特許第6333208号(P6333208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333208
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】力検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/18 20060101AFI20180521BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G01L1/18 A
   G01L9/00 303E
   H01L29/84 A
   H01L29/84 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-77773(P2015-77773)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-197076(P2016-197076A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2017年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 理恵
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】勝間田 卓
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−58266(JP,A)
【文献】 特開2002−257645(JP,A)
【文献】 特開2001−304997(JP,A)
【文献】 特開平8−271363(JP,A)
【文献】 特開平3−20634(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0084269(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00− 1/26
G01L 7/00−23/32
G01L27/00−27/02
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と力伝達ブロックを備え、
前記基板は、
主面に設けられており、ブリッジ回路を構成しているメサ型ゲージと、
前記主面に設けられており、不純物が導入されている接続領域と、
前記主面に設けられており、前記メサ型ゲージの周囲を一巡しており、前記力伝達ブロックに接合する封止部と、を有し、
前記メサ型ゲージは、
第1方向に延びる第1メサ型ゲージと、
前記第1方向と異なる第2方向に延びており、前記第1メサ型ゲージから離れている第2メサ型ゲージと、を有し、
前記接続領域は、前記第1メサ型ゲージの一端と前記第2メサ型ゲージの一端の間に配置されており、前記第1メサ型ゲージの一端と前記第2メサ型ゲージの一端を電気的に接続する、力検知装置。
【請求項2】
前記基板は、前記主面に設けられており、不純物が導入されている配線をさらに有しており、
前記接続領域は、前記第1メサ型ゲージの一端と前記第2メサ型ゲージの一端の間で狭窄されている狭窄部を含み、
前記配線は、前記狭窄部に接続する、請求項1に記載の力検知装置。
【請求項3】
前記基板の前記第1方向は、応力に対して電気抵抗値が相対的に大きく変化する方向であり、
前記基板の前記第2方向は、前記第1方向に対して直交しており、応力に対して電気抵抗値が相対的に小さく変化する方向であり、
前記第1メサ型ゲージは、第1高感度メサ型ゲージと第2高感度メサ型ゲージを有し、
前記第2メサ型ゲージは、第1低感度メサ型ゲージと第2低感度メサ型ゲージを有し、
前記第1高感度メサ型ゲージと前記第2高感度メサ型ゲージは、前記封止部の内側の内側領域の中心点に対して点対称に配置されている、請求項1又は2に記載の力検知装置。
【請求項4】
前記内側領域は、矩形状であり、
前記内側領域は、1組の対向する辺が前記第1方向に延びており、別の1組の対向する辺が前記第2方向に延びており、
