特許第6333154号(P6333154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333154
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】偏心揺動型減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   F16H1/32 A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-223791(P2014-223791)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-89916(P2016-89916A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲三
(72)【発明者】
【氏名】光藤 栄
(72)【発明者】
【氏名】西部 慎一
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−96550(JP,A)
【文献】 特開2013−226880(JP,A)
【文献】 特開2013−210052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸と、該クランク軸の端部に連結されたクランク軸歯車と、を備えた偏心揺動型減速装置であって、
前記クランク軸歯車の軸方向端面に当接して、該クランク軸歯車の前記クランク軸からの脱落を防止する抜け止め部材を有し、
前記クランク軸は、その軸方向端面から軸方向に中空部が形成され、
前記抜け止め部材は、前記クランク軸歯車の軸方向端面に当接する当接部と、弾性的に縮径した状態で前記中空部に挿入されている挿入部と、を有し、
前記挿入部が当接している前記中空部の周面の部分には凹部が形成されていない
ことを特徴とする偏心揺動型減速装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記中空部は、軸方向内側ほど内径が大きくなるよう形成されている
ことを特徴とする偏心揺動型減速装置。
【請求項3】
クランク軸と、該クランク軸の端部に連結されたクランク軸歯車と、を備えた偏心揺動型減速装置であって、
前記クランク軸歯車の軸方向端面に当接して、該クランク軸歯車の前記クランク軸からの脱落を防止する抜け止め部材を有し、
前記クランク軸は、その軸方向端面から軸方向に中空部が形成され、
前記抜け止め部材は、前記クランク軸歯車の軸方向端面に当接する当接部と、該当接部と一体で、前記中空部に挿入されて該中空部内において前記クランク軸に対して固定される挿入部と、を有し、
前記中空部と前記挿入部には、互いに螺合されるねじ部が形成されており、
前記抜け止め部材には、抜け止め部材を回転させる際に使用される工具穴が、前記当接部よりも軸方向外側に突出しないように形成されている
ことを特徴とする偏心揺動型減速装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記挿入部は、第1挿入部と、該第1挿入部よりも軸方向内側に位置し、該第1挿入部よりも外径が小さい第2挿入部とを有し、
前記中空部は、第1中空部と、該第1中空部よりも軸方向内側に位置し、該第1中空部よりも内径が小さい第2中空部とを有し、
前記挿入部は、前記第2挿入部が前記第2中空部に挿入され、前記第1挿入部の軸方向内側の端面が前記第1中空部の底面に当接した状態で前記クランク軸に対して固定される
ことを特徴とする偏心揺動型減速装置。
【請求項5】
クランク軸と、該クランク軸の端部に連結されたクランク軸歯車と、を備えた偏心揺動型減速装置であって、
前記クランク軸歯車の軸方向端面に当接して、該クランク軸歯車の前記クランク軸からの脱落を防止する抜け止め部材を有し、
前記クランク軸は、その軸方向端面から軸方向に中空部が形成され、
前記抜け止め部材は、一部が前記中空部に挿入されて該中空部内においてボルトにより前記クランク軸に対して固定される
ことを特徴とする偏心揺動型減速装置。
【請求項6】
請求項において、
前記ボルトの頭部全体が、前記抜け止め部材の軸方向端面よりも内側に収まっている
ことを特徴とする偏心揺動型減速装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかにおいて、
前記抜け止め部材と前記クランク軸の軸方向端面との間に隙間がある
ことを特徴とする偏心揺動型減速装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかにおいて、
前記クランク軸歯車は、前記抜け止め部材の少なくとも一部を径方向内側に収納する収納部を有し、当該クランク軸歯車の軸方向端面よりも軸方向内側に前記抜け止め部材との当接面を有する
