特許第6333237号(P6333237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6333237ガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法およびコーティングされたガラス基材又はガラスセラミック基材を含む調理台
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6333237
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法およびコーティングされたガラス基材又はガラスセラミック基材を含む調理台
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/42 20060101AFI20180521BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20180521BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20180521BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C03C17/42
   C23C28/00 D
   F24C15/10 B
   H05B6/12 305
【請求項の数】26
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-506260(P2015-506260)
(86)(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公表番号】特表2015-523945(P2015-523945A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】EP2013058224
(87)【国際公開番号】WO2013156622
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】102012103507.5
(32)【優先日】2012年4月20日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012109808.5
(32)【優先日】2012年10月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ズィルケ クノヘ
(72)【発明者】
【氏名】アンゲリナ ミラノフスカ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ クリッペ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】エラ ルール
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−009958(JP,A)
【文献】 特開2011−216457(JP,A)
【文献】 特開2008−016318(JP,A)
【文献】 特開平10−273342(JP,A)
【文献】 特開2005−097097(JP,A)
【文献】 特表2004−516216(JP,A)
【文献】 特開2004−108771(JP,A)
【文献】 特表2013−534201(JP,A)
【文献】 特表2009−530215(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/085996(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00 − 17/44
C23C 28/00
F24C 15/10
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法であって、以下の工程:
− テクスチャ表面を有する第一の層を施与する工程、その際、前記第一の層をガラスフラックスとして施与し、かつ前記第一の層は、顔料粒子及び/又は充填剤粒子を有し、前記第一の層は最大テクスチャ深さが0.1〜5μmであり、前記第一の層の前記最大テクスチャ深さが、最大層厚の40%を上回る、
− 更なる層として第二の層を前記第一の層に施与する工程、その際、前記更なる層が前記テクスチャ表面を少なくとも部分的に満たすことで、前記第一の層の材料が段階的に前記第二の層の材料に移行し、前記施与される第二の層が、少なくとも部分的にポリマーの層であり、前記第二の層の材料が顔料又は着色剤を有する、
を有する方法。
【請求項2】
前記第一の層を焼き付け、その際、ガラスフラックス粒子は溶融し、顔料粒子及び/又は充填剤粒子はそのままの状態であることを特徴とする、請求項1記載の装飾コーティングを施与する方法。
【請求項3】
顔料粒子及び/又は充填剤粒子をガラスフラックスによって埋め込むことを特徴とする、請求項1又は2記載の装飾コーティングを施与する方法。
【請求項4】
前記第一の層及び/又は前記第二の層の材料が、顔料を50%を上回る割合で有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項5】
少なくとも前記第1の層が、顔料として金属酸化物粒子及び更なる無機材料を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項6】
少なくとも前記第一の層が、0.05μmを上回る平均粒度を有する顔料粒子を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項7】
前記第二の層として、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、エポキシ官能化シリコーン樹脂、及び/又はポリエステル官能化シリコーン樹脂を施与することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項8】
前記第一の層を、亀裂が形成されるような高い温度で焼き付けることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項9】
前記第一の層を、0.2〜3μmの最大テクスチャ深さで施与すること特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項10】
前記第一の層の前記最大テクスチャ深さが、最大層厚の80%を上回ることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項11】