前記第1高感度メサ型ゲージと前記第2高感度メサ型ゲージは、前記内側領域を前記第2方向に3等分した位置に配置されており、かつ、前記内側領域の前記第1方向の中央に配置されている、請求項3に記載の力検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、ピエゾ抵抗効果を利用する力検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピエゾ抵抗効果を利用する力検知装置が開発されており、その一例が特許文献1に開示されている。この種の力検知装置は、基板及び力伝達ブロックを備える。基板の主面には、ブリッジ回路を構成する複数のメサ型ゲージが設けられている。例えば、ブリッジ回路を構成する複数のメサ型ゲージは、矩形の辺に対応して配置されている。力伝達ブロックは、複数のメサ型ゲージの頂面に接するように設けられている。力伝達ブロックがメサ型ゲージを押圧すると、メサ型ゲージに加わる圧縮応力が増大し、メサ型ゲージの電気抵抗値がピエゾ抵抗効果によって変化する。この電気抵抗値の変化から力伝達ブロックに加わる力が検知される。
【0003】
特許文献2は、複数のメサ型ゲージの周囲を一巡して力伝達ブロックが基板に接合する封止型構造を有する力検知装置を提案する。このような、封止型の力検知装置は、力伝達ブロックに加わる力が複数のメサ型ゲージに効率よく伝達され、高感度な特性を有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−304997号公報
【特許文献2】特開2006−058266号公報(特に、図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
封止型の力検知装置では、メサ型ゲージに加わる圧縮応力は、メサ型ゲージが封止されている空間(以下、封止空間と称する)内におけるメサ型ゲージの位置に依存する。このため、メサ型ゲージに適切に圧縮応力を加えるためには、メサ型ゲージを封止空間内の所定の位置に配置する必要がある。この結果、矩形の辺に対応して配置されている複数のメサ型ゲージがブリッジ回路を構成する場合は、各々のメサ型ゲージの長さが自動的に決定されてしまう。このため、メサ型ゲージの感度を調整するためには、メサ型ゲージの幅を変更するしかなく、メサ型ゲージの設計の自由度が低い。
【0006】
本明細書では、ブリッジ回路を構成する複数のメサ型ゲージを備える封止型の力検知装置において、メサ型ゲージの設計の自由度を向上する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する力検知装置の一実施形態は、基板と力伝達ブロックを備える。基板は、メサ型ゲージと、接続領域と、封止部を有する。メサ型ゲージは、基板の主面に設けられており、ブリッジ回路を構成している。接続領域は、基板の主面に設けられており、不純物が導入されている。封止部は、基板の主面に設けられており、メサ型ゲージの周囲を一巡しており、力伝達ブロックに接合する。メサ型ゲージは、第1メサ型ゲージと、第2メサ型ゲージを有する。第1メサ型ゲージは、第1方向に延びる。第2メサ型ゲージは、第1方向と異なる第2方向に延びており、第1メサ型ゲージから離れている。接続領域は、第1メサ型ゲージの一端と第2メサ型ゲージの一端の間に配置されており、第1メサ型ゲージの一端と第2メサ型ゲージの一端を電気的に接続する。
【0008】
上記の力検知装置では、第1メサ型ゲージの一端と第2メサ型ゲージの一端は直接的に接続しておらず、両者の間には接続領域が配置されている。第1メサ型ゲージの一端及び第2メサ型ゲージの一端は、接続領域に電気的に接続されている。このため、接続領域の範囲を調整することにより、第1メサ型ゲージの長さ及び第2メサ型ゲージの長さを調整できる。従って、ブリッジ回路を構成するメサ型ゲージを備える封止型の力検知装置において、第1メサ型ゲージ及び第2メサ型ゲージの設計の自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例の力検知装置の分解斜視図を模式的に示しており、半導体基板と力伝達ブロックで構成される封止空間の範囲を二点鎖線で示す。
図2図2は、実施例の力検知装置が備える半導体基板の平面図を模式的に示しており、半導体基板と力伝達ブロックで構成される封止空間の範囲を二点鎖線で示す。
図3図3は、図2のIII-III線に対応した断面図を模式的に示す。
図4図4は、図2のIV-IV線に対応した断面図を模式的に示す。
図5図5は、実施例の力検知装置が備える力伝達ブロックを示しており、半導体基板の接合する面を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0011】