ことを特徴とする偏心揺動型減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心揺動型減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、振り分けタイプと称される偏心揺動型の減速装置が開示されている。この減速装置は、内歯歯車の軸心からオフセットした位置に配置された複数のクランク軸を備え、クランク軸歯車によって各クランク軸を同期して駆動することにより、外歯歯車を揺動させながら内歯歯車に内接噛合させている。
【0003】
各クランク軸は、外歯歯車の軸方向両側に配置された一対のキャリヤに支持されている。クランク軸は、その一部が、キャリヤから軸方向反外歯歯車側に突出している。クランク軸を駆動するために、このキャリヤから軸方向に突出したクランク軸の端部に、前記クランク軸歯車がスプライン連結されている。
【0004】
特許文献1では、クランク軸歯車が、クランク軸から脱落するのを防止するために、抜け止め部材として、クランク軸に形成した止め輪溝に嵌め込まれた止め輪を備えている。クランク軸歯車は、軸方向反キャリヤ側端面に該止め輪が当接されることによって、クランク軸から脱落するのが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−92249号公報(図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、止め輪溝に嵌め込んだ止め輪によってクランク軸から脱落するのを防止するようにしていたため、クランク軸は、クランク軸歯車の軸方向端面よりもさらに外側に、止め輪溝を形成するための軸方向スペースが必要であり、その分、偏心揺動型減速装置の軸方向長さが大きくなってしまう、という問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、軸方向長さを、より短縮することのできる偏心揺動型減速装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、クランク軸と、該クランク軸の端部に連結されたクランク軸歯車と、を備えた偏心揺動型減速装置であって、前記クランク軸歯車の軸方向端面に当接して、該クランク軸歯車の前記クランク軸からの脱落を防止する抜け止め部材を有し、前記クランク軸は、その軸方向端面から軸方向に中空部が形成され、前記抜け止め部材は、一部が前記中空部に挿入されて該中空部内において前記クランク軸に対して固定される構成とすることにより、上記課題を解決したものである。
【0009】
本発明においては、クランク軸は、軸方向端面から軸方向に中空部が形成されている。抜け止め部材は、一部がこの中空部に挿入され、該中空部内においてクランク軸に対して固定される。そのため、クランク軸がクランク軸歯車の軸方向端面よりも軸方向に突出する長さをより短縮することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軸方向長さを、より短縮することのできる偏心揺動型減速装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の一例に係る偏心揺動型の減速装置の全体断面図
図2図1の要部断面図
図3】本発明の他の実施形態の一例に係る要部断面図
図4】本発明のさらに他の実施形態の一例に係る要部断面図
図5】本発明のさらに他の実施形態の一例に係る要部断面図
図6】本発明のさらに他の実施形態の一例に係る要部断面図
図7】本発明のさらに他の実施形態の一例に係る要部断面図
図8】本発明のさらに他の実施形態の一例に係る要部断面図
図9】本発明のさらに他の実施形態の一例に係る要部断面図
図10】本発明のさらに他の実施形態の一例に係る要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態の一例に係る偏心揺動型の減速装置10の全体断面図、図2は、図1の要部断面図である。
【0014】
先ず、この偏心揺動型の減速装置10の全体構成から説明する。
【0015】
減速装置10は、振り分けタイプと称される偏心揺動型減速装置である。この減速装置10は、第1、第2外歯歯車12、13、内歯歯車14、および内歯歯車14の軸心C14からオフセットした位置に配置された複数のクランク軸16を備える。各クランク軸16は、クランク軸歯車18によって同期して駆動され、これにより第1、第2外歯歯車12、13を揺動させながら内歯歯車14に内接噛合させている。
【0016】
以下、詳述する。
【0017】
減速装置10は、図示せぬ入力軸に設けられた入力歯車と噛み合うクランク軸歯車18を、複数(この例では3個:図1では1個のみ図示)備えている。
【0018】
各クランク軸歯車18は、クランク軸16とスプライン連結されている。クランク軸16とクランク軸歯車18の連結部の具体的な構成については、後に詳述する。
【0019】
クランク軸16は、内歯歯車14の軸心C14からR16だけオフセットした位置に、複数(この例では3本:図1では1本のみ図示)、円周方向に120度の間隔で配置されている。
【0020】
