(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333178
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】中空円筒型ねじ要素および前記ねじ要素の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/27 20060101AFI20180521BHJP
B29L 23/00 20060101ALN20180521BHJP
【FI】
B29C45/27
B29L23:00
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-547830(P2014-547830)
(86)(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公表番号】特表2015-500754(P2015-500754A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2012074655
(87)【国際公開番号】WO2013092234
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】102011056601.5
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505055505
【氏名又は名称】フォス・アウトモーティヴ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】デ・ベール,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ジーパー,ギュンター
【審査官】
今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第101998900(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101858382(CN,A)
【文献】
特開2003−311841(JP,A)
【文献】
米国特許第04403933(US,A)
【文献】
特開2003−035355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
B29L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状の断面を有する成形品(1)、例えば、ねじ要素、ナット、ソケット、管差込み具、管継手などを製造する方法であって、前記成形品(1)は中空円筒型の本体部(2)を有し、インサート部材(4)を封止収容するための前記本体部の内側通路(3)には、軸方向(X−X)に、異なる機能、つまり、シールリング(5,6)と密着する機能、前記インサート部材(4)を直接または間接に保持または固定あるいはその両方を行う機能、前記インサート部材(4)を支持または案内あるいはその両方を行う機能、のうちの少なくとも1つ以上の機能を割り当てられた区域(A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9,AZ)が順に並んでおり、前記本体部(2)は少なくとも1つの雌ねじ部または雄ねじ部(10)あるいはその両方を設けており、繊維(F)を含んだ可塑化されたポリマー材料が成形金型の少なくとも1つの射出口を通じて前記成形金型のキャビティーに射出され、前記ポリマー材料の固化後に成形品(1)が前記成形金型から取り出されるものにおいて、
前記キャビティーへの射出は、前記シールリング(5,6)の密着または前記インサート部材(4)の保持または固定あるいはその両方に使用されない前記区域(A1,A2,A3,A5,A7,A8)または前記区域(A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9,AZ)における所定領域(14,15)において前記射出口を通じて内側通路(3)から径方向外側に向かって行われる方法。
【請求項2】
円筒状の前記内側通路(3)の全長(L)にわたって軸方向(X−X)に隣接して連なる前記区域(A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9,AZ)は、異なった内径(DI)または異なった肉厚(W)あるいはその両方を有するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記射出口からの射出は、前記区域(A8)において、または、前記区域における所定領域において行われ、当該区域は前記本体部(2)が最大の肉厚(W)を有する区域であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記射出口からの射出は、前記本体部(2)の、前記インサート部材(4)の支持または案内あるいはその両方に使用される、特に円筒状に形成された区域(A8)において行なわれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記射出口からの射出は、前記シールリング(5)に密着する区域(A4)の、前記シールリング(5)に密着しない部分領域(14)において行なわれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記射出口からの射出は、前記シールリング(5,6)が密着する領域と前記インサート部材(4)を保持または固定あるいはその両方を行う領域との間に位置するか、または前記インサート部材(4)を保持または固定あるいはその両方を行う2つの領域の間に位置する区域において行なわれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記射出口は、前記ねじ要素(1)の自由端の一方から、特に、フランジ突起(12)とは反対側に位置するとともに精巧な構造部として外側リングビード(7)が配される方の前記ねじ要素(1)の自由端から、前記ねじ要素(1)の全長(L)の1/3未満だけ離間した射出箇所(200)に位置することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ねじ要素(1)の射出箇所(200)は、前記内側通路(3)の内周面に設けられた窪み(18)内に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
