特許第6333186号(P6333186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333186
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】リニア振動モータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20180521BHJP
   H02K 33/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B06B1/04 S
   H02K33/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-7249(P2015-7249)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2016-131915(P2016-131915A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】石井 栞
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−163172(JP,A)
【文献】 特開2014−23238(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0231060(US,A1)
【文献】 米国特許第8987951(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
H02K 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の支持面を有する磁性体からなる板状体と、
前記支持面の複数箇所に直接又は接触子を介して部分接触し、前記支持面に沿った一軸方向に振動する可動子と、
前記可動子の振動に弾性反発する弾性部材と、
前記板状体に対して固定され、前記可動子と前記板状体との間隙に前記一軸方向に対して交差する巻線部分を配置するコイルとを備え、
前記可動子は、前記板状体との間に前記コイルの巻線部分を通過する磁束を形成すると共に、当該可動子を前記支持面側に磁気吸着させるマグネットを備えることを特徴とするリニア振動モータ。
【請求項2】
前記接触子は転動体であり、前記板状体側と前記可動子側に点又は線接触することを特徴とする請求項1記載のリニア振動モータ。
【請求項3】
前記マグネットは、前記支持面に交差する方向で互いに逆向きの着磁方向を有する一対のマグネット片を備え、
前記コイルは、前記マグネットと前記板状体との間隙で扁平状に巻かれていることを特徴とする請求項1又は2記載のリニア振動モータ。
【請求項4】
前記可動子は、前記マグネットを挟み前記一軸方向に沿って配置される一対の分銅と、前記マグネットと前記分銅を一体に連結する連結体を備え、
前記連結体は、磁性体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニア振動モータ。
【請求項5】
前記連結体上に前記接触子が保持されることを特徴とする請求項4記載のリニア振動モータ。
【請求項6】
前記板状体は前記可動子の一面側を覆い、前記可動子の他の面側は非磁性体の枠体で覆われており、前記枠体内に前記弾性部材が支持されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリニア振動モータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載されたリニア振動モータを備える携帯電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号入力によって可動子を直線的に往復振動させるリニア振動モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動モータ(或いは振動アクチュエータ)は、通信機器の着信や各種電子機器のアラーム発信などによって振動を発生させ、通信機器の携帯者や各種電子機器に触れる操作者に対して振動によって信号入力の状況を伝えるものであり、携帯電話を含む携帯情報端末などの各種電子機器に装備されている。
【0003】
振動モータは、各種の形態が開発されている中で、可動子の直線的な往復振動によって比較的大きな振動を発生させることができるリニア振動モータが知られている。従来のリニア振動モータは、可動子側に錘とマグネットを設け、固定子側に設けたコイルに通電することでマグネットに作用するローレンツ力が駆動力となり、振動方向に沿って弾性支持される可動子を往復振動させる(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−97747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯電子機器の小型化・薄型化に伴い、それに装備される振動モータには一層の小型化・薄型化の要求がなされている。特に、スマートフォンなどのフラットパネル表示部を備える電子機器においては、表示面と直交する厚さ方向の機器内スペースが限られているので、そこに配備される振動モータには薄型化の高い要求がある。
【0006】