各クランク軸16には、軸方向同位置に、該クランク軸16の軸心C16に対して偏心した外周を有する第1偏心部24が形成されている。また、該第1偏心部24と隣接してそれぞれのクランク軸16の軸方向同位置に、軸心C16に対して偏心した外周を有する第2偏心部26が形成されている。各クランク軸16の第1偏心部24同士、および第2偏心部26同士は、偏心位相が揃えられている。第1偏心部24と第2偏心部26の偏心位相差は、この例では180度である(互いに離反する方向に偏心している)。
【0021】
各クランク軸16の第1偏心部24の外周には、第1ころ28を介して第1外歯歯車12が組み込まれている。各クランク軸16の第2偏心部26の外周には、第2ころ30を介して第2外歯歯車13が組み込まれている。
【0022】
これにより、3本のクランク軸16上の第1偏心部24が同期して回転することで第1外歯歯車12を揺動させ、同様に、3本のクランク軸16上の第2偏心部26が同期して回転することで第2外歯歯車13を揺動させることができる。
【0023】
第1外歯歯車12および第2外歯歯車13は、内歯歯車14に内接噛合している。内歯歯車14は、この実施形態では、ケーシング52と一体化された内歯歯車本体14Aと、該内歯歯車本体14Aに回転自在に組み込まれ、該内歯歯車14の内歯を構成するピン部材14Bとで構成されている。内歯歯車14の歯数(ピン部材14Bの本数)は、第1外歯歯車12および第2外歯歯車13の歯数よりも僅かだけ(この例では1だけ)多い。
【0024】
第1外歯歯車12および第2外歯歯車13の軸方向両側には、第1キャリヤ36および第2キャリヤ38が配置されている。各クランク軸16は、一対のころ軸受40、42を介して第1キャリヤ36および第2キャリヤ38に支持されている。ころ軸受40、42は、止め輪69、および押さえ板71によって軸方向の移動が規制されている。第1キャリヤ36および第2キャリヤ38は、背面合わせで組み込まれた一対のアンギュラころ軸受44、46を介してケーシング52に支持されている。
【0025】
なお、第2キャリヤ38からは、キャリヤピン48が一体的に突出されている。キャリヤピン48は、第1外歯歯車12および第2外歯歯車13を非接触で貫通している。第1キャリヤ36と第2キャリヤ38は、キャリヤピン48を介して連結ボルト50により連結・一体化されている。
【0026】
本実施形態では、ケーシング52にはボルト(ボルト孔54のみ図示)を介してロボットの第1アーム(図示略)が連結される。また、第2キャリヤ38にはボルト(タップ穴56のみ図示)を介してロボットの第2アーム(図示略)が連結される。なお、ケーシング52と第2キャリヤ38との間には、オイルシール58が配置されている。
【0027】
次に、主に図2を参照して、クランク軸歯車18とクランク軸16の連結部の構成について、詳細に説明する。
【0028】
クランク軸16は、減速装置10の第1キャリヤ36の軸方向外側(第1キャリヤ36から軸方向に離れる側)に突出している。この第1キャリヤ36から突出されたクランク軸16の端部16Aの外周に、外歯スプライン60が形成されている。
【0029】
また、クランク軸歯車18は、径方向中央に貫通孔18Pを有し、該貫通孔18Pの内周に、外歯スプライン60と噛合する内歯スプライン62が形成されている。クランク軸16とクランク軸歯車18は、この外歯スプライン60と内歯スプライン62の噛合によって、動力伝達可能に連結されている。
【0030】
外歯スプライン60は、クランク軸16の端部16Aから軸方向第1キャリヤ側(以降、単にキャリヤ側と称す)に向かって、第1の特定の位置60Sまでは形成深さ(外歯スプライン60の歯丈)が均一である。外歯スプライン60は、該第1の特定の位置60Sから徐々に形成深さが浅くなる(歯丈が小さくなる)切り上がり部60Cを経て、第2の特定の位置60Eで形成深さが零となっている。
【0031】
第1の特定の位置60Sの近傍に、周方向に一周する止め輪溝64が形成されている。止め輪溝64には、止め輪66が係合している。止め輪66は、クランク軸歯車18のキャリヤ側端面18Xと当接することにより、クランク軸歯車18のキャリヤ側への移動を規制している。
【0032】
クランク軸16には、軸方向端面16Bから軸方向に中空部80が形成されている。中空部80は、この図1および図2の例では、クランク軸16の軸心C16と同軸に円柱状に穿設されている。中空部80の内径はD80、軸方向厚さはH80である。また、該中空部80の底面(キャリヤ側の面)82の径方向中央部には、タップ穴84が形成されている。
【0033】
一方、この減速装置10は、クランク軸歯車18のクランク軸16からの脱落を防止する抜け止め部材70を有している。抜け止め部材70は、クランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yに「当接」することにより、該クランク軸歯車18の脱落を防止している。なお、ここでの「当接」には、この例のように、抜け止め部材70とクランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yとが直接当接する場合だけでなく、間にスペーサ等が介在され、該スペーサ等を介して当接する場合も含まれる。