前記第一の層として、30%未満の閉鎖気孔率を有する層を施与することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項12】
前記第一の層として、10%未満の閉鎖気孔率を有する層を施与することを特徴とする、請求項11に記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項13】
前記第一の層として、5%未満の閉鎖気孔率を有する層を施与することを特徴とする、請求項11に記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項14】
前記第一の層を、500℃を上回る温度で焼き付けすることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項15】
前記第二の層の前記材料に、充填剤粒子及び/若しくは顔料粒子又は着色剤を添加することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項16】
前記第一の層及び前記更なる層として、単独で施与した場合、29.0を上回るLab色空間の明度Lを有する層を施与し、その際、重なり合って配置された層は、28.0未満の明度Lを有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項17】
前記第一の層の下に、更なるテクスチャ層を施与することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載のガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与する方法。
【請求項18】
コーティングされたガラス基材又はガラスセラミック基材を含む調理台であって、前記ガラス基材又はガラスセラミック基材が、ガラスフラックスに埋め込まれている顔料粒子を少なくとも有する第一の層並びに前記第一の層の構造を少なくとも部分的に満たす更なる層を有し、
前記更なる層が、顔料及び/又は着色剤を含むポリマー層であり、
前記第一の層及び前記更なる層は、不透明なコーティングを形成しており、
前記更なる層を部分的に省いて、省いた領域中で半透明な面を形成しており、
透明な又は半透明なポリマー層が、省いた領域が半透明なままであるように、省いた領域に施与されている、ことを特徴とする、前記調理台
【請求項19】
前記省かれた領域がディスプレイを組み込むためのものである、請求項18に記載の調理台。
【請求項20】
前記不透明なコーティングが、光沢のある底面コーティングである、請求項18又は19に記載の調理台。
【請求項21】
前記ポリマー層が、ポリシロキサン層である、請求項18から20までのいずれか1項記載の調理台。
【請求項22】
前記コーティングが光沢を有し、EN ISO 2813に従ったG1の光沢度を有することを特徴とする、請求項18から21までのいずれか1項記載の調理台。
【請求項23】
前記コーティングされた基材が黒色であることを特徴とする、請求項18から22までのいずれか1項記載の調理台。
【請求項24】
前記第一の層の下に、更なるテクスチャ層が施与されている、請求項18から22までのいずれか1項記載の調理台。
【請求項25】
コーティングされたガラス基材又はガラスセラミック基材を含む調理台であって、前記ガラス基材又はガラスセラミック基材が、ガラスフラックスに埋め込まれている顔料粒子を少なくとも有する第一の層を有し、
前記第一の層は最大テクスチャ深さが0.1〜5μmを有し、前記第一の層の前記最大テクスチャ深さが、最大層厚の40%を上回り、
前記第一の層の構造を少なくとも部分的に満たす更なる層を有し、
前記更なる層が、顔料及び/又は着色剤を含むポリマー層であり、
前記第一の層及び前記更なる層は、不透明なコーティングを形成している、前記調理台。
【請求項26】
コーティングされたガラス基材又はガラスセラミック基材を含む調理台であって、前記ガラス基材又はガラスセラミック基材が、ガラスフラックスに埋め込まれている顔料粒子を少なくとも有する第一の層を有し、
前記第一の層は最大テクスチャ深さ0.1〜5μmを有し、前記第一の層の前記最大テクスチャ深さが、最大層厚の40%を上回り、
前記第一の層の構造を少なくとも部分的に満たす更なる層を有し、
前記更なる層が、透明な又は半透明なポリマー層であり、
前記第一の層及び前記更なる層が、半透明なコーティングを形成している、前記調理台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材又はガラスセラミック基材上の装飾被覆の製造法並びにそのような方法に従って製造されたガラス基材又はガラスセラミック基材に関する。殊に本発明は、底面コーティングを有するガラスセラミックス製の調理面(Kochflaeche)に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾コーティングを有するガラス基材又はガラスセラミック基材は、実地で知られている。この種のコーティングにおいて問題なのは、層系が高い熱負荷に曝されることである。そのため、電磁誘導調理面に用いられる場合、コーティングは500℃までの温度に耐えなければならない。
【0003】
実地では、この種のコーティングがどのように施与されることができるのか、既に多数の方法が知られている。
【0004】
第一に、PVD法を用いて堆積させられた金属層が知られており、これらは殊にスパッタリングを用いて施与される。スパッタ層は、高い輝度を有し、かつ金属の光学的印象を与える。
【0005】
とはいっても、金属層のスパッタリングはかなり煩雑であるという欠点がある。殊に、例えば調理ゾーンのマーキングのために基材に部分的にのみ装飾層が備えられることになる場合、マスキングのための付加的な方法工程が必要になる。
【0006】
更なる欠点は、殊に所望の色に関して、層の光学的印象を様々に変える方法が少ししか存在しないという点に基づいている。そのため、例えば、スパッタ法を用いて黒色の層を施与することは非常に煩雑である。
【0007】
しばしば、更なる欠点は、層の導電性にあり、そうして、これらの層は、静電容量スイッチの前に配置されることには、たいてい適していない。
【0008】
さらに実地では、シリコーン塗料をベースとする装飾コーティングが知られている。たしかに、これらは、例えばスクリーン印刷を用いて比較的容易に施与されうる。とはいっても、この種の層の機械的耐負荷能力は、通例、限られており、そのうえ、温度負荷が高いとコーティングの変色が起きる可能性がある。
【0009】
