(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記供給系は、さらに、前記メインタンクと前記分岐部との間の前記供給路に挿入され、前記膜材料を、前記メインタンクから前記分岐部に向けて送り出す送出ポンプを含む請求項2に記載の膜形成装置。
前記制御装置は、前記ノズルヘッドの温度の少なくとも1つが判定閾値未満の場合、吸引すべき前記ノズルヘッドが有ると判定し、前記判定閾値未満の温度の前記ノズルヘッドに収容されている前記膜材料を吸引する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の膜形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
膜形成装置を停止させると、ノズルヘッド内の膜材料の温度が低下し、膜材料の粘度が高くなる。膜形成装置を起動すると、ノズルヘッド内に、加温された膜材料が供給されることにより、残留している膜材料が目標温度まで加温される。ノズルヘッド内の膜材料の温度が目標温度未満の状態では、膜材料の粘度が高いため、安定した吐出を行うことができない。安定した吐出を確保するために、ノズルヘッド内の膜材料の温度が目標温度に到達した後に、膜材料の吐出が行われる。
【0007】
複数のノズルヘッドを用いて膜形成を行う場合、膜材料の温度が目標温度に到達するまでの時間が、ノズルヘッドごとにばらつくことがわかった。膜形成を開始するには、目標温度に到達するまでの時間が最も長いノズルヘッドに収容されている膜材料が目標温度に到達するまで待たなければならない。
【0008】
本発明の目的は、膜材料の温度が目標温度に到達するまでの時間を短縮することができる膜形成装置を提供することである。本発明の他の目的は、膜材料の温度が目標温度に到達するまでの時間を短縮することができる膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によると、
対象物に向けて、膜材料を液滴化して吐出する複数のノズル孔を含む複数のノズルヘッドと、
前記ノズルヘッドに液状の前記膜材料を供給する供給系と、
前記供給系によって前記ノズルヘッドに供給される前記膜材料を加温する加温装置と、
複数の前記ノズル孔から前記ノズルヘッドに収容されている前記膜材料を吸引する吸引装置と、
前記供給系及び前記吸引装置を制御する制御装置と
、
複数の前記ノズルヘッドの各々の温度を測定し、測定された温度を前記制御装置に入力する温度センサと
を有し、
前記供給系は、
前記膜材料を貯蔵するメインタンクと、
前記メインタンクから複数の前記ノズルヘッドに前記膜材料を供給する供給路と、
複数の前記ノズルヘッドから前記メインタンクに前記膜材料を回収する回収路と、
前記供給路にガスを導入するためのガス導入弁と
を有し、
前記制御装置は、
膜形成作業が終了した後、前記供給系から前記ノズルヘッドへの前記膜材料の供給を停止させ、前記吸引装置を制御して、複数の前記ノズルヘッドの各々に残留している前記膜材料を吸引する
機能と、
前記ガス導入弁を制御し、前記ガス導入弁を開いた状態で、前記吸引装置により前記ノズルヘッドから前記膜材料を吸引する機能と、
前記メインタンクから複数の前記ノズルヘッドへの前記膜材料の供給を開始した後、前記温度センサで測定された前記ノズルヘッドの温度に基づいて、吸引すべき前記ノズルヘッドの有無を判定し、吸引すべき前記ノズルヘッドが有る場合には、前記吸引装置を制御して、吸引すべき前記ノズルヘッドに収容されている前記膜材料を吸引する機能と
を有する膜形成装置が提供される。
【0010】
本発明の他の観点によると、
対象物に向けて、膜材料を液滴化して吐出する複数のノズル孔を含む複数のノズルヘッドと、
前記ノズルヘッドに液状の前記膜材料を供給する供給系と、
前記供給系によって前記ノズルヘッドに供給される前記膜材料を加温する加温装置と、