【0034】
具体的には、抜け止め部材70は、中空部80に挿入される有底の円筒部72と、該円筒部72の軸方向端部(底部と反対側の開口側端部)から径方向外側に延在されたフランジ部74と、を有している。円筒部72の外径d72は、中空部80の内径D80よりも僅かだけ小さい(D80>d72)。フランジ部74の外径d74は、クランク軸歯車18の内歯スプライン62の歯底円径D62よりも大きい(d74>D62)。つまり、フランジ部74のキャリヤ側端面74Xの一部は、(外径d74と歯底円径D62との差の分だけ)クランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yと当接している。フランジ部74の軸方向厚さは、H74である。
【0035】
また、抜け止め部材70には、クランク軸16の軸心C16と同軸に、フランジ部74側から円柱状のボルト収容凹部76が、軸方向に穿設されている。つまり、円筒部72の内側空間がボルト収容凹部76とされている。さらに、抜け止め部材70(の底部)には、クランク軸16の軸心C16と同軸に、ボルト収容凹部76の側からキャリヤ側に貫通するボルト挿通孔78が形成されている。
【0036】
要するならば、抜け止め部材70は、円筒部72がクランク軸16の中空部80に挿入され、フランジ部74のキャリヤ側端面74Xが、クランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yと当接する態様で、クランク軸16の端部16Aに組み込まれている。そして、抜け止め部材70は、この状態で、円筒部72(の底部)のボルト挿通孔78を貫通してクランク軸16のタップ穴84にねじ込まれたボルト90によって、中空部80内でクランク軸16に対して固定されている。
【0037】
ボルト90は、頭部92全体が抜け止め部材70のフランジ部74の反キャリヤ側端面74Yよりも軸方向内側に収まっている。つまり、抜け止め部材70のフランジ部74が、クランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yより軸方向外側に最も突出している部分となる。なお、本実施形態においては、ボルト90の頭部92は、クランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yやクランク軸16の軸方向端面16Bよりも軸方向内側に位置しているが、該頭部92は、フランジ部74の反キャリヤ側端面74Yよりも軸方向内側にあれば、クランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yやクランク軸16の軸方向端面16Bよりも軸方向外側に張り出していてもよい。なお、符号91は、ボルト90を回転させるために使用する六角穴である。
【0038】
なお、この実施形態では、クランク軸16の軸方向端面16Bは、クランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yよりも軸方向内側に位置している。換言するならば、抜け止め部材70がクランク軸16の中空部80に固定されたときに、該抜け止め部材70のフランジ部74のキャリヤ側端面74Xとクランク軸16の軸方向端面16Bとの間には、隙間δ(16B−74X)が存在している。また、円筒部72(の底部)のキャリヤ側端面73と中空部80の底面82との間には、隙間δ(73−82)が存在している。
【0039】
次に、この偏心揺動型の減速装置10の作用を設明する。
【0040】
始めに、減速装置10の減速作用から説明する。
【0041】
図示せぬ入力歯車が回転すると、該入力歯車と同時に噛合している3個のクランク軸歯車18が同一の方向に同一の回転速度で回転する。
【0042】
各クランク軸歯車18は、それぞれクランク軸歯車18の内歯スプライン62およびクランク軸16の外歯スプライン60の噛合を介して、クランク軸16と連結されている。そのため、3本のクランク軸16が同一の方向に同一の回転速度で回転する。その結果、クランク軸16の軸方向同位置にそれぞれ形成された3個の第1偏心部24が同期して回転して第1外歯歯車12を揺動させると共に、クランク軸16の軸方向同位置にそれぞれ形成された3個の第2偏心部26が同期して回転して第2外歯歯車13を揺動させる。
【0043】
第1外歯歯車12および第2外歯歯車13は、それぞれ内歯歯車14に内接噛合している。このため、各外歯歯車12、13が1回揺動する毎に、第1外歯歯車12および第2外歯歯車13は、内歯歯車14に対して歯数差分(この実施形態では1歯分)円周方向の位相がずれる(自転する)。この自転は、各クランク軸16の内歯歯車14の軸心C14の周りの公転として第1キャリヤ36および第2キャリヤ38に伝達される。
