特許第6333102号(P6333102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333102
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】遠心式ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20180521BHJP
   F04D 29/30 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F04D29/28 J
   F04D29/30 C
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-149055(P2014-149055)
(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公開番号】特開2016-23598(P2016-23598A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤本 征也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 貴子
(72)【発明者】
【氏名】松原 真朗
【審査官】 北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−207519(JP,A)
【文献】 特開2008−232049(JP,A)
【文献】 特開2012−207600(JP,A)
【文献】 特開2014−139432(JP,A)
【文献】 特開2014−074352(JP,A)
【文献】 特開2012−047162(JP,A)
【文献】 特開2005−133710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータに接続されたハブ、前記ハブに接続された主板、前記主板の上方に配置された環状のシュラウド、及び前記主板と前記シュラウドとの間に配置された複数の羽根を有する羽根車と、
前記羽根車の下方に位置する下ケーシングとを備え、
前記羽根車の回転に伴って、前記シュラウドに設けられている吸い込み口から吸入した空気を前記羽根車の外周部から外方に向けて排出する遠心式ファンであって、
前記モータを駆動させるための駆動回路が設けられた回路基板をさらに備え、
前記回路基板は、前記下ケーシングと前記羽根車との間に配置されており、
前記主板の前記下ケーシングに対向する面に、前記羽根車の回転軸周りに環状に形成された凹部が設けられており、
前記回路基板に実装された電子部品の一部が、前記凹部の一部に入っており、
前記複数の羽根のそれぞれのうち、前記羽根車の回転軸側の端縁部は、前記環状シュラウド側から前記主板側に近づくにつれて前記羽根車の外周縁に近づくように傾斜しており、
前記モータの少なくとも一部と、前記回路基板の少なくとも一部とは、前記下ケーシングに下方に窪むように形成された収納部に収納されている、遠心式ファン。
【請求項2】
前記回路基板の半径方向の寸法は、前記吸い込み口の半径方向の寸法よりも大きい、請求項1に記載の遠心式ファン。
【請求項3】
前記羽根車の直径は、前記羽根の最外周縁を通る円の直径よりも大きく、
前記シュラウドと前記主板との間の軸方向の寸法は、前記羽根の最外周縁がある位置から前記羽根車の外周縁に近づくにつれて次第に大きくなっている、請求項1又は2に記載の遠心式ファン。
【請求項4】
前記シュラウドの下側表面と前記主板の上側表面との少なくとも一方の外周縁側の部位が、翼上面形状をなすように湾曲している、請求項3に記載の遠心式ファン。
【請求項5】
前記環状シュラウドと前記複数の羽根とは、樹脂を用いた一体成形により形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の遠心式ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心式ファンに関し、特に、羽根車の回転に伴って空気を羽根車の外周部から外方に向けて排出する遠心式ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心式ファンは、家電機器、OA機器、産業機器などの各種機器における冷却、換気、空調などの用途や、車両用の送風機などに、広く用いられている。
【0003】
