特許第6333079号(P6333079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333079
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】光スキャナ
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20180521BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20180521BHJP
   H04N 1/113 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G02B26/10 104Z
   B81B3/00
   H04N1/04 104Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-121658(P2014-121658)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-1275(P2016-1275A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 景一
(72)【発明者】
【氏名】小川 昭雄
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−160887(JP,A)
【文献】 特開2013−171227(JP,A)
【文献】 特開2010−263736(JP,A)
【文献】 特開2008−178173(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0008401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G02B 26/00 − 26/08
B81B 1/00 − 7/04
B81C 1/00 − 99/00
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射するミラー部と、
前記ミラー部を包囲して支持する内枠部と、
前記内枠部を包囲して支持する外枠部と、
前記ミラー部と前記内枠部との間に介在して、前記ミラー部の回転軸線の回りに前記ミラー部を回動させる内側圧電アクチュエータと、
前記内枠部と前記外枠部との間に介在して、前記回転軸線の回りに前記内枠部を回動させる外側圧電アクチュエータと、
前記内側圧電アクチュエータに印加される第1駆動電圧と、前記外側圧電アクチュエータに印加される第2駆動電圧とを生成する駆動電圧生成手段とを備え、
前記第1駆動電圧と前記第2駆動電圧のいずれか一方が、前記外枠部に対する前記ミラー部の前記回転軸線回りのオフセット角に対応するオフセット電圧であり、
前記オフセット電圧の波形は、ゼロ電位から前記オフセット角に対応する電位に立ち上がり、前記電位からゼロ電位に立ち下がる矩形波状であることを特徴とする光スキャナ。
【請求項2】
請求項1記載の光スキャナであって、
前記オフセット電圧が印加される各圧電アクチュエータは、
電極間でオフセット電圧が印加される圧電体と、前記圧電体及び前記電極を支持し前記圧電体と共に屈曲変形する支持体とを有する複数の圧電カンチレバーで構成され、
各圧電カンチレバーは、互いに隣り合うように並んで配置され、それぞれ隣り合う圧電カンチレバーに対して折り返すように各圧電カンチレバーの端部が連結されることを特徴とする光スキャナ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光スキャナであって、
前記オフセット電圧の前記オフセット角に対応する電位からゼロ電位に立ち下がる波形部分は、パルス状に形成されることを特徴とする光スキャナ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光スキャナであって、
前記駆動電圧生成手段で生成されたオフセット電圧以外の電圧は、波形が正弦波であり、極大電圧となる時点を含む所定時間幅の極大電圧期間と、極小電圧となる時点を含む所定時間幅の極小電圧期間との両方に、前記オフセット電圧がゼロ電位である時点を含むことを特徴とする光スキャナ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光スキャナであって、
前記駆動電圧生成手段で生成されたオフセット電圧以外の電圧は、波形がノコギリ波状であり、極大電圧となる時点及び極小電圧となる時点を含む所定時間幅の期間に、前記オフセット電圧がゼロ電位である時刻を含むことを特徴とする光スキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスとして製造される光スキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシニング技術等を利用して製造されるMEMSデバイスの一種としてMEMS光スキャナの開発が各研究機関で盛んに行われている。MEMS光スキャナは、入射光を反射するミラー部と、ミラー部を回転軸線の回りに往復回動させるアクチュエータとを備え、回転軸線の回りのミラー部の往復回動によりミラー部の揺動角を制御し反射光を出射するものである。MEMS光スキャナは、例えばレーザプロジェクタ、レーザビームプリンタ、レーザレーダー、バーコードリーダ、エリアセンサ等、種々の光学機器への応用が可能であり、これら光学機器の小型化に寄与するものである。