【0044】
第1キャリヤ36および第2キャリヤ38は、第1キャリヤ36と一体化されたキャリヤピン48および連結ボルト50を介して互いに連結されている。これにより、ケーシング52に連結された第1アームに対して、第2キャリヤ38に連結された第2アームを相対的に回転させることができる。
【0045】
次に、クランク軸歯車18とクランク軸16の連結部の作用について、詳細に説明する。
【0046】
本実施形態において、クランク軸歯車18をクランク軸16に組み込むときは、先ず、クランク軸16の止め輪溝64に止め輪66を係合させる。そして、クランク軸歯車18の内歯スプライン62を、クランク軸16の外歯スプライン60と噛合させ、そのままクランク軸歯車18を軸方向内側(キャリヤ側)に移動させる。この移動により、クランク軸歯車18のキャリヤ側端面18Xは、止め輪66に当接し、クランク軸歯車18のそれ以上のキャリヤ側への移動が規制される。
【0047】
次に、抜け止め部材70の円筒部72をクランク軸16の中空部80に挿入し、該抜け止め部材70のフランジ部74のキャリヤ側端面74Xをクランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yに当接させる。そして、この状態でボルト90を、ボルト収容凹部76側からボルト挿通孔78を貫通してクランク軸16のタップ穴84にねじ込み、抜け止め部材70を中空部80内においてクランク軸16に固定する。これにより、抜け止め部材70のフランジ部74によって、クランク軸歯車18の反キャリヤ側への移動が規制され、クランク軸歯車18のクランク軸16からの脱落が防止される。
【0048】
ボルト90の頭部92は、全体が抜け止め部材70のフランジ部74の反キャリヤ側端面74Yよりも軸方向内側に収まっているため、結局、クランク軸歯車18の軸方向端面よりも軸方向外側に存在しているのは、抜け止め部材70の(軸方向厚さがH74の)フランジ部74のみである。そのため、従来のクランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yを止め輪で規制していた構成と比べて、減速装置10の軸方向長さを、より短縮することができる。
【0049】
なお、この実施形態では、円筒部72のキャリヤ側端面73と中空部80の底面82との間には、隙間δ(73−82)が存在している。そのため、抜け止め部材70の円筒部72はクランク軸16の中空部80の底面82に当たることはない。また、クランク軸16の軸方向端面16Bは、クランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yよりもキャリヤ側に位置している。そのため、クランク軸16の軸方向端面16Bと抜け止め部材70のフランジ部74のキャリヤ側端面74Xとの間には隙間δ(16B−74X)が確保されている。したがって、抜け止め部材70のフランジ部74は、(製造誤差等に起因するばらつきに関わらず)必ずクランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yに、がたなく当接することができる。つまり、クランク軸歯車18を、止め輪66とフランジ部74とにより、がたなく挟み込むことができる。
【0050】
ただし、これらの隙間を確保する構成は、必ずしも必須の構成ではない。逆に、敢えてこれらの隙間を設けず、抜け止め部材の固定によって、過度の挟持圧力がクランク軸歯車に掛からないような構成としてもよい(例えば、後述する図7の構成例参照)。
【0051】
図3図10に、本発明の他の実施形態の例を示す。
【0052】
先の図1および図2の実施形態では、クランク軸と抜け止め部材との固定に当たって、抜け止め部材が、中空部内において、ボルトによりクランク軸に固定されていた。
【0053】
しかし、クランク軸と抜け止め部材との固定に当たっては、抜け止め部材が、係合部を有し、かつ、クランク軸の中空部に、該係合部と係合して抜け止め部材の軸方向の移動を規制する被係合部が設けられている構成を採用することができる。図3図4の実施形態が、この構成の適用例に相当している。
【0054】
以下、より具体的に説明する。なお、以下では、同一または類似する機能を有する部材、あるいは部位には、下2桁が同一の符号を付すこととし、重複説明は、適宜省略する。
【0055】
図3の構成例では、抜け止め部材170は、全体が比較的薄いほぼ均一の厚さの部材で構成されている。抜け止め部材170は、リング状のフランジ部174と、該フランジ部174の内周端部から軸方向に延在され、中空部180に挿入される一対の挿入部172とを有する。一対の挿入部172は、軸直角断面が円弧状とされ、それぞれが約60度程度の中心角の範囲に形成され、対向して配置されている。挿入部172は、「弾性」を有し、先端部が径方向に縮小変形(縮径)可能である。なお、挿入部の弾性によっては、該挿入部の形状は、360度全周に形成された筒状であってもよい。
【0056】
