコイルから内周側に向かってバルブケーシングへ至る経路を介した熱伝達がより一層促進される。
【0012】
(5)幾つかの実施形態では、例えば上記(4)で説明した構成において、前記第1部材は、前記ソレノイドコイルから前記バルブ本体に至る磁路を形成するための磁性体部を含み、該磁性体部によって前記軸部が形成されており、
前記第2部材は、前記コイルボビンが取り付けられた前記軸部に挿通される環状の非磁性体部を含み、前記非磁性体部によって囲まれた前記軸部が前記バルブ本体に磁力を付与するように構成される。
この場合、コイルボビンの円筒部の内周面よりも内側に存在する第1部材が磁性体部を含み、コイルボビンの円筒部の軸方向に関して外側の部分に存在する第2部材は非磁性体を含むので、第2部材に向かう磁束線を低減させて第1部材に磁束線を集中して形成することができ、バルブ本体を駆動するためのソレノイドコイルの電磁力(電磁吸引力)を向上させることができる。
【0013】
(6)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)乃至(5)で説明した構成において、前記コイルボビンの熱伝導率が50W/K・m以上である。
この場合、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンの熱伝導率が高いため、コイルボビンを介したソレノイドコイルからバルブケーシングへの放熱が促進される。
【0014】
(7)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)乃至(6)で説明した構成において、前記コイルボビンの材料が金属であり、前記コイルボビンには、前記円筒部の軸方向に延在するスリットが設けられ、前記スリットは絶縁材料で埋められている。
この場合、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンは熱伝導率の高い金属から形成されるので、コイルボビンを介したソレノイドコイルからバルブケーシングへの放熱が促進される。また、コイルボビンには円筒部の軸方向に延在するスリットが設けられるので、コイルボビンに生じる渦電流が抑制される。また、該スリットは絶縁材料で埋められるので、渦電流を抑制する効果を低減することなく、コイルを巻回することが可能となり、ソレノイドコイルの製造がしやすくなる。
【0015】
(8)幾つかの実施形態では、例えば上記(7)で説明した構成において、前記コイルボビンの材料がアルミニウム又はアルミニウム合金を含む。
この場合、熱伝導率の高いアルミニウムがコイルボビンの材料に含まれるので、コイルボビンを介したソレノイドコイルからバルブケーシングへの放熱が促進される。
【0016】
(9)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)乃至(8)で説明した構成において、前記バルブケーシングには前記電磁弁の制御対象である流体の流路が形成されており、
前記バルブケーシングは、前記流路から前記ソレノイドコイルへの流体の通り道を封止するためのシールを有する。
バルブケーシングに流体が流れる流路が形成される場合、該流路からソレノイドコイルへの流体の通り道を確保して、該流体を冷却用の媒体として利用することも考えられる。この場合には、ソレノイドコイルの冷却は効果的に行えるかもしれないが、電磁弁から外部への流体の漏出への対策が必要になるかもしれない。
この点、上記(9)の構成では、コイルボビンの前記円筒部の内周面と、バルブケーシングの軸部の外周面との間に充填材を設けることでソレノイドコイルからの放熱性を高めたので(上記(1)の構成)、ソレノイドコイルの冷却目的で流体をソレノイドコイルに積極的に導く必要がない。このため、流路からソレノイドコイルへの流体の通り道を封止するためのシールをバルブケーシングに設けることができ、これにより流体のバルブケーシング外部への漏洩を防ぐことができる。
【0017】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る流体機械は、
例えば上記(1)乃至(9)で説明した構成に係る電磁弁と、前記電磁弁が組み込まれる構造体とを含む流体機械であって、前記構造体には前記電磁弁の制御対象である流体の流路が形成されており、前記構造体の熱伝導率は5W/K・m以上である。
【0018】
上記流体機械によれば、電磁弁が組み込まれる構造体の熱伝導率が5W/K・m以上と比較的高いため、ソレノイドコイルにおいて発生した熱が、バルブケーシングを介して電磁弁の外側の構造体にスムーズに伝達される。このため、ソレノイドコイルで発生する熱をより一層効果的に散逸させることができる。
【0019】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る油圧機械は、
例えば上記(1)乃至(9)で説明した構成に係る電磁弁を備える油圧機械であって、
前記油圧機械は、
前記バルブケーシングを装着可能なシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの内部に形成されるシリンダと、
前記シリンダに案内されて前記シリンダの軸方向に沿って往復運動可能に構成されたピストンと、を含み、
前記シリンダブロックには、前記シリンダ及び前記ピストンによって画定される作動室に連通可能な流体流路が設けられ、
