【文献】
松村欣司 他,放送と同期したIPストリーミングによる番組拡張サービスの試作,2010年映像情報メディア学会年次大会講演予稿集,日本,社団法人映像情報メディア学会,2010年 8月 2日,10-5
【文献】
松村欣司 他,Hybridcastの概要と技術,NHK技研R&D,日本,日本放送協会 放送技術研究所,2010年11月15日,No.124,p.10-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
互いに同期して再生されるべき2つの映像ストリームを放送とインターネットとに分けて伝送する場合、それぞれの伝送方式の特性の違いによる2つの映像ストリームの受信タイミングがずれが発生した場合、特にインターネット経由のストリームが放送経由のストリームに対して遅れ、その遅れの量が放送受信側のバッファで吸収できない程度である場合には、同期再生が困難になることが想定される。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、互いに同期して再生されるべき2つの映像ストリームを放送とインターネットとに分けて伝送する場合のそれぞれの同期再生を良好に行うことのできる受信装置およびその同期処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本技術に係る受信装置は、それぞれ時刻参照値が付加され、互いに同期して再生されるべき複数の映像のうち一方を放送ストリームとして放送を通じて受信可能な放送受信部と、前記複数の映像のうち他方を通信ストリームとしてネットワークを通じて受信可能な通信受信部と、前記放送ストリームに含まれる前記時刻参照値をもとに、前記複数の映像を提示するタイミングを生成するための基準時刻を生成する基準時刻生成部と、前記基準時刻に対する前記通信ストリームの前記時刻参照値の遅れ量で前記基準時刻を調整する調整部とを具備する。
【0008】
この受信装置では、調整部が、放送ストリームに含まれる時刻参照値をもとに設定される基準時刻を、この基準時刻に対する通信ストリームの時刻参照値の遅れ量で調整する。これにより、通信ストリームが放送ストリームに対して遅れて受信された場合でも、各ストリームを同期再生することができる。
【0009】
前記調整部は、前記通信受信部によって最初に受信された前記通信ストリームの前記時刻参照値の前記遅れ量で前記基準時刻を調整するものであってよい。
【0010】
前記放送ストリームおよび前記通信ストリームには所定の単位毎の提示時刻情報が付加され、前記受信装置は、前記放送受信部により受信された前記放送ストリームを、当該放送ストリームに付加された前記提示時刻情報と前記基準時刻とが一致したタイミンクで前記一方の映像が提示されるようにデコードする放送受信用の映像デコーダと、前記通信受信部により受信された前記通信ストリームを、当該通信ストリームに付加された前記提示時刻情報と前記基準時刻とが一致したタイミンクで前記他方の映像が提示されるようにデコードする放送受信用の映像デコーダと、前記放送受信用の映像デコーダおよび前記通信受信用の映像デコーダによりそれぞれデコードされた複数の映像をマージする映像マージャとをさらに具備するものであってよい。
【0011】
前記調整部は、前記通信受信部によって受信された一定期間内の前記通信ストリームの前記時刻参照値の前記遅れ量の平均値に所定のマージンを付加した値で前記基準時刻を調整するものであってよい。
【0012】
前記放送ストリームおよび前記通信ストリームのうち前記放送ストリームにのみ所定の単位毎の提示時刻情報が付加され、前記受信装置は、前記放送受信部により受信された前記放送ストリームを、当該放送ストリームに付加された前記提示時刻情報と前記基準時刻とが一致したタイミンクで前記一方の映像が提示されるようにデコードする放送受信用の映像デコーダと、前記通信受信部により受信された前記通信ストリームをデコードする放送受信用の映像デコーダと、前記放送受信用の映像デコーダおよび前記通信受信用の映像デコーダによりそれぞれデコードされた複数の映像をマージする映像マージャと、をさらに具備するように構成されてもよい。
【0013】
この受信装置は、放送ストリームおよび通信ストリームのうち放送ストリームにのみ所定の単位毎の提示時刻情報が付加され、通信ストリームに提示時刻情報が付加されていない場合を想定している。このような想定において、調整部は、通信受信部によって受信された一定期間内の通信ストリームの時刻参照値の遅れ量の平均値に所定のマージンを付加した値で基準時刻を調整すればよい。すなわち、提示時刻情報をもたない通信ストリームは受信装置に受信されてはデコードされることを次々に繰り返して再生される。このため、局所的に得られた遅れ量ではなく、一定の時間幅において得られた遅れ量の平均値を基準時刻の調整に用いる方がよい。さらに、通信ストリームの放送ストリームに対する遅れは同期再生において致命的であることから、平均値にマージンを加えた値で基準時刻の調整を行うようにすることは有効である。