本実施形態では、この縮小変形可能とされた挿入部172の先端部に、外径が大きく形成された凸部(係合部)173が設けられている。抜け止め部材170のフランジ部174によってクランク軸歯車18の軸方向移動が規制される構成については、先の実施形態と同様である。
【0057】
図3の構成例では、クランク軸116の中空部180に、該凸部173と係合して抜け止め部材170の軸方向の移動を規制する凹部(被係合部)183が形成されている。凹部183は、軸と平行の断面形状が矩形である。凹部183は、クランク軸116の中空部180の内周を、周方向に一周して形成されている。
【0058】
抜け止め部材170は、中空部180内において、挿入部172(凸部173の近傍)が、径方向に縮小変形された状態で挿入される。抜け止め部材170は、凸部173がクランク軸116の中空部180の凹部183に係合することによって縮小変形から解放されて復径し、クランク軸116に固定される。
【0059】
抜け止め部材170の挿入部172の自然径(組み込む前の外径)は、凹部183との係合後の外径と同一でもよく、該係合後の外径よりも大きくてもよい。抜け止め部材170の挿入部172の自然径が凹部183との係合後の外径よりも大きい場合には、凸部(係合部)173と凹部(被係合部)183との間に、より強く係合しようとする弾性付勢力を発生させることができる。
【0060】
図4は、図3の変形例である。抜け止め部材170は、図3と同一である。クランク軸216の中空部280の内周に、被係合部として、突起部283が形成されている。抜け止め部材170は、凸部(係合部)173が、クランク軸216の該突起部(被係合部)283と係合し、中空部280内でクランク軸216に固定される。
【0061】
具体的には、突起部283の軸と平行の断面形状は、抜け止め部材170の挿入側(反キャリヤ側)に緩い傾斜面284を有する台形とされている。抜け止め部材170の挿入部172は、中空部280内において、凸部173が、縮小変形された状態で(あるいは非変形の自然径のままの状態で)挿入される。凸部173は、中空部280の突起部283の傾斜面284によって強く縮小変形され、該突起部283のキャリヤ側で復径して該突起部283と係合する。これにより、抜け止め部材170は、中空部280内でクランク軸216に固定される。
【0062】
なお、この図3図4の例でも明らかなように、「係合部」および「被係合部」の用語は、互いに係合する2つの部分の単なる相対的な呼称であって、凹凸等の形状の概念とは、関係しない。換言するならば、いずれを係合部と捉えてもよく、係合部と捉えられた相手側が被係合部となる。つまり、「抜け止め部材は、係合部を有し、クランク軸の中空部に、該係合部と係合して抜け止め部材の軸方向の移動を規制する被係合部が設けられている」という構成は、「クランク軸が係合部を有し、抜け止め部材に、該係合部と係合して抜け止め部材の軸方向の移動を規制する被係合部が設けられている」という構成と同義である。
【0063】
図3図4の構成例では、いずれも抜け止め部材170の挿入部172を、クランク軸116、216の中空部180、280に押し込むだけで固定が完了する。そのため、ボルトによる固定作業が不要であり、部品点数を削減できると共に、固定工数を削減できる。
【0064】
図3の構成例のように、中空部180の被係合部(係合部)が、(より内径が大きい)凹部183によって構成されていると、係合が完了した状態での中空部180の内径D180と抜け止め部材170の挿入部172の外径d172との差を、ほぼ零に設定することができる(D180≒d172に設定できる)。このため、図4の構成例と比べて、より安定した固定状態を維持する設計がし易い。
【0065】
一方、図4の構成例のように、中空部280の被係合部(係合部)が、(内径がより小さい)突起部283によって構成されていると、抜け止め部材170の挿入部172を中空部280内に挿入したときに、該挿入部172の凸部173が、傾斜面284を乗り越えて中空部280の突起部283に係合したことを、より確実に感知することができる。
【0066】
なお、図4の構成例においては、クランク軸歯車18のキャリヤ側への移動を規制する止め輪(図1図2の実施形態の止め輪66)が設けられていない。つまり、図4の構成例においては、外歯スプライン260の形成深さが徐々に浅くなっていく(歯丈が徐々に小さくなっていく)切り上がり部260Cに、クランク軸歯車18の内歯スプライン62を当接させている。つまり、該切り上がり部260Cでの内歯スプライン62と外歯スプライン260との当接により、クランク軸歯車18のキャリヤ側への移動を規制している。これにより、止め輪溝の形成工程および止め輪の嵌め込み工程を省略することができ、加工工数の低減、および部品点数の低減を図っている。
【0067】
クランク軸歯車のキャリヤ側への移動を規制するために、このような内歯スプラインと外歯スプラインとの当接を活用する構成は、図4の構成例だけでなく、図1図10の全ての構成例においても、同様に採用することができる(図5図8に、実際に採用している)。