下記特許文献1には、上ケーシングと下ケーシングとの間に羽根車を収納した構造を有する遠心式ファンの構造が開示されている。この遠心式ファンは、羽根車の回転に伴って吸い込み口から吸入した空気を上ケーシングと下ケーシングの間の側面に形成された吹き出し口から外方に向けて排出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−15849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、上記のような遠心式ファンが搭載される機器の小型化が進んでおり、より薄型の遠心式ファンへの需要が高まっている。
【0006】
上記の特許文献1に記載の遠心式ファンにおいて、下ケーシングは、羽根車の主板の機能を兼ねており、下ケーシングに形成された凹部にモータや回路基板が収納されている。この結果、特に下ケーシングよりも上方の部分を薄くすることが可能になっており、遠心式ファンを薄型化することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているような下ケーシングの凹部に回路基板が収納される構造を採用した場合においては、次のような問題がある。すなわち、回路基板に実装される制御ICなどの電子部品がその上方の羽根車に接触しないように、回路基板と羽根車との間にスペースを設ける必要がある。そのため、遠心式ファンを薄型に構成できる程度には限界がある。
【0008】
また、このような特許文献1に記載されているような遠心式ファンにおいて、羽根車の羽根は、吸い込み口側の端縁部は、平面視で吸い込み口に露出するように形成されている。各羽根の吸い込み口側の端縁部は、羽根車の上側シュラウドから羽根車の回転軸方向に離れるにつれて、羽根車の回転軸に近づくように傾斜するように構成されている。羽根車の回転時において、吸い込み口から吸い込まれた空気は、羽根の吸い込み口側の端縁部に衝突した後、羽根車の外周縁から外方に吹き出される。しかしながら、上述のような羽根形状を有する場合、空気が羽根の吸い込み口側の端縁部に衝突することで空気の流れに乱れが生じたり渦が生じたりし、羽根車回転時に発生する騒音が比較的大きくなる。
【0009】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、厚みが薄く、かつ、駆動時に発生する騒音が比較的小さい遠心式ファンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータと、モータに接続されたハブ、ハブに接続された主板、主板の上方に配置された環状のシュラウド、及び主板とシュラウドとの間に配置された複数の羽根を有する羽根車と、羽根車の下方に位置する下ケーシングとを備え、羽根車の回転に伴って、シュラウドに設けられている吸い込み口から吸入した空気を羽根車の外周部から外方に向けて排出する遠心式ファンは、モータを駆動させるための駆動回路が設けられた回路基板をさらに備え、回路基板は、下ケーシングと羽根車との間に配置されており、主板の下ケーシングに対向する面に、羽根車の回転軸周りに環状に形成された凹部が設けられており、回路基板に実装された電子部品の一部が、凹部の一部に入っており、複数の羽根のそれぞれのうち、羽根車の回転軸側の端縁部は、環状シュラウド側から主板側に近づくにつれて羽根車の外周縁に近づくように傾斜しており、モータの少なくとも一部と、回路基板の少なくとも一部とは、下ケーシングに下方に窪むように形成された収納部に収納されている
【0011】
好ましくは、回路基板の半径方向の寸法は、吸い込み口の半径方向の寸法よりも大きい
【0012】
好ましくは、羽根車の直径は、羽根の最外周縁を通る円の直径よりも大きく、シュラウドと主板との間の軸方向の寸法は、羽根の最外周縁がある位置から羽根車の外周縁に近づくにつれて次第に大きくなっている。
【0013】
好ましくは、シュラウドの下側表面と主板の上側表面との少なくとも一方の外周縁側の部位が、翼上面形状をなすように湾曲している。
【0014】
好ましくは、環状シュラウドと複数の羽根とは、樹脂を用いた一体成形により形成されている。
【発明の効果】
【0015】
これらの発明に従うと、回路基板に実装された部材の一部が、羽根車の主板の下ケーシングに対向する面に形成された環状の凹部に入っており、また、複数の羽根のそれぞれのうち羽根車の回転軸側の端縁部は、環状シュラウド側から主板側に近づくにつれて羽根車の外周縁に近づくように傾斜している。したがって、厚みが薄く、かつ、駆動時に発生する騒音が比較的小さい遠心式ファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態の1つにおける遠心式ファンを示す平面図である。
図2図1のA−A線における断面図である。