【0014】
本技術の別の側面に係る同期処理方法は、それぞれ時刻参照値が付加され、互いに同期して再生されるべき複数の映像のうち一方を放送ストリームとして放送を通じて受信し、前記複数の映像のうち他方を通信ストリームとしてネットワークを通じて受信し、基準時刻生成部が、前記放送ストリームに含まれる前記時刻参照値をもとに、前記複数の映像を提示するタイミングを生成するための基準時刻を生成し、調整部が、前記基準時刻に対する前記通信ストリームの前記時刻参照値の遅れ量で前記基準時刻を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本技術によれば、互いに同期して再生されるべき2つの映像ストリームを放送とインターネットとに分けて伝送する場合のそれぞれの同期再生を良好に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本技術に係る実施の形態を説明する。
<第1の実施形態>
本実施形態は、放送により伝送される映像を含むストリーム(以下「放送ストリーム」と呼ぶ。)とインターネットにより伝送される映像を含むストリーム(以下「通信ストリーム」と呼ぶ。)を受信し、これらを互いに同期させて再生する受信装置とその同期処理方法に関するものである。
【0018】
このような放送ストリームと通信ストリームの同期伝送システムの例として次のようなものが挙げられる。
1.3D番組
図1は3D番組伝送システムの構成を示す図である。
3D番組を構成する複数の視点の映像のうち1視点の映像が放送で伝送され、他の1視点の映像が通信で伝送される。受信機はこれら放送と通信で伝送される2つの映像を受信し、互いに同期をとって再生してマージし、3D映像を提示する。
【0019】
2.マルチビュー番組
1つの被写体が複数のカメラで同時に撮影されることによって得られる一つのビューの映像がメインビューとして放送で伝送され、その他の1以上のビューの映像がサブビューとして通信で伝送される。受信機はこれら複数のビューの映像を受信し、メインビューの映像を親画面に表示させるとともに、1以上のサブビューの映像を子画面で表示させる。あるいは、受信機は、メイン画面に表示させる映像をメインビューとサブビューとの間で切り替える。
【0020】
3.高解像度番組
例えば4Kの(画素数3840×2160)の高解像度カメラで撮影された映像が4分割されて得られる4系統のHDサイズ(画素数1920×1080)の映像のうち、一部が放送で伝送され、残りが通信で伝送される。受信機は各系統のHDサイズの映像を受信し、互いに同期をとって再生し、結合して4Kサイズの高解像度映像を提示する。あるいは、高解像度カメラで撮影された映像がウェーブレット変換などにより周波数分解され、低解像度成分のHDサイズの映像が放送で伝送され、残りの高周波成分の映像が通信で伝送される。受信機は、受信した4つのHDサイズの映像をウェーブレット逆変換などにより周波数合成して一つの高解像度映像として復元して提示する。
【0021】
4.音声吹き替えサービス
音声吹き替えサービスでは、映像と日本語音声が放送で伝送され、映像に対する多言語の吹き替え版の音声が通信で伝送される。受信機は、映像と日本語音声を放送から受信する一方で、映像に対する多言語の吹き替え版の音声を通信から受信し、ユーザからの要求に応じて、放送の映像と吹き替え音声を互いに同期をとって再生して提示する。
【0022】
図1は上記の放送ストリームと通信ストリームの同期伝送システムの構成を示す図である。
ここで、番組素材とは、3D番組、マルチビュー番組、高解像度番組、音声吹き替えサービス番組などである。放送・通信設備100において、番組素材は放送用の信号と通信用の信号とに分けられる。放送用の信号と通信用の信号はそれぞれ、エンコーダによってMPEG2_TSなどのストリームに符号化され、一方のストリームは放送で送出され、他方のストリームは配信サーバによってインターネットを通じて通信で配信される。符号化の際、ビデオのTSパケットに一定周期で時刻参照値であるPCR(Program Clock Reference)が挿入される。あるいは、PCRを含むPCRパケットが一定周期で付加される。
【0023】