【0003】
MEMS光スキャナのアクチュエータとして、圧電膜の伸縮を利用する圧電アクチュエータがある。圧電アクチュエータは耐熱性が高いことから、車両内等の高温環境下でも動作可能であり、例えば、車載レーザレーダーに使用されている。車載レーザレーダーでは、より大きな照射角を得るために、より大きな揺動角でミラー部が回動し得る光スキャナが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
この光スキャナは、固定枠に対してミラー部を回転軸線回りに初期状態において傾かせるオフセット角を設定するためのオフセット電圧とミラー部を揺動させる電圧とを合成した合成電圧を圧電アクチュエータに印加し、ミラー部を揺動させるとともにミラー部の回転軸線回りの傾きを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−198314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された光スキャナでは、圧電アクチュエータに印加される電圧が、固定枠に対するミラー部の最大揺動角に対応する限界電圧以上になると、圧電アクチュエータが破損する可能性がある。そのため、圧電アクチュエータに印加される合成電圧は、限界電圧を超えない範囲内の電圧に制御されなければならない。
【0007】
従って、より大きいオフセット角を確保するために、より大きいオフセット電圧を圧電アクチュエータに印加する場合には、合成電圧が限界電圧を超えないようにミラー部を揺動させる電圧を下げなければならず、それによってミラー部の揺動角が小さくなるという問題がある。一方、ミラー部の所定の揺動角を確保するためには、合成電圧が限界電圧を超えないようにオフセット電圧を下げなければならず、それによってミラー部のオフセット角が小さくなるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑み、光偏向器のミラー部に対して所望のオフセット角とより大きい揺動角を与えることができる光スキャナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光を反射するミラー部と、前記ミラー部を包囲して支持する内枠部と、前記内枠部を包囲して支持する外枠部と、前記ミラー部と前記内枠部との間に介在して、前記ミラー部の回転軸線の回りに前記ミラー部を回動させる内側圧電アクチュエータと、前記内枠部と前記外枠部との間に介在して、前記回転軸線の回りに前記内枠部を回動させる外側圧電アクチュエータと、前記内側圧電アクチュエータに印加される第1駆動電圧と、前記外側圧電アクチュエータに印加される第2駆動電圧とを生成する駆動電圧生成手段とを備え、前記第1駆動電圧と前記第2駆動電圧のいずれか一方が、前記外枠部に対する前記ミラー部の前記回転軸線回りのオフセット角に対応するオフセット電圧であり、前記オフセット電圧の波形は、ゼロ電位から前記オフセット角に対応する電位に立ち上がり、前記電位からゼロ電位に立ち下がる矩形波状であることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、内側圧電アクチュエータに印加される第1駆動電圧と、外側圧電アクチュエータに印加される第2駆動電圧のいずれか一方をオフセット電圧にすることにより、内側圧電アクチュエータと外側圧電アクチュエータの一方にのみオフセット電圧を印加し、他方にミラー部を揺動させる電圧を印加することができる。これにより、ミラー部に対して最大揺動角に対応する限界電圧値の電圧を印加するとともに、その限界電圧に制限されることなく所望のオフセット電圧を印加できる。その結果、ミラー部に対して所望のオフセット角を設定するとともに、ミラー部を大きい所定の揺動角で揺動させることができる光スキャナが提供される。
【0011】
ところで、本発明の前提となる光スキャナにおいては、オフセット電圧を圧電アクチュエータに印加した状態が継続すると、当該圧電アクチュエータの圧電体に電荷が蓄積され、圧電体内での分極が小さくなり、圧電体の電極間の電位差が小さくなる結果、オフセット角が小さくなる。そこで、本発明によれば、オフセット電圧の波形は、ゼロ電位から前記オフセット角に対応する電位に立ち上がり、この電位からゼロ電位に立ち下がる矩形波状とされる。さらに、前記オフセット電圧の前記オフセット角に対応する電位からゼロ電位に立ち下がる波形部分は、パルス状に形成されてもよい。
【0012】
このような矩形波状のオフセット電圧を印加することにより、オフセット電圧がゼロ電位である瞬間に、圧電体内に蓄積された電荷が放出されるので、圧電体に蓄積された電荷によりオフセット角が小さくなることを防止して、オフセット電圧に対応するオフセット角を維持することができる。
【0013】
