(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許第4335373号公報所載の給湯設備では、電気温水器の外形寸法が小型化されてはいるが、その電気温水器を洗面器のキャビネットの底板部に設置する構造である。この構造では、車椅子に乗った利用者が洗面器に接近して手洗や洗顔を行おうとしても、車椅子のフットレストが電気温水器に当たってしまうために十分接近することができない。
【0005】
一方、特開2001−32344号公報所載の洗面台では、車椅子に乗った利用者が洗面器に十分接近することができる構造を採るが、電気温水器を設置することについての別段の配慮はない。
実際に電気温水器を設置するに際しては、単に、車椅子に乗った利用者が洗面器に十分接近することができるのみならず、電気温水器のメンテナンス時に容易に取り外すことができることが重要であるが、上記何れの特許文献にもこの点での課題認識を欠く。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、洗面器下部に電気温水器を設置しても、車椅子に乗った利用者が洗面器に十分接近することができ、且つ、メンテナンス時に容易に取り外すことができる電気温水器の設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、ここに次のような技術を提案する。
【0008】
洗面器(例えば、後述の洗面器60)の下方に電気温水器(例えば、後述の電気温水器64)を設置可能な収納区画(例えば、後述の収納区画600)が形成される電気温水器の設置構造であって、
前記収納区画の底面部を構成し且つ床面から所定距離離隔した底板(例えば、後述の底板610)と、
前記収納区画の前面部を構成し且つ取り外し可能な前板(例えば、後述の洗面前板425)と、を備え、
前記底板は、設置された前記電気温水器の下方に、厚み方向に貫通した開口(例えば、後述の開口620)が前記前板側が開放端となるように形成されている電気温水器の設置構造。
【0009】
また、前記収納区画は、内部の高さ寸法(例えば、後述の高さH1とH2との差分よりも小さい限定的な寸法)が、前記電気温水器の設置姿勢における高さ寸法と略等しく構成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記収納区画内に設けられ、前記電気温水器の被吊持部(例えば、後述の被吊持部65)に係合する吊持部(例えば、後述の吊持部630)をさらに備え、
前記吊持部は、前記前板を取り外した状態において、前記電気温水器を吊持した状態から当該吊持部位を中心として前方上方に回動(例えば、後述の
図6の二点鎖線の矢印方向に回動)させることで前記電気温水器を取り外し可能となるように設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記底板は、前記開口を成す少なくとも一つの縁部に臨む一定の領域が、前記電気温水器を載置可能な載置部(例えば、後述の載置部640)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗面器下部に電気温水器を設置しても、車椅子に乗った利用者が洗面器に十分接近することができ、且つ、メンテナンス時に容易に取り外すことができる電気温水器の設置構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳述することにより本発明を明らかにする。
図1は、本発明の実施形態としての電気温水器の設置構造を有するトイレユニットの斜視図である。
トイレユニット1は、車いすに乗った状態で出入りが可能なトイレルームに設置される。このトイレユニット1は、図示の便器10と、汚物流しユニット20と、後方ライニング30と、側方ライニング40と、この側方ライニング40の上面に設けられる手洗器50及び洗面器60と、側方ライニング40の前面40aに配置される操作部70と、可動手すり32と、固定手すり33と、を備える。また、側方ライニング40の内部には、
図1では見えない給水部及び排水部が配置される。
【0015】
便器10は、便器本体11と、この便器本体11の上部に便器本体11に対して開閉可能に取り付けられる便座12と、を含んで構成される。
【0016】