典型的な受信装置200では、一つの番組に関連する放送ストリームおよび通信ストリームを受信する。典型的な受信装置200では、受信した放送ストリームおよび通信ストリームからそれぞれPCRを抽出し、このPCRを用いて受信装置200の基準時刻であるSTC(System Time Clock)を設定あるいは校正し、このSTCと映像のTSパケットに含まれる提示時刻情報であるPTS(Presentation Time Stamp)とから映像の提示のタイミングが生成される。
【0024】
その際、ネットワークのトラフィック変動によって受信装置200に通信ストリームが受信されるタイミングが、これと同期がとられて再生されるべき放送ストリームに対して遅れる可能性がある。通信ストリームが放送ストリームに対して遅れている場合には受信した放送ストリームをバッファに蓄えて放送ストリームの再生を遅らせる必要がある。しかし、典型的な受信装置200では、PCRをもとに生成されるSTCと、映像のTSパケットに含まれる再生時の時刻管理情報であるPTSから映像ストリームの提示タイミングが一意に決められることが前提とされている。したがって、受信した放送ストリームをバッファに蓄えるだけでは、放送ストリームと通信ストリームとの同期再生を実現することは実際には困難である。
【0025】
そこで本実施形態では、受信装置のSTCが、受信した通信ストリームの最初の映像のTSパケットに挿入されたPCRよりも大きい場合に、その差分だけSTCの値を減算することによる調整を行う仕組みが採用されている。
【0026】
図2は本技術に係る第1の実施形態の受信装置300において、STCの調整により放送ストリームと通信ストリームとを同期させる動作のタイムチャートである。
【0027】
1.受信装置300は、放送ストリームと通信ストリームの同期再生の指示が発生してから、受信した通信ストリームの最初の映像のTSパケットから取得したPCRの値であるPCR0と受信装置300のSTCの現在の値であるSTC0とを比較し、STC0>PCR0の条件が成立するかどうかを判定する。
【0028】
2.受信装置300は、上記の条件が成立する場合、STC0とPCR0とのオフセットΔを次式により算出する。
STC0−PCR0=Δ ・・・(1)
【0029】
3.受信装置300は、このオフセットΔでSTCを次式により調整する。
STC−Δ=STC´ ・・・(2)
【0030】
4.受信装置300は、放送ストリームおよび通信ストリームのそれぞれの映像のTSパケットに含まれるPTSとSTC´を参照して、それぞれの映像の提示のタイミングを制御する。具体的には、放送ストリームおよび通信ストリームともに、映像のTSパケットに含まれるPTSと、STC´とが一致したとき映像が提示されるように制御される。
【0031】
以上の処理により、放送ストリームと通信ストリームとを同期して再生することができる。
【0032】
[受信装置の構成]
図3は、本実施形態の受信装置300の構成を示すブロック図である。
受信装置300は、チューナ301(放送受信部)、放送受信用のDeMUX302、放送受信用の映像バッファ303、放送受信用の映像デコーダ304、STC生成部305(基準時刻生成部)、ネットワークI/F307(通信受信部)、HTMLブラウザ308、VODプレーヤ309、通信受信用のストリーミングバッファ310、通信受信用のDeMUX311、通信受信用の映像バッファ312、STC調整部313(調整部)、通信受信用の映像デコーダ314および映像マージャ315を備える。
【0033】
チューナ301は、ユーザにより選択されたチャンネルの放送ストリームを受信し、トランスポートストリーム(TS:Transport Stream)を生成して放送受信用のDeMUX302に送出する。
【0034】
放送受信用のDeMUX302は、トランスポートストリームのDeMUX処理を行い、映像のTSパケットを分離して映像ストリームとして放送受信用の映像バッファ303に供給するとともに、各TSパケットからPCRを抽出してSTC生成部305に供給する。
【0035】
放送受信用の映像バッファ303は、放送受信用の映像デコーダ304に供給する映像ストリームをバッファリングする。
【0036】
放送受信用の映像デコーダ304は、放送受信用の映像バッファ303から読み出された映像ストリームをデコードして放送系の映像信号として映像マージャ315に出力する。
【0037】
STC生成部305は、放送ストリームから抽出されたPCRを基準に27メガヘルツのSTCを生成し、放送受信用の映像デコーダ304および通信受信用の映像デコーダ314などに供給する。