本発明の光スキャナにおいて、前記オフセット電圧が印加される各圧電アクチュエータは、電極間でオフセット電圧が印加される圧電体と、前記圧電体及び前記電極を支持し前記圧電体と共に屈曲変形する支持体とを有する複数の圧電カンチレバーで構成され、各圧電カンチレバーは、互いに隣り合うように並んで配置され、それぞれ隣り合う圧電カンチレバーに対して折り返すように各圧電カンチレバーの端部が連結されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、オフセット電圧が印加される圧電アクチュエータが複数の圧電カンチレバーで構成されるので、例えば、圧電アクチュエータと1対のトーションバーを用いた場合と比較して、外枠部に対するミラー部の回転軸線回りのオフセット角を大きくすることができる。これにより、外枠部に対するミラー部の回転軸線回りにおいてより大きいオフセット角を維持しながら、ミラー部を回転軸線回りに所定の揺動角で揺動させることができる。

【0015】
本発明の光スキャナにおいて、前記駆動電圧生成手段で生成されたオフセット電圧以外の電圧は、波形が正弦波であり、極大電圧となる時点を含む所定時間幅の大電圧期間と、極小電圧となる時点を含む所定時間幅の小電圧期間の両方に、前記オフセット電圧がゼロ電位となる時点を含むことが好ましい。これによれば、オフセット電圧以外の電圧の波形が正弦波の波形である場合、極大電圧期間及び極小電圧期間以外の期間で、ミラー部から出射する光の投影面での走査速度をほぼ一定にすることができる。
【0016】
また、前記オフセット電圧以外の電圧は、波形がノコギリ波状であり、極大電圧となる時点及び極小電圧となる時点を含む所定時間幅の期間に、前記オフセット電圧がゼロ電位となる時点を含むことが好ましい。これによれば、極大電圧及び極小電圧となる時点を含む所定時間幅の期間で、ミラー部から出射する光の投影面での走査速度をほぼ一定にすることができる。
【0017】
上記のように、オフセット電圧以外の電圧の波形を正弦波又はノコギリ波状とすることにより、当該電圧の1周期の大部分を有効走査期間として活用できるとともに、有効走査期間以外の期間で圧電体内に蓄積された電荷が放出されることにより、所望のオフセット角を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る1軸型光偏向器を装備する1軸型光スキャナの構成図。
図2】オフセット角と揺動角の説明図。
図3図1の1軸型光スキャナの駆動電圧の波形の説明図。
図4】第1実施形態に係る1軸型光スキャナの第1変形例の平面図。
図5図4の1軸型光スキャナの駆動電圧の波形の説明図。
図6】第1実施形態に係る1軸型光スキャナの第2変形例の平面図。
図7】第1実施形態に係る1軸型光スキャナの第3変形例の平面図。
図8】第1実施形態に係る1軸型光スキャナの第4変形例の平面図。
図9】第1実施形態に係る1軸型光スキャナの第5変形例の平面図。
図10】第1実施形態に係る1軸型光スキャナの第6変形例の平面図。
図11】第1実施形態に係る1軸型光スキャナの第7変形例の平面図。
図12A】第2実施形態に係る、図1の1軸型光偏向器を用いた2軸型光スキャナの平面図。
図12B】第2実施形態に係る2軸型光スキャナの変形例の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1を参照して、第1実施形態の1軸型光スキャナ100の構成を説明する。光スキャナ100は、例えば、レーザレーダー、超小型プロジェクタ、バーコードリーダ等に用いられる部品であり、主に光偏向器1、レーザ光源80及び制御装置90から構成される。光偏向器1は、MEMSデバイスとして、マイクロマシニング技術を利用して製造される。
【0020】
光偏向器1は、矩形のミラー部10と、ミラー部10を包囲する環状矩形の内枠部20と、内枠部20を包囲する環状矩形の外枠部30とを、中心点を同一に揃えて備えている。また、光偏向器1は、ミラー部10と内枠部20との間に介在する内側圧電アクチュエータ40と、内枠部20と外枠部30との間に介在する外側圧電アクチュエータ50とを備える。
【0021】
構造の説明の便宜上、図1を用いて、x−y−zの3軸直交座標系を定義する。図1に示されるように、3軸直交座標系において、原点Oを矩形のミラー部10の前面のミラー面の中心に位置付け、x軸及びy軸を外枠部30の長辺及び短辺に対してそれぞれ平行な方向に定義する。z軸は、光偏向器1の後側から前側に向かう方向を正と定義する。
【0022】
図1に図示されるように、ミラー部10は、矩形形状であり、かつ、原点Oを通るx軸が対称軸となる部材である。ただし、ミラー部の形状は矩形形状に限定されるものではなく、原点Oに対して点対称、又は原点Oを通る線に対して線対称の形状、例えば楕円形状であってもよい。ミラー部10は、対称軸上でミラー部10外側のx軸方向両側に配設される一対の連結部21,21によって、内側圧電アクチュエータ40と連結される。
【0023】
ミラー部10は、金属蒸着法等により例えばAl等の金属を珪素層の表面に形成したミラー面を前面に有する。ミラー面に対して、レーザ光源80からのレーザ光が入射され、入射光81をミラー面においてミラー部10の法線の向きに応じた反射角で反射して、走査光82として出射する。