射出の際に、前記本体部(2)の特に後端に、径方向に拡大されたフランジ突起(12)が形成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記射出口からの射出は、前記フランジ突起(12)が位置する、前記本体部(2)の軸方向の所定領域(A1,A2,A3)において行なわれることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記キャビティーへの射出は、繊維(F)が前記本体部(2)内にあって主として軸方向(X−X)と平行に配向するようにして行なわれることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記キャビティーへの射出は、トンネルゲート、リングゲート、ディスクゲートまたはダイヤフラムゲートで行なわれることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記キャビティーへの射出は、トンネルゲートにより、少なくとも2つの軸対称配置または中心対称配置された射出口を通じて行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記キャビティーへの射出は、トンネルゲートにより、3つまたは4つの軸対称配置または中心対称配置された射出口を通じて行われることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
可塑化されたポリマー材料は、前記成形品(1)の熱可塑性母材を形成するプラスチックであり、特に、ポリフタルアミド(PPA)またはポリエーテルスルホン(PES)であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記キャビティーへの射出に際し、前記成形品(1)に、内側溝、外側溝例えば円周溝、内側の段または外側の段例えば径方向張り出し部または径方向引っ込み部、またはテーパ区域(A1,A3,A5,A7)あるいはそれらを組み合わせたものが形成されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
可塑化されたポリマー材料は、体積パーセントにて2.5〜75パーセントの繊維(F)を含んでいることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
可塑化されたポリマー材料は、質量パーセントにて30〜70パーセントのガラス繊維を含んでいることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
繊維(F)は、0.1mm〜10mmの長さを有することを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
繊維(F)は、0.2mm〜0.5mmの長さを有することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
繊維(F)は、約3μm〜35μmの平均直径を有することを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
フランジ突起(12)から前記本体部(2)への外側移行部(16)の輪郭は、“引張り三角の手法”によって成形されることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状の断面を有する成形品、例えば、ねじ要素、ナット、ソケット、管差込み具、管継手などを製造する方法であって、前記成形品は中空円筒型の本体部を有し、インサート部材を封止収容するための前記本体部の内側通路には、軸方向に、異なる機能、つまり、シールリングと密着する機能、インサート部材を直接または間接に保持および/または固定する機能および/またはインサート部材を支持および/または案内する機能を割り当てられた区域が順に並び、前記本体部は少なくとも1つの雌ねじ部および/または雄ねじ部を設けており、繊維を含んだ可塑化されたポリマー材料が成形金型の少なくとも1つの射出口を通じて前記成形金型のキャビティーに射出され、前記ポリマー材料の固化後に上記成形品が前記成形金型から取り出されるように構成した方法に関する。さらに本発明は、このような方法によって製造可能な成形品にも関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形は、良く知られた、特にプラスチックに使用される間欠的な成形方法である。射出成形は、工業的にそのままで使用可能な成形品を、大量の個数にて、高い精度で製造することを可能にする。そのため、射出成形機の射出装置内で、それぞれの材料つまり成形材料が可塑化されて、射出成形金型内に射出される。現在の射出成形機は、成形材料を可塑化して、スクリューによって供給し、金型内に射出するように動作する。金型のキャビティーないし成形空洞内で、ポリマー材料は固化し、その後に、成形品が金型から取り出される。固化に際して生ずる体積収縮は、基本的に−ただし一定程度まででしかないが−取り出し前に加えられる再加圧によって補償することが可能である。射出成形により、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチックおよびエラストマーを加工することが可能である。また、熱可塑性プラスチックの射出成形に際し、繊維を含んだ材料の使用が可能であることが知られており、これにより、比較的高強度の成形品を製造することができる。
【0003】
冒頭に述べた形式の製造方法およびその成形品は、特許文献1から知られている。また、特許文献2も類似の成形品を開示しており、そこでの特殊な点は、一方で、成形品の本体部、他方で、それが設けられている限りで、ねじ山および/またはシールリングが、異なったポリマー材料から、多成分射出成形法で製造される点にある。