【0038】
ネットワークI/F307は、HTML(HyperText Markup Language)ブラウザ308上で動作する放送連動型アプリケーションからVOD(Video On Demand)プレーヤ309への通信ストリームの取得指示が出されることによってVODプレーヤ309から与えられたリクエストをインターネットを通じて放送・通信設備100の配信サーバに送信し、配信サーバからの応答として、放送ストリームと同期して再生されるべき通信ストリームを受信する。
【0039】
通信受信用のストリーミングバッファ310は、受信した通信ストリームをバッファリングする。ここで、受信した通信ストリームである映像のTSパケットが、PTSを有するTTS(Timestamped TS)パケットである場合、通信受信用のストリーミングバッファ310は、保持された通信ストリームを、PTSを用いて、可及的に本来のレートのTSパケットとなるように連続的に取り出して通信受信用のDeMUX311に供給する。
【0040】
通信受信用のDeMUX311は、ストリーミングバッファ310から取り出された通信ストリームから映像のTSパケットを分離して映像ストリームとして通信受信用の映像バッファ312に供給し、さらに受信した映像ストリームの先頭のTSパケットからPCRを抽出してSTC調整部313に供給する。
【0041】
通信受信用の映像バッファ312は、通信受信用の映像デコーダ314に供給する映像ストリームをバッファリングする。
【0042】
通信受信用の映像デコーダ314は、通信受信用の映像バッファ312から読み出された映像ストリームをデコードして通信系の映像信号として映像マージャ315に出力する。
【0043】
映像マージャ315は、放送系の映像信号と通信系の映像信号とをマージして提示用の映像信号を生成し、図示しないディスプレイに出力する。ここで、マージは、3D番組、マルチビュー番組、高解像度番組、音声吹き替えサービス番組など、番組素材の放送と通信への分離方法に対応した方法で行われる。
【0044】
STC調整部313は、STC生成部305のSTCと、通信受信用のDeMUX311より供給されたPCRとを比較してSTCの調整データ(オフセットΔ)を生成し、STC生成部305に出力する。
【0045】
STC生成部305は、STC調整部313からの調整データ(オフセットΔ)を用いてSTCを調整する。
【0046】
ホストコントローラ316は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される。ROMにはCPUに実行させるプログラムやデータが固定的に記憶される。RAMにはROMに格納されたプログラムがロードされ、CPUはそのロードされたプログラムを実行する。
RAMにロードされたプログラムは、ホストコントローラ316を、例えば、STC生成部305、HTMLブラウザ308、VODプレーヤ309、STC調整部313として動作させる。但し、STC生成部305およびSTC調整部313は必ずしもソフトウェアで提供されるとは限らず、ハードウェアで構成してもよい。ホストコントローラ316は、例えば、図示しないリモートコントローラを用いてユーザからの各種指示やデータの入力を受け付けることが可能である。
【0047】
[放送ストリームと通信ストリームの同期処理]
次に、受信装置300において、放送の選局から放送ストリームと通信ストリームとの同期再生までの動作を説明する。
【0048】
まず、受信装置300のユーザは、図示しないリモートコントローラなどを用いて放送チャンネルの選局を行う。リモートコントローラなどによって受け付けられたユーザからの選局情報はホストコントローラ316にて処理される。ホストコントローラ316は、ユーザからの選局情報に基づいてチューナ301を制御する。
【0049】
チューナ301にて受信されたチャンネルの放送ストリームは放送受信用のDeMUX302に送出される。DeMUX302は、放送ストリームから映像のTSパケット、音声のTSパケット、SI(Service Information:番組配列情報)などのその他のTSパケットを分離する。放送受信用のDeMUX302にて分離された映像のTSパケットは映像ストリームとして放送受信用の映像バッファ303に供給され、ここで一旦保持される。
【0050】
また、放送受信用のDeMUX302は、定常的に、映像のTSパケットからPCRを抽出してSTC生成部305に供給する。STC生成部305にて、このPCRを基準に27メガヘルツのSTC(System Time Clock)が生成される。
【0051】