【0024】
内枠部20は、ミラー部10を包囲する環状矩形の部材であり、x軸に対して線対称に形成されている。内枠部20は、対称軸上でx軸方向に内枠部20の内側両側に配設される一対の連結部22,22によって、内側圧電アクチュエータ40と連結される。また、内枠部20は、対称軸上で内枠部20外側のx軸方向両側に配設され、x軸に沿って延在する一対のトーションバー60が連結される。
【0025】
内枠部20は、光偏向器の後側から順番に、珪素(Si)層、中間酸化膜層、珪素層及び表面酸化膜層の積層構造を有する。また、応力による珪素(Si)層の歪みを緩和するため、珪素(Si)層上にAl(アルミニウム)薄膜を設けてもよい。なお、中間酸化膜層及び表面酸化膜層の酸化膜はSiOで形成されている。珪素層、中間酸化膜層及び珪素層はSOI(Silicon on Insulator)ウェハを構成し、Al薄膜は、SOIウェハの裏面側に蒸着により形成され、表面酸化膜層は、珪素層の表面を酸化することにより形成される。このSOIウェハの上部にAl配線、最外層酸化膜層を形成し、内側圧電アクチュエータ40に給電を行う。なお、最外層酸化膜はSiOやSiN(窒化珪素)により形成される。
【0026】
内側圧電アクチュエータ40は、内枠部20の内側で、かつ、ミラー部10外側のx軸方向両側に配設され、ミラー部10及び内枠部20に連結するための連結部21,22を備える。内側圧電アクチュエータ40において、連結部21の端部は内側圧電アクチュエータ40の作動端(先端)として、連結部22の端部は内側圧電アクチュエータ40の支持端(基端)として機能する。
【0027】
内側圧電アクチュエータ40は、ミアンダ構造を有する圧電アクチュエータであり、折返し部44a〜44bにより直列に連結された一対の3つの圧電カンチレバー42a〜42cを備える。圧電カンチレバー42a〜42c及び折返し部44a〜44bの符号末尾のアルファベットは、ミラー部10に近い方からの順番に付されている。尚、一対の圧電カンチレバーの数は3には限定されず、4以上にすることも可能である。
【0028】
圧電カンチレバー42a〜42cは、圧電体と、圧電体を厚み方向の両側から挟む2つの電極と、圧電体及び電極を支持して圧電体と共に屈曲変形する支持体とを有する。電極は、図示しない配線を介して、電極間の圧電体に電圧を印加できるように制御装置90に電気的に接続されている。制御装置90により、ミアンダ構造を有する内側圧電アクチュエータ40に、外枠部30に対するミラー部の回転軸線の回りにおけるオフセット角に対応するオフセット電圧が印加される。
【0029】
外枠部30は、内枠部20を包囲する環状矩形の部材であり、x軸に対して線対称に形成されている。外枠部30は、x軸と平行な外枠部30内面において、y軸と平行な外側圧電アクチュエータ50と連結される。
【0030】
外枠部30は、内枠部20と同様に、光偏向器の後側から順番に、Al(アルミニウム)薄膜、珪素(Si)層、中間酸化膜層、珪素層及び表面酸化膜層の積層構造を有する。なお、中間酸化膜層及び表面酸化膜層の酸化膜はSiOで形成されている。このSOIウェハの上部にAl配線、最外層酸化膜層を形成し、内側圧電アクチュエータ40と外側圧電アクチュエータ50に給電を行う。なお、最外層酸化膜はSiOやSiNにより形成される。
【0031】
外側圧電アクチュエータ50は、外枠部30のy軸方向と平行で、所定同一幅で所定同一長さの4つの直線状圧電アクチュエータであり、全面で圧電アクチュエータとして機能する。
【0032】
図1に示されるように、外側圧電アクチュエータ50は、内枠部20から延在する1つのトーションバー60の端部に、一対の外側圧電アクチュエータ50がトーションバー60を対称軸線aとして線対称に連結される。従って、一対の外側圧電アクチュエータ50はそれぞれ、内枠部20と外枠部30との間でx軸方向に形成される空間部に、トーションバー60が対称軸線上になるように、トーションバー60の端部と、外枠部30のx軸と平行な外枠部30の内面とに連結される。
【0033】
直線状圧電アクチュエータは、圧電体と、圧電体を厚み方向の両側から挟む2つの電極と、圧電体及び電極を支持して圧電体と共に屈曲変形する支持体とを有する。電極は、図示しない配線を介して、電極間の圧電体に電圧を印加できるように電気的に制御装置90に接続されている。
【0034】
制御装置90は、内側圧電アクチュエータ40及び外側圧電アクチュエータ50を別個独立に駆動するために、内側圧電アクチュエータ40及び外側圧電アクチュエータ50それぞれに印加される駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段92と、制御信号をレーザ光源80に送信し、レーザ光81のオン・オフ及び輝度を制御するレーザ光源制御部94とを備える。
【0035】
制御装置90は、駆動電圧生成手段92により生成された内側圧電アクチュエータ40及び外側圧電アクチュエータ50の駆動電圧を、それぞれの圧電アクチュエータに別個独立に印加することにより、内側圧電アクチュエータ40及び外側圧電アクチュエータ50を駆動させ、ミラー部10を原点Oを通るx軸に平行な回転軸線aの回りに回転させる。