【0004】
特許文献1で知られた方法によれば、キャビティーへの射出は、少なくとも2つの射出口を通じ、繊維が成形品の軸方向引張りおよび捩りの主応力方向に応じて配向するようにして行なわれる。その際、射出は軸方向に行われ、成形材料は金型の内部コア周りをリング状に流れて、射出口の間で合流する。これらの箇所には、一般に成形品のその他の部分よりも強度の低いウェルドラインが生ずる。この公知の成形品の、荷重に対応した構造の基本は、一方では、リング状断面の円周方向において成形品の縦軸に対して直角に配向する繊維の割合が、他方では、成形品の軸方向に配向する繊維の割合が、それぞれ50パーセント未満であるという点にある。この方法によって、驚くべきことに、ウェルドラインの不適な影響を少なくとも部分的に補償することができる。ただし、工業的な適用、特にねじ要素の場合、成形品の捩り応力に対する要求の重要性が成形品の軸方向引張り応力に対する要求の重要性のかげに隠されてしまうことが少なくないことは明らかであるが、この場合には、特に、成形品の螺入または螺脱に際して破壊なしに許容可能な最大トルクが重要となっている。このことから、特に、せん断強度の向上ならびに再加圧効率の向上が求められることになる。その際、再加圧効果とは、特に、再加圧が行なわれることによる、空隙のない、かつ−ウェルドラインが存在する場合には−ウェルドライン強度の向上をもたらす、均質なキャビティー充填の実現であると理解される。上述した公知のマルチゲート方式の場合、ホットランナーノズルが使用される場合には、いずれにせよ、付加的な工程安定化対策が講じられなければ、高信頼度の均質なキャビティー充填は保証されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許公開公報第2009/124994号
【特許文献2】ドイツ特許公開公報第102010010651号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、技術的に容易な実施可能性を実現すると同時に、向上した強度、特に軸方向引張り強度を備えた、リング状断面を有する成形品、例えば、ねじ要素、ナット、ソケット、管差込み具、管継手などを製造することができる、冒頭に挙げた形式における高信頼度の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、製造方法に関する上記課題は、キャビティーへの射出を、シールリングの密着またはインサート部材の保持および/または固定に使用されない区域または当該区域の所定の領域において、射出口を通じて内側通路から径方向外側に向かって行なうことによって解決される。その際、好ましくは、射出口は、封止領域と保持領域との間または2つの保持領域の間にある所定の領域に位置してもよい。
その際、キャビティーへの射出は、トンネルゲート、リングゲート、ディスクゲートまたはダイヤフラムゲートで行なうことが利点をもって可能であり、その際、トンネルゲートでは、少なくとも2箇所射出、好ましくは5箇所射出まで行うことが可能であり、特には3箇所射出を行なうことができる。この場合、キャビティーへの射出は、成形品のリング状の内側断面に円周方向に均等に分散配置された少なくとも2つの射出口を通じて行うことができる。
【0008】
さらに、上記課題、特に本発明による方法で製造可能な成形品については、本発明によれば、前記本体部がその外周または内側通路の壁面に、シールリングの密着またはインサート部材の保持および/または固定に使用されない区域または当該区域の所定の領域に配置された射出箇所を有することによって解決される。
【0009】
その際、繊維は、本体部内部において、特に、内側溝または外側溝例えば円周溝、および/または内側の段または外側の段例えば径方向張り出し部または径方向引っ込み部ならびにねじフランクにおいても、好ましくは実質的には、成形品の軸方向と平行に配向されている。その際、射出箇所は、その作用上好適には、組付け時および成形品の個々のケースに応じ最高荷重が生ずる領域の近傍に配置されるとよい。ゲート領域と、荷重される領域ならびに、ねじ要素がオプショナルに精巧な構造部、例えば後に詳細に説明する保持突起を有する領域との間隔が僅かであることにより、最適な再加圧効率が、−したがって部材強度も−、実現可能である。
【0010】
射出箇所が、封止または保持の点で一定程度無機能な、換言すれば、特にシール面と接触していない区域または領域に位置していることにより、これらの箇所で技術的にコストのかかる後加工作業とくに湯口ばりの除去および/または表面研磨の後加工作業を行なうことが不要となる、好適である。
【0011】
本発明は、成形品の形態と機能との有利な結び付きや、その内側通路に配置された種々の区域および領域と成形される部材の内部から実現される特別な射出技術および形状との有利な結び付きに基づいている。本発明により、本発明による成形品が螺入試験において生ずる荷重時に耐えることのできる捩りモーメントは、特許文献1において開示された方法で製造された部材に比較して、40パーセントから約60パーセントまで向上する。
【0012】
その際、保持領域したがってインサート部材を直接または間接に保持および/または固定する機能を有する軸方向区域と、シール領域つまりシールリングが密着する領域としての機能を有する軸方向区域との間に位置する射出箇所が、その区域として特に適していると見なされる。したがって、このような好ましい射出箇所は、特に、ただし、それに限られるわけではないが、インサート部材のもっぱら支持および/または案内に使用される区域に位置していてよい。
【0013】
本発明による成形品は、ねじ要素として、好ましくは、例えば、ねじまたはナットとして形成され、少なくとも1つのねじ山を有する点からして、本発明により、キャビティーへの射出後に、爾後に荷重される部材領域、例えばねじフランク、つまり螺入領域において、トルク伝達領域に比較して、より高い再加圧効果が達成可能である。これは、特に、射出成形時に非常に均質かつ、特にリングゲート、ディスクゲートまたはダイヤフラムゲートの場合にウェルドラインなしでも形成される構造に起因して、好ましくは、雄ねじ部領域ならびに内側溝または外側溝例えば円周溝、および/または内側の段または外側の段例えば径方向張り出し部または径方向引っ込み部の領域に生ずる。