複数の前記ノズル孔から前記ノズルヘッドに収容されている前記膜材料を吸引する吸引装置と、
前記供給系及び前記吸引装置を制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、複数の前記ノズルヘッドへの前記膜材料の供給を開始した後、前記ノズルヘッドの測定温度に基づいて、吸引すべき前記ノズルヘッドの有無を判定し、吸引すべき前記ノズルヘッドが有る場合には、前記吸引装置を制御して、吸引すべき前記ノズルヘッドに収容されている前記膜材料を吸引する膜形成装置が提供される。
【0012】
本発明のさらに他の観点によると、
各々が複数のノズル孔を含む複数のノズルヘッドの各々に液状の膜材料が残留している状態で、加温された新たな前記膜材料を前記ノズルヘッドに供給する工程と、
前記膜材料を前記ノズルヘッドに供給しながら、前記ノズルヘッドの温度を測定する工程と、
前記ノズルヘッドの温度に基づいて、前記膜材料を吸引すべき前記ノズルヘッドの有無を判定し、吸引すべき前記ノズルヘッドを選定する工程と、
選定された前記ノズルヘッドに収容されている前記膜材料を、前記ノズル孔を通して吸引する工程と、
前記膜材料を吸引した後、複数の前記ノズルヘッドの前記ノズル孔から対象物に向けて、前記膜材料を液滴化して吐出させることにより、前記対象物に前記膜材料を塗布する工程と
を有する膜形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
膜形成作業が終了した後、ノズルヘッドに残留している膜材料を吸引することにより、次回の膜形成作業の開始時に、ノズルヘッドに高粘度の膜材料が残留することに起因する加温時間の長大化を抑制することができる。
【0014】
ノズルヘッドに高粘度の膜材料が残留している場合、ノズルヘッドに加温された膜材料を供給しても、ノズルヘッド内の膜材料の温度上昇が緩やかになる。温度上昇が不十分なノズルヘッド内の膜材料を吸引することにより、ノズルヘッド内の膜材料の温度が目標温度に到達するまでの時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、実施例による膜形成装置の概略図を示す。基台10に、移動機構11によってステージ13が支持されている。xy面を水平面とし、鉛直上方をz軸の正の向きとするxyz直交座標系を定義する。ステージ13は、x方向及びy方向に移動可能である。ステージ13の上に、膜を形成する対象物15が保持される。対象物15は、例えば回路パターンが形成されたプリント基板であり、ステージ13に吸着される。形成される膜には、例えばソルダーレジストが用いられる。
【0017】
複数のノズルヘッド20が、支持プレート30によって、ステージ13の上方に支持されている。ノズルヘッド20の各々の底面に、複数のノズル孔が設けられている。ノズルヘッド20は、ノズル孔から対象物15に向けて、膜材料を液滴化して吐出する。膜材料には、例えば光硬化性の樹脂が用いられる。
図1には示されていないが、支持プレート30に、膜材料を硬化させるための硬化用光源が取り付けられている。膜材料に、紫外線硬化性の樹脂が用いられる場合は、硬化用光源は、対象物15に向けて紫外光を放射する。
【0018】
次に、ノズルヘッド20に膜材料を供給する供給系40について説明する。メインタンク41内に、液状の膜材料が貯蔵されている。加温装置42が、メインタンク41内の膜材料を加温し、その温度を目標温度に維持する。目標温度は、例えば75℃〜90℃である。加温装置42には、例えば抵抗加熱ヒータが用いられる。
【0019】
メインタンク41に貯蔵されている膜材料が、供給路43を通って複数のノズルヘッド20に供給される。ノズルヘッド20から吐出されなかった膜材料が、回収路53を通ってメインタンク41に回収される。
【0020】