図3】羽根車を示す平面図である。
図4】羽根車の下面側を示す斜視図である。
図5】本実施の形態の一変形例に係る羽根車の部分端面図を示す。
図6】本実施の形態の他の変形例に係る羽根車の部分端面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の1つにおける遠心式ファンについて説明する。
【0018】
[遠心式ファンの全体の構成]
【0019】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける遠心式ファンを示す平面図である。図2は、図1のA−A線における断面図である。
【0020】
図1及び図2を参照して、遠心式ファン1は、ケーシング10と、羽根車30と、モータ60とを備えている。遠心式ファン1は、全体として、平面視で略正方形を有する、直方体状に構成されている。遠心式ファン1は、上下方向の寸法(高さ)が比較的小さい、薄型のものである。
【0021】
羽根車30は、モータ60のシャフト62とともに回転するロータ61に取り付けられている。遠心式ファン1は、羽根車30をモータ60により回転させる。遠心式ファン1は、羽根車30の回転に伴って、その吸い込み口33から吸入した空気を、羽根車30の側方に排出させる。すなわち、吸い込み口33から導入された空気は、羽根車30の回転に伴う遠心作用による流体力で、羽根車30の羽根51の間を通過し、羽根車30の外周部から径外方に向けて吹き出される。空気は、ケーシング10の4つの側面のそれぞれに設けられている吹き出し口19から外方に排出される。
【0022】
図2に示されるように、ケーシング10は、上ケーシング11と、下ケーシング21とで構成されている。上ケーシング11は、羽根車30の上方に配置されており、下ケーシング21は、羽根車30の下方に配置されている。上ケーシング11と下ケーシング21とは、平面視で四隅に位置する箇所のそれぞれに配置された支柱17を介して、タッピンねじ(タッピングねじ)である締結材18を用いて結合されている。支柱17は、上ケーシングと一体成形により形成されており、支柱17に形成された下穴に締結材18が締め付けられている。なお、支柱17に貫通穴が設けられており、その貫通穴にボルトである締結材18を貫通させて他方の側からナットで固定することで、上ケーシング11と下ケーシング21とが結合されるようにしてもよい。締結材18は、これらのものに限定されるものではない。また、支柱17は上ケーシングとは別に形成された部材であってもよいし、支柱17は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0023】
上ケーシング11は、例えばエンジニアリングプラスチックなどの樹脂を用いて形成されている。上ケーシング11の中央部には、開口部16が設けられている。開口部16は、平面視で円形であり、この開口部16から羽根車30の吸い込み口33に空気が導入される。上ケーシング11の上面側には複数の肉盗み部13が形成されている。
【0024】
下ケーシング21は、例えば、鉄板などの金属板を用いて形成されている。下ケーシング21の中央部には、下ケーシング21のうち支柱17に締結されている部位よりも下方に窪む収納部22が形成されている。収納部22の中には、モータ60の一部(下部)と、回路基板76とが収納されている。
【0025】
下ケーシング21の外周部は、羽根車30の回転軸方向(以下、単に軸方向ということがある)に折り曲げられた側板23が配置されている。側板23が設けられていることにより、下ケーシング21の剛性が高められている。
【0026】
遠心式ファン1において、ケーシング10の4つの側部に、空気の吹き出し口19が設けられている。すなわち、吹き出し口19は、上ケーシング11と下ケーシング21との締結部分(支柱部分)を除いた、上ケーシング11と下ケーシング21との間の領域である。
【0027】
なお、下ケーシング21の材質は、鉄板等の金属板に限定されるものではなく、樹脂材料等であってもよい。
【0028】
モータ60は、例えば、アウターロータ型のブラシレスモータである。
【0029】
モータ60のロータ61は、下方に向けて開口するカップ状のロータヨーク63と、ロータヨーク63の内周面に装着された環状のマグネット64と、ロータヨーク63の中央部に取り付けられたシャフト62とを有している。
【0030】
シャフト62は、ベアリングホルダ65に装着された一対のベアリング66,67により回転可能に支持されている。ベアリングホルダ65の外周部には、ステータ70が設けられている。シャフト62の下端部には、例えばE型止め輪である係止部材62aが取り付けられている。
