(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、例を挙げて説明する。但し、本発明は以下の説明により限定されない。
【0011】
[I.ポリアルキレンオキサイド]
本発明のポリアルキレンオキサイドは、前述の通り、下記式(1)の構造単位を有する。下記化学式(1)中のL
1、L
2、Z、n、及びmについては、前述のとおりである。
【化1】
【0012】
以下、前記化学式(1)の構造単位における各部の構造について、例を挙げて説明する。
【0013】
<−L
1−O−、Z及びフタルイミド基からなる構造単位>
まず、前記化学式(1)中の−L
1−O−、Z及びフタルイミド基からなる構造単位(以下「副構造単位a」ということがある。)について説明する。
【0014】
L
1は、前述のとおり、水素原子の一つがZ及び前記フタルイミド基で置換された炭素数2の直鎖アルキレン基、すなわちエチレン基[−(CH
2)
2−]を表す。前記エチレン基の水素原子のうち、どの一つがZ及び前記フタルイミド基で置換されていても良い。
【0015】
前記化学式(1)中、Zは、前述のとおり、L
1と前記フタルイミド基を結合する連結基であり、前記連結基が、炭素数1のアルキレン基(すなわちメチレン基)である。
【0016】
すなわち、前記化学式(1)は、下記化学式(2)で表すことができる。
【化2】
【0017】
また、前記フタルイミド基の置換基Rは、前述のとおり、1でも複数でも存在しなくても良く、複数の場合は、各Rは同一でも異なっていても良く、前記置換基が、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一つである。
【0018】
なお、本発明において、「置換基(前記置換基R、L
1上の前記他の置換基、L
2上の前記置換基等、全ての置換基)」の炭素原子数は、特に限定されないが、例えば0〜24である。本発明において、「不飽和脂肪族炭化水素基」は、二重結合及び3重結合の少なくとも一方を1又は複数含み、例えば、アルケニル基及びアルキニル基が挙げられる。以下において同様である。また、本発明において、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロアルキル基およびアシル基は、それぞれ、直鎖状でも分岐状でも良い。以下において同様である。また、本発明において、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基およびアシル基は、それぞれ、炭素数1〜24であることが好ましく、前記不飽和脂肪族炭化水素基は、炭素数2〜24であることが好ましい。以下において同様である。また、本発明において、特に断らない限り、アシル基の炭素数には、カルボニル炭素も含む。すなわち、炭素数1のアシル基とは、ホルミル基をいう。また、本発明において、「アリール基」という場合は、特に限定されないが、例えば、炭素数6〜24のアリール基であり、より具体的には、例えば、後述の例示のとおりである。また、本発明において、「アリール基」という場合は、置換基(例えば、ハロゲン、アルキル基等)を有するアリール基も含む。アリール基から誘導される基(例えば、アラルキル基等)においても同様である。また、アリール基の炭素数には、前記置換基の炭素数は含まない。また、本発明において、「ヘテロアリール基」という場合は、特に限定されないが、例えば、前記「アリール基」の環の炭素原子の1以上がヘテロ原子(炭素及び水素以外の原子)で置換された基でも良い。本発明において、「芳香族基」(又は「芳香環」など)という場合は、特に限定されず、例えば、前記「アリール基」又は前記「ヘテロアリール基」でも良い。本発明において、芳香族基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基(C6)、1−ナフチル基(C10)、2−ナフチル基(C10)、フェナレニル基(C13)、アントリル基(C14)、フェナントリル基(C14)、ピレニル基(C16)、ナフタセニル基(C18)、クリセニル基(C18)、トリフェニレニル基(C18)、ペリレニル基(C20)、ピセニル基(C22)、ペンタセニル基(C22)、コロネニル基(C24)、インデニル基(C9)、アズレニル基(C10)、フルオレニル基(C13)、テトラフェニレニル基(C24)、ビフェニル基(C12)、ターフェニル基(C18)、クオーターフェニル基(C24)、ビナフタレニル基(C20)、ペンタレニル基(C8)、ヘプタレニル基(C12)、ビフェニレニル基(C12)、インダセニル基(C12)、アセナフチレニル基(C12)、アセアントリレニル基(C16)、フルオランテニル基(C16)、o−、m−、およびp−トリル基(C7)、キシリル基(C8)、メシチル基(C9)、o−、m−、およびp−クメニル基(C9)、アントラキノリル基(C14)、イミダゾール基(C3)、ピラゾール基(C3)、オキサゾール基(C3)、チアゾール基(C3)、ピラジン基(C4)、チアジン基(C4)、インドール基(C8)、イソインドール基(C8)、ベンゾイミダゾール基(C7)、プリン基(C5)、キノリン基(C9)、イソキノリン基(C9)、キノキサリン基(C8)、シンノリン基(C8)、プテリジン基(C6)、クロメン基(C9)、イソクロメン基(C9)、アクリジン基(C13)、キサンテン基(C13)、カルバゾール基(C12)、ベンゾシンノリン基(C12)等が挙げられる。それぞれ、括弧内の「C」の直後の数値は、芳香環の炭素原子数を表す。さらに、本発明において、「置換基」に異性体が存在する場合は、特に断らない限り、どの異性体でも良く、例えば、単に「プロピル基」という場合は、1−プロピル基でも2−プロピル基でも良い。
【0019】
前記L
1は、前述の通り、さらに、Z及び前記フタルイミド基以外の他の置換基を有していても有していなくても良い。
【0020】
前記副構造単位aの具体的な構造例としては、下記化学式(3)が特に好ましい。
【化3】
【0021】
<−L
2−O−からなる構造単位>
次に、前記化学式(1)中の、−L
2−O−からなる構造単位(以下「副構造単位b」ということがある。)について説明する。
【0022】
L
2は、前述のとおり、炭素数1〜4の直鎖アルキレン基を表す。前記炭素数1〜4の直鎖アルキレンとは、メチレン基[−CH
2−]、エチレン基[−(CH
2)
2−]、n−プロピレン基[−(CH
2)
3−]、またはn−ブチレン基[−(CH
2)
4−]である。
【0023】
前記副構造単位bの親水性の高さの観点から、または、前記化学式(1)で表されるポリアルキレンオキサイドの原料であるモノマーの反応性(前記化学式(1)で表されるポリアルキレンオキサイドの合成のしやすさ)、もしくは前記モノマーの入手しやすさの観点から、L
2は、炭素数2〜3の直鎖アルキレンが好ましく、炭素数2の直鎖アルキレンがより好ましい。
【0024】
L
2は、前述のとおり、水素原子の少なくとも一つが置換基で置換されていても、置換されていなくても良い。前記置換基は、存在する場合は、1つのL
2に対し1でも複数でも良く、複数の場合は同一でも異なっていても良い。L