本明細書で開示される力検知装置の一実施形態は、各種圧力を検知するセンサであり、一例では、気圧又は液圧を検知対象としてもよい。この力検知装置は、基板と力伝達ブロックを備えていてもよい。基板の材料は、圧縮応力に応じて電気抵抗が変化するピエゾ抵抗効果が現われるものが望ましい。例えば、基板としては、半導体基板及びSOI基板が例示される。基板は、メサ型ゲージと、接続領域と、封止部を有する。メサ型ゲージは、基板の主面に設けられており、ブリッジ回路を構成している。接続領域は、基板の主面に設けられており、不純物が導入されている。封止部は、基板の主面に設けられており、メサ型ゲージの周囲を一巡しており、力伝達ブロックに接合する。メサ型ゲージは、第1メサ型ゲージと、第2メサ型ゲージを有する。第1メサ型ゲージは、第1方向に延びる。第2メサ型ゲージは、第1方向と異なる第2方向に延びており、第1メサ型ゲージから離れている。接続領域は、第1メサ型ゲージの一端と第2メサ型ゲージの一端の間に配置されており、第1メサ型ゲージの一端と第2メサ型ゲージの一端を電気的に接続する。
【0012】
本明細書が開示する力検知装置では、基板が、基板の主面に設けられており、不純物が導入されている配線をさらに有していてもよい。接続領域は、第1メサ型ゲージの一端と第2メサ型ゲージの一端の間で狭窄されている狭窄部を含んでいてもよい。配線は、狭窄部に接続する。例えば、狭窄部を含まない接続領域では、製造バラツキによって接続領域内を流れる電流の経路もばらつく。このような電流経路のばらつきは、零点オフセット特性の悪化の原因となる。一方、狭窄部を含む接続領域では、接続領域内を流れる電流の経路を制限することができる。これにより、力検知装置の零点オフセット特性の悪化が抑えられる。
【0013】
本明細書が開示する力検知装置では、基板の第1方向が、応力に対して電気抵抗値が相対的に大きく変化する方向であり、基板の第2方向が、第1方向に対して直交しており、応力に対して電気抵抗値が相対的に小さく変化する方向であってもよい。第1メサ型ゲージは、第1高感度メサ型ゲージと第2高感度メサ型ゲージを有し、第2メサ型ゲージは、第1低感度メサ型ゲージと第2低感度メサ型ゲージを有していてもよい。第1高感度メサ型ゲージと第2高感度メサ型ゲージは、封止部の内側の内側領域の中心点に対して点対称に配置されていてもよい。この構成によると、力伝達ブロックに加わる力に対して第1高感度メサ型ゲージ及び第2高感度メサ型ゲージの各々に伝達される力が等しくなるので、力伝達ブロックに加わる力に対する出力の線形性を向上できる。
【0014】
本明細書が開示する力検知装置では、内側領域が、矩形状であってもよい。内側領域は、1組の対向する辺が第1方向に延びており、別の1組の対向する辺が第2方向に延びていてもよい。第1高感度メサ型ゲージと第2高感度メサ型ゲージは、内側領域を第2方向に3等分した位置に配置されており、かつ、内側領域の第1方向の中央に配置されていてもよい。この構成によると、力伝達ブロックに加わる力は、第1高感度メサ型ゲージ及び第2高感度メサ型ゲージに対して垂直な方向に伝達される。このため、第1高感度メサ型ゲージ及び第2高感度メサ型ゲージが斜めに圧縮することが抑制され、力伝達ブロックに加わる力に対する出力の線形性をさらに向上できる。
【実施例1】
【0015】
図1に示されるように、力検知装置1は、例えば、圧力容器の容器内圧を検知する半導体圧力センサであり、半導体基板2及び力伝達ブロック4を備える。
【0016】
図1,2に示されるように、半導体基板2は、n型の単結晶シリコンであり、その主面2Sが(110)結晶面である。半導体基板2の主面2Sには複数の溝11が形成されている。複数の溝11は、半導体基板2の主面2Sの検知部10内に形成されており、その検知部10内に複数のメサ型ゲージ12,14,16,18を画定する。
【0017】
図1,2,3,4に示されるように、メサ型ゲージ12,14,16,18は、溝11の底面からメサ状に突出しており、その高さは約0.5〜5μmである。メサ型ゲージ12,14,16,18の頂面は、溝11の周囲の半導体基板2の主面2Sと同一面に位置する。即ち、メサ型ゲージ12,14,16,18は、例えばドライエッチング技術を利用して、半導体基板2の主面2Sに複数の溝11を形成した残部として形成される。
【0018】
図1,2に示されるように、検知部10のメサ型ゲージ12,14,16,18は、正方形の辺に対応して配置されているが、メサ型ゲージ12,14,16,18の各々の端部は他のメサ型ゲージ12,14,16,18の各々の端部から離れて配置されている。対向する一対の辺を構成するメサ型ゲージ14,18はそれぞれ、第1高感度メサ型ゲージ14及び第2高感度メサ型ゲージ18と称する。対向する他の一対の辺を構成するメサ型ゲージ12,16はそれぞれ、第1低感度メサ型ゲージ12及び第2低感度メサ型ゲージ16と称する。
【0019】