【0031】
ステータ70は、ステータコア71と、インシュレータ72と、コイル75とで構成されている。ステータコア71は、それぞれ環状ヨークから径外方に延伸する複数の突極を備える複数のコアが積層されて構成されている。インシュレータ72は、ステータコア71の軸方向の両側から上側インシュレータ73と下側インシュレータ74とが装着されて構成されている。コイル75は、インシュレータ72を介してステータコア71の突極部分に巻かれている。ベアリングホルダ65は、ステータコア71の環状ヨークの中央に形成された開口に嵌合しており、これにより、ステータ70がベアリングホルダ65の外側に配設されている。ステータコア71の外周面は、マグネット64の内周面に対して半径方向(図2において左右方向)に所定のエアギャップを隔てて対向配置されている。
【0032】
モータ60は、ねじやボルト等の締結部材68を用いて、収納部22の底面22aに装着されている。モータ60は、収納部22の底面22aに形成された開口にベアリングホルダ65の一端が嵌合されて、ベアリングホルダ65にボルト等の締結部材68が締め付けられることで、下ケーシング21に取り付けられている。ベアリングホルダ65の下端部にはフランジ65aが形成されており、締結部材68は、フランジ65aに締め込まれる。締結部材68を用いた締結箇所は例えば3箇所であるが、これに限られるものではない。なお、締結部材68を用いるのに代えて、ベアリングホルダ65の下部を収納部22の底面22aにかしめて固定することで、モータ60を下ケーシング21に取り付けるようにしてもよい。
【0033】
下側インシュレータ74には、モータ60を駆動させるための駆動回路が設けられた回路基板76が取り付けられている。回路基板76の一部は、モータ60の一部と共に収納部22内に収納されている。回路基板76には、モータ60を駆動制御するための部品や制御ICなどの電子部品77が実装されている。コイル75の巻回端末は、回路基板76の配線パターンに電気的に接続されている。
【0034】
羽根車30は、ケーシング10内に収められるようにして配置されている。羽根車30は、全体として円盤形状を有している。羽根車30は、大まかに、環状シュラウド31と、ハブ41と、主板42と、環状シュラウド31と主板42との間に配置された複数の羽根51とを有している。環状シュラウド31の中央には、吸い込み口33が形成されている。羽根車30の中央部には、ロータ61に装着されるハブ41が配置されている。主板42は、ハブ41に接続されており、ハブ41の外周面から半径方向に延びてハブ41を中心とする円盤形状を有している。
【0035】
ハブ41の内側には、モータ60のロータヨーク63が嵌合されている。ハブ41に形成された複数のボス41aをロータヨーク63の上面に形成された複数の貫通穴にそれぞれ嵌合させ、ボス41aの先端を加熱して貫通穴にかしめることで、ロータヨーク63が羽根車30に装着される。
【0036】
図3は、羽根車30を示す平面図である。
【0037】
図3において、羽根車30の回転方法が、矢印RDで示されている。
【0038】
図3に示されるように、複数の羽根51は、平面視で、所定の間隔で、円周上に均等配置されている。各羽根51は、同一の湾曲した形状を有しており、回転方向に対して後向きに湾曲傾斜した形状となっている後向き羽根(いわゆるターボ型の羽根)である。各羽根51は、環状シュラウド31から軸方向下方に向けて延伸し、主板42に結合されている。なお、羽根51の形状や数等は、これに限られるものではない。
【0039】
環状シュラウド31と羽根51とは、例えば樹脂を用いて一体成形されている。また、ハブ41と主板42とは、例えば樹脂を用いて一体成形されている。これらの成形は、例えば射出成形により行われている。このようにして各々一体成形された2つの部材を接合することで、羽根車30が構成されている。接合は、例えば、次のようにして行われている。すなわち、羽根51の下端が、主板42に形成された凹部に嵌め込まれるようにし、羽根51の下端に一体成形時に形成されたピンを凹部に形成された孔に嵌合させ、ピンの先端を加熱して凹部にかしめることにより、2つの部材が接合される。
【0040】
ここで、本実施の形態においては、各羽根51のハブ41側の端縁部51aは、次のような形状を有している。図2に示されるように、各羽根51のシャフト62側の端縁部51aは、環状シュラウド31側から主板42側に近づくにつれて、羽根車30の外周縁に近づくように傾斜している。換言すると、端縁部51aは、平面視で吸い込み口33側に露出しておらず、吸い込み口33から吸い込まれた空気の流れに沿うように、環状シュラウド31から下方に離れるにつれて羽根車30の外方に近づくような傾斜面を有している。