【0036】
その結果、レーザ光源からミラー部10の中心(原点Oの位置)に入射したレーザ光が、回転軸線aの回りのミラー部10の揺動角に応じた反射角で反射して、光偏向器1から出射する。ミラー部10からの反射光は、y−z平面内において出射方向が変化する走査光として光偏向器1から出射される。
【0037】
次に、本実施形態の光スキャナ100の作動について説明する。光スキャナ100は、外枠部30に対するミラー部10の回転軸線aの回りにおけるオフセット角に対応するオフセット電圧と、所定の揺動角でミラー部10を揺動させる電圧とが、駆動電圧生成手段92で生成され、オフセット電圧が内側圧電アクチュエータ40に、所定の揺動角でミラー部10を揺動させる電圧が外側圧電アクチュエータ50に独立して印加される。尚、本実施形態の光スキャナ100では、圧電アクチュエータ40,50が内枠部20を介して接続されているので、圧電アクチュエータ40,50各々に対して独立して電圧を印加することが可能である。
【0038】
ここで、本明細書において、「揺動」とは、所定の一本の仮想的な軸の周りの繰り返し往復回動をいう。しかしながら、これに限られるものではなく、所定の仮想的な軸の周りの単なる傾斜も含む。例えば、ミラー部10が揺動するとは、ミラー部10が軸の周りに傾斜すること及び繰り返し振動することを意味する。また、「揺動角」とはミラー部10が揺動するときの角度をいい、「オフセット角」とは固定枠である外枠部30に対してミラー部10を回転軸線aの回りに初期状態において傾斜させる角度をいう。
【0039】
図2に、初期状態のミラー部10のミラー面mと、オフセット後のミラー面m’を示す。アクチュエータに駆動電圧が印加されると、ミラー部10はミラー面mの法線nを中心に所定の揺動角(例えば、−10°〜+10°)で左右に振動する。そして、例えば、オフセット角θが+5°設定されると、ミラー面mの法線nは法線n’に移動し、ミラー部10はミラー面m’の法線n’を中心に揺動角(−5°〜+15°)で左右に振動する。
【0040】
まず、外側圧電アクチュエータ50によるx軸周りの回転駆動について説明する。光偏向器1では、一方の対の直線状圧電アクチュエータ50a,50bに対して、直線状圧電アクチュエータそれぞれの電極間にそれぞれ第1の電圧、第2の電圧を印加して駆動させると、互いに逆方向に屈曲変形する。なお、第1の電圧と第2の電圧とは、互いに逆位相の交流電圧(例えば正弦波)とする。これらの屈曲変形により、トーションバー60aにねじれ変位が生じて、ミラー部10にトーションバー60aを中心とした回転トルクが作用する。
【0041】
同様に、他方の対の直線状圧電アクチュエータ50c,50dに対して、直線状圧電アクチュエータそれぞれの電極間にそれぞれ第1の電圧、第2の電圧を印加して駆動させることにより、トーションバー60bにトーションバー60aと同じ方向にねじれ変位が生じて、ミラー部10にトーションバー60bを中心とした回転トルクが作用する。
【0042】
外側圧電アクチュエータ50の駆動により、ミラー部10にはトーションバー60a,60bを中心とした回転トルクが作用する。これにより、ミラー部10は、トーションバー60a,60bを中心軸として回転軸線a周りで回転するので、ミラー部10を回転させてy軸方向に所定周波数で所定の偏向角で光走査することができる。このとき、外側圧電アクチュエータ50a〜50dでは、駆動電圧としてトーションバー60a,60bを含むミラー部10の機械的な共振周波数付近の周波数の交流電圧を印加して共振駆動させることで、より大きな偏向角で光走査することができる。
【0043】
次に、内側圧電アクチュエータ40による、外枠部30に対するミラー部10の回転軸線の回りにおけるオフセット角を生成させる回転駆動について説明する。
【0044】
内側圧電アクチュエータ40の各圧電カンチレバーの圧電体には、ゼロ電位からオフセット角に対応する電位に立ち上がり、当該電位からゼロ電位に立ち下がる矩形波状の電圧が印加される。具体的には、連結部21から近い順番の奇数番の圧電カンチレバー42a,42cの圧電体と偶数番の圧電カンチレバー42bの圧電体の一方に、ゼロ電位からオフセット角に対応する電位に立ち上がり、当該電位からゼロ電位に立ち下がる矩形波状のオフセット電圧が印加される。矩形波状のオフセット電圧は、オフセット角に対応する電位をゼロ電位に立ち下げるパルスを印加することで、瞬間的にゼロ電位となる。このような、オフセット電圧として、直流電圧とパルス電圧との合成電圧が印加されることが好ましい。また、オフセット電圧が印加されていない他方の圧電体は、電圧が印加されても、あるいは電圧が印加されなくとも構わない。例えば、他方の圧電体に逆バイアスの電圧が印加されていると、圧電体が分極反転しない範囲では、より大きなオフセット角にすることができる。
【0045】
各圧電カンチレバーの圧電体は、各圧電体に印加された電圧に応じて、圧電カンチレバーの長手方向に伸縮し、これに伴い、各圧電カンチレバーは、厚み方向に湾曲変形し、連結部21を作動端としてミラー部10に、x軸の回りの回転駆動力を付与する。この結果、ミラー部10の往復回動の中心は、オフセット電圧に応じた外枠部30に対するミラー部10の回転軸線の回りにおけるオフセット角の角度位置に設定される。