2における前記置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、ハロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルコキシアルキル基、アルケニルオキシアルキル基、アルキニルオキシアルキル基、ハロアルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アラルキルオキシアルキル基、アリールオキシ−ポリ(アルキルオキシ)アルキル基、アルコキシ−ポリ(アルキルオキシ)アルキル基、アシルオキシアルキル基、ハロゲン、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、及び、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基が好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタアクリル酸の少なくとも一方を表す。(メタ)アクリル酸から誘導される構造(例えば(メタ)アクリロイル基等)においても同じである。
【0025】
前記アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキル基が挙げられる。
【0026】
前記不飽和脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブチリル基、ペンチリル基、ヘキシリル基、ヘプチリル基、オクチリル基、ノニリル基、デシリル基等の炭素数2〜10のアルケニル基、エチニル基、プロパルギル基等の炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキニル基が挙げられる。
【0027】
前記ハロアルキル基は、ハロゲン置換数が1でも良いし、複数でも良い。前記ハロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロブチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、フルオロメチル基、トリフルオロエチル基等の炭素数2〜21の直鎖若しくは分岐状のハロアルキル基が挙げられる。
【0028】
前記アリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、モノクロロフェニル基等が挙げられる。
【0029】
前記アルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状アルコキシ基等が挙げられる。
【0030】
前記アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基等の炭素数2〜21の直鎖若しくは分岐状のアシル基が挙げられる。
【0031】
前記アシルオキシ基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
前記アルコキシカルボニル基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0033】
前記アルケニルオキシカルボニル基としては、例えば、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0034】
前記アルコキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、アルコキシメチル基が挙げられ、より具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペンチルオキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基、ヘプチルオキシメチル基、オクチルオキシメチル基、デシルオキシメチル基、ドデシルオキシメチル基(ラウリルオキシメチル基)、ヘキサデシルオキシメチル基(セチルオキシメチル基)、オクタデシルオキシメチル基(ステアリルオキシメチル基)、イコシルオキシメチル基、ヘキサデシルオキシメチル基等の直鎖状若しくは分岐状炭素数2〜21のアルコキシメチル基が挙げられる。
【0035】
前記アルケニルオキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、アルケニルオキシメチル基が挙げられ、より具体的には、例えば、ビニルオキシメチル基、アリルオキシメチル基(allyloxymethyl group)、イソプロペニルオキシメチル基、オレイルオキシメチル基、等の炭素数2〜21の直鎖状若しくは分岐状アルケニルオキシアルキル基が挙げられる。
【0036】
前記アルキニルオキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、アルキニルオキシメチル基等の炭素数2〜21の直鎖状若しくは分岐状アルキニルオキシアルキル基が挙げられる。
【0037】
前記ハロアルコキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ハロアルコキシメチル基が挙げられ、より具体的には、例えば、クロロメトキシメチル基、クロロエトキシメチル基、クロロブトキシメチル基、ジクロロメトキシメチル基、トリフルオロメトキシメチル基、ブロモメトキシメチル基、フルオロメトキシメチル基、トリフルオロエトキシメチル基、テトラフルオロプロポキシメチル基、オクタフルオロベンチロキシメチル基、ドデカフルオロヘプチロキシメチル基等の炭素数2〜21の直鎖若しくは分岐状のハロアルコキシメチル基が挙げられる。
【0038】
前記アリールオキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、アリールオキシメチル基が挙げられ、より具体的には、例えば、フェノキシメチル基、メチルフェノキシメチル基、ブチルフェノキシメチル基、ノニルフェノキシメチル基、メトキシフェノキシメチル基、ジブロモフェノキシメチル基が挙げられる。
【0039】
前記アラルキルオキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、アラルキルオキシメチル基が挙げられ、より具体的には、例えば、ベンジルオキシメチル基が挙げられる。
【0040】
前記アリールオキシ−ポリ(アルキルオキシ)アルキル基、としては、特に限定されないが、例えば、アリールオキシ−ポリ(アルキルオキシ)メチル基が挙げられ、より具体的には、例えば、フェノキシ−(CH
2CH
2O)
5−メチル基が挙げられる。
【0041】
前記アルコキシ−ポリ(アルキルオキシ)アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、アルコキシ−ポリ(アルキルオキシ)メチル基が挙げられ、より具体的には、例えば、ドデシルオキシ−(CH
2CH
2O)
15−メチル基が挙げられる。
【0042】
前記ハロゲンとしては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0043】
前記(メタ)アクリロイルオキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル基が挙げられ、より具体的には、例えば、アクリロイルオキシメチル基、メタクリロイルオキシメチル基等の炭素数2〜21の直鎖若しくは分岐状の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が挙げられる。
【0044】