第1高感度メサ型ゲージ14及び第2高感度メサ型ゲージ18は、半導体基板2の<110>方向に沿って延びている。半導体基板2の<110>方向に延びる第1高感度メサ型ゲージ14及び第2高感度メサ型ゲージ18は、圧縮応力に応じて電気抵抗値が大きく変化することを特徴としており、ピエゾ抵抗効果を有する。なお、半導体基板2の<110>方向が「第1方向」の一例に相当する。
【0020】
第1低感度メサ型ゲージ12及び第2低感度メサ型ゲージ16は、半導体基板2の<110>方向と直交する半導体基板2の<100>方向に沿って延びている。半導体基板2の<100>方向に延びる第1低感度メサ型ゲージ12及び第2低感度メサ型ゲージ16は、圧縮応力に応じて電気抵抗値がほとんど変化しないことを特徴としており、ピエゾ抵抗効果を実質的に有しない。なお、半導体基板2の<100>方向が「第2方向」の一例に相当する。
【0021】
図1,2,3,4に示されるように、メサ型ゲージ12,14,16,18の表面には、p型不純物が導入されたゲージ部12a,14a,16a,18aが形成されている。ゲージ部12a,14a,16a,18aの不純物濃度は、約1×1018〜1×1021cm-3である。ゲージ部12a,14a,16a,18aの不純物濃度及び拡散深さは、メサ型ゲージ12,14,16,18の各々において共通である。ゲージ部12a,14a,16a,18aは、pn接合によって、n型の半導体基板2から実質的に絶縁されている。
【0022】
メサ型ゲージ12,14,16,18の各々の幅及び長さは共通である。このため、メサ型ゲージ12,14,16,18のゲージ部12a,14a,16a,18aの各々の抵抗値は等しい。なお、メサ型ゲージ12,14,16,18の幅とは、長手方向に直交する方向の幅である。この例では、高感度メサ型ゲージ14,18の幅は半導体基板2の<100>方向の幅となり、低感度メサ型ゲージ12,16の幅は半導体基板2の<110>方向の幅となる。高感度メサ型ゲージ14,18は、低感度メサ型ゲージ12,16の各々の中点を結ぶ直線(図示省略)に関して線対称である。低感度メサ型ゲージ12,16は、高感度メサ型ゲージ14,18の各々の中点を結ぶ直線(図示省略)に関して線対称である。
【0023】
図1,2に示されるように、半導体基板2は、主面2Sにp型不純物が導入された接続領域42,44,46,48を有する。接続領域42,44,46,48の不純物濃度は、約1×1018〜1×1021cm-3である。接続領域42,44,46,48は、メサ型ゲージ12,14,16,18のゲージ部12a,14a,16a,18aと同一の工程で形成される。
【0024】
第1接続領域42は、第1低感度メサ型ゲージ12の一端と第1高感度メサ型ゲージ14の一端の間に配置されている。第1接続領域42は、大きく狭窄された狭窄部42aと、狭窄されることにより分離した2つの部分42b及び部分42cにより構成されている。部分42b及び部分42cが第1接続領域42の大部分を占めており、狭窄部42aが占める範囲は極めて狭い。部分42bと部分42cは、狭窄部42aを介して接続されている。部分42bの抵抗値と部分42cの抵抗値は等しくなるように構成されている。第1低感度メサ型ゲージ12のゲージ部12aの一端は部分42bに電気的に接続されており、第1高感度メサ型ゲージ14のゲージ部14aの一端は部分42cに電気的に接続されている。即ち、第1接続領域42は、ゲージ部12aの一端とゲージ部14aの一端を電気的に接続している。
【0025】
第2接続領域44は、第1高感度メサ型ゲージ14の他端と第2低感度メサ型ゲージ16の一端の間に配置されている。第2接続領域44は、大きく狭窄された狭窄部44aと、狭窄されることにより分離した2つの部分44b及び部分44cにより構成されている。狭窄部44a、部分44b及び部分44cの構成は、第1接続領域42の狭窄部42a、部分42b及び部分42cの構成と同一である。第1高感度メサ型ゲージ14のゲージ部14aの他端は部分44bに電気的に接続されており、第2低感度メサ型ゲージ16のゲージ部16aの一端は部分44cに電気的に接続されている。即ち、第2接続領域44は、ゲージ部14aの他端とゲージ部16aの一端を電気的に接続している。
【0026】
第3接続領域46は、第2低感度メサ型ゲージ16の他端と第2高感度メサ型ゲージ18の一端の間に配置されている。第3接続領域46は、大きく狭窄された狭窄部46aと、狭窄されることにより分離した2つの部分46b及び部分46cにより構成されている。狭窄部46a、部分46b及び部分46cの構成は、第1接続領域42の狭窄部42a、部分42b及び部分42cの構成と同一である。第2低感度メサ型ゲージ16のゲージ部16aの他端は部分46bに電気的に接続されており、第2高感度メサ型ゲージ18のゲージ部18aの一端は部分46cに電気的に接続されている。即ち、第3接続領域46は、ゲージ部16aの他端とゲージ部18aの一端を電気的に接続している。