【0046】
従って、本実施形態の光スキャナ100によれば、オフセット電圧に応じた外枠部30に対するミラー部10の回転軸線aの回りにおけるオフセット角の角度位置を中心に、所定の揺動角でミラー部10を回転軸線の回りで揺動させることができる。
【0047】
ここで、外側圧電アクチュエータ50に印加される電圧と、ミアンダ構造を有する内側圧電アクチュエータ40に印加されるオフセット電圧との関係について、図3を用いて説明する。図3(a)は外側圧電アクチュエータ50に印加される第1及び第2の電圧の一方である、ミラー部10を一定周期で揺動する駆動電圧の波形(正弦波)であり、図3(b)はミアンダ構造を有する内側圧電アクチュエータ40に印加されるオフセット電圧の波形を示す。
【0048】
図3中、ブランキング時間t1は、外側圧電アクチュエータ50に印加される駆動電圧の極大電圧に対応する時刻を含む所定時間幅の極大電圧期間と、極小電圧に対応する時刻を含む所定時間幅の極小電圧期間とを示し、アクティブ時間t2はブランキング時間t1以外の時間を示す。
【0049】
例えば、光スキャナ100を画像表示に用いた場合、アクティブ時間t2は出射光82の投射面上での光走査速度がほぼ一定とみなすことができるが、ブランキング時間t1では当該光走査速度が変化して分解能が低下する。図3(a)では、アクティブ時間t2で画像表示を行ない、ブランキング時間t1では画像表示に使用しないことを示している。
【0050】
図3(b)に示されるように、ミアンダ構造を有する内側圧電アクチュエータ40に印加されるオフセット電圧の波形は、ゼロ電位からオフセット角に対応する電位に立ち上がり、電位からゼロ電位に立ち下がる矩形波状であり、ブランキング時間t1内にオフセット電圧がゼロ電位となる瞬間を含む。図3(b)では、周期的にゼロ電位に立ち下がるオフセット電圧の波形が示されているが、オフセット電圧の波形は周期的な波形に限定されない。例えば、制御装置内に圧電アクチュエータの位置検出器を備えていれば、圧電アクチュエータのオフセット角が閾値より小さな角度となったときにオフセット電圧をゼロ電位に立ち下げる逆パルスを印加するようにしてもよい。
【0051】
オフセット電圧を圧電アクチュエータに印加した状態が継続すると、当該圧電アクチュエータの圧電体に電荷が蓄積され、圧電体内での分極が小さくなり、圧電体の電極間の電位差が小さくなる結果、オフセット角が小さくなる。しかしながら、オフセット電圧がゼロ電位である瞬間に、圧電体内に蓄積された電荷を放出し、圧電体に蓄積された電荷によりオフセット角が小さくなることを防止して、オフセット電圧に対応するオフセット角を維持する。
【0052】
本実施形態の光スキャナは、内側圧電アクチュエータ40と外側圧電アクチュエータ50のうちの少なくとも1つの圧電アクチュエータがミアンダ構造を有する圧電アクチュエータであれば、様々な構成の光スキャナを形成することができる。
【0053】
[変形例]
図4に、第1実施形態の光スキャナの光偏向器の第1変形例を示す。第1変形例は、第1実施形態の直線状圧電アクチュエータとトーションバーとの構成を、ミアンダ構造を有する圧電アクチュエータに置き換えて外側圧電アクチュエータとして形成したものである。尚、本実施形態の構成と同一の構成については説明を省略し、図面においても付号を省略した。
【0054】
第1変形例の外側圧電アクチュエータは、ミラー部10の原点Oを通るy軸に平行な線に対して線対称の位置で内枠部20と外枠部30との間に介在して、内枠部20及び外枠部30にx軸線上で連結するための連結部23,24を備える。外側圧電アクチュエータにおいて、連結部23の端部は外側圧電アクチュエータの作動端(先端)として、連結部24の端部は外側圧電アクチュエータの支持端(基端)として機能する。
【0055】
第1変形例の外側圧電アクチュエータは、折返し部48a〜48bにより直列に連結された一対の3つの圧電カンチレバー46a〜46cを備える。圧電カンチレバー46a〜46c及び折返し部48a〜48bの符号末尾のアルファベットは、ミラー部10に近い方からの順番に付されている。
【0056】
第1変形例の内側圧電アクチュエータと外側圧電アクチュエータはいずれも、ミアンダ構造を有する圧電アクチュエータである。従って、いずれか一方の圧電アクチュエータにオフセット電圧を印加して、他方の圧電アクチュエータにミラー部10を一定周期で揺動させる駆動電圧をすることにより、オフセット電圧に応じた外枠部30に対するミラー部10の回転軸線の回りにおけるオフセット角の角度位置を中心に、所定の揺動角でミラー部10を回転軸線の回りで揺動させることができる。
【0057】
ここで、第1変形例の外側圧電アクチュエータ及び内側圧電アクチュエータに印加される駆動電圧の関係について、図5を用いて説明する。ここでは、当該関係を説明するために、外側圧電アクチュエータにミラー部10を一定周期で揺動させるノコギリ波状の駆動電圧が印加され、内側圧電アクチュエータにオフセット電圧が印加される例を挙げている。或いは、内側圧電アクチュエータにミラー部10を一定周期で揺動させるノコギリ波状の駆動電圧を印加し、外側圧電アクチュエータにオフセット電圧を印加してもよい。