前記電磁弁は、前記流体流路と前記作動室との間に前記バルブ本体が位置するように前記シリンダブロックに装着され、前記ソレノイドコイルへの電流供給により前記作動室と前記流体流路との接続を切換え可能に構成され、
前記シリンダブロックの熱伝導率は5W/K・m以上である。
【0020】
上記油圧機械によれば、電磁弁が組み込まれるシリンダブロックの熱伝導率が5W/K・m以上と比較的高いため、ソレノイドコイルにおいて発生した熱が、バルブケーシングを介して電磁弁の外側のシリンダブロックにスムーズに伝達される。このため、ソレノイドコイルで発生する熱の放熱性をより一層向上させることができる。
【0021】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る再生可能エネルギー型発電装置は、
再生可能エネルギー源から電力を生成する再生可能エネルギー型発電装置であって、
少なくとも一本のブレードと、
前記少なくとも一本のブレードが取付けられるハブと、
前記ハブの回転によって駆動されるように構成された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプで生成された圧油によって駆動されるように構成された少なくとも一つの油圧モータと、
前記少なくとも一つの油圧モータによって駆動される発電機とを備える風力発電装置であって、
前記油圧ポンプ又は前記油圧モータは、例えば上記(10)又は(11)で説明した構成に係る油圧機械である。
【0022】
上記再生可能エネルギー型発電装置によれば、油圧ポンプ又は油圧モータにおいて、電磁弁が組み込まれるシリンダブロックの熱伝導率が5W/K・m以上と比較的高いため、ソレノイドコイルにおいて発生した熱が、バルブケーシングを介して電磁弁の外側のシリンダブロックにスムーズに伝達される。このため、ソレノイドコイルで発生する熱の放熱性をより一層向上させることができる。
【0023】
(13)幾つかの実施形態では、例えば上記(12)で説明した構成において、前記発電装置は、前記再生可能エネルギー源としての風から電力を生成する風力発電装置である。
【0024】
(14)本発明の少なくとも一実施形態に係る電磁弁の製造方法は、
電磁弁の製造方法であって、
前記電磁弁は、
ソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルの電磁力で駆動されるように構成されたバルブ本体と、
円筒部および該円筒部の両端から径方向外方に延在するように設けられる一対のフランジ部とを有し、前記円筒部の外周側において前記一対のフランジ部間に形成される空間に前記ソレノイドコイルを保持するコイルボビンと、
前記コイルボビンの前記円筒部に挿通される軸部を有し、前記軸部の周りに設けられた前記コイルボビン、前記ソレノイドコイル及び前記バルブ本体を収容するバルブケーシングと、を含み、
前記ソレノイドコイルを保持する前記コイルボビンの前記円筒部に、前記バルブケーシングの前記軸部を挿通させる挿通工程と、
前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に隙間がある場合には、この間隙に空気よりも熱伝導率が大きい充填材を充填する充填工程と、を備える。
【0025】
上記電磁弁の製造方法によれば、ソレノイドコイルを保持するコイルボビンの円筒部に、バルブケーシングの軸部を挿通させた後に、コイルボビンの円筒部の内周面とバルブケーシングの軸部の外周面との間に隙間がある場合には、この間隙に空気よりも熱伝導率が大きい充填材を充填させる。その結果得られる電磁弁では、コイルボビンの円筒部の内周面とバルブケーシングの軸部の外周面との間に存在する充填材により、ソレノイドコイルから内周側に向かってバルブケーシングへ至る熱伝達の経路上において、ソレノイドコイルで生じた熱が充填材を介してバルブケーシング(軸部)に効果的に伝達される。よって、熱伝達の経路上に間隙(空気)が存在する典型的な電磁弁に比べて、充填材の存在によってソレノイドコイルからバルブケーシングへの放熱性を向上させることができ、より効果的な熱伝達が可能となる。
【0026】
(15)幾つかの実施形態では、例えば上記(14)で説明した構成において、前記充填工程では、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間の間隙における圧力を減圧しながら前記充填材を充填する。
この場合、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間の間隙における圧力を減圧しながら充填材を充填するので、充填材をコイルボビン円筒部の内周面及びバルブケーシングの軸部の外周面に密着させやすいため、ソレノイドコイルで発生する熱の放熱性をより向上させることができる。
【0027】
(16)幾つかの実施形態では、例えば上記(1)乃至(13)で説明した構成において、前記電磁弁は、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に設けられる空気よりも熱伝導率が大きい充填材を備える。
【0028】
(17)幾つかの実施形態では、例えば上記(14)又は(15)で説明した構成において、前記充填工程では、前記コイルボビンの前記円筒部の内周面と前記バルブケーシングの前記軸部の外周面との間に、空気よりも熱伝導率が大きい充填材を充填する。