(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2加熱部は、前記ガス分散板の前記バッファ空間側の面の温度と、当該ガス分散部の前記処理空間側の面の温度とが、同じになるように前記ガス分散部を加熱する工程と、
を有する請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
以下に本発明の第1実施形態を図面に即して説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
まず、第1実施形態に係る基板処理装置について説明する。
【0010】
本実施形態に係る処理装置100について説明する。基板処理装置100は、薄膜形成ユニットであり、
図1に示されているように、枚葉式基板処理装置として構成されている。基板処理装置100では、半導体デバイス製造の一工程が行われる。ここで、半導体デバイスとは、集積回路や、電子素子単体(抵抗素子、コイル素子、キャパシタ素子、半導体素子として機能する膜)のいずれか、若しくは複数を含むものを言う。また、半導体デバイスの製造途中で必要となるダミー膜を形成する工程等が行われる。
【0011】
ここで、発明者等は、基板処理装置100で、処理温度が高温になった場合に、以下の課題のいずれか又は複数の課題を生じることを見出した。ここで、高温とは、例えば400℃〜850℃の温度である。
【0012】
<課題1>
処理温度が高温になった場合、ヒータ213からの熱が、上部容器202a方向へ発散し、ウエハ200の温度均一性が低下し、処理均一性が低下する課題が有る。ここで、熱の発散は、熱伝導や熱伝達等の熱の移動で生じる。また、熱の発散は、例えば、ガス分散部としてのガス分散板234aの外周、整流板270の外周や上方、第2排気部としての排気口240起こり、基板処理装置100の外部や、処理室201と比較して低温の部分へ熱が移動する。
【0013】
<課題2>
熱の発散を補償するようヒータ213を制御する必要があるため、消費電力が増大する。
【0014】
<課題3>
基板と上部容器202aの蓋231との間で温度差が発生するため、それらの間に設けられた分散板234aに熱応力がかかる。その熱応力によって、分散板234aが変形したり、破損したりする可能性が有る。また、分散板234aに付着した膜が熱応力によって剥がれ、パーティクルが発生することが有る。
【0015】
<課題4>
整流部270の上端と下端の間や中心と外周の間で温度差が生じるため、熱応力発生する。そのため、整流板270の表面に付着した膜が剥がれ、パーティクルが発生することが有る。
【0016】
<課題5>
排気ガイド235の上端と下端の間や中心と外周の間で、温度差を生じ、熱応力が加わり、整流板270の裏面や排気流路238に付着した膜が剥がれ、パーティクルが発生することが有る。
【0017】
発明者等は、これらの課題を解決する技術として、以下の様な基板処理装置を見出した。
【0018】
図1に示すとおり、基板処理装置100は処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料または、石英により構成されている。処理容器202内には、基板としてのシリコンウエハ等のウエハ200を処理する処理空間(処理室)201、搬送空間203が形成されている。処理容器202は、上部容器202aと下部容器202bで構成される。上部容器202aと下部容器202bの間には仕切り板204が設けられる。上部処理容器202aに囲まれた空間であって、仕切り板204よりも上方の空間を処理空間(処理室ともいう)201と呼び、下部容器202bに囲まれた空間であって、仕切り板204よりも下方の空間を搬送空間203と呼ぶ。
【0019】
下部容器202bの側面には、ゲートバルブ205に隣接した基板搬入出口1480が設けられており、ウエハ200は基板搬入出口1480を介して図示しない搬送室との間を移動する。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。更に、下部容器202bは接地されている。
【0020】
処理室201内には、ウエハ200を支持する基板支持部210が設けられている。基板支持部210は、ウエハ200を載置する載置面211と、載置面211と外周面215を表面に持つ基板載置台212とを有する。好ましくは、第1加熱部としてのヒータ213を設ける。第1加熱部を設けることにより、基板を加熱させ、基板上に形成される膜の品質を向上させることができる。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられていても良い。なお、基板載置台212の表面に形成された載置面211の高さを外周面215よりもウエハ200の厚さに相当する長さ分低く形成しても良い。この様に構成することで、ウエハ200の上面の高さと基板載置台212の外周面215との高さの差が小さくなり、差によって発生するガスの乱流を抑制することができる。また、ガスの乱流がウエハ200への処理均一性に影響を与えない場合は、外周面215の高さを載置面211と同一平面上の高さ以上となるように構成しても良い。
【0021】
第1加熱部としてのヒータ213には電力供給線213bが接続される。電力供給線213bのうち、ヒータ213と異なる側には、ヒータ213の温度を制御するための電力制御部213cが接続される。また、ヒータ213の近傍には、ヒータ213の温度を計測する温度検出部213dが設けられる。温度検出部213dは配線213eを介して、第1温度測定部213fに接続される。
【0022】
温度制御部としての電力制御部213cはコントローラ260に電気的に接続される。コントローラ260は電力制御部213cに対して、ヒータ213を制御するための電力値を送信し、それを受信した電力制御部213bはその情報に基づいた電力をヒータ213に供給し、ヒータ213の温度を制御する。
【0023】
第1温度測定部213fは、温度検出部213d,配線213eを介してヒータ213の温度を計測する。検出した温度は、電圧値として計測される。後述の他の温度測定部も同様に、温度は、電圧値として計測される。第1温度測定部213fで計測された温度(電圧値)は、第1温度測定部213fでアナログ/デジタル変換され、温度データ(温度情報)を生成する。第1温度測定部213fはコントローラ260に電気的に接続されており、生成された温度情報をコントローラ260に送信する。また、第1温度測定部213fは、電力制御部213cへ温度情報を送信可能に構成されていても良く、電力制御部213cは、第1温度測定部213fから送信された温度情報を基に、ヒータ213の温度が所定の温度になるようにフィードバック制御可能に構成しても良い。
【0024】
基板載置台212はシャフト217によって支持される。シャフト217は、処理容器202の底部を貫通しており、更には処理容器202の外部で昇降機構218に接続されている。昇降機構218を作動させてシャフト217及び基板載置台212を昇降させることにより、基板載置面211上に載置されるウエハ200を昇降させることが可能に構成される。なお、シャフト217下端部の周囲はベローズ219により覆われており、処理室201内は気密に保持されている。更には、シャフト217の内側には、電力供給線213bと配線213eが引き回されている。
【0025】