【0027】
第4接続領域48は、第2高感度メサ型ゲージ18の他端と第1低感度メサ型ゲージ12の他端の間に配置されている。第4接続領域48は、大きく狭窄された狭窄部48aと、狭窄されることにより分離した2つの部分48b及び部分48cにより構成されている。狭窄部48a、部分48b及び部分48cの構成は、第1接続領域42の狭窄部42a、部分42b及び部分42cの構成と同一である。第2高感度メサ型ゲージ18のゲージ部18aの他端は部分48bに電気的に接続されており、第1低感度メサ型ゲージ12のゲージ部12aの他端は部分48cに電気的に接続されている。即ち、第4接続領域48は、ゲージ部18aの他端とゲージ部12aの他端を電気的に接続している。
【0028】
第1低感度メサ型ゲージ12のゲージ部12aと、その両端に直列に接続された第1接続領域42の部分42b及び第4接続領域48の部分48cにより、1つの第1抵抗体112が構成されている。第1接続領域42の部分42b及び第4接続領域48の部分48cは幅広に構成されているので、それらの抵抗値は極めて低い。このため、第1抵抗体112の抵抗値は、主に第1低感度メサ型ゲージ12のゲージ部12aの抵抗値に依存する。
【0029】
第1高感度メサ型ゲージ14のゲージ部14aと、その両端に直列に接続された第1接続領域42の部分42c及び第2接続領域44の部分44bにより、1つの第2抵抗体114が構成されている。第1接続領域42の部分42c及び第2接続領域44の部分44bは幅広に構成されているので、それらの抵抗値は極めて低い。このため、第2抵抗体114の抵抗値は、主に第1高感度メサ型ゲージ14のゲージ部14aの抵抗値に依存する。
【0030】
第2低感度メサ型ゲージ16のゲージ部16aと、その両端に直列に接続された第2接続領域44の部分44c及び第3接続領域46の部分46bにより、1つの第3抵抗体116が構成されている。第2接続領域44の部分44c及び第3接続領域46の部分46bは幅広に構成されているので、それらの抵抗値は極めて低い。このため、第3抵抗体116の抵抗値は、主に第2低感度メサ型ゲージ16のゲージ部16aの抵抗値に依存する。
【0031】
第2高感度メサ型ゲージ18のゲージ部18aと、その両端に直列に接続された第3接続領域46の部分46c及び第4接続領域48の部分48bにより、1つの第4抵抗体118が構成されている。第3接続領域46の部分46c及び第4接続領域48の部分48bは幅広に構成されているので、それらの抵抗値は極めて低い。このため、第4抵抗体118の抵抗値は、主に第2高感度メサ型ゲージ18のゲージ部18aの抵抗値に依存する。抵抗体112,114,116,118の各々の抵抗値は等しい。
【0032】
図1,2に示されるように、半導体基板2は、主面2Sにp型不純物が導入された配線22,24,26,28を有する。配線22,24,26,28の不純物濃度は、約1×1018〜1×1021cm-3である。配線22,24,26,28は、メサ型ゲージ12,14,16,18のゲージ部12a,14a,16a,18aと同一の工程で形成される。
【0033】
メサ型ゲージ12,14,16,18は、検知部10内にフルブリッジ回路を構成する。電源配線28は、第4接続領域48の狭窄部48aに接続している。基準配線24は、第2接続領域44の狭窄部44aに接続している。第1抵抗体112と第2抵抗体114は、電源配線28と基準配線24の間に、第1接続領域42の狭窄部42aを介して直列に接続されている。第4抵抗体118と第3抵抗体116は、電源配線28と基準配線24の間に、第3接続領域46の狭窄部46aを介して直列に接続されている。第1抵抗体112と第2抵抗体114の組と第4抵抗体118と第3抵抗体116の組は、電源配線28と基準配線24の間に並列に接続されている。
【0034】
第1出力配線26は、第4抵抗体118と第3抵抗体116の間の第3接続領域46の狭窄部46aに接続している。第2出力配線22は、第1抵抗体112と第2抵抗体114の間の第1接続領域42の狭窄部42aに接続している。
【0035】