さらに知られているのは、ガラスフラックスを用いた装飾コーティング、つまり、エナメルコーティングの施与である。この種のエナメルコーティングは、ガラスフラックス材料に付け加えられる、使用される顔料の選択により、ほぼ任意の色を作り出すことができるという利点を有する。
【0010】
とはいっても、公知のガラスフラックスベースのコーティングは、通例、限られた層厚とその結果生じる不透明部を伴ってしか適用可能ではなく、かつ亀裂を形成しがちであり、これらは光学的印象にはっきりと影響を及ぼす。さらに、公知のエナメル層は、使用される基材を引張応力の状態にし、ひいては強度を低下させる。
【0011】
亀裂形成を回避し、かつ製造された複合材料の機械的耐負荷能力を改善するために、多孔質のエナメルコーティングを施与することが知られている。しかし、これらはまた、細孔が可視光の波長領域にあるため、無光沢の外観が生じるという欠点を有する。文献EP1435759B1は、調理台上に装飾コーティングを施与する方法を記載しており、この方法の場合、上面に、無機顔料を有する緻密層が、かつ底面に、無機顔料を有する多孔質の層が施与される。下側の層における亀裂を必ず回避することが意図されている。調理台のための機械的安定性及び耐高温性の光沢のあるエナメル層は、これまで製造されえていなかった。
【0012】
さらに知られているのは、ゾル−ゲル法を用いて製造されたコーティングであって、この場合、ゾル−ゲル材料に少なくとも1種の顔料又は充填剤が付け加えられる。しかし、この種のゾル−ゲル層も同様に、多くのケースで剥離又は亀裂形成を生ずる傾向にあり、それから複合材料上で局所的にはっきりと明るくなって現れる。
【0013】
さらに、装飾コーティングとして光沢塗料を施与することが知られている。光沢塗料はまた、色座標(Farbort)の選択が制限されており、並びに暗色、殊に黒色のコーティングの場合には少なくとも貴金属ベースの塗料が用いられなければならず、製造費が高まるという欠点を有する。
【0014】
本発明の課題:
それに従って、本発明の基礎を成している課題は、ガラス基材又はガラスセラミック基材に装飾コーティングを施与するにあたって、容易に基材に耐熱層を備えることができる方法を提供することである。
【0015】
殊に本発明の課題は、コーティングの色座標を自由に選択し、かつ光沢のある層を施与することを可能にすることである。
【0016】
発明の概要:
本発明の課題は、ガラス基材又はガラスセラミック基材上に装飾コーティングを施与する方法並びに従属請求項のいずれかに記載のコーティングされたガラス基材又はガラスセラミック基材によってだけで解決される。
【0017】
本発明の有利な実施形態及び発展形態は、それぞれの下位請求項から読み取ることができる。
【0018】
本発明は、ガラス基材又はガラス基材上に装飾コーティングを施与する方法に関する。
【0019】
装飾コーティングとは、基材の光学的印象を変えるすべてのコーティングの意味を表す。好ましくは、コーティングは不透明又は半透明である。コーティングは、任意の色を有していてよい。
【0020】
ガラス基材又はガラスセラミック基材として、好ましくは、透明かつ/又は耐熱性の材料を使用する。いわゆるゼロ膨張材料とも呼ばれるガラスセラミックのほかに、本発明のために耐熱性ガラスを使用することも考えられる。しかし、調理面に使用する場合は、通例、ガラスセラミック基材を使用する。透明な基材とは、可視領域で少なくとも部分的に透過性である基材の意味を表す。
【0021】
基材は、好ましくは平面に形成されている。しかし、本発明のために湾曲した基材を使用することも考えられ、これらは、例えば暖炉覗き窓のために使用される。
【0022】
本発明によれば、ガラスフラックスを用いて、まず、テクスチャ表面を有する第一の層を施与する。テクスチャ表面とは、表面レリーフを有する表面の意味を表す。施与した層は、つまり平面ではなく、谷状部及び山状部を有する。テクスチャ深さは、好ましくはマイクロメートル範囲にある。殊に、0.1〜5μm、有利には0.2〜3μm、特に有利には0.5〜2μmの最大テクスチャ深さを予定している。
【0023】
テクスチャ深さは、例えば、サンプル材料の表面プロファイルを、10個のランダムに選択した1cm長の試験距離において、例えば走査型電子顕微鏡法により測定することによって突き止めることができる。
【0024】
その際に突き止めた10個の最大高低差の平均値が、本発明の意味における最大テクスチャ深さを表す。
【0025】
このようなテクスチャ表面は、コーティングのために使用される材料に、以下でさらに詳細に説明するように、顔料粒子及び/又は充填剤粒子を添加することにより得られる。
【0026】
第一のテクスチャ層上に、テクスチャ表面を少なくとも部分的に満たす、特に有利には完全に満たす、更なる層を施与して、第一の層の層材料が段階的に第二の層の材料に移行するようにする。第一の層を、領域的にのみ第二の層の層材料で満たすことも考えられる。
【0027】
作り出した山−谷−プロファイルを第二の層の材料で満たすことによって、両方の材料から成る層系の材料組成は、基材から出発して層表面に至るまで、基材の表面では第一の層の材料のより高い割合が存在し(有利には、ほぼ100%)、それに対して、層系の表面では第一の層の材料のより低い割合が存在する(有利には、ほぼ0%)ように変化する。
【0028】
本発明者は、形成される層系が熱負荷を受けた場合でも、はっきりと目に見える変化、殊に亀裂に基づく明るい斑点を生ずる傾向がずっと僅かであることを見出した。
【0029】
これは、おそらく、第一の層において亀裂が形成される場合でさえ、これらはふつう第二の層で覆い隠され、そうして、亀裂形成が存在しているにも関わらず、冒頭で述べた光学的外観における不均質部分が生じないことに因る。
【0030】
さらに、目的に合わせた亀裂形成によって、それどころか、高められた耐高温性を有するゾーンが形成されえ、これにより層系全体がより高い耐高温性を有することになる。殊にこれは、ポリマー層が施与される、ガラスフラックスを用いて製造した第一の層に当てはまる。
【0031】
当然の事ながら、本発明の意味においては、更なる層も存在していてよい。殊に、更なるカバー層及びシール層が考えられる。
【0032】
本発明の更なる実施形態で予定しているように、第一の層及び更なる層から成る層系を、数μmの高いテクスチャ深さを有する層上に施与することも考えられる。これは、殊にゾル−ゲル法を用いて施与された層であってよい。このような、好ましくは10μmを超える高いテクスチャ深さを有する更なるテクスチャ層により、例えばパターン、手触りがしっかりと感じられる面等が作り出さされうる。殊に、これらは、基材、殊に調理台の底面上にも配置されていてよい。
【0033】
好ましくは、第一及び/又は第二の層の材料は、顔料を、殊に50%を上回る割合(別記していない限り、%値は常に質量%で示される)で含む。