汚物流しユニット20は、便器10の右側方に配置される。汚物流しユニット20は、人工肛門や人工膀胱を造設した使用者が汚物を廃棄する場合等に用いられる。この汚物流しユニット20は、汚物及び洗浄水を受けるボウル部21と、このボウル部21の上方に配置される水栓22、鏡23及び液体せっけん収容容器24と、を備える。
【0017】
後方ライニング30は、便器10及び汚物流しユニット20の後方に配置される。より具体的には、後方ライニング30は、少なくとも前面30a及び上面30bを有する箱状に構成され、平面視における長辺がトイレルームの後方壁面101に沿うように、かつ、短辺がトイレルームの側方壁面102に沿うように配置される。そして、この後方ライニング30の前面30aに、便器10及び汚物流しユニット20が取り付けられる。また、後方ライニング30の前面30aにおける便器10の上方には、背もたれ31が取り付けられる。
【0018】
側方ライニング40は、便器10の左側方に配置される。より具体的には、側方ライニング40は、箱状に構成され、長辺がトイレルームの側方壁面102に沿うように、かつ、短辺が後方ライニング30の前面30aの前側に位置するように配置される。
側方ライニング40の上面はカウンター46として構成される。また、側方ライニング40の前面40aは、複数の前板で構成される。即ち、中央上部前板421と、中央下部前板422と、第1側部前板423と、第2側部前板424と、洗面前板425と、により構成される。
【0019】
また側方ライニング40の、側面は複数の側板で構成される。即ち、手洗側側板431と、洗面側側板432と、により構成される。
側方ライニング40の下部には床面103との間に巾木44が張りめぐらされている。更に、側方ライニング40の下部には、ダストボックス45が設置される区画が設けられ、この区画の前面側は部分的に中央下部前板422で覆われている。中央下部前板422の上辺側に、廃棄物をダストボックス45に投入するための投入用開口450が設けられている。
【0020】
手洗器50は、底部に排水開口51aが形成された手洗ボウル部51と、手洗側水栓52とを有する。
また、洗面器60は、底部に排水開口61aが形成された洗面ボウル部61と、洗面側水栓62と、液体せっけん収容容器63とを有する。
また、操作部70には、便座12の温水の吐出操作を行う操作部71と、ボタンを押すことにより便器10の洗浄操作を行うタッチ操作部72とが備えられている。
タッチ操作部72の下部には、中央上部前板421に紙巻器115が取り付けられる。
側方ライニング40の上面はカウンター46をなしているが、このカウンター46では、手洗器50が設けられた手洗側水平板部464と、洗面器60が設けられた洗面側水平面部465とが、後者の方が低くなるような段差をなして連なっている。
【0021】
図2は、
図1のトイレユニット1における側方ライニング40の正面図である。
図2において、
図1との対応部は同一の符号により示し、これら各部の詳細な説明は省略する。
尚、破線図示のように、側方ライニング40内の中央上部前板421の奥には手洗側電磁弁83が設けられ、第1側部前板423奥には排水部90を構成する手洗側排水管91が設けられている。
図2では、特に、手洗側水平板部464より洗面側水平面部465の方が段差を成して低くなり、洗面側水平面部465の高さがH1であることが示されている。
洗面側水平面部465の高さH1がこのように低く設定されているのは、車椅子に乗ったままの使用者が洗面側水平面部465に腕(肘)を当てて体を支えながら、手洗や洗顔ができるようにするためである。
【0022】
一方、洗面ボウル部61の下方に電気温水器64を設置する収納区画600が、
図1にも表された洗面前板425の後方(奥側)に構成されている。この収納区画600の底部を構成する底板(
図2では水平の線分の如く破線図示)610が床面103から所定距離H2離隔した水準位置を保つように設けられている。ここに、所定距離H2は、車椅子に乗った使用者の下肢の部分が収納区画600に干渉されることなく洗面ボウル部61に十分に近付くことができるだけの高さに相当する距離である。
即ち、この実施形態では、電気温水器64の収納区画600の下方に車椅子に乗った使用者の下肢の部分の進入を許容する高さH2の空間が確保される。
尚、電気温水器64は被吊持部65をその上部に有し、この被吊持部65で後述する吊持部により吊持されている。