前記(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシメチル基が挙げられ、より具体的には、例えば、アクリロイルオキシブトキシメチル基等の炭素数2〜21の直鎖若しくは分岐状の(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアルキル基が挙げられる。
【0045】
L
2上における前記置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルコキシメチル基、アルケニルオキシメチル基、ハロアルコキシメチル基、アリールオキシメチル基、アラルキルオキシメチル基、アリールオキシ−ポリ(アルキルオキシ)メチル基、アルコキシ−ポリ(アルキルオキシ)メチル基、アシルオキシメチル基、ハロゲン、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、及び、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシメチル基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基であることがより好ましい。また、前記化学式(1)中、L
2は、水素原子の一つが置換基で置換されていても、置換されていなくても良く(すなわち、置換数が1または0であり)、前記置換基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブチリル基、ペンチリル基、ヘキシリル基、ヘプチリル基、オクチリル基、ノニリル基、デシリル基、エチニル基、プロパルギル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、クロロメチル基、パーフルオロブチルメチル基、パーフルオロヘキシルメチル基、クロロエチル基、クロロブチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、フルオロメチル基、トリフルオロエチル基、フェニル基、モノクロロフェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペンチルオキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基、ヘプチルオキシメチル基、オクチルオキシメチル基、イコシルオキシメチル基、デシルオキシメチル基、ドデシルオキシメチル基、ヘキサデシルオキシメチル基、オクタデシルオキシメチル基、アリルオキシメチル基、ビニルオキシメチル基、イソプロペニルオキシメチル基、オレイルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェノキシ−(CH
2CH
2O)
5−メチル基、ドデシルオキシ−(CH
2CH
2O)
15−メチル基、アクリロイルオキシブトキシメチル基、テトラフルオロプロポキシメチル基、オクタフルオロペンチロキシメチル基、ドデカフルオロヘプチロキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルフェノキシメチル基、ブチルフェノキシメチル基、ノニルフェノキシメチル基、メトキシフェノキシメチル基、ジブロモフェノキシメチル基、アクリロイルオキシメチル基、メタクリロイルオキシメチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基であることがさらに好ましい。
【0046】
前記化学式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド共重合体が分散剤として機能するメカニズムは、例えば、以下のように推測または例示される。すなわち、前記副構造単位aは、芳香環を含む置換基(フタルイミド基)を有することにより、芳香環の特異的な親和性により分散質表面に吸着する。一方、前記副構造単位bは、芳香環を含まないことにより分散質表面に吸着し難く、かつ、分散媒への親和性を有することにより、前記化学式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド共重合体が界面活性効果を発揮する。例えば、前記副構造単位bが親水性であれば、芳香環と親和性の高い分散質を水中に分散させることができる。ただし、このメカニズムは、前述のとおり、推測または例示であり、本発明をなんら限定しない。例えば、前記副構造単位bは、前述のとおり、芳香環を有していても良い。また、本発明の分散剤において、分散媒は、水に限定されず、後述のとおり、どのような分散媒でも良い。
【0047】
前記副構造単位bの具体的な構造例を下記化学式(4−1)〜(4−6)及び(5−1)〜(5−6)に示す。なお、下記化学式(4−3)中のR
1および(5−3)中のR
2は、それぞれ、アルキル炭素数1〜18のアルキル基であり、例えば、ドデシル基[−(CH
2)
11−CH
3]である。
【化4-1-6】
【化5-1-6】
但し、前記化学式(4−1)〜(4−6)及び(5−1)〜(5−6)中、m、m’及びlは、それぞれ1以上の整数である。また、前記化学式(5−1)〜(5−6)中、各構造単位の配列順序は、特に限定されず、交互、ランダム又はブロックのいずれであっても良い。
【0048】
なお、前記化学式(1)で表されるポリアルキレンオキサイドに互変異性体または立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体および光学異性体)等の異性体が存在する場合は、いずれの異性体も本発明に用いることができる。
【0049】
以上、前記化学式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドの前記副構造単位a及び前記副構造単位bを、それぞれ説明した。本発明における前記化学式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドは、例えば、前記副構造単位a及び前記副構造単位bについて具体的に例示した前記化学式を任意に組み合わせても良い。前記化学式(1)の構造単位は、例えば、下記化学式(6)〜(13)のいずれかで表される構造単位であっても良い。ただし、下記化学式(6)〜(13)中、n、m、m’およびlは、それぞれ正の整数であり、各構造単位の配列順序は、特に限定されず、交互、ランダム又はブロックのいずれであっても良い。なお、下記において、アルキル炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、ドデシル基が挙げられる。下記化学式(10)中、R
3は、アルキル炭素数1〜18のアルキル基であり、例えば、ドデシル基[−(CH
2)
11−CH
3]である。
(6)エチレンオキサイド及びグリシジルフタルイミドの共重合体
(7)プロピレンオキサイド及びグリシジルフタルイミドの共重合体
(8)エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びN−グリシジルフタルイミドの共重合体
(9)エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びN−グリシジルフタルイミドの共重合体
(10)エチレンオキサイド、アルキル炭素数1〜18のアルキルグリシジルエーテル及びN−グリシジルフタルイミドの共重合体