基準配線24は、基準電極34に電気的に接続する。第1出力配線26は、第1出力電極36に電気的に接続する。電源配線28は、電源電極38に電気的に接続する。第2出力配線22は、第2出力電極32に電気的に接続する。これらの電極32,34,36,38は、半導体基板2の主面2S上に設けられており、力伝達ブロック4で覆われる範囲外に配置されている。基準配線24及び電源配線28は幅広に構成されており、それらの抵抗値は、抵抗体112,114,116,118の抵抗値に対して無視できるほどに小さい。第1出力配線26の抵抗値と第2出力配線22の抵抗値は、等しくなるように構成されている。
【0036】
図1,3,4に示されるように、力伝達ブロック4は、直方体形状を有しており、シリコン層4aと酸化シリコン層4bを有する。半導体基板2と力伝達ブロック4は、常温個相接合技術を利用して接合される。具体的には、アルゴンイオンを用いて半導体基板2の主面2S及び力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bの表面を活性化させた後に、超高真空中で半導体基板2の主面2Sと力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bの表面を接触させ、両者を接合させる。
【0037】
図3,4,5に示されるように、力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bの一部が除去されており、力伝達ブロック4の半導体基板2と接合する側の面に溝4cが形成されている。溝4cが形成されていることにより、力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bは、封止部分40aと押圧部分40bに区画されている。また、このような溝4cが形成されていることにより、半導体基板2と力伝達ブロック4の間には、外部から隔てられた封止空間6が構成される。
【0038】
力伝達ブロック4の封止部分40aは、メサ型ゲージ12,14,16,18の周囲を一巡するように、半導体基板2の主面2Sに接合する。半導体基板2のうちの力伝達ブロック4の封止部分40aが接合する部分を封止部20という。力伝達ブロック4の封止部分40aが矩形状に構成されているので、半導体基板2の封止部20は、高感度メサ型ゲージ14,18の長手方向と平行な部分と低感度メサ型ゲージ12,16の長手方向と平行な部分で構成される。半導体基板2の主面2Sにおける封止部20の内側の領域は正方形形状となっている。封止部20の内側の領域の1組の対向する辺は、半導体基板2の<110>方向に延びており、別の1組の対向する辺は、半導体基板2の<100>方向に延びている。半導体基板2の封止部20と力伝達ブロック4の封止部分40aは、気密に接合する。
【0039】
図1,2に示されるように、高感度メサ型ゲージ14,18は、半導体基板2の<100>方向において封止空間6を3等分した位置(即ち、封止部20の内側の領域を3等分した位置)に配置されている。低感度メサ型ゲージ12,16は、半導体基板2の<110>方向において封止空間6を3等分した位置(即ち、封止部20の内側の領域を3等分した位置)に配置されている。
【0040】
力伝達ブロック4の押圧部分40bは、メサ型ゲージ12,14,16,18の頂面に接合している。押圧部分40bと高感度メサ型ゲージ14、18の各々の頂面との接触面積は等しい。押圧部分40bと低感度メサ型ゲージ12、16の各々の頂面との接触面積は等しい。
【0041】
次に、力検知装置1の動作を説明する。まず、力検知装置1は、電源電極38に定電流源が接続され、基準電極34が接地され、第1出力電極36と第2出力電極32の間に電圧測定器が接続して用いられる。力検知装置1では、力伝達ブロック4に加わる容器内圧が変化すると、力伝達ブロック4を介してメサ型ゲージ12,14,16,18のゲージ部12a,14a,16a,18aに加わる圧縮応力も変化する。ピエゾ抵抗効果が現われる高感度メサ型ゲージ14,18のゲージ部14a,18aの電気抵抗値は、圧縮応力に比例して変化する。このため、第1出力電極36と第2出力電極32の電位差は、ゲージ部14a,18aに加わる圧縮応力に比例する。これにより、電圧測定器で計測される電圧変化から力伝達ブロック4に加わる容器内圧が検知される。
【0042】