基板載置台212は、ウエハ200の搬送時には、基板載置面211が基板搬入出口206の位置(ウエハ搬送位置)となるように下降し、ウエハ200の処理時には
図1で示されるように、ウエハ200が処理室201内の処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。
【0026】
具体的には、基板載置台212をウエハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン207の上端部が基板載置面211の上面から突出して、リフトピン207がウエハ200を下方から支持するようになっている。また、基板載置台212をウエハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン207は基板載置面211の上面から埋没して、基板載置面211がウエハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン207は、ウエハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。なお、リフトピン207に昇降機構を設けて、基板載置台212とリフトピン207が相対的に動くように構成してもよい。
【0027】
(排気部)
処理室201(上部容器202a)の内壁上面には、処理室201の雰囲気を排気する第1排気部としての第1排気口221が設けられている。第1排気口221には第1排気管としての排気管224が接続されており、排気管224には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器227、真空ポンプ223が順に直列に接続されている。主に、第1排気口221、排気管224、圧力調整器227により、第1の排気部(排気ライン)が構成される。なお、真空ポンプ223を第1の排気部に含めるように構成しても良い。
【0028】
バッファ空間232の内壁上面には、バッファ空間232の雰囲気を排気する第2排気部としての第2排気口(シャワーヘッド排気口)240が設けられている。第2排気口240には第2排気管としての排気管236が接続されており、排気管236には、バルブ237等が順に直列に接続されている。主に、シャワーヘッド排気口240、バルブ237、排気管236により、第2の排気部(排気ライン)が構成される。
【0029】
(ガス導入口)
上部容器202aの上面(天井壁)には処理室201内に各種ガスを供給するためのガス導入口241が設けられている。ガス供給部であるガス導入口241に接続される各ガス供給ユニットの構成については後述する。この様に中央から供給する構成によれば、バッファ空間232内のガス流れが中心から外周に向かって流れ、空間内のガス流れを均一にし、ウエハ200へのガス供給量を均一化させることができる。
【0030】
(ガス分散ユニット)
ガス分散ユニットとしてのシャワーヘッド234は、バッファ室(空間)232、ガス分散部としての分散板234a、整流部270により構成されている。シャワーヘッド234は、ガス導入口241と処理室201との間に設けられている。ガス導入口241から導入される処理ガスはシャワーヘッド234のバッファ空間232に供給され、分散孔234bを介して、処理室201に供給される。シャワーヘッド234を構成する、分散板234aと整流部270は、例えば、石英、アルミナなどの耐熱材料のいずれか若しくは複合材料で構成される。
【0031】
ガス整流部270には、第2の加熱部としてのヒータ(整流部ヒータ)271が設けられており、整流部270、バッファ空間232内の雰囲気、分散板234a、蓋231の少なくとも何れかを加熱可能に構成される。
【0032】
また、第2の加熱部としてのヒータは、
図2に示す様に、分割されて構成され、ゾーン毎(中心部271a,中間部271b,外周部271c)に加熱可能に構成される。好ましくは、後述するように、第2排気口240と対向するゾーンの温度を高くする様に第2の加熱部270を制御する。例えば、第2排気口240と対向するゾーンが中心部271aであれば、中心部271aの温度を高くする様に第2の加熱部270を制御する。基板支持部210に設けられた第1加熱部としてのヒータ213からの熱が、第2排気口240を介して基板処理装置100の外へ流出することによって、ウエハ200の温度分布や、処理室201の温度分布が不均一になることを抑制することができる。
【0033】
なお、シャワーヘッド234の蓋231を導電性のある金属で形成して、バッファ空間232又は処理室201内に存在するガスを励起するための活性化部(励起部)としても良い。この際には、蓋231と上部容器202aとの間には絶縁ブロック233が設けられ、蓋231と上部容器202aの間を絶縁している。活性化部としての電極(蓋231)には、整合器251と高周波電源252を接続し、電磁波(高周波電力やマイクロ波)が供給可能に構成されても良い。
【0034】
また、好ましくは、蓋231の外周部231bと分散板234aの外周部との間には、断熱部としての断熱材239が設けられている。断熱材239を設けることによって、ヒータ213や第2加熱部271から、上部容器シール部202cや、下部容器シール部202dへの熱伝導を抑制することができる。これにより、上部容器シール部202cや下部容器シール部202dの劣化を抑制することができる。また、蓋の外周部231bと仕切板204との熱膨張差を小さくし、熱膨張ズレによるシール性の低下を抑制することができる。なお、断熱材239は、石英,アルミナ,等のいずれか若しくは、これらを組み合わせた材料で構成される。
【0035】
シャワーヘッド234は、バッファ空間232と処理室201の間で、ガス導入口241から導入されるガスを分散させるための機能を有している。
【0036】
整流板270は、ガス導入口241を中心としてウエハ200の径方向に向かうにつれ径が広がる円錐形状である。整流板270の外周下端は、基板200の端部よりも外周に位置する様に構成される。
【0037】
図2に整流板270に設けられた第2加熱部(整流部加熱体)271をウエハ200側から見た図を示す。図のように、第2加熱部271は、複数のゾーンで構成され、中心のゾーンは、第2排気部としての排気口240に対向するように構成され、排気口240からの熱逃げを補償可能に構成されている。
【0038】
また、シャワーヘッドの蓋231には、第3の加熱部(蓋加熱体)272が設けられ、バッファ室232の排気流路238や、蓋上部231a等を加熱可能に構成されている。第3の加熱部272には電力供給線2721が接続され、電力供給線2721のうち、第3の加熱部と異なるが側には電力供給制御部2722が接続される。
【0039】
温度制御部としての電力制御部2722は、配線2723を介してコントローラ260に電気的に接続される。コントローラ260は電力制御部2722に対して、第3加熱部272を制御するための電力値を送信し、それを受信した電力制御部2722はその情報に基づいた電力を第3加熱部272に供給し、第3加熱部272の温度を制御する。
【0040】
更には、第3の加熱部271の近傍には、温度検出部2724が設けられる。温度検出部2724は、配線2725を介して第3温度測定部2726に接続されており、第3温度測定部2726によって第3の加熱部272の温度をモニタ可能としている。
【0041】