(11)エチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル及びN−グリシジルフタルイミドの共重合体
(12)エチレンオキサイド、スチレンオキサイド及びN−グリシジルフタルイミドの共重合体
(13)エチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル及びN−グリシジルフタルイミドの共重合体
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0050】
前記化学式(1)に示すポリアルキレンオキサイドにおける前記構造単位は、分散性の観点から、前記化学式(6)〜(13)のいずれかで表されることが好ましく、前記化学式(6)、(8)、(10)、および(11)のいずれかで表されることがより好ましく、前記化学式(6)で表されることが特に好ましい。
【0051】
前記化学式(1)中、前記nは、前記副構造単位aの数であり、nは、1以上の整数である。前記化学式(1)中、前記mは、前記副構造単位bの数であり、mは、1以上の整数である。前記副構造単位a及びbの配列順序は、特に制限されず、前記化学式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドが、交互共重合体であっても良いし、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であっても良い。前記ポリアルキレンオキサイドは、分散性の観点から、ランダム共重合体であることが好ましい。また、前記副構造単位a及びbは、それぞれ1種類であっても良いし、複数種類でも良い。
【0052】
(共重合比)
前記化学式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドの副構造単位a及びbの共重合比(副構造単位a:副構造単位b)は、特に制限されないが、分散性の観点から、例えば副構造単位a:副構造単位b=0.01:99.99〜50:50、好ましくは0.1:99.9〜30:70、より好ましくは0.5:99.5〜20:90、さらに好ましくは1:99〜10:90である。ただし、これらの数値は例示であり、用途等に応じて適宜変更しても良い。例えば、分散媒が水である場合、水以外の分散媒である場合、又は水と他の分散媒との混合物である場合等において、前記分散媒の極性に応じ、前記共重合比(副構造単位a:副構造単位b)を変化させても良い。より具体的には、例えば、前記分散媒の極性が低い(疎水性が高い)場合は、前記共重合比(副構造単位a:副構造単位b)において、副構造単位aの比率を大きくしても良い。
【0053】
(重量平均分子量)
前記化学式(1)の構造単位を有する本発明のポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量は、特に制限されないが、分散性の観点から大きいほうが好ましく、例えば1,000以上、好ましくは4,000以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上、さらに好ましくは30,000以上である。また、前記重量平均分子量は、粘度を小さくして、取り扱い性を容易にする観点から小さいほうが好ましく、例えば10,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下である。ただし、前述のとおり、本発明のポリアルキレンオキサイドの用途は、分散剤に限定されない。例えば、本発明のポリアルキレンオキサイドを分散剤以外の用途に用いる場合、前記用途に応じて前記重量平均分子量を変化させても良い。前記重量平均分子量の測定方法は、特に制限されないが、例えば、後述の実施例において記載された測定方法等が挙げられる。
【0054】
[ポリアルキレンオキサイドの製造方法]
次に、前記化学式(1)の構造単位を有する本発明のポリアルキレンオキサイドの製造方法について説明する。
【0055】
[ポリアルキレンオキサイドの製造方法]
本発明のポリアルキレンオキサイドの製造方法は、特に限定されず、例えば、前記副構造単位aのモノマー、及び前記副構造単位bのモノマーを、公知の方法で、又はそれに準じた方法で共重合させることにより製造できる。前記副構造単位aのモノマー及び前記副構造単位bのモノマーは、それぞれ、一種類であっても良いし複数あっても良い。前記各モノマーは、例えば、L
1及びL
2のアルキレン基の炭素数に対応した環状エーテルであっても良い。下記スキーム1に、その化学反応式の一例を示す。なお、下記スキーム1は、L
1及びL
2が、それぞれエチレン基(炭素数2のアルキレン基)の場合の例である。下記スキーム1中、n及びmは、それぞれ1以上の整数である。
【0057】
前記反応式(s1)中、前記副構造単位aのモノマー成分及びbのモノマー成分の重合比(n:m)は、特に制限されないが、分散性の観点から、水用分散剤(水を分散媒とする用途における分散剤)の場合は、例えば、n:m=0.01:99.99〜50:50、好ましくは0.1:99.9〜30:70、より好ましくは0.5:99.5〜20:90、さらに好ましくは1:99〜10:90である。ただし、これらの数値は例示であり、前述のとおり、用途(例えば分散媒の種類の変更、又は分散剤以外の用途に用いる場合)等に応じて適宜変更しても良い。また、例えば、前記スキーム1において、エチレンオキシド(前記副構造単位bのモノマー)の一部(例えば、0〜80モル%)を、プロピレンオキシドに代えても良い。
【0058】
下記スキーム2に、前記副構造単位bのモノマーが複数種類である場合の例を示す。下記スキーム2の例では、前記副構造単位bのモノマーがエチレンオキシド及びプロピレンオキシドであるが、これ以外の任意のモノマーを用いても良い。また、下記スキーム2中、n、m’及びlは、それぞれ、1以上の整数である。
【化S2】
【0059】
前記副構造単位a及びbのモノマーの構造は、前記副構造単位a及びbの構造に合わせて適宜選択すればよい。例えば、L
1がZ及び前記フタルイミド基以外の置換基を有する場合は、対応する置換基を有する環状エーテルを、前記副構造単位aのモノマーとして用いても良い。同様に、L
2が置換基を有する場合は、対応する置換基を有する環状エーテルを、前記副構造単位bのモノマーとして用いても良い。また、例えば、前記化学式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドが、前記化学式(6)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドである場合は、後述する実施例にも記載のように、下記化学式(3a)で表されるモノマーを前記副構造単位aのモノマーとして用い、エチレンオキシドを前記副構造単位bのモノマーとして用いることができる。
【化3a】
【0060】