放送受信用の映像デコーダ304は、放送受信用の映像バッファ303から読み出された映像ストリームをデコードする。この際、放送受信用の映像デコーダ304は、映像のTSパケットがもつPTSとSTC生成部305から与えられるSTCとが一致したタイミンクで映像が提示されるように、当該映像ストリームのデコードのタイミングを制御する。
【0052】
放送受信用の映像デコーダ304から出力された放送系の映像信号は映像マージャ315に出力される。
【0053】
本動作の一例として、チャンセルが選局された後、このチャンネルもしくは番組に関連付けられたアプリケーション(放送連動型アプリケーション)を受信装置300が放送または通信により取得し、実行する場合を想定する。この放送連動型アプリケーションは、放送ストリームと通信ストリームとの同期再生による、例えば、3D番組、マルチビュー番組、高解像度番組、音声吹き替えサービス番組などの視聴をユーザに促し、ユーザからの視聴の指示を受けると、VODプレーヤ309に通信ストリームの取得指示を供給するように受信装置300を機能させる。
【0054】
なお、この放送連動型アプリケーションは、例えばHTML(Hyper Text Markup Language)文書、BML文書(Broadcast Markup Language)、MHEG文書(Multimedia and Hypermedia information coding)、Java(登録商標)スクリプト、静止画ファイル、動画ファイルなどで構成される。
【0055】
VODプレーヤ309は、通信ストリームの取得指示を受けると、ネットワークI/F307を制御して、配信サーバにインターネットを通じて、選局中のチャンネルもしくは番組に関連付けられた通信ストリーム(放送ストリームと同期して再生されるべき通信ストリーム)の伝送をリクエストするとともに、STC調整部313にSTCの調整指示を与える。STC調整部313は、STCの調整指示を受けると、通信受信用のDeMUX311からのPCRの供給の待機状態になる。
【0056】
一方、リクエストに対して配信サーバから伝送された通信ストリームは、ネットワークI/F307を介して通信受信用のストリーミングバッファ310に蓄積される。ここで、通信受信用のストリーミングバッファ310は、通信ストリームの先頭の映像のTSパケットを保持後直ちに読み出して通信受信用のDeMUX311に供給する。
【0057】
なお、通信受信用のストリーミングバッファ310にはバースト的に通信ストリームが蓄えられるが、配信サーバから伝送される映像のTSパケットが、PTSを有するTTSパケットである場合、ストリーミングバッファ310は保持された通信ストリームを、PTSを用いて、可及的に本来のレートのTSパケットとなるように連続的に取り出して通信受信用のDeMUX311に供給する。
【0058】
通信受信用のDeMUX311は、ストリーミングバッファ310より読み出された通信ストリームから映像のTSパケットを分離して通信受信用の映像バッファ312に供給するとともに、最初に取得した映像のTSパケットからPCRを抽出してSTC調整部313に供給する。
【0059】
ここで、最初に取得した映像のTSパケットから抽出されたPCRの値をPCR0とする。STC調整部313は、PCR0を取得すると、このPCR0と、STC生成部305より与えられたSTCの値(STC0)とを比較し、STC0>PCR0の条件が成立するかどうかを判定する。STC0>PCR0が成立する場合とは、放送ストリームに対して、これに同期して再生されるべき通信ストリームが時間的に遅れて受信されていることを意味する。
【0060】
STC調整部313は、STC0>PCR0の条件が成立した場合、次式によりSTC0とPCR0とのオフセットΔを算出する。
STC0−PCR0=Δ ・・・(1)
このオフセットΔの値はSTC生成部305に供給される。
【0061】
STC生成部305は、オフセットΔの値を受け取ると、STCを次式により調整する。
STC−Δ=STC´ ・・・(2)
【0062】
以上のようにしてSTCは、放送ストリームに対する通信ストリームの遅れ量だけずらしたSTC´に調整される。以降、放送受信用の映像デコーダ304および通信受信用の映像デコーダ314は、STC´をベースにそれぞれの映像ストリームの提示のタイミングを制御する。これにより、放送ストリームと通信ストリームとの同期再生が達成される。
【0063】
映像マージャ315には、互いに同期した放送系の映像信号と通信系の映像信号が供給されることで、元の3D番組、マルチビュー番組、高解像度番組、音声吹き替えサービス番組などの番組が正しく復元される。