供給路43は、メインタンク41から流出した膜材料を複数のノズルヘッド20に分流させる分岐部45を含む。分岐部45に、加温装置46が配置されている。加温装置46には、例えば抵抗加熱ヒータが用いられる。膜材料が分岐部45に一時的に蓄積され、目標温度まで加温される。メインタンク41から分岐部45まで輸送される間に、膜材料の温度が低下した場合でも、分岐部45内で膜材料が再び目標温度まで加温される。
【0021】
メインタンク41と分岐部45との間の供給路43に、送出ポンプ44が挿入されている。送出ポンプ44は、メインタンク41内の膜材料を分岐部45に向けて送り出す。メインタンク41と送出ポンプ44との間の供給路43に、ガス導入弁47が挿入されている。ガス導入弁47を開くと、供給路43にガス、例えば空気が導入される。
【0022】
回収路53は、複数のノズルヘッド20から回収された膜材料を1本の管路に合流させる合流部55を含む。合流部55とメインタンク41との間の回収路53に、回収ポンプ54が挿入されている。回収ポンプ54は、合流部55内の膜材料をメインタンク41に向けて送り出す。
【0023】
合流部55に加温装置を配置してもよい。合流部55に加温装置を配置することにより、膜材料がノズルヘッド20からメインタンク41に回収されるときの温度低下を抑制することができる。回収路53内で膜材料の温度が低下すると、膜材料の粘度が上昇して、管路内に膜材料が付着し易くなる。管路内に高粘度の膜材料が付着すると、膜材料の安定した循環が阻害される。合流部55に加温装置を配置することにより、より安定して膜材料を循環させることができる。
【0024】
ノズルヘッド20の各々に温度センサ21が取付けられている。温度センサ21は、ノズルヘッド20の壁面を通して、ノズルヘッド20内の膜材料の温度を測定する。なお、温度センサ21を、ノズルヘッド20に設けられた膜材料収容室の内部に配置してもよい。
【0025】
支持プレート30の上に遮蔽板31が取り付けられており、遮蔽板31が、供給系40及びノズルヘッド20を覆う。支持プレート30と遮蔽板31とで囲まれた空間が、仕切板32によって、供給系40が配置された加温空間33と、ノズルヘッド20が配置された冷却空間34とに仕切られる。
【0026】
冷却機構14が、冷却空間34内に空冷のための気流を発生させる。これにより、ノズルヘッド20が冷却される。仕切板32は、加温空間33から冷却空間34への熱の伝達を阻害する機能を有する。供給系40の周囲の高温の空気が、遮蔽板31と仕切板32とで囲まれた加温空間33内に閉じ込められることにより、移動機構11及びステージ13への熱の影響が軽減される。
【0027】
補充タンク57内に、膜材料が貯蔵されている。メインタンク41内の膜材料が減少すると、補充ポンプ58を動作させて、補充タンク57からメインタンク41に膜材料を補充する。補充タンク57は、遮蔽板31と支持プレート30とで囲まれた空間の外に配置されている。補充タンク57内の膜材料の温度はほぼ室温である。補充用の膜材料を室温で保管することにより、熱による膜材料の劣化を防止することができる。
【0028】
ステージ13の側方の退避位置に吸引装置60が配置されている。吸引装置60は、移
動機構61により、退避位置からノズルヘッド20の各々の直下まで移動することができる。昇降機構62により吸引装置60を上昇させると、吸引装置60がノズルヘッド20の底面の外周部に接触する。この状態で、ノズルヘッド20内の膜材料を、ノズル孔を通して吸引することができる。
【0029】
遮蔽板31、支持プレート30、移動機構11、ステージ13、補充タンク57、及び吸引装置60は、エンクロージャ12内に配置される。排気ポンプ16がエンクロージャ12内を排気する。エンクロージャ12内を排気すると、エンクロージャ12に取り付けられたフィルタ17を通って外気がエンクロージャ12内に流入する。これにより、エンクロージャ12内を換気することができる。
【0030】
排気ポンプ35が、加温空間33内を排気する。加温空間33内が排気されると、遮蔽板31に設けられた流入口36を通って加温空間33内に外気が流入する。加温空間33内が換気されることにより、加温空間33の過度の温度上昇を防止することができる。