【0034】
殊に第一の層として、好ましくは、60%を上回る高い顔料割合を有する層を使用する。
【0035】
顔料として、好ましくは金属酸化物を使用する。これらは、殊に、コバルト酸化物/コバルトスピネル、コバルト−アルミニウムスピネル、コバルト−チタンスピネル、コバルト−クロムスピネル、コバルト−ニッケル−マンガン−鉄−クロム酸化物/コバルト−ニッケル−マンガン−鉄−クロムスピネル、コバルト−ニッケル−亜鉛−チタン−アルミニウム酸化物/コバルト−ニッケル−亜鉛−チタンアルミニウムスピネル、鉄酸化物、鉄−クロム酸化物、鉄−クロム−亜鉛−チタン酸化物、銅−クロムスピネル、ニッケル−クロム−アンチモン−チタン酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム−ケイ素−鉄酸化物/ジルコニウム−ケイ素−鉄スピネル等であってよい。
【0036】
顔料として、すべての考えられる吸収顔料、殊に板状顔料又は棒状顔料も考慮に入れられる。コーティングされたエフェクト顔料を使用することも可能である。
【0037】
さらに、殊に第一の層に充填剤を添加してもよく、これらは、殊に、SiO2粒子、アルミナ粒子、ヒュームドシリカ、ソーダ石灰ガラス球、アルカリアルミノケイ酸ガラス球又はホウケイ酸ガラス球、ガラス中空球であってよい。
【0038】
顔料粒子及び/又は充填剤の高い割合と一緒に、高いテクスチャ深さを有する層が形成される。
【0039】
その際、好ましくは、層をガラスフラックス粒子が溶融するような高い温度で焼き付けし、ここで、充填剤及び/又は顔料粒子は、高いテクスチャ深さを有する緻密な層を得るために、実質的にそのままの状態である。
【0040】
緻密な層とは、殊に、5%未満の閉鎖気孔率を有する層の意味を表す。
【0041】
そのため、殊に、ポリマー層が更なる層として満たされる、半透明な粗い第一の層が、全体として不透明な光沢のある底面コーティングを提供するために形成される。
【0042】
更なる層を部分的に省いて、省いた領域中で半透明な面を得ることも考えられる。この半透明な領域は、殊にディスプレイを組み込むために用いてよい。特に、更なる層の施与のためにスクリーン印刷法を使用することで、省いた領域を容易に製造することが可能になる。
【0043】
当然の事ながら、省いた領域は、それでもやはり、更なる第三の層材料を含んでもよい。
【0044】
そのため、例えば、省いた領域中では、第一の層上に透明なポリマー層を施与することが可能である。さらに、省いた更なる層とは別の着色剤を含む半透明な層を施与することが考えられる。そのため、省いた領域は半透明なままであり、かつ光学的外観の点で、隣接する層系に合わせることができる。
【0045】
第一の層の層厚は、好ましくは、0.1μmから10μmの間、特に有利には1μmから5μmの間である。更なる層は、好ましくは、1μmから100μmの間の厚さを有する。
【0046】
好ましくは第一の層の最大テクスチャ深さは、最大層厚の40%を上回り、有利には80%を上回り、特に有利には90%を上回る。
【0047】
第一の層のガラスフラックス材料として、結晶性又はガラス様の無機材料を使用してよい。
【0048】
ガラスフラックス材料は、好ましくは微粒子の形で準備し、かつ場合により顔料粒子及び/又は充填剤粒子と混合する。
【0049】
好ましくは、ケイ酸ガラス、例えばホウケイ酸ガラス、亜鉛−ホウケイ酸ガラス、ビスマス−ホウケイ酸ガラス、酸化ケイ素ガラス、亜鉛−ケイ酸ガラス、ビスマス−ケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、インバートガラス、さもなければホウ酸ガラス及びリン酸ガラス、例えば亜鉛−ホウ酸ガラス、ビスマス−ホウ酸ガラスを使用する。
【0050】
第一の層は、好ましくは、500℃を上回る、特に有利には600℃を上回る温度で焼き付ける。
【0051】
本発明の意味における“焼き付ける”とは、層材料を硬化するという意味を表す。ガラスフラックスの場合、殊に材料は、ガラスフラックス材料が溶融し、かつ単に焼結しないような高い温度で焼き付けする。
【0052】
加熱は、好ましくは、細孔形成を引き起こす可能性のある蒸発プロセスを起こさずに、ガラスフラックス材料の密度が高まるように、素早くかつ短時間で行う。しかし、ガラスフラックス材料は、あてがわれた顔料粒子及び/又は充填剤を完全に湿らせるように希溶液状でなければならない。
【0053】
更なる層の層材料として、好ましくはポリマーを使用する。殊に、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、エポキシ官能化シリコーン樹脂及び/若しくはポリエステル官能化シリコーン樹脂又はゾル−ゲルを使用してよい。
好ましくは、更なる層に、顔料、殊に無機顔料及び/若しくは充填剤、並びに/又は有機着色剤も混ぜている。
【0054】
充填剤として、殊に、シリカ粒子、アルミナ粒子、ヒュームドシリカ、ソーダ石灰ガラス球、アルカリアルミノケイ酸ガラス球又はホウケイ酸ガラス球、ガラス中空球を使用する。
【0055】
顔料として、すべての考えられる吸収顔料、殊に板状顔料又は棒状顔料が考慮に入れられる。
【0056】
コーティングされたエフェクト顔料を使用することも考えられる。
【0057】
着色剤として、十分に耐高温性である、すべての有機着色剤を使用してよい。
【0058】
殊にディスプレイ領域においては、透明な層材料を第二の層に使用してよく、或いはまた、この層材料は、半透明な部分とディスプレイ領域との色対比を軽減するために着色されていてもよい。層の着色のために、散乱が僅かである半透明なコーティングを保証する種々の着色剤を使用してよい。
【0059】
そのため、層材料に有機着色剤を添加してよい。暗色若しくは黒色のコーティングには、殊にOrasol(R)RLiを使用してよい。耐高温性の着色剤として、さらに、アゾ染料、例えばメチルオレンジ、アリザリンイエロー又はコンゴレッド;トリフェニルメタン染料、例えばマラカイトグリーン、エオシン、フルオレセイン、アウリン及びフェノールフタレイン;バット染料、例えばアントラキノン染料、インジゴ及びチオインジゴ;蛍光染料;ペリレン染料が適している。
【0060】
同様に、例えば中心原子としてCr、Cu、Ni、Zn又はCoを有するフタロシアニンを用いてよい。
【0061】
第一の層のテクスチャを満たすことによって段階的な材料組成を有する層系を形成するポリマー層の使用の結果、緻密な、場合により光沢のある、高い熱負荷に耐える層系が生じる。結果生じるこの勾配層は、7体積%未満の気孔率を有し、したがって緻密である。横断面において、この値は突き止めることができる。BET法に従った窒素吸着において、5m2/g未満の層系の表面を測定し、これはまた緻密な勾配複合体(Gradientenverbund)の存在を裏付ける。