リニア振動モータの薄型化を考える際には、マグネット体積を十分に確保して所望の駆動力を得ると共に錘の質量を十分に確保して所望の慣性力を得ようとすると、マグネットと錘を備える可動子を扁平形状にして薄厚化を図ることが考えられる。この場合、仮に、直線的な振動軸周りに可動子が揺動(ローリング)すると、扁平形状の可動子は、振動方向に沿った側部が周囲の枠体に接触しやすい形状になっているので、接触音が発生するなどして安定した動作が得られない。このため、従来技術は、2本のガイドシャフトを設けて可動子の振動軸周りの揺動を抑え、安定した直線振動を実現している。
【0007】
しかしながら、2本のガイドシャフトを設けると、部品点数が多くなると共に、2本のガイドシャフトを平行に配置するために取り付けに高い精度が求められるので、組み立て作業が煩雑になる問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、可動子を扁平形状にすることで、リニア振動モータの薄型化を達成すること、部品点数を削減し、組み立て作業の煩雑さを避ける構造で、扁平形状の可動子を安定的に振動させること、などが発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
平面状の支持面を有する磁性体からなる板状体と、前記支持面の複数箇所に直接又は接触子を介して部分接触し、前記支持面に沿った一軸方向に振動する可動子と、前記可動子の振動に弾性反発する弾性部材と、前記板状体に対して固定され、前記可動子と前記板状体との間隙に前記一軸方向に対して交差する巻線部分を配置するコイルとを備え、前記可動子は、前記板状体との間に前記コイルの巻線部分を通過する磁束を形成すると共に、当該可動子を前記支持面側に磁気吸着させるマグネットを備えることを特徴とするリニア振動モータ。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明は、板状体における平面状の支持面に対して、可動子を複数箇所で部分接触させ、可動子は支持面側に磁気吸着された状態で一軸方向に振動する。このため、ガイドシャフトなどを用いること無く、扁平形状の可動子を平面状の支持面に沿って安定的に振動させることができる。これにより、本発明のリニア振動モータは、部品点数を削減し、組み立ての煩雑さを避ける構造で、扁平形状の可動子を安定的に振動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るリニア振動モータの全体構成を示した分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るリニア振動モータの全体構成を示した説明図((a)が平面図、(b)がA−A断面図)である。
図3】本発明の実施形態に係るリニア振動モータの説明図(図2(a)におけるB−B断面図)である。
図4】本発明の実施形態に係るリニア振動モータの外観斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係るリニア振動モータを備える携帯電子機器(携帯情報端末)を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図において、各図に示す共通する部位には同一符号を付しており、重複説明は省略する。図において、振動方向(一軸方向)をX軸方向とし、それに直交する方向をY軸方向(幅方向)とZ軸方向(高さ方向)とする。
【0013】
図1(分解斜視図),図2((a)が平面図、(b)がA−A断面図),図3図2(a)におけるB−B断面図)に示すように、本発明の実施形態に係るリニア振動モータ1は、板状体2,可動子4,弾性部材7,コイル8,枠体10を備えている。
【0014】
板状体2は、図示の例では、上部が開放されている非磁性体の枠体10における上部カバーを構成するものであり、平面状の支持面2Aを有する磁性体からなる。可動子4は、分銅5とマグネット9とこれらを連結する連結体6を備えており、板状体2における支持面2Aの複数箇所(好ましくは3箇所)に接触子3を介して部分接触している。図示の例では、接触子3を介して板状体2と可動子4が部分接触する例を示しているが、板状体2側又は可動子4側からZ軸方向に突出する突起部を設けて、両者を直接部分接触させたものであってもよい。
【0015】
接触子3は、板状体2側と可動子4側に転がり接触する転動体とすることが好ましい。転動体は、図示のように、板状体2側と可動子4側に点接触する球体にするか、或いは板状体2側と可動子4側に線接触する筒状体(コロ)にすることができる。
【0016】
可動子4は、板状体2との部分接触を維持しながら、支持面2Aに沿った一軸方向(図示X軸方向)に振動する。可動子4側には、接触子3を保持するガイド溝11が設けられ、このガイド溝11は可動子4の振動方向(図示X軸方向)に沿って延設されている。図示の例では、可動子4側にガイド溝11を設けて、板状体2側に接触子3を保持する保持溝12を設けた例を示しているが、板状体2側にガイド溝11を設けて可動子4側に保持溝12を設けてもよく、また、板状体2側と可動子4側の両方にガイド溝11を設けてもよい。
【0017】