第3温度測定部2726計測された温度(電圧値)は、第3温度測定部2726でアナログ/デジタル変換され、温度データ(温度情報)を生成する。第3温度測定部2726はコントローラ260に電気的に接続されており、生成された温度情報をコントローラ260に送信する。また、第3温度測定部2726は、電力制御部2722へ温度情報を送信可能に構成されていても良く、電力制御部2722は、第3温度測定部2726から送信された温度情報を基に、第3の加熱部272の温度が所定の温度になるようにフィードバック制御可能に構成しても良い。
【0042】
なお、排気流路238は、整流部270と、蓋231に設けられた排気ガイド235とで構成されており、蓋加熱体272は、蓋231と排気ガイド235を介して、排気流路238を加熱可能に構成されている。
【0043】
続いて、
図3を用いて第2の加熱部271の周辺の構成について説明する。
図3に記載されているように、第2の加熱部271には、ゾーンごとに電力供給線2811が接続されており、ゾーンごとに第2の加熱部の温度を制御可能としている。電力供給線2811は第2の加熱部271に電力を供給する電力供給制御部2812に接続される。
【0044】
具体的には、中心部271aには電力供給線2811aが接続され、中間部217bには電力供給線2811bが接続され、外周部271cには電力供給線2811cが接続される。更に、電力供給線2811aは電力供給制御部2812aに接続され、電力供給線2811bは電力供給制御部2812bに接続され、電力供給線2811cは電力供給制御部2812cに接続される。
【0045】
温度制御部としての電力制御部2812(電力供給制御部2812a、電力供給制御部2812b、電力供給制御部2812c)は、配線2813を介してコントローラ260に電気的に接続される。コントローラ260は電力制御部2812に対して、第2加熱部271を制御するための電力値(設定温度データ)を送信し、それを受信した電力制御部2812はその情報に基づいた電力を第2加熱部271(中心部271a、中間部217b、外周部271c)に供給し、第2加熱部271の温度を制御する。
【0046】
更には、
図3に記載されているように、第2の加熱部271の近傍には、各ゾーンに対応した温度検出部2821が設けられる。温度検出部2821は、配線2822を介して温度測定部2823に接続されており、ゾーンごとの温度を検出可能としている。
【0047】
具体的には、中心部271a近傍には温度検出部2821aが設けられる。温度検出部2821aは、配線2822aを介して第2温度測定部2823aに接続される。中間部271b近傍には温度検出部2821bが設けられる。温度検出部2821bは、配線2822bを介して第2温度測定部2823bに接続される。外周部271c近傍には温度検出部2821cが設けられる。温度検出部2821cは、配線2822cを介して第2温度測定部2823cに接続される。
【0048】
各第2温度測定部2823(第2温度測定部2823a、第2温度測定部2823b、第2温度測定部2823c)はそれぞれが対応するゾーンの温度を、温度検出部2821(温度検出部2821a、温度検出部2821b、温度検出部2821c)と配線2822(配線2822a、配線2822b、配線2822c)を介してモニタリング(計測)する。第2温度測定部2823で計測した温度(電圧値)は、第2温度測定部2823でアナログ/デジタル変換され、温度データ(温度情報)を生成する。生成された温度情報は、配線2824を介してコントローラ260に送信可能に構成される。
【0049】
分散板234aのうち、整流部270と対向する面234cには、温度検出部2341が設けられる。温度検出部2341は配線2342を介して、第4温度測定部2343に接続される。
【0050】
第4温度測定部2343は面234cの温度を計測する。第4温度測定部2343で計測された温度(電圧値)は、第4温度測定部2343でアナログ/デジタル変換され、温度データ(温度情報)を生成する。第4温度測定部2343は、コントローラ260に電気的に接続されており、生成された温度情報をコントローラ260に送信可能に構成される。
【0051】
分散板234aのうち、基板載置面211と対向する面234dには、温度検出部2345が設けられる。温度検出部2345は配線2346を介して、温度測定部2347に接続される。
【0052】
温度測定部2347は面234dの温度を計測する。温度測定部2347が計測した温度(電圧値)は、温度測定部2347でアナログ/デジタル変換され、温度データ(温度情報)を生成する。温度測定部2347は、コントローラ260に電気的に接続されており、生成された温度情報をコントローラ260に送信可能に構成される。
【0053】
(処理ガス供給部)
整流部270に接続されたガス導入口241には、共通ガス供給管242が接続されている。
図4に示す様に、共通ガス供給管242には、第一ガス供給管243a、第二ガス供給管244a、第三ガス供給管245a、クリーニングガス供給管248aが接続されている。
【0054】
第一ガス供給管243aを含む第一ガス供給部243からは第一元素含有ガス(第一処理ガス)が主に供給され、第二ガス供給管244aを含む第二ガス供給部244からは主に第二元素含有ガス(第二処理ガス)が供給される。第三ガス供給管245aを含む第三ガス供給部245からは、主にパージガスが供給され、クリーニングガス供給管248aを含むクリーニングガス供給部248からはクリーニングガスが供給される。処理ガスを供給する処理ガス供給部は、第1処理ガス供給部と第2処理ガス供給部のいずれか若しくは両方で構成され、処理ガスは、第1処理ガスと第2処理ガスのいずれか若しくは両方で構成される。
【0055】
(第一ガス供給部)
第一ガス供給管243aには、上流方向から順に、第一ガス供給源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。
【0056】
第一ガス供給源243bから、第一元素を含有するガス(第一処理ガス)が供給され、マスフローコントローラ243c、バルブ243d、第一ガス供給管243a、共通ガス供給管242を介してバッファ空間232に供給される。
【0057】
第一処理ガスは、原料ガス、すなわち、処理ガスの一つである。
ここで、第一元素は、例えばシリコン(Si)である。すなわち、第一処理ガスは、例えばシリコン含有ガスである。シリコン含有ガスとしては、例えばジクロロシラン(Dichlorosilane(SiH
2Cl
2):DCS)ガスを用いることができる。なお、第一処理ガスの原料は、常温常圧で固体、液体、及び気体のいずれであっても良い。第一処理ガスの原料が常温常圧で液体の場合は、第一ガス供給源243bとマスフローコントローラ243cとの間に、図示しない気化器を設ければよい。ここでは原料は気体として説明する。
【0058】
第一ガス供給管243aのバルブ243dよりも下流側には、第一不活性ガス供給管246aの下流端が接続されている。第一不活性ガス供給管246aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源246b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)246c、及び開閉弁であるバルブ246dが設けられている。
【0059】
ここで、不活性ガスは、例えば、窒素(N
2)ガスである。なお、不活性ガスとして、N
2ガスのほか、例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0060】