力検知装置1は、力伝達ブロック4によって半導体基板2の検知部10が封止される封止型構造を有する。この力検知装置1では、ブリッジ回路を構成するメサ型ゲージ12,14,16,18の各々の端部が互いに直接的に接続しておらず、これらの端部の間には、接続領域42,44,46,48が配置されている。接続領域42,44,46,48の各々を挟む2つのメサ型ゲージは、接続領域42,44,46,48の各々を介して電気的に接続されている。このため、接続領域42,44,46,48が形成される範囲を拡張又は収縮させることにより、メサ型ゲージ12,14,16,18の長さを調整することができる。例えば、接続領域42,44,46,48が形成される範囲を広くすると、メサ型ゲージ12,14,16,18の長さを短くでき、力伝達ブロック4の押圧部40bと高感度メサ型ゲージ14,18との接触面積を減らすことが可能となる。この結果、力伝達ブロック4に加わる容器内圧は、高感度メサ型ゲージ14,18に効率的に伝達され、力検知装置1のセンサ感度を向上することができる。これにより、封止型構造を有し、メサ型ゲージ12,14,16,18がブリッジ回路を構成する力検知装置1において、メサ型ゲージ12,14,16,18の感度を調整するための設計の自由度を向上することができる。
【0043】
上述したように、力検知装置1は封止型構造を有するため、高感度メサ型ゲージ14,18に加わる圧縮応力は、封止空間6内の高感度メサ型ゲージ14,18の位置に依存する。この例では、図2に示されるように、高感度メサ型ゲージ14,18が半導体基板2の<100>方向に並んで配置されているので、高感度メサ型ゲージ14,18に加わる圧縮応力は、半導体基板2の<100>方向における封止空間6内の高感度メサ型ゲージ14,18の位置に依存する。
【0044】
力検知装置1では、第1高感度メサ型ゲージ14と第2高感度メサ型ゲージ18が、封止部20の内側の領域の中心点7(図1,2参照)に対して点対称に配置されている。より具体的には、半導体基板2の<100>方向において、第1高感度メサ型ゲージ14と半導体基板2の封止部20(第1高感度メサ型ゲージ14の長手方向と平行な封止部20の部分であり、図2の紙面左側の封止空間6の縁に相当する)の間の最短距離と、第2高感度メサ型ゲージ18と半導体基板2の封止部20(第2高感度メサ型ゲージ18の長手方向と平行な封止部20の部分であり、図2の紙面右側の封止空間6の縁に相当する)の間の最短距離が等しい。これにより、力伝達ブロック4に加わる力に対して第1高感度メサ型ゲージ14及び第2高感度メサ型ゲージ18の各々に伝達される力が等しくなるので、力伝達ブロック4に加わる力に対する出力の線形性が向上する。
【0045】
さらに、力検知装置1では、高感度メサ型ゲージ14,18は、封止空間6を半導体基板2の<100>方向において3等分した位置に配置されており、かつ、封止空間6の半導体基板2の<110>方向における中央部に配置されている。これにより、力伝達ブロック4に加わる力は、高感度メサ型ゲージ14,18の頂面に対して垂直な方向に伝達されるので、高感度メサ型ゲージ14,18が斜めに圧縮することが抑制され、力伝達ブロック4に加わる力に対する出力の線形性がさらに向上する。
【0046】
また、力検知装置1では、接続領域42,44,46,48が、狭窄部42a,44a,46a,48aを有しており、配線22,24,26,28は狭窄部42a,44a,46a,48aに接続している。狭窄部42a,44a,46a,48aが接続領域42,44,46,48に占める範囲は極めて狭い。例えば、狭窄部42a,44a,46a,48aを含まない接続領域では、製造バラツキによって接続領域内を流れる電流の経路もばらつく。このような電流経路のばらつきは、零点オフセット特性の悪化の原因となる。一方、狭窄部42a,44a,46a,48aを含む接続領域42,44,46,48では、接続領域42,44,46,48内を流れる電流の経路を制限することができる。これにより、力検知装置1の零点オフセット特性の悪化が抑えられる。
【0047】
さらに、力検知装置1では、接続領域42,44,46,48の各々が狭窄されることにより分離される2つの部分(部分42b,部分42c,部分44b,部分44c,部分46b,部分46c,部分48b,部分48c)の抵抗値がいずれも等しくなるように構成されており、これにより、抵抗体112,114,116,118の抵抗値が等しくなっている。従って、力検知装置1では、オフセット電圧が低減される。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
1:力検知装置、 2:半導体基板、 4:力伝達ブロック、 7:中心点、 12,16:低感度メサ型ゲージ、 14,18:高感度メサ型ゲージ、 20:封止部、 22:第2出力配線、 24:基準配線、 26:第1出力配線、 28:電源配線、 42,44,46,48:接続領域、 42a,44a,46a,48a:狭窄部
図1
図2
図3
図4
図5