本発明のその他の好適な実施態様の特徴は、従属請求項の記載内容ならびに以下の説明に述べる通りである。
以下、複数の好ましい実施形態を参照して、本発明を詳細に説明する。各図は以下を示している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による射出成形法によって製造可能な、リング状断面を有する本発明による成形品の第1の実施形態の側面図である。
【
図2】まだ除去されていないスプルーを含む、
図1に示した成形品を下方から見た図である。
【
図3】まだ除去されていないスプルーを含む、
図1および2に示した本発明による成形品の、
図1および2のIII−III線に沿った縦断面図である。
【
図4】本発明による成形品の
図3と同様な、ただし、インサート部材が組み付けられた状態の縦断面図である。
【
図5】
図4と同様に組み付けられた状態で示してある、本発明によるさらに別な成形品の縦断面図である。
【
図6】特に本発明による射出成形法で製造可能な、リング状断面を有する本発明による成形品の第2の実施形態の平面図である。
【
図7】まだ除去されていないスプルーを含む、
図5に示した成形品の、
図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【
図8】本発明による成形品の本体部からフランジ突部への移行部の構造を概略的に示す図である。
【
図9】組付け状態にある本発明による成形品のさらに別の実施形態の、
図4および5と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に述べる説明につき、本発明はここで述べられた実施形態に制限されるものではなく、またその際、以下に説明する特徴組み合わせの必ずしもすべてもしくは複数の特徴に制限されるものでもなく、むしろ、各実施形態の個々の部分特徴のそれぞれはそれと関連して説明された他のすべての部分特徴から切り離されても、それ自体、かつ、他の実施形態の任意の特徴と組み合わされても、本発明上の意義を有することをここで明確に強調しておく。
図面の各図において同一の部品には常に同一の符号を付してあるため、それらの説明も通例1回行なわれるだけである。
【0016】
図1〜
図5は、
図2に示した下方から見た図が具体的に示しているように、リング状の断面を有する、本発明による成形品1の第1の実施形態を示したものである。これらは、特に、本発明による射出成形法によって製造可能な中空ねじ要素である。
【0017】
成形品1は、中空円筒型本体部2を有しており、特に
図4および
図5から具体的に理解できるように、インサート部材4を封止収容するためのその内側通路3には、軸X−X方向に、それぞれ異なる機能を割り当てられた区域A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9が隣接して連なっている。これらの区域とは、例えば、特にインサート部材4に配置することができる1つ以上のシールリング5、6と密着する区域A4、A6、インサート部材4を直接または間接に保持および/または固定する1以上の区域例えば保持区域A9および/またはインサート部材4を支持および/または案内するテーパ区域A1、A3、A5、A7または円筒区域A2、A8である。
【0018】
例えば、図示された実施形態において、端部の保持区域A9における本体部2の外周には、インサート部材4を間接的に保持および/または固定するために、インサート部材4に配置された少なくとも1つのロック要素9と連携する好ましくはリング状のロックケージ8が係合、好ましくはスナップインされる、特に精巧に形成された外側リングビード7が位置している。ここで、
図4および
図5は、この間接的な保持および/または固定が異なった方法で実現可能であることを示しており、
図5に示した解決技法の詳細については欧州特許公開公報第0913618号の開示内容全体が参照される。
【0019】
本体部2には、また、少なくとも1つの雌ねじ部および/または−図示したように−雄ねじ部10が配置されている。この雄ねじ部10を経て、本発明による成形品1は、
図4に示したように、別個の部材11に螺入可能である。
本発明による成形品1の製造には、繊維Fを含んだ可塑化されたポリマー材料が(不図示の)成形型の少なくとも1つの射出口を通して成形型の空洞、いわゆるキャビティーに射出され、ポリマー材料の固化後に成形品1が成形型から取り出される。
【0020】
本発明によれば、キャビティーへの射出は、内側通路3から径方向外側に向かって行なわれ、その際、射出口からの射出は−以下になお詳細に述べるように−インサート部材4のシールリング5、6の密着または前記インサート部材の保持および/または固定に使用されない区域またはそのような区域の所定の領域で行なわれる。
【0021】
可塑化されたポリマー材料は、成形品1の熱硬化性母材を形成する樹脂であってよい。その際、可塑化されたポリマー材料は、エポキシ樹脂(EP)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、ビニルエステル樹脂(VE)、フェノールホルムアルデヒド樹脂(PF)、ジアリルフタレート樹脂(DAP)、メタクリレート樹脂(MMA)、ポリウレタン(PUR)、アミノ樹脂、メラミン樹脂(MF/MP)またはユリア樹脂(UF)が可能である。
【0022】
熱硬化性母材を有する成形品1は、母材の硬化後ないし架橋後には、もはや成形不能である。ただし、前記成形品1は高い温度使用範囲と極めて高い強度を有している。これは、特に、高温下で硬化される熱硬化系に当てはまる。
ただし、好ましい実施態様において、可塑化されたポリマー材料は、成形品1の熱可塑性母材を形成するプラスチックである。このような場合には、通例構造目的に使用される、基本的にあらゆる熱可塑性プラスチックが使用可能であるが、プラスチックはポリアミド(PA)、特に、ポリフタルアミド(PPA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスルホン(PSU)、例えば好ましくはポリフェニルスルホン(PPSU)またはポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)であれば特に好適である。