前記スキーム1又は2に示す共重合反応等、前記式化学(1)の構造単位を有する本発明のポリアルキレンオキサイドを合成するための共重合反応の反応条件は、特に限定されず、前述のとおり、公知の方法又はそれに準じても良い。具体的には、例えば、窒素等の不活性ガスの雰囲気下で、0〜50℃の低温条件下若しくは100〜250℃の高温条件下で、所定の反応時間で、各モノマー成分を開環重合させればよい。また、前記反応条件により、前記化学式(1)の構造単位を有する本発明のポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量を、ある程度コントロールすることができる。すなわち、反応温度を低めに、又は反応時間を長めにすると、前記ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量が大きくなりやすい傾向がある。逆に、反応温度を高めに、または反応時間を短めにすると、前記ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量が小さくなりやすい傾向がある。さらに、前記共重合反応において、原料であるモノマーの濃度を高めにすると、前記ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量が大きくなりやすい傾向がある。逆に、前記原料であるモノマーの濃度を低めにすると、前記ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量が小さくなりやすい傾向がある。ただし、これらの傾向は、例示であって、本発明を何ら限定しない。また、必要に応じ、オートクレーブ等を用いて加圧条件下で反応させても良い。反応溶媒は、特に限定されないが、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、シクロペンタン、工業用ヘキサン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の低極性溶媒が挙げられる。また、必要に応じて重合触媒を用いることが好ましい。例えば、前記重合触媒の使い分けにより、前記ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量を調整することも可能である。例えば、前記重量平均分子量がきわめて高い(具体的には、例えば50万以上の)前記ポリアルキレンオキサイドを合成するために、特公昭45−7751号公報、特開2006−077039号公報、WO2004/041909等に記載の重合触媒(例えば、有機亜鉛触媒)を用いても良い。前記共重合反応の反応条件は、例えば、前記特公昭45−7751号公報、特開2006−077039号公報、WO2004/041909等に記載の反応条件と同様又はそれに準じても良い。特開2006−077039号公報およびWO2004/041909に記載の方法では、成分A:有機アルミニウム化合物と、成分B:アルカリ金属のアルコキシド又はアルカリ金属水酸化物のいずれか一方、とを含む重合触媒を用いた共重合により、収率良くポリアルキレンオキサイドを合成することができる。これらの重合触媒は、前述のように、きわめて分子量が高い前記ポリアルキレンオキサイドを合成するために、特に有用である。
【0061】
また、前記共重合反応により得られたポリアルキレンオキサイドは、必要に応じ、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、カラムクロマトグラフィー等の公知の手法で精製することにより純度を向上しても良い。
【0062】
〔本発明のポリアルキレンオキサイドの用途〕
次に、本発明のポリアルキレンオキサイドの用途について説明する。
【0063】
本発明のポリアルキレンオキサイドは、前述の通り、ポリアルキレンオキサイドが使用される様々な用途で使用可能であり、特にフタルイミド基が有する特性を生かした樹脂添加剤やコート剤、分散剤などの用途に適用できる。例えば、本発明のポリアルキレンオキサイドは、両親媒性の前記ポリアルキレンオキサイドであって、前記ポリアルキレンオキサイドは、側鎖に芳香族複素環基(フタルイミド基)を有する副構造単位aと側鎖にアリール基を有さない副構造単位bを含む。これにより、広範囲の分散質の分散剤として適用でき、優れた分散性を発揮する。これは、以下のメカニズムにより推測される。すなわち、前記側鎖にフタルイミド基を有する副構造単位aにおいては、前記フタルイミド基(芳香族複素環)は、電子が豊富なπ電子系を有している。したがって、前記副構造単位aは、疎水性相互作用とは異なる芳香族環特有のπ−π相互作用により、分散媒中で、分散質表面のπ電子系と相互作用する効果を発揮する。これにより、前記化学式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドは、広範囲の有機粒子及び無機粒子と非共有結合的に分子間相互作用をする。そして、前記化学式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドは、側鎖に芳香族環を複数有することにより、分散質表面に多点吸着できるため、一旦吸着すると離れにくい。一方、側鎖にアリール基を有さない副構造単位bは、分散媒に対して親和性の高い組成を適宜選択することで、分散質表面に分散媒に親和性の高い層を形成して、分散性を発揮する。さらに、前記化学式(1)の構造単位を有するポリアルキレンオキサイドは、副構造単位bが、分散質表面に嵩高い親分散媒性のポリマー層を構築し、その立体障害によって、分散質の再凝集を抑制する効果を発揮する。具体的には、例えば、前記ポリアルキレンオキサイドの側鎖における芳香族環のπ電子と、有機微粒子である有機顔料又は無機微粒子であるナノカーボンにおける芳香族環のπ電子とが、π−π相互作用により吸着し、前記有機顔料又はナノカーボンの表面に前記ポリアルキレンオキサイドの層を形成する。これにより、前記有機顔料又はナノカーボンが凝集することを抑制し、分散媒中に均一に分散するものと推測される。但し、芳香族環は、前述の効果意外にも、疎水性相互作用や、π電子系と金属間で相互作用することが知られており、芳香族環を持たない分散質に対しても有効であり、これらのメカニズムは、効果の一例であり、本発明は、これにより限定されない。また、例えば、前述のとおり、前記副構造単位bは、側鎖にアリール基を有していても良い。具体的には、例えば、前記副構造単位b中にアリール基が含まれていても、前記副構造単位bが、親分散媒性のモノマー由来の構造を一定以上(例えば、親水性のエチレンオキサイド由来の構造を、前記化学式(1)のポリアルキレンオキサイド全体の50モル%以上)含むことにより、優れた分散効果を発揮すると推測される。ただし、この推測も、例示であり、本発明を限定しない。また、本発明のポリアルキレンオキサイドは、容易に親媒性を調整できる副構造単位bを含むので、適宜、副構造単位bの組成を選択することにより、広範囲の溶媒に適用可能である。より具体的には、例えば、前記化学式(1)の構造単位中における前記副構造単位bの比率(組成)を調整することにより、親媒性を調整できる。また、前記副構造単位bは、原料のモノマーによって親水性が相対的に異なると考えられ、例えば、エチレンオキシド>プロピレンオキシド>ドデシルグリシジルエーテルの順に相対的に親水性が高いと推測される。したがって、前記副構造単位b中における前記モノマーの比率(組成)を調整することによっても、前記化学式(1)で表されるポリアルキレンオキサイドの親媒性を調整できる。特に、本発明のポリアルキレンオキサイドは、例えば、分散媒が水である場合に好適に適用可能である。
【0064】
さらに、前記副構造単位aが有するフタルイミド基は、極性基やアルキル鎖等の疎水基とは異なり、特異的なπ−π相互作用で分散質に吸着しているため、非常に外的要因による阻害を受けにくい。また、前記副構造単位bにおけるL