主に、第一ガス供給管243a、マスフローコントローラ243c、バルブ243dにより、第一元素含有ガス供給部243(シリコン含有ガス供給部ともいう)が構成される。
【0061】
また、主に、第一不活性ガス供給管246a、マスフローコントローラ246c及びバルブ246dにより第一不活性ガス供給部が構成される。なお、不活性ガス供給源246b、第一ガス供給管243aを、第一不活性ガス供給部に含めて考えてもよい。
【0062】
更には、第一ガス供給源243b、第一不活性ガス供給部を、第一元素含有ガス供給部に含めて考えてもよい。
【0063】
(第二ガス供給部)
第二ガス供給管244aの上流には、上流方向から順に、第二ガス供給源244b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)244c、及び開閉弁であるバルブ244dが設けられている。
【0064】
第二ガス供給源244bから、第二元素を含有するガス(以下、「第2の処理ガス」)が供給され、マスフローコントローラ244c、バルブ244d、第二ガス供給管244a、共通ガス供給管242を介して、バッファ空間232に供給される。
【0065】
第2の処理ガスは、処理ガスの一つである。なお、第2の処理ガスは、反応ガスまたは改質ガスとして考えてもよい。
【0066】
ここで、第2の処理ガスは、第一元素と異なる第二元素を含有する。第二元素としては、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、水素(H)の内、一つ以上を含んでいる。本実施形態では、第2の処理ガスは、例えば窒素含有ガスであるとする。具体的には、窒素含有ガスとしては、アンモニア(NH
3)ガスが用いられる。
【0067】
主に、第二ガス供給管244a、マスフローコントローラ244c、バルブ244dにより、第2の処理ガス供給部244が構成される。
【0068】
これに加えて、活性化部としてのリモートプラズマユニット(RPU)244eを設けて、第二処理ガスを活性化可能に構成しても良い。
【0069】
また、第二ガス供給管244aのバルブ244dよりも下流側には、第二不活性ガス供給管247aの下流端が接続されている。第二不活性ガス供給管247aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源247b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)247c、及び開閉弁であるバルブ247dが設けられている。
【0070】
第二不活性ガス供給管247aからは、不活性ガスが、マスフローコントローラ247c、バルブ247d、第二ガス供給管247aを介して、バッファ空間232に供給される。不活性ガスは、薄膜形成工程(後述するS203〜S207)ではキャリアガス或いは希釈ガスとして作用する。
【0071】
主に、第二不活性ガス供給管247a、マスフローコントローラ247c及びバルブ247dにより第二不活性ガス供給部が構成される。なお、不活性ガス供給源247b、第二ガス供給管244aを第二不活性ガス供給部に含めて考えてもよい。
【0072】
更には、第二ガス供給源244b、第二不活性ガス供給部を、第二元素含有ガス供給部244に含めて考えてもよい。
【0073】
(第三ガス供給部)
第三ガス供給管245aには、上流方向から順に、第三ガス供給源245b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)245c、及び開閉弁であるバルブ245dが設けられている。
【0074】
第三ガス供給源245bから、パージガスとしての不活性ガスが供給され、マスフローコントローラ245c、バルブ245d、第三ガス供給管245a、共通ガス供給管242を介してバッファ空間232に供給される。
【0075】
ここで、不活性ガスは、例えば、窒素(N
2)ガスである。なお、不活性ガスとして、N
2ガスのほか、例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0076】
主に、第三ガス供給管245a、マスフローコントローラ245c、バルブ245dにより、第三ガス供給部245(パージガス供給部ともいう)が構成される。
【0077】
(クリーニングガス供給部)
クリーニングガス供給管243aには、上流方向から順に、クリーニングガス源248b、マスフローコントローラ(MFC)248c、バルブ248d、リモートプラズマユニット(RPU)250が設けられている。
【0078】
クリーニングガス源248bから、クリーニングガスが供給され、MFC248c、バルブ248d、RPU250、クリーニングガス供給管248a、共通ガス供給管242を介してバッファ空間232に供給される。
【0079】
クリーニングガス供給管248aのバルブ248dよりも下流側には、第四の不活性ガス供給管249aの下流端が接続されている。第四の不活性ガス供給管249aには、上流方向から順に、第四の不活性ガス供給源249b、MFC249c、バルブ249dが設けられている。
【0080】
また、主に、クリーニングガス供給管248a、MFC248c及びバルブ248dによりクリーニングガス供給部が構成される。なお、クリーニングガス源248b、第四不活性ガス供給管249a、RPU250を、クリーニングガス供給部に含めて考えてもよい。
【0081】
なお、第四の不活性ガス供給源249bから供給される不活性ガスを、クリーニングガスのキャリアガス或いは希釈ガスとして作用するように供給しても良い。
【0082】
クリーニングガス供給源248bから供給されるクリーニングガスは、クリーニング工程ではバッファ空間232や処理室201に付着した副生成物等を除去するクリーニングガスとして作用する。
【0083】
ここで、クリーニングガスは、例えば三フッ化窒素(NF
3)ガスである。なお、クリーニングガスとして、例えば、フッ化水素(HF)ガス、三フッ化塩素ガス(ClF
3)ガス、フッ素(F
2)ガス等を用いても良く、またこれらを組合せて用いても良い。
【0084】
また好ましくは、上述の各ガス供給部に設けられた、流量制御部としては、ニードルバルブやオリフィスなどの、ガスフローの応答性が高いガスが良い。例えば、ガスのパルス幅がミリ秒オーダーになった場合は、MFCでは応答できないことが有るが、ニードルバルブやオリフィスの場合は、高速なON/OFFバルブと組み合わせることで、ミリ秒以下のガスパルスに対応することが可能となる。
【0085】
(制御部)
図1に示すように基板処理装置100は、基板処理装置100の各部の動作を制御するコントローラ260を有している。
【0086】
コントローラ260の概略を
図5に示す。制御部(制御手段)であるコントローラ260は、演算部としてのCPU(Central Processing Unit)260a、RAM(Random Access Memory)260b、記憶装置260c、I/Oポート260dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM260b、記憶装置260c、I/Oポート260dは、内部バス260eを介して、CPU260aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ260には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置261や、外部記憶装置262が接続可能に構成されている。