【0023】
熱可塑性母材を有する繊維強化プラスチックは事後的になお成形可能または溶接可能である。前記成形品は冷却後に直ちに使用可能であるが、ただし、高温時に軟化する。その際、繊維含有量が高まると共に、そのクリープ傾向は低下する。この場合、特に好ましいとして挙げた熱可塑性材料の利点は、特に、高い母材強度と、高い温度負荷時に使用可能なことである。
【0024】
繊維は、
図3、
図4、
図5および
図6に示した断面図に示唆されており、符合Fで表されている。繊維Fとしては、非晶質繊維F、例えばガラス繊維、異方性繊維F、例えば炭素繊維および/またはアラミド繊維が使用可能である。その際、可塑化されたポリマー材料は、体積パーセントにて2.5〜75パーセント、好ましくは15〜40パーセントの繊維Fないし質量パーセントにて30〜75パーセント、好ましくは50、60または65質量パーセントのガラス繊維を含んでいてよい。繊維Fは、特にガラス繊維としての態様において0.1mm〜10mmの長さ、好ましくはいわゆる短繊維としての態様において0.2mm〜0.5mmの長さまたは、長繊維としての態様において1.0〜10.0mmの長さを有していてよい。
【0025】
高い部材安定性の趣旨からして、キャビティーへの射出−つまり、成形品1の前面近傍での射出−は、繊維Fが、本体部2内にあって、爾後の螺入工具による螺入時に生ずる捩り荷重に対して有利なように、主として、つまり、特にガラス繊維の場合、50パーセント超が軸方向X−Xと平行に配向するようにして行なわれるのが好適であることが判明した。これは、例えば、コンピュータ援用X線断層撮影解析によって証明することができる。この点に関して、上記荷重時に工具によって捩りモーメントがもたらされるのは確かであるが、螺入時にねじ要素1のねじ山に生ずる力を経て機械的な軸方向応力も発生するために、力の作用部近傍の最大負荷領域には高い軸方向力を有する3軸応力分布状態が生ずることに留意しなければならない。
【0026】
繊維Fは、約3〜35μm、好ましくは5〜20μmの平均直径を有していてよい。
非晶質繊維Fの場合、繊維形状の利点は、基本的にはサイズ効果の利用にある。コンパクトな材料の弾性モジュールと繊維Fの弾性モジュールとは大略等しいが、基本的に、繊維Fは縦伸び方向に、固化したポリマー材料よりも、高い弾性モジュールおよび高い引っ張り強さを有しなければならない。また、母材の伸び率も繊維Fのそれよりも高くなければならない。ただし、溶融体から引き出される非晶質繊維は、冷却時にその表面に圧縮残留応力が発生し、それによって繊維Fの亀裂発生を防止することができるという利点を有している。
【0027】
異方性繊維とくに炭素繊維は、高い比強度と高い比剛性が求められる場合に使用される。通例約5〜8μmの直径を有し、現在ではほとんどポリアクリルニトリルから製造されている炭素繊維の場合、繊維方向の強度および剛性は繊維方向に対して横方向のそれよりも遥かに高い。この場合、その重大な特徴は高い引っ張り強さである。また、一般市販のフラット繊維の使用も可能である。
【0028】
本発明によれば、繊維Fとしてアラミド繊維が使用されてもよい。U.S.Federal Trade Commissionの定義によれば、アミド基の少なくとも85パーセントが2つの芳香環に直接結合されている長鎖合成ポリアミドがアラミドまたは芳香族ポリアミドと称される。アラミド繊維は、炭素繊維も同様であるが、負の熱膨張率を有しており、したがって、加熱時に収縮する。その比強度およびその弾性モジュールは炭素繊維よりも低い。ただし、母材材料の正の膨張率と相俟って、寸法精度の高い成形品1の製造が可能である。しかしながら、この種の成形品1の圧縮強度は、炭素繊維含有成形品1に比較して低い。
【0029】
ここで、本発明による方法ないし本発明による成形品1にとって優れた適性を有する代表的な材料として、半結晶性半芳香族性コポリアミドをベースとして製造され、50質量パーセントのガラス繊維(長さ:0.3mm、直径:10μm)で強化された熱可塑性構造材料を挙げておく。PA 6T/6l(ISOによる)またはポリフタルアミド(ASTMによる)の名称ないし、例えば商標名“Grivory HTV−5H1 schwarz 9205”で知られるこの材料は、他のポリアミドに比較して、高い強度および剛性ならびに優れた化学物質耐性および耐熱寸法安定性を有している。
【0030】
通例均一な厚さのフラットな層のみが製造されるカレンダリングとは異なり、射出成形では、金型キャビティーが完成した成形品1の形状と表面構造を決定するため、これにより、リング状断面を有する成形品を1工程で製造することが可能である。キャビティーへの射出に際し、成形品1に、ねじ山10(単数または複数)ならびに、内側溝、外側溝例えば円周溝、内側の段(A8/A9移行部)または外側の段(2/12移行部)例えば外側張り出し部または内側引っ込み部、および/またはテーパ区域A1,A3,A5,A7を形成することができる。したがって、射出に際し、中空円筒型成形品1の本体部2には、肉厚Wの相違する軸方向区域も形成することができる。これは、成形品1の軸方向長さL全体にわたって外径(一般に、
図3,
図4,
図5,
図6および
図7において、符号DAで表されている)が一定であれば、例えば、内側通路3の長さL全体にわたって軸方向に隣接して連なる区域A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9が異なった内径(一般に、
図3,
図4,
図5および
図7において、符号DIで表されている)で形成されることを条件として、実現可能である。ここで、内側通路3はインサート部材4の差込み方向Sに全体としてテーパしており、その際、若干の区域A2,A4,A6,A8では内径DIはそれぞれ一定に保たれていることに注意しなければならない。ただし、軸方向において−差込み方向Sで見て−最後の区域A9では、ロック要素9を収容するために、内径DIは拡大されている。これにより、外径DAが大略一定であれば、異なった肉厚Wが生ずる。