2−Oも、ノニオン性の親水基であるため、極性基や添加剤の影響を受け難い構造である。このことにより、前記化学式(1)の構造単位中に、分散性と無関係な置換基等が含まれていても、分散性に対する影響を受けにくいと推測される。ただし、この推測も、一例であり、本発明を限定しない。
【0065】
本発明のポリアルキレンオキサイドを含む分散剤は、前記分散質と他の物質との混合物に対しても、優れた分散性を発揮する。一般的に、カルボキシル基等の極性基を有する両性界面活性剤等の従来の分散剤では、無機塩等の混合物を添加した場合、前記添加によるpHの変化、イオン濃度の変化により分散性能を失い、分散剤そのものが凝集するという問題が生じる。これに対し、本発明の前記分散剤では、前記添加剤の影響を受けることなく、優れた分散性を発揮する。具体的には、例えば、前記分散剤は、前記CNFと無機塩等のイオン性添加剤との混合物に対しても優れた分散性を発揮する。さらに、前述の通り、本発明のポリアルキレンオキサイドの用途は分散剤に限定されず、本発明のポリアルキレンオキサイドは、分散剤として有用なポリアルキレンオキサイドのみに限定されない。
【0066】
[I.分散剤]
以下、前記化学式(1)の構造単位を有する本発明のポリアルキレンオキサイドを含む分散剤についてさらに説明する。
【0067】
<分散質>
前記分散質としては、特に制限されないが、例えば、無機粒子、有機粒子、有機繊維等が挙げられる。これらは、自家調製してもよいし、市販のものを用いても良い。前記無機粒子としては、特に制限されず、例えば、カーボン、シリカ(酸化ケイ素)、金属粒子、金属ナノ粒子、無機塩等が挙げられる。尚、本発明において、前記無機粒子とは、例えば、有機官能基により表面修飾されたものも含む。有機官能基により表面修飾された無機粒子とは、例えば、有機官能基により表面修飾されたCNT(カーボンナノチューブ)、有機官能基により表面修飾されたシリカ等が挙げられる。また、本発明において、金属粒子とは、金属の単体、合金等の粒子に限定されず、金属化合物(例えば、金属酸化物)の粒子も含む。前記カーボンとしては、黒鉛、カーボン粒子、カーボンファイバー、ナノカーボン等が挙げられる。前記黒鉛としては、鱗片状黒鉛、親水処理した黒鉛、アモルファスカーボンで表面コートされた黒鉛等が挙げられる。前記ナノカーボンとしては、単層カーボンナノチューブ(CNT)、二層CNT,多層CNT,カップスタック型CNT等のCNT、カーボンナノファイバー(CNF)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェレンブラック、酸化処理したカーボンブラック、中空カーボン等のカーボンブラック(CB)、カーボンナノコイル(CNC)、カーボンナノホーン(CNH)、フラーレン、グラフェン等が挙げられ、好ましくは、CNFまたはCNTである。前記有機粒子としては、例えば、有機顔料、樹脂粒子等が挙げられる。前記有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTMT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンナフタレート(PTMN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル繊維、セルロース繊維等が挙げられる。
【0068】
<分散媒>
本発明で使用できる分散媒としては、水、芳香族炭化水素系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、酢酸エステル系溶剤、ジアルキルエーテル系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリコール系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤等が挙げられる。さらに、本発明で使用できる分散媒は、これらに限定されず、各種樹脂類、オリゴマー類やその単量体類も特に制限なく使用できる。また、前記各種樹脂類の具体例としては、本発明のポリアルキレンオキサイドも挙げられる。すなわち、本発明の分散剤が、分散媒を兼ねていても良い。なお、前記分散媒は、単独で用いても良いし、複数種類併用しても良い。
【0069】
[II.分散組成物]
次に、本発明のポリアルキレンオキサイドを用いた分散組成物について説明する。前記分散組成物は、前記本発明のポリアルキレンオキサイドを含む分散剤と、前記分散質とを含み、任意成分として、さらに、前記分散媒を含んでいても良い。
【0070】
<添加剤>
本発明の分散組成物は、任意成分として、さらに、必要に応じて添加剤を含んでも良い。具体的には、例えば、本発明の分散組成物は、公知の浸透剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤、粘度調整剤、pH調整剤等を、分散性を損なわない範囲で、添加剤として含んでも良い。前記浸透剤(潤滑浸透剤)としては、特に限定されず、例えば、界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤は、特に限定されず、例えば、アニオン系界面活性剤(具体例として、花王株式会社の製品名「ペレックスOT−P」等)、弱カチオン性ノニオン系界面活性剤(具体例として、花王株式会社の製品名「アミート320」等)、アミノ酸系の界面活性剤(具体例として、旭化成ケミカルズ株式会社の製品名「ペリセアL−30」等)が挙げられる。また、本発明の分散組成物は、例えば、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基またはそれらの塩等のイオン性添加剤を添加剤として含んでも良い。また、前記添加剤としては、例えば、分散剤として用いられる前記化学式(1)以外の物質を、前記添加剤として併用しても良い。併用することができる分散剤は、特に制限されないが、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の公知の界面活性剤を分散剤として併用することができる。
【0071】
<配合量>
前記分散組成物中において、前記化学式(1)の構造単位を有する(本発明の)ポリアルキレンオキサイドの配合量(重量%)は、特に制限されず、適宜調整可能である。なお、本発明において、前記分散組成物中の前記分散剤の配合量(重量%)は、前記分散組成物中における前記化学式(1)のポリアルキレンオキサイドの配合量(重量%)をいう。前記化学式(1)の(本発明の)ポリアルキレンオキサイドの配合量(重量%)は、分散質の種類及び前記分散組成物の用途等によっても大きく異なる。前記化学式(1)の(本発明の)ポリアルキレンオキサイドの配合量(重量%)は、前記分散質がカーボンナノファイバー(CNF)である水系分散組成物の場合、前記分散組成物に対し、例えば、0を超える値であり、好ましくは1×10
−5重量%〜30重量%であり、より好ましくは、1×10
−3重量%〜20重量%であり、さらに好ましくは、0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは、0.5〜5重量%である。例えば、前記化学式(1)のポリアルキレンオキサイドは、他の分散剤と併用することで、きわめて低濃度(低い配合量)でも分散効果を発揮することが可能である。その場合、例えば、前記他の分散剤のみでは分散効果を発揮しない場合でも、前記化学式(1)のポリアルキレンオキサイドを前記他の分散剤と併用することで、分散効果を発揮することができる。