【0062】
本発明によって、殊に、高い熱負荷に耐える黒色の光沢のある層を非常に簡単に作り出すことに成功する。殊に層は500℃を超える短時間の温度負荷及び400℃を超える長時間の負荷に耐える。
【0063】
意想外にも、黒色の層は、第一の層と更なる層とを互いに組み合わせることによって作り出すことができ、単独で施与した場合、それぞれ29.0を上回るLab色空間の明度Lを有する。つまり、これらの層は、どちらかといえば灰色の層であり、かつ所望の黒色の色印象を示さない。
【0064】
意想外にも、これらの層を組み合わせた結果、28.0を下回る、殊に27.0を下回る明度Lが生じる。
【0065】
このように暗色の耐熱層は、過去、高価な貴金属酸化物の使用によってしか提供することができておらず、この層は、加えて、僅かに褐色がかった色ズレを有していた。
【0066】
第一の層及び/又は更なる層の層材料の施与は、好ましくは、印刷法を用いて、殊にスクリーン印刷を用いて行う。
【0067】
そのため、非常に簡単かつ素早く、大面積の基材も完全にコーティングすることが可能である。
【0068】
同時に、スクリーン印刷法の使用により、基材を部分的にのみコーティングすることが可能になる。つまり、特定の領域のみを印刷し、その際、他の領域はそのままにしておくことができる。殊に、調理台の場合、ディスプレイ領域又は調理面もそのままにしておくことができる。
【0069】
加えて、多色の上面及び底面コーティングの組合せも可能である。
【0070】
さらに、本発明は、前で記載したように製造可能である、コーティングされたガラス基材又はガラスセラミック基材に関する。
【0071】
本発明によって、殊にEN ISO 2813に従ったG1の光沢度で光るコーティングを提供することができた。当然の事ながら、底面コーティングとして、基材側から見た光沢度を取り上げる。
【0072】
図面の説明
本発明を、以下では、図1図14と関連させてより詳細に説明する。
【0073】
図1は、本発明の効果を示すために用いられる概略的な断面図を示す。
【0074】
基材2及び勾配層から成るコーティングされたガラス基材又はガラスセラミック基材1を見ることができる。
【0075】
勾配層は、ガラスフラックスを用いて施与された第一の層3を含み、この層は60%を超える顔料粒子及びより小さい充填剤粒子を有する。
【0076】
ランダムに配置された谷状部及び山状部を形成する顔料粒子が存在していることに基づき、更なる層4としてポリシロキサン層が満たされているテクスチャ表面が形成される。更なる層4も顔料粒子を有する。勾配層は底面コーティングとして使用し、すなわち、観察者は、層3及び4に向き合っている面から勾配層を見る。
【0077】
勾配層は、好ましくは黒色かつ光沢がある。
【0078】
より詳細には、以下の例において記載するように、層を施与してよい。
【0079】
第一の層の層材料として、成分Aに従った組成物を使用し、かつ更なる層のために成分Bに従った組成物を使用する。
【0080】
成分Aのマトリックス材料として、殊に結晶性及び/又はガラス様の無機材料を使用することができる。
【0081】
有利には、ベースとなるこれらのガラスは、ケイ酸塩由来であってよく、例えばホウケイ酸ガラス、石英ガラス、亜鉛−ケイ酸ガラス、亜鉛−ホウケイ酸ガラス、ビスマス−ケイ酸ガラス、ビスマス−ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、さもなければホウ酸ガラス、亜鉛−ホウ酸ガラス、ビスマス−ホウ酸ガラス又はリン酸ガラス並びにインバートガラスであってよい。
【0082】
これらは、例えば以下の組成のガラスであってよい:
ホウケイ酸ガラス:
SiO2:45〜85質量%
23:5〜30質量%
Al23:2〜20質量%
2O:2〜20質量%、ここで、R2Oは、アルカリ金属酸化物である、
RO:0〜10質量%、ここで、ROは、アルカリ土類金属酸化物である、
RO2:0〜5質量%、ここで、RO2は、TiO2及び/又はZrO2である、
ZnO:0〜15質量。
【0083】
ホウ酸亜鉛ガラス:
SiO2:10〜45質量%
23:5〜30質量%
Al23:0〜10質量%
2O:0〜10質量%、ここで、R2Oは、アルカリ金属酸化物である、
RO:0〜25質量%、ここで、ROは、アルカリ土類金属酸化物である、
RO2:0〜10質量%、ここで、RO2は、TiO2及び/又はZrO2である、
ZnO:10〜70質量。
【0084】
コーティングされたガラス基材又はガラスセラミック基材は、より詳細には、以下の例と関連させて製造することができる:
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】本発明の効果を示すために用いられる概略的な断面を示す図
図2】本質的な工程段階の概略的なフローチャートを示す図
図3】コーティングされたガラスセラミック基材の様々なパターンの写真を示す図
図4】本発明の実施例1に従って、成分Aでコーティングされたガラスセラミック基材のスペクトル透過率を示す図
図5図3に示したパターンのLab系の明度値(L値)のグラフを示す図
図6】異なる色の背面印刷(Hinterdruckung)によって色調の変化を示す図
図7】680℃で焼き付けした、第一の層のガラスフラックスベースのコーティング材料の走査型電子顕微鏡写真を示す図
図8】680℃で焼き付けした、第一の層のガラスフラックスベースのコーティング材料の走査型電子顕微鏡写真を示す図
図9図7及び図8に示した縮尺と比べて、より拡大した写真を示す図
図10】層の断面を示す図
図11】顔料粒子70%を有し、そして725℃で焼き付けした第一の層の走査型電子顕微鏡写真を示す図
図12】顔料粒子70%を有し、そして725℃で焼き付けした第一の層の走査型電子顕微鏡写真を示す図
図13】第二の層としてのシリコーン塗料で満たした層材料の走査型電子顕微鏡断面図を示す図
図14】第二の層としてのシリコーン塗料で満たした層材料の走査型電子顕微鏡断面図を示す図
【実施例】
【0086】
例1
成分Aを、CERAN CLEARTRANS(R)型(サイズ250×300mm、厚さ4mm)の透明なガラスセラミックプレートの底面に、面全体でスクリーン印刷(180メッシュスクリーン(Gewebestaerke))を用いて塗布し、かつ725℃/10分にて連続炉内で焼き付けする。成分Aは、35%が亜鉛−ホウケイ酸ガラス(軟化点Ts575℃)から成り、かつ65%が黒色顔料(Cu−Crスピネル;CuCr24)から成り、両成分は、5μm未満の粒度D50を有する。