【0031】
射出成形法により−本発明による成形品1のすべての実施形態に示されているように−射出に際して、本体部2の特に後端に、特に螺入工具のマニュアル操作用または工具操作用に外側多角形輪郭13を形成してもよい、径方向に拡大されたフランジ突起12も形成することが可能である。この場合、図示した本発明による成形品実施形態とは異なって、フランジ突起12が位置する本体部2の軸方向領域(例えば区域A1,A2,A3)で射出が行なわれることも可能でありかつ好適である。
【0032】
射出口からの射出は、好ましくは−
図3および
図7に示したように−区域A8、または本体部2が(フランジ突起12の領域の“肉厚”を別として)最大の肉厚Wを有する本体部2の区域の1領域で行なうことも可能である。その際、射出箇所は−
図3および
図7に示したように−好ましくは、フランジ突起12とは反対側に位置している、ねじ要素1の自由端から、ねじ要素1の全長Lの1/3未満だけ離間していてよい。この場合、この端部に位置する精巧に形成される外側リングビード7に関しては、再加圧の効果は特に高い。この区域A8は、特に、インサート部材4の支持および/または案内に用いられる、本体部2の円筒状に形成された区域A8である。この区域A8では、組付け状態にてインサート部材4は成形品1に対して遊びSPを有することが可能であり、そのため、この区域A8では、ゲートが同所に設けられれば、特に湯口バリを取り去りおよび/または表面を研磨するための技術的にコストのかかる後加工作業を不要とする利点が得られる。
【0033】
射出成形時の材料温度は約100EC〜350EC、射出圧力は約400bar〜1600bar、金型温度は約40EC〜160ECであってよい。熱可塑性プラスチックの加工に際しては、熱可塑性材料を溶融させるため、スクリューは相対的に高温である。これに対して、金型は、形成された成形品1を冷すために、相対的に低温である。これはコールドランナー方式と称される。熱硬化性プラスチックの加工に際しては、可塑化装置の温度は流動−硬化挙動に適合されなければならず、したがって、一般に熱可塑性プラスチックの場合よりも低温であるが、他方、金型は、材料が同所で硬化し得るよう、射出装置よりも高温に保たれなければならない。これはホットランナー方式と称される。本発明によれば、ホットランナー方式より、コールドランナー方式が好ましい。
【0034】
固化時に生ずる成形品1の体積収縮は、取り出し前に加えられる再加圧によって補償可能である。その際、本発明による方法での成形品1の製造に際し、冒頭に述べた公知の方法で製造された成形品に比較して、再加圧の効率は向上し、つまり、特にキャビティーの充填度が高まったが、このことは完成した成形品1においてウェルドライン強度と部材強度の向上ならびに約10パーセントも高い密度の形で現れた。密度は、理論的に計算された密度とほぼ同一である。
【0035】
図6および
図7は、第1の実施形態として示された成形品1と同じ中空形状を有し、本発明によるタイプの射出成形法で製造可能な、本発明による成形品1の第2の実施形態を示したものである。
【0036】
代表的な例として図示した双方の成形品実施形態は、キャビティーへの射出の方法、特には、可塑化されたポリマー材料の流入路から成形品を形成するためのキャビティー金型領域への移行がどのようにして行なわれるかによって相違している。射出成形技術では、この領域の構成、したがって、射出成形される成形品1と射出成形後に成形品から取り除かれる残存物いわゆるスプルーとの接続箇所がゲートと称される。
【0037】
既述したように、符号100で表されているスプルーは、
図4および
図5の場合を別として、図中に共に図示されている。本発明によれば、射出形成技術において、トンネルゲート、リングゲート、ディスクゲートまたはダイヤフラムゲートと称されるような、成形品1とスプルー100との溶着接合による結合が好ましい。スプルー100は、それが部材に固着しているために、その後の工程において成形品1から切り離されなければならず、これは機械加工、例えばプレス、穴あけ、研削、旋削、切断および/または研磨により、または熱加工処理、例えばトーチ切断またはレーザ切断によって行なうことが可能である。
【0038】
図1〜
図3に示した本発明による成形品1の実施形態では、いわゆるトンネルゲートが実現された。キャビティーへの射出は、少なくとも2つ、具体的には、好ましい実施形態において成形品1のリング状の内側断面に円周方向に互いに120Eだけずれて位置する、3つの軸対称配置または具体的には中心対称配置された射出口によって行なわれたが、これは特に
図3に示した形のスプルー100に反映されている。2,3,4または5箇所の射出点が可能である。スプルー路は放射状に内側から外側に向かって延びていたが、この場合、本発明の範囲を逸脱することなく、内側通路3の円周の接線に対して直角をなさずに延びるようにすることも可能である。この種のゲートでは、射出箇所の間の大略中央にそれぞれウェルドラインが生ずる。
【0039】
本発明の第2の実施形態において、射出は、
図6および
図7が示すように、単一の、リング状の周回タイプの射出口によって行なわれる。成形品1とスプルー100とのこのような形式の溶着接合による結合はディスクゲートと称されるが、場合によっては、これに代えてリングゲートなる用語も使用される。ただし、通例(この場合もそうであるが)、リングゲートなる用語は上位の一般的な概念として使用され、その中にディスクゲート(
図6,
図7)、ダイヤフラムゲート(円錐状に形成されたスプルー100を有する)およびいわゆるクラウンゲート(外からリング状)が下位概念として組み入れられる。これらのすべてのゲートにおいて、成形品1にウェルドラインが生じない利点を持つ。特に、本発明による方法において、ディスクゲートによる射出箇所200におけるポリマー材料の短い流動距離にて、成形品1とスプルー100との間の最大結合面積と共に、非常に均質性の高い成形品構造を達成することが可能である。
【0040】