【0068】
なお、図1図2の実施形態で説明した「抜け止め部材とクランク軸の軸方向端面との間に隙間がある構成(あるいは隙間を持たない構成)」は、図3図4にも同様に適用可能であり、既に説明した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。さらには、図5以降の実施形態にも適用可能である。
【0069】
なお、クランク軸と抜け止め部材との固定に当たっては、これまでも、係合時に抜け止め部材の弾性付勢力を利用する構成例を説明してきたが、抜け止め部材の弾性付勢力によって固定することも可能である。図5図6の実施形態が、この構成の適用例に相当している。
【0070】
図5の構成例では、クランク軸316の中空部380が、開口端部380Pにおいて内径D380Pが小さく、かつ軸方向奥側端部380Qにおいて内径D380Qが大きい傾斜面383を有する形状に形成されている(D380P<D380Q)。
【0071】
抜け止め部材370は、リング状のフランジ部374と、該フランジ部374の内周端部から軸方向に延在され、中空部380に挿入される一対の挿入部372とを有し、全体の概略形状は、先の図3図4の実施形態と同様である。ただし、図3図4の凸部173は、軸方向に大きな長さを有する当接面373に変更されている。抜け止め部材370は、挿入時に、強く縮小変形された状態で中空部380に挿入され、軸方向奥側に挿入されるにしたがって復径してゆく態様で、組み込まれる。これにより、抜け止め部材370は、該抜け止め部材370の弾性付勢力によって、当接面373が中空部380の傾斜面383に強く押圧されることで、中空部380内においてクランク軸316に固定される。なお、この図5の構成例においても、挿入部(372)の弾性によっては、該挿入部の形状は、360度全周に形成された筒状であってもよい。
【0072】
図5の構成例では、抜け止め部材370は、中空部380の傾斜面383と軸方向に大きな長さを有する当接面373を介して当接しており、抜け止め部材370の固定時の安定性が高い。また、抜け止め部材370がクランク軸316から離脱しようとすればするほど、該抜け止め部材370は、より強い縮径反力をクランク軸316側から得ることができる。そのため、抜け止め部材370自体が脱落しにくい、という効果も得られる。
【0073】
図6の構成例は、図5の変形例に相当している。クランク軸416の中空部480の形状は、円筒状とされ、軸方向各部において内径D480が同一である。挿入前における抜け止め部材370の当接面373の外径は、クランク軸416の中空部480の内径D480より大きい。抜け止め部材370は、挿入時に、縮径された状態でクランク軸416の中空部480に挿入され、縮小変形の弾性復元力のみを利用して、中空部480においてクランク軸416に固定される。この図6の構成例は、コストが低く、抜け止め部材370の装着も簡易であるというメリットが得られる。
【0074】
さらに、クランク軸と抜け止め部材との固定に当たっては、抜け止め部材に雄ねじ部を形成すると共に、クランク軸に該雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を形成し、該雌ねじ部と雄ねじ部とを螺合させる構成を採用することもできる。図7および図8の実施形態が、この構成の適用例に相当している。
【0075】
図7の構成例では、抜け止め部材570の円筒部572は、第1円筒部572Aと該第1円筒部572Aよりも外径が小さい第2円筒部572Bを有している。第2円筒部572Bの外周には、雄ねじ部577が形成されている。抜け止め部材570のフランジ部574は、第1円筒部572Aの反キャリヤ側端部から径方向外側に延在し、クランク軸歯車18の反キャリヤ側端面18Yと当接している。
【0076】
また、クランク軸516の中空部580は、前記第1円筒部572Aの外側に位置する第1中空部580Aと、前記第2円筒部572Bの雄ねじ部577と螺合する雌ねじ部581が形成された第2中空部580Bを有している。
【0077】
抜け止め部材570は、雄ねじ部577と雌ねじ部581との螺合によって、中空部580内でクランク軸516に固定される。なお、符号585は、抜け止め部材570を回転させる際に使用する六角穴である。
【0078】
なお、図7の構成例では、抜け止め部材570のフランジ部574の、クランク軸516およびクランク軸歯車18に対する軸方向位置が、第1、第2円筒部572A、572Bの段差部571と、第1、第2中空部580A、580Bの段差部584との当接によって規定される。このため、雄ねじ部577と雌ねじ部581との螺合によって、クランク軸歯車18に過度の締め付け力が掛かるのを防止することができる。
【0079】
一方、図8の構成例では、抜け止め部材670は、雄ねじ部677の形成された円筒部672と、該円筒部672の反キャリヤ側端部から径方向外側に延在されたフランジ部674を有している。抜け止め部材670は、該円筒部672に形成された雄ねじ部677とクランク軸616の中空部680の内周に形成された雌ねじ部681との螺合によって、中空部680内でクランク軸616に固定される。