【0087】
こうして焼き付けした成分Aは、1.8μmの層厚を有し、手触りが滑らかであり、緻密及び非多孔質(乾いた水滴は、拭き取ることができる)、灰色(Datacolor社製測色器の結果:L=29.9;a=−0.4;b=0.4)かつ半透明(550nmでの透過率:11%)である。
【0088】
層の散乱を突き止めるために、サンプルをPerkin Ellmer社の分光計“Lambda 900”で、積分球を用いた場合と用いない場合とで測定する。550nmの波長では、積分球を用いた透過率は11%であり、かつ球なしでは1%であり、すなわち、サンプルは、高い散乱光レベルを有する。
引き続き、更なる層を形成する成分B1を、同様に面全体でスクリーン印刷を用いて成分Aに塗布する。
【0089】
成分B1として、例えば公開公報DE102010031866A1に記載される、黒色のシリコーン塗料を使用する。これを77メッシュスクリーンで印刷し、引き続き200℃/45分にて乾燥する。
【0090】
こうして得られた成分B1は、11μmの層厚を有し、かつ単独で印刷すると灰色である(L=30.8;a=−0.25;b=−1.2)。
【0091】
これに対して、成分A及び成分B1からの得られた勾配層は、平滑、緻密、深みのある黒色(L=26.7;a=−0.1;b=−0.7)であり、かつガラスセラミックを通して見ると(すなわち、上面から見て)光沢がある;可視領域全体における透過率は0%である(積分球を用いた場合と用いない場合の透過率測定)。Perkin Ellmer社の分光計“Lambda 950”で、反射について、成分Aの単独層と、成分A及びB1からの勾配層の両方を測定した。ヘイズ値の差は5.5%であり、すなわち、反射測定より、成分Aからの層が高い散乱能を有し、その一方で、勾配複合体は、ほぼ散乱挙動を示さないことが確かめられる
【0092】
こうして製造した、成分A及びBの材料から成る勾配層は、最大500℃の短時間の温度負荷を受けるクックトップ(Kochplatte)の要件を満たす。
【0093】
成分B1は、より詳細には、以下のように組成されていてよい:
ポリジメチルシロキサン:60〜80質量%
黒色顔料、殊に(Cr,Fe)(Ni,Mn)スピネル、Cu(Cr,Fe,Mn)24スピネル(ブラック 28)、Co(Cr,Fe)24(ブラック 27)、(Ni,Fe)(Cr,Fe)O4スピネル(ブラック 30)、(Fe,Mn)23(ブラック 33)、(Fe,Mn)(Fe,Mn)24スピネル(ブラック 26)及び(Cu,Cr)Ox(ブラック 28)の群からのもの:10〜40質量%
5μmから20μmの間のD90値を有するグラファイト(合成と非合成の両方)5〜15質量%。
【0094】
例2
成分Aを、CERAN CLEARTRANS(R)型(サイズ250×300mm、厚さ4mm)の透明なガラスセラミックプレートの底面に、面全体でスクリーン印刷を用いて塗布し、かつ750℃/15分にて連続炉内で焼き付けする。
【0095】
成分Aは、粒度D50が5μm未満の、ホウケイ酸ガラス(約620℃のTs)25%及び黒色顔料(Cu−Crスピネル)75%を有する。
【0096】
こうして焼き付けした成分Aは、1.6μmの層厚を有し、手触りが滑らかであり、緻密(非多孔質)、暗灰色(L=30.8;a=−0.4;b=0.2)かつ半透明である。
【0097】
引き続き、成分B2を、同様に面全体でスクリーン印刷(77メッシュスクリーン)を用いて成分Aに塗布し、かつ230℃/90分にて乾燥する。成分B2として、灰色のシリコーン塗料を使用する。得られた成分A及び成分B2からの勾配層は、平滑、緻密、不透明かつ暗灰色(L=30.1;a=−0.7;b=−0.8)である。
【0098】
こうして製造した勾配層を有するプレートは、最大500℃の短時間の温度負荷を受けるクックトップの要件を満たす。
【0099】
成分B2は、より詳細には、以下のように組成されていてよい:
ポリジメチルシロキサン:60〜80質量%
黒色顔料、殊に(Cr,Fe)(Ni,Mn)スピネル、Cu(Cr,Fe,Mn)24スピネル(ブラック 28)、Co(Cr,Fe)24(ブラック 27)、(Ni,Fe)(Cr,Fe)O4スピネル(ブラック 30)、(Fe,Mn)23(ブラック 33)、(Fe,Mn)(Fe,Mn)24スピネル(ブラック 26)及び(Cu,Cr)Ox(ブラック 28)からのもの:10〜20質量%
TiO2(白色顔料)10〜20質量%
5μmから20μmの間のD90値を有するグラファイト(合成と非合成の両方)5〜15質量%。
【0100】
例3
成分Aを、CERAN CLEARTRANS(R)型(サイズ250×300mm、厚さ4mm)の透明なガラスセラミックプレートの底面に、面全体でスクリーン印刷(180メッシュスクリーン)を用いて塗布し、引き続き乾燥する。
【0101】
成分Aは、90%がホウケイ酸ガラス(約755℃のTs)から成り、かつ10%がエフェクト顔料(Merk社、Xirallic(R)型−クリスタルシルバー)から成り、スクリーン印刷媒体が混ざっている。
引き続き、成分Bを、同様に面全体でスクリーン印刷(140メッシュスクリーン)を用いて成分Aに塗布し、かつ825℃/10分にて焼き付けする。
【0102】
成分Bは、30%が亜鉛−ホウケイ酸ガラス(約575℃のTs)から成り、かつ70%が黒色顔料(Fe−Ni−Crスピネル)から成り、5μm未満のD50を有する。
【0103】
成分C(=B1)として、例1に記載したような黒色のシリコーン塗料を使用する。
【0104】
これを77メッシュスクリーンで印刷し、引き続き230℃/45分にて乾燥する。得られた成分A、B及びCからの勾配層は、平滑、緻密であり、かつ上面から見ると、光輝を放つ黒色である。
【0105】
成分Aは、エフェクト顔料の含有量に差がある(例えば1〜10%)、異なる組成のホウケイ酸ガラスを用いて製造してもよい。それにより、光学的様相は、例えば金色に光輝する黒色として又はステンレス色に光輝する黒色として変化しうる。
【0106】
こうして製造した勾配層は、最大500℃の短時間の温度負荷を受けるクックトップの要件を満たす。
【0107】
例4
エフェクト顔料(Merck社、Iriodin(R)型;粒度<25μm)25%を有するゾル−ゲル塗料(公開公報WO2010/081531A1における製造に記載)を、CERAN CLEARTRANS(R)型(サイズ250×300mm、厚さ4mm)の透明なガラスセラミックプレートの底面に、スクリーン印刷(140メッシュスクリーン)により、幾何学模様及びレタリングの形で印刷し、150℃/10分にて乾燥し、8μmの層厚を得る。引き続き、勾配層を、例1に記載したように製造する。