ゲート、したがって特に、射出口からの射出が行なわれる射出箇所200は、シールリング5,6が密着する領域とインサート部材4を保持および/または固定する領域との間、またはインサート部材4を保持および/または固定する2つの領域の間に位置していてよい。
【0041】
一般に、この射出箇所200は、ねじ要素1の2つの自由端のうちの一方の自由端から、ねじ要素1の全長Lの1/3未満だけ離間し、特に−スプルー区域A8につき、
図3および
図7に示したように−フランジ突起12とは反対側に位置する、精巧に形成される構造部として外側リングビード7が位置していてよい、ねじ要素1の自由端から、ねじ要素1の全長Lの1/3未満だけ離間しているのが好ましい。この種の精巧な構造部は、雄ねじ部10および、フランジ突起12から本体部2への移行部16と同様に、最大の機械荷重のかかるねじ要素1の領域を表している。これらの領域から射出口が僅かしか離間していないことにより、流動距離が短くなると同時に、最適な高さの強度と局所的に平均を上回る強度の達成が保証される。
【0042】
本発明は図示して説明した実施形態に制限されるものではなく、発明の趣旨において同一の機能を有するあらゆる実施形態をも含むものである。したがって、すでに上述の説明から明らかなように、図示したものとは別途の方法で射出を実現することも可能である。この点で、特に、
図3および
図6から理解できる、内側通路3の内周面に配置された溝が、−これらは符号14および15で表されており、それぞれ、区域A3と共に一部、シールリング5が密着する円筒状区域A4に位置し、あるいは、テーパ区域A1と共に一部、インサート部材4の支持および/または案内を行なう円筒状区域A2に位置している−参照される。その際、組付け状態において、
図4が示すように、シールリング5も−ただし、内壁面に密着せずに−最後に挙げた区域A2に位置させることができる。内側通路3の内周面に配置された溝14,15は、本発明による成形品1を有する器具を好ましくはその案内に使用することのできる、特にガス状流体のために意図的に設けられた漏れ路を示している。これらの溝14,15は、同じく、スプルー100の結合に特に適した領域を表しており、その際、射出口からの射出が総じてシールリング5の密着する区域A4で行われようとも、溝15はシールリング5が密接することのない部分領域である。したがって、区域領域A3/A4に位置する溝15は特にリングゲートに適し、区域領域A1/A2に位置する溝はダイヤフラムゲートに適している。こうした場合、十分な漏洩流れを保証するために、溝14,15は、図面に示されているよりも幅広および/または深く形成することが可能である。
【0043】
さらに、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、さらに付加的で有利な技術対策を講ずることが可能である。その意味で、例えば、
図2および
図3は、ねじ要素1の射出箇所200が内側通路3の内周面の窪み18に配置されていることを示している。これらの窪み18は、
図2から特に明確に読み取ることができる。これらの窪みは、本体部2が最大の肉厚Wを有する区域A8の領域、特に、インサート部材4の支持および/または案内に資する区域A8に配置されている。
【0044】
図3において、窪み18の高さHは、射出箇所200でのねじ要素1の内径D
1(同図右側半分)と、区域A8においてスプルー100が位置していない箇所でのねじ要素1の内径D
0(同図左側半分)との差の1/2の値として生じている。この高さHは、好ましくは、約0.5mm以下、特に0.25mm〜0.35mmであってよい。スプルー100を切り離した後、窪み内にバリが残っていることがあるが、それによって本発明によるねじ要素1の機能性がなんらかの形で不適な毀損を蒙ることはない。これにより、有利には、後加工作業を回避することができる。その際、区域A8においてスプルー100が位置していない箇所でのねじ要素1の内径D
0(同図左側半分)は、好ましくは、軸方向X−Xに配置された次の円筒状に形成された区域A6の内径DIとまったく同一であってもよい。
【0045】
実施形態中に図示していないケース、つまり、成形品1の内側通路3内に、内側溝例えば円周溝および/または内側段、例えば、成形品1の縦軸X−Xの両方向にアンダカットされた区域したがって内側通路3のその他の断面に比して引っ込んだ箇所を生ずる径方向張り出し部または引っ込み部が形成されているケースについては、これらは、−例えば、保持区域およびシール区域−ゲートに不適であることが認められるが、それは、この種のアンダカットされた区域ではスプルー100を切り離すことが非常に困難だからである。また、インサート部材4を支持および/または案内するテーパ区域A1,A3,A5,A7自体も、上述した溝15の場合を例外として、当該箇所で材料射出を行なうにはあまり適していない。
【0046】
さらに、部材11への螺入時の本発明による成形品1の荷重容量を向上させる付加的で有利な技術対策として、
図4および
図5が示すように、本発明による成形品1のための外側シールリング17を配置することのできる、フランジ突起12から本体部2への移行部16の輪郭を、公知のように円弧区域とくに四分円区域によるのではなく、いわゆるツリールート形状のように形成することが可能である。これにより、ネックないしシール17用の溝として形成された移行部16の、ノッチ応力の解消をもたらす形状が生じ、有利には、部材11への螺入時に本発明による成形品1が耐えることのできる捩りモーメントが、従来の形状の部材に比較して、さらに約20パーセントまでも向上する。
【0047】
図8は、上記移行部16のこうしたいわゆるツリールート形状の構造を具体的に示したものである。この構成は以下のようにして行なわれる:先ず、第1のステップにおいて、フランジ突起12ないし本体部2に対してそれぞれ角度μをなす構造線“a”が形成される。その際、角度μは、特に、30°〜60°、好ましくは45°であってよい。第2のステップにおいて、第1のステップで形成された三角形の斜辺の中心から出発する構造線“b”が形成される。この構造線は、フランジ突起12または本体部2に対して、二等辺三角形が生ずるようにして形成される。第3のステップにおいて、第2のステップで形成された三角形の斜辺の中心から出発する構造線“c”が形成され、この場合にも、