【0023】
図3は、
図1及び
図2における洗面器60周りの構造を表す図であり、特に、洗面前板425を開放した様子を表している。
図3において、既述の
図1及び
図2との対応部には同一の符号が附されている。
洗面器60下方の収納区画600は、外形が縦長で小型の小容量のものである等の所定仕様の電気温水器64を設置可能なものであり、複数の縦フレーム411と横フレーム412によって外形が維持されている。
洗面前板425を開放すると底板610で底部側が区画された収納区画600に設置された電気温水器64が露呈する。
底板610の電気温水器64の設置位置に対応する部位には、左側縁部611及び右側縁部612によって左右方向の幅が規定された開口620が設けられ、図示のとおり、この開口620は、洗面前板425側が開放端となっている。
【0024】
図4は、
図3の洗面器60下部に電気温水器64を吊持する構造を表す図である。
電気温水器64は、外形が縦長の柱状で、小型小容量の仕様のものであり、その上部に、給水や出水の配管接続部と共に、金属板の被吊持部65が設けられている。また、図示の電気温水器64は、下部に排水栓64dが設けられており、冬季などにおける不使用時にはこの排水栓64dから排水して凍結を防止する。更に、電気温水器64の下方背面には面ファスナー66aが設けられている。
図2を参照して集合的に表した横フレームのうちの一つである奥側の上側横フレーム412aに電気温水器64の被吊持部65に対応する、金属製のフックである吊持部630が設けられている。また、図示のとおり、上側横フレーム412aと下側横フレーム412bとが設けられ、これら上下の横フレーム間は縦フレーム411によって一定間隔が保たれた構造をなしている。下側横フレーム412bには、電気温水器64の面ファスナー66aに対応する面ファスナー66bが設けられている。
一方、
図3を参照して既述のとおり、底板610の電気温水器64の設置位置に対応する部位には、左側縁部611及び右側縁部612によって左右方向の幅が規定された開口620が設けられている。
図4の状態では、開口620の後方縁を規定する後側縁部613が露呈している。
【0025】
図4では、電気温水器64は、未だ収納区画600の外にあって、取付前の状態である。この状態から、電気温水器64の被吊持部65を、収納区画600内の上述した吊持部630に引っ掛けた上、双方の面ファスナー66a及び66bを接合させる。
本実施形態の設置構造に適用する電気温水器64は、既述のとおり、小型で小容量のものである。従って、電気温水器64の上部に設けられた金属板の被吊持部65を金属製のフックである吊持部630に引っ掛けた上、下部にて面ファスナー66a及び66bで止めるだけの簡単な手法で、耐震性等の見地からも十分に耐力のある設置を行うことができる。
【0026】
図5は、
図3の洗面器60下部における電気温水器64の収納区画600の底板610を表す図である。
底板610には、
図4を参照して既述のとおり、左側縁部611、右側縁部612及び後側縁部613によって規定される開口620が形成され、この開口620の洗面前板425側は開放端である。
底板610における開口620は、底板610上方に設置された電気温水器64下部の板面610aへの投影形状64a(二点鎖線図示)を少なくとも部分的にカバーする形状で底板610の厚み方向に貫通している。
底板610の、開口620よりも奥側の部分、即ち、開口620を成す一つの縁部である後側縁部613を前縁部とする一定の領域は、電気温水器64(その底部の後半部分)を載置可能な載置部640を成している。
底板610の載置部640によって電気温水器64による荷重の一部を分散させて受け、安定して支持でき、且つ、特定の構造部に荷重が集中することが回避されるため、耐久性にも優れる。
【0027】
底板610に上述のような開口620が形成されているため、車椅子に乗った使用者の下肢の部分の進入を許容する高さH2の空間(
図2)を収納区画600の下方に確保しつつ、洗面ボウル部61の洗面側水平面部465の高さH1を、この使用者が手洗や洗顔をすることができる範囲のものに抑制することが可能になる。