可動子4を駆動させるためのコイル8は、板状体2に対して固定され、可動子4と板状体2との間隙に一軸方向(図示X軸方向)に対して交差する巻き線部分8Aを配置する。図示の例では、コイル8は、マグネット9と板状体2との間隙で扁平状に巻かれている。前述した巻き線部分8Aは、可動子4をX軸方向に振動させるためのローレンツ力を発生させる電流の向きを規定するものであり、このような巻き線部分8Aが形成されていれば、コイル8の巻き方自体は図示の例に限らない。
【0018】
可動子4が備えるマグネット9は、磁性体(ヨーク)である板状体2との間に、コイル8の前述した巻き線部分8Aを通過する磁束を形成すると共に、可動子4を板状体2の支持面2A側に磁気吸着させる機能を有する。図示の例では、マグネット9は、支持面2Aに交差する方向(図示Z軸方向)で互いに逆向きの着磁方向を有する一対のマグネット片9A,9Bを備えており、このマグネット片9A,9Bをコイル8の巻き線部分8Aに対向して配置することで、巻き線部分8AをZ軸方向に通過する磁束を形成している。また、枠体10を非磁性体とすることで、マグネット9と磁性体である板状体2との磁気吸着力を高めている。
【0019】
可動子4が備える分銅5は、マグネット9を挟み一軸方向(図示X軸方向)に沿って一対配置されている。これにより、可動子4には、一対の分銅5とその間に配置されるマグネット9とが一軸方向(図示X軸方向)に沿って並列配置されている。この分銅5とマグネット9を一体に連結する連結体6は、マグネット9の下面側(板状体2に面する側と逆側)を支持するマグネット支持部6Aと、分銅5の上面側(板状体2に面する側)を支持する分銅支持部6Bを備える屈折した板状部材である。マグネット9,分銅5と連結体6とは接着や溶接などで接合されている。また、マグネット支持部6Aには、必要に応じてZ軸方向に屈折させた補強部6A1が設けられる。
【0020】
連結体6の分銅支持部6Bには、連結体6上に接触子3を保持するガイド溝11を設けることができる。このように連結体6にガイド溝11を設けることで、連結体6の材料を選択して、ガイド溝11内での接触子3との接触抵抗を低減させることができる。
【0021】
また、連結体6は、磁性体であり、マグネット9と板状体2とにより磁気回路が構成されている。この際、接触子3を保持するガイド溝11が形成された分銅支持部6Bが接触子3を介して板状体2に近接した状態になるので、この分銅支持部6Bと板状体2との磁気吸着力が高められ、ガイド溝11と保持溝12との間で接触子3を確実に保持した状態で、可動子4を板状体2側に磁気吸着させることができる。
【0022】
弾性部材7は、可動子4の一軸方向に沿った振動に弾性反発するバネ(例えば、コイルバネ)であって、枠体10内に支持されている。弾性部材7の一端側は分銅5の端面に支持され、弾性部材7の他端側は枠体10に設けられる支持部10Aに支持されている。
【0023】
このようなリニア振動モータ1は、コイル8への通電でマグネット9に作用するローレンツ力によって駆動し、一軸方向(図示X軸方向)に沿って直線的に往復振動する。この際、扁平状の可動子4は、板状体2とマグネット9との磁気吸着によって、板状体2における平面状の支持面2Aに複数箇所(好ましくは3箇所)で部分接触した状態を維持しながら、支持面2Aに沿って振動する。これによって、扁平状の可動子4が振動軸周りに揺動することを抑えることができ、安定した直線振動を得ることができる。
【0024】
また、リニア振動モータ1は、板状体2における支持面2Aの平面を精度良く形成することで、組み立て時に精度の高い組み付け作業が不要になる。また、ガイドシャフトを省くことができるので部品点数の削減も可能になる。これによって組み立て時の作業性を改善することができる。
【0025】
図4は、組み立てられたリニア振動モータ1を示している。リニア振動モータ1は、板状体2が可動子4の一面側を覆う上部カバーとなり、その他の面側が枠体10で覆われた筐体構造を備えている。板状体2には、コイル8の端子が接続される信号入力端子部2Bが側部に張り出すように形成されている。
【0026】
図5は、本発明の実施形態に係るリニア振動モータ1を装備した携帯電子機器の一例として、携帯情報端末100を示している。安定した振動が得られ薄型化や幅方向のコンパクト化が可能なリニア振動モータ1を備える携帯情報端末100は、通信機能における着信やアラーム機能などの動作開始・終了時を異音が発生しにくい安定した振動で使用者に伝えることができる。また、リニア振動モータ1の薄型化・幅方向のコンパクト化によって高い携帯性或いはデザイン性を追求した携帯情報端末100を得ることができる。更に、リニア振動モータ1は、厚さを抑えた直方体形状の筐体内に各部を収容したコンパクト形状であるから、薄型化された携帯情報端末100の内部にスペース効率よく装備することができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1:リニア振動モータ,
2:板状体,2A:支持面,2B:信号入力端子部,
3:接触子(転動体),4:可動子,5:分銅,
6:連結体,6A:マグネット支持部,6A1:補強部,
6B:分銅支持部,
7:弾性部材,8:コイル,8A:巻線部分,
9:マグネット,9A,9B:マグネット片,
10:枠体,10A:支持部,11:ガイド溝,12:保持溝,
100:携帯情報端末(携帯電子機器)
図1
図2
図3
図4
図5