【0072】
前記化学式(1)の(本発明の)ポリアルキレンオキサイドと前記分散質との配合割合(分散剤/分散質)は、特に制限されず、適宜調整可能である。前記分散剤と前記分散質との配合割合(分散剤/分散質)は、分散質の種類及び前記分散組成物の用途等によっても大きく異なる。前記分散剤と前記分散質との配合割合(分散剤/分散質)は、前記分散質がカーボンナノファイバー(CNF)である水系分散組成物の場合、例えば、0.0001〜20であり、好ましくは、0.01〜10であり、より好ましくは、0.1〜5であり、さらに好ましくは、0.2〜2である。
【0073】
次に、本発明のポリアルキレンオキサイドを含む分散組成物の調製方法について説明する。前記調製方法は、特に制限されず、公知の分散方法で実施しても良い。具体的には、例えば、分散媒中に、分散剤及び分散質を混合し、必要に応じて、加熱、撹拌を行い、分散組成物を調製する。前記撹拌方法として、公知の技術を用いても良く、具体的には、例えば、超音波照射、高圧混合、ホモミキサー、ホモジナイザー、ビーズミル、ボールミル、ロールミル等が挙げられ、これらの公知技術を組み合わせて行っても良い。
【0074】
本発明のポリアルキレンオキサイドを含む分散組成物は、特に制限されないが、例えば、ハイブリッド材料、表面保護材、導電性ペースト、導電性インク、センサー、精密分析素子、光メモリ、液晶表示素子、ナノ磁石、熱伝媒体、燃料電池用高機能触媒、有機太陽電池、ナノガラスデバイス、研磨剤、ドラッグキャリヤー、環境触媒、塗料、印刷インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキ、光学薄膜、粘着剤、反射防止膜、ハードコート膜等の分野で使用できる。
【0075】
[III.分散剤及び分散組成物以外の用途]
前述のとおり、本発明のポリアルキレンオキサイドの用途は、分散剤に限定されず、どのような用途に用いても良い。具体的には、例えば、下記のとおり、本発明のポリアルキレンオキサイドは、コート剤、樹脂添加剤等に用いることも可能である。
【0076】
例えば、本発明のポリアルキレンオキサイドは、側鎖にフタルイミド基を有することで、紫外/可視光吸収スペクトルにおいて、紫外領域に吸収を有し得る。この、紫外光を吸収するという性質は、ポリエチレンオキサイド等には、ない性質である。本発明のポリアルキレンオキサイドは、紫外光を吸収するという性質を利用して、例えば、基材のUV劣化対策用の保護膜を形成するためのコート剤として用いることができる。
【0077】
また、本発明のポリアルキレンオキサイドは、例えば、N−グリシジルフタルイミドが共重合されていることにより、N−グリシジルフタルイミドが共重合されていないポリアルキレンオキサイドよりも、ガラス転移温度が高いという性質を有する。また、本発明のポリアルキレンオキサイドにおいて、N−グリシジルフタルイミドの共重合比を調整することにより、ガラス転移温度を調整することも可能である。さらに、本発明のポリアルキレンオキサイドにおいて、例えば、前記副構造単位b中にプロピレンオキサイド等を共重合させることで、逆にガラス転移温度を低下させることも可能である。本発明のポリアルキレンオキサイドは、このようにガラス転移温度を自在に調整可能であることにより、例えば、樹脂の技術分野において、前記樹脂の強度、弾性等の物性を調整するための添加剤(樹脂添加剤)として用いることができる。すなわち、本発明のポリアルキレンオキサイドを前記樹脂に添加することで、前記樹脂のガラス転移温度を調整し、これにより、前記樹脂の強度、弾性等の物性をも調整することができる。
【0078】
さらに、本発明のポリアルキレンオキサイドの用途は、コート剤、樹脂添加剤等に限定されず任意であり、例えば、後述する種々の用途を含む広範な技術分野に適用可能である。
【実施例】
【0079】
以下に本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また、以下において、配合量を示す「部」は、重量部を示し、「%」は、「重量%」を示す。
【0080】
[ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量(Mw)]
後述の実施例により合成された各重合物の重量平均分子量(Mw)の測定は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記装置を用いて、下記測定条件下で行った。
装置:製品名「LC−10AD(島津製作所製)」
検出器:示唆屈折率検出器(RID)
カラム:製品名「SHODEX KF−804(昭和電工株式会社製)」
測定温度:30℃
溶離液:THF
流速:1.0ml/min
サンプル濃度:0.2wt%(THF溶液)
サンプル注入量:100μl
換算標準:ポリスチレン
【0081】
[ポリアルキレンオキサイドの共重合比率]
後述の実施例及び比較例により合成された各重合物の共重合比率の測定は、
1H−NMRにより、下記測定条件下で行った。
<測定条件>
機器:製品名「JNM−AL400(日本電子社製)」
観測核:1H
観測範囲:7992.01Hz
データポイント数:32768
パルス幅:5.80μsec
待ち時間:50.00μsec
積算回数:512
測定温度:25℃
測定溶媒:重水素化クロロホルム
試料濃度:0.01g/ml
【0082】
[実施例1(化学式(6)に示す構造単位を有するポリアルキレンオキサイドの合成)]
下記表1に示す共重合比(モル比)でモノマーを用いて特開2006−077039号公報の実施例と同様の条件で共重合させ、白色固体の重合物(ポリアルキレンオキサイド)を得た。具体的には、攪拌機付き耐圧容器(オートクレーブ)中に、窒素雰囲気下で、溶媒(n−ヘキサン)及び重合触媒(有機アルミニウム化合物及びアルカリ金属アルコキシドを含む)を加え、室温(20〜25℃)条件下で攪拌した(工程1)。つぎに、エチレンオキサイド(EO)91.8部及びN−グリシジルフタルイミド(NGPI)9.2部を含む混合溶液を、室温条件下で前記オートクレーブ中に徐々に滴下して重合させた(工程2)。前記各モノマーの混合溶液を全量滴下した後、反応液を室温条件下で反応させた(工程3)。この反応液を濾過し、濾過残渣を真空乾燥機で乾燥させた(工程4)。これにより、白色固体の重合物(ポリアルキレンオキサイド)を得た。
【0083】
得られた重合物(ポリアルキレンオキサイド6)について、GPCにより重量平均分子量を確認した。その結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
[実施例2(化学式(8)に示す構造単位を有するポリアルキレンオキサイドの合成)]
下記表2に示す共重合比(モル比)でモノマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にして白色固体の重合物(ポリアルキレンオキサイド)を得た。具体的な前記モノマーの配合量としては、エチレンオキサイド(EO)89.0部、プロピレンオキサイド(PO)2.4部及びN−グリシジルフタルイミド(NGPI)8.6部を用いた。
【0086】
得られた重合物(ポリアルキレンオキサイド8)について、GPCにより重量平均分子量を確認した。その結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
[実施例3(化学式(10)に示す構造単位を有するポリアルキレンオキサイドの合成)]