【0087】
記憶装置260cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置260c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ、基板200へのプロセスレシピを設定するまでの演算過程で用いられる処理データ、制御条件を記憶したテーブル等が読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ260に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM260bは、CPU260aによって読み出されたプログラム、演算データ、処理データ、等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0088】
I/Oポート260dは、ゲートバルブ1330,1350,1490、昇降機構218、ヒータ213、圧力調整器227、真空ポンプ223、リモートプラズマユニット244e,250、MFC243c,244c,245c,246c,247c,248c,249c、バルブ243d,244d,245d,246d,247d,248d,249d、等に接続されている。また、整合器251、高周波電源252、搬送ロボット1700、大気搬送ロボット1220、ロードロックユニット1300等にも接続されていても良い。
【0089】
演算部としてのCPU260aは、記憶装置260cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置261からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置260cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。また、受信部285から入力された設定値と、記憶装置260cに記憶されたプロセスレシピや制御データとを比較・演算して、演算データを算出可能に構成されている。また、演算データから対応する処理データ(プロセスレシピ)の決定処理等を実行可能に構成されている。そして、CPU260aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、ゲートバルブ1330,1350,1490の開閉動作、昇降機構218の昇降動作、圧力調整器227の圧力調整動作、真空ポンプ223のオンオフ制御、リモートプラズマユニット250のガス励起動作、MFC243c、244c,245c,246c,247c,248c,249cの流量調整動作、バルブ243d、244d,245d,246d,247d,248d,249dのガスのオンオフ制御、ヒータ213、ヒータ271、ヒータ272の温度制御等を制御するように構成されている。
【0090】
なお、コントローラ260は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていても良い。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)262を用意し、係る外部記憶装置262を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ260を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置262を介して供給する場合に限らない。例えば、受信部285を介してネットワーク263(インターネットや専用回線)等の通信手段を用い、外部記憶装置262を介さずにプログラムを供給するようにしても良い。なお、記憶装置260cや外部記憶装置262は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置260c単体のみを含む場合、外部記憶装置262単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。
【0091】
テーブルとしては、少なくとも第1のヒータ213、第2のヒータ271、第3のヒータ272それぞれに対応したものが記録される。具体的には、
図6に記載の第1のテーブル、
図7に記載の第2のテーブル、
図8に記載の第3のテーブルが記録される。
【0092】
第1のテーブルでは、温度測定部で計測された温度情報A1、B1、C1と、第1のヒータ213に供給する電力値を比較するものである。このテーブルにおける温度測定部は、例えば第1温度測定部213fや温度測定部2347である。この場合、いずれか一方の温度情報でも良いし、両方を加味して算出した温度情報としても良い。
【0093】
第1のテーブルを用いる際には、例えば、温度情報A1を検出した場合、コントローラ260は電力制御部213cに電力値α1を第1加熱部231に供給するよう指示する。他の温度情報B1、C1でも同様である。
【0094】
第2のテーブルでは、温度測定部2823で測定された温度情報A2、B2、C2と、第2のヒータ271に供給する電力値を比較するものである。このテーブルにおける温度情報は、例えば温度測定部2823や第4温度測定部2343である。この場合、いずれか一方の温度情報でも良いし、両方を加味して算出した検出値としても良い。
【0095】
第2のテーブルを用いる際には、例えば、温度情報A2を検出した場合、コントローラ260は電力制御部2812aに電力値α2aを第2加熱部の中心部271aに供給し、電力制御部2812bに電力値α2bを第2加熱部の中間部271bに供給し、電力制御部2812cに電力値α2cを第2加熱部の外周部271cに供給するよう指示する。他の検出値B2、C2でも同様である。
【0096】
第3のテーブルでは、温度測定部2726で検出された温度情報A2、B2、C2と、第3のヒータ272に供給する電力値を比較するものである。このテーブルにおける温度測定部は、例えば温度測定部2726や第4温度測定部2343である。この場合、いずれか一方の検出値でも良いし、両方を加味して算出した検出値としても良い。
【0097】
第3のテーブルを用いる際には、例えば、温度情報A2を検出した場合、コントローラ260は電力制御部2722に電力値α3を供給するよう指示する。他の 検出値B3、C3でも同様である。
【0098】
(2)基板処理工程
次に、基板処理工程の例について、半導体デバイスの製造工程の一つである、DCSガス及びNH
3(アンモニア)ガスを用いてシリコン窒化(SixNy)膜を形成する例で説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ260により制御される。
【0099】
図9に基板としてのウエハ200上にシリコン窒化(SixNy)膜を形成する場合の基板処理工程のフローを示している。
【0100】
(基板搬入工程S201)
成膜処理に際しては、先ず、ウエハ200を処理室201に搬入させる。具体的には、基板支持部210を昇降機構218によって、下降させ、リフトピン207が、貫通孔214から基板支持部210の上面側に突出させた状態にする。また、処理室201内を所定の圧力に調圧した後、ゲートバルブ1490を開放し、リフトピン207上にウエハ200を載置させる。ウエハ200をリフトピン207上に載置させた後、昇降機構218によって基板支持部210を所定の位置まで上昇させることによって、ウエハ200が、リフトピン207から基板支持部210へ載置されるようになる。また、基板載置台212の突出部212bと仕切板204とは接触する(突き当たる)様な位置に上昇させても良い。