【0058】
図5(a)は外側圧電アクチュエータに印加される第1の電圧及び第1の電圧と逆位相の第2の電圧の一方である、ミラー部10を一定周期で揺動する駆動電圧の波形(ノコギリ波)であり、図5(b)はミアンダ構造を有する内側圧電アクチュエータに印加されるオフセット電圧の波形を示す。
【0059】
図5中、ブランキング時間t1は、外側圧電アクチュエータに印加される駆動電圧の極大電圧及び極小電圧(ゼロ電位)それぞれに対応する時刻を含む所定時間幅の期間を示し、アクティブ時間t2はブランキング時間以外の時間を示す。変形例1の光スキャナも、オフセット電圧がゼロ電位である瞬間に、圧電体内に蓄積された電荷を放出し、オフセット電圧に対応するオフセット角を維持する。
【0060】
尚、内側圧電アクチュエータと外側圧電アクチュエータがいずれもミアンダ構造を有する圧電アクチュエータである場合、いずれか一方の圧電アクチュエータにオフセット電圧を印加して、他方の圧電アクチュエータにミラー部10を一定周期で揺動させる駆動電圧をすることができる。以下に、種々の変形例(第2変形例〜第7変形例)を示すが、各変形例において本実施形態及び第1変形例の構成と同一の構成については説明を省略し、図面においても付号を省略する。
【0061】
図6に、本実施形態における光偏向器の第2変形例を示す。第2変形例は、内側圧電アクチュエータに関して、第1変形例の(対称軸線)に対して線対称なミアンダ構造を有する圧電アクチュエータを、対称軸線に対して点対称なミアンダ構造を有する圧電アクチュエータに置き換え、外側圧電アクチュエータに関して、対称軸線に対して線対称なミアンダ構造を有する圧電アクチュエータを、対称軸線に対して点対称なミアンダ構造を有する圧電アクチュエータに置き換えたものである。
【0062】
図7に、本実施形態の光スキャナの光偏向器の第3変形例を示す。第3変形例は、外側圧電アクチュエータの支持端に関して、第1変形例の回転軸線a上に設けられた支持端を、外側圧電アクチュエータのy軸方向端部、すなわち折返し部の位置に設け、連結部24aによって外枠部30に連結した。
【0063】
さらに、外側圧電アクチュエータの内枠部20側作動端に関して、第1変形例の回転軸線a上に設けられた支持端を、回転軸線aに対して支持端と反対側の外側圧電アクチュエータのy軸方向端部、すなわち折返し部の位置に設け、連結部23aによって内枠部20に連結した。
【0064】
図8に、本実施形態の光スキャナの光偏向器の第4変形例を示す。第4変形例は、内側圧電アクチュエータの支持端に関して、第1変形例の回転軸線a線上に設けられた支持端を、内側圧電アクチュエータのy軸方向端部、すなわち折返し部の位置に設け、連結部22aによって内枠部20に連結した。
【0065】
さらに、内側圧電アクチュエータのミラー部10側作動端に関して、第1変形例の回転軸線a上に設けられた支持端を、x軸に対して支持端と反対側の内側圧電アクチュエータのy軸方向端部、すなわち折返し部の位置に設け、連結部21aによってミラー部10に連結した。
【0066】
図9図11に、本実施形態の光スキャナの光偏向器の第5〜第7変形例を示す。第5変形例は、第3変形例の外側圧電アクチュエータと、第4変形例の内側圧電アクチュエータとを組み合わせたものである(図9)。第6変形例は、第5変形例の内側圧電アクチュエータを、ミラー部10の原点Oに対して点対称なミアンダ構造を有する圧電アクチュエータに置き換えたものである(図10)。第7変形例は、第5変形例の内側圧電アクチュエータ及び外側圧電アクチュエータをそれぞれ、ミラー部10の原点Oに対して点対称なミアンダ構造を有する圧電アクチュエータに置き換えたものである(図11)。
【0067】
[第2実施形態]
図12Aを参照して、第2実施形態の2軸型光スキャナ200の構成を説明する。光スキャナ200の光偏向器2は、第1実施形態の光偏向器1(ミラー部10、内枠部20、外枠部30(以下、第1外枠部30という。)、内側圧電アクチュエータ40、外側圧電アクチュエータ50(以下、第1外側圧電アクチュエータ50という。)、及び、トーションバー60からなる構成)と、光偏向器1を包囲して支持する環状矩形の第2外枠部70とを、中心点を同一に揃えて備えている。
【0068】
また、光スキャナ200は、第1外枠部30と第2外枠部70との間に介在する第2外側圧電アクチュエータ72と、y軸方向に第1外枠部30の外側両側に配設され、y軸に沿って延在する一対のトーションバー74a,74bと、図示しないレーザ光源80及び制御装置90とを備える。
【0069】
第2外枠部70は、第1外枠部30を包囲する環状矩形の部材であり、原点Oを通るy軸に平行な対称軸線に対して線対称に形成され、第1外枠部30と同様に、下側から順番に、Al(アルミニウム)薄膜、珪素(Si)層、中間酸化膜層、珪素層及び表面酸化膜層の積層構造を有する。第2外枠部70は、y軸方向に第1外枠部30の外側両側に配設され、対称軸線に沿って延在する一対のトーションバー74a,74bが第2外側圧電アクチュエータ72を介して連結される。
【0070】