【0108】
こうして得られたプレートは、上面(観察者側)から見て深みのある黒色であり(L=26.6;a=−0.2;b=−0.7)、明るい、コントラストに富んだパターン、マーキング及びレタリングを有する(L=63;a=−1.7;b=2.1)。
【0109】
こうして製造したプレートは、最大500℃の短時間の温度負荷を受けるクックトップの要件を満たす。
【0110】
例5
成分Aを、CERAN CLEARTRANS(R)型(サイズ250×300mm、厚さ4mm)の複数の透明なガラスセラミックプレートの底面に、面全体でスクリーン印刷(100メッシュスクリーン)を用いて塗布し、かつ725℃/10分にて焼き付けする。
【0111】
成分Aは、35%が亜鉛−ホウケイ酸ガラス(約575℃のTs)から成り、かつ65%が白色顔料(TiO2)から成り、5μm未満のD50を有する。
【0112】
こうして焼き付けした成分Aは、3μmの層厚を有し、手触りが滑らかであり、緻密(非多孔質)、ベージュ色(L=63.69;a=−0.3;b=5,61)かつ半透明である。
【0113】
引き続き、異なるプレートに、成分B1、B2及びB3を、同様に面全体でスクリーン印刷を用いて77メッシュスクリーンで成分Aに印刷し、引き続き、200℃/45分にて乾燥する。
【0114】
成分A及び成分B1からの勾配層を有する得られたプレートは、上面から見ると平滑、緻密かつ灰色(L=48;a=−2;b=−3)である。成分A及び成分B2からの勾配層を有する得られたプレートは、平滑、緻密かつ淡灰色(ベージュ灰色)(L=59;a=−1.6;b=1.4)である。成分A及び成分B3からの勾配層を有する得られたプレートは、平滑、緻密かつベージュ色(成分A単独より明らかに不透明度が高い(透明度が高くない))(L=69;a=−0.7;b=5.5)である。こうして製造した勾配層を有するプレートは、最大500℃の短時間の温度負荷を受けるクックトップの要件を満たす。
【0115】
成分B3は、より詳細には、以下のように組成されていてよい:
ポリジメチルシロキサン:60〜80質量%
TiO2(白色顔料):0〜40質量%
エフェクト顔料 Iriodin:0〜10質量%
【0116】
例6:
成分Aを、CERAN CLEARTRANS(R)型(サイズ250×300mm、厚さ4mm)の透明なガラスセラミックプレートの底面に、面全体でスクリーン印刷を用いて塗布し、かつ880℃/30分にて焼き付けする。
【0117】
成分Aは、70%がホウケイ酸ガラス(約820℃のTs)から成り、かつ30%が黒色顔料(Cr−Fe−Ni−Mnスピネル)から成り、5μm未満の粒度D50を有する。
【0118】
こうして焼き付けした成分Aは、4.2μmの層厚を有し、手触りが滑らかであり、緻密、非多孔質、灰色(L=33.1;a=−1;b=−0.9)かつ半透明である。引き続き、成分B1を、同様に面全体でスクリーン印刷(77メッシュスクリーン)を用いて成分Aに塗布し、かつ200℃/90分にて乾燥する。成分A及び成分B1からの得られた勾配層は、平滑、緻密、黒色(L=27.5;a=−0.2;b=−0.9)かつ光沢がある。
【0119】
場合によっては、底面に塗布される接着ビーズが上面から見えてしまうことが起こりうる。それゆえ、まず例1の成分Aを施与し、引き続き例6に従った層を塗布してもよい。
【0120】
例7:
成分Aを、CERAN CLEARTRANS(R)型(サイズ250×300mm、厚さ4mm)の透明なセラミック化されていないガラスプレートの底面に、面全体でスクリーン印刷(180メッシュスクリーン)を用いて塗布する。成分Aは、55%がホウケイ酸ガラス(約820℃のTs)から成り、かつ45%が黒色顔料(Cr−Fe−Ni−Mnスピネル)から成り、5μm未満の粒度D50を有し、スクリーン印刷媒体が混ざっている。
【0121】
基材のセラミック化の間、成分Aを同時に焼き付けし、その後、これは1.4μmの層厚を有し、手触りが滑らかであり、緻密、非多孔質、灰色かつ半透明である。
【0122】
引き続き、成分B1を、同様に面全体でスクリーン印刷(77メッシュスクリーン)を用いて成分Aに塗布し、かつ200℃/90分にて乾燥する。成分A及び成分B1からの得られた勾配層は、平滑、緻密、かつ光沢のある黒色である。
【0123】
例8(比較例):
成分B1を、CERAN CLEARTRANS(R)型(サイズ250×300mm、厚さ4mm)の透明なガラスセラミックプレートの底面に、面全体でスクリーン印刷(77メッシュスクリーン)を用いて塗布し、引き続き200℃/90分にて乾燥する。こうして得られた成分B1は、20μmの層厚を有し、かつ暗灰色−黒色である。このプレートを500℃の温度負荷に曝すと、変色する(より明るくなる)。シリコーン層に塊状の亀裂が発生し、そこで光はより強く散乱する。損傷を受けていないシリコーン層と、温度の影響によって損傷を受けたシリコーン層との間で生じる色の差は許容可能ではなく、すなわち、クックトップの要件を満たさない。したがって、単層コーティングとして、成分B1の材料は適していない。
【0124】
例9
成分Aを、CERAN CLEARTRANS(R)型(サイズ250×300mm、厚さ4mm)の透明なガラスセラミックプレートの底面に、面全体でスクリーン印刷(140メッシュスクリーン)を用いて塗布し、引き続き725℃/10分にて焼き付けする。成分Aは、40%が亜鉛−ホウケイ酸ガラス(約575℃のTs)から成り、30%が青色顔料(Co−Al−Crスピネル)から成り、かつ30%が緑色顔料(Co−Zn−Ti−Crスピネル)から成り、5μm未満のD50を有する。
【0125】
こうして焼き付けした成分Aは、2.1μmの層厚を有し、手触りが滑らかであり、緻密、非多孔質、青緑色かつ半透明である。
【0126】
引き続き、更なる層を形成する成分B2を、同様に面全体でスクリーン印刷を用いて成分Aに塗布する。
【0127】
成分B2として、灰色のシリコーン塗料を使用する。これを54メッシュスクリーンで印刷し、引き続き230℃/45分にて乾燥する。
【0128】
成分A及び成分B2からの得られた勾配層は、平滑、青緑色で不透明かつ光沢がある。
【0129】
こうして製造した、成分A及びB2の材料から成る勾配層は、最大500℃の短時間の温度負荷を受けるクックトップの要件を満たす。
【0130】
例10:
成分Aを、3mmの厚さを有するBorofloat 33型の耐熱性ホウケイ酸ガラスの底面に、面全体でスクリーン印刷(100〜140メッシュスクリーン)を用いて塗布する。成分Aは、40%がビスマス−ホウケイ酸ガラス(約600℃のTs)から成り、かつ60%が黒色顔料(Cu−Crスピネル)から成る。焼き付けは、680℃で10分間行う。