【0031】
制御装置18が、移動機構11、ノズルヘッド20、送出ポンプ44、加温装置42、46、回収ポンプ54、補充ポンプ58、吸引装置60、移動機構61、及び昇降機構62を制御する。温度センサ21で測定されたノズルヘッド20の温度が、制御装置18に入力される。
【0032】
図2に、支持プレート30、ノズルヘッド20、及び硬化用光源25の平面図を示す。支持プレート30に複数の開口37が形成されている。例えば、合計10個の開口37が2列に並んでいる。2列の各々は、x方向に等ピッチで並ぶ5個の開口37で構成される。一方の列の開口37は、他方の列の開口37に対して、x方向に半ピッチ分ずれている。
【0033】
開口37の各々の内側に、2個のノズルヘッド20がy方向に並んで配置されている。2個のノズルヘッド20の間、及びノズルヘッド20の各々の外側に、それぞれ硬化用光源25が配置されている。ノズルヘッド20及び硬化用光源25にブラケット28が取り付けられている。ノズルヘッド20及び硬化用光源25は、ブラケット28を介して支持プレート30に取り付けられている。
【0034】
図3に、支持プレート30(
図2)の1つの開口37内に配置されたノズルヘッド20及び硬化用光源25の底面図を示す。2個のノズルヘッド20がy方向に並んで配置されている。ノズルヘッド20の間、及び各ノズルヘッド20の外側に、それぞれ硬化用光源25が配置されている。ノズルヘッド20の各々に、2列に並んだノズル孔22が形成されている。2個のノズルヘッド20に設けられた合計4列のノズル孔22は、全体として、x方向に等ピッチで分布する。硬化用光源25の各々は、x方向に並ぶ複数の発光ダイオード26を含む。
【0035】
図4Aに、1つのノズルヘッド20、及び吸引装置60の概略斜視図を示す。ノズルヘッド20に導入管23と排出管24とが取付けられている。導入管23は供給路43(
図1)に接続され、排出管24は回収路53(
図1)に接続されている。導入管23からノズルヘッド20内に膜材料が導入される。膜材料は、ノズルヘッド20の収容室内を輸送されながら、ノズル孔22から液滴化されて吐出される。吐出されなかった膜材料が、収容室から排出管24を通って外部に排出される。吸引装置60は、吸引キャップ65、吸引ポンプ66、及び廃液タンク67を含む。
【0036】
ノズルヘッド20内の膜材料を吸引する時には、移動機構61を駆動して、吸引キャップ65をノズルヘッド20の直下に移動させる。その後、昇降機構62を駆動して、吸引
キャップ65を上昇させ、吸引キャップ65の縁をノズルヘッド20の底面の外周部に接触させる。
【0037】
図4Bに、ノズルヘッド20の底面の外周部に吸引キャップ65の縁が接触した状態の斜視図を示す。ノズルヘッド20の底面と吸引キャップ65との間に空洞が形成される。吸引ポンプ66を動作させると、この空洞内が負圧になり、ノズルヘッド20内の膜材料がノズル孔22を通して吸い出される。吸い出された膜材料は、廃液タンク67に蓄積される。
【0038】
図5及び
図6A〜
図6Dを参照して、実施例による膜形成装置の動作について説明する。
図5に、実施例による膜形成装置の動作のフローチャートを示す。膜形成装置が始動されると、制御装置18が加温装置42、46を動作させて、膜材料を目標温度まで加温する。膜材料の温度が目標温度まで到達すると、ステップS1において、制御装置18(
図1)が送出ポンプ44及び回収ポンプ54を動作させる。これにより、ノズルヘッド20への膜材料の供給が開始される。
【0039】
ステップS2において、対象物15をステージ13(
図1)に保持する。対象物15は、例えば搬送装置により、保管場所からステージ13の上まで搬送される。対象物15がステージ13に保持されたら、xy面内に関して、対象物15の位置を検出する。例えば、対象物15の表面に形成されているアライメントマークを撮像装置で撮像し、画像解析を行うことにより、対象物15の位置を検出することができる。