【0101】
このとき、基板載置台212をヒータ213により予め加熱していても良い。予め加熱しておくことで、ウエハ200の加熱時間を短縮することができる。また、ウエハ200をリフトピン207から載置面211に載置した時に、ウエハ200が跳ねあがる場合や、ウエハ200に反りが発生する場合等には、ウエハ200を予備加熱しても良い。予備加熱は、基板処理装置100内で行っても良いし、基板処理装置100外で行っても良い。例えば、基板処理装置100内で行う場合には、ウエハ200をリフトピン207で支持した状態で、基板載置台212と基板との距離を、所定の第1距離として、所定時間待機させて加熱する。ここで第1距離は、ウエハ200が、ゲートバルブ1490から搬送される時の搬送位置としても良い。また、搬送位置の距離よりも短い距離としても良い。基板処理装置100内で予備加熱する際の昇温時間は、ウエハ200と基板載置台212との距離によって変化し、距離がより短い方が昇温時間を短縮させることができる。具体的には、基板載置台を予め加熱しておき、ウエハ200又はサセプタの温度変化が無くなってから一定時間保持する。この際、第三ガス供給部245から不活性ガスを供給し、整流部270に設けられた第2加熱部271でウエハ200を加熱しながら、所定の位置まで上昇させても良い。第2加熱部271で加熱することによって、ウエハ200の反りの量やウエハ200の跳ね上がりを抑制することができる。
【0102】
このとき、各加熱部の温度は、各温度測定部で検出された温度情報を元に制御され。例えば以下の様に設定される。ヒータ213は、400〜850℃、好ましくは400〜800℃、より好ましくは400〜750℃の範囲内の一定の温度となるように設定する。ヒータ213によるウエハ200の加熱または基板載置台212の加熱は、例えば、繰り返し工程S207まで継続する。第2加熱部271は、ヒータ213と同等の温度に設定され、蓋部加熱体272は、250〜400℃程度の範囲内で一定の温度となるように設定される。なお、第2加熱部271の各ゾーンの温度は、第2排気口240と対向するゾーンの温度を高くする。例えば、第2排気口240と対向するゾーンが中心部271aであれば、中心部271aの温度を高くする様に第2の加熱部270を制御する。具体的には、中心部271a>外周部271c>中間部271bとなるように設定される。また、第2加熱部271の各ゾーンの温度は、第1の処理ガスと第2の処理ガス(反応ガス)のいずれか若しくは両方が分解する温度以下にすることが好ましい。処理ガスと反応ガスのいずれか若しくは両方が分解する温度以下にすることによって、整流部270への成膜を抑制させることができる。
【0103】
(減圧・昇温工程S202)
続いて、処理室201内が所定の圧力(真空度)となるように、排気管224を介して処理室201内を排気する。この際、圧力センサが測定した圧力値に基づき、圧力調整器227としてのAPCバルブの弁の開度をフィードバック制御する。また、温度センサ(不図示)が検出した温度値に基づき、処理室201内が所定の温度となるように、ヒータ213への通電量をフィードバック制御する。ウエハ200の温度が一定になるまでの間、処理室201内に残留している水分あるいは部材からの脱ガス等を真空排気やN
2ガスの供給によるパージによって除去する工程を設けても良い。これで成膜プロセス前の準備が完了することになる。なお、処理室201内を所定の圧力に排気する際に、一度、到達可能な真空度まで真空排気しても良い。
【0104】
(第1の処理ガス供給工程S203)
続いて、
図10に示すように、第1の処理ガス供給部から処理室201内に第1の処理ガス(原料ガス)としてのDCSガスを供給する。また、排気部による処理室201内の排気を継続し処理室201内の圧力を所定の圧力(第1圧力)となるように制御する。具体的には、第1ガス供給管243aのバルブ243d、第1不活性ガス供給管246aのバルブ246dを開き、第1ガス供給管243aにDCSガス、第1不活性ガス供給管246aにN
2ガスを流す。DCSガスは、第1ガス供給管243aから流れ、MFC243cにより所定の流量に調整される。N
2ガスは、第1不活性ガス供給管246aから流れ、MFC246cにより所定の流量に調整される。流量調整されたDCSガスは、流量調整されたN
2ガスと第1ガス供給管243a内で混合されて、バッファ空間232から、処理室201内に供給され、排気管224から排気される。このとき、ウエハ200に対してDCSガスが供給されることとなる(原料ガス(DCS)供給工程)。DCSガスは、所定の圧力範囲(第1圧力:例えば100Pa以上10000Pa以下)で処理室201内に供給する。このようにして、ウエハ200にDCSを供給する。DCSが供給されることにより、ウエハ200上に、シリコン含有層が形成される。シリコン含有層とは、シリコン(Si)または、シリコンと塩素(Cl)を含む層である。
【0105】
(第1パージ工程S204)
ウエハ200上にシリコン含有層が形成された後、第1ガス供給管243aのバルブ243dを閉じ、DCSガスの供給を停止する。このとき、排気管224の圧力調整器227は開いたままとし、真空ポンプ223により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留したDCSガス,未反応のDCSガスまたは、シリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを処理室201内から排除する。また、バルブ246dは開いたままとして、不活性ガスとしてのN
2ガスの処理室201内への供給を維持しても良い。バルブ246aから供給され続けるN
2ガスは、パージガスとして作用し、これにより、第1ガス供給管243a、共通ガス供給管242、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを排除する効果を更に高めることができる。
【0106】
なお、このとき、処理室201内や、バッファ空間232に残留するガスを完全に排除(処理室201内を完全にパージ)しなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われる工程において悪影響が生じることはない。このとき処理室201内に供給するN
2ガスの流量も大流量とする必要は無く、例えば、処理室201の容積と同程度の量を供給することで、次の工程において悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、N
2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0107】
このときのヒータ213の温度は、ウエハ200への原料ガス供給時と同様に設定する。各不活性ガス供給部から供給するパージガスとしてのN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜20000sccmの範囲内の流量とする。パージガスとしては、N
2ガスの他、Ar,He,Ne,Xe等の希ガスを用いても良い。
【0108】