【0131】
得られた層は、ほとんど黒色であり、緻密であり、かつ3.4μmの層厚を有する。
【0132】
成分B1として、例えば公開公報DE102010031866A1に記載される、黒色のシリコーン塗料を使用する。これを77メッシュスクリーンで印刷し、引き続き200℃/45分にて乾燥する。
【0133】
成分A及び成分B1からの得られた勾配層は、平滑、緻密かつ光沢のある黒色である。
【0134】
例11:
上述の例において、基材をまた半透明な成分Aで印刷し、かつ焼き付けした。引き続き、基材の半分を不透明に背面印刷し(先の例で記載したように)、かつ片方の半分を透明な顔料不含のシリコーン樹脂で背面印刷し、引き続き乾燥する。プレート下方のディスプレイ表示は、透明な背面印刷を備えていてもオフ状態では見えず、しかし、オン状態では表示は十分読み取ることができる。不透明な部分と半透明なディスプレイ領域との色対比を可能な限り小さく保つために、透明なシリコーン樹脂をまた、有機染料で着色し、例えば、例1の場合は黒色染料Orasol(R)RLiで着色し又は例9の場合はフタロシアニンベースの染料で着色した。
【0135】
更なる可能な実施形態:
例えばクックトップとしての適用のために、底面のほかに、上面も装飾してよい。
【0136】
本発明は、成分A(1つ目の層)及びB(更なる層)から成る、高い耐高温性を有する深みのある黒色のコーティングを準備することができた。
【0137】
殊に、以下のLab色空間の色値を有する層を準備した:
【表1】
【0138】
殊に、成分A及びBからの層系の明度Lが27未満であり、それに対して、単独で施与した成分Aは29.9の明度を有し、かつ成分Bは30.8の明度を有することが確認される。したがって、第一の層及び更なる層を構成する両成分の組合せによって初めて、深みのある黒色の色印象が生じる。
【0139】
図2は、本質的な工程段階の概略的なフローチャートを示す。
【0140】
まず、ガラスセラミック基材を準備し、それから、顔料着色のための金属酸化物粒子及びガラスフラックス材料を有する層材料から成る第一の層を施与する。
【0141】
この第一の層を、緻密なテクスチャ層が形成されるように600℃を超える温度で焼き付けする。
【0142】
それから、更なる層として、黒色のシリコーン塗料を施与する。このシリコーン塗料を、500℃を下回る温度で乾燥する。
【0143】
図3は、コーティングされたガラスセラミック基材の様々なパターンの写真を示す。パターン6、8及び9は、市販されているような、暗色コーティングを有するコーティングされたガラスセラミック基材である。
【0144】
光学的印象はどちらかといえば灰色がかっていることが確認される。
【0145】
パターン7は、貴金属酸化物でコーティングしている。褐色−黒色の色印象が確認される。とはっていっても、この種のコーティングの施与は非常に高価である。
【0146】
パターン5は、本発明による方法に従ってコーティングしている。
【0147】
深みのある黒色の色印象が確認される。さらに、コーティングは、光沢のある反射性の色印象を有している。
【0148】
図4は、本発明の実施例1に従って、成分Aでコーティングされたガラスセラミック基材のスペクトル透過率を示す。
【0149】
可視領域でスペクトル透過率は20%未満であることが確認される。
【0150】
図5は、図3に示したパターンのLab系の明度値(L値)のグラフを示す。
【0151】
パターン5、つまり、本発明により施与されたコーティングは、最も低いL値を有し、これは、それどころか、貴金属酸化物が施与されたパターン7のL値をずっと下回ることが確認される。
【0152】
図6に関して、色座標の変化を、異なる色の背面印刷によって説明することにする。
【0153】
成分Aは、この例では暗色に顔料着色している。
【0154】
底面コーティングとして使用した場合(前面図)、明るく顔料着色された成分B2とともに灰色の色印象が形成されることが確認される。
【0155】
図7図10は、680℃で焼き付けした、第一の層のガラスフラックスベースのコーティング材料の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0156】
添加された粒子に基づき目的に合わせて所望の高次構造を有する大いに構造化された層が確認される。
【0157】
図9は、図7及び図8に示した縮尺と比べて、より拡大した写真を示す。
【0158】
図9では、焼き付けした層に亀裂形成が確認される。意想外にも、この亀裂形成は、層に第一の層のテクスチャを満たす更なる層が備わっている場合は、層の光学的様相に、目に見える顕著な影響を及ぼさないことがわかった。
【0159】
さらに、亀裂形成は、それどころか層系の耐高温性を高めるものと思われる。
【0160】
図10は、層の断面図を示す。基材がどのようにコーティングに移行するかが確認され、個々の顔料粒子も良好に確認される。谷状部の底では、明らかな亀裂形成が確認される。
【0161】
図11及び12は、70%の顔料粒子割合を有しており、かつ725℃で焼き付けした第一の層の走査型電子顕微鏡写真を示す。結果は、おおよそ匹敵しており、ここで、この層の構造深さは、さらに増大している。
【0162】
図12に従った断面図においては、層がほぼ気孔を含んでいないことが良好に確認される。したがって、層材料自体は、焼き付けした後に非常に低い気孔率を有する。
【0163】
第一の層は、添加された粒子に基づく多孔質の構造の形成が回避されるように素早く焼き付けされることが望ましい。
【0164】
図13及び図14は、第二の層としてのシリコーン塗料で満たした層材料の走査型電子顕微鏡断面図を示す。
【0165】
ここで、図13は、65%の顔料割合を有する、680℃で焼き付けした第一の層に関係し、及び図14は、70%の顔料割合を有する、725℃で焼き付けした第一の層に関係する。
【0166】
走査型電子顕微鏡写真において、第一の層がシールされており、かつ、まさに平滑な表面が存在していることが確認される。
【0167】
さらに、この走査型電子顕微鏡写真においては、第一の層及び更なる層のコンポーネントは、ほとんど区別されえず、材料は段階的に相互に移行し合う。
【0168】
本発明によって、調理台用に高温安定性の着色された装飾コーティングを特に簡単かつ安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0169】
1 ガラス基材又はガラスセラミック基材、 2 基材、 3 第一の層、 4 更なる層、 5〜9 パターン
図1
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