下記表3に示す共重合比(モル比)でモノマーを用いたこと、及び重合触媒としてアルカリ金属アルコキシドに代えて臭化物塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にして白色固体の重合物(ポリアルキレンオキサイド)を得た。具体的な前記モノマーの配合量としては、エチレンオキサイド(EO)82.0部、ラウリルグリシジルエーテル(RGE)10.0部及びN−グリシジルフタルイミド(NGPI)8.0部を用いた。
【0089】
得られた重合物(ポリアルキレンオキサイド10)について、GPCにより重量平均分子量を確認した。その結果を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
[実施例4(化学式(11)に示す構造単位を有するポリアルキレンオキサイドの合成)]
下記表4に示す共重合比(モル比)でモノマーを用いたこと以外は、実施例3と同様にして白色固体の重合物(ポリアルキレンオキサイド)を得た。具体的な前記モノマーの配合量としては、エチレンオキサイド(EO)87.0部、アリルグリシジルエーテル(AGE)4.7部及びN−グリシジルフタルイミド(NGPI)8.3部を用いた。
【0092】
得られた重合物(ポリアルキレンオキサイド11)について、GPCにより重量平均分子量を確認した。その結果を表4に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
[実施例5(化学式(6)に示す構造単位を有するポリアルキレンオキサイドの合成)]
下記表5に示す共重合比(モル比)でモノマーを用いて共重合させ、微褐色固体の重合物(ポリアルキレンオキサイド)を得た。具体的には、攪拌機付き耐圧容器(オートクレーブ)中に、窒素雰囲気下で、ポリエチレングリコール(分子量400)及び水酸化カリウムを加え、撹拌しながら80〜100℃の条件下で温度を調整した。つぎに、エチレンオキサイド(EO)88.0部、プロピレンオキサイド1.1部及びN−グリシジルフタルイミド(NGPI)10.9部を含む混合溶液を、反応液を80〜140℃に保ちながら前記オートクレーブ中に徐々に滴下して重合させた(工程2)。前記各モノマーの混合溶液を全量滴下した後、反応液を80〜140℃に保持したまま12時間反応させた(工程3)。反応終了後、90%酢酸を添加して1時間撹拌し、過剰の触媒を失活させた(工程4)。この反応液を容器に取り出して冷却した(工程5)。これにより、微褐色固体の重合物(ポリアルキレンオキサイド6B)を得た。
【0095】
得られた重合物(ポリアルキレンオキサイド1B)について、GPCにより重量平均分子量を確認した。その結果を表5に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
[比較例1(ポリエチレンオキサイドの合成)]
モノマーとしてエチレンオキサイドのみ用いたこと以外は、実施例1と同様にして白色固体の重合物(ポリアルキレンオキサイド)を得た。
【0098】
得られた重合物(ポリアルキレンオキサイド5(ポリエチレンオキサイド))について、GPCにより重量平均分子量を確認した。その結果、重量平均分子量は64,599であった。
【0099】
前記得られた各重合物(ポリアルキレンオキサイド6、8、10、11、及び6B)について、それぞれ
1H−NMRにより共重合率を確認した。測定結果を
図1〜5に示す。
図1は、実施例1により得られたポリアルキレンオキサイド6の
1H−NMRの測定結果を示す。
図2は、実施例2により得られたポリアルキレンオキサイド8の
1H−NMRの測定結果を示す。
図3は、実施例3により得られたポリアルキレンオキサイド10の
1H−NMRの測定結果を示す。
図4は、実施例4により得られたポリアルキレンオキサイド11の
1H−NMRの測定結果を示す。
図5は、実施例5により得られたポリアルキレンオキサイド6Bの
1H−NMRの測定結果を示す。
【0100】
実施例1〜5により得られた各ポリアルキレンオキサイドの構造を下記式(E1)〜(E5)に示す。
【化E1】
【化E2】
【化E3】
【化E4】
【化E5】
【0101】
[実施例6.CNT分散組成物の調製1]
表6における、分散組成物の成分を混合し、室温にてホモミキサー(「TKホモミキサーHV−M(特殊機化製)」を用いて3000〜5000rpmで30分間撹拌した。その後、前記撹拌した溶液を分散機(ダイノミル KDL−Special型 スライドリングシール方式((株)シンマルエンタープライゼス製)、AIMEX ビーズ No.1510(ソーダ系)0.5〜0.8mm(AIMEX(株)製))を用いて、5L/hrの流速で4回処理することにより、実施例6−1〜6−2及び比較例6のCNT分散組成物を得た。
【0102】
実施例6−1〜6−2及び比較例6の前記CNT分散組成物について、(a)分散安定性評価(溶液状態評価)を実施し、実施例6−2の前記CNT分散組成物については、さらに(b)密着性評価を実施した。前記CNT分散組成物の分散安定性が良好であれば、密着性が十分に優れたものになる。
【0103】
〔分散安定性評価〕
実施例6−1〜6−2及び比較例6の分散組成物について、調製してから1週間、室温で静置した。そして、調製してから1週間後の各分散組成物の分散安定性評価を目視により行った。前記目視評価の基準は、下記の基準による。
【0104】
目視評価 評価基準
A: 分離が無く、滑らかな液状であり、凝集物がない
B: 分離が無く、滑らかな液状であるが、一部凝集物が見られる
C: 分散質と分散媒との分離は見られないが、凝集物が多くペースト状である
D: 分散質と分散媒とが分離し、分散媒の透明層が確認できる
【0105】
〔密着性評価〕
前記CNT分散組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(「商品名 テイジンマットフィルム PS」(テイジンデュポンフィルム株式会社製)上にアプリケーター(「ベーカー式アプリケーター(安田精機の製品名)」を用いて塗布し、コーティング膜を作成した。次に、前記PETフィルム(基材)に対するCNTの密着性を評価するために、前記コーティング膜に、養生テープ(「商品名床養生テープ「No.395」{桜色}(日東電工株式会社の製品名)」を貼り付け、テープの上を指で10回押しながら往復させた後、引きはがした。前記引きはがしたテープの状態を目視で評価した。
【0106】
目視評価 評価基準
A :CNTが、テープ側に薄く取れた又は付着しなかった
B :CNTが、テープ側の一部に濃く取れた
C :CNTが、テープ側の全面に濃く付着した
【0107】
実施例6−1〜6−2及び比較例6の分散組成及び各評価結果を表6に示す。
【0108】
【表6】
【0109】
表6に示す通り、側鎖にフタルイミド基を含むポリアルキレンオキサイドを分散剤として用いた実施例6−1〜6−2では、分離が無く、滑らかな液状であり、凝集物がない結果を得た。これに対し、側鎖に芳香族基を含まないポリアルキレンオキサイド5を分散剤として比較例6では、凝集物が多くペースト状であった。以上より、側鎖にフタルイミド基を含むポリアルキレンオキサイドを分散剤として用いれば、優れた分散安定性を示す結果を得た。
【0110】
また、表6に示す通り、本発明の分散組成物をPETフィルム(基材)に対して塗布した場合におけるCNTの密着性も良好な結果を得た。