【0040】
ステップS3において、対象物15(
図1)をy方向に移動させながら、ノズルヘッド20の各ノズル孔22(
図3)から対象物15(
図1)に向けて膜材料を吐出する。対象物15に塗布された膜材料に、硬化用光源25(
図3)から硬化用の光が照射されることにより、膜材料が硬化する。これにより、対象物15の表面に膜が形成される。制御装置18(
図1)が、画像データに基づいて、ノズル孔22からの吐出タイミングを制御することにより、所望のパターンを有する膜を形成することができる。
【0041】
ステップS42において、膜形成作業の終了か否かを判定する。例えば、オペレータが制御装置18に作業終了の指令を与えると、制御装置18が作業終了と判定する。作業終了ではない場合、ステップS5において、膜が形成された対象物15をステージ13から搬出し、新たな対象物15をステージ13に保持させる。その後、ステップS3に戻り、膜の形成処理を実行する。
【0042】
ステップS4で作業終了と判定された場合には、ステップS6において、制御装置18がノズルヘッド20への膜材料の供給を停止する。具体的には、送出ポンプ44及び回収ポンプ54(
図1)を停止させる。
【0043】
ステップS7において、制御装置18が、ガス導入弁47(
図1)を開き、さらに吸引装置60を動作させてノズルヘッド20から膜材料を吸引する。
図6A〜
図6Eを参照して、膜材料の吸引手順について説明する。
【0044】
図6Aに、膜材料の供給を停止した直後におけるノズルヘッド20、及びノズルヘッド20内に残留する膜材料の概略図を示す。ノズルヘッド20の底面にノズル孔22が設けられている。ノズルヘッド20ごとに、膜材料27の残量が異なる。
図6Aでは、一例として、左から2番目のノズルヘッド20内の膜材料の残量が、他のノズルヘッド20内の膜材料の残量に比べて少ない例を示している。吸引装置60(
図1)の吸引キャップ65は、退避位置に退避されている。
【0045】
図6Bに示すように、吸引キャップ65を、最初に吸引するべきノズルヘッド20の底面に接触させる。この状態で、吸引ポンプ66(
図4B)を動作させる。これにより、ノズルヘッド20内に残留している膜材料が、ノズル孔22を通して外部に吸い出される。供給路43(
図1)内には、ガス導入弁47(
図1)を通して空気が導入される。例えば、ノズルヘッド20内に残留していた膜材料27の全量が吸い出された時点で、吸引を中断する。なお、ノズルヘッド20に設けられている膜材料収容室の壁面に付着していた膜材料の一部分は、壁面に付着ままノズルヘッド20に残留する場合もある。
【0046】
図6Cに示すように、2番目に、吸引するべきノズルヘッド20の底面に、吸引キャップ65を接触させ、ノズルヘッド20内の膜材料を吸引する。同様の吸引処理を繰り返すことにより、
図6Dに示すように、全てのノズルヘッド20内の膜材料の吸引が完了する。全てのノズルヘッド20内の膜材料の吸引処理が完了した後、
図6Eに示すように、吸引キャップ65を退避位置まで戻す。
【0047】
図7A及び
図7Bを参照して、上記実施例において吸引処理を行うことの優れた効果について説明する。
【0048】
図7Aに、膜材料の供給を停止した直後におけるノズルヘッド20、及びノズルヘッド20内に残留する膜材料の概略図を示す。この状態は、
図6Aに示した状態と同一である。左から2番目のノズルヘッド20に残留している膜材料の量が、他のノズルヘッド20に比べて少ない。このため、ノズルヘッド20に、多くの空気が溜まっている。
【0049】
図7Bに示すように、ノズルヘッド20に多くの空気が残留していると、ノズルヘッド20に膜材料を保持することができず、ノズル孔22から膜材料27の一部が垂れてしまう場合がある。上記実施例では、ステップS7(
図5)においてノズルヘッド20に残留している膜材料を吸引するため、膜材料27が垂れてしまうことを防止できる。