第2外側圧電アクチュエータ72は、x軸方向と平行で、所定同一幅で所定同一長さの4つの直線状圧電アクチュエータ72a〜72dであり、全面で圧電アクチュエータとして機能する。図12Aに示されるように、第1外枠部30から延在する1つのトーションバー74a,74bの端部には、一対の第2外側圧電アクチュエータ72がトーションバー74a,74bを対称軸として対称に連結される。一対の第2外側圧電アクチュエータ72はそれぞれ、第1外枠部30と第2外枠部70との間でy軸方向に形成される空間部に、トーションバー74a,74bが対称軸線上になるように、トーションバー74a,74bの端部と、第2外枠部70のy軸と平行な第2外枠部70の内面とに連結される。
【0071】
直線状圧電アクチュエータ72a〜72dは、第1実施形態の直線状圧電アクチュエータと同様、圧電体と、圧電体を厚み方向の両側から挟む2つの電極と、圧電体及び電極を支持して圧電体と共に屈曲変形する支持体とを有する。電極は、図示しない配線を介して、電極間の圧電体に電圧を印加できるように電気的に制御装置90に接続されている。
【0072】
次に、第2実施形態の光スキャナ200の作動について説明する。光スキャナ200は、第1外枠部30に対するミラー部10の回転軸線aの回りにおけるオフセット角に対応するオフセット電圧と、所定の揺動角でミラー部10を回転軸線a周りに揺動させる第1電圧と、所定の揺動角でミラー部10をy軸に平行な対称軸線周りに揺動させる第2電圧とを駆動電圧生成手段92で生成し、オフセット電圧が内側圧電アクチュエータ40に、第1電圧が第1外側圧電アクチュエータ50に、第2電圧が第2外側圧電アクチュエータ72に独立して印加される。
【0073】
第1実施形態に追加された第2外側圧電アクチュエータ72によるy軸と平行な対称軸線周りの回転駆動について説明する。光偏向器2では、一方の対の直線状圧電アクチュエータ72a,72bに対して、直線状圧電アクチュエータそれぞれの電極間にそれぞれ第3の電圧、第4の電圧を印加して駆動させると、互いに逆方向に屈曲変形する。なお、第3の電圧と第4の電圧とは、互いに逆位相の交流電圧(例えば正弦波)とする。これらの屈曲変形により、トーションバー74aにねじれ変位が生じて、ミラー部10にトーションバー74aを中心とした回転トルクが作用する。
【0074】
同様に、他方の対の直線状圧電アクチュエータ72c,72dに対して、直線状圧電アクチュエータそれぞれの電極間にそれぞれ第3の電圧、第4の電圧を印加して駆動させることにより、トーションバー74bに同じ方向にねじれ変位が生じて、第1外枠部30にトーションバー74bを中心とした回転トルクが作用する。
【0075】
第2外側圧電アクチュエータ72の駆動により、第1外枠部30にはトーションバー74a,74bを中心とした回転トルクが作用する。これにより、第1外枠部30は、トーションバー74a,74bを中心軸としてy軸と平行な対称軸線周りで回転するので、ミラー部10を回転させてy軸方向に所定周波数で所定の偏向角で光走査することができる。
【0076】
従って、光スキャナ200によれば、オフセット電圧に応じた第1外枠部30に対するミラー部10の回転軸線aの回りにおけるオフセット角の角度位置を中心に、所定の揺動角でミラー部10を回転軸線aの回りで第1外枠部30に対して揺動させるともに、所定の揺動角でミラー部10を支持する第1外枠部30をy軸と平行な対称軸線の回りで第2外枠部70に対して揺動させることができる。
【0077】
また、図12Bに示されるように、第2実施施形態の光スキャナ200の光偏向器2の変形例として、第2外側圧電アクチュエータ72に関して、直線状圧電アクチュエータとトーションバーとの構成を、ミアンダ構造を有する圧電アクチュエータに置き換えて第2外側圧電アクチュエータとして形成することもできる。
【0078】
尚、第1本実施形態、第2実施形態、及びそれらの変形例の光スキャナは、例えば、プロジェクタ、バーコードリーダ、レーザプリンタ、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、レーザレーダー、顕微鏡用レーザースキャン光源、医療用3Dスキャナ、光硬化樹脂硬化用光源、ヘッドランプ、スキャンタイプAFS光源等の光走査装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
100,200…光スキャナ、1,1a〜1g,2…光偏向器、10…ミラー部、20…内枠部、21,22,23,23a,23a’,24,24a,24a’,75,76…連結部、30…外枠部(第1外枠部)、40…内側圧電アクチュエータ、42a〜42f,42a’〜42f’,46a〜46f,46a’〜46f’…圧電カンチレバー、44a〜44d,44a’〜44d’,48a〜48d,48a’〜48d’…折返し部、50,50a〜50d…外側圧電アクチュエータ(第1外側圧電アクチュエータ)、60,60a,60b…トーションバー、70…第2外枠部、72…第2外側圧電アクチュエータ、74a,74b…トーションバー、75,76…トーションバー、77a〜77c…圧電カンチレバー、78a,78b…折返し部、80…レーザ光源、90…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B