図8に示したように、二等辺三角形が生ずる。この構成方式はそれ自体公知であり、“引張り三角法”と称される。次いで、最後の第4のステップにおいて、構造線“c”および“a”の終点E,Fが、第1〜第3のステップで形成された多角形構造を近似的に丸める曲線18によって結ばれる。これには、特に、互いに接線を介して連続する複数の曲線を使用することができる。
図8には、この種の複数の曲線に対応する代表的な半径がR1,R2,R3およびR4で表されている。同じく、こうした構成は3本の構造線に制限されるものではなく、好ましくは角度μに応じて、任意の数のさらなる構造線を加えることが可能である。
【0048】
上述した特徴の全体を備えている本発明による成形品1は、本体部2が内側通路3の壁面に、区域A1,A2,A5,A7,A8,A8または、区域A1/A2、A3/A4の1領域に配置された射出箇所200を有しており、前記区域の全体または前記領域のみがシールリング5,6の密着またはインサート部材4の保持および/または固定に利用されないことを特徴としている。これらの射出箇所は、図中に符号200で示されており、スプルーを除去するために行なわれる加工法に応じ、巨視的または微視的に、スプルー残滓としてまたは少なくとも、本発明による成形品1内で射出箇所から出て放射状に延びる繊維を具体的に示す断面撮像によって認識することが可能である。
【0049】
図9に示した成形品1において、中空円筒型の本体部2は内側通路3を有しており、前記内側通路の内径は−テーパして形成された差込み区域A1を除き−その全長にわたって一定である。この場合にも、軸方向X−Xには、図示した2つのシールリング5,6を密着させる機能ならびにインサート部材4を支持および/案内する機能に応じ、符号A1,A4,AZ,A6およびA8で表された、それぞれ異なる機能を割り当てられた区域が隣接して連なっている。この場合、中間区域AZは
図4および
図5に示した実施形態の区域A5に相当しているが、テーパして形成されてはいない。インサート部材4を直接または間接に保持および/または固定する特別な区域A9および、それと共に、精巧に形成された前記構造部も存在していない。この場合、インサート部材4用のロック要素9は、組付け状態において、フランジ突起12とは反対側に位置する成形品1の端部に相補係合している。したがって、この場合、たとえ本発明の他の実施形態においてそれが好ましいとしても、内側通路3のどの区域にも固有の内径DIが対応している必要はない。
【0050】
本発明による成形品1のこの実施形態も、製造金型キャビティーへの射出が、シールリング5,6の密着に使用されない区域または当該区域の所定の領域において、射出口を通じて内側通路3から径方向外側に向かって行なわれることによって製造される。この場合、そのために予定されているのは、インサート部材4を支持および/または案内する、本体部2の円筒状に形成された区域A8である。シールリング5,6用の2つの密着区域A4,A6間の中間区域AZも基本的に適しているが、その際、インサート部材4の差込み時に少なくとも一方のシール6は、場合によりまだスプルー残滓が存在しているこの区域AZを通過することになるが、これはそれがシール6を損傷する危険と結びついているので、あまり好ましいものとは見なせない。ただし、そのような不都合を取り除くために、このような中間区域AZに、既述したように、内側通路3の内周面に窪み18を設けることが可能であるが、スプルー100の除去後により慎重な後加工作業が行なわれなければならない。この実施形態において、射出箇所200は長さLの(差込み方向Sで見て)後方1/3の領域にあってよいだけでなく、中央1/3の領域にあってもよい。
【0051】
フランジ突起12から成形品1の本体部2への−シールネックないしシール溝として形成されている−移行部16の形状については、この場合にも、既述したツリールート形状が採用されていてよい。外側シールリング17としてOリングが使用されれば、その際、シール17が圧着されていない状態でシール17と溝16との輪郭が互いに異なっていることにより、シール効果が高められる。
【0052】
本発明は、独立請求項1および独立請求項20に定義された特徴コンビネーションに制限されるものではなく、全体として開示されたすべての個別特徴のうちの一定の特徴のその他のいかなる任意のコンビネーションによって定義されていてもよい。このことは、基本的にそれぞれの独立した請求項のいずれの個別特徴も実際に捨象可能でありあるいは本出願のその他の箇所に開示された少なくとも1つの個別特徴によって置き換えられてもよいことを意味している。その限りで、請求項の記載は、発明を画定しようとする第1の試みとしてのみ解されるべきである。
【符号の説明】
【0053】
1 成形品
2 1の本体部
3 1の内側通路
4 インサート部材(
図4,
図5,
図9)
5 4に配置されたシールリング(
図4,
図5,
図9)
6 4に配置されたシールリング(
図4,
図5,
図9)
7 8用の1の外側リングビード
8 4用の保持ケージ(
図4)
9 4のロック要素(
図4,
図9)
10 1に配置された雄ねじ部
11 1を収容する部材
12 2のフランジ突起
13 12の外側輪郭
14 A1,A2における溝
15 A3,A4における溝
16 12/2移行部
17 1に配置された外側シールリング
18 3の内周面に設けられた200用の窪み
100 1へのスプルー
200 1の射出箇所
A1 3内の第1の区域
A2 3内の第2の区域
A3 3内の第3の区域
A4 3内の第4の区域
A5 3内の第5の区域
A6 3内の第6の区域
A7 3内の第7の区域
A8 3内の第8の区域
A9 3内の第9の区域
AZ A4とA6との間の中間区域(
図9)
DA 1の外径
DI 1の内径
D
0 A8の(200が位置していない領域における)3の内径
D
1 A8の(200が位置している領域における)3の内径
F 繊維
H 18の高さ
L 1,2,3の長さ
S 4の差込み方向
SP 3内における4と1との間の遊び
W 2の肉厚
X−X 1の縦軸