【0080】
図8の構成例は、図7の構成例と比較して、構造が簡易であり、加工コストおよび部品点数の低減が可能である。
【0081】
なお、以上説明したような固定構造の他、例えば、抜け止め部材の一部をクランク軸の中空部に圧入する、という固定構造を採用してもよい。さらには、中空部と抜け止め部材の当接部に塗布した接着剤によって、抜け止め部材をクランク軸の中空部に固定するようにしてもよい。接着剤による固定は、他の固定構造と併用してもよいし、単独で採用してもよい。要するに、クランク軸と抜け止め部材との具体的な固定構造は、特に限定されない。
【0082】
図9および図10の構成例は、それぞれ図2図3の構成に対して、クランク軸歯車が、抜け止め部材の少なくとも一部を径方向内側に収納する収納部(718Z、818Z)を有する構成、あるいは、前記クランク軸歯車が、その軸方向端面よりも軸方向内側に抜け止め部材との当接面(719、819)を有する構成を採用したものである。
【0083】
より具体的には、図9では、クランク軸歯車718は、反キャリヤ側端面718Yよりも軸方向内側に抜け止め部材770の当接する当接面719を有する。当接面719は、クランク軸16の軸心C16とθ719をなす角度で直線的に形成されている。そして、クランク軸歯車718の反キャリヤ側端面718Y(を延長した面)と当接面719との間の空間が、抜け止め部材770の少なくとも一部(この例では全部)を径方向内側に収納する収納部718Zを構成している。
【0084】
図10では、クランク軸歯車818は、反キャリヤ側端面818Yより軸方向内側に抜け止め部材170の当接する当接面819を有する。当接面819は、軸と直角の面で構成されている。そして、クランク軸歯車818の反キャリヤ側端面818Y(を延長した面)と当接面819との間の空間が、抜け止め部材170の少なくとも一部(この例でも全部)を径方向内側に収納する収納部818Zを構成している。つまり、この例では、抜け止め部材170のフランジ部174の軸方向厚さH174に相当する分だけ、クランク軸歯車818に、該クランク軸116の軸心C116と同軸に収容部818Zが形成されている。
【0085】
これにより、抜け止め部材770、170のクランク軸歯車718、818の軸方向移動を規制するフランジ部714、174の少なくとも一部(図9図10では全部)が、径方向から見たときにクランク軸歯車718、818と重なっている状態を形成することができる。したがって、この重なった分、減速装置全体の軸方向長さを、さらに短縮することができる。
【0086】
特に、図9図10の構成例の場合、フランジ部714、174の全てが径方向から見たときにクランク軸歯車718、818と重なっているため、抜け止め部材770、170の全体を、クランク軸歯車718、818の反キャリヤ側端面718Y、818Yの内側に完全に収めることができている。
【0087】
なお、本実施形態においては、抜け止め部材のフランジ部の軸方向全長をクランク軸歯車に収納しているが、フランジ部の一部のみをクランク軸歯車に収納し、フランジ部がクランク軸歯車の端面から一部突出するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態においては、クランク軸とクランク軸歯車との連結を、外歯スプラインと内歯スプラインの噛合によるスプライン連結によって行うようにしていた。しかしながら、クランク軸とクランク軸歯車との連結は、スプライン連結に限定されない。例えば、キーによる連結であってもよく、あるいは、クランク軸の連結部での断面形状を多角形とし、クランク軸歯車の内周を該多角形に対応した形状とした連結であってもよい。要するに、クランク軸とクランク軸歯車との連結は、周方向に結合すると共に、クランク軸歯車が軸方向に移動可能な連結であれば、具体的な連結構造は問われない。
【0089】
また、上記実施形態においては、クランク軸が内歯歯車の軸心からオフセットされた位置に複数備えられた振り分けタイプの偏心揺動型減速装置が例示されていた。しかし、偏心揺動型減速装置には、クランク軸を内歯歯車の軸心位置に一本のみ有する(いわゆるセンタクランクタイプの)偏心揺動型減速装置も知られている。本発明は、このようなセンタクランクタイプの偏心揺動型減速装置においても、該減速装置がクランク軸と、該クランク軸の端部に連結されたクランク軸歯車とを備えた構造を有している限り、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
10…減速装置
12、13…第1、第2外歯歯車
14…内歯歯車
16…クランク軸
16A…クランク軸の端部
16B…クランク軸の軸方向端面
18…クランク軸歯車
70…抜け止め部材
74…フランジ部
80…中空部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10