【0041】
図4は、羽根車30の下面側を示す斜視図である。
【0042】
図4に示されるように、本実施の形態において、主板42の底面(下ケーシング21と対向する側の表面)には、凹部45が設けられている。凹部45は、羽根車30の回転軸周りに、環状に形成されている。凹部45は、断面が略U字形状である溝である。
【0043】
図2に示されるように、回路基板76に実装された電子部品77の上部は、凹部45の一部に入っている。これにより、比較的背が高い電子部品77を回路基板76に実装した場合であっても、羽根車30と電子部品77との干渉(接触)を防止しつつ、羽根車30と回路基板76とを近づけて配置することができる。
【0044】
ここで、図3に示されるように、羽根車30の直径D1は、羽根51の最外周縁を通る円C2の直径D2よりも大きくなっている。そして、環状シュラウド31と主板42との間の軸方向の寸法は、羽根51の最外周縁がある位置から羽根車30の外周縁に向かって漸増している(羽根車30の外周縁に近づくにつれて次第に大きくなっている)。これにより、羽根51の最外周縁まで導風された空気が、羽根車30の外方に広がるようにスムーズに導かれて、羽根車30から吹き出し口19を通して排出される。したがって、吹き出し口19付近で発生する騒音を抑制することができる。
【0045】
また、本実施の形態においては、図2に示されるように、環状シュラウド31の下側表面のうち外周部側の部位が、翼上面形状をなすように湾曲している。すなわち、環状シュラウド31の外周部側の下側表面が、下に凸の緩やかな湾曲形状を有している。換言すると、環状シュラウド31の外周部側の下側表面は、ホーン状(金管楽器のベル状(ラッパ状))に湾曲した形状を有している。これにより、羽根51の外周縁から外方に流れる空気が環状シュラウド31の表面から剥離しにくくなり、より効果的に、空気の流れに乱れが生じないようにしてスムーズに空気が排出されるように導風することができる。
【0046】
[実施の形態における効果の説明]
【0047】
遠心式ファン1が上述のように構成されていることで、次のような効果が得られる。すなわち、回路基板76上の電子部品77の一部が、主板42の底面に形成された凹部45の一部(環状の凹部45のうち、電子部品77が設けられている部位に対応する部分)に入っている。これにより、羽根車30と電子部品77とが干渉することを避けつつ、回路基板76と羽根車30とを近づけて配置することができる。したがって、遠心式ファン1を薄型化することができる。
【0048】
羽根51の下側には主板42が配置されており、遠心式ファン1は、従来のような下ケーシングが羽根車の主板を兼用した構造とは異なる構造を有している。従来のような遠心式ファンにおいて、下ケーシングの隔壁部と羽根との間のギャップは風量特性に大きく影響を及ぼすため、適切に設定されている必要がある。したがって、遠心式ファンを構成する各部品の寸法精度を高精度に管理する必要があり、部品コストが大きくなるという問題がある。これに対し、本実施の形態では、下ケーシング21の寸法精度(平面度)を高精度に管理する必要がなく、下ケーシング21を例えばプレス加工等を利用して製作することができるので、遠心式ファン1の製造コストを低減できる。
【0049】
なお、羽根車30は主板42を備えており、2つの部材が接合されて構成されている。この点で、下ケーシングが羽根車の主板を兼用するような構造と比較して、遠心式ファン1の部品点数は増加する。しかしながら、部品点数が増加することにより増加するコストよりも、下ケーシング21をプレスで製作することができることにより削減できるコストの方が大きく、本実施の形態においては、製造コストの低減効果を得ることができるといえる。
【0050】
各羽根51のシャフト62側の端縁部51aは、環状シュラウド31側から主板42側に近づくにつれて、羽根車30の外周縁に近づくように傾斜している。そのため、吸い込み口33から吸い込まれた空気が端縁部51aに衝突するとき、端縁部51aの傾斜により空気を羽根車30の外周側に案内する導風効果が得られ、従来のような構造と比較して、空気の流れに乱れが生じにくい。したがって、羽根車30において、よりスムーズに空気を流すことができ、羽根車30の駆動時に吸い込み口33近くで発生する騒音を比較的小さくすることができる。
【0051】