また、このとき、第2の排気部のバルブ237を開き、バッファ空間232や共通ガス供給管242内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを排気流路238、排気管236等を介して排気するように構成しても良い。排気流路238や排気管236からバッファ空間232や共通ガス供給管242内の雰囲気を排気することで、残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを処理空間201(ウエハ200)に供給を低減させることができる。また、この第2の排気部からの供給は、第1パージ工程の前と後のいずれか、若しくは両方で行う様に構成しても良い。また同時に行っても良い。
【0109】
(第2の処理ガス供給工程S205)
処理室201内のDCS残留ガスを除去した後、パージガスの供給を停止し、反応ガスとしてのNH
3ガスを供給する。具体的には、第2ガス供給管244aのバルブ244dを開き、第2ガス供給管244a内にNH
3ガスを流す。第2ガス供給管244a内を流れるNH
3ガスは、MFC244cにより流量調整される。流量調整されたNH
3ガスは共通ガス供給管242・バッファ空間232を介して、ウエハ200に供給される。ウエハ200上に供給されたNH
3ガスは、ウエハ200上に形成されたシリコン含有層と反応し、シリコンを窒化させると共に、水素、塩素、塩化水素などの不純物が排出される。
【0110】
このときのヒータ213の温度は、ウエハ200への原料ガス供給時と同様とする。
【0111】
(第2パージ工程S206)
第2の処理ガス供給工程の後、反応ガスの供給を止めて、第1パージ工程S204と同様な処理を行う。残留ガス除去工程を行うことによって、第2ガス供給管244a,共通ガス供給管242,バッファ空間232,処理室201内などに残留する未反応もしくはシリコンの窒化に寄与した後のNH
3ガスを排除させることができる。残留ガスを除去することによって、残留ガスによる予期せぬ膜形成を抑制することができる。
【0112】
また、このとき、第2の排気部のバルブ237を開き、バッファ空間232や共通ガス供給管242内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを排気流路238、排気管236等を介して排気するように構成しても良い。排気流路238や排気管236からバッファ空間232や共通ガス供給管242内の雰囲気を排気することで、残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを処理空間201(ウエハ200)に供給を低減させることができる。また、この第2の排気部からの供給は、第1パージ工程の前と後のいずれか、若しくは両方で行う様に構成しても良い。また同時に行っても良い。
【0113】
(繰返し工程S207)
以上の第1の処理ガス供給工程S203、第1パージ工程S204、第2の処理ガス供給工程S205、第2パージ工程S206それぞれを1工程ずつ行うことにより、ウエハ200上に所定の厚さのシリコン窒化(SixNy)層が堆積される。これらの工程を繰返すことにより、ウエハ200上のシリコン窒化膜の膜厚を制御することができる。所定膜厚となるまで、所定回数繰返すように制御される。
【0114】
(基板搬出工程S208)
繰返し工程S207で所定回数実施された後、基板搬出工程S208が行われ、ウエハ200が処理室201から搬出される。具体的には、処理室201内に不活性ガスを供給し、搬送可能な圧力に調圧される。調圧後、基板支持部210が昇降機構218により降下され、リフトピン207が、貫通孔214から突き出し、ウエハ200がリフトピン207上に載置される。ウエハ200が、リフトピン207上に載置された後、ゲートバルブ205が開き、ウエハ200が処理室201から搬出される。なお、搬出前に、搬出可能温度まで降温させるようにしても良い。
【0115】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下(a)〜(f)示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0116】
(a)
第2加熱部を設けて、分散板234aを加熱することによって、分散板234aからの熱の発散を抑制し、ウエハ200の温度均一性を向上させることができる。また、第1加熱部(ヒータ213)の消費電力を低減させることができる。
【0117】
(b)
第2加熱部を複数ゾーンに分割し、第2排気口と対向する位置のゾーンの温度を、他のゾーンの温度よりも高くすることで、第2排気口への熱伝導を抑制し、ウエハ200の温度均一性を向上させることができる。
【0118】
(c)
分散板234aの温度差を抑制し、分散板234aの熱応力の発生を抑制させることができる。また、分散板234aに付着した膜の剥がれを抑制することができる。
【0119】
(d)
整流部270の温度差による熱応力の発生を抑制し、整流部270からの膜剥がれを抑制することができる。
【0120】
(e)
排気ガイド235の温度による熱応力の発生を抑制し、排気ガイド235からの膜剥がれを抑制することができる。
【0121】
(f)
蓋231の外周部231bと、分散板234aと絶縁ブロック233との間に、断熱部としての断熱材239を設けることによって、分散板234aから、分散板234aの外周方向(径方向)への熱伝導を抑制し、シャワーヘッド234の温度均一性を向上させることができる。また、ヒータ213や第2加熱部271から、上部容器シール部202cや、下部容器シール部202dへの熱伝導 を抑制することができる。これにより、上部容器シール部202cや下部容器シール部202dの劣化を抑制することができる。また、蓋の外周部231bと仕切板204との熱膨張差を小さくし、熱膨張ズレによるシール性の低下を抑制することができる。
【0122】
なお、上述では、原料ガスと反応ガスを交互に供給して成膜する方法について記したが、原料ガスと反応ガスの気相反応量や副生成物の発生量が許容範囲内であれば、他の方法にも適用可能である。例えば、原料ガスと反応ガスの供給タイミングが重なる様な方法である。
【0123】
また、上述では、成膜処理について記したが、他の処理にも適用可能である。例えば、拡散処理、酸化処理、窒化処理、酸窒化処理、還元処理、酸化還元処理、エッチング処理、加熱処理などが有る。例えば、反応ガスのみを用いて、基板表面や基板に形成された膜をプラズマ酸化処理や、プラズマ窒化処理する際にも本発明を適用することができる。また、反応ガスのみを用いたプラズマアニール処理にも適用することができる。
【0124】
また、上述では、基板処理について記したが、これに限らず、基板処理装置のクリーニング処理にも適用可能である。例えば、クリーニングガスを、シャワーヘッド234に供給する際に、整流部ヒータ271の各ゾーンに温度差を設けることで、整流部270に付着した膜や異物の除去効率を向上させることができる。
【0125】
また、上述では、半導体装置の製造工程について記したが、実施形態に係る発明は、半導体装置の製造工程以外にも適用可能である。例えば、液晶デバイスの製造工程や、セラミック基板へのプラズマ処理などが有る。
【0126】