【0064】
なお、STC0>PCR0の条件が成立した場合にはSTCを調整することとしたが、逆にSTC0<PCR0またはSTC0=PCR0が成立した場合にはSTCの調整は不要である。
【0065】
また、STC´は、このSTC´でデコードが行われた放送番組の終了と同時にもとのSTCに戻される。
【0066】
図4は以上説明した放送の選局から放送ストリームと通信ストリームとの同期処理、さらには同期処理の終了までのタイムチャートである。
受信装置300において、STCがSTC´に更新されることによって映像ストリームのデコードの開始時刻がT1からT1´に後方へとずらされる。T1からT1´までの間、映像はフリーズ状態で表示される。そしてT1´の時刻から放送と通信それぞれの映像ストリームのデコードが同時に再開される。その後、番組が終了するまで、STC´を基準にデコードが行われる。番組が終了すると、STC´がSTCに戻され、PTSがSTCに一致するアクセスユニットにジャンプしてデコードが行われる。
【0067】
<第2の実施形態>
上記の第1の実施形態では、通信ストリームの映像のTSパケットがTTSパケットである場合を想定したが、通信ストリームの映像のTSパケットがPTSをもたないTSパケットである場合も考えられる。
この場合、ストリーミングバッファ310から映像デコーダ314までの系では、STCとは無関係に、通信ストリームの受信からデコードまでの動作を連続して繰り返す。このことから、最初に受信された映像のTSパケットから抽出されるPCR0とSTC0との差分をもとにSTCを調整するだけでは、適正に放送ストリームと通信ストリームとを同期させることができない場合が想定される。
【0068】
このような想定において、オフセットΔは、放送ストリームに対する通信ストリームの平均的な遅れ量として求めなければならない。
例えば、次式により、通信ストリームの受信開始から一定期間のPCRに関してそれぞれ差分を算出し、各差分の平均値を求める。
【0070】
Aの値が正である場合、このAにマージンmを加えた値をオフセットΔとする。
STC生成部305は、このオフセットΔをSTCから減算した結果を調整後のSTC´として放送受信用の映像デコーダ304などに供給する。そして送受信用の映像デコーダ304はSTC´をベースに映像ストリームの提示のタイミングを制御する。
【0071】
もともと、PTSをもたないTSパケットは厳密な同期を必要としないメディアの伝送に用いられるため、放送ストリームに対する通信ストリームの平均的な遅れ量として求められるオフセットΔでSTCを調整する程度でよい。
【0072】
本技術は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0073】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1) それぞれ時刻参照値が付加され、互いに同期して再生されるべき複数の映像のうち一方を放送ストリームとして放送を通じて受信可能な放送受信部と、
前記複数の映像のうち他方を通信ストリームとしてネットワークを通じて受信可能な通信受信部と、
前記放送ストリームに含まれる前記時刻参照値をもとに、前記複数の映像を提示するタイミングを生成するための基準時刻を生成する基準時刻生成部と、
前記基準時刻に対する前記通信ストリームの前記時刻参照値の遅れ量で前記基準時刻を調整する調整部と
を具備する受信装置。
【0074】
(2)前記(1)に記載の受信装置であって、
請求項1に記載の受信装置であって、
前記調整部は、前記通信受信部によって最初に受信された前記通信ストリームの前記時刻参照値の前記遅れ量で前記基準時刻を調整する
受信装置。
【0075】
(3)前記(1)から(2)に記載のいずれかの受信装置であって、
前記放送ストリームおよび前記通信ストリームには所定の単位毎の提示時刻情報が付加され、
前記受信装置は、
前記放送受信部により受信された前記放送ストリームを、当該放送ストリームに付加された前記提示時刻情報と前記基準時刻とが一致したタイミンクで前記一方の映像が提示されるようにデコードする放送受信用の映像デコーダと、
前記通信受信部により受信された前記通信ストリームを、当該通信ストリームに付加された前記提示時刻情報と前記基準時刻とが一致したタイミンクで前記他方の映像が提示されるようにデコードする放送受信用の映像デコーダと、
前記放送受信用の映像デコーダおよび前記通信受信用の映像デコーダによりそれぞれデコードされた複数の映像をマージする映像マージャと
をさらに具備する受信装置。