即ち、収納区画600の上下の寸法は、高さH1とH2との差分よりも小さい限定的なものであるが、収納区画600電気温水器64を設置したり取り出したりするに際して、上述の開口620が底板610に設けられているため、作業者の手が底板610と干渉するおそれが極小となり、作業性が損なわれない。
【0028】
図6は、
図3の洗面器60下部の収納区画600に設置された電気温水器64の取り出し操作を説明するための図である。
図6は、既述の収納区画600を側面視した場合の模式図であり、
図1から
図5の各図との対応部には同一の符号が附してある。
図6の側面視において、収納区画600は、その前面と底面とが、洗面前板425と底板610とによって画定され、その内部に、電気温水器64が、その被吊持部65の吊持部位(この実施形態では金属板である被吊持部の孔部)630aで吊持部630により吊持されるようにして設置されている。
【0029】
電気温水器64が
図6の姿勢にある場合、洗面前板425を開放すれば、底板610に設けられた既述の開口620を通して、作業者は容易に電気温水器64の底部に手を回すことができる。この状態で、電気温水器64を吊持部位630aを中心として二点鎖線の矢印の如く前方上方に回動させれば、
図4を参照して説明した面ファスナー66a及び66bの接合が解除され、更に回動させれば、吊持部位630aでの吊持も解除される。
上述のような作業を行うに際し、開口620は洗面前板425側に開放されるように形成されているため、電気温水器64を回動させる時に、電気温水器64の下部が底板610に干渉しない。また、洗面前板425自体が開放されていれば、作業する手に干渉するものがなく、作業性が良好である。
更に、電気温水器64の下部が開口620となっていることから、電気温水器64を取り付けたままの状態で、排水栓64dを開栓して水抜き作業を行うことが可能である。
【0030】
また、既述の
図2及び
図3、並びに、
図6を参照して容易に理解されるとおり、収納区画600の上下の寸法は、高さH1とH2との差分よりも小さい限定的なものである。そして、この上下の寸法は、電気温水器64の縦方向の寸法、即ち、設置姿勢における被吊持部65を除く本体部分の高さ寸法に略等しいとも言える程度のものである。
このため、洗面器60の上面(洗面側水平面部465)の高さを、車椅子に乗ったままの使用者に適合する高さH1に抑えつつ、収納区画600の下方には、この使用者のフットレスト上の足部など下肢の部分の進入を許容するだけの空間が確保される。従って、使用者は洗面器60に十分接近して、容易に手洗や洗顔などを行うことができる。
【0031】
以上説明した本実施形態の電気温水器の設置構造によれば、以下のような効果を奏する。
【0032】
電気温水器64を設置する収納区画600は、洗面器60の下方において、当該収納区画600の底板610から床面103までの一定の空間が確保される。このため、例えば、車椅子に乗ったままの使用者が、フットレスト上の足部など下肢の部分を上記の空間に進入させて、洗面器60に十分接近でき、手洗や洗顔などを行うことができる。また、当該収納区画600の底板610には、電気温水器64の下方に、厚み方向に貫通した開口620が形成されている。このため、収納区画の上下寸法を、電気温水器64の設置を可能にする最小限の寸法にしても、電気温水器64を取り出す際に、この開口620が電気温水器64下部を動かす操作を容易にする。
【0033】
特に、電気温水器64の収納区画600は、内部の高さ寸法(
図2の高さH1とH2との差分よりも小さい限定的な寸法)が、電気温水器64の設置姿勢における高さ寸法と略等しい。このため、洗面器60の上面の高さを、車椅子に乗ったままの使用者に適合する高さに抑えつつ、収納区画600の下方には、この使用者のフットレスト上の足部などの下肢の部分の進入を許容するだけの空間が確保される。従って、使用者は洗面器60に十分接近して、容易に手洗や洗顔などを行うことができる。
【0034】
また特に、電気温水器64は収納区画内600に吊持により簡単に保持される。電気温水器64を、このように吊持された姿勢から当該吊持部位630aを中心として前方上方に回動させて前板425が開放された前方に移動させれば吊持が解除される。従って、容易に取り出すことができメンテナンス等に際しての作業性が良好である。
【0035】
また特に、底板610の載置部640によって電気温水器64による荷重の一部を分散させて受け、安定して支持できると共に耐久性にも優れる。