また、上述では、原料ガスとしてシリコン含有ガスと、窒素含有ガスを用いて、シリコン窒化膜を形成する例を示したが、他のガスを用いた成膜にも適用可能である。例えば、酸素含有膜、窒素含有膜、炭素含有膜、ホウ素含有膜、金属含有膜とこれらの元素が複数含有した膜等が有る。なお、これらの膜としては、例えば、SiO膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、HfAlO膜、ZrAlO膜、SiC膜、SiCN膜、SiBN膜、TiN膜、TiC膜、TiAlC膜などが有る。これらの膜を成膜するために使われる原料ガスと反応ガスそれぞれのガス特性(吸着性、脱離性、蒸気圧など)を比較して、供給位置やシャワーヘッド234内の構造を適宜変更することにより、同様の効果を得ることができる。
【0127】
また、上述では第2の加熱部271を3つのゾーンをそれぞれ加熱するように、中心部271a、中間部271b、外周部271cに分けたが、それに限るものではない。第2排気口240と対向するゾーンの温度が他に比べて高くなるような構成であれば良く、例えば2つのゾーンや4つ以上のゾーンに対応するよう構成してもよい。
【0128】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0129】
<付記1>
一態様によれば、
基板を加熱する第1加熱部が設けられた基板支持部と、
前記基板支持部の上側に設けられ前記基板に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記基板支持部上の処理空間の雰囲気を排気する第1排気口と、
前記基板支持部と対向して設けられたガス分散部と、
前記ガス供給部と前記ガス分散部との間のバッファ空間を排気する第2排気口が設けられた蓋部と、
前記バッファ空間内に設けられ、前記第2排気口と少なくとも一部が対向する第2加熱部を有し、前記処理ガスを整流するガス整流部と、
前記第2加熱部を制御する制御部と、
を有する基板処理装置、または、半導体装置の製造装置が提供される。
【0130】
<付記2>
付記1に記載の装置であって、好ましくは、
前記第2加熱部は、複数ゾーンに分割され、
前記制御部は、
前記第2排気口と対向するゾーンの温度を、他のゾーンの温度よりも高くなるように前記第2加熱部を制御する様に構成される。
【0131】
<付記3>
付記1又は付記2に記載の装置であって、好ましくは、
前記制御部は、
前記ガス分散部の前記バッファ空間側の面の温度と、当該ガス分散部の前記処理空間側の面の温度とが、同じになるように前記第2加熱部を制御する。
【0132】
<付記4>
付記1乃至付記3のいずれかに記載の装置であって、好ましくは、
前記蓋部に第3加熱部が設けられ、
前記制御部は、
前記処理ガスが前記蓋部に吸着しない温度となるように前記第3加熱部を制御する。
【0133】
<付記5>
付記1乃至付記4のいずれかに記載の装置であって、好ましくは、
前記蓋の外周部と前記ガス分散部の外周部との間に、断熱部を有する。
【0134】
<付記6>
付記1乃至付記5のいずれかに記載の装置であって、好ましくは、
前記第2加熱部の外周端は、前記基板の外周端よりも外側に位置するように構成される。
【0135】
<付記7>
他の態様によれば、
第1加熱部が設けられた基板支持部に基板を搬送する工程と、
前記第1加熱部で前記基板を加熱する工程と、
前記基板支持部上の処理空間の雰囲気を第1排気口から排気する工程と、
前記基板支持部の上側に設けられたガス供給部から前記基板支持部と対向して設けられたガス分散部と当該ガス分散部上に設けられたガス整流部を介して前記基板に処理ガスを供給する工程と、
前記ガス分散部上に設けられた蓋部に設けられた第2排気口から、前記ガス供給部と前記ガス分散部との間のバッファ空間の雰囲気を排気する工程と、
前記第2排気口と対向した位置であって、前記ガス整流部に設けられた第2加熱部で当該ガス整流部を加熱する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0136】
<付記8>
付記7に記載の方法であって、好ましくは、
前記第2加熱部は、複数ゾーンに分割され、
前記第2排気口と対向するゾーンの温度を、他のゾーンの温度よりも高くなるように加熱する工程を有する。
【0137】
<付記9>
付記7または付記8に記載の方法であって、好ましくは、
前記第2加熱部は、前記ガス分散部の前記バッファ空間側の面の温度と、当該分散板の前記処理空間側の面の温度とが、同じになるように前記ガス分散部を加熱する工程と、
を有する。
【0138】
<付記10>
付記7乃至付記9のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記ガスが前記蓋部に吸着しないように前記蓋部に設けられた第3の加熱部で当該蓋部を加熱する工程と、を有する。
【0139】
<付記11>
付記7乃至付記10のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板を前記基板支持部に搬送する工程の後、
前記基板支持部を処理位置に移動させる際に、前記第2加熱部で加熱された不活性ガスを供給する工程と、を有する。
【0140】
<付記12>
更に他の態様によれば、
第1加熱部が設けられた基板支持部に基板を搬送させる手順と、
前記第1加熱部で前記基板を加熱させる手順と、
前記基板支持部上の処理空間の雰囲気を第1排気口から排気させる手順と、
前記基板支持部の上側に設けられたガス供給部から前記基板支持部と対向して設けられたガス分散部と当該ガス分散部上に設けられたガス整流部を介して前記基板に処理ガスを供給させる手順と、
前記ガス分散部上に設けられた蓋部に設けられた第2排気口から、前記ガス供給部と前記ガス分散部との間のバッファ空間の雰囲気を排気させる手順と、
前記第2排気口と対向した位置であって、前記ガス整流部に設けられた第2加熱部で当該ガス整流部を加熱させる手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム、または、当該プログラムが記録された記録媒体が提供される。
【0141】
<付記13>
一態様によれば、
基板を加熱する第1加熱部が設けられた基板支持部と、
前記第1加熱部の温度を測定する第1温度測定部と、
前記基板に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記基板支持部上の処理空間を排気する第1排気口と、
前記基板支持部と対向して設けられたガス分散部と、
前記ガス供給部と前記ガス分散部との間のバッファ空間を排気する第2排気口が設けられた蓋部と、
前記バッファ空間に設けられ、前記第2排気口と対向する位置に第2加熱部が設けられたガス整流部と、
前記第2加熱部の温度を測定する第2温度測定部と、
前記第1温度測定部から受信した温度情報と前記第2温度測定部から受信した温度情報とを基に、前記第1加熱部と前記第2加熱部を制御する制御部と、
を有する基板処理装置、または、半導体装置の製造装置が提供される。
【0142】
<付記14>
付記13に記載の装置であって、好ましくは、
前記第2加熱部は、複数ゾーンに分割され、
前記第2温度検出部及び第2温度情報受信部は、前記複数ゾーン毎に設けられ、
前記制御部は、
前記第2排気口と対向するゾーンの温度を、他のゾーンの温度よりも高くなるように、前記第2温度測定部から受信した前記温度情報を基に、前記第2加熱部を制御する様に構成される。
<付記15>
付記13または付記14に記載の装置であって、好ましくは、
前記制御部は前記第2温度測定部から受信した前記温度情報と、前記第2加熱部を制御する電力値で構成されるテーブルを有する。