また、羽根車30の直径D1は、羽根51の最外周縁を通る円C2の直径D2よりも大きくなっている。そして、羽根51の最外周縁がある位置から羽根車30の外周縁に向かって、環状シュラウド31と主板42との間の軸方向の寸法が漸増しており、環状シュラウド31の外周縁側の下側表面は、翼上面形状をなすように湾曲している。したがって、羽根51の外周縁から吹き出された空気が、環状シュラウド31の下側表面に沿うようにしてスムーズに外方に排出され、吹き出し口19付近で騒音が発生することを抑制できる。
【0052】
なお、本実施の形態において、環状シュラウド31の下側表面の外周縁近傍部が翼上面形状に形成されており、主板42の上側表面の外周縁近傍部位は側断面において直線形状(平面形状)に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、以下に示されるように、環状シュラウド31の下側表面と主板42の上側表面との少なくとも一方の外周縁側の部位が、翼上面形状をなすように湾曲するように構成されていることで、上述のように、羽根車30から排出される空気の剥離を防止する効果を得ることができる。
【0053】
図5は、本実施の形態の一変形例に係る羽根車130の部分端面図を示す。
【0054】
図5に示される端面は、図2に示されているものに対応する。図5に示されるように、羽根車130は、環状シュラウド31、羽根51、ハブ41、及び上述とは形状が異なる主板142を有している。主板142は、その外周部側の上側表面が、翼上面形状をなすように湾曲している。すなわち、主板142の外周部側の下側表面は、上に凸の緩やかな湾曲形状を有している。このように環状シュラウド31の下側表面と主板142の上側表面とのそれぞれの外周縁側の部位が翼上面形状をなすように湾曲していることで、羽根51の外周縁の空気がスムーズに羽根車130から排出される。
【0055】
図6は、本実施の形態の他の変形例に係る羽根車230の部分端面図を示す。
【0056】
図6に示される端面は、図2に示されているものに対応する。図6に示されるように、羽根車230は、上述とは形状が異なる環状シュラウド231、羽根51、ハブ41、及び主板142を有している。環状シュラウド231の外周部側の上側表面は、上述とは異なり、側断面において略直線形状に形成されている。主板142の外周部側の下側表面は翼上面形状をなすように湾曲し、羽根51の最外周縁がある位置から羽根車230の外周縁に向かって、環状シュラウド231と主板142との間の軸方向の寸法は漸増している。このように主板142の上側表面の外周縁側の部位が翼上面形状をなすように湾曲している場合であっても、羽根51の外周縁の空気は、スムーズに羽根車230から排出される。
【0057】
[その他]
【0058】
ケーシングの形状は、平面視で略正四角形に限定されるものではない。ケーシングは、平面視で多角形のものであっても円形のものであってもよいし、回転軸周りに非対称な形状などであってもよい。
【0059】
上ケーシングは、必ずしも設けられていなくてもよい。例えば、大まかに、下ケーシングにモータ、回路基板、及び羽根車が取り付けられて遠心式ファンを構成し、下ケーシングを直接他の機器に固定することで、遠心式ファンをその機器に搭載できるようにしてもよい。
【0060】
羽根車の形状は、上述のものに限られない。羽根車において、環状シュラウドの下側表面と主板の上側表面とのそれぞれの外周縁側の部位が、共に湾曲していなくてもよい。羽根車は、羽根の最外周縁がある位置から羽根車の外周縁に向かって、環状シュラウドと主板との間の軸方向の寸法が漸増している構造を有するものに限られない。また、羽根車の直径が、羽根の最外周縁を通る円の直径よりも大きくなくてもよい。
【0061】
羽根車に形成された凹部の形状や位置は、上述のものに限られない。すなわち、凹部の位置や形状は、羽根車が回転しているときに回路基板に実装される部材と羽根車とが干渉しないように、回路基板に実装される部材の位置や形状に対応するように設定されていればよい。これにより、回路基板と羽根車とを近づけて配置し、遠心式ファンを薄型化することができる。
【0062】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 遠心式ファン
11 上ケーシング
19 吹き出し口
21 下ケーシング
22 収納部
30,130,230 羽根車
31,231 環状シュラウド
33 吸い込み口
41 ハブ
42,142 主板
45 凹部
51 羽根
51a 端縁部
60 モータ
61 ロータ
62 シャフト
76 回路基板
77 電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6