【0050】
図8A〜
図8Dを参照して、上記実施例において吸引処理を行うことの他の優れた効果について説明する。
【0051】
図8Aに、膜材料の供給を停止した直後におけるノズルヘッド20、及びノズルヘッド20内に残留する膜材料27の概略図を示す。この状態は、
図6Aに示した状態とほぼ同一である。左から2番目のノズルヘッド20に残留している膜材料27の量が、他のノズルヘッド20に残留している膜材料27の量より少ない。この状態で長時間放置すると、ノズルヘッド20に残留している膜材料27の温度が低下し、その粘度が上昇する。
【0052】
図8Bに、長時間放置した後のノズルヘッド20、及びノズルヘッド20に残留している膜材料27の概略図を示す。温度が低下して粘度が上昇した膜材料27に、
図8Aに示した粘度の低い膜材料27に付したドットパターンよりも密なドットパターンを付している。
【0053】
膜形成装置が始動されると、
図8Cに示すように、加温された新しい膜材料27がノズルヘッド20に供給される。加温された膜材料27に、相対的に疎なドットパターンを付している。膜材料27の供給と回収とが行われるにしたがって、ノズルヘッド20に残留していた低温の膜材料27が暖められる。
【0054】
図8Dに示すように、膜材料27の残留の少なかった左から2番目のノズルヘッド20に収容されている膜材料27のほぼ全量が、目標温度に到達する。この時点で、膜材料27の残量の多かった他のノズルヘッド20に収容されている膜材料27の一部は、目標温
度まで到達しない。粘度の下がった膜材料27が、粘度の高い膜材料27よりも流動しやすいため、左から2番目のノズルヘッド20に、より多くの膜材料27が供給される。このため、左から2番目のノズルヘッド20に残留していた膜材料27が、他のノズルヘッド20に残留していた膜材料27に比べて、より加温されやすい。左から2番目のノズルヘッド20以外のノズルヘッド20に残留していた膜材料27は、左から2番目のノズルヘッド20に残留していた膜材料27に比べて、目標温度に到達するまでより長時間を要する。
【0055】
上記実施例では、膜形成作業の終了後に、ステップS7(
図5)において、ノズルヘッド20に残留している膜材料27が排出される。このため、膜形成装置の始動時に、ノズルヘッド20には、温度が低下して高粘度になった膜材料27が残留していない。これにより、膜形成装置の始動後、短時間で膜形成作業を開始することができる。
【0056】
図9、
図10A〜
図10Eを参照して、他の実施例について説明する。以下、
図1〜
図6Eに示した実施例との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0057】
図10Aに、膜形成装置の始動前におけるノズルヘッド20、及びノズルヘッド20に残留している膜材料27の概略図を示す。
図10Aに示した例では、左から4番目のノズルヘッド20の残量が、他のノズルヘッド20の残量に比べて多い。ノズルヘッド20に残留している膜材料27は、温度が低下し、その粘度が高くなっている。ノズルヘッド20の各々に、温度センサ21が取り付けられている。
【0058】
図9に、実施例による膜形成装置の動作のフローチャートを示す。ステップSA1において、ノズルヘッド20(
図1)への膜材料の供給を開始する。
【0059】
図10Bに示すように、目標温度まで加温された膜材料27が、ノズルヘッド20の各々に供給される。目標温度まで加温され、粘度が低くなった膜材料27に、粘度の高い膜材料よりも相対的に疎なドットパターンを付している。加温された膜材料27がノズルヘッド20に供給され、回収されることにより、残留していた膜材料27が加温されて、その粘度が低下する。膜材料27の残量が多かったノズルヘッド20は、他のノズルヘッド20に比べて熱容量が大きい。このため、左から4番目のノズルヘッド20は、温度が上昇しにくい。
【0060】
図10Cに示した例では、左から4番目のノズルヘッド20以外のノズルヘッド20においては、残留していた膜材料27のほぼ全量が、目標温度に到達しているが、左から4番目のノズルヘッド20には、目標温度に到達せず、粘度の高い膜材料27が残存している。
【0061】
ステップSA2(
図9)において、ステージ13に対象物15を保持する。ステップSA3において、ノズルヘッド20の各々の温度を測定する。温度測定は、ノズルヘッド20に取り付けられた温度センサ21により行われる。温度センサ21がノズルヘッド20の外側の表面に取り付けられている場合、ノズルヘッド20に収容されている膜材料27の温度の平均値に近い温度が測定される。このため、ノズルヘッド20の温度によって、ノズルヘッド20に収容されている膜材料27の平均温度の高低を推定することが可能である。なお、ノズル孔22の近傍の膜材料27の温度が優先的に測定されるように、温度センサ21を、ノズル孔22の近傍に取り付けることが好ましい。
【0062】
ステップSA4(
図9)において、制御装置18(
図1)が、吸引すべきノズルヘッド20の有無を判定する。一例として、温度センサ21で測定された少なくとも1つのノズルヘッド20の温度Tが、判定閾値Tth未満である場合、吸引すべきノズルヘッド20
が有ると判定される。
図10Cに示した例では、左から4番目のノズルヘッド20の温度Tが、判定閾値Tth未満であり、他のノズルヘッド20の温度Tが、判定閾値Tth以上である。従って、ステップSA4(
図9)において、吸引すべきノズルヘッド20が有ると判定される。
【0063】
吸引すべきノズルヘッド20が有ると判定された場合には、ステップSA5(
図9)において、ノズルヘッド20の温度Tに基づいて、吸引すべきノズルヘッド20を選定する。一例として、温度Tの最も低いノズルヘッド20(
図10Cにおいて、左から4番目のノズルヘッド20)が、吸引すべきノズルヘッド20として選定される。ステップSA6において、選定されたノズルヘッド20に残留していた膜材料27を吸引装置60(
図1)で吸引する。
【0064】
図10Dに示すように、左から4番目のノズルヘッド20に吸引キャップ65を接触させ、ノズルヘッド20に残留している粘度の高い膜材料27を吸引し、ノズルヘッド20の外に排出する。これにより、
図10Eに示すように、左から4番目のノズルヘッド20に収容されている膜材料27の全量が目標温度に到達し、その粘度が低下する。
【0065】
ステップSA6(
図9)で吸引が終了すると、ステップSA3に戻り、ノズルヘッド20の温度を再測定する。この時点で、
図10Eの左から4番目のノズルヘッド20の温度が目標温度に到達している。左から4番目のノズルヘッド20以外に判定閾値Tth未満の温度のノズルヘッド20が無い場合には、ステップSA4で、吸引すべきノズルヘッド20が無いと判定される。
【0066】
ステップSA4で吸引すべきノズルヘッド20が無いと判定された場合には、ステップSA7において、ノズルヘッド20から対象物15(
図1)に向けて膜材料27を液滴化して吐出し、膜の形成を行う。ステップSA8において、作業終了か否かを判定する。作業終了でない場合には、ステップSA9において、新たな対象物15(
図1)をステージ13(
図1)に保持し、ステップSA7に戻る。
【0067】
ステップSA8で作業終了と判定された場合には、ステップSA10において、ノズルヘッド20への膜材料の供給を停止する。
【0068】
図9〜
図10Eに示した実施例においては、ステップSA6(
図9)において、ノズルヘッド20に残留していた高粘度の膜材料27が強制的に排出される。このため、ノズルヘッド20の温度が目標温度に到達するまでの時間を短くすることができる。これにより、膜形成処理の開始までの時間を短縮